(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005861
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電力管理装置、電力管理システム及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230111BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230111BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301D
H02J13/00 311T
H02J3/38 110
H02J3/14 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108081
(22)【出願日】2021-06-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中垣 和歌
(72)【発明者】
【氏名】上甲 信悟
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 聡史
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC09
5G064CA01
5G064CB21
5G064DA02
5G064DA03
5G066AA09
5G066AE09
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066KA01
5G066KA06
5G066KA12
(57)【要約】
【課題】 電力系統の需給バランスを適切に制御することを可能とする電力管理装置、電力管理システム及び電力管理方法を提供する。
【解決手段】 電力管理装置は、電力系統に接続された分散電源を有する2以上の施設を管理する管理部と、前記電力系統の需給バランスを調整する所定期間において、前記2以上の施設の各々の需要電力を示す情報要素を含む需要メッセージを前記2以上の施設の各々から受信する受信部と、前記所定期間において、前記需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、前記需要メッセージを受信できる第2施設が有する前記分散電源を制御する制御指示を送信する送信部と、前記第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、前記需要メッセージに基づいて、前記制御指示の内容を決定する制御部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続された分散電源を有する2以上の施設を管理する管理部と、
前記電力系統の需給バランスを調整する所定期間において、前記2以上の施設の各々の需要電力を示す情報要素を含む需要メッセージを前記2以上の施設の各々から受信する受信部と、
前記所定期間において、前記需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、前記需要メッセージを受信できる第2施設が有する前記分散電源を制御する制御指示を送信する送信部と、
前記第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、前記需要メッセージに基づいて、前記制御指示の内容を決定する制御部と、を備える、電力管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1施設の需要電力の計画に基づいて、前記特定挙動を想定する、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1施設が有する前記分散電源について前記所定期間の開始前に指示した制御内容に基づいて、前記特定挙動を想定する、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記所定期間前において前記需要電力に関する計画値と前記需要電力に関する実績値との乖離が閾値以下である第3施設について、前記所定期間において前記第3施設が有する分散電源の制御を制限せず、
前記所定期間前において前記需要電力に関する計画値と前記需要電力に関する実績値との乖離が閾値よりも大きい第4施設について、前記所定期間において前記第4施設が有する分散電源の制御を制限する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記所定期間前において前記分散電源の制御に関する計画値と前記分散電源の制御に関する実績値との乖離が閾値以下である第1分散電源について、前記所定期間において前記第1分散電源の制御を制限せず、
前記所定期間前において前記分散電源の制御に関する計画値と前記前記分散電源の制御に関する実績値との乖離が閾値よりも大きい第2分散電源について、前記所定期間において前記第2分散電源の制御を制限する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電力管理装置。
【請求項6】
電力系統に接続された分散電源を有する2以上の施設を管理する管理部と、
前記電力系統の需給バランスを調整する所定期間において、前記2以上の施設の各々の需要電力を示す情報要素を含む需要メッセージを前記2以上の施設の各々から受信する受信部と、
前記所定期間において、前記需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、前記需要メッセージを受信できる第2施設が有する前記分散電源を制御する制御指示を送信する送信部と、
前記第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、前記需要メッセージに基づいて、前記制御指示の内容を決定する制御部と、を備える、電力管理システム。
【請求項7】
電力系統に接続された分散電源を有する2以上の施設を管理するステップと、
前記電力系統の需給バランスを調整する所定期間において、前記2以上の施設の各々の需要電力を示す情報要素を含む需要メッセージを前記2以上の施設の各々から受信するステップと、
前記所定期間において、前記需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、前記需要メッセージを受信できる第2施設が有する前記分散電源を制御する制御指示を送信するステップと、
前記第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、前記需要メッセージに基づいて、前記制御指示の内容を決定するステップと、を備える、電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理装置、電力管理システム及び電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施設に設置される蓄電装置などの分散電源を制御することによって、電力系統の需給バランスを調整する仕組み(以下、VPP; Virtual Power Plant)が知られている。VPPでは、アグリゲータなどの電力管理装置から分散電源に制御指示が送信される。
【0003】
さらに、電力管理装置と分散電源との間の通信の異常に備えて、電力管理装置と分散電源との間の通信が正常である状態において、通信の異常が生じたケースにおける分散電源の動作を電力管理装置が予め指示する技術も提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電力系統の需給バランスは、施設の需要電力に依存するため、電力系統の需給バランスの調整に参加する施設は、施設の需要電力を示す情報要素を含むメッセージを電力管理装置に送信することが好ましい。
【0006】
このような想定下において、通信の異常が生じたケースにおける分散電源の動作は、電力管理装置から分散電源に予め指示されるものであり、施設から電力管理装置に通知される需要電力が適切に反映されず、電力系統の需給バランスを適切に制御することができない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電力系統の需給バランスを適切に制御することを可能とする電力管理装置、電力管理システム及び電力管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示に係る電力管理装置は、電力系統に接続された分散電源を有する2以上の施設を管理する管理部と、前記電力系統の需給バランスを調整する所定期間において、前記2以上の施設の各々の需要電力を示す情報要素を含む需要メッセージを前記2以上の施設の各々から受信する受信部と、前記所定期間において、前記需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、前記需要メッセージを受信できる第2施設が有する前記分散電源を制御する制御指示を送信する送信部と、前記第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、前記需要メッセージに基づいて、前記制御指示の内容を決定する制御部と、を備える。
【0009】
開示に係る電力管理システムは、電力系統に接続された分散電源を有する2以上の施設を管理する管理部と、前記電力系統の需給バランスを調整する所定期間において、前記2以上の施設の各々の需要電力を示す情報要素を含む需要メッセージを前記2以上の施設の各々から受信する受信部と、前記所定期間において、前記需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、前記需要メッセージを受信できる第2施設が有する前記分散電源を制御する制御指示を送信する送信部と、前記第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、前記需要メッセージに基づいて、前記制御指示の内容を決定する制御部と、を備える。
【0010】
開示に係る電力管理方法は、電力系統に接続された分散電源を有する2以上の施設を管理するステップと、前記電力系統の需給バランスを調整する所定期間において、前記2以上の施設の各々の需要電力を示す情報要素を含む需要メッセージを前記2以上の施設の各々から受信するステップと、前記所定期間において、前記需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、前記需要メッセージを受信できる第2施設が有する前記分散電源を制御する制御指示を送信するステップと、前記第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、前記需要メッセージに基づいて、前記制御指示の内容を決定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力系統の需給バランスを適切に制御することを可能とする電力管理装置、電力管理システム及び電力管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力管理システム100を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る施設300を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電力管理サーバ200を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るローカル制御装置360を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
【
図7】
図7は、変更例1に係る電力管理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものである。
【0014】
[実施形態]
(電力管理システム)
以下において、電力管理システムについて説明する。
【0015】
図1に示すように、電力管理システム100は、電力管理サーバ200と、施設300と、電力会社400と、を有する。
図1では、施設300として、施設300A~施設300Cが例示されている。
【0016】
各施設300は、電力系統110に接続される。以下において、電力系統110から施設300への電力の流れを潮流と称し、施設300から電力系統110への電力の流れを逆潮流と称する。
【0017】
電力管理サーバ200、施設300及び電力会社400は、ネットワーク120に接続されている。ネットワーク120は、これらのエンティティ間の回線を提供すればよい。例えば、ネットワーク120は、インターネットである。ネットワーク120は、VPN(Virtual Private Network)などの専用回線を含んでもよい。
【0018】
電力管理サーバ200は、発電事業者、送配電事業者或いは小売事業者、リソースアグリゲータなどの事業者によって管理されるサーバである。リソースアグリゲータは、VPP(Virtual Power Plant)において、電力系統110の電力需給バランスを調整する電力事業者であってもよい。電力需給バランスの調整は、電力系統110から施設300に供給される潮流電力(施設300の需要電力とも称する)の削減電力を価値と交換する取引(以下、ネガワット取引)を含んでもよい。電力需給バランスの調整は、施設300から電力系統110に供給される逆潮流電力の増大電力を価値と交換する取引を含んでもよい。以下において、電力需給バランスの調整要請は節電要請と称されてもよい。リソースアグリゲータは、VPPにおいて、発電事業者、送配電事業者及び小売事業者などに逆潮流電力を提供する電力事業者であってもよい。
【0019】
電力管理サーバ200は、施設300に設けられるローカル制御装置360に対して、施設300に設けられる分散電源(例えば、太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)に対する制御を指示する制御メッセージを送信する。例えば、電力管理サーバ200は、潮流電力の制御を要求する潮流制御メッセージ(例えば、DR; Demand Response)を送信してもよく、逆潮流電力の制御を要求する逆潮流制御メッセージを送信してもよい。さらに、電力管理サーバ200は、分散電源の動作状態を制御する電源制御メッセージを送信してもよい。潮流電力又は逆潮流電力の制御度合いは、潮流電力又は逆潮流電力の制御によって達成すべき目標値(例えば、○○kW)、基準値(例えば、ベースライン電力)に対する差異を表す絶対値(例えば、○○kWの減少又は○○kWの増大)で表されてもよく、基準値(例えば、ベースライン電力)に対する差異を表す相対値(例えば、○○%の減少、○○%の増大)で表されてもよい。或いは、潮流電力又は逆潮流電力の制御度合いは、2以上のレベルで表されてもよい。潮流電力又は逆潮流電力の制御度合いは、現在の電力需給バランスによって定められる電力料金(RTP; Real Time Pricing)によって表されてもよく、過去の電力需給バランスによって定められる電力料金(TOU; Time Of Use)によって表されてもよい。
【0020】
施設300は、
図2に示すように、太陽電池装置310と、蓄電装置320と、燃料電池装置330と、負荷機器340と、ローカル制御装置360と、電力計380と、電力計390と、を有する。
【0021】
太陽電池装置310は、太陽光などの光に応じて発電を行う分散電源である。太陽電池装置310は、逆潮流が許容される分散電源の一例であってもよい。太陽電池装置310は、固定買取価格(FIT; Feed-in Tariff)が適用され得る分散電源の一例であってもよい。太陽電池装置310は、固定買取価格の適用期間が満了した分散電源であってもよい。例えば、太陽電池装置310は、PCS(Power Conditioning System)及び太陽光パネルによって構成される。
【0022】
ここで、太陽電池装置310から出力される電力は、太陽光などの光の受光量によって変動し得る。従って、太陽電池装置310の発電効率を考慮した場合には、太陽電池装置310から出力される電力は、太陽光パネルの受光量によって変動し得る可変電力である。
【0023】
蓄電装置320は、電力の充電及び電力の放電を行う分散電源である。蓄電装置320は、逆潮流が許容されない分散電源の一例であってもよい。蓄電装置320は、固定買取価格が適用され得ない分散電源の一例であってもよい。例えば、蓄電装置320は、PCS及び蓄電セルによって構成される。
【0024】
燃料電池装置330は、燃料を用いて発電を行う分散電源である。燃料電池装置330は、逆潮流が許容されない分散電源の一例であってもよい。燃料電池装置330は、固定買取価格が適用されない分散電源の一例であってもよい。例えば、燃料電池装置330は、PCS及び燃料電池セルによって構成される。
【0025】
例えば、燃料電池装置330は、固体酸化物型燃料電池(SOFC; Solid Oxide Fuel Cell)であってもよく、固体高分子型燃料電池(PEFC; Polymer Electrolyte Fuel Cell)であってもよく、リン酸型燃料電池(PAFC; Phosphoric Acid Fuel Cell)であってもよく、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC; Molten Carbonate Fuel Cell)であってもよい。
【0026】
実施形態において、太陽電池装置310、蓄電装置320及び燃料電池装置330は、VPPに用いられる調整電源であってもよい。調整電源は、施設300に設けられる分散電源の中でVPPに寄与する電源である。
【0027】
負荷機器340は、電力を消費する機器である。例えば、負荷機器340は、空調機器、照明機器、AV(Audio Visual)機器などである。
【0028】
ローカル制御装置360は、施設300の電力を管理する装置(EMS; Energy Management System)である。ローカル制御装置360は、太陽電池装置310の動作状態を制御してもよく、施設300に設けられる蓄電装置320の動作状態を制御してもよく、施設300に設けられる燃料電池装置330の動作状態を制御してもよい。ローカル制御装置360の詳細については後述する(
図4を参照)。
【0029】
実施形態において、電力管理サーバ200とローカル制御装置360との間の通信は、第1プロトコルに従って行われる。一方で、ローカル制御装置360と分散電源との間の通信は、第1プロトコルとは異なる第2プロトコルに従って行われる。例えば、第1プロトコルとしては、Open ADR(Automated Demand Response)に準拠するプロトコル、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。例えば、第2プロトコルは、ECHONET Lite(登録商標)に準拠するプロトコル、SEP(Smart Energy Profile)2.0、KNX、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。なお、第1プロトコルと第2プロトコルは異なっていればよく、例えば、両方が独自の専用プロトコルであっても異なる規則で作られたプロトコルであればよい。但し、第1プロトコル及び第2プロトコルは同一の規則で作られたプロトコルであってもよい。
【0030】
電力計380は、電力系統110から施設300への潮流電力及び施設300から電力系統110への逆潮流電力を測定する基幹電力計の一例である。例えば、電力計380は、電力会社400に帰属するスマートメータである。
【0031】
ここで、電力計380は、単位時間(例えば、30分)毎に、単位時間における潮流電力又は逆潮流電力の積算値を示す情報要素を含むメッセージをローカル制御装置360に送信する。電力計380は、自律的にメッセージを送信してもよく、ローカル制御装置360の要求に応じてメッセージを送信してもよい。電力計380は、単位時間毎に、単位時間における潮流電力又は逆潮流電力を示す情報要素を含むメッセージを電力管理サーバ200に送信してもよい。
【0032】
電力計390は、各分散電源の電力を測定する個別電力計の一例である。電力計390は、分散電源のPCSの出力端に設けられてもよく、分散電源の一部であると考えてもよい。
図2では、電力計390として、電力計391と、電力計392と、電力計393と、が設けられる。電力計391は、太陽電池装置310の出力電力を測定する。電力計392は、蓄電装置320の放電電力を測定する。電力計392は、蓄電装置320の充電電力を測定してもよい。電力計393は、燃料電池装置330の個別出力電力を測定する。
【0033】
ここで、電力計390は、単位時間よりも短い間隔(例えば、1分)で、分散電源の電力を示す情報要素を含むメッセージをローカル制御装置360に送信してもよい。分散電源の個別出力電力は、瞬時値によって表されてもよく、積算値によって表されてもよい。電力計390は、自律的にメッセージを送信してもよく、ローカル制御装置360の要求に応じてメッセージを送信してもよい。
【0034】
図1に戻って、電力会社400は、電力系統110などのインフラストラクチャーを提供するエンティティであり、例えば、発電事業者又は送配電事業者である。電力会社400は、電力管理サーバ200を管理するエンティティに対して、各種の業務を委託してもよい。電力会社400は、電力系統110の需給バランスの調整を要請する要請メッセージを電力管理サーバ200に送信してもよい。
【0035】
(電力管理サーバ)
以下において、電力管理サーバについて説明する。
図3に示すように、電力管理サーバ200は、管理部210と、通信部220と、制御部230と、を有する。電力管理サーバ200は、VTN(Virtual Top Node)の一例であってもよい。実施形態では、電力管理サーバ200は、電力管理装置の一例である。
【0036】
管理部210は、不揮発性メモリ又は/及びHDDなどの記憶媒体によって構成されており、施設300に関する情報を管理する。例えば、施設300に関する情報は、施設300に設けられる分散電源の種別、施設300に設けられる分散電源のスペックなどである。スペックは、太陽電池装置310の定格発電電力、蓄電装置320の定格充電電力、蓄電装置320の定格放電電力、燃料電池装置330の定格出力電力を含んでもよい。スペックは、蓄電装置320の定格容量、最大充放電電力などを含んでもよい。
【0037】
実施形態では、管理部210は、電力系統110に接続された分散電源を有する2以上の施設300を管理する管理部を構成する。
【0038】
通信部220は、通信モジュールによって構成されており、ネットワーク120を介してローカル制御装置360と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5G、6Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0039】
上述したように、通信部220は、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージをローカル制御装置360に送信する。通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答をローカル制御装置360から受信する。
【0040】
実施形態では、通信部220は、電力系統110の需給バランスを調整する所定期間において、2以上の施設300の各々の需要電力を示す情報要素を含む需要メッセージを2以上の施設300の各々から受信する受信部を構成する。通信部220は、分散電源の制御周期(例えば、1分)で需要メッセージを受信してもよい。
【0041】
所定期間は、潮流電力(需要電力)の抑制が要請されるDR期間であってもよく、逆潮流電力(出力電力)の抑制が要請される出力抑制期間であってもよい。施設300の需要電力は、電力計380によって測定される潮流電力であってもよい。需要メッセージは、電力計380から受信されてもよく、ローカル制御装置360から受信されてもよい。
【0042】
実施形態では、通信部220は、所定期間において、需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、需要メッセージを受信できる第2施設が有する分散電源を制御する制御指示を送信する送信部を構成する。通信部220は、分散電源の制御周期(例えば、1分)で制御指示を送信してもよい。
【0043】
特に限定されるものではないが、需要メッセージを受信できない要因は、ネットワーク120の異常に起因する要因を含んでもよく、施設300(ローカル制御装置360など)の異常に起因する要因を含んでもよい。需要メッセージを受信できない要因は、施設300内の通信の異常(例えば、ローカル制御装置360と電力計380との間の通信の異常、ローカル制御装置360と分散電源との間の通信の異常など)に起因する要因を含んでもよく、電力計380の異常に起因する要因を含んでもよく、分散電源の異常に起因する要因を含んでもよい。
【0044】
制御部230は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路及び又はディスクリート回路(discrete circuits)など)によって構成されてもよい。
【0045】
制御部230は、電力管理サーバ200に設けられる各構成を制御する。例えば、制御部230は、制御メッセージの送信によって、施設300に設けられるローカル制御装置360に対して、施設300に設けられる分散電源に対する制御を指示する。制御メッセージは、上述したように、潮流制御メッセージであってもよく、逆潮流制御メッセージであってもよく、電源制御メッセージであってもよい。
【0046】
実施形態では、制御部230は、第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、需要メッセージに基づいて、制御指示の内容を決定してもよい。特定挙動は、需要電力に影響する挙動であればよく、分散電源(例えば、蓄電装置320)の挙動であってもよい。
【0047】
例えば、制御部230は、要請メッセージによって要請された総調整電力(例えば、XXkWの削減、XX%の削減など)から、特定挙動によって第1施設で調整されると想定される調整電力(例えば、YYkWの削減、YY%の削減など)を除いた調整電力(ZZ(=XX-YY)kW、ZZ(=XX-YY)%など)に基づいて、第2施設に対する制御指示の制御内容を決定してもよい。すなわち、制御部230は、特定挙動によって第1施設で調整されると想定される調整電力を除いた調整電力(ZZ(=XX-YY)kW、ZZ(=XX-YY)%など)を第2施設で負担するように制御内容を決定する。特定挙動を想定する方法としては、以下に示す方法が考えられる。
【0048】
第1に、制御部230は、第1施設の需要電力の計画に基づいて、特定挙動を想定してもよい。第1施設の需要電力の計画は、所定期間を開始する前に第1施設から通知されてもよく、予め定められていてもよい。第1施設の需要電力の計画は、分散電源の運転計画を含んでもよい。分散電源の運転計画は、蓄電装置320の充放電計画を含んでもよい。蓄電装置320の充放電計画は、施設300の需要電力を目標電力(例えば、0kW)に維持する計画を含んでもよい。目標電力は、時間帯毎に異なってもよい。なお、特定挙動は、第1施設の需要電力の計画に従って第1施設の需要電力を調整する挙動であると考えてもよい。
【0049】
第2に、制御部230は、第1施設が有する分散電源について所定期間の開始前に指示した制御内容に基づいて、特定挙動を想定してもよい。制御内容は、施設300の需要電力を目標電力(例えば、0kW)に維持する内容を含んでもよい。目標電力は、時間帯毎に異なってもよい。なお、特定挙動は、所定期間の開始前に指示した制御内容に従って第1施設の需要電力を調整する挙動であると考えてもよい。
【0050】
ここで、制御部230は、第2施設については、第2施設から受信する需要メッセージに基づいて、第2施設の分散電源を制御する制御指示の制御内容を決定する。言い換えると、制御部230は、需要メッセージに基づいた制御指示を制御周期毎に送信にすることによって分散電源を逐次的に制御する。このような逐次的な制御は、フィードバック制御であると考えてもよい。このような構成によれば、電力管理サーバ200で管理すべき施設300の全体として、要請メッセージによって要請された総需要電力の目標値と各施設300の総需要電力の実績値との差異を逐次的に吸収することができる。
【0051】
(ローカル制御装置)
以下において、ローカル制御装置について説明する。
図4に示すように、ローカル制御装置360は、第1通信部361と、第2通信部362と、制御部363とを有する。ローカル制御装置360は、VEN(Virtual End Node)の一例であってもよい。
【0052】
第1通信部361は、通信モジュールによって構成されており、ネットワーク120を介して電力管理サーバ200と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5G、6Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0053】
上述したように、第1通信部361は、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、第1通信部361は、第1プロトコルに従って第1メッセージを電力管理サーバ200から受信する。第1通信部361は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答を電力管理サーバ200に送信する。
【0054】
第2通信部362は、通信モジュールによって構成されており、分散電源と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5G、6Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3又は独自の専用プロトコルなどの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0055】
上述したように、第2通信部362は、第2プロトコルに従って通信を行う。例えば、第2通信部362は、第2プロトコルに従って第2メッセージを分散電源に送信する。第2通信部362は、第2プロトコルに従って第2メッセージ応答を分散電源から受信する。
【0056】
例えば、第2通信部362は、潮流電力又は逆潮流電力を特定する情報要素を含むメッセージを電力計380から受信してもよい。第2通信部362は、各分散電源の電力を特定する情報要素を含むメッセージを電力計390から受信してもよい。
【0057】
制御部363は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路及び又はディスクリート回路(discrete circuits)など)によって構成されてもよい。
【0058】
制御部363は、ローカル制御装置360に設けられる各構成を制御する。具体的には、制御部363は、施設300の電力を制御するために、第2メッセージの送信及び第2メッセージ応答の受信によって、分散電源の動作状態の設定を機器に指示する。制御部363は、施設300の電力を管理するために、第2メッセージの送信及び第2メッセージ応答の受信によって分散電源の情報の報告を分散電源に指示してもよい。
【0059】
実施形態では、制御部363は、電力管理サーバ200から制御指示を受信することができない場合に、上述した特定挙動で分散電源を制御してもよい。
【0060】
(電力管理方法)
以下において、電力管理方法について説明する。ここでは、所定期間がDR期間であるケースについて例示する。
【0061】
第1に、第1施設の需要電力の計画に基づいて特定挙動が想定されるケースについて、
図5を参照しながら説明する。
【0062】
図5に示すように、ステップS10において、電力管理サーバ200は、要請メッセージを受信する。要請メッセージは、電力会社400から受信されてもよい。
【0063】
ステップS11Aにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Aの需要電力の計画を施設300Aから受信する。ステップS11Bにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Bの需要電力の計画を施設300Bから受信する。ステップS11Cにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Cの需要電力の計画を施設300Cから受信する。
【0064】
ここで、ステップS11A~ステップS11Cの処理は、ステップS10の処理の前に行われてもよく、ステップS10の処理の後に行われてもよい。ステップS11A~ステップS11Cの処理は、DR期間の開始前に行われてもよく、DR期間の開始後に行われてもよい。
【0065】
ステップS20Aにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Aから受信し、ステップS20Bにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Bから受信する。一方で、ステップS20Cにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Cから受信することができない。
【0066】
図5においては、施設300A及び施設300Bは、第2施設の一例であり、施設300Cは、第1施設の一例である。
【0067】
ステップS21Xにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Cから受信する電力需要の計画に基づいて、施設300Cの特定挙動を想定する。
【0068】
ステップS22Xにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Cの需要電力が特定挙動で調整される想定で、需要メッセージに基づいて、制御指示の内容を決定する。
【0069】
ステップS23Aにおいて、電力管理サーバ200は、制御指示を施設300Aに送信し、ステップS23Bにおいて、電力管理サーバ200は、制御指示を施設300Bに送信する。施設300Cは、特定挙動に基づいて分散電源を制御することによって施設300Cの需要電力を調整する。
【0070】
図5では説明の簡略化のために省略しているが、ステップS20A~ステップS20C、ステップS21X、ステップS22X、ステップS23A~ステップS23Bの処理は、DR期間において繰り返されてもよい。このようなケースにおいて、施設300Cから需要メッセージを受信可能になった場合には、施設300Cに制御指示が送信されてもよい。
【0071】
第2に、第1施設が有する分散電源について所定期間の開始前に指示した制御内容に基づいて特定挙動が想定されるケースについて、
図6を参照しながら説明する。
【0072】
図6に示すように、ステップS10において、電力管理サーバ200は、要請メッセージを受信する。要請メッセージは、電力会社400から受信されてもよい。
【0073】
ステップS12Aにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Aの分散電源に対する制御指示を施設300Aに送信する。ステップS12Bにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Bの分散電源に対する制御指示を施設300Bに送信する。ステップS12Cにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Cの分散電源に対する制御指示を施設300Cに送信する。
【0074】
ここで、ステップS12A~ステップS12Cの処理は、ステップS10の処理の前に行われてもよく、ステップS10の処理の後に行われてもよい。ステップS12~ステップS12Cの処理は、DR期間の開始前に行われる。
【0075】
ステップS20Aにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Aから受信し、ステップS20Bにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Bから受信する。一方で、ステップS20Cにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Cから受信することができない。
【0076】
図6においては、施設300A及び施設300Bは、第2施設の一例であり、施設300Cは、第1施設の一例である。
【0077】
ステップS21Yにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Cの分散電源についてDR期間の開始前に指示した制御内容に基づいて、施設300Cの特定挙動を想定する。
【0078】
ステップS22Yにおいて、電力管理サーバ200は、施設300Cの需要電力が特定挙動で調整される想定で、需要メッセージに基づいて、制御指示の内容を決定する。
【0079】
ステップS23Aにおいて、電力管理サーバ200は、制御指示を施設300Aに送信し、ステップS23Bにおいて、電力管理サーバ200は、制御指示を施設300Bに送信する。施設300Cは、特定挙動に基づいて分散電源を制御することによって施設300Cの需要電力を調整する。
【0080】
図6では説明の簡略化のために省略しているが、ステップS20A~ステップS20C、ステップS21Y、ステップS22Y、ステップS23A~ステップS23Bの処理は、DR期間において繰り返されてもよい。このようなケースにおいて、施設300Cから需要メッセージを受信可能になった場合には、施設300Cに制御指示が送信されてもよい。
【0081】
(作用及び効果)
実施形態では、電力管理サーバ200は、需要メッセージを受信できない第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、需要メッセージに基づいて、制御指示の内容を決定し、需要メッセージを受信できない第1施設を除外して、需要メッセージを受信できる第2施設が有する分散電源を制御する制御指示を送信する。このような構成によれば、電力管理サーバ200は、電力管理サーバ200で調整すべき施設300の需要電力を需要メッセージに基づいて把握しつつ、需要メッセージに基づいた制御指示を制御周期毎に送信することによって分散電源を逐次的に制御する前提下において、需要メッセージを受信できないケースを想定した場合であっても、電力系統110の需給バランスを適切に制御することができる。
【0082】
実施形態では、需要メッセージを受信できない第1施設の需要電力が特定挙動で調整される想定で、第2施設の分散電源に対する制御指示の内容が決定されるため、要請メッセージ(例えば、DR要請)に対応する施設として第1施設をカウントすることができる。
【0083】
[変更例1]
以下において、実施形態の変更例1について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0084】
変更例1では、電力管理サーバ200は、所定期間の開始前において計画値と実績値との乖離が閾値以下であるか否かに基づいて、分散電源(例えば、蓄電装置320)の制御を制限するか否かを判定する。
【0085】
分散電源の制御の制限は、分散電源の制御によって調整される需要電力に関する調整電力の大きさの制限であってもよい。制限のレベルは、乖離の大きさによって異なってもよい。例えば、乖離が大きいほど、調整電力の大きさが小さくなるように制限のレベルが定められてもよい。
【0086】
このようなケースにおいて、乖離としては、以下に示すオプションが考えられる。
【0087】
第1オプションでは、乖離は、需要電力に関する計画値と需要電力に関する実績値との乖離であってもよい。電力管理サーバ200は、所定期間前において需要電力に関する計画値と需要電力に関する実績値との乖離が閾値以下である第3施設について、所定期間において第3施設が有する分散電源の制御を制限しなくてもよい。一方で、電力管理サーバ200は、所定期間前において需要電力に関する計画値と需要電力に関する実績値との乖離が閾値よりも大きい第4施設について、所定期間において第4施設が有する分散電源の制御を制限してもよい。
【0088】
なお、需要電力は、施設300の消費電力によって影響され、分散電源(例えば、太陽電池装置310)の出力電力によって影響され、かつ、分散電源(例えば、蓄電装置320)の制御によって影響される。
【0089】
例えば、需要電力に関する計画値は、分散電源の制御において目標とされる需要電力の目標値であってもよい。従って、乖離は、分散電源の制御によって実現された需要電力の実績値と目標値との乖離であってもよい。乖離は、計画値に対する実績値の差異の絶対値(乖離値)で表されてもよく、計画値に対する実績値の差異の比率(乖離率)で表されてもよい。乖離は、所定期間の開始前における観測期間において、乖離値又は乖離率の平均値であってもよい。
【0090】
第1オプションにおいて、第3施設は、所定期間において制御される施設であり、上述した第2施設に含まれる施設である。同様に、第4施設は、所定期間において制御される施設であり、上述した第2施設に含まれる施設である。
【0091】
第2オプションでは、乖離は、分散電源の制御に関する計画値と分散電源の制御に関する実績値との乖離であってもよい。電力管理サーバ200は、所定期間前において分散電源の制御に関する計画値と分散電源の制御に関する実績値との乖離が閾値以下である第1分散電源について、所定期間において第1分散電源の制御を制限しなくてもよい。電力管理サーバ200は、所定期間前において分散電源の制御に関する計画値と分散電源の制御に関する実績値との乖離が閾値よりも大きい第2分散電源について、所定期間において第2分散電源の制御を制限してもよい。
【0092】
例えば、分散電源の制御に関する計画値は、分散電源の制御の目標値であってもよい。従って、乖離は、分散電源の制御の実績値と目標値との乖離であってもよい。乖離は、計画値に対する実績値の差異の絶対値(乖離値)で表されてもよく、計画値に対する実績値の差異の比率(乖離率)で表されてもよい。乖離は、所定期間の開始前における観測期間において、乖離値又は乖離率の平均値であってもよい。
【0093】
第2オプションにおいて、第1分散電源は、所定期間において制御され得る分散電源であり、上述した第2施設が有する分散電源である。第2分散電源は、所定期間において制御され得る分散電源であり、上述した第2施設が有する分散電源である。
【0094】
第3オプションでは、第1オプション及び第2オプションが組み合わされてもよい。例えば、第3オプションでは、第1オプションに関する乖離が第1閾値よりも大きい第4施設について、第2オプションに関する乖離が第2閾値よりも大きい第2分散電源の制御が制限されてもよい。
【0095】
第3オプションで用いる第1閾値は、第1オプションで用いる閾値と異なってもよい。第3オプションで用いる第2閾値は、第2オプションで用いる閾値と異なってもよい。第2閾値は、第1オプションに関する乖離の大きさに応じて変更されてもよい。例えば、第1オプションに関する乖離が大きいほど、第2閾値として大きな値が設定されてもよい。このような構成によれば、需要電力について計画値と実績値の乖離が大きい第4施設において、分散電源の制御が制限されにくくなるため、需要電力について計画値と実績値の乖離が大きい要因を分析しやすくなる。
【0096】
(電力管理方法)
以下において、電力管理方法について説明する。ここでは、所定期間がDR期間であるケースについて例示する。
【0097】
図7に示すように、ステップS30において、電力管理サーバ200は、各施設300の分散電源に対する制御指示を各施設300に送信する。
【0098】
ステップS31において、電力管理サーバ200は、実績情報を各施設300から受信する。実績情報は、需要電力に関する実績値を含んでもよく、分散電源の制御に関する実績値を含んでもよい。
【0099】
ステップS10において、電力管理サーバ200は、要請メッセージを受信する。要請メッセージは、電力会社400から受信されてもよい。
【0100】
ステップS40Aにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Aから受信し、ステップS40Bにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Bから受信する。一方で、ステップS40Cにおいて、電力管理サーバ200は、DR期間において需要メッセージを施設300Cから受信することができない。
【0101】
図7においては、施設300A及び施設300Bは、第2施設の一例であり、施設300Cは、第1施設の一例である。
【0102】
ステップS41において、電力管理サーバ200は、施設300Cから受信する電力需要の計画に基づいて、施設300Cの特定挙動を想定する。
【0103】
ステップS42において、電力管理サーバ200は、所定期間の開始前において計画値と実績値との乖離が閾値以下であるか否かに基づいて、分散電源(例えば、蓄電装置320)の制御を制限するか否かを判定する。オプション1~オプション3で説明したように、乖離は、需要電力に関する乖離であってもよく、分散電源の制御に関する乖離であってもよく、これらの組合せであってもよい。
【0104】
ここでは、施設300Aについて分散電源の制御を制限せずに、施設300Bについて分散電源の制御を制限するケースについて例示する。施設300Aは、第3施設の一例であり、施設300Bは、第4施設の一例である。施設300Aの分散電源は、第1分散電源の一例であり、施設300Bの分散電源は、第2分散電源の一例である。
【0105】
ステップS43において、電力管理サーバ200は、施設300Cの需要電力が特定挙動で調整される想定で、需要メッセージに基づいて、制御指示の内容を決定する。さらに、電力管理サーバ200は、分散宣言の制御を制限するか否かに基づいて、制御指示の内容を決定する。
【0106】
ステップS44Aにおいて、電力管理サーバ200は、分散電源の制御が制限されない制御内容を含む制御指示を施設300Aに送信する。ステップS44Bにおいて、電力管理サーバ200は、分散電源の制御が制限された制御内容を含む制御指示を施設300Bに送信する。施設300Cは、特定挙動に基づいて分散電源を制御することによって施設300Cの需要電力を調整する。
【0107】
図7では説明の簡略化のために省略しているが、ステップS40A~ステップS40C、ステップS41、ステップS42、ステップS43、ステップS44A~ステップS44Bの処理は、DR期間において繰り返されてもよい。このようなケースにおいて、施設300Cから需要メッセージを受信可能になった場合には、施設300Cに制御指示が送信されてもよい。施設300Cの分散電源の制御を制限するか否かは、所定期間の開始前において計画値と実績値との乖離が閾値以下であるか否かに基づいて判断される。
【0108】
(作用及び効果)
変更例1では、電力管理サーバ200は、所定期間の開始前において計画値と実績値との乖離が閾値よりも大きい場合に、分散電源(例えば、蓄電装置320)の制御を制限する。このような構成によれば、計画値と実績値との乖離が閾値よりも大きい第4施設が有する分散電源又は第2分散電源が制御指示に従わないことに起因して、電力系統110の需給バランスの調整が計画通りに実行されないリスクを低減することができる。
【0109】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0110】
上述した開示では、電力管理サーバ200は、第1施設の需要電力の計画に基づいて、特定挙動を想定してもよい。このようなケースにおいて、第1施設の需要電力の計画は、第1施設の需要電力を学習することによって生成された予測モデルを用いて特定されてもよい。なお、特定挙動は、予測モデルを用いて特定される挙動であると考えてもよい。
【0111】
上述した開示では、電力管理サーバ200は、第1施設が有する分散電源について所定期間の開始前に指示した制御内容に基づいて、特定挙動を想定してもよい。このようなケースにおいて、制御内容は、第1施設の需要電力の予測結果に基づいて決定されてもよい。第1施設の需要電力の予測結果は、第1施設の需要電力を学習することによって生成された予測モデルを用いて特定されてもよい。なお、特定挙動は、予測モデルを用いて特定される挙動であると考えてもよい。
【0112】
これらのケースにおいて、予測モデルは、需要電力の実績情報及び需要電力に影響する学習パラメータの学習によって生成されてもよい。学習パラメータは、少なくとも時間を特定するパラメータを含んでもよい。学習パラメータは、曜日、月、季節、天候、気温、湿度などを特定するパラメータを含んでもよい。予測モデルは、太陽電池装置310の発電電力の実績情報及び発電電力に影響する学習パラメータの学習によって生成されてもよい。学習パラメータは、太陽電池装置310の発電電力に影響する天候、気温、湿度、日射量などを特定するパラメータを含んでもよい。
【0113】
上述した開示では、電力管理サーバ200によって制御される分散電源(調整電源)として、蓄電装置320について主として例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。電力管理サーバ200によって制御される分散電源は、燃料電池装置330を含んでもよい。
【0114】
上述した開示では、逆潮流が許容される分散電源として太陽電池装置310を例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。逆潮流が許容される分散電源は、再生可能エネルギーを利用して電力を出力する分散電源を含んでもよい。このような分散電源は、風力発電装置、水力発電装置、地熱発電装置及びバイオマス発電装置の中から選択された1以上の分散電源を含んでもよい。なお、蓄電装置320の放電電力の逆潮流が許容されてもよく、燃料電池装置330の出力電力の逆潮流が許容されてもよい。
【0115】
上述した開示では特に触れていないが、蓄電装置320は、定置型の蓄電装置を含んでもよく、電気自動車に搭載される蓄電装置を含んでもよい。
【0116】
上述した開示では、ローカル制御装置360が施設300に設けられるケースについて例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。ローカル制御装置360は、ネットワーク120上に設けられるサーバなどによって実現されるクラウドサービスによって提供されてもよい。
【0117】
上述した開示では特に触れていないが、電力とは、瞬時値(kW)であってもよく、単位時間の積算値(kWh)であってもよい。
【符号の説明】
【0118】
100…電力管理システム、110…電力系統、120…ネットワーク、200…電力管理サーバ、210…管理部、220…通信部、230…制御部、300…施設、310…太陽電池装置、320…蓄電装置、330…燃料電池装置、340…負荷機器、360…ローカル制御装置、361…第1通信部、362…第2通信部、363…制御部、380…電力計、390…電力計、392…電力計、393…電力計、400…電力会社