(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058632
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】液体医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230418BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230418BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230418BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230418BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230418BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230418BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230418BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230418BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230418BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/18
A61K47/10
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P19/08
A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023018934
(22)【出願日】2023-02-10
(62)【分割の表示】P 2019548380の分割
【原出願日】2018-03-06
(31)【優先権主張番号】17159460.9
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519111280
【氏名又は名称】アレコル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ルカ バディアリ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ジェリング
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェゼク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アダリムマブの新規液体医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、アダリムマブの新規液体医薬組成物に関し、これはアダリムマブ又はそのバイオシミラー、EDTA、及びグリセロールなどの小型ポリオール安定化剤を含む。このような成分の組合せは、当該技術分野において公知のものと同等の又はそれよりも改善された安定性(例えば、貯蔵時及びストレスに曝露された場合)を、より少ない成分と共に有する製剤を供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体医薬組成物であって:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;及び
(c)C2-C5ポリオール:を含有する、液体医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリオールが、C2-C4ポリオール、好適にはグリセロールである、請求項1記載の液
体医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、緩衝系、好適には酢酸緩衝系、好適には塩化ナトリウムを生成せずに形
成された酢酸緩衝系、好適には大量の酢酸の塩基化により形成された酢酸緩衝系を更に含
有する、請求項1又は2記載の液体医薬組成物。
【請求項4】
アダリムマブ25~125mg/mlを含有する、請求項1~3のいずれか一項記載の液体医薬組成
物。
【請求項5】
前記組成物が、等張化剤を含まない、実質的に含まない、又は最大でも40mMを含有し、
ここで好適には等張化剤が、塩化ナトリウムであり;及び/又は
ここでこの液体医薬組成物が、アルギニン、好適にはL-アルギニンを含有する、請求項
1~4のいずれか一項記載の液体医薬組成物。
【請求項6】
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;
(c)C2-C5ポリオール;
(d)緩衝系;及び
(e)界面活性剤:を含有し、該組成物が、pH4.0~6.0を有する、請求項1記載の液体医薬
組成物。
【請求項7】
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;
(c)C2-C4ポリオール;
(d)酢酸緩衝系;
(e)塩化ナトリウム及び/又はアルギニン;並びに
(f)非イオン性界面活性剤:を含有し、
ここで該組成物が、pH4.8~5.4を有する、請求項6記載の液体医薬組成物。
【請求項8】
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;
(c)C2-C4ポリオール;
(d)酢酸緩衝系;及び
(e)非イオン性界面活性剤:を含有し、
ここで該組成物が、pH4.9~5.4を有し、且つ該組成物が、塩化ナトリウムを含まないか
又は実質的に含まない、請求項6記載の液体医薬組成物。
【請求項9】
(a)25~125mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.01~10mMのEDTA;
(c)10~1000mMのグリセロール又はプロピレングリコール;
(d)5~10mMの酢酸緩衝系、好ましくは酢酸ナトリウム緩衝液;
(e)20~40mMの塩化ナトリウム;及び
(f)0.5~2mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:からなり、ここで該組成物
が、pH4.8~5.3を有するか、或いは
(a)25~125mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.01~10mMのEDTA;
(c)10~1000mMのグリセロール又はプロピレングリコール;
(d)5~10mMの酢酸緩衝系、好ましくは酢酸ナトリウム緩衝液;及び
(e)0.5~2mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:からなり、ここで該組成物
が、pH4.9~5.4を有するか、或いは
(a)25~125mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.01~10mMのEDTA;
(c)10~1000mMのグリセロール又はプロピレングリコール;
(d)10~80mMのアルギニン;
(e)5~10mMの酢酸緩衝系、好ましくは酢酸ナトリウム緩衝液;及び
(f)0.5~2mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:からなり、ここで該組成物
が、pH4.9~5.4を有する、請求項6記載の液体医薬組成物。
【請求項10】
(a)100mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.1mMのEDTA;
(c)200mMのグリセロール又はプロピレングリコール;
(d)8mMの酢酸緩衝系、好ましくは酢酸ナトリウム緩衝液;
(e)30mMの塩化ナトリウム;及び
(f)1mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:からなり、ここで該組成物が、pH
5.0(好適には±0.3)を有するか、或いは
(a)100mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.1mMのEDTA;
(c)200mMのグリセロール又はプロピレングリコール;
(d)8mMの酢酸緩衝系、好ましくは酢酸ナトリウム緩衝液;及び
(e)1mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:からなり、ここで該組成物が、pH
5.2(好適には±0.3)を有するか、或いは
(a)100mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.1mMのEDTA;
(c)200mMのグリセロール又はプロピレングリコール;
(d)30mMのアルギニン;
(e)8mMの酢酸緩衝系、好ましくは酢酸ナトリウム緩衝液;及び
(f)1mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:からなり、ここで該組成物が、pH
5.2(好適には±0.3)を有するか、或いは、
(a)100mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.1mMのEDTA;
(c)200mMのグリセロール又はプロピレングリコール;
(d)60mMのアルギニン;
(e)8mMの酢酸緩衝系、好ましくは酢酸ナトリウム緩衝液;及び
(f)1mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:からなり、ここで該組成物が、pH
5.2(好適には±0.3)を有する、請求項9記載の液体医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項記載の液体医薬組成物を含有する、薬物送達装置。
【請求項12】
疾患又は障害の治療における使用のための、請求項1~10のいずれか一項記載の液体医
薬組成物。
【請求項13】
関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、汗腺
膿瘍、ブドウ膜炎及び/又は若年性特発性関節炎の治療における使用のための、請求項1
~10のいずれか一項記載の液体医薬組成物。
【請求項14】
方法が、アダリムマブ、EDTA及びC2-C5ポリオールを一緒に混合することを含む、液体
医薬組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項記載の液体医薬組成物をフリーズドライすることにより入
手可能な固形組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(緒言)
本発明は、新規タンパク質製剤に関する。特に、本発明は、アダリムマブの液体医薬組
成物、その組成物の製造方法、その組成物を含むキット、その組成物を含むパッケージ、
そのパッケージの製造方法、並びにその組成物及び/又はパッケージを使用する治療方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
関節リウマチ、乾癬及び他の自己免疫疾患などの腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)-関連
自己免疫疾患の治療は、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標)、Abbott Corporation)などのFD
Aが承認した薬物の使用により達成されている。アダリムマブは、ヒトTNF-α活性を阻害
することにより、TNF受容体の活性化を妨害し、これにより自己免疫疾患に関連した炎症
反応を下方制御する、ヒトモノクローナル抗体である。アダリムマブに関して承認された
医学的適応症としては、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍
性大腸炎、中度から重度の慢性乾癬及び若年性特発性関節炎が挙げられる。
【0003】
アダリムマブは一般に、皮下注射を介して患者へ送達され、従って液体形状で、典型的
にはバイアル、予め充填されたシリンジ、又は予め充填された「ペン式装置」などのパッ
ケージ中で提供される。市販のペン式装置(HUMIRA(登録商標)Pen)は一般に、固定針(灰色
の天然ゴム又はラテックス非含有型のいずれか)及び針カバーを備えた、40mgアダリムマ
ブの滅菌製剤(下記参照)の0.8mLが予め充填された、1mLの充填済みガラス製シリンジを含
む。アダリムマブの市販の製剤(HUMIRA(登録商標))は、以下の成分を含む:
【表1】
更に、アダリムマブの40mg/0.4mL又は80mg/80mL(すなわち、100mg/mL)のいずれかを提
供する充填済みのシリンジ又はペンが、最近市販されている。これらの製剤は、以下の成
分を含む:
【表2】
【0004】
アダリムマブ及びその製造方法は、D2E7としてWO97/29131(BASF)において、及び当該技
術分野において別所に説明されている。
【0005】
アダリムマブの前述の市販の製剤は、安定している(少なくともある程度は)が、関連抗
体は、長期間又はストレス条件下では不安定であり得るために、従って該製剤の長期貯蔵
を妨げる。そのようなこの製剤の分解は、以下を含む、様々な要因によるものであり得る
:
・物理的作用、例えば
○関連タンパク質分子の凝集の阻害(特に気液境界で凝集が起こる場合に、おそらくTwe
en 80により果たされる機能)の不適切さ;
○沈殿の阻害の不適切さ;
○水と空気の境界での又は何らかのパッケージ材料の接触表面での関連タンパク質分子
の吸着の阻害(おそらくTween 80により果たされる機能)の不適切さ;
○タンパク質アンフォールディングの阻害の不適切さ;
○浸透圧の調節(おそらくマンニトールにより果たされる機能)の不適切さ;
・化学的作用、例えば:
○酸化の調節(おそらくマンニトールにより果たされ、且つ潜在的にTween 80により弱
体化され二重結合の酸化を促進し得る)の不適切さ;
○光酸化の阻害の不適切さ;
○酸、アルデヒド及び過酸化生成物の形成に繋がり、従って抗体の安定性に影響を及ぼ
す、エステル結合の加水分解の阻害の不適切さ;
○pHの安定化及び維持の不適切さ;
○タンパク質断片化の阻害の不適切さ;
○脱アミド化、環状イミド形成又は異性化の阻害の不適切さ。
【0006】
任意の、一部の、又は全ての前記要因は、特に異なるバッチの薬品が製造、輸送及び貯
蔵時に曝され得るストレス(攪拌、熱、光)が変化しやすいことに鑑みて、薬品(医学的治
療における使用に関して安全ではない場合がある)を実用的でないものとし、又は薬品の
実現性を変化しやすく且つ予測不可能にし得る。
【0007】
アダリムマブの物理的及び化学的安定性の観点から、前述の市販の製剤内の成分の複雑
な列挙の性能は、特に成分が多数ある割には期待を下回っているように見える。この特定
の賦形剤の組合せは疑いなく「絶妙なバランス」(様々な技術的要因間の相互作用を考慮
すると)を表し、且つ大規模な研究開発の結果であったが、過小性能のリスクに鑑みて、
特にこれが、不可避的に加工及び経費の負担、毒性リスク、及び製剤を損ない得る成分間
の有害な相互作用のリスクを増大することを考慮すると、そのような多数の異なる賦形剤
が正当化されるかどうかは疑わしい。たとえ市販の製剤の全般的性能に勝らなかったとし
ても、同等の性能を有するが少ない成分を含む代替製剤は、少なくとも前述の理由から、
市販の製剤の非常に望ましい代替物となるだろう。
【0008】
タンパク質-ベースの医薬品の再現可能な臨床性能を保証するために、そのような製品
は、長期間にわたり安定して一貫した形態を維持しなければならない。最終製剤の製造時
、及び貯蔵時を含む製造プロセスの各ステージ時に、分子の変化が起こり得ることは、よ
く確かめられている。分子の変化は、バイオ医薬品の品質特性を改変し、結果、製品の同
一性、強度又は純度の望ましくない変化を生じる。一部のそのような問題点を、先に概説
している。
【0009】
製剤開発の主要な目標は、その製造、貯蔵、輸送、及び使用の全てのステージ時の、バ
イオ医薬タンパク質の安定性を支援するであろう医薬組成物を提供することである。皮下
投与に関して意図される製剤の別の目標は、注射痛を軽減することである。革新的バイオ
医薬タンパク質、又はバイオシミラーモノクローナル抗体(mAb)に関する製剤開発は、そ
の安全性、臨床有効性及び商業的成功にとって必須である。
【0010】
従って、アダリムマブの代替又は改善された液体製剤の提供の必要性が存在する。望ま
しくは、何らかの新規製剤は、前述の問題点の少なくとも1つ及び/又は先行技術の固有
の問題点の少なくとも1つを解決し、且つ好適には該問題点の2つ以上を解決するであろ
う。望ましくは、先行技術の問題点(複数可)は、その製剤の複雑度が低減するにつれて、
解決し得る。
【発明の概要】
【0011】
(発明の概要)
大規模な研究を基に、本発明者らは驚くべきことに、EDTAの添加は、アダリムマブ含有
製剤を安定化することを認めた。この安定化作用は、EDTAが、小型ポリオール、例えばグ
リセロールなどの、2~6個の炭素原子を有するポリオールと一緒に添加された場合に、更
に増大される。
【0012】
本発明の製剤は、高濃度のアダリムマブ(例えば、100mg/ml)であっても、安定している
。従って新規製剤は、前述の市販のアダリムマブ製剤と比べ、より少ない容積で、高量(
例えば有効量)の抗体の投与が可能になり、これにより疼痛を軽減する。
1. 以下を含有する液体医薬組成物:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA、好適には濃度が最大でも0.14mMのEDTA;及び
(c)任意に、C2-C6ポリオール、より好適にはC2-C5ポリオール;
ここでこの組成物は、以下の1以上を好適には含まない又は実質的に含まない:
i)マンニトール;
ii)リン酸塩及び/又はクエン酸塩を含有する緩衝系;
iii)アルギニン;及び/又は
iv)ヒスチジン。
2. 以下を含有する液体医薬組成物:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;及び
(c)C2-C6ポリオール。
3. 医薬組成物が、C2-C5ポリオール、より好適にはC2-C4ポリオールを含有する、項目1
又は2の液体医薬組成物。
4. ポリオールが、グリセロールである、項目3の液体医薬組成物。
5. 組成物が更に、緩衝系を含有する、項目1~4のいずれか一つの液体医薬組成物。
6. 緩衝系が、酢酸緩衝系である、項目5の液体医薬組成物。
7. アダリムマブ25~125mg/mlを含有する、項目1~6のいずれか一つの液体医薬組成物。
8. 以下を含有する項目2の液体製剤:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;
(c)C2-C6ポリオール;
(d)緩衝系;
(e)界面活性剤;及び
(f)任意に、等張化剤(tonicifier):
ここでこの組成物は、pH4.0~6.0を有する。
9. 以下を含有する項目8の液体製剤:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;
(c)C2-C4ポリオール;
(d)酢酸緩衝系;
(e)非イオン性界面活性剤;
(f)任意にアルギニン;及び
(g)任意に、塩化ナトリウム(好適にはそれが最大でも40mMであるが):
ここでこの組成物は、pH4.8~5.4を有する。
10. 以下を含有する、本質的に以下からなる、又は以下からなる、項目9の液体製剤:
(a)25~125mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.05~0.2mMのEDTA;
(c)175~225mMのグリセロール及び/又はプロピレングリコール;
(d)5~10mMの酢酸(ナトリウム)緩衝液;
(e)20~40mMの塩化ナトリウム;及び
(f)0.5~2mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:
ここでこの組成物は、pH4.8~5.3を有する。
11. 以下を含有する、本質的に以下からなる、又は以下からなる、項目10の液体製剤:
(a)100mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.1mMのEDTA;
(c)200mMのグリセロール及び/又はプロピレングリコール;
(d)8mMの酢酸(ナトリウム)緩衝液;
(e)30mMの塩化ナトリウム;及び
(f)1mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:
ここでこの組成物は、pH4.9~5.3を有する。
12. 以下を含有する、本質的に以下からなる、又は以下からなる、項目9の液体製剤:
(a)25~125mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.05~0.2mMのEDTA;
(c)175~225mMのグリセロール及び/又はプロピレングリコール;
(d)5~10mMの酢酸(ナトリウム)緩衝液;及び
(e)0.5~2mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:
ここでこの組成物は、pH4.8~5.3を有する。
13. 以下を含有する、本質的に以下からなる、又は以下からなる、項目10の液体製剤:
(a)100mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.1mMのEDTA;
(c)200mMのグリセロール及び/又はプロピレングリコール;
(d)8mMの酢酸(ナトリウム)緩衝液;及び
(e)1mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:
ここでこの組成物は、pH4.9~5.3を有する。
14. 以下を含有する、本質的に以下からなる、又は以下からなる、項目9の液体製剤:
(a)25~125mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.05~0.2mMのEDTA;
(c)175~225mMのグリセロール及び/又はプロピレングリコール;
(d)10~100mMのアルギニン;
(e)5~10mMの酢酸(ナトリウム)緩衝液;及び
(f)0.5~2mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:
ここでこの組成物は、pH4.8~5.3を有する。
15. 以下を含有する、本質的に以下からなる、又は以下からなる、項目10の液体製剤:
(a)100mg/mlのアダリムマブ;
(b)0.1mMのEDTA;
(c)200mMのグリセロール及び/又はプロピレングリコール;
(d)30mMのアルギニン又は60mMのアルギニン;
(e)8mMの酢酸(ナトリウム)緩衝液;及び
(f)1mg/mlのポリソルベート20又はポロキサマー188:
ここでこの組成物は、pH4.9~5.3を有する。
16. 組成物が、以下の1以上を好適には含有しない、又は実質的に含有しない、前記項目
のいずれかの液体製剤:
i)マンニトール;
ii)リン酸塩及び/又はクエン酸塩を含有する緩衝系;並びに/又は
iii)ヒスチジン。
17. 前記項目のいずれかにおいて規定された液体医薬組成物を含む、薬物送達装置。
18. 疾患又は障害の治療における使用のための、項目1~16のいずれかにおいて規定され
た、液体医薬組成物。
19. 関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、
汗腺膿瘍、ブドウ膜炎及び/又は若年性特発性関節炎の治療における使用のための、項目
1~16のいずれかにおいて規定された、液体医薬組成物。
20. アダリムマブ、EDTA及びC2-C6ポリオール、より好適にはC2-C5ポリオールを一緒に
混合することを含む、液体医薬組成物の製造方法。
21. 項目1~16のいずれかにおいて規定された液体医薬組成物のフリーズドライにより入
手可能な、固形組成物。
22. 組成物が、等張化剤を含まない、実質的に含まない、又は最大でも40mM含有する、
項目12~16のいずれか一つの液体医薬組成物。
【0013】
本発明のいずれか特定の態様に関連して説明される、任意の、好適な、及び好ましい特
徴を含む、いずれかの特徴はまた、本発明のいずれか他の態様の任意の、好適な及び好ま
しい特徴を含む特徴であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
(定義)
別に言及しない限りは、本明細書及び請求項において使用される以下の用語は、以下に
示した下記の意味を有する。
【0015】
「アダリムマブ」の本明細書における言及は、当初の薬剤物質(市販のものとして)、WO
97/29131(BASF)において(特にその中のD2E7)及び当該技術分野の別所において定義された
アダリムマブ、並びに同じくそれらのバイオシミラーを含む。WO97/29131のD2E7は、「配
列番号:3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、及び配列番号:4のアミノ酸配列を含む
重鎖CDR3ドメインを有する」。好ましくは、D2E7抗体は、配列番号:1のアミノ酸配列を
含む軽鎖可変領域(LCVR)、及び配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を有
する。WO97/29131は、これらの配列表の各々の詳細を示している。「アダリムマブ」の本
明細書における言及は、例えば、「アダリムマブ」に関連してWO97/29131(特にD2E7に関
連して)又は別所のいずれかにおいて明らかにされたタンパク質配列の任意の一つと、少
なくとも75%、好適には少なくとも80%、好適には少なくとも85%、好適には少なくとも
90%、好適には少なくとも95%、好適には少なくとも96%、好適には少なくとも97%、好
適には少なくとも98%又は最も好適には少なくとも99%のタンパク質配列同一性を共有す
ることができるバイオシミラーを含んでよい。あるいは又は加えて、「アダリムマブ」の
本明細書における言及は、「アダリムマブ」に関連してWO97/29131(特にD2E7に関連して)
又は別所のいずれかにおいて明らかにされたタンパク質配列の任意の一つと、少なくとも
75%、好適には少なくとも80%、好適には少なくとも85%、好適には少なくとも90%、好
適には少なくとも95%、好適には少なくとも96%、好適には少なくとも97%、好適には少
なくとも98%又は最も好適には少なくとも99%のタンパク質配列相同性を示すバイオシミ
ラーを含んでよい。あるいは又は加えて、バイオシミラーは、そのタンパク質配列が、先
に特定された程度、実質的に同じ又は異なったとしても、(わずかに)異なるグリコシル化
プロファイルを有し得る。
【0016】
用語「バイオシミラー」(生物製剤後続品としても公知)は、当該技術分野において周知
であり、且つ当業者は、薬剤物質がアダリムマブのバイオシミラーと考えられる場合を、
容易に理解するであろう。更に、そのような「バイオシミラー」は、該「バイオシミラー
」が一般市場で販売される前に、販売のための「バイオシミラー」として公式に承認され
る必要がある。用語「バイオシミラー」は一般に、先に公式に販売権限が授与されている
「革新となるバイオ医薬製品」(その薬剤物質が、生物により作製されるか又は生物由来
か又は組換えDNAもしくは制御された遺伝子発現の方法により作製される「生物製剤」)の
後続品(一般に供給元が異なる)を説明するために使用される。生物製剤は、高度に分子が
複雑であり、且つ一般に製造プロセスの変化(例えば、それらの製造において異なる細胞
株が使用された場合)に対し敏感であるので、並びに引き続き後続品の製造業者は、一般
に当初の製造業者の分子クローン、細胞バンク、発酵及び精製プロセスに関するノウハウ
へのアクセスも、更に活性薬剤物質それ自身(当初の製造業者の市販の薬物製品のみ)への
アクセスも有さないので、いずれの「バイオシミラー」も、当初の製造業者の薬物製品と
全く同じである可能性は低いであろう。
【0017】
様々なモル計算の目的で(例えば、本発明の液体医薬組成物のアダリムマブと他の成分
の間のモル比に関して)、アダリムマブの分子量は、分子式がC6428H9912N1694O1987S46と
されるCAS # 331731-18-1のアダリムマブに関するCASデータベース上に開示された詳細を
基に、144190.3g/mol(参照分子量)であるとされる。従って、50mg/mLアダリムマブを含有
する液体医薬組成物は、アダリムマブの0.347mM(又は347μM)溶液と考えることができる
。これは、そのいずれかが実際の分子量に影響を及ぼし得る、本発明の範囲により対象と
されるアダリムマブの任意のバイオシミラーの性質やグリコシル化レベルに関して、何ら
かの限定を意図するものではない。しかし、バイオシミラーが異なる分子量を有する場合
、前述の参照分子量は好適には、そのようなバイオシミラーが、本明細書内において明記
された何らかのモル規定の範囲内に収まるかどうかを評価する目的のために使用されるべ
きである。そのため該バイオシミラーの既知の重量のモル数は、前記参照分子量を使用し
、本発明の目的のためにのみ、計算されるべきである。
【0018】
本明細書において用語「EDTA」は、エチレンジアミン四酢酸を指す。別に言及しない限
りは、本明細書におけるEDTAの言及は、EDTAの塩、並びにEDTAの非塩型を含む。そのよう
な言及はまた、EDTAの水和物又はそれらの塩も包含している。更にEDTAは、最終の液体医
薬組成物中で、塩又は部分塩の形態で存在してよい。厳密に優勢である塩型(複数可)は、
好適にはpH及び組成物内に存在する他の成分(塩を含む)などの要因によって決まる。EDTA
の特定の塩は、ナトリウム塩、例えば:EDTAの一ナトリウム塩、二ナトリウム塩、三ナト
リウム塩、及び四ナトリウム塩を含む。EDTAカルシウム二ナトリウムなどの混合型塩も、
実行可能である。或いは、EDTAの一塩酸塩又は二塩酸塩もまた、使用されてよい。しかし
好ましい実施態様において、EDTAは、EDTAのナトリウム塩として、好適にはEDTA二ナトリ
ウム塩又はそれらの水和物として、本発明の製剤に添加される(少なくとも投入物質に関
する限りは)。特に重量で与えられる量の、EDTAの特定量に関する本明細書における言及
は、好適には、非塩型EDTAの量を指し-当業者はそのような非塩型EDTAの重量ベースの量
を、容易に投入EDTA物質の特定の重量に変換することができる(例えば、該投入EDTA物質
が、塩の形態である場合)ことを認識するであろう。
【0019】
ここで、用語「緩衝液」又は「緩衝溶液」は、酸(通常弱酸、例えば酢酸、クエン酸、
ヒスチジンのイミダゾリウム型)及びその共役塩基(例えば、酢酸塩又はクエン酸塩、例え
ば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又はヒスチジン)の混合物、あるいは塩基(通
常、弱塩基、例えばヒスチジン)及びその共役酸(例えば、プロトン化されたヒスチジン塩
)の混合物を含有する一般的水溶液を指す。「緩衝溶液」のpHは、少量の強酸又は強塩基
の添加時に、「緩衝剤」によりもたらされる「緩衝作用」のために、非常にわずかにのみ
変化し得る。
【0020】
ここで、「緩衝系」は、1種以上の緩衝剤(複数可)及び/又はそれらの共役酸/塩基(複
数可)を含み、より好適には、1種以上の緩衝剤(複数可)及びそれらの共役酸/塩基(複数
可)を含み、最も好適には1種のみの緩衝剤及びその共役酸/塩基を含む。別に言及しない
限りは、「緩衝系」に関連して本明細書に明記された任意の濃度(すなわち緩衝液濃度)は
、好適には、緩衝剤(複数可)及び/又はそれらの共役酸/塩基(複数可)の組合せ濃度を指
す。別の言い方をすると、「緩衝系」に関連して本明細書において明記された濃度は、好
適には、全ての関連のある緩衝種(すなわち、互いに動的平衡状態にある種、例えば酢酸
塩/酢酸)の組合せ濃度を指す。従って、酢酸緩衝系の所定の濃度は、一般に、酢酸塩(又
は酢酸塩(複数可)、例えば酢酸ナトリウム)と酢酸の組合せ濃度に関する。関連のある緩
衝系を含有する組成物の総pHは、一般に関連のある緩衝種の各々の平衡濃度の反映(すな
わち、緩衝剤(複数可)とその共役酸/塩基(複数可)とのバランス)である。
【0021】
ここで、用語「緩衝剤」は、緩衝液又は緩衝溶液の酸又は塩基成分(通常弱酸又は弱塩
基)を指す。緩衝剤は、所定の溶液のpHを予め決められた値で又はその近傍で維持するこ
とを助け、且つ緩衝剤は一般に、予め決められた値を補完するように選択される。特に該
緩衝剤が、その対応する「共役酸/塩基」の適量(予め決められた望ましいpHに応じて)と
混合される(及び好適にはこれとプロトン交換が可能である)場合、あるいはその対応する
「共役酸/塩基」の必要量が現場で形成される場合(これは必要なpHに到達するまで強酸
又は強塩基が添加されることにより達成され得る)、緩衝剤は好適には、所望の緩衝作用
を生じる単独の化合物である。例として:
・酢酸「緩衝剤」は、好適には、酢酸塩、例えば、好適にはその共役酸/塩基、酢酸と
混合された酢酸ナトリウムである。このような緩衝系は、所定量の酢酸ナトリウムを所定
量の酢酸(又は実際には別の酸、例えばHCl)と単純に混合することにより形成され得る。
あるいは、しかしそのような緩衝液は、酢酸への、所定量の塩基、好適には強塩基(例え
ば水酸化ナトリウム)の、所望のpH(従って所望の酢酸ナトリウム/酢酸のバランス)が達
成されるまでの添加により形成され得る。本明細書において、反対の言及のない限り、酢
酸緩衝液又は酢酸塩緩衝剤に関して与えられる任意の濃度は、好適には、緩衝剤(複数可)
(例えば酢酸ナトリウム)及び/又はそれらの共役酸/塩基(複数可)(例えば酢酸)の組合せ
濃度を指す。当業者は、そのような濃度を容易に計算することができる。そのような濃度
は、緩衝系が緩衝剤(複数可)と共役酸/塩基(複数可)の一緒の単純な混合により形成され
る場合、組合せられた緩衝剤(複数可)及び/又は共役酸/塩基(複数可)の濃度を参照し、
計算することができる。あるいは、緩衝系が、緩衝剤(複数可)又は共役酸/塩基(複数可)
のいずれかと、各々の混合物を生成するためのpH調節剤(例えば、強酸又は強塩基)との混
合により形成される場合は、好適にはそのような濃度は、緩衝剤(複数可)又は共役酸/塩
基(複数可)のそれぞれの出発量/濃度を考慮し、計算することができる。例えば、所望の
pHに達するまで、pH調節剤(例えば水酸化ナトリウム)と混合される既知量/濃度の酢酸を
使用し緩衝系が形成される場合、緩衝系の濃度は、酢酸の最初の量を参照し、計算するこ
とができる。
【0022】
ここで、「共役酸/塩基」は、特定の「緩衝剤」の共役酸又は共役塩基(特定のpHで関
係するいずれか-本発明の状況においては典型的には共役酸である)を指す。酢酸塩緩衝
剤(例えば酢酸ナトリウム)の共役酸/塩基は、好適には酢酸である。
【0023】
ここで、用語「緩衝種」は、互いに動的平衡状態にある(及びこれとプロトン交換して
いる)、所定の緩衝系の特定の種を指す(いずれか関連した対アニオン又は対カチオンを除
く-すなわち酢酸ナトリウム/酢酸系におけるナトリウムイオンを無視)。例えば、酢酸
アニオン及び酢酸は一緒に、「酢酸塩緩衝種」又は「酢酸緩衝系」を構成する。
【0024】
重量を参照することにより緩衝系の量(絶対又は相対にかかわらず)を規定することは、
かなり困難であるので(総重量は、存在する対イオンの量に影響を及ぼし得る所望のpHに
応じて決まるので)、本明細書において重量-ベースの量は、代わりに関連のある「緩衝種
」の理論的重量を参照して決定され得る。少なくとも2つの種は、各々は異なる分子量(通
常は丁度1異なる)を有する「緩衝種」の任意の所定のセット中に存在する(pHを参照する
ことによってのみ決定され得る相対量で)。従って、実行可能な重量の計算及び参照を可
能にするために、この明細書の目的に関して、「緩衝種」の所定のセットの重量は、緩衝
種のただ一つ、すなわち緩衝種の最も酸性のもの(すなわち、所定のpHで最もプロトン化
された形)を基にした理論的重量として与えられる。そうして、「緩衝種」の任意の所定
のセットの重量は、酸種の同等物の重量として表記される。例として、酢酸緩衝系におい
て、酢酸緩衝種は、酢酸アニオン(対カチオンを無視)及び酢酸からなることができる。従
って「緩衝種」の重量は、酢酸が緩衝系中に存在する唯一の種であるように(たとえ酢酸
と一緒に酢酸塩が明確に存在しても)計算される。従って、「酢酸緩衝種」に関する重量
又は重量比の言及はいずれも、好適には、緩衝系内の酢酸同等物の理論的重量を指す。従
って、組成物がpH調節剤(例えば、水酸化ナトリウム)の固定された量の酢酸への添加によ
り形成される場合、酢酸の当初の重量は、最終的なpHにかかわらず「緩衝種」の重量であ
ると考えられてよい。あるいは、緩衝系の濃度(すなわちモル濃度)がわかっている場合、
これは関連のある緩衝種(例えば酢酸)の最も酸性の型の分子量を参照することにより、「
緩衝種」の重量に変換することができ、且つ酢酸アニオンも存在するという事実を無視す
ることができる。
【0025】
別所において言及しない限りは、本明細書における「アミノ酸」又は「複数のアミノ酸
」の言及は、それらの存在において又はそうでなければ組成物(特に本発明の医薬液体組
成物)内の文脈において、特定のもの(例えばアルギニン、ヒスチジン)又は一般的なもの(
例えば任意のアミノ酸)であるかどうかにかかわらず、対応する「遊離アミノ酸(複数可)
」に関する(その/それらのプロトン化状態及び/又は塩形態にはかかわらず、コンシス
テンシー量は、好適には、遊離アミノ酸それ自身を参照して計算される)。これは、好適
には、天然の及び/又は人工のアミノ酸を含む。反対の言及のない限りは、そのような言
及は、ペプチド又はタンパク質(そのようなアミノ酸残基はペプチド結合により連結され
ている)などの、大型化合物(複数の化合物を含有する組成物とは反対に)の一部として共
有結合により組み込まれたアミノ酸残基(複数可)に関することは意図されない。従って、
タンパク質としてのアダリムマブはアミノ酸残基を含むが、任意の「遊離アミノ酸(複数
可)」を含むとは考えられない。例として、「アルギニン非含有」であると規定された組
成物は、遊離アルギニンは含まないが、これは依然それら自身アルギニン残基を含むタン
パク質(例えばアダリムマブ)を1種以上含んでよい。
【0026】
別に言及しない限り、本明細書における任意の1以上の「アミノ酸」の言及は、特定又
は一般的かにかかわらず、好適にはL-立体異性体又はそれらのラセミ体、最も好適にはL-
アミノ酸に関する。
【0027】
ここで、本明細書の文脈において、「強酸」は、好適には、-1.0以下のpKaを有するも
のであるのに対し、「弱酸」は、好適には2.0以上のpKaを有するものである。ここで、本
明細書の文脈において、「強塩基」は、好適には、その共役酸が12以上のpKa(好適には14
以上)を有するものであるのに対し、「弱塩基」は、好適には、その共役酸が10以下のpKa
を有するものである。
【0028】
ここで、「安定化剤」は、特に冷凍及び/又は凍結乾燥及び/又は貯蔵時(特にストレ
スに曝される時)の、生物製剤薬物の構造的完全性の維持を促進する成分を指す。この安
定化作用は、様々な理由によりもたらされ得るが、典型的にはそのような安定化剤は、タ
ンパク質変性を軽減するオスモライトとして作用し得る。典型的安定化剤は、アミノ酸(
すなわちペプチド又はタンパク質の一部ではない遊離アミノ酸-例えば、グリシン、アル
ギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、リジン)並びに糖安定化剤、例えば糖ポリオール(
例えば、マンニトール、ソルビトール)を含むが、本発明の液体医薬組成物は、安定化剤
として、EDTA及びC2-C6ポリオールを含む。
【0029】
ここで、「ポリオール」は、複数のヒドロキシル基を持つ物質であり、且つ糖(還元糖
及び非還元糖)、糖アルコール及び糖酸を含む。好適には、ポリオールは、糖アルコール
である。
【0030】
ここで、任意の所定の「ポリオール」の種類、サイズ、及び/又は性質は、ポリオール
の分子構造内に含まれる炭素原子の数を参照し規定されてよい。従って、C[x]-C[y]ポリ
オールの(又は同様に(x-yC)ポリオール)の)一般的言及は、好適には、炭素原子x個とy個
の間を含むポリオールを指す。例として、C2-C3ポリオールは、好適には、エチレングリ
コール(C2)、プロピレングリコール(C3)、及びグリセロール(C3)を含むであろう。C6ポリ
オールは、好適には、マンニトールを含むことができる。水素原子及び酸素原子などの、
他の原子の数及び配置は、必ずしも、明記された炭素鎖長によりいずれか特定の様式で拘
束されない。所定のポリオール内に含まれる炭素原子の数を特定することに加え、ポリオ
ールは、ヒドロキシル基の数を参照して規定されてよい。例えば、3個のヒドロキシル基
を含むC2-C3ポリオールは、好適には、グリセロール(これは3個のヒドロキシル基を有す
る)を含むが、エチレングリコール及びプロピレングリコール(各々ただ2個のヒドロキシ
ル基を有する)は除外する。ポリオールはまた、最大数のヒドロキシル基を参照して総称
的に規定されてもよい。例えば、最大でも5個のヒドロキシル基を含むC2-C6ポリオールは
、規定により、2~5個のヒドロキシル基を有するポリオールである。
【0031】
ここで、「非還元糖」は、一般に、アルデヒド部分を伴わない糖、又はアルデヒド部分
を形成する能力(例えば、異性化により)を持たない糖である。
【0032】
ここで、「張度改変剤(tonicity modifier)」又は「等張化剤」は、その組成物内の包
含が、好適には組成物全体の重量オスモル濃度及び容積オスモル濃度に貢献する(又は増
加する)試薬を指す。好適には、本明細書において使用される等張化剤は、溶液を生理的
溶液に類似した浸透圧特性とするよう機能する物質を含む。
【0033】
ここで、組成物の所定の成分、特に緩衝剤、安定化剤、アミノ酸、界面活性剤、又は等
張化剤の具体量の言及は、たとえそのような成分が、組成物を形成する際に非無水型で使
用される場合であっても、好適には、関連成分の純粋な無水型の量(又は、純粋な無水型
の該量を使用することにより形成された組成物)に関する。任意の対応する非無水型(例え
ば一水和物、二水和物など)の量は、適切な乗数を簡単に使用することにより、容易に計
算することができる。例えば、別に言及しない限りは(分量がトレハロース二水和物に関
係する実施例に従い)、分子量342.296g/molを有するトレハロースに関連して明記された
量は、トレハロースの無水型(又は無水トレハロースの明記された量/濃度を使用するこ
とにより形成された組成物)を指し、そのように同じ組成物を形成するために必要とされ
るトレハロース二水和物の対応する量(少ない水が添加されるであろう)を計算するために
は、378.33がトレハロース二水和物の分子量であるので、明記された量に、378.33/342.2
96を掛けることが必要である。当業者は、目標の濃度を誘導するために、使用される成分
の型に応じてどのように希釈剤/水の量を適切に調節すべきかを、容易に理解するであろ
う。
【0034】
ここで、用語「医薬組成物」とは、活性成分の生物活性を治療的に有効とするが、製剤
が投与されることが意図されている対象にとって明らかに毒性がある他の成分を含まない
、医薬活性のある製剤を指す。
【0035】
ここで、用語「安定している」とは、一般に、成分の、典型的にはその活性又は組成の
、保存/貯蔵時の、物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的安定性を指
す。
【0036】
「治療する」又は「治療」の言及は、予防、並びに状態の確立された症状の緩和を含む
ことは、理解されるべきである。従って容態、障害又は状態の「治療する」又は「治療」
は、以下を含む:(1)容態、障害又は状態に苦しめられているかもしくはその素因はある
が、その容態、障害又は状態の臨床症状もしくは前臨床症状をまだ経験もしくは提示して
いないヒトにおいて発達しているその容態、障害又は状態の臨床症状の出現の予防又は遅
延、(2)その容態、障害又は状態の阻害、すなわち疾患の発達又はそれらの再発(維持療法
の場合)又はそれらの少なくとも1種の臨床症状もしくは前臨床症状の停止、軽減又は遅延
、あるいは(3)疾患の緩和もしくは減弱、すなわち容態、障害又は状態もしくは少なくと
も1種のその臨床症状又は前臨床症状の寛解の引き起こし。
【0037】
本発明の文脈において、抗体の「治療的有効量」又は「有効量」は、予防的及び治療的
態様において、疾患又は障害の治療のために哺乳動物へ投与した場合に、効果がある量を
意味し、且つこの抗体は、懸念される疾患の治療において効果がある。
【0038】
「治療的有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、並びに治療される哺乳動物の齢、
体重などに応じて変動するであろう。
【0039】
用語「ヒトTNF-α」は、17kDの分泌型及び26kDの膜結合型で、並びに生物学的活性型で
存在するヒトサイトカインを指し、且つTNF-αは、共有結合した17kD分子の三量体として
認めることができる。その特異的構造は、Pennica, D.らの文献、(1984) Nature 312: 72
4-729;Davis, J. M.らの文献、(1987) Biochemistry 26, 1322-1326;及び、Jones, E.
Y.らの文献、(1989) Nature 338: 225-228において認めることができる。
【0040】
用語「組換えヒト抗体」は、組換え法を用いて、調製されるか、発現されるか、生成さ
れるか又は単離されるヒト抗体を含むことが意図される。
【0041】
ここで、成分及び成分に関して明記された量は、「部」、ppm(百万分率)、パーセンテ
ージ(%、例えばwt%)、又は比によって特定されたかどうかにかかわらず、別に言及しな
い限りは、重量によることが意図される。
【0042】
所定の組成物の特定の成分の量又は濃度が、重量百分率(wt%又は%w/w)として特定さ
れる場合、該重量百分率は、全体としての組成物の総重量に対する、重量による該成分の
百分率を指す。当業者により、組成物の全ての成分(特定されたかどうかにかかわらず)の
重量百分率の合計は、全体で100wt%になることは理解されるであろう。しかし、全てで
ない成分が列挙される(例えば、組成物は、1以上の特定の成分を「含有する」と称される
)場合、重量百分率のバランスは、任意に、特定されない成分(例えば、水などの希釈剤、
又は他の非必須であるが好適な添加剤)により、100wt%とされてよい。
【0043】
ここで、別に言及しない限りは、用語「部」(例えば、重量部、pbw)は、複数の成分/
構成成分に関して使用される場合、該複数の成分/構成成分の間の相対比を指す。2種、3
種又はそれよりも多い成分のモル比又は重量比の表現は、同じ結果を生じる(例えば、x、
y、及びzのモル比は、各々、x1:y1:z1であるか、又は、範囲x1-x2:y1-y2:z1-z2であ
る)。多くの実施態様において、組成物内の個々の成分の量は、「wt%」値として与えら
れるが、別の実施態様において、任意の又は全てのそのようなwt%値は、多成分組成物を
規定するために、重量部(又は相対比)に変換されてよい。これは、成分間の相対比が、本
発明の液体医薬組成物中のそれらの絶対濃度よりも、より重要であることが多いためであ
る。複数の成分を含有する組成物が、重量部のみによって説明される(すなわち、成分の
相対比のみ示される)場合、該成分(全体として又は個別のいずれか)の絶対量又は絶対濃
度が明記されることは必要ではなく、その理由は、本発明の利点は、各成分の絶対量又は
絶対濃度よりもむしろそれらの相対比に由来し得るからである。しかし、いくつかの実施
態様において、そのような組成物は、明記された成分及び希釈剤(例えば水)から本質的に
なるか又はこれらからなる。
【0044】
組成物が複数の明記された成分(任意に明記された濃度の量で)を含有すると称される場
合、該組成物は、任意に、明記された成分以外の追加の成分を含んでよい。しかしいくつ
かの実施態様において、複数の明記された成分を含有すると称される組成物は、実際には
明記された成分の全てから本質的になるか又はこれらからなってよい。
【0045】
ここで、組成物が、特定の成分「から本質的になる」と称される場合、該組成物は、好
適には、該成分を少なくとも70wt%、好適にはそれらを少なくとも90wt%、好適にはそれ
らを少なくとも95wt%、最も好適にはそれらを少なくとも99wt%含有する。好適には、特
定の成分「から本質的になる」と称される組成物は、1種以上の微量の不純物を除いて、
該成分からなる。
【0046】
好適には、別に言及しない限りは、言及がパラメータ(例えば、pH、pKaなど)又は圧力
及び/もしくは温度により変動し得る物質の状況(例えば、液体、気体など)に対し成され
る場合、好適には更なる明確化が存在しないそのような言及は、標準外界温度及び圧力(S
ATP)での該パラメータを指す。SATPは、温度298.15K(25℃、77°F)、及び絶対圧100kPa(1
4.504psi、0.987atm)である。本明細書における「標準圧」の言及は、好適には、約100kP
aの絶対圧を指す。
【0047】
組成物の所定の成分に関連して使用される場合、用語「実質的に非含有」(例えば、「
化合物Xを実質的に非含有の液体医薬組成物」)とは、それに該成分が本質的に添加されて
いない組成物を指す。組成物が所定の成分を「実質的に非含有」である場合、該組成物は
、好適には、該成分を0.01wt%以下、好適には該成分を0.001wt%以下、好適にはそれを0
.0001wt%以下、好適には0.00001wt%以下、好適にはそれを0.000001wt%以下、最も好適
には0.0001十億分率(重量により)以下含有する。
【0048】
ここで、別に言及しない限りは、全ての化学物質の名称は、IUPAC定義に従い定義され
てよい。
【0049】
(液体医薬組成物)
本発明は、好適には本明細書に規定されたような、液体医薬組成物を提供する。この組
成物は、好適には、アダリムマブを含有し、これはそれ自身好適にはその任意のバイオシ
ミラーを含む。この組成物は、好適には、EDTA及びC2-C6ポリオールを、より好適にはC2-
C4ポリオールを含有する。加えて、この組成物は、好適には、液体医薬組成物に関連して
ここで規定されたいずれかの1以上の追加の成分(例えば、緩衝液、界面活性剤及び等張化
剤を含む)を、ここに明記された任意の量、濃度、又は型で、任意に含んでよく;且つこ
こでこの組成物は、任意に、液体医薬組成物に関連してここで与えられた任意の1以上の
パラメータ又は特性(例えば、pH、重量オスモル濃度)を示す。
【0050】
有利なことに、本発明は、代替の及び改善された液体医薬組成物を提供し、これは高い
アダリムマブ濃度であっても、高度に安定しており、従って注射時にほとんど疼痛を引き
起こさない。本明細書に例示されたように(実施例参照)、本発明の液体医薬製剤は、アダ
リムマブの従来の製剤、例えば前述の市販の製剤HUMIRA(登録商標)と比較すると、様々な
加ストレス条件(熱的、力学的及び光)に曝した場合に、同等な又は改善された特徴を有す
る。それらの性能はまた、一般に、同じストレス試験に供された多くの他の比較製剤と、
同等であるか又はより良い。これらの加ストレス条件は、そのような製剤が製造、輸送及
び貯蔵時に供されるストレスの種類を大いに代表するものであるので、これらは、本発明
の利点の優れた指摘を提供する。そのような良好な安定性の性能は、驚くべきことに先行
技術の一般的教示を考慮し、より少ない賦形剤を伴う余り複雑でない製剤を使用し、達成
することができる。
【0051】
(アダリムマブ)
HUMIRA(登録商標)製剤で市販されているアダリムマブ、及びその製造方法は、D2E7とし
てWO97/29131(BASF)において、及び当該技術分野において別所に説明されている。これは
、「配列番号:3のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、及び配列番号:4のアミノ酸配列
を含む重鎖CDR3ドメイン」を有するとして説明されている(WO97/29131)。更に、D2E7抗体
は、配列番号:1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)、及び配列番号:2のアミノ酸
配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を有するとして説明されている(WO97/29131)。
【0052】
アダリムマブの医学的適応症及び機能は、先に列挙されている。
【0053】
本発明の文脈において、「アダリムマブ」は、先に規定されたようなバイオシミラーを
含み、当業者は、本発明の文脈における用語「アダリムマブ」の範囲を容易に理解するで
あろう。
【0054】
ある実施態様において、本液体医薬組成物は、アダリムマブを、濃度約5~約200mg/ml
、好適には約25~約125mg/mLで含有する。例えば、アダリムマブは、製剤中に、濃度約25
、約50、約75又は約100mg/mlで存在してよい。ある実施態様において、アダリムマブは、
濃度約75~125mg/mL、好適には約90~110mg/mL、好適には約95~約105mg/mlで、及び最も
好適には100mg/mlの量で存在する。前述の市販のアダリムマブ製剤と比べ、この実施態様
における増加する濃度のために、同じ有効量を、より小さい容積で皮下注射することがで
き、これにより患者の疼痛が軽減される。
【0055】
(EDTA)
好適には、本液体医薬組成物は、EDTAを含有する。好適には、このような成分は、特に
冷凍及び/又は凍結乾燥及び/又は貯蔵時(特にストレスに曝される時)の、生物製剤薬物
の構造的完全性の維持を促進する。
【0056】
驚くべきことに、EDTAは、アダリムマブ製剤に対する安定化作用を有することがわかっ
た。この安定化作用は、EDTAとC2-C6ポリオールが、アダリムマブ製剤へ一緒に添加され
た場合に、なお更に増大される。
【0057】
好適には、本液体医薬組成物は、EDTAを、濃度約0.001~約1000mM、より好適には約0.0
05~約100mM、より好適には約0.01~約10mMで含有する。ある実施態様において、EDTAは
、濃度0.01~1mM、より好適には0.08~0.12mM、最も好適には濃度0.1mMで存在する。
【0058】
好適には、本液体医薬組成物は、EDTAを、濃度(Mw292.24g/molを有する、非塩、非水和
のEDTAを基に計算されるが、EDTAの他の型が、本組成物の形成において存在するか又は使
用されるかのいずれかであってよい)約0.001mg/mL~約1mg/mL、より好適には約0.01mg/mL
~約0.1mg/mLを含有する。ある実施態様において、EDTAは、濃度0.02mg/mL~0.04mg/mL、
最も好適には0.029mg/mlで存在する。
【0059】
好適には、本液体医薬組成物は、EDTA二ナトリウム無水物(Mw372.24g/mol)の、濃度約0
.001mg/mL~約1mg/mL(EDTA二ナトリウム無水物の重量を基に計算)、より好適には約0.01m
g/mL~約0.1mg/mLでの添加により、形成される。ある実施態様において、本組成物は、ED
TA二ナトリウム無水物の、濃度0.03mg/mL~0.04mg/mL、最も好適には0.037mg/mlでの添加
により、形成される。
【0060】
好適には、本液体医薬組成物は、EDTAを、EDTAのアダリムマブに対するモル比約14:1
~約1:1000、より好適には約14:10~約1:100で含有する。ある実施態様において、EDT
Aは、EDTAのアダリムマブに対するモル比約14:1~約1:10、好適には10:100~20:100
、最も好適には14.4:100で存在する。
【0061】
好適には、本液体医薬組成物は、アダリムマブ及びEDTAを、各重量比(Mw292.24g/molを
有する、非塩、非水和のEDTAを基に計算されるが、EDTAの他の型は、本組成物の形成にお
いて存在するか又は使用されるかのいずれかであってよい)100,000:1~100:1、より好
適には重量比10,000:1~1,000:1、より好適には重量比5,000:1~2,000:1、最も好適
には約3450:1で含有する。
【0062】
好適には、本液体医薬組成物は、C2-C6ポリオール及びEDTAを、各モル比100,000:1~1
0:1、より好適には10,000:1~100:1、より好適には5,000:1~1,000:1、最も好適に
は約2000:1で含有する。
【0063】
実施例のセクションに例示されたように、本明細書において規定されたEDTAを含む本発
明の液体医薬組成物は、ストレス試験において、特に凝集、断片化及びタンパク質アンフ
ォールディングに関して、特に良好に働き、このことは安定性及び薬品の実現性の重要な
指標であり得る。更に、EDTAをC2-C6ポリオールと一緒に含有する液体医薬組成物は、特
に良好に働く。
【0064】
(ポリオール安定化剤)
好適には、本液体医薬組成物は、安定化剤、最も好適にはポリオール安定化剤を含有す
る。好適には、このような成分は、特に冷凍及び/又は凍結乾燥及び/又は貯蔵時(特に
ストレスに曝される時)の、生物製剤薬物の構造的完全性の維持を促進する。
【0065】
本液体医薬組成物は、1種以上のポリオール安定化剤を含有してよいが、好ましい実施
態様においては、ただ1種のポリオール安定化剤が存在する。
【0066】
好適には、ポリオール安定化剤は、2個~6個の炭素原子を有するポリオール(C2-C6ポリ
オール)、より好適には2個~5個の炭素原子のポリオール(C2-C5ポリオール)、最も好適に
は2個~4個の炭素原子のポリオール(C2-C4ポリオール)である。
【0067】
驚くべきことに、EDTAと組合せた場合には、プロピレングリコール及びグリセロールの
ような小型のポリオールが、トレハロースのような大型のポリオールよりも、アダリムマ
ブ製剤でより良い安定化作用を有することがわかった。
【0068】
このポリオール安定化剤は、好適には、フルクトース、マンノース、ラムノース、ガラ
クトース、グルコース、ソルボース、マンニトール、ソルビトール、アラビノース、キシ
ロース、リボース、キシリトール、リビトール、エリトリトール、スレイトール(threito
l)、グリセロール、プロピレングリコール及びエチレングリコールを含む群から選択され
る。より好適には、ポリオール安定化剤は、プロピレングリコール又はグリセロールであ
る。最も好適には、ポリオール安定化剤は、グリセロールである。
【0069】
このポリオールは、1種以上のポリオールであってよく、ここで各ポリオールは、好適
には独立して本明細書に規定されたポリオールである。本出願がポリオールの分量(例え
ば、量、濃度、又は比)を規定する限りにおいて、そのような分量は、「組合せられた」1
種以上のポリオールの分量として解釈されてよい。別の実施態様において、そのような分
量は、1種以上のポリオールのただ1種又は少なくとも1種に関連する分量として解釈され
てよい。いくつかの実施態様において、本組成物は、本明細書に規定された分量のいずれ
か一つで1種のポリオールを含有する。
【0070】
好適には、本液体医薬組成物は、ポリオール安定化剤(複数可)(最も好適にはグリセロ
ール)を、濃度約50~約500mM、より好適には約100~約300mM、より好適には約150~約250
mMで含有する。ある実施態様において、ポリオール安定化剤(複数可)は、濃度190~210mM
、最も好適には約200mMで存在する。ある実施態様において、グリセロールは、濃度200mM
で存在する。
【0071】
好適には、本液体医薬組成物は、ポリオール安定化剤(複数可)(最も好適にはグリセロ
ール)を、濃度約1mg/mL~約50mg/mL、より好適には約5mg/mL~約30mg/mL、より好適には
約10mg/mL~約20mg/mLで含有する。ある実施態様において、ポリオール安定化剤(複数可)
は、濃度18mg/mL~19mg/mL、最も好適には約18.4mg/mLで存在する。特定の実施態様にお
いて、グリセロールは、濃度18.4mg/mLで存在する。
【0072】
好適には、本液体医薬組成物は、ポリオール安定化剤(複数可)(最も好適にはグリセロ
ール)を、アダリムマブに対するポリオール安定化剤(複数可)のモル比約10:1~約1000:
1、より好適には約100:1~約500:1、より好適には約200:1~約300:1で含有する。あ
る実施態様において、ポリオール安定化剤(複数可)は、アダリムマブに対するポリオール
安定化剤(複数可)のモル比約250:1~約300:1、最も好適には約288:1で存在する。ある
実施態様において、グリセロールは、グリセロールのアダリムマブに対するモル比約288
:1で存在する。
【0073】
本発明のいくつかの実施態様に従い、このポリオール(又は1種以上のポリオール)は、(
各々独立して)以下の番号付けした段落のいずれか、又はいずれかの組合せに記載の通り
に規定されてよい:
(1)C2-C6ポリオール-すなわち、2個~6個の炭素原子及び少なくとも2個のヒドロキシ
ル基を含む、脂肪族(線状もしくは分岐した)又は環状有機分子;
(2)C2-C5ポリオール、好適にはC2-C4ポリオール、好適にはC2-C3ポリオール;
(3)最大でも5個のヒドロキシル基、好適には最大でも4個のヒドロキシル基、好適には
最大でも3個のヒドロキシル基、好適には2又は3個のヒドロキシル基(それ以上でもそれ以
下でもない)を含む、本明細書において規定したポリオール;
(4)酸素以外の任意のヘテロ原子を含まないポリオール;
(5)ポリオール内の各及び全ての酸素原子が、ヒドロキシル基の一部であるポリオール
;
(6)カルボニル基及びカルボキシ基を含まないポリオール;
(7)イオン化された基又はイオン化可能な基(特にpH3~8で)を含まないポリオール;
(8)167g/mol未満又は等しい、好適には153g/mol未満又は等しい、好適には137g/mol未
満又は等しい、好適には123g/mol未満又は等しい、好適には107g/mol未満又は等しい、好
適には93g/mol未満又は等しい分子量を有するポリオール;
(9)61g/molより大きい又は等しい、好適には75g/molより大きい又は等しい分子量を有
するポリオール;
(10)SATP(定義参照)で液体であるポリオール;
(11)0℃、標準圧力(定義参照)で、液体であるポリオール;
(12)水溶液内で凍結防止成分として挙動するポリオール;
(13)標準圧力で150℃より高い又は等しい沸点、好適には180℃より高い又は等しい、好
適には250℃より高い沸点を有するポリオール;
(14)標準圧力で300℃未満又は等しい沸点、好適には200℃未満又は等しい沸点を有する
ポリオール;
(15)標準圧力で25℃未満の融点、好適には20℃未満又は等しい融点を有するポリオール
;
(16)標準圧力で-80℃よりも高い又は等しい融点、好適には10℃よりも高い又は等しい
融点を有するポリオール;
(17)5個以上の炭素原子を含むポリオールを含まない又は実質的に含まない、好適には4
個以上の炭素原子を含むポリオールを含まない又は実質的に含まないポリオール;
(18)5個以上のヒドロキシル基を含むポリオールを含まない又は実質的に含まない、好
適には4個以上のヒドロキシル基を含むポリオールを含まない又は実質的に含まないポリ
オール;
(19)5個以上の酸素原子を含むポリオールを含まない又は実質的に含まない、好適には4
個以上の酸素原子を含むポリオールを含まない又は実質的に含まないポリオール;
(20)グリセロールもしくはその異性体、又はプロピレングリコール;
(21)グリセロール;
(22)プロピレングリコール;
(23)濃度50~500mM、好適には100~300mM、好適には150~250mM、好適には190~210mM
の、本明細書において規定されたポリオール;
(24)組合せた濃度50~500mM、好適には100~300mM、好適には150~250mM、好適には190
~210mMの、各々独立して本明細書に規定された、1種以上のポリオール。
【0074】
好適には、本発明の文脈において、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート(複数可)及
びポロキサマー(複数可)など)は、本明細書において規定される「ポリオール」ではない
。従って、本明細書において規定される「ポリオール」は、非-界面活性剤ポリオールと
考えられる。
【0075】
好適には、本発明の文脈において、緩衝種(酒石酸塩など)は、本明細書において規定さ
れる「ポリオール」ではない。従って、本明細書において規定される「ポリオール」は、
緩衝しないポリオールと考えられてよい。
【0076】
特定の実施態様において、この又は各ポリオールは、最大でも4個のヒドロキシル基を
伴う、C2-C4ポリオールである。
【0077】
特定の実施態様において、この又は各ポリオールは、ポリオール内の各及び全ての酸素
原子がヒドロキシル基の一部であるC2-C4ポリオールである。
【0078】
特定の実施態様において、この又は各ポリオールは、107g/mol未満又は等しい分子量を
有し、且つSATPで液体である。
【0079】
好適には、本液体医薬組成物内のアダリムマブのポリオールに対する重量比は、100:1
~1:1、好適には20:1~2:1、より好適には9:1~3:1、最も好適には約5.4:1又は約6
.6:1である。
【0080】
好適には、本液体医薬組成物は、ポリオール及びEDTAを、それぞれのモル比約50,000:
1~約10:1、好適には約5,000:1~約100:1、好適には約3000:1~約1000:2、最も好適
には約2000:1で含有する。
【0081】
実施例のセクションにおいて例示されたように、本明細書において規定されたポリオー
ル安定化剤を含む本発明の液体医薬組成物は、ストレス試験において、特に凝集、断片化
及びタンパク質アンフォールディングに関して、特に良好に働き、このことは安定性及び
薬品の実現性の重要な指標であり得る。更に、ポリオール安定化剤としてC2-C6ポリオー
ルを含有する液体医薬組成物は、特に良好に働く。
【0082】
(希釈剤)
本発明の液体医薬組成物は、任意の1種以上の医薬として許容し得る希釈剤、又はその
混合物を含んでよい。しかし最も好適には、本液体医薬組成物は、水性医薬組成物である
。最も好適には、希釈剤は、水、好適には水単独である。水は、好適には注射用水(WFI)
である。
【0083】
好適には、希釈剤は、例えば重量百分率が合計100%であるように、液体医薬組成物中
の成分のバランスを構成することができる。好適には、本液体医薬組成物の任意の成分に
関連して本明細書において与えられる任意の濃度は、任意の他の成分との混合物における
希釈剤中の(及び好適にはその中に溶解した)該成分の濃度を表す。
【0084】
好適には、本液体医薬組成物は、80wt%よりも大きい又は等しい水、好適には85wt%よ
りも大きい又は等しい水を含有する。
【0085】
本発明の液体医薬組成物は、好適には溶液であり、且つ好適には(実質的に又は完全に)
粒子又は沈殿物を含まない。
【0086】
(任意の追加成分)
(緩衝液、緩衝剤、及びpH)
好適には、本液体医薬組成物は、そのpHが、緩衝剤により、好適には緩衝剤の共役酸/
塩基との組合せにおいて安定化された、緩衝された溶液である。従って、本液体医薬組成
物は、好適には、本明細書において規定された緩衝剤を含有する。好ましくは、本液体医
薬組成物は、共役酸/塩基を追加的に含有し、ここで該共役酸/塩基は、緩衝剤がそれ自
身各々塩基又は酸であるかに応じて、緩衝剤の共役酸又は共役塩基に対応している。まと
めると、緩衝剤及びその共役酸/塩基は、「緩衝系」と考えられてよい。従って液体医薬
組成物は、好適には、「緩衝系」(好適には緩衝剤(複数可)及びそれらの共役酸/塩基(複
数可)を含有する)を含有し、且つ緩衝系に関連して明記された任意の濃度は、一般に、緩
衝剤(複数可)及び任意のその共役酸/塩基(複数可)の組合せた濃度に関係する。任意の「
緩衝系」は、好適には、弱酸及び弱塩基を含有する(先の定義参照)。
【0087】
好適には、緩衝剤は、酢酸塩緩衝剤である。好適には、酢酸塩緩衝剤は、酢酸塩であり
、好適には酢酸アニオン(すなわちAcO-)及び1種以上の医薬として許容し得る対イオンを
含む。好適な酢酸塩は、金属酢酸塩(例えば、アルカリ金属酢酸塩又はアルカリ土類金属
酢酸塩)、あるいは非金属酢酸塩(例えば、酢酸アンモニウム、酢酸トリエチルアンモニウ
ム)を含み得る。特定の実施態様において、緩衝剤(及び酢酸塩)は、酢酸ナトリウムであ
る。
【0088】
好適には、本液体医薬組成物は、緩衝剤の共役酸/塩基、最も好適には酢酸塩の共役酸
としての酢酸を含有する。緩衝剤及びその共役酸/塩基との組合せは、緩衝系を構成する
。好適には、本液体医薬組成物は、緩衝剤及びその対応する共役酸/塩基を含有し、その
結果好適には緩衝剤及びその共役酸/塩基は一緒に、その組成物にとって所望のpHを提供
するのに十分なレベル(すなわち絶対量又は濃度)及び相対量(又は濃度)で存在する。この
緩衝系は、緩衝剤を、その共役酸/塩基と単純に混合することにより形成されてよいか、
あるいは代わりに緩衝剤と共役酸/塩基の所望の混合物を現場で形成するために、酸又は
塩基を、緩衝剤もしくはその共役酸/塩基のいずれかと混合することにより形成されてよ
い。例えば、この緩衝系は、酢酸塩緩衝剤(例えば酢酸ナトリウム)を、その共役酸/塩基
(すなわち酢酸)と、好適には所望のpHをもたらすのに適した比で、単純に混合することに
より形成されてよい。あるいは、この緩衝系は、好適には所望のpH及び緩衝剤(例えば酢
酸ナトリウム)と対応する共役酸/塩基(すなわち酢酸)の混合物をもたらすのに適した量
で、塩基(例えば水酸化ナトリウム)を、酢酸塩緩衝剤の共役酸/塩基(すなわち酢酸)へ添
加することにより形成されてよい。あるいは、緩衝系を形成するいずれかの方法が利用さ
れてよく、且つpHは、更なる酸(好適には強酸、HClなど)又は更なる塩基(好適には強塩基
、水酸化ナトリウムなど)のいずれかの添加により、適切に調節されてよい。
【0089】
最も好適には、この緩衝系は、好適には酢酸塩及び酢酸を含有する、酢酸緩衝系である
。
【0090】
好適には、本液体医薬組成物は、最大でも1種の緩衝剤を含有する。好適には、本液体
医薬組成物は、最大でも1種の緩衝系を含有する。
【0091】
好適には、緩衝系が存在する場合、該緩衝系は、副産物として、塩化ナトリウムなどの
皮膚-刺激物質を実質的に生じない様式で形成される。最も好適には、緩衝系は、2.7mM未
満の塩化ナトリウム、好適には2mM未満の塩化ナトリウム、好適には1mM未満の塩化ナトリ
ウム、好適には0.1mM未満の塩化ナトリウムを生じ、最も好適には(実質的に)塩化ナトリ
ウムを生じない様式で、形成される。例えば、酢酸緩衝液は、酢酸塩(例えば酢酸ナトリ
ウム、又はその水和物)の塩酸による酸性化により形成されてよいが、これはいくらかの
塩化物塩の副産物(例えば塩化ナトリウム)を必ず生じるであろう。本発明は、塩化物塩な
どの皮膚-刺激物質が最小量の実行可能な製剤化を促進するので、緩衝液形成時にそれら
の出現を排除する又は制限することが望ましい。従って、緩衝系は、最も好適には、緩衝
系の共役酸(例えば酢酸)の適切な塩基化(例えば水酸化ナトリウムによる)により、又は適
量の共役酸及び共役塩基(例えば、酢酸/酢酸ナトリウム)の適切な混合により、形成され
る。特定の実施態様において、酢酸緩衝系は、所望のpHを達成するための、適量の塩基化
剤(好適には水酸化ナトリウム又は他の酸化物又は水酸化物塩)による、所定量の酢酸の処
理(好適には他の成分及び/又は賦形剤との混合)により形成される。
【0092】
好適には、本液体医薬組成物は、4.0より大きいか又は等しいpHを有する。好適には、
本液体医薬組成物は、6.0未満又は等しいpHを有する。
【0093】
特定の実施態様において、特に緩衝剤が酢酸塩緩衝剤である場合、液体医薬組成物は、
4.5~5.5のpHを有する。特定の実施態様において、本液体医薬組成物は、4.9~5.1のpHを
有する。特定の実施態様において、本液体医薬組成物は、pH約5.0を有する。
【0094】
特定の実施態様において、特に緩衝剤が酢酸塩緩衝剤である場合並びに/又は特に組成
物が最大でも30mM(しかしより好適には最大でも20mM又は10mM)の等張化剤を含有する場合
(特に問題の等張化剤が、塩化ナトリウムもしくは他の皮膚-刺激性等張化剤である場合)
には、液体医薬組成物は、pH4.8~5.8を有する。特定の実施態様において、本液体医薬組
成物は、pH4.9~5.3、好適には5.0~5.4、好適には5.1~5.3を有する。特定の実施態様に
おいて、本液体医薬組成物は、pH約5.2を有する。このpHは、好適にはpH5.0±0.5であっ
てよい。
【0095】
理論により結びつけられることを欲するものではないが、本発明の実行は、製剤を、全
体的安定性及び有効性を損なうことなく、皮下注射時に経験する皮膚疼痛/刺激を軽減す
る様式で、適切に修飾されるようにすることが可能であると考えられる。例えば、EDTAと
のポリオールの混入は、より濃度の高いアダリムマブ製剤であっても、緩衝液濃度を低下
する可能性を広げることができる。
【0096】
好適には、本液体医薬組成物は、緩衝系(好適には酢酸塩緩衝剤を含有する酢酸緩衝系)
を、濃度約1~約50mMで含有する。ある実施態様において、この緩衝系は、濃度5~10mM、
最も好適には約8mMで存在する。ある実施態様において、この緩衝系は、濃度8mMで存在す
る。最も好ましくは、本液体医薬組成物は、酢酸ナトリウム/酢酸緩衝系を濃度8mMで含
有する。これは、「緩衝剤(複数可)」(例えば酢酸ナトリウム)が、強力な塩基(例えば水
酸化ナトリウム)の、緩衝剤(複数可)の共役酸(例えば酢酸)への添加により形成される場
合を含む。この後者の実施態様は、前述の市販のアダリムマブ製剤と比べ、注射時に軽減
された皮膚刺激並びに注射部位の周囲の疼痛を引き起こすと予想され、その理由は、後者
の実施態様は、低下した緩衝液濃度を有し、且つ皮下注射時に疼痛を引き起こすことが知
られているクエン酸及びリン酸の緩衝成分を避けるからである(Kappelgaardらの文献、(2
004) Horm. Res. 62 Suppl 3:98-103、及び、Franssonらの文献、(1996) J. Pharm. Phar
macol. 48:1012-1015)。
【0097】
好適には、本液体医薬組成物は、緩衝種(好適には酢酸塩緩衝種)を、濃度約0.05mg/mL
~約3.0mg/mLで含有する。ある実施態様において、緩衝種は、濃度0.1mg/mL~1.50mg/mL
、好適には0.4mg/mL~0.6mg/mL、最も好適には約0.5mg/mLで存在する。これは、「緩衝剤
」(例えば酢酸ナトリウム)が、強力な塩基(例えば水酸化ナトリウム)の、緩衝剤の共役酸
(例えば酢酸)への添加により形成される場合を含む。
【0098】
好適には、本液体医薬組成物は、緩衝系(好適には酢酸緩衝系)を、緩衝系のアダリムマ
ブに対するモル比約1:1~約100:1で含有する。ある実施態様において、この緩衝系は、
緩衝系のアダリムマブに対するモル比約5:1~約30:1、最も好適には約11:1で存在する
。ある実施態様において、緩衝系は、濃度11:1で存在する。これは、「緩衝剤」(例えば
酢酸ナトリウム)が、強力な塩基(例えば水酸化ナトリウム)の、緩衝剤の共役酸(例えば酢
酸)への添加により形成される場合を含む。
【0099】
実施例のセクションにおいて例示されたように、酢酸緩衝系を含む本発明の液体医薬組
成物は、ストレス試験において、特に断片化及びタンパク質アンフォールディングに関し
て、特に良好に働き、このことは安定性及び薬品の実現性の重要な指標であり得る。更に
、その酢酸緩衝系が安定してpH5.2を維持する液体医薬組成物は、特に良好に働く。
【0100】
(等張化剤)
本発明の液体医薬組成物は、好適には「張度改変剤」(又は「等張化剤」)、又は好適に
は本明細書において規定された1種以上の等張化剤を含有してよい。
【0101】
等張化剤の包含は、好適には、組成物の全体的重量オスモル濃度及び容積オスモル濃度
に寄与する(又は増大する)。好適には、等張化剤は、組成物が体液と(実質的に)等張であ
るのに十分な分量又は濃度で、組成物内に存在する。好適には、等張化剤は、組成物が、
本明細書に規定された範囲内の容積オスモル濃度又は重量オスモル濃度を有するのに十分
な分量又は濃度で、組成物内に存在する。
【0102】
任意の好適な等張化剤が、使用されてよい。しかし好適には、等張化剤は、水溶性金属
塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム)、水溶
性の等張とする糖/糖アルコール(例えば、グルコース、ショ糖、マンニトール)、及び/
又は他の水溶性ポリオールを含む群から選択される。好適には、等張化剤(複数可)は、緩
衝しない(すなわち、緩衝作用をほとんど又は全くもたらさない)。従って、任意の金属塩
等張化剤は、好適には緩衝剤ではない。
【0103】
本液体医薬組成物は、1種以上の等張化剤を含有してよいが、好ましくは従ってただ1種
の「等張化剤」が存在する(本明細書において規定された別の機能をもたらすことが意図
された成分により組成物へ与えられる等張化作用にもかかわらず)。
【0104】
最も好ましくは、等張化剤は、金属塩(好ましくは緩衝しない水溶性金属塩)であるか又
はこれを含有する。好適には、該金属塩は、金属ハロゲン化物、好適にはアルカリ金属又
はアルカリ土類金属のハロゲン化物、好適にはアルカリ金属の塩化物であるか又はこれを
含有する。
【0105】
特定の実施態様において、等張化剤は、塩化ナトリウムであるか又はこれを含有する。
特定の実施態様において、等張化剤は、塩化ナトリウムである。塩化ナトリウムは、液体
アダリムマブ製剤中で、酢酸塩緩衝剤/緩衝系と共に使用するためには、特に利点のある
安定化剤である。
【0106】
理論により結びつけられることを欲するものではないが、本発明の実行は、製剤を、全
体的安定性及び有効性を損なうことなく、皮下注射時に経験する皮膚疼痛/刺激を軽減す
る様式で、適切に修飾されるようにすることが可能であると考えられる。例えば、EDTAの
ポリオールとの混入は、より濃度の高いアダリムマブ製剤であっても、等張化剤濃度を低
下する可能性を広げることができる。
【0107】
好適には、本液体医薬組成物は、等張化剤(複数可)(最も好適には塩化ナトリウム)を、
濃度約5~約100mM、より好適には約10~約50mM、最も好適には約30mMで含有する。ある実
施態様において、塩化ナトリウムは、濃度30mMで存在する。
【0108】
好適には、本液体医薬組成物は、等張化剤(複数可)(最も好適には塩化ナトリウム)を、
濃度約0.5mg/mL~約10mg/mL、より好適には約1mg/mL~約5mg/mL、より好適には約1.5mg/m
L~約2mg/mLで含有する。ある実施態様において、等張化剤(複数可)は、濃度約1.75mg/mL
で存在する。最も好適には、塩化ナトリウムは、濃度1.75mg/mLで存在する。後者の実施
態様は、前述の市販のアダリムマブ製剤の塩化ナトリウム濃度よりも、はるかに低い塩化
ナトリウム濃度を有する。より低い塩化ナトリウム濃度は、注射部位の疼痛を軽減すると
予想される。
【0109】
好適には、本液体医薬組成物は、等張化剤(複数可)(最も好適には塩化ナトリウム)を、
等張化剤のアダリムマブに対するモル比約10:1~約200:1、より好適には約20:1~約10
0:1、より好適には約30:1~約50:1で含有する。ある実施態様において、塩化ナトリウ
ムは、塩化ナトリウムのアダリムマブに対するモル比約43:1で存在する。
【0110】
好適には、液体医薬組成物中のアダリムマブの等張化剤(最も好適には塩化ナトリウム)
に対する重量比は、500:1~10:1、好適には200:1~20:1、より好適には100:1~50:
1、最も好適には約57:1である。
【0111】
好適には、等張化剤(複数可)(最も好適には塩化ナトリウム)は、100mMを超えない、好
適には70mMを超えない、より好適には50mMを超えない、より好適には40mMを超えない濃度
で存在する。好適には、本液体医薬組成物は、等張化剤、特に皮膚-刺激性等張化剤、例
えば塩化ナトリウム及び/又は他の金属塩等張化剤を含まないか又は実質的に含まない。
特定の実施態様において、本液体医薬組成物は、塩化ナトリウムを含まないか又は実質的
に含まない。特定の実施態様において、本液体医薬組成物は、等張化剤(例えば塩化ナト
リウム)を含まないか、実質的に含まないか、あるいは最大でも40mM含有する。特定の実
施態様において、本液体医薬組成物は、等張化剤(例えば塩化ナトリウム)を含まないか、
実質的に含まないか、あるいは最大でも32mM含有する。特定の実施態様において、本液体
医薬組成物は、等張化剤(例えば塩化ナトリウム)を含まないか、実質的に含まないか、あ
るいは最大でも20mM含有する。
【0112】
実施例のセクションにおいて例示されたように、本明細書において規定された等張化剤
を含む本発明の液体医薬組成物は、ストレス試験において、特に凝集、断片化及びタンパ
ク質アンフォールディングに関して、特に良好に働き、このことは安定性及び薬品の実現
性の重要な指標であり得る。更に、特に明記された範囲の量で塩化ナトリウムを含有する
液体医薬組成物は、特に良好に働く。
【0113】
(界面活性剤)
本発明の液体医薬組成物は、好適には、界面活性剤、又は好適には本明細書において規
定された1種以上の界面活性剤を含有する。
【0114】
界面活性剤の包含は、好適にはアダリムマブタンパク質の安定化に寄与する。
【0115】
任意の好適な界面活性剤が使用されてよい。しかし好適には、界面活性剤は、非イオン
性界面活性剤、最も好適にはポリソルベート(ポリオキシエチレングリコールソルビタン
アルキルエステル)又はポロキサマー界面活性剤である。
【0116】
1種以上の界面活性剤が本発明の液体医薬組成物中に含まれ得るが、最も好適には、た
だ1種の界面活性剤、最も好適には単独の非イオン性界面活性剤(好適には本明細書におい
て規定されたもの)が存在する。
【0117】
この界面活性剤(複数可)は、好適には、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソ
ルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパ
ルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)
、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、ポロキサマー
188及びポロキサマー407から選択される。
【0118】
特定の実施態様において、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はポ
ロキサマー188である。特定の実施態様において、界面活性剤は、ポリソルベート20であ
る。特定の実施態様において、界面活性剤は、ポロキサマー188である。
【0119】
好適には、本液体医薬組成物は、界面活性剤(複数可)(最も好適にはポリソルベート20)
を、濃度約0.1~約100mM、より好適には約0.5~約20mM、より好適には約0.7~約1.0mMで
含有する。ある実施態様において、界面活性剤(複数可)は、濃度約0.8mMで存在する。あ
る実施態様において、ポリソルベート20は、濃度0.8mMで存在する。
【0120】
好適には、本液体医薬組成物は、界面活性剤(複数可)(最も好適にはポリソルベート20)
を、濃度約0.1mg/mL~約10mg/mL、より好適には約0.5mg/mL~約2mg/mL、より好適には約0
.9mg/mL~約1.1mg/mL、最も好適には約1.0mg/mLで含有する。特定の実施態様において、
ポリソルベート20は、濃度1.0mg/mLで存在する。
【0121】
好適には、本液体医薬組成物は、界面活性剤(複数可)(最も好適にはポリソルベート20)
を、界面活性剤(複数可)のアダリムマブに対するモル比約1:2~約50:1、より好適には約
1:1~約30:1で含有する。ある実施態様において、界面活性剤(複数可)は、界面活性剤(
複数可)のアダリムマブに対するモル比約1:1~約1.3:1、最も好適には約1.15:1で存在
する。ある実施態様において、ポリソルベート20は、ポリソルベート20のアダリムマブに
対するモル比約1.17:1で存在する。
【0122】
実施例のセクションにおいて例示されたように、本明細書において規定された界面活性
剤を含む本発明の液体医薬組成物は、ストレス試験において、特に凝集、断片化及びタン
パク質アンフォールディングに関して、特に良好に働き、このことは安定性及び薬品の実
現性の重要な指標であり得る。更に、特に明記された範囲の量でポリソルベート20を含有
する液体医薬組成物は、特に良好に働く。
【0123】
(アルギニン)
本液体医薬組成物は、好適にはアルギニンを含有してよい。好適には、アルギニンは、
L-アルギニンを含有するか又はL-アルギニンである。アルギニンは、等張化剤を含有しな
いか又は少量含有する組成物における使用に特に適しており、特にここで該等張化剤は、
塩化ナトリウム又は別の皮膚-刺激性金属塩である。例えば、本液体医薬組成物は、好適
には、液体医薬組成物が、等張化剤(例えば塩化ナトリウム)を含まない、実質的に含まな
い、又は最大でも20mM含有するようアルギニンを含有する。
【0124】
本液体医薬組成物は、1~500mMのアルギニン、好適には5~200mMのアルギニン、より好
適には10~100mMのアルギニン、より好適には20~80mMのアルギニン、好適には30mMのア
ルギニン又は60mMのアルギニンのいずれか、最も好適には60mMのアルギニンを含有してよ
い。本液体医薬組成物は、好適には10~50mMのアルギニン、好適には20~40mMのアルギニ
ンを含有してよい。本液体医薬組成物は、好適には、40~80mMのアルギニン、好適には50
~60mMのアルギニンを含有してよい。
【0125】
好適には、本液体医薬組成物がアルギニンを含有する場合、アルギニンは、アルギニン
のアダリムマブに対するモル比約1.44:1~約720:1、より好適には約7.2:1~約288:1
、より好適には約14.4:1~約144:1、より好適には約28.8:1~約115:1、好適には28.8
:1~57.6:1、好適には72:1~100:1で存在する。ある実施態様において、アルギニン
は、アルギニンのアダリムマブに対するモル比約43:1又は86:1、最も好適には約86:1
で存在する。
【0126】
好適には、本液体医薬組成物内のアダリムマブのアルギニンに対する重量比は、575:1
~1:1、好適には115:1~3:1、好適には60:1~5:1、好適には30:1~7:1である。特
定の実施態様において、本液体医薬組成物内のアダリムマブのアルギニンに対する重量比
は、30:1~10:1である。特定の実施態様において、本液体医薬組成物内のアダリムマブ
のアルギニンに対する重量比は、12:1~8:1である。特定の実施態様において、本液体
医薬組成物内のアダリムマブのアルギニンに対する重量比は、約20:1である。特定の実
施態様において、本液体医薬組成物内のアダリムマブのアルギニンに対する重量比は、約
10:1である。
【0127】
(具体的実施態様)
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は以下を含有する:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA、好適には濃度が最大でも0.14mMのEDTA;及び
(c)任意に、C2-C6ポリオール、より好適にはC2-C5ポリオール。
【0128】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は以下を含有し:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA、好適には濃度が最大でも0.14mMのEDTA;及び
(c)任意に、C2-C6ポリオール、より好適にはC2-C5ポリオール。
ここでこの組成物は、以下の1以上を非含有であるか又は実質的に非含有である:
i)マンニトール;
ii)リン酸塩及び/又はクエン酸塩を含有する緩衝系;
iii)アルギニン;及び/又は
iv)ヒスチジン。
【0129】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は、以下を含有する:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;及び
(c)C2-C5ポリオール。
【0130】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は、以下を含有する:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;及び
(c)最大でも5個のヒドロキシル基を含む、C2-C6ポリオール。
【0131】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は、以下を含有し:
(a)アダリムマブ;
(b)濃度0.001mM~2mMのEDTA;及び
(c)C2-C5ポリオール:
ここでこの組成物は、pH4.0~6.0を有する。
【0132】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は、以下を含有し:
(a)アダリムマブ;
(b)濃度0.01mM~1mMのEDTA;
(c)C2-C5ポリオール;及び
(d)酢酸緩衝系:
ここでこの組成物は、pH4.5~5.5を有する。
【0133】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は、以下を含有し:
(a)25~125mg/mLのアダリムマブ;
(b)濃度0.01mM~0.2mMのEDTA;及び
(c)最大でも4個のヒドロキシル基を有するC2-C5ポリオールであって、ここでアダリム
マブのポリオールに対する重量比は、20:1~2:1であり;
ここでこの組成物は、pH4.5~5.5を有する。
【0134】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は、以下を含有し:
(a)アダリムマブ;
(b)EDTA;及び
(c)グリセロール、プロピレングリコール、及びそれらの組合せから選択されたポリオ
ール:
ここでこの組成物は、pH4.5~5.5を有する。
【0135】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は、以下を含有し:
(a)25~125mg/mLのアダリムマブ;
(b)濃度0.01mM~0.2mMのEDTA;及び
(c)グリセロール、プロピレングリコール、及びそれらの組合せから選択されたポリオ
ールであって、ここでアダリムマブのポリオール(複数可)に対する重量比は、20:1~2:
1であり;
ここでこの組成物は、pH4.5~5.5を有する。
【0136】
特定の実施態様において、本発明の液体医薬組成物は、以下を含有し:
(a)25~125mg/mLのアダリムマブ;
(b)濃度0.05mM~0.15mMのEDTA;及び
(c)最大でも3個のヒドロキシル基を有するC2-C3ポリオールであって、ここでポリオー
ルのアミノ酸組合せに対するモル比は、10:1~1:1であり;
ここでこの組成物は、pH4.5~5.5を有する。
【0137】
特定の実施態様において、本液体医薬組成物は、以下を含有する:
(a)100pbwのアダリムマブ;
(b)0.001~1pbwのEDTA;
(c)1~100pbwのグリセロール、プロピレングリコール、及びそれらの組合せから選択さ
れた、ポリオール。
【0138】
特定の実施態様において、本液体医薬組成物は、以下を含有する:
(a)100pbwのアダリムマブ;
(b)0.005~0.1pbwのEDTA;
(c)5~50pbwのグリセロール、プロピレングリコール、及びそれらの組合せから選択さ
れた、ポリオール。
【0139】
特定の実施態様において、本液体医薬組成物は、以下を含有する:
(a)100pbwのアダリムマブ;
(b)0.02~0.04pbwのEDTA;
(c)14~19pbwのグリセロール又はプロピレングリコールから選択された、ポリオール。
【0140】
前記実施態様は、好適には更に、等張化剤(これは最も好適には塩化ナトリウムである)
を含有してよいが、好適には等張化剤の濃度は、最大でも50mM、好適には最大でも40mMで
ある。更にこのような実施態様は、好適には緩衝系(これは好適には酢酸緩衝系である)を
含有するが、好適にはこの緩衝系の濃度は、最大でも10mMである。塩化ナトリウムが液体
医薬組成物中に存在する場合、これは、好適には、濃度20~40mM、最も好適には約30mMで
存在する。
【0141】
先の具体的実施態様は、好適には、等張化剤(この等張化剤は、最も好適には塩化ナト
リウムである)を含まないか、実質的に含まないか、又は最大でも40mM(より好適には最大
でも30mM、より好適には最大でも20mM、より好適には最大でも10mM)含有することができ
る。好適には、本組成物が20mM又はそれ以下の塩化ナトリウムを含有する場合、特に本組
成物が、塩化ナトリウムを含まないか又は実質的に含まない場合、該組成物のpHは、pH4.
8~5.4、好適には4.9~5.3、好適には5.1~5.3、最も好適にはpH5.2(好適には±0.3)であ
る。従って、先に特定された任意のpHは、これらの範囲内のものであるように調節されて
よい。更にこのような実施態様は、好適には、緩衝系(これは好適には酢酸緩衝系である)
を含有するが、好適には緩衝系の濃度は、最大でも10mMである。
【0142】
先の具体的実施態様において、特に組成物が、等張化剤(この等張化剤は、最も好適に
は塩化ナトリウムである)を含まないか、実質的に含まないか、又は最大でも40mM(より好
適には最大でも30mM、より好適には最大でも20mM、より好適には最大でも10mM)含有する
場合、液体医薬組成物は、アルギニン、好適にはL-アルギニンを含有する。好適には該ア
ルギニンは、濃度50~70mMアルギニンで存在する。
【0143】
本発明は、好適には、アダリムマブ組成物が、等張化剤及び緩衝液などの、注射痛を誘
導する化合物を減少した量で含み製剤化されることを可能にする。
【0144】
(抗体を安定化する方法)
本発明はまた、液体アダリムマブ組成物を(化学的及び/又は物理的に)安定化する方法
も提供し、これは、アダリムマブを、本明細書において規定された液体医薬組成物の形成
に必要な任意の関連成分と混合することを含む。異なる実施態様は、好適には、潜在的に
異なる量での、混合されるべき成分の異なる組合せを必要とし、当業者は、本液体医薬組
成物に関連する先行する開示を参照することにより、そのような組合せ及び量を、容易に
推定することができる。このような成分の異なる組合せは、異なる点で液体アダリムマブ
組成物を安定化することができる。例えば、アダリムマブを前述の成分と混合し、本明細
書において規定された液体医薬組成物を形成することは、以下により、アダリムマブを安
定化することができる:
i)アダリムマブのタンパク質アンフォールディング温度を上昇すること;
ii)凝集物の形成を阻害すること;
iii)断片の形成を阻害すること;
iv)脱アミド化種又は異性体の形成を阻害すること;
v)肉眼では見えない粒子(≦25ミクロン又は≦10ミクロンのいずれか)の形成を阻害する
こと;
vi)濁りを阻害すること;
vii)pHの変化を阻害すること;
viii)光酸化を阻害すること;及び/又は
ix)凍結/融解サイクル時の不安定さを低下すること。
【0145】
従って、本発明は、以下の恩恵の一つ、いくつか、又は全てを達成する方法を提供し:
i)アダリムマブのタンパク質アンフォールディング温度の上昇;
ii)凝集物の形成の阻害;
iii)断片の形成の阻害;
iv)脱アミド化種又は異性体の形成の阻害;
v)肉眼では見えない粒子(≦25ミクロン又は≦10ミクロンのいずれか)の形成の阻害;
vi)濁りの阻害;
vii)pHの変化の阻害;
viii)光酸化の阻害;
ix)凍結/融解サイクル時の不安定さの低下;及び/又は
x)アイソフォームプロファイル(特に本明細書において規定された「主要ピーク」に関
して)の安定化;
この方法は、本明細書において規定されたアダリムマブの液体医薬組成物を製造するこ
とを含む。
【0146】
好適には、本発明の液体医薬組成物は、少なくとも6ヶ月、好適には少なくとも12ヶ月
、好適には少なくとも18ヶ月、より好適には少なくとも24ヶ月の棚寿命を有する。好適に
は、本発明の液体医薬組成物は、温度2~8℃で、少なくとも6ヶ月、好適には少なくとも1
2ヶ月、好適には少なくとも18ヶ月、より好適には少なくとも24ヶ月の棚寿命を有する。
【0147】
(当業者による重要な安定性特性の最適化)
本発明の液体医薬組成物の使用について明らかにされた成分の新規組合せは、当業者が
、先行技術の組成物に対し同等な又は増強された特性を示す組成物を製造する(及び適切
に微調整する)ことを可能にする。特に、本開示はここで、製剤安定性を最適化するため
、且つ特に以下の1以上を最適化するために必要なツールの全てを当業者に提供する:凝
集、断片化、脱アミド化、異性化、タンパク質アンフォールディング、沈殿、pH下降(sli
ppage)、及び酸化(特に光酸化)の阻害。更に、当業者は、そのような最適化をどのように
達成するか(適切に組成を変動することにより)、及びこのプロセスにおいて、何らかの有
害な副作用をどのように最小化するかの指針が与えられる。本開示は、当業者が、先行技
術の組成物と比べ同等な又は改善された特性を示す様々な具体的組成物を製造するために
本発明の範囲を超えて作業することを可能にし、且つこれはより少ない成分を用いて達成
することができる。
【0148】
(液体医薬組成物の製造方法)
本発明は、好適には本明細書において規定された、液体医薬組成物の製造方法を提供す
る。この方法は、好適には、本明細書において規定された液体医薬組成物を形成するため
に必要とされる任意の関連成分を、適切と考えられるいずれか特定の順番で、一緒に混合
することを含む。当業者は、実施例又は液体医薬組成物(特にシリンジを介した注射用の
もの)の形成に関して当該技術分野において周知の技術を参照することができる。異なる
実施態様は、好適には、潜在的に異なる量での、混合されるべき成分の異なる組合せを必
要とする。当業者は、液体医薬組成物に関する先行する開示を参照し、そのような組合せ
及び量を容易に推定することができる。
【0149】
好適には、この方法は、好適には全ての成分が、(実質的に又は完全に)希釈剤中に溶解
するように、好適には希釈剤(例えば水)中に、関連成分を一緒に混合することに関係する
。
【0150】
この方法は、アダリムマブを除く、一部又は全ての成分の予備-混合物(又は予備-溶液)
(任意に希釈剤の一部又は全てと)を、最初に調製することに関与し、次にアダリムマブは
、それ自身(任意に一部の希釈剤と、又はその中に予備-溶解される)、予備-混合物(又は
予備-溶液)と混合され、液体医薬組成物をもたらすか、あるいは最終の液体医薬組成物を
提供するためにそれに最終成分が添加される組成物をもたらす。最も好適には、予備-混
合物は、アダリムマブ以外の成分全て及び同じく任意に一部の希釈剤(これはアダリムマ
ブの予備-溶解に使用される)を含有し、好適にはその結果アダリムマブは、アダリムマブ
の最適な安定化をもたらす混合物に、添加される。好適には、前述の予備-混合物は、最
終の液体医薬製剤にとって所望のpHとなるよう調製される。
【0151】
好適には、この方法は、緩衝系、好適には本明細書において規定された緩衝剤を含有す
る緩衝系を形成することに関与する。この緩衝系は、好適には、アダリムマブの添加前に
、予備-混合物中に形成されるが、この緩衝系は、任意にアダリムマブ存在下で形成され
てよい。この緩衝系は、緩衝剤(既製品で供給される)の、その共役酸/塩基(好適には所
望のpHを提供するために適切な相対量で-これは当業者により理論的又は経験的に決定さ
れ得る)との単純な混合により形成されてよい。酢酸緩衝系の場合、これは、酢酸ナトリ
ウムを酢酸と混合することを意味する。あるいは、この緩衝系は、共役酸/塩基(例えば
酢酸)を現場で形成するために、強酸(例えばHCl)の緩衝剤(例えば酢酸ナトリウム)への添
加により(再度好適には、所望のpHを提供するための適切な相対量で)、形成されてよい。
あるいは、この緩衝系は、緩衝剤を現場で形成するために、強塩基(例えば水酸化ナトリ
ウム)の緩衝剤(例えば酢酸ナトリウム)の共役酸/塩基(例えば酢酸)への添加により(再度
好適には、所望のpHを提供するための適切な相対量で)、形成されてよい。最終液体医薬
組成物の予備-混合物のいずれかのpHは、必要量の強塩基もしくは強酸の、又はある量の
緩衝剤もしくは共役酸/塩基の添加によっても、適切に調節されてよい。
【0152】
いくつかの実施態様において、この緩衝剤及び/又は緩衝系は、個別の混合物として、
予め-形成され、且つ緩衝液交換により(例えば、関連の濃度又は重量オスモル濃度に達す
るまでのダイアフィルトレーションの使用)、緩衝系が、液体医薬組成物の前駆物(緩衝剤
及び/又は緩衝系として働く一部又は全ての成分を含有し、好適にはアダリムマブ及び可
能性としてアダリムマブのみを含有する)へ移される。最終液体医薬組成物を製造するた
めに、必要に応じ、追加の賦形剤が、その後添加されてよい。そのpHは、一旦又は全ての
成分が存在する時点又はその前に、調節されてよい。
【0153】
任意の、一部の、又は全ての成分は、他の成分との混合前に、希釈剤と予め-溶解され
るか又は予め-混合されてよい。
【0154】
最終の液体医薬組成物は、好適には粒状物質を除去するために、濾過されてよい。好適
な濾過は、1μm又はそれ以下、好適には0.22μmのサイズのフィルターを通される。好適
には、濾過は、PESフィルター又はPVDFフィルターのいずれか、好適には0.22μmのPESフ
ィルターを通される。
【0155】
本発明はまた、本明細書記載の製造方法により入手可能な、これにより入手された、又
は直接入手された液体医薬組成物も提供する。
【0156】
(薬物送達装置)
本発明は、本明細書において規定された液体医薬組成物を含有する、薬物送達装置を提
供する。好適には、薬物送達装置は、その内部に医薬組成物が収められたチャンバーを備
える。好適には、薬物送達装置は、滅菌されている。
【0157】
薬物送達装置は、バイアル、アンプル、シリンジ、注射式ペン(例えば、シリンジを本
質的に組み込んでいる)、又は静脈内バッグであってよい。最も好適には、薬物送達装置
は、シリンジ、好適には注射式ペンである。好適には、シリンジは、ガラス製シリンジで
ある。好適には、シリンジは、針、好適には29G 1/2”針を備える。
【0158】
本発明は、好適には本明細書において規定された、薬物送達装置の製造方法を提供し、
この方法は、薬物送達装置内に、本明細書において規定された液体医薬組成物を組み込む
ことを含む。このような製造は、典型的には、本明細書において規定された液体医薬組成
物の、シリンジへの、好適にはそれに添えられた針を介した充填に関与している。その後
針は、取り外しされるか、交換されるか又は保持されてよい。
【0159】
本発明の別の態様に従い、本明細書に規定された製造方法により入手可能な、これによ
り入手された、又はこれにより直接入手された薬物送達装置が、提供される。
【0160】
(パッケージ)
本発明は、本明細書において規定された液体医薬組成物を含有するパッケージを提供す
る。好適には、このパッケージは、本明細書において規定された薬物送達装置、好適には
複数の薬物送達装置を備える。このパッケージは、1以上の薬物送達装置を含むための任
意の好適な容器を含んでよい。
【0161】
本発明は、パッケージの製造方法を提供し、この方法は、パッケージ内に、本明細書に
おいて規定された液体医薬組成物を組み込むことを含む。好適には、これは、1以上の薬
物送達装置内への該液体医薬組成物の組み込み、それに続く1以上の予め-充填された薬物
送達装置のパッケージ内に存在する容器への組み込みにより、達成される。
【0162】
本発明は、本明細書に規定された製造方法により入手可能な、これにより入手された、
又はこれにより直接入手されたパッケージを、提供する。
【0163】
(部品のキット)
本発明は、薬物送達装置(その中に組み込まれた液体医薬組成物は含まない)、本明細書
において規定された液体医薬組成物(任意に個別のパッケージ又は容器内に収められる)、
及び任意に液体医薬組成物の投与(例えば皮下)に関する指示を伴う使用説明書のセットを
含む、部品のキットを提供する。その後使用者は、投与前に、薬物送達装置に、液体医薬
組成物(これはバイアル又はアンプル又はそのようなものなど中で提供されてよい)を充填
することができる。
【0164】
(医薬用液体組成物の使用及び治療方法)
本発明の別の態様に従い、本明細書において規定された;疾患又は医学的障害を治療す
る方法;療法において使用するための液体医薬組成物;疾患又は障害の治療のための医薬
品の製造における液体医薬組成物の使用;腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)-関連自己免疫
疾患を治療する方法;腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)-関連自己免疫疾患の治療において
使用するための液体医薬組成物;腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)-関連自己免疫疾患の治
療のための医薬品の製造における液体医薬組成物の使用;関節リウマチ、乾癬性関節炎、
強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、汗腺膿瘍、ブドウ膜炎及び/又は若年
性特発性関節炎を治療する方法;関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン
病、潰瘍性大腸炎、乾癬、汗腺膿瘍、ブドウ膜炎及び/又は若年性特発性関節炎の治療に
おいて使用するための液体医薬組成物;並びに、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊
椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、汗腺膿瘍、ブドウ膜炎及び/又は若年性特発性
関節炎の治療のための医薬品の製造における液体医薬組成物の使用:が提供される。
【0165】
本明細書に規定された液体医薬組成物は、前述の疾患又は医学的障害のいずれか1つ又
はそれよりも多くを治療するために使用されてよい。特定の実施態様において、本液体医
薬組成物は、関節リウマチ、クローン病及び乾癬を治療するために使用される。
【0166】
本液体医薬組成物は、好適には、非経口的に、好適には皮下注射により投与される。
【実施例0167】
(実施例)
(材料)
下記の材料を、以下の実施例において説明された製剤の調製において使用した:
【表3】
【0168】
(分析技術及びプロトコール)
以下のプロトコールの分析方法を、下記表において言及した理由のために、実施例及び
それに従うスクリーニング実験において、利用した:
【表4】
【0169】
上記分析方法の各々に関する個々のプロトコールを、次に以下に説明し、且つそのよう
な分析方法のいずれかに対する実施例及びスクリーニング実験における参照は、これらの
プロトコールを使用した。
【0170】
(目視評価)
目視できる粒子は、好適には2.9.20.欧州薬局方の医薬品各条(European Pharmacepoeia
Monograph)(粒子夾雑:目視可能な粒子)を用いて検出した。必要な装置は、以下を含む
ビューイングステーションからなる:
・垂直位置に保持された適切なサイズの艶消しの黒色パネル、
・黒色パネルの隣に垂直位置に保持された適切なサイズの無反射の白色パネル、
・好適な覆いのかかった白色光源、及び好適な光拡散装置(各々長さ525mmの2個の13W蛍
光灯を備えるビューイングイルミネーターが適している)をはめた調節可能なランプホル
ダー。ビューイングポイントでの照度は、2000lux~3750luxに維持される。
【0171】
容器から接着ラベルを取り外し、外側を洗浄し乾燥させる。この容器を、ゆっくり旋回
させるか又は倒置し、気泡が入っていないことを確認し、白色パネルの前で約5秒間観察
する。この手順を、黒色パネルの前で繰り返す。あらゆる粒子の存在を記録する。目視に
より透明な試料及び非常に少数の小さい粒子を含んだ試料は、「合格」として分類した。
乳光を発する試料を含む、大きい粒子又は多数の粒子のいずれかを含んだ試料は、「不合
格」として分類した。
【0172】
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))
アダリムマブ調製品の高速サイズ排除クロマトグラフィーは、300mm×4.6mmカラム中の
4μm相ジオールシリカ250Å細孔充填材料を伴うシステムに集中されたDionex Ultimate 3
000 UHPLC(登録商標)を用いて、実行する。このカラムは、50mMリン酸ナトリウム緩衝液
、400mM過塩素酸ナトリウム、pH6.3移動相中で平衡化する。流量は、0.35mL/分であり、U
V検出(214nm)を使用する。注入容積は、20μLである。全ての分析は、外界温度で実行す
る。
【0173】
(イオン交換クロマトグラフィー(IEX-HPLC))
アダリムマブ調製品の高速イオン交換クロマトグラフィーは、100mm×4.6mmカラム中に
7μm粒子の入ったAgilent technologies 1200シリーズHPLC(登録商標)システムを用いて
、実行する。このカラムは、20mMトリス pH8.3移動相により平衡化し、溶離は、20mMトリ
ス pH8.3、0.5M NaClによる勾配法により実行する。流量は、1mL/分であり、UV検出(230n
m)を使用する。注入容積は、50μLである。全ての分析は、25℃で実行する。
【0174】
(試料調製)
ふたつの異なる方法を使用し、60mg/mlストック溶液からアダリムマブの100mg/ml試料
を調製した:
【0175】
(タンジェンシャルフロー濾過(TFF))
TFF装置:KR2i TFF System(登録商標)(SpectrumLabs)を、D02-E030-05-N(30kDa細孔)TF
Fカラム(SpectrumLabs)に接続して、使用した。アダリムマブのストック溶液は、10mM酢
酸ナトリウム(pH5.0)に対してダイアフィルトレーションし、アダリムマブ濃度を150mg/m
lまで増した。最終試料の濃縮に続けて、濃縮された賦形剤を含有する溶液を添加し、100
mg/mlアダリムマブ及び各賦形剤の正確な最終濃度を達成した。
【0176】
(超遠心分離)
アダリムマブのストック溶液(60mg/ml、15ml)を、Amiconチューブ(分子量カットオフ値
30kDa)中に配置した。このチューブを、2000g、21℃で、30分間、超遠心分離した。この
時点で、容積は、5ml(すなわちアダリムマブの3倍濃度)まで減少した。10mMの酢酸緩衝液
(10mM)を添加し、このプロセスを、4回繰り返した。最終試料の濃縮に続けて、濃縮され
た賦形剤を含有する溶液を添加し、100mg/mlアダリムマブ及び各賦形剤の正確な最終濃度
を達成した。
【0177】
(酢酸緩衝液)
先の試料調製品において使用した酢酸緩衝液は、ふたつの方法の一方により作製した。
一つの方法は、酢酸ナトリウムから出発し、所望のpHまで酸性化するのに対し、別の方法
は、酢酸から出発し、所望のpHまで塩基性化した。
【0178】
実施例の製剤(例えば下記の実施例1-2)は、pHと一緒に酢酸ナトリウムと明記され、対
応する酢酸緩衝液は、所望のpHを生じるための塩酸の適切な量による、明記された濃度の
酢酸ナトリウムの酸性化により調製された。
【0179】
実施例の製剤(例えば下記の実施例3)は、pHと一緒に酢酸と明記され、対応する酢酸緩
衝液は、所望のpHを生じるための水酸化ナトリウムの適切な量による、明記された濃度の
酢酸の塩基性化により調製された。
【0180】
(実施例1-EDTAのアダリムマブの安定性に対する作用の研究)
40℃で貯蔵時の、EDTAのアダリムマブ(100mg/ml)の安定性に対する作用を、評価した。
試料は、TFFプロセスにより調製した。アダリムマブの凝集は、40℃で4週間の貯蔵の前及
び後に、SEC、目視評価及びIEX-HPLCにより評価した。作用は、以下を含有するバックグ
ラウンド製剤において試験した:
・酢酸ナトリウム(8mM)
・塩化ナトリウム(34mM)
・トレハロース(134mM)
・ポリソルベート20(1mg/ml)
・注射用水
・pH5.0。
【0181】
結果を表1に示す。HMWSの増加の割合は、EDTAの存在(1又は45mM)により減少した。この
作用は、1mMの濃度でわずかにより顕著であり、このことは、過剰なEDTAは必要ではなく
、且つわずかに有害でさえあり得ることを示していた。1mMのEDTAの正の作用はまた、ア
ダリムマブの化学安定性についても認められた。
【0182】
IEX-HPLCクロマトグラム上の主要ピークの保持は、1mMのEDTAの存在下で、その非存在
下よりもより大きかった。しかし、45mMのEDTAの存在は、化学安定性に対し無視できる作
用を有し、更にこれは過剰なEDTAは恩恵がないことを示している。試験した全ての製剤は
、目視評価試験に合格し、非常に少数の小さい粒子が、40℃で4週間の貯蔵後に認められ
た。
表1. 40℃で4週間の貯蔵後のEDTAのアダリムマブ(100mg/ml)の物理安定性及び化学安
定性に対する作用。物理安定性は、%HMWSの増加及び目視評価により評価した。化学安定
性は、IEX-HPLCクロマトグラム上の主要ピークの減少として表現した。全ての製剤は、酢
酸ナトリウム(8mM)、トレハロース(134mM)、塩化ナトリウム(34mM)、ポリソルベート20(1
mg/ml)及び注射用水を含有し、且つpH5.0に調節した。合格=目視可能な粒子を含まない
事実上透明な溶液;合格(-)=非常に少数の小さい粒子;不合格=粒子及び/又は乳光の
形成。
【表5】
【0183】
(実施例2-異なるポリオールのEDTAの存在下でのアダリムマブの安定性に対する作用の
研究)
40℃で貯蔵時の、3種の異なるポリオールのアダリムマブ(100mg/ml)の安定性に対する
作用を、1mM EDTA又は0.1mM EDTAのいずれかの存在下で、評価した。従って、この実験は
また、EDTA作用の濃度依存性をさらに調べることを可能にした。試料は、超遠心分離プロ
セスにより調製した。アダリムマブの凝集は、40℃で4週間の貯蔵の前及び後に、SEC、目
視評価及びIEX-HPLCにより評価した。作用は、以下を含有するバックグラウンド製剤にお
いて試験した:
・酢酸ナトリウム(8mM)
・塩化ナトリウム(34mM)
・ポリソルベート20(1mg/ml)
・注射用水
・pH5.0。
【0184】
結果を表2に示す。HMWSの増加の割合は、プロピレングリコール又はグリセロールのい
ずれかの存在下で、トレハロースの存在下よりもわずかに低かった。各ポリオールに関し
て、最小の差異が、1mM EDTAを含有する製剤と、0.1mM EDTAを含有する製剤の間で認めら
れた。EDTAを含有する全ての製剤は、同等の化学安定性を示した。
表2. EDTA(1mM又は0.1mM)存在下での40℃で4週間の貯蔵後のトレハロース、プロピレ
ングリコール及びグリセロールのアダリムマブ(100mg/ml)の物理安定性及び化学安定性に
対する作用。物理安定性は、%HMWS増加及び目視評価により評価した。化学安定性は、IE
X-HPLCクロマトグラム上の主要ピークの減少として表現した。全ての製剤は、酢酸ナトリ
ウム(8mM)、塩化ナトリウム(34mM)、ポリソルベート20(1mg/ml)及び注射用水を含有し、
且つpH5.0に調節した。合格=目視可能な粒子を含まない事実上透明な溶液;合格(-)=非
常に少数の小さい粒子;不合格=粒子及び/又は乳光の形成。
【表6】
【0185】
(実施例3-選択された製剤の安定性試験)
いくつかの本発明の更なる製剤を調製し、且つその安定性を、30℃で試験した。製剤は
、先に記した超遠心分離プロセスにより調製し、全ての製剤は、100mg/mlアダリムマブを
含んだ。アダリムマブの安定性は、30℃で4週間の貯蔵の前及び後に、SEC、目視評価及び
IEX-HPLCにより評価した。試験した製剤の組成は、表3に示している。
表3. 発明の製剤の組成
【表7】
【0186】
結果は、表4に示している。試験した製剤は全て、30℃で4週間の貯蔵後、目視評価試験
に合格し、高分子量種の非常に小さい増加のみが、同じ期間に認められた。IEX-HPLCは、
30℃で4週間の貯蔵後、主要ピークのおよそ7~9%の減少を示した。
表4. 30℃で4週間の貯蔵後の選択された製剤の安定性。物理安定性は、%HMWS増加及
び目視評価により評価した。化学安定性は、IEX-HPLCクロマトグラム上の%主要ピークの
減少として表した。合格=目視可能な粒子を含まない事実上透明な溶液;合格(-)=非常
に少数の小さい粒子;不合格=著しい数の粒子
【表8】
(実施例4-選択された製剤の安定性試験)
2種の追加の本発明の製剤(製剤H及びI)を調製し、且つそれらの安定性を、2~8℃、25
℃及び30℃で試験した。これらの製剤は、先に説明された超遠心分離プロセスにより調製
し、且つ全ての製剤は、100mg/mlアダリムマブを含んだ。一旦調製した製剤は、シリンジ
(ヘッドスペースなしで0.5ml充填)へ移した。アダリムマブの安定性は、充填済みのシリ
ンジ中で、2~8℃、25℃及び30℃で最大26週間の貯蔵の後に、目視評価、SEC(高分子量種
(HMWS)及び低分子量種(LMWS)の評価)、並びにIEX-HPLC(脱アミド化された種、酸化された
種及び他の不純物の評価)により評価した。製剤の安定性は、市販のアダリムマブ製品(Hu
mira(登録商標)、100mg/ml)(製剤J)の安定性と比較した。加えて、更なる比較を可能にす
るために、この製剤の安定性を、賦形剤及びpHに関して市販のHumira(登録商標)(100mg/m
l)製品のものと同一であるが、本発明の製剤において使用したものと同じアダリムマブ活
性成分を含有する組成物(製剤K)と比較した。全ての製剤の安定性は、充填済みのシリン
ジ(0.5ml充填)において試験した。試験した製剤の組成は、表4に示している。
結果は、表5(2~8℃)、表6(25℃)及び表7(30℃)に示している。市販のHumira(登録商標
)(100mg/ml)製品(製剤J)の出発の不純物の値は、本発明の製剤において使用したものと同
じアダリムマブ活性成分を使用し調製した同一組成の製品(製剤K)において認められるも
のとは、わずかに異なった。しかし、不純物増加のその後の傾向は、これら2種の製剤間
で同等であった。本発明の2種の製剤(製剤H及びI)は、製剤J及びKのそれと同等の安定性
を示した。実際、製剤Iは、製剤J及びKのそれよりも、わずかにより良い物理安定性(すな
わち、HMWS及びLMWSの増加)を有するのに対し、同等の化学安定性(すなわち、脱アミド化
種、酸化種及び他の種の増加)を有するように見えた。
表4. 本発明の製剤の組成
【表9】
表5. 最大26週間の2~8℃での貯蔵後の製剤H-Kの安定性
【表10】
表6. 最大26週間の25℃での貯蔵後の製剤H-Kの安定性
【表11】
表7. 最大26週間の30℃での貯蔵後の製剤H-Kの安定性
【表12】
(略号)
HMWS-高分子量種
IEX-HPLC-イオン交換クロマトグラフィー
SEC-サイズ排除クロマトグラフィー
TFF-タンジェンシャルフロー濾過