(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058653
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】骨量減少または筋機能低下に関連する病的状態を治療する際に使用するためのマイクロRNA19A/19B
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20230418BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230418BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230418BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
A61K 38/29 20060101ALI20230418BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K31/7088
C12N15/11 Z ZNA
A61K48/00
A61P21/00
A61P19/10
A61P19/00
A61P43/00 121
A61K38/29
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020602
(22)【出願日】2023-02-14
(62)【分割の表示】P 2019554798の分割
【原出願日】2018-04-06
(31)【優先権主張番号】LU100182
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(71)【出願人】
【識別番号】505134006
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテーツクリニクム ハンブルク-エッペンドルフ
【氏名又は名称原語表記】Universitaetsklinikum Hamburg-Eppendorf
【住所又は居所原語表記】Martinistrasse 52, D-20246 Hamburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】ヘッセ エリック
(72)【発明者】
【氏名】タイパリーンマキ ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】サイトウ ヒロアキ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】骨量減少または筋機能低下に関連する疾患または病的状態の治療または予防剤、あるいは癌関連の骨破壊の治療または予防剤を提供する。
【解決手段】マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤を含む治療または予防剤であり、前記阻害剤が、以下の(1)~(4)のいずれかに示す核酸またはその核酸アナログである、治療または予防剤。(1)マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bとハイブリダイズして、マイクロRNAが標的のmRNAへ結合するのを防ぐ二重鎖を形成できる配列を含む、または該配列からなる、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチド、(2)マイクロRNAスポンジ、(3)レンチベクターベースの抗マイクロRNA(miRZip)、(4)タフデコイ阻害剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤を含む、骨量減少または筋機能低下に関連する疾患または病的状態の治療または予防剤、あるいは癌関連の骨破壊の治療または予防剤であり、
前記阻害剤が、以下の(1)~(4)のいずれかに示す核酸またはその核酸アナログであり、
(1)マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bとハイブリダイズして、マイクロRNAが標的のmRNAへ結合するのを防ぐ二重鎖を形成できる配列を含む、または該配列からなる、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチド、
(2)マイクロRNAスポンジ、
(3)レンチベクターベースの抗マイクロRNA(miRZip)、
(4)タフデコイ阻害剤、
骨量減少関連する前記疾患または病的状態が、骨粗鬆症または骨形成不全症(OI)であり、
筋機能低下に関連する前記疾患または病的状態が、筋萎縮、サルコペニア、または悪液質であり、
前記癌関連の骨破壊が骨転移によって引き起こされるものである、治療または予防剤。
【請求項2】
前記治療または予防剤が副甲状腺ホルモンまたはその断片と組み合わせて使用される、請求項1に記載の治療または予防剤。
【請求項3】
静脈内、皮下、経皮、または経粘膜投与により投与される、請求項1又は2に記載の治療または予防剤。
【請求項4】
注入または注射により投与される、請求項3に記載の治療または予防剤。
【請求項5】
前記阻害剤が、
(a)配列番号1または配列番号2の配列、または
(b)配列番号1または配列番号2の配列の相補鎖、または
(c)それらに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bにハイブリダイズすることができる、(a)または(b)の配列のいずれかの変異体
を含むDNAである、請求項1~4のいずれかに記載の治療または予防剤。
【請求項6】
(a)マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤、および(b)の薬学的に許容される担体を含む、骨量減少に関連する疾患または病的状態の治療又は予防用、筋機能低下に関連する疾患または病的状態の治療又は予防用、あるいは癌関連の骨破壊の治療または予防用の医薬組成物であり、
前記阻害剤が、以下の(1)~(4)のいずれかに示す核酸またはその核酸アナログであり、
(1)マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bとハイブリダイズして、マイクロRNAが標的のmRNAへ結合するのを防ぐ二重鎖を形成できる配列を含む、または該配列からなる、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチド、
(2)マイクロRNAスポンジ、
(3)レンチベクターベースの抗マイクロRNA(miRZip)、
(4)タフデコイ阻害剤、
骨量減少関連する前記疾患または病的状態が、骨粗鬆症または骨形成不全症(OI)であり、
筋機能低下に関連する前記疾患または病的状態が、筋萎縮、サルコペニア、または悪液質であり、
前記癌関連の骨破壊が骨転移によって引き起こされるものである、医薬組成物。
【請求項7】
前記阻害剤がDNAまたはRNAである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
静脈内、皮下、経皮、または経粘膜投与により投与される、請求項6又は7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
注入または注射により投与される、請求項8に医薬組成物。
【請求項10】
前記阻害剤が、
(a)配列番号1または配列番号2の配列、または
(b)配列番号1または配列番号2の配列の相補鎖、または
(c)それらに対して少なくとも90%の配列同一性を有し、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bにハイブリダイズすることができる、(a)または(b)の配列のいずれかの変異体
を含むDNAである、請求項6~9のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロRNA19aおよび19bの阻害剤、ならびに骨量減少、特に骨粗鬆症および骨形成不全症(OI)に関連する状態または疾患を治療または予防するための阻害剤の使用に関する。阻害剤は、単独で、または副甲状腺ホルモンまたはその組換え断片と併用投与された場合に、骨同化作用を誘発するのにも有用である。本発明はさらに、マイクロRNA19aおよび19bの阻害剤、ならびに筋機能低下、特に筋変性および筋萎縮に関連する状態または疾患を治療または予防するための阻害剤の使用に関する。阻害剤は、筋機能の安定化および/または強化にも有用である。さらに、マイクロRNA19aおよび19bの阻害剤は、癌関連の骨破壊または骨転移の治療または予防に使用できる。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症は、女性および男性の筋骨格系の最も一般的な疾患であり、頻繁に脆弱性骨折を引き起こす。これらの骨折は、多くの場合、特に高齢者の罹患率と死亡率を増加させるため、大きな医学的および社会経済的負担となる。骨は、骨吸収性破骨細胞と骨形成骨芽細胞によって生涯にわたって絶えず分解および再構築される非常に動的な組織であるが、これらの過程は、骨量を一定に保つために緊密に結合され、またバランスが取られている。加齢に伴い、骨吸収が増加しながらも骨形成が減少するため、骨量が減少し、最終的に骨粗鬆症になる。
【0003】
ビスホスホネートやRANKL中和抗体(Denosumab(商標))などの確立された抗吸収薬は、破骨細胞の活性を阻害し、それにより骨量のさらなる損失を防ぐことにより、骨粗鬆症の治療アプローチを提供する。対照的に、副甲状腺ホルモンの組み換え断片(文献ではPTH 1-34またはテリパラチド(Forteo(商標)/Forsteo(商標))と称する)の投与は、現在利用可能な唯一の骨同化療法である。ただし、PTH療法では、PTH1-34断片を毎日注射する必要があり、安全上の懸念から、療法は24か月の全期間に制限されている。したがって、骨量減少を防止し、および/または骨量および骨密度の増加をもたらすさらなる治療法が必要である。
【0004】
マイクロRNA(miRNA)は、タンパク質をコードする遺伝子の発現をブロックできる非コードRNAである。miRNAは、哺乳類および非哺乳類動物を含む多くの生物のゲノムにコードされていることがわかっている。miRNAは、その塩基相補性により、標的遺伝子のmRNAの3’非翻訳領域(3’-UTR)に結合できる。結合する配列と関与するタンパク質の相補性に応じて、miRNAはmRNAの翻訳を阻害するか、mRNAの分解を誘導する。miRNAと同族mRNAとの間の部分的な塩基相補性は通常、mRNA翻訳の阻害をもたらすが、完全な塩基相補性はmRNAの分解を誘発する。
【0005】
miRNAは通常18~24ヌクレオチド長で、前駆体分子の段階的な処理によって生成される。miRNAは、エンコーディング遺伝子またはイントロンのいずれかからポリメラーゼIIまたはIIIによって転写される。遺伝子の転写から生じる一次転写物は、一次マイクロRNA(pri-miRNA)と呼ばれる。それは、500~3000ヌクレオチド長を備え、5’末端に7-メチルグアノシンキャップを、3’末端にポリAテールを保持する。pri-miRNAは、細胞核内でRNAse III酵素DroshaとdsRNA結合タンパク質DGCR8によって処理され、長さ70~80ヌクレオチドの前駆体マイクロRNA(pre-miRNA)に至る。pre-miRNAは特徴的なヘアピン構造を形成し、核の細孔を介して細胞質に輸送され、そこでRNAse III酵素ダイサーによって17~24ヌクレオチドの長さのds-miRNAに処理される。ダイサーは、ds-miRNAに特異的に結合するタンパク質と相互作用して、これらの二重鎖を巻き戻す。結果として生じるss-miRNAは、それぞれの標的mRNAの発現を妨げる可能性がある。
【0006】
いくつかのmiRNAは、多数の生理学的および発達過程の調節に関与していることが報告されている。最近、miRNAは、C型肝炎[1]、慢性リンパ性白血病[2]、結腸直腸癌[3]、肥満[4]、または統合失調症[5]などの疾患を治療するための潜在的な治療標的として大きな注目を集めてきた。
【0007】
本発明は、miRNA-19aおよびmiRNA-19bが骨形成の調節に関与し、これらのmiRNAの阻害が骨量減少を予防または低減する非常に効率的な方法であるという洞察に基づいている。したがって、これらのmiRNAの阻害は、骨量の減少に関連する骨粗鬆症などの疾患の治療に有用である。miRNA-19aおよびmiRNA-19bの阻害剤は同化作用を発揮し、単独で、または互いに組み合わせて使用できる。好ましい実施形態では、骨同化効果を高めるために、miRNA-19aおよび/またはmiRNA-19bの1つまたは複数の阻害剤を、副甲状腺ホルモン、またはPTH1-34などのその断片と併用する。本発明はさらに、miRNA-19aおよびmiRNA-19bが筋肉再生の調節、特に筋肉量、筋力および/またはパフォーマンスの低下の防止に関与することを示す。以下の例に示すように、これらのmiRNAの阻害は、様々な条件下での筋機能の損失を防ぐのに効果的である。したがって、これらのmiRNAの阻害は、筋ジストロフィー、筋萎縮、サルコペニア、または癌誘発性悪液質などの悪液質のような疾患の治療にも有用である。本発明はさらに、miRNA-19aおよびmiRNA-19b阻害剤が、癌誘発骨破壊および骨転移、特に骨への乳癌転移の予防または治療に使用できることを示している。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、本発明は、骨量減少に関連する疾患を治療する方法で使用するためのマイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤を提供する。病理学的な程度の骨量減少に関連する疾患は、例えば、骨代謝が高い状態での異常な骨吸収および/または骨形成を特徴とする疾患であり得る。本明細書において、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害は、骨量減少の病的レベルが生じる疾患および状態を治療するためのマイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19b阻害剤の有用性を実証する強力な骨同化作用をもたらすことを以下に示す。そのような疾患および状態には、特に骨粗鬆症および骨形成不全症(OI)が含まれる。したがって、好ましい態様において、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19b阻害剤によって治療される疾患および状態は骨粗鬆症である。本明細書で使用される場合、「骨粗鬆症」という用語には、原発性骨粗鬆症、続発性骨粗鬆症、および閉経後骨粗鬆症などのあらゆる形態の骨粗鬆症が含まれる。性ステロイドの欠乏により誘発される骨粗鬆症、およびグルココルチコイドにより誘発される骨粗鬆症も含まれる。阻害剤は、骨同化作用を必要とする状態の治療にも有用である。例えば、骨折を患う患者に阻害剤を一時的に使用すると、骨量の誘導により自然な治癒の過程を促進することができる。好ましい態様において、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤は、単独で、すなわち、他のいずれかの活性成分なしで使用される。別の好ましい態様において、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤は、副甲状腺ホルモンまたはその断片、例えばPTH1-34と組み合わせて使用される。マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤は、PTH1-34によって付与される骨同化作用を効果的に増強する。
【0009】
別の態様では、本発明は、筋肉量または機能の損失に関連する疾患を治療する方法で使用するためのマイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤を提供する。本発明者らは、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの発現を阻害すると、筋機能が著しく増加または回復することを見出した。したがって、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤は、同様に、筋ジストロフィーまたは筋萎縮のような疾患の治療における治療的使用に適している。好ましい態様では、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19b阻害剤は、筋ジストロフィー、サルコペニア、癌誘発性悪液質などの悪液質、または筋萎縮の治療に使用される。別の好ましい態様では、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19b阻害剤は、性ステロイド欠乏誘発性または糖質コルチコイド誘発性骨粗鬆症などの骨粗鬆症に関連する筋機能の損失を治療するために使用される。別の好ましい態様において、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19b阻害剤は、乳癌の骨転移に関連する筋機能の損失を治療するために使用される。さらに別の好ましい態様では、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19b阻害剤は、骨形成不全症(OI)に関連する筋機能の損失を治療するために使用される。さらに別の好ましい態様において、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19b阻害剤は、筋ジストロフィー、特にジストロフィン遺伝子の突然変異による遺伝性筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型またはベッカー型に関連する筋機能の損失を治療するために使用される。
【0010】
別の態様では、本発明は、癌関連の骨破壊を予防または治療する方法で使用するためのマイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤を提供する。本明細書において、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤は、骨破壊性MDA-MB-231転移性乳癌細胞の増殖を効果的に阻害することが見出された。したがって、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤は、癌関連の骨破壊の治療的処置または予防、乳癌から生じる骨転移などの骨転移の治療または予防に、使用することができる。
【0011】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、骨形成不全症(OI)を治療する方法で使用するためのマイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤を提供する。脆性骨疾患としても知られる骨形成不全症は、I型コラーゲンをコードする遺伝子の1つまたは複数の変異によって引き起こされる、骨に影響するまれな遺伝性疾患である。OIを引き起こすいくつかの変異およびサブタイプが同定されている。OIを患う者は、些細な外傷があると、または外傷がなくても骨折することがある。OIは、非常に重度なものから軽度のものまである。最重度の型のOIを患う個人は、出生時に死亡することがある。生存している重度のOIの者たちは、腕や脚が曲がっていたり、身長が非常に低かったり、歩くことができなかったりする場合がある。最も軽度の形態のOIの者たちは、骨をたまにしか折らず、通常の身長で、通常の寿命であることがある。骨折はどの骨でも発生する可能性があるが、最も一般的なのは腕と脚である。重度の型のOIの現在の標準治療には、ビスホスホネートの使用と、骨を強化するために骨にロッドを挿入する手術が含まれる。ビスホスホネートによる吸収抑制治療は、破骨細胞依存性の骨吸収の減少を対象としている。吸収を減らすことにより、より多い骨量が得られる。骨の質は不良なままであるが、骨量が多いと骨折のリスクが大幅に減少する。さらに、骨形成剤は骨量をさらに増加させるのに効果的であることが示されており、現在臨床試験で検討されている。本明細書では、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤が様々な条件下で骨形成および骨量を改善することが示されているため、それらはOIの治療に適している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
マイクロRNA19aおよび/または19bは、miRNA17、18、19a、20a、19b-1、および192を含むポリシストロン性クラスターmiR-17~92から発現することが知られている。これらのマイクロRNAのいくつかは、すでにヒトの癌に関連付けられている。
【0013】
本発明では、骨量減少または筋機能低下に関連する疾患を治療するためにマイクロRNA19aおよび/または19bの阻害剤を使用することを提案する。本発明はこれに関して限定されないが、疾患または状態に苦しむ対象はヒト対象であることが好ましい。好ましくは、対象は少なくとも30歳、好ましくは少なくとも40歳、少なくとも45歳、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、または少なくとも65歳である。
【0014】
原則として、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bまたはそれらのpre-miRNAを妨害する任意の種類の分子を使用して、これらのマイクロRNAまたはそれらの対応するpre-miRNAの発現または機能を低減またはブロックできる。本明細書で使用される阻害剤は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)分子などの核酸分子、または以下で説明するように修飾されたそれらの誘導体であることが好ましい。阻害剤は、同種のmiRNA、すなわちマイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bとハイブリダイズして、マイクロRNAが標的のmRNAへ結合するのを防ぐ二重鎖を形成できる配列を含む、または該配列からなるDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドであることが、特に好ましい。マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bまたはそれらのpri-miRNAの阻害のための他の技術は当業者に知られており、マイクロRNAスポンジ、レンチベクターベースの抗マイクロRNA(miRZip)およびタフデコイ阻害剤が含まれる。
【0015】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドモノマーのオリゴマーまたはポリマーを指す。本発明によれば、オリゴヌクレオチドは任意の長さであり得るが、好ましくは8~50ヌクレオチド、より好ましくは10~40ヌクレオチド、12~30ヌクレオチド、15~25ヌクレオチド、最も好ましくは18~24ヌクレオチドの長さを有する。例えば、オリゴヌクレオチドは、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48または50ヌクレオチドの長さを有し得る。いくつかの適用では、オリゴヌクレオチドは、50個を超えるヌクレオチド、例えば60、70、80、90または100個のヌクレオチドを含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、または部分的に二本鎖の核酸分子であり得る。オリゴヌクレオチドを生成する方法は広く知られており、化学合成またはPCRベースの方法を含む。
【0016】
オリゴヌクレオチドは、好ましくは、ホスホジエステルブリッジにより結合されたヌクレオチドモノマーからなる。しかし、糖リン酸骨格が機能的に類似した構造、例えばペプチド骨格、またはホスホルアミド、チオリン酸、メチルホスホン酸またはジチオリン酸骨格で置換されたオリゴマーまたはポリマーを使用することもできる。場合によっては、これらの修飾により、治療対象への投与後のヌクレアーゼによる酵素分解に対するオリゴヌクレオチドの耐性が増加する。
【0017】
さらに、1つ以上の修飾された糖残基を有するオリゴヌクレオチドも本発明に含まれる。例えば、1つまたは複数のヒドロキシル基をハロゲンまたは脂肪族基で置き換えるか、エーテル、アミンまたは類似の構造で官能化することができる。好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドは、メチル(OMe)またはメトキシエチル(MOE)基を付加することにより2’ヒドロキシルが修飾された1つ以上の糖を含む。これらの糖修飾は、酵素分解に対するより高い安定性と耐性をもたらす。
【0018】
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、天然に存在する塩基であるアデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシルとともに、またはそれらの代わりに、修飾された塩基を含んでもよい。前述の修飾された塩基は、例えば、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、2-チオシトシン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、5-プロピニル-ウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、5-ウラシル、4-チオウラシル、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、8-チオールアデニン(8-thioladenine)、チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、8-チオールグアニン(8-thiolguanine)、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニンおよび/または3-デアザアデニンを含む。
【0019】
上記とは別に、本発明のオリゴヌクレオチドはまた、その3’および/または5’末端に1つまたは複数の修飾を含んでもよい。例えば、末端の一方または両方を保護基に結合して、オリゴヌクレオチドがヌクレアーゼによる酵素分解を受けにくくなるようにすることができる。
【0020】
好ましくは、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤は、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bに実質的に相補的である。阻害剤の抗マイクロRNA19a(5’-TGCATAGATTTGCAC-3’)および抗マイクロRNA19b(5’-TGCATGGATTTGCAC-3’)の配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2に記載されている。マイクロRNA19aおよびマイクロRNA19bの配列は、それぞれ配列番号3および配列番号4に示されている。オリゴヌクレオチドは、少なくとも10、12、14、16、18または20ヌクレオチドの長さに対して少なくとも70%の配列同一性を含む場合、これらの配列のいずれかに実質的に相補的である。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、20ヌクレオチドの長さに対して少なくとも70%の配列同一性を有する。好ましくは、配列同一性は少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。オリゴヌクレオチドは、少なくとも10、12、14、16、18または20ヌクレオチドの長さに対して完全に相補的であることが特に好ましい。一実施形態では、相補性の領域は、5未満の不一致、例えば4、3、2、または1つの不一致を有する。
【0021】
特に好ましい態様において、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNAの阻害剤は、
(a)配列番号1または配列番号2の配列、または
(b)配列番号1または配列番号2の配列の相補鎖、または
(c)それらに対して少なくとも70%の配列同一性を有し、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bにハイブリダイズすることができる、(a)または(b)の配列のいずれかの変異体
を含むDNAである。
【0022】
上に開示された阻害剤は、好ましくは医薬組成物として投与される。したがって、別の態様では、本発明は、(a)核酸または核酸アナログなどの、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。上述のように、阻害剤は好ましくはDNAまたはRNA分子である。一態様では、医薬組成物は、好ましくは、骨量減少に関連する疾患を治療する方法で使用するためのものである。別の態様では、医薬組成物は、好ましくは、筋機能の損失に関連する疾患を治療する方法で使用するためのものである。
【0023】
核酸ベースの阻害剤を含む医薬組成物の調製は、薬剤学の分野に従事する者に周知である。典型的には、そのような組成物は、液状の溶液または懸濁液として注射用に調製される。薬学的に活性な阻害剤は、ヒトの患者で使用される場合、阻害剤と適合する賦形剤と混合することができる。本発明の医薬組成物は、通常、活性成分として溶解または分散されたマイクロRNA阻害剤分子とともに生理学的に許容される担体を含む。
【0024】
薬学的に許容される担体は、例えば、水、生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液を含む。マイクロRNA阻害剤を含む組成物にさらに適した担体は、標準的な教科書、例えば“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,Mack Pub.Co.,New Jersey(1991)に記載されている。担体に加えて、本発明の医薬組成物は、本発明のマイクロRNA阻害剤の阻害活性を妨害しないという条件で、任意の濃度の湿潤剤、緩衝剤、安定剤、染料、防腐剤などを含み得る。
【0025】
治療を必要とする部位にマイクロRNA阻害剤を提供するには、様々な投与経路が実行可能である。医薬組成物は、例えば非経口投与用に製剤化されてもよい。非経口投与には、静脈内、皮内、動脈内、皮下、局所、経粘膜、経皮または直腸投与が含まれる。特に好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、注射または注入(infusion)用に製剤化される。
【0026】
注射に適した医薬組成物には、通常、無菌の水溶液または分散液、および無菌の注射液または分散液の即時調製用の無菌の粉末が含まれる。さらに、組成物は、製造および保管の通常の条件下で安定しているべきである。無菌性を維持するために、医薬組成物は通常、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの防腐剤を含み、製品の微生物の増殖を抑制する。静脈内または動脈内投与の場合、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれ得る。また、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であってもよい。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物に含めることにより、達成することができる。無菌の注射液は、適切な溶媒に必要量のマイクロRNA阻害剤を上記の成分の1つ以上と混合し、その後無菌でろ過することで調製できる。同様に、分散物は、マイクロRNA阻害剤を、分散媒体および必要に応じてこれまでに概説した他の成分を含む無菌のビヒクルに組み込むことにより調製される。無菌の溶液はまた、真空乾燥または凍結乾燥などの当技術分野で知られている方法によって無菌の粉末の形態でマイクロRNA阻害剤を提供し、注射用の最終的な溶液を得るために無菌の液体で粉末を再構成することによって得ることもできる。あるいは、本発明による医薬組成物はまた、連続注入によって投与することもできる。
【0027】
医薬組成物の投与は、経粘膜または経皮送達によって達成されてもよい。経粘膜または経皮投与の場合、本発明のマイクロRNA阻害剤を含む医薬組成物は、皮膚または粘膜関門を通過するのに適した浸透剤を含み得る。そのような浸透剤は当技術分野で知られており、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で一般的に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化される。経皮組成物は、例えばパッチまたは極微針により投与することができる。好ましくは、化合物は、ココアバターおよび直腸送達用の他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を用いて、坐薬の形態で調製される。
【0028】
一実施形態では、マイクロRNA阻害剤は、インプラントやマイクロカプセル化送達システムを含む放出制御製剤など、阻害剤を身体からの排出から保護する担体とともに調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用できる。放出制御製剤を調製する方法は、当技術分野で周知である。さらに、徐放性組成物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例には、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、造形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体などが含まれる。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、治療有効量のマイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤、またはそのような阻害剤を含む上で定義した医薬組成物を投与することを含む、骨粗鬆症やOIなどの骨量減少の病的レベルに関連する疾患または状態を治療する方法を提供する。さらに別の態様では、本発明は、治療有効量のマイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの阻害剤、またはそのような阻害剤を含む上記で定義した医薬組成物を投与することを含む、筋ジストロフィー、サルコペニア、癌誘発性悪液質などの悪液質、または筋萎縮などの筋機能の損失に関連する疾患または状態を治療する方法を提供する。
【0030】
マイクロRNA阻害剤の治療有効量は、典型的には、投与時に、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19b、またはそれらのそれぞれのpri-もしくはpre-miRNAの発現を効果的にブロックまたは低減するのに十分な量である。原則として、マイクロRNA19aおよび/またはマイクロRNA19bの発現を妨げる任意のタイプの分子を、本発明の目的に使用することができる。
【0031】
患者に投与されるべき阻害剤の量は、患者の年齢および体重、ならびに治療すべき症状の性質および重症度などのいくつかの要因に依存するということは、当業者に理解される。所望の治療効果を発揮する阻害剤の量は、日常的な実験の使用により、各患者の症例で判定され得る。典型的には、体重あたりのマイクロRNA阻害剤の投与量は、患者の体重1kgあたり約0.1mgから患者の体重1kgあたり約50mg、より好ましくは患者の体重1kgあたり約0.5mgから患者の体重1kgあたり約20mg、さらにより好ましくは、患者の体重1kgあたり1mgから患者の体重1kgあたり約10mgまで可変である。投与計画は、阻害剤の1日1回以上の投与を含み得る。
【0032】
例えば、治療は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、または少なくとも12週間続いてよい。一部の適応症では、治療は少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12か月、または少なくとも18か月続いてよい。治療期間は、治療される症状の性質および重症度、投与経路などのいくつかの要因を考慮して、医師が決定する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、miR-19a/bの阻害によるin vivoの骨量の増加を示している。(a):マウスをPTH、またはスクレロスチンに対する抗体各々で治療することにより減少したmiRNAのベン図。(b):PTHまたはScl-Abで治療したマウスの骨におけるmiR-19aおよびmiR-19bの発現量。(c):PTHまたはWnt3aでin vitroで刺激された頭蓋冠骨芽細胞におけるmiR-19aおよびmiR-19bの発現量。(d):アルカリホスファターゼ活性の染色により評価した、スクランブルコントロールmiRNA阻害剤(scr)、miR-19aまたはmiR-19bの阻害剤(抗miR)、または抗miR-19aと抗miR-19bの併用(19a/b)をトランスフェクトした頭蓋冠骨芽細胞の分化。(e):脛骨近位部のフォンコッサ(Von Kossa)染色、および骨形成の蛍光二重標識(インセット)。(f):脛骨近位部の組織形態計測分析。(g):(e)~(f)と同じ動物の第4腰椎のフォンコッサ染色。(h):(e)~(f)と同じ動物の第4腰椎のBV/TV。平均値±標準誤差。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、対ビヒクル、#p<0.05、###p<0.001、対スクランブル。(i)~(k):治療終了後の(e)と同じ動物の大腿骨遠位部(i、j)および中軸大腿骨断面(k)のマイクロコンピューター断層撮影(μCT)スキャン。(l):(e)と同じ動物の大腿骨遠位部のμCT分析の定量化。平均値±標準誤差。
*p<0.05、対スクランブル。略語:BV/TV、骨体積/組織体積;MS/BS、骨石灰化面/骨面;BFR/BS、骨形成速度/骨面;MAR、骨石灰化速度;OS/BS、類骨面/骨面;Ob.S/BS、骨芽細胞面/骨面;N.Ob/BS、骨芽細胞数/骨面;ES/BS、侵食面/骨面;Oc.S/BS、破骨細胞面/骨面;N.Oc/BS、破骨細胞数/骨面;Tb.Th、骨梁幅;Tb.Sp、骨梁間隔;Tb.N、骨梁数;SMI、構造モデリングインデックス。
【
図2】
図2は、miR-19aおよびmiR-19bの阻害により、iPTH治療の骨同化作用が強化され、骨粗鬆症のマウスモデルで骨量が回復することを示している。(a):フォンコッサ染色、および(b):遺伝子型Dmp1-Cre
-の12週齢の雄マウスの脛骨近位部の組織形態計測分析;4週間にわたる断続的なPTHおよび/または抗miR-19a/bの週1回の注射による治療後のTgif1
fl/fl。略語については、
図1の凡例を参照されたい。スケールバーは1mMを示す。(c):抗miR-19a/bによる毎週の治療開始の21日前に、卵巣切除(OVX)により骨粗鬆症が誘発された雌マウスの脛骨の相対的なBV/TVの時間経過。(d)~(f)、治療終了後の、cと同じ動物の大腿骨遠位部(d、e)および中軸大腿骨断面(f)のμCTスキャン。(g)~(i)、卵巣切除70日後の大腿骨(g)、脛骨(h)、および第4腰椎(i)の骨梁のBV/TVのμCT分析。(j)miR-19a/b作用のモデル。平均値±SEM。
*p<0.05、
***p<0.001、対scr、ビヒクル;##p<0.01、対抗miR-19a/b、ビヒクル;§§§p<0.001対scr、iPTH。
*p<0.05、対偽;scr#p<0.05、##p<0.01対OVX;scr。
【
図3】
図3は、マウスの卵巣切除誘発型の筋機能の損失に対する抗miR-19a/bの効果を示している。(a):FAM標識スクランブルまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドを注射したC56Bl/6野生型雄マウスの前脛骨筋の組織学的分析。矢印は核中心を示す。(b):スクランブル(Scr)または抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドの投与後の卵巣切除または偽手術の雌C57Bl/6Jマウスにおける長指伸筋のex vivoの収縮性。(c):Scrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドの投与後の卵巣切除または偽手術の雌C57Bl/6Jマウスにおける長指伸筋のex vivoの収縮性。(d):Scrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドの投与後の卵巣切除または偽手術した雌C57Bl/6Jマウスにおける長指伸筋のex vivoの疲労。(e):Scrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドの投与後の卵巣切除または偽手術の雌C57Bl/6Jマウスにおけるヒラメ筋のex vivoの疲労。
*p<0.05、対OVX;scr。
【
図4】
図4は、骨転移性MDA-MB-231乳癌細胞のin vitro増殖に対する抗miR-19a/bの効果を示している。(a):Scrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドをトランスフェクトしたMDA-MB-231細胞の増殖。(b):ScrまたはmiR-19a/bオリゴヌクレオチドをトランスフェクトしたMDA-MB-231細胞の増殖。
**p<0.01、対scr。
【
図5】
図5は、miR-19aとmiR-19bの阻害により、乳癌の骨転移が減少し、乳癌誘発型の骨量と筋機能の損失が回復することを示している。(a)スクランブル(Scr、正方形)または抗miR-19a/bオリゴヌクレオチド(三角形)で4週間治療した腫瘍保有マウスの生物発光シグナルの定量。(b)非腫瘍保有マウス(コントロール)およびScrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドによる治療後に骨転移のあるマウスの脛骨近位部のμCT分析。(c)非腫瘍保有マウス(コントロール)およびScrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドの投与後の腫瘍保有マウスにおけるヒラメ筋のex vivo収縮性。(d)非腫瘍保有マウス(コントロール)およびScrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドを投与した腫瘍保有マウスにおけるヒラメ筋のex vivoの疲労。平均値±標準誤差。
*p<0.05、対非腫瘍保有マウス。
【
図6】
図6は、マウスのグルココルチコイド誘発型の骨量と筋機能の損失に対する抗miR-19a/bの効果を示している。(a)プラセボまたはグルココルチコイド(プレドニゾロン)治療時のマウスの脂肪量、およびデュアルエネルギーX線吸収法(DXA)で測定したスクランブル(Scr)または抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドの送達。(b)DXAにより測定された体重。(c)~(e)プラセボまたはプレドニゾロン治療時のマウスの骨密度のDXA分析、および全身(c)、大腿骨(d)および脊椎(e)でのScrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドの送達。(f)~(h)プラセボまたはプレドニゾロンおよびScrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドで治療したマウスの腓腹筋(f)、大腿四頭筋(g)および前脛骨筋(h)の筋肉の湿重量。(i)プラセボまたはプレドニゾロンおよびScrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドによる2週間の治療後に、垂直前肢握力検査(vertical forelimb grip strength test)を使用して判定されたin vivoの筋力。(j)プラセボまたはプレドニゾロンおよびScrまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドで治療したマウスでのin vivo筋機能検査(足底屈トルク(plantarflexion torque))。平均値±標準誤差。
*p<0.05、対対応するプラセボ治療マウス、#P<0.05、対プレドニゾロンおよびscr治療マウス。
【実施例0034】
実施例1:miRNA発現のin vivo分析
骨同化刺激に応答して調節されるmiRNAを特定するために、8週齢のマウスにヒト副甲状腺ホルモン(PTH1-34)の組換え断片またはスクレロスチンに対する抗体(Scl-Ab)を注射した。具体的には、野生型雄マウスにビヒクル、100μg/kgのPTH1-34(Bachem)、または100μg/kgのScl-Abを注射した。4時間後、製造業者が提供した指示に従って、Trizol(Invitrogen)を使用してマウスの骨からスモールRNAを含む全RNAを単離した。発現分析のために、ProtoScript First Strand cDNA合成キット(NEBioLabs)を使用して、1μgの全RNAからcDNAを合成した。SYBR Green Master Mix(BioRad)を使用して、CFX96検出システム(BioRad)で定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を実行した。TATA結合タンパク質(Tbp)mRNAの正規化の後、比較CT(ΔΔCT)法を使用して、各標的遺伝子の相対的発現レベルと誘導倍率を計算した。Trizolを用いて、様々なマウスの組織からスモールRNAを分離した。QuantimiR-kit(SBI System Biosciences)を使用して、製造業者のガイドラインに従ってcDNA合成のために、polyAテールをスモールRNAに追加した。相対的なmiRNAの発現は、ユニバーサルリバースプライマーと目的の各miRNA向けに設計された特定のフォワードプライマーを使用して、SYBR Green検出(BioRad)により測定した。U6発現量を内部コントロールとして使用し、相対的なmiRNAの発現量を、ΔΔCT法を使用して計算した。
【0035】
結果:PTHまたはScl-Ab治療によるマウスの試みで、それぞれ骨における35または129のmiRNAの発現量が減少した。22のmiRNAが両方の治療でダウンレギュレートされていることが見出された(
図1a)。共通してダウンレギュレートされたmiRNAの中で、miR-19aおよびmiR-19bが同定された。骨におけるmiR-19a/bの発現の直接的な定量化により、PTHおよびScl-Abによる負の調節が確認された(
図1b)。
【0036】
実施例2:miRNA発現のin vitro分析
PTH1-34およびWnt3aによる頭蓋冠骨芽細胞の刺激の効果を検証するために、in vitroアッセイを実施した。頭蓋冠骨芽細胞を2~3日齢のマウスから単離し、10%FBSおよびP/Sを含むα-MEMで増殖させた。骨芽細胞をビヒクル、PTH1-34(100μM)またはWnt3a(100ng/ml)で4時間刺激し、miRNEasyキット(Qiagen)を使用して、細胞からスモールRNAを抽出した。cDNA合成後、qRT-PCRを使用して、miR-19aおよびmiR-19bの発現量を分析した。U6発現を内部コントロールとして使用し、相対的なmiRNAの発現量を、ΔΔCT法を使用して計算した。
【0037】
結果:PTH1-34とWnt3aの両方の刺激により、頭蓋冠骨芽細胞におけるmiR-19a/bの発現の減少が誘導された(
図1c)。
【0038】
実施例3:骨芽細胞分化のin vitro分析
頭蓋冠骨芽細胞の分化がmiR-19a/bの発現の干渉によって影響され得るかどうかを検証するために、細胞に内因性miR-19a(抗miR-19a:6-FAM/TGCATAGATTTGCAC)およびmiR-19b(抗miR-19b:6-FAM/TGCATGGATTTGCAC)に結合して阻害するように設計されたオリゴヌクレオチドをトランスフェクトした。これらの合成オリゴヌクレオチドは、機能研究での最適な使用に加えて、最適化された薬物動態および薬力学的特性と最小限の毒性のために、ホスホロチオエート骨格結合を含んでいる。さらに、5’フルオレセインFAMラベルにより、in vitroでのトランスフェクション効率とin vivoでの組織送達のモニタリングが可能になっている。Neonエレクトロポレーションシステム(Invitrogen)を使用して、細胞に抗miR-19a/b(50nM)をトランスフェクトした。骨芽細胞の分化は、α-MEMに0.2mMのL-アスコルビン酸と10mMのβ-グリセロホスフェート(両方ともMillipore)を補充することによって誘導した。骨芽細胞の分化は、細胞を4%の中性の緩衝ホルムアルデヒド溶液で固定した後、アルカリホスファターゼ(ALP)染色によって判定した。ALP染色では、細胞をTris-HCl溶液中のナフトールAS-MX/Fast Blue(両方ともSigma-Aldrich)で、室温にて15分間インキュベートした。
【0039】
結果:頭蓋冠骨芽細胞の分化が、miR-19aおよびmiR-19bに対する阻害剤をトランスフェクションすることにより相乗的に増大されることが分かった(
図1d)。
【0040】
実施例4:抗miR-19a/bで治療したマウスの骨分析
miR-19aおよびmiR-19bに対する阻害剤の併用(抗miR-19a/b)による治療が、in vivoで骨同化作用を発揮し得るかどうかを検証するために、8週齢のマウスを28日間、毎週抗miR-19a/bの静脈内投与(i.v.)の注射およびそれに続く骨量の測定により治療した。屠殺の7日前と2日前に、カルセイン(40mg/kg)とデモサイクリン(20mg/kg、Sigma-Aldrich)をそれぞれマウスに注射した。脛骨および第4腰椎(L4)椎体を収集し、3.7%PBS緩衝ホルムアルデヒドで固定した。組織形態計測分析のために、脛骨とL4をメタクリル酸メチルとトルイジンブルーに包埋した。フォンコッサ染色および酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色を、4μmの矢状切片を使用して実施した。OsteoMeasureシステム(OsteoMetrics)を使用して、標準化されたプロトコル(ASBMR標準)[6]に従って、骨組織形態計測の定量的測定を実施した。マイクロコンピューター断層撮影(μCT)が、長骨および椎体の骨の特性の3次元分析に使用された。マウスの第4腰椎(L4)椎体を、10μmの固定等方性ボクセルサイズ(XμA400msの統合時間で70ピークkV、Viva80 micro-CT、Scanco Medical AG)の高解像度マイクロコンピューター断層撮影を使用して分析した。この閾値は、群ごとに4つのサンプルから得た10個の単一断層スライスを手動で評価し、石灰化している組織を単離しその形態を維持する一方で非石灰化組織を除外することによって検証した。すべての分析は、3D距離技術(Scanco Medical AG)を使用して、デジタルで抽出された骨組織で行った。
【0041】
結果:抗miR-19a/bによる治療により、脛骨近位部の骨梁骨量が増加した。組織形態計測分析により、抗miR-19a/bの治療は骨芽細胞および破骨細胞のパラメーターを増強することにより骨リモデリングを活性化し、骨形成を促進し、骨量の正味の増加をもたらしたことが明らかになった(
図1eおよび
図1f)。抗miR-19a/bの治療の骨同化作用は、L4椎体(
図1gおよび
図1h)、および大腿骨遠位部でマイクロコンピューター断層撮影(μCT)分析を使用して確認された(
図1i~
図1l)。
【0042】
実施例5:miR-19a/b阻害剤と断続的PTH(1-34)による同時治療
PTHと抗miR-19a/bの両方が骨量を増加させるため、同時治療が評価された。ヒト副甲状腺ホルモンの組換え断片(PTH1-34;体重の100μg/kg、Biochem)またはビヒクルを、8週齢のオスのマウスに3週間、週5回腹腔内投与した。抗miR-19a/bまたはscrコントロールに、同時治療として週に1回投与した。
【0043】
結果:抗miR-19a/bは、雄のマウスの脛骨における、PTHを介した骨量の増加を増強した(
図2aおよび
図2b)。
【0044】
実施例6:骨粗鬆症モデルにおけるmiR-19a/b阻害剤
骨量の減少は骨粗鬆症の特徴であるため、抗miR-19a/b投与による骨量の増加が雌の骨粗鬆症の治療にも有用であり得るかどうかを検証した。そのため、8週齢の雌マウスに卵巣切除をし、性ステロイドを奪い、脛骨における骨梁の骨量が著しく減少するに至った。臨床的な状況を模倣するために、卵巣切除の21日後に骨粗鬆症が完全に確立された後に、抗miR-19a/bまたはスクランブルコントロールの毎週の注射による抗miR-19a/bの治療を開始した。
【0045】
結果:この治療法は、最初の治療の14日後にさらなる骨量減少を防いでおり、この骨粗鬆症モデルの骨量減少を緩和した。治療終了後の大腿骨遠位部、脛骨近位部、およびL4椎体の骨梁骨量の定量化により、抗miR-19a/bの治療には骨粗鬆症の骨量減少に対する保護効果があることが確認された。
【0046】
実施例7:筋肉の組織学的分析
卵巣切除誘発型の筋機能の損失に対する抗miR-19a/bの効果を分析した。FAM標識スクランブルまたは抗miR-19a/bオリゴヌクレオチドを8週齢のC56Bl/6野生型雄マウスに、1週に1回(10mg/kg、i.v.)、4週間注射して、組織学的分析を行った。最後の治療の1週間後、マウスを屠殺し、筋肉(前脛骨筋)を採取した。クライオスタットで凍結切片を作成する前に、筋肉を最適切断温度化合物(OCT)に包埋した。組織切片を過ヨウ素酸シッフ(PAS)およびヘマトキシリン溶液で染色した。
【0047】
結果:定常状態では、核は筋線維の端に位置している。興味深いことに、抗miR-19a/bで治療した筋線維では、末梢から中心位置への核のシフトが観察され(
図3A)、miR-19a/bの阻害に応答して活発で自発的な筋肉組織のリモデリングが示唆された。
【0048】
実施例8:筋肉の機能分析
実施例7で到達した発見の機能的意味を調査するために、採取したばかりの筋肉(長指伸筋およびヒラメ筋)を使用して、ex vivo機能試験を実施した。8週齢の雌C57Bl/6Jマウスに卵巣切除または偽の手術をし、3週間後にスクランブル(Scr)または抗miR-19a/b(10mg/kg、i.v.)で週に1回、7週間治療した。最後の注射の1週間後、マウスを屠殺し、in situ、ex vivoおよびin vivoでのマウスの筋肉の特性を測定するために設計された特別なデバイス(Aurora Scientific)を使用して、長指伸筋(EDL)およびヒラメ筋のex vivoでの収縮性を分析した。この目的のために、EDLおよびヒラメ筋を後肢から解剖し、鋼鉄のフックを筋肉の腱に結び付け、筋肉を力変換器の間に取り付けた。筋肉は、2つの電極間で最大を超えた刺激を使用して、収縮するように刺激した。疲労試験では、長指伸筋とヒラメ筋を70Hzで50回繰り返し刺激し、最大の強縮力を検出した。Dynamic Muscle Control/Data acquisition (DMC)およびDynamic Muscle Control Data Analysis(DMA)プログラム(Aurora Scientific)を使用して、データを収集および分析した。
【0049】
結果:機能検査で、卵巣摘出術により、長指伸筋およびヒラメ筋の強さ(
図3bおよび
図3c)および弾力性(
図3dおよび
図3e)が有意に低下することが明らかになった。抗miR-19a/b(10mg/kg、i.v.、週1回、7週間)は、強さと弾力性の両方を、偽のコントロールのレベルまで回復させた(
図3b~
図3e)。このことは、miR-19a/bに拮抗することで、卵巣切除誘発型の筋機能の損失を防ぐことを強く示唆している。これらの知見は、miR-19a/bが筋機能低下の治療に関する新規の標的であることを示している。
【0050】
実施例9:骨転移性乳癌細胞の増殖
上記の知見は、miR-19a/bに拮抗することは骨を保護するという概念を支持している。そのため、抗miR-19a/bの治療が骨破壊性MDA-MB-231乳癌細胞の活性を低下させ得るかどうかを検証した。この仮説を検証するために、MDA-MB-231乳癌細胞に抗miR-19a/b、miR-19a/bヌクレオチド、またはそれぞれのscrコントロールをトランスフェクトした。細胞をin vitroで4日間増殖させ、実験の終了まで、毎日MTSアッセイにより細胞増殖を測定した。
【0051】
結果:抗miR-19a/bヌクレオチドによる骨破壊性MDA-MB-231乳癌細胞の処置は、3日目および4日目までに癌細胞の増殖を有意に低下させたが、miR-19a/bヌクレオチドのデリバリーでは、同時点でコントロールと比較すると、癌細胞の増殖が増加した。これらのデータは、MDA-MB-231乳癌細胞において内因性miR-19a/bを阻害することが、転移性乳癌疾患の状況で骨破壊の能力の発揮を妨げる可能性があることを強く示唆している。
【0052】
実施例10:転移性骨疾患の治療
抗miR-19a/bの処置が骨破壊性MDA-MB-231乳癌細胞の活性を減衰させ、in vivoで乳癌誘発型の骨溶解性疾患を防げるかどうかを検証した。ルシフェラーゼ遺伝子を安定して発現するMDA-MB-231乳癌細胞を、8週齢の免疫不全SCIDマウスの左心室に注射した。生物発光イメージング(BLI)によって、乳癌細胞注入の2週間後に微小転移が検出され、マウスをランダムに2つの処置群に分けた。1週間に1回で4週間、1つの群にはスクランブルオリゴヌクレオチド(Scr;10mg/kg)を、他方の群には抗miR-19a/b(10mg/kg)を静脈内(i.v)投与した。腫瘍量はBLIによって毎週測定された。最後の注射の1週間後、マウスを屠殺し、in situ、ex vivoおよびin vivoでのマウスの筋肉の特性を測定するために設計された特別なデバイス(Aurora Scientific)を使用して、ヒラメ筋のex vivo収縮性を分析した。この目的のために、ヒラメ筋を後肢から切り裂き、フックを筋肉の腱に結び付け、筋肉を力変換器の間に取り付けた。2つの電極間で最大上刺激を使用して、筋肉を収縮するように刺激した。疲労試験では、ヒラメ筋を70Hzで50回繰り返し刺激し、最大の強縮力を検出した。Dynamic Muscle Control/Data acquisition (DMC)およびDynamic Muscle Control Data Analysis(DMA)プログラム(Aurora Scientific)を使用して、データを収集および分析した。マイクロコンピューター断層撮影(μCT)を、長骨の3次元分析に使用した。マウスの長骨を、10μmの固定等方性ボクセルサイズの高解像度マイクロコンピューター断層撮影を使用して分析した(XμA400msの統合時間で70ピークkV;Viva80 micro-CT;Scanco Medical AG)。この閾値は、群ごとに4つのサンプルから得た10個の単一断層スライスを手動で評価し、石灰化している組織を単離しその形態を維持する一方で非石灰化組織を除外することによって検証した。すべての分析は、3D距離技術(Scanco Medical AG)を使用して、デジタルで抽出された骨組織で実行された。
【0053】
結果:BLIイメージングにより、Scrで治療したコントロールと比較して、抗miR-19a/bで治療したマウスの骨の腫瘍の増殖が有意に減少したことが明らかになった(
図5a)。乳癌は、Scrで治療したマウスにおいて有意な骨量減少を誘発した。それは週1回の抗miR-19a/bの治療で予防した(
図5b)。筋肉機能検査により、抗miR-19a/b(10mg/kg、i.v.、週1回、4週間)により、ヒラメ筋の強さと持久力の両方の癌誘発性損失が回復したことが明らかになった(
図5cおよび
図5d)。これは、miR-19a/bに拮抗することで、骨転移負荷を軽減し、乳癌誘発型の骨量と筋機能の損失を防ぐことを強く示唆している。
【0054】
実施例11:グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の治療
抗miR-19a/bがグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症に関係しているかどうかを調べるために、プラセボまたはプレドニゾロン(2.1mg/kg/d)ペレットを4か月齢の雌C57Bl/6Jマウスに皮下移植した。ペレット移植の1日前に、続いて週に1回、マウスをスクランブル(Scr)または抗miR-19a/bで処置した(10mg/kg、i.v.)。骨密度(BMD)および体脂肪量を、デュアルエネルギーX線吸収法(DEXA、Piximus)を使用して、4週間の治療の前後に測定した。in vivoの筋力を、垂直前肢握力検査を使用して、2週間の治療後に測定した。in vivoの筋肉機能検査(足底屈トルク)を、in vivoでマウスの筋肉の特性を測定するために設計された特別なデバイス(オーロラサイエンティフィック)を使用して行った。最大筋収縮力を、体重に対して正規化した。4週間の治療の後、マウスを屠殺し、腓腹筋、大腿四頭筋および前脛骨筋(TA)の湿重量を測定した。
【0055】
結果:デュアルエネルギーX線吸収測定により、グルココルチコイド(プレドニゾロン)治療時の脂肪量の増加が明らかになった。これは、抗miR-19a/bの週1回の送達によって防がれていた(
図6a)。総体重の変化は観察されなかった(
図6b)。さらに、BMDは、プレドニゾロン投与マウスの大腿骨および脊椎で有意に減少した(
図6c~
図6e)。抗miR-19a/bで処置したマウスは、グルココルチコイド誘発型のBMDの損失が防がれた(
図6c~
図6e)。グルココルチコイドはScrおよび抗miR-19a/bで処置したマウスの両方で筋肉量を減少させたが、腓腹筋、大腿四頭筋および前脛骨筋の量は、Scr処置コントロールと比較して、抗miR-19a/bで処置したマウスで有意に高かった(
図6f~
図6h)。重要なことに、抗miR-19a/bの処置は、握力および足底屈トルク検査によって判定される筋機能のグルココルチコイド誘発性の損失を防いだ(
図6i、
図6j)。
【0056】
文献
1. Janssen, H. L. A. et al., Treatment of HCV Infection by Targeting MicroRN A, N. Engl. J. Med. 368, 1685-1694 (2013).
2. Musilova K. & Mraz M., MicroRNAs in B cell lymphomas: How a complex biolo gy gets more complex", Leukemia, 2015 29 (5), 1004-17 (2015).
3. Nielsen B.S., et al., High levels of microRNA-21 in the stroma of colorec tal cancers predict short disease-free survival in stage II colon cancer pat ients, Clin Exp Metastasis 28 (1): 27-38 (2010).
4. Romao J.M. et al., MicroRNA regulation in mammalian adipogenesis, Exp. Bi ol. Med. 236 (9), 997-1004 (2011).
5. Hommers L.G. et al., Heterogeneity and Individuality: microRNAs in Mental Disorders, J Neural Transm. 122 (1): 79-97 (2015).
6. Parfitt, A.M. et al., Bone histomorphometry: standardization of nomenclat ure, symbols, and units. Report of the ASBMR Histomorphometry Nomenclature C ommittee. J. Bone Miner. Res. 2, 595-610 (1987).
【0057】
配列
配列番号:1 - 5'-TGCATAGATTTGCAC-3' (抗miR-19a)
配列番号:2 - 5'-TGCATGGATTTGCAC-3' (抗miR-19b)
配列番号:3 - 5'-UGUGCAAAUCUAUGCAAAACUGA-3'(miR-19a)
配列番号:4 - 5'-UGUGCAAAUCCAUGCAAAACUGA-3'(miR-19b)