(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058681
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】バイオ燃料の生産に用いられる脂質の抽出プロセス
(51)【国際特許分類】
C12P 7/649 20220101AFI20230418BHJP
【FI】
C12P7/649
【審査請求】有
【請求項の数】43
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023022392
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2020092127の分割
【原出願日】2014-12-18
(31)【優先権主張番号】61/918,850
(32)【優先日】2013-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】アプト, カーク
(72)【発明者】
【氏名】バークレイ, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ブレイザー, ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ボーデン, ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ブルジャ, アダム
(72)【発明者】
【氏名】ドン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】デュラーゾ, アルマンド
(72)【発明者】
【氏名】デュメニル, ジーン‐チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】エッジ, アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホフラー, アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェファーズ, デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】リオン, クリス
(72)【発明者】
【氏名】パイ, ヴィディヤ
(72)【発明者】
【氏名】ファイファー, ジョゼフ, ダブリュー. サード
(72)【発明者】
【氏名】セラーズ, マーティン, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シャンク, ジンジャー
(72)【発明者】
【氏名】ステージ, ジャスティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発酵ブロスからバイオ燃料の生産に適した脂質を抽出するのに用いられる方法およびシステムを提供する。
【解決手段】ブロス中の油産生微生物から産物をより容易に抽出するために、発酵ブロスをプレ処理するための熱を用いることを含み得る。加えて、または代わりに、アミラーゼ、1-4マンノシダーゼ、および1-3マンノシダーゼを含む酵素の組合せが、油産生微生物の細胞壁を破壊するのに用いられ得る。残りのブロス水が、糖を抽出するためのプロセスフィードストックを洗浄する吸収水としてリサイクルされ得、かつ用いられ得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2013年12月20日出願の米国仮特許出願第61/918,850号明細書の利益を主張する。
【0002】
[共同研究契約の当事者の名称]
先行技術の判断のために、バイオ燃料の分野において、共同研究契約が、2008年12月18日付で、BP Biofuels UK LimitedとMartek Biosciences Corporationとの間で締結された。また、先行技術の判断のために、バイオ燃料の分野において、共同開発契約が、2009年8月7日付で、BP Biofuels UK LimitedとMartek Biosciences Corporationとの間で締結された。また、先行技術の判断のために、バイオ燃料の分野において、共同開発契約が、2012年9月1日付で、BP Biofuels UK LimitedとDSM Biobased Products and Services B.V.との間で締結された。
【0003】
[技術分野]
本発明は、バイオ燃料生産のための材料の抽出を対象とした方法および系に関する。本発明の態様は、油産生微生物(oleaginous microorganism)からの材料の抽出に関する。
【0004】
[背景]
フィードストックをバイオ燃料に変換するいくつかの技術が開発されてきた。しかしながら、これらの技術進歩をもってしても、再生可能炭素源の燃料への変換の経済的実行可能性を向上させる必要性および要求は残っている。
【0005】
植物油由来のバイオ燃料は、再生可能であり、生物分解性であり、非毒性であり、およびある場合において、硫黄も芳香族化合物も含有しない等の利益を有し得る。しかし、植物油由来のバイオ燃料の潜在的な一不利点は、高コストであることであり、その大部分は、植物油フィードストックのコストによる。したがって、バイオ燃料生産の経済的側面は、植物油原材料のコストおよび植物油原材料の限られた供給により、少なくとも幾分は制限されてきた。
【0006】
栄養製品に用いられる脂質は、微生物において産生され得る。藻類における脂質の製造は、例えば、藻類を成長させること、これを乾燥させること、およびこれから細胞内脂質を抽出することを含み得る。微生物内部からの材料の抽出は、困難となり得る。
【0007】
同様に、油産生酵母を含む酵母は、剪断力、浸透圧アンバランス、乾燥、捕食者等の環境ストレスから自らを保護するための多糖類細胞壁を有する。保護用細胞壁により、バイオ燃料に変換され得る油産生酵母中の脂質等の細胞内代謝物質の収穫は困難となり得る。
【0008】
従属栄養生物を用いた糖からバイオ燃料への変換が、水抽出部または溶媒抽出部により可能であり、そこでは、生物の一部が水または別の溶媒中に溶解するため、産物脂質を発酵ブロスから直接取り出して回収することができる。産物は、機械力、熱的力、浸透力、および酵素力の組合せによって、油産生生物の内部コンパートメントから回収され得、薄い(light)脂質、脱脂バイオマス、および水性残渣、ならびに他の細胞残渣からなる多相産物流がもたらされる。ワンススループロセシングが多くの場合、相当な廃棄物および/または併産物流をもたらす。
【0009】
非溶媒/水抽出技術を用いて抽出される材料を高収率でもたらす、油産生微生物から材料を抽出する方法および系の必要性および要求がある。ワンススループロセシングに依存するのではなく、残渣プロセス流をリサイクルする、油産生微生物から材料を抽出する方法および系のさらなる必要性および要求がある。
【0010】
[概要]
本発明は、材料を油産生微生物から抽出する方法およびシステム、ならびに抽出された材料からバイオ燃料を生産する方法およびシステムに関する。
【0011】
ある実施形態によると、油産生生物からの産物の抽出収率を向上させるプレ処理工程として、温度が用いられてよい。より詳細には、全発酵ブロスからバイオ燃料の生産に適した脂質を抽出する方法は、油産生微生物を含有するブロスを、約90℃超、例えば約90℃~約150℃、または約100℃~約150℃、または約110℃~約150℃、または約120℃~約150℃、または約130℃~約150℃の温度に加熱することによって、全発酵ブロスをプレ処理することと、その後産物を油産生微生物から抽出することとを含んでよい。全発酵ブロスは、約3時間を超えて加熱されてよい。ある実施形態において、油産生微生物を含有する全発酵ブロスによって45℃~80℃で費やされる時間が、油産生微生物を含有する全発酵ブロスを45℃から80℃に60分未満で加熱することによって、最小限にされ得る。加えて、または代わりに、全発酵ブロスは、毎分摂氏約0.1度~約80度の平均速度で加熱されてよい。このプロセスにおいて、全発酵ブロスのpHが、酸または塩基を加えることによって調整されてよい。
【0012】
さらなる実施形態において、全発酵ブロスは、約60℃超、または約70℃超、または約80℃超、または約85℃超、または約90℃超に冷却されてよく、例えば機械的破壊を適用することによる、さらなる等温(常温)プロセシングが可能になる。全発酵ブロスは、毎分摂氏約1度~約80度の平均速度で冷却されてよい。全発酵ブロスは、毎秒約10cm~毎秒約240cmのインペラ先端速度で撹拌されてよい。加熱の後、全発酵ブロスは乾燥されてよい。
【0013】
ある実施形態において、プレ処理中、約10psi~約150psi、または約20psi~約150psi、または約30psi~約150psi、または約50psi~約150psiの圧力が、全発酵ブロスを含有する系において維持されてよい。
【0014】
プレ処理中、全発酵ブロスを含有する系に塩が存在して、系中で約0.01M~約2.0Mと推定されるイオン強度がもたらされてよい。全発酵ブロスは、0.05g/Lを超える濃度で塩およびイオンを伴う粗糖源および/または水源を含んでよい。塩およびイオンとして、Na、K、Ca、Mg、Zn、Mo、Cu、Mn、クロリド、サルフェート、ホスフェート、ニトレート、およびそれらの組合せが挙げられ得る。これらの塩およびイオンは、0.5~40g/Lの濃度にまで増大してよい。加えて、既に存在する塩およびイオンは、合体(coalescence)、凝集、密度変化を促進することによって、かつ/または機械および/もしくは静電コアレッサにおいて産物が油産生微生物から放出される場合に形成されるエマルジョンを不安定化させることによって、油相の回収に役立ち得る。
【0015】
本明細書中の方法はさらに、油産生微生物を溶解に曝して、油体および細胞破片の粒子サイズ分布をもたらすことを含んでよく、放出された産物油体および細胞破片の少なくとも80容量%または少なくとも95容量%は、直径において0.1μmよりも大きいサイズを有する。加えて、油および細胞破片の小滴または体は、120cm/秒を超えるインペラ先端速度での混合によって、連続相として回収され得る。
【0016】
油産生細胞壁の破壊後、脂質を含む細胞内代謝物質が、例えば、油産生細胞壁から収穫され得る。細胞内代謝物質は、生物由来ディーゼル等のバイオ燃料に変換され得る。細胞内代謝物質を収穫した後に残る水抽出廃水がリサイクルされ得る。リサイクルされた抽出水は、糖を抽出するためのプロセスフィードストックを洗浄する吸収水(imbibition water)として用いられ得る。
【0017】
プレ処理の後、発酵ブロスは、さらなるプロセシング前にブロス中で固体を濃縮するために、減圧かつ冷却されてよい。加えて、または代わりに、プレ処理の後、エバポレータまたはドライヤが含まれて、細胞入りの濃縮された湿潤ブロスまたは乾燥混合物が生じてよい。溶媒が、乾燥細胞に、または濃縮された溶解発酵ブロスに加えられて、混合物が形成されてよい。溶媒として、ヘキサン、ドデカン、デカン、ディーゼル、1つもしくは複数のアルコール、またはそれらの組合せが挙げられ得る。溶解発酵ブロスおよび溶媒の混合物は撹拌されて接触し、油が油産生微生物から抽出され得る。溶媒および油は、例えば遠心分離機を用いることによって、溶解発酵ブロスから分離され得る。溶媒および油は、油の少なくとも一部を燃料成分に変換するように反応し得る。さらに、溶媒および残りの油は、バイオ燃料を含む燃料に変換され得る。消費されたブロスは、作物の肥料、動物の飼料、酵母抽出物、酵母加水分解物、または炭素/栄養源として用いられ得る。
【0018】
ある実施形態において、油産生微生物を含有する全発酵ブロスは、糖フィードストックを含んでよい。油産生微生物および糖フィードストックを含有する全発酵ブロスは、発酵槽ブロスのリットルあたり約50~約250グラムの脂質、発酵槽ブロスのリットルあたり約0~約50グラムの糖、発酵槽ブロスのリットルあたり約0~約40グラムの塩、および発酵槽ブロスのリットルあたり約10~約100グラムの脂質フリー乾燥バイオマスを含んでよい。
【0019】
一部の実施形態によると、プレ処理の一部として、本方法はさらに、例えば、全発酵ブロスを約40℃~約80℃に約1分間~最長約3時間にわたり加熱することによって、油産生微生物を含有する全発酵ブロスを低温殺菌することを含んでよい。対照的に、プレ処理加熱の間、全発酵ブロスは、約90℃~約150℃、または約100℃~約150℃、または約110℃~約150℃、または約120℃~約150℃、または約130℃~約150℃の温度にて、約30分間~約18時間、または3時間超~約18時間、または3時間超~約8時間にわたり保持されてよい。全発酵ブロスは、加熱インターバル中に撹拌されてよい。酸、塩基、または酸および塩基の両方が、全発酵ブロスに加えられてよい。
【0020】
全発酵ブロスは、1回、2回、またはそれを超える回数、ビーズミル、オリフィスプレート、高剪断ミキサー、または他の剪断もしくは機械破壊装置を通過してよい。ある実施形態において、全発酵ブロスは、約70℃~約100℃にてベッセル内で撹拌されてよく、任意選択的に約1~約60時間の還流を含む。加えて、NaCl、KCl、K2SO4、またはNa2SO4等の塩がベッセル内の全発酵ブロスに加えられてもよく、または代わりに、例えば、H2SO4をプラスしてNaOHまたはKOHを加えることによって、インサイチュで生産されてもよい。例えば、塩が、最大約2重量%まで加えられてよい。ベッセル内の全発酵ブロスのpHを約3~約11に調整するために、酸または塩基が加えられてよい。先に記載される酸および塩基の組合せから生じる熱はまた、ブロスを加熱するのに必要とされるエネルギーの引下げに寄与し得る。脂質は、重力分離、ハイドロサイクロン、フィルタ、および/または遠心分離機等の1つまたは複数の工程を含み得る適切な固体-液体-液体分離スキームを通して、水性発酵ブロスから分離され得る。20%未満の遊離脂肪酸である油が、遠心分離により、全発酵ブロスから分離され得る。微生物油の生産に適したこの脂質抽出法は、水抽出プロセスが、発酵ブロス中の金属を、油と比較して少なくとも2の比率で濃縮するため、金属が人工的により少ない油をもたらし得る。方法はさらに、残りのブロス水と共にバイオマス固体をリサイクルすることを含み得る。
【0021】
油産生微生物は、少なくとも40重量%の脂肪を含み得る。例えば、油産生微生物は、油産生酵母細胞であってよい。
【0022】
ある実施形態によると、アミラーゼ、1-4マンノシダーゼ、および1-3マンノシダーゼを含む酵素の組合せが、油産生微生物の油産生細胞壁を破壊するのに用いられてよい。酵素の組合せとしてさらに、少なくとも1つの補助酵素、すなわち、スルファターゼ、プロテアーゼ、キチナーゼ、またはこれらの酵素の任意の組合せが挙げられ得る。アミラーゼは、α1-4結合グルコースに特異的であってよい。酵素の組合せとして、約5重量%~約30重量%のアミラーゼ、約5重量%~約45重量%の1-4マンノシダーゼ、約5重量%~約45重量%の1-3マンノシダーゼ、またはこれらのパラメータの任意の組合せが挙げられ得る。酵素の組合せとしてまた、少なくとも1つの補助酵素、例えばスルファターゼ、プロテアーゼ、キチナーゼ、またはこれらの酵素の任意の組合せが挙げられ得る。酵素の組合せが、スポリジオボルス・パラロセウス(Sporidiobolus pararoseus)MK29404に用いられてよい。言及されるように、油産生細胞壁の破壊の後、脂質を含む細胞内代謝物質が、例えば、油産生細胞壁から収穫され得る。
【0023】
ある実施形態によると、全発酵ブロスからバイオ燃料の生産に適した脂質を抽出する方法は、油産生微生物を含有する全発酵ブロスに、油産生微生物の細胞壁を破壊するために、アミラーゼ、1-4マンノシダーゼ、および1-3マンノシダーゼを含む酵素の組合せを適用することと、その後産物を油産生微生物から抽出することとを含んでよい。酵素の組合せとしてさらに、少なくとも1つの補助酵素、例えば、スルファターゼ、プロテアーゼ、キチナーゼ、またはこれらの酵素の任意の組合せが挙げられ得る。アミラーゼは、α1-4結合グルコースに特異的であってよい。酵素の組合せとして、約5重量%~約30重量%のアミラーゼ、約5重量%~約45重量%の1-4マンノシダーゼ、約5重量%~約45重量%の1-3マンノシダーゼ、またはこれらのパラメータの任意の組合せが挙げられ得る。
【0024】
本方法はさらに、細胞壁を破壊した後に油産生微生物から脂質等の細胞内代謝物質を収穫することを含んでよい。細胞内代謝物質は、生物由来ディーゼル等のバイオ燃料に変換され得る。加えて、細胞内代謝物質を収穫した後に残る水抽出廃水がリサイクルされ得る。リサイクルされた抽出水は、糖を抽出するためのプロセスフィードストックを洗浄する吸収水として用いられ得る。
【0025】
ある実施形態によると、油産生微生物もしくはサトウキビ、または油産生微生物およびサトウキビの両方を含有する水性発酵ブロスからバイオ燃料の生産に適した脂質を抽出する方法は、脂質を水性発酵ブロスから、バイオマス固体および残りのブロス水を残して抽出することと、残りのブロス水を、糖を抽出するためのプロセスフィードストックを洗浄する吸収水として用いることとを含んでよい。本方法はさらに、例えば、水性発酵ブロスを約40℃~約80℃に約1分間~最長約3時間にわたり加熱することによって、水性発酵ブロスを低温殺菌することを含んでよい。ある実施形態において、本方法は、水性発酵ブロスを、約90℃~約150℃、または約100℃~約150℃、または約110℃~約150℃、または約120℃~約150℃、または約130℃~約150℃の温度に加熱することと、ブロスを、約30分間~約18時間、または3時間超~約18時間、または3時間超~約8時間の選択された範囲内で保持することとを含んでよい。水性発酵ブロスは、加熱インターバル中に撹拌されてよい。酸、塩基、または酸および塩基の両方が、水性発酵ブロスに加えられてよい。水性発酵ブロスは、1回、2回、またはそれを超える回数、ビーズミルまたは他の機械破壊装置を通過してよい。
【0026】
本明細書の一部に組み込まれ、かつこれを構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示し、かつ記載と共に本発明の特徴、利点および原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】温度プレ処理を用い、かつ酵母抽出物の生産を含む水抽出プロセスの一実施形態を示すプロセスフロー図である。
【
図2】リサイクルを含む、糖からディーゼルへの統合プロセスの一実施形態を示すプロセスフロー図である。
【
図3】実施例2において用いられる水抽出プロセスを示すプロセスフロー図である。
【
図4】実施例3における溶解後の放出油および細胞破片の粒子サイズ分布のグラフ図である。
【
図5】実施例3における油産物回収後の油および細胞破片の粒子サイズ分布のグラフ図である。
【0028】
[詳細な説明]
本発明は、油産生微生物から材料を抽出する方法および系、ならびに抽出された材料からバイオ燃料を生産する方法および系を提供する。微生物からのバイオ燃料の生産は、植物(油糧種子を含む)からのバイオ燃料の生産に勝る、短い寿命サイクル、より少ない労働要件、季節および気候の独立性、ならびにより容易なスケールアップ等の多くの利点を有し得る。
【0029】
以下でより詳細に記載されるように、発酵ブロスを比較的高い温度に直接加熱することによる油抽出前のブロスのプレ処理は、透過性が増大し、かつ油がより容易に拡散し得るような細胞壁構造の熱的分解を介して、油産生微生物から抽出される油の量を増大させることができる。加えて、または代わりに、アミラーゼ、1-4マンノシダーゼ、および1-3マンノシダーゼを含む酵素の組合せが、油産生微生物の油産生細胞壁を破壊するのに用いられてよい。本明細書中に記載される方法のいずれにおいても、脂質除去後に残る水抽出廃水は、フロントエンドの糖回収操作にリサイクルされ得る。
【0030】
本明細書中で用いられる用語「プレ処理する」および「プレ処理」は、微生物内部からあらゆる材料を物理的に分離する前に微生物に実行されるプロセス工程を指す。
【0031】
本明細書中で用いられる用語「再生可能材料」は、好ましくは、天然の生態サイクルおよび/または資源と少なくとも部分的に置き換わることが可能な源および/またはプロセスに少なくとも部分的に由来した物質および/または品目を指す。再生可能材料として、例えば、化学薬品、化学薬品中間体、溶媒、接着剤、潤滑剤、モノマー、オリゴマー、ポリマー、バイオ燃料、バイオ燃料中間体、バイオガソリン、バイオガソリンブレンドストック、バイオディーゼル、グリーンディーゼル、再生可能ディーゼル、バイオディーゼル混合ストック、バイオ蒸留物、バイオ炭、バイオコーク、バイオオイル、および/または再生可能建築材等が広く挙げられ得る。より具体的な例として、再生可能材料として、限定されないが、以下のいずれか1つまたは複数が挙げられ得る:メタン、エタノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、脂肪アルコール、イソブテン、イソプレノイド、トリグリセリド、脂質、脂肪酸、乳酸、酢酸、プロパンジオール、ブタンジオール。ある実施形態によると、再生可能材料として、1つまたは複数のバイオ燃料成分が挙げられ得る。例えば、再生可能材料として、エタノール、ブタノール、もしくはイソブタノール等のアルコール、または脂質が挙げられ得る。ある実施形態において、再生可能材料は、藻類、細菌、および/または菌類等の生存している生物に由来し得る。ある実施形態によると、再生可能材料は、炭素鎖長プロフィールがナタネ油と少なくとも幾分類似する脂肪酸等の脂質である。
【0032】
用語「バイオ燃料」は好ましくは、再生可能源に少なくとも部分的に由来する燃料および/または燃焼源としての使用に適した成分および/または流れを指す。バイオ燃料は、例えば化石燃料と比較すると、持続可能に生産され得、および/または大気への純炭素排出量(総炭素ライフサイクル)を引き下げ得、かつ/もしくは無くし得る。ある実施形態によると、再生可能源は、例えば地下由来の、採掘または掘削材料を排除し得る。ある実施形態において、再生可能源として、単細胞生物、多細胞生物、植物、菌類、細菌、藻類、栽培作物、非栽培作物、および/または材木等が挙げられ得る。
【0033】
ある実施形態によると、再生可能源として、微生物が挙げられる。バイオ燃料は、陸上車両、海洋船舶、および/または航空機等の使用等、輸送燃料としての使用に適し得る。より詳細には、バイオ燃料として、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、および/または灯油等が挙げられ得る。バイオ燃料は、蒸気を上げること、エネルギーを適切な熱媒体と交換すること、合成ガスを発生させること、水素を発生させること、および/または電気を作り出すこと等の動力発生に用いるのに適し得る。ある実施形態によると、バイオ燃料は、バイオディーゼルおよび石油ディーゼルの混合物である。
【0034】
本明細書中で用いられる用語「バイオディーゼル」および「生物由来ディーゼル」は、互換的に用いられ、かつ直接的な使用および/またはディーゼルプール中への混合および/または再生可能源に由来するセタンの供給に適した成分または流れを指す。適切なバイオディーゼル分子として、脂肪酸エステルが挙げられ得る。バイオディーゼルは、自動車ディーゼル内燃機関、および/または大型トラックディーゼル機関等の圧縮点火機関に用いられ得る。また、バイオディーゼルは、ガスタービン、ヒータ、および/またはボイラ等に用いられてもよい。ある実施形態によると、バイオディーゼルおよび/またはバイオディーゼル混合物は、産業的に受け入れられている燃料規格、B5、B7、B10、B15、B20、B40、B60、B80、B99.9、および/もしくはB100等に適合するか、またはこれらを満たす。
【0035】
本明細書中で用いられる用語「脂質」は、油、脂肪、ワックス、グリース、コレステロール、グリセリド、ステロイド、リン脂質、セレブロシド、脂肪酸、脂肪酸関連化合物、誘導化合物、および/または他の油状物質等を指す。脂質は典型的に、例えば重量ベースで、エネルギー含量が比較的高い。
【0036】
本明細書中で用いられる用語「微生物」は、顕微鏡的な生物を指し、単細胞(単細胞の)であっても細胞集塊であっても多細胞の比較的複雑な生物であってもよい。微生物として、藻類、菌類(酵母を含む)、細菌、シアノバクテリア、および/または原生動物等が挙げられ得る。
【0037】
一実施形態において、微生物は、例えば、酵母等の菌界の単細胞メンバであってよい。用いられ得る油産生菌の例として、限定されないが、ロドトルラ・インゲニオサ(Rhodotorula ingeniosa)またはスポリジオボルス・パラロセウス(Sporidiobolus pararoseus)、および以下の属のメンバが挙げられる:アスペルギルス(Aspergillus)属、カンジダ(Candida)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、デバリオマイセス(Debaromyces)属、エンドミコプシス(Endomycopsis)属、フザリウム(Fusarium)属、ゲオトリクム(Geotrichum)属、ハイフォピキア(Hyphopichia)属、リポマイセス(Lipomyces)属、ケカビ(Mucor)属、アオカビ(Penicillium)属、ピキア(Pichia)属、シュードザイマ(Pseudozyma)属、クモノスカビ(Rhizopus)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ロドスポリジウム(Rodosporidium)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属、スターメレラ(Starmerella)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ウィッカーハモミセス(Wickerhamomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、ジゴアスカス(Zygoascus)属、およびジゴリポマイセス(Zygolipomyces)属。より詳細には、油産生菌として、例えば、以下のいずれかが挙げられ得る:アピオトリクム・クルウァトゥム(Apiotrichum curvatum)、カンジダ・アピコラ(Candida apicola)、カンジダ・ボンビコラ(Candida bombicola)、カンジダ・オレオフィラ(Candida oleophila)、カンジダ属(Candida)種、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、クリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、クリプトコッカス・クルバタス(Cryptococcus curvatus)、クリプトコッカス・テリコルス(Cryptococcus terricolus)、デバリオマイセス・ハンセニイ(Debaromyces hansenii)、エンドマイコプシス・ベルナリス(Endomycopsis vernalis)、ゲオトリクム・カラビダルム(Geotrichum carabidarum)、ゲオトリクム・ククジョイダルム(Geotrichum cucujoidarum)、ゲオトリクム・ヒステンダルム(Geotrichum histendarum)、ゲオトリクム・シルビコラ(Geotrichum silvicola)、ゲオトリクム・ブルガレ(Geotrichum vulgare)、ハイフォピキア・バートニイ(Hyphopichia burtonii)、リポマイセス・リポファー(Lipomyces lipofer)、リポマイセス・オリエンタリス(Lipomyces orentalis)、リポマイセス・スターキー(Lipomyces starkeyi)、リポマイセス・テトラスポロウス(Lipomyces tetrasporous)、ピキア・メキシカナ(Pichia mexicana)、ロードスポリディウム・スファエロカルプム(Rhodosporidium sphaerocarpum)、ロードスポリディウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ属(Rhodotorula)種、ロドトルラ・オーランティアカ(Rhodotorula aurantiaca)、ロドトルラ・ダイレネンシス(Rhodotorula dairenensis)、ロドトルラ・ジフルエンス(Rhodotorula diffluens)、ロドトルラ・グルティヌス(Rhodotorula glutinus)、ロドトルラ・グルティニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ・グラシリス(Rhodotorula gracilis)、ロドトルラ・グラミニス(Rhodotorula graminis)、ロドトルラ・ミヌタ(Rhodotorula minuta)、ロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa)、ロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa)、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、ロドトルラ・テルペノイダリス(Rhodotorula terpenoidalis)、ロドトルラ・トルロイデス(Rhodotorula toruloides)、スポロボロミセス・アルボルベスセンス(Sporobolomyces alborubescens)、スターメレラ・ボンビコーラ(Starmerella bombicola)、トルラスポラ・デルブリュッキイ(Torulaspora delbruekii)、トルラスポラ・プレトリエンシス(Torulaspora pretoriensis)、トルロプシス・リポフェラ(Torulopsis lipofera)、トルポシス属(Toruposis)種、トリコスポロン・ベーレンド(Trichosporon behrend)、トリコスポロン・ブラシカエ(Trichosporon brassicae)、トリコスポロン・キャピテータム(Trichosporon capitatum)、トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)、トリコスポロン・ドメスティカム(Trichosporon domesticum)、トリコスポロン・ライバキイ(Trichosporon laibachii)、トリコスポロン・ロウビエリ(Trichosporon loubieri)、トリコスポロン・モンテヴィデンス(Trichosporon montevideense)、トリコスポロン・プルラン(Trichosporon pullulans)、トリコスポロン属(richosporon)種、ウィッカーハモミセス・カナデンシス(Wickerhamomyces canadensis)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ジゴアスカス・メイェラエ(Zygoascus meyerae)、およびジゴリポマイセス・ラクトサス(Zygolipomyces lactosus)。
【0038】
本明細書中に記載される抽出法は、本質的にあらゆる油産生微生物に適用され得る。微生物は、あらゆる適切な条件下で、例えば嫌気的に、好気的に、光合成的に、かつ/または従属栄養的に、活動し、機能し、かつ/または生存することができる。ある実施形態によると、酵母は、空気の存在下で従属栄養的に培養され得る。
【0039】
本明細書中で用いられる用語「油産生」は、油を有すること、油を含有すること、かつまたは油、脂質、脂肪および/もしくは他の油様物質を産生することを指す。油産生として、生体の総重量の、少なくとも約20重量パーセントの油、少なくとも約30重量パーセントの油、少なくとも約40重量パーセントの油、少なくとも約50重量パーセントの油、少なくとも約60重量パーセントの油、少なくとも約70重量パーセントの油、および/または少なくとも約80重量パーセントの油等を産生する生物が挙げられ得る。油産生は、培養中、脂質蓄積中、かつ/または収穫条件時等の微生物を指し得る。
【0040】
バイオ燃料の生産に用いるのに適した脂質は、油産生微生物のオイルリッチ微生物細胞を含有する全発酵ブロスから抽出され得る。ある実施形態によると、全発酵ブロスは、糖フィードストックを含んでよい。例えば、全発酵ブロスは、発酵槽ブロスのリットルあたり約50~約250グラムの脂質、発酵槽ブロスのリットルあたり約0~約50グラムの糖、発酵槽ブロスのリットルあたり約0~約40グラムの塩、および発酵槽ブロスのリットルあたり約10~約100グラムの脂質フリー乾燥バイオマスを含んでよい。油産生微生物は、ある実施形態において、少なくとも40重量%の脂肪、または約40重量%~約80重量%の脂肪、または約50%~約75重量%の脂肪を含んでよい。
【0041】
熱プレ処理の前に、全発酵ブロスは、細胞酵素を不活性化し、かつ産生生物の生存能力をなくして貯蔵直後の増殖を防止するために、低温殺菌されてよい。低温殺菌はまた、注目する産物へのダメージを最小にするのに十分な制御処置を実現し、この場合においては、リパーゼを不活性化することによる。低温殺菌は、全発酵ブロスを約90℃未満、例えば約40℃~約80℃へ、3時間未満、例えば約1分~3時間をわずかに下回る時間にわたり加熱することによって実行されてよい。
【0042】
言及されるように、抽出される油の量は、全発酵ブロスを熱でプレ処理することによって、増大し得る。全発酵ブロスのプレ処理として、プロセスpHの同時的変化を伴う熱処理が挙げられ、これは、細胞壁組成の熱化学変化をもたらすことが意図される。より詳細には、ブロスを、90℃を超える、例えば約90℃~約150℃、または約91℃~約150℃、または約100℃~約150℃、または約110℃~約150℃、または約120℃~約150℃、または約130℃~約150℃の温度へ、3時間を超えて直接加熱することによって、細胞壁構造は熱分解し、これが細胞壁の透過性を増大させるため、油産生微生物からの産物の以降の抽出中、油がより容易に拡散することが可能となる。変化の正確な性質は、産生株の細胞壁の化学的性質によって決まる。油産生酵母について、細胞壁を構成する炭水化物(モノマー)の放出が、プレ処理の結果として観察された。例えば、インペラを用いて穏やかに撹拌しながら、3時間をわずかに超える時間~約8時間にわたり全発酵ブロスを121℃に保持すると、細胞の孔が増えることによって、80~85%の抽出率が実現され得る。必須ではないが、系は、大気と通気してよく、発酵ブロスの濃度は、蒸発を介して80%から70%の水含有量にまで容易に下がる。脂肪分解活性を最小にするために、45℃~80℃で、油産生微生物を含有する全発酵ブロスによって費やされる時間を最小にすることが所望されてよい。この最小化は、油産生微生物を含有する全発酵ブロスを、45℃から80℃に60分未満で加熱することによって達成され得る。ある実施形態において、全発酵ブロスは、毎分摂氏約0.1度~約80度の平均速度で加熱されてよい。
【0043】
プレ処理中に、全発酵ブロスのpHもまた、酸または塩基を加えることによって調整されてよい。例えば、最初に酸を、その後塩基を加えることによって、この処理は油の早い放出をもたらし得る。試薬および他の助剤を用いることにより、pHは、酸、塩基、塩、または酸、塩基もしくは塩の任意の組合せを用いることによって約0.5~14の範囲内の任意のレベルに調整されてよい。例えば、酸が加えられて、pHが約3.0~約6.0に調整されてよい。別の例として、塩基が加えられて、pHが約8.0~約10.5に調整されてよい。ある実施形態において、プレ処理中、全発酵ブロスを含有する系に塩が存在して、系中で約0.01M~約2.0Mと推定されるイオン強度がもたらされてよい。プレ処理工程は、プロセスにおいて最も積極的な長期間にわたる熱処理工程であり、大部分の化学反応はこの期間中に発生する。以降の機械的溶解工程は、比較的不活性である非反応性の環境中に油を放出する。プレ処理を経た発酵ブロスは、適切には、90℃を超える4時間の付加的加熱および混合のみによって、8時間未満以内に合体されてよい。比較として、低温殺菌のみを経たブロスは、油相の分離を可能とする90℃未満での8時間を超える付加的混合等の広範かつ付加的な混合を必要としてよい。
【0044】
一部の実施形態によると、全発酵ブロスは、約0.05g/Lを超える濃度で塩およびイオンを伴う粗糖源を含んでよい。本明細書中で用いられる用語「粗糖」は、再生可能な複合フィードストック(サトウキビ、スイートソルガム、およびテンサイを含む)に由来する1つまたは複数の二糖類または単糖類を含有する糖抽出物、または糖ジュース、生のジュース、濃いジュース、およびモラセスを含む糖抽出物の濃縮形態を指す。粗糖は、二糖類および単糖類の任意の組合せを、15重量%超~最大95重量%含有してよく、水、塩、ミネラル、フィードストック残渣、および複合バイオマスが残りを形成する。粗糖は代わりに、乾物中、糖モノマーの、他の固体に対する比率として、60%~99%に相当すると記載されてよい。乾物の他の非糖成分として、塩、ミネラル、フィードストック残渣、および複合バイオマスが挙げられ得る。
【0045】
粗糖源と関連するこれらの塩およびイオンとして、Na、K、Ca、Mg、Zn、Cu、Mn、Fe、Co、およびクロリド、サルフェート、ホスフェート、ニトレート、ならびにそれらの組合せが挙げられ得る。そのため、これらの塩およびイオンは、微生物の発酵増殖に必要とされる濃度を超える濃度で導入される。塩およびイオンは蓄積して、例えば、0.5~40g/Lの濃度となり得る。特に独特なものはカリウムおよびカルシウムであり、これらは蓄積して、ほとんどの他の元素よりも高い濃度となり得、かつ通常の発酵ブロス培地とは異なる。これらの独特な性質が、脂質および水相の分離を促進し得る。より詳細には、カリウムの濃度は適切には、ナトリウムの濃度よりも高い。ある実施形態において、カルシウムの濃度は、1g/Lよりも高くなり得る。ある実施形態において、カリウムの濃度は、2.5g/Lよりも高くなり得る。蓄積濃度(built-up concentration)にて導入された塩およびイオンは、産物油が微生物の細胞から放出される場合に、合体による油相の回収に役立つ。加えて、蓄積濃度にて導入された塩およびイオンは、合体による油相の回収に役立つために多くの場合必要とされる塩およびイオン、すなわち、誘導因子または抗乳化剤の付加の必要性をなくす。そのため、発酵ブロスは、合体ステージの間、および他の下流の工程の間、プレ処理中と同じイオン比率または濃度を維持することができる。例えば、発酵ブロスは、塩およびイオンの濃度が、合体の間、0.5~40g/Lであってよい。
【0046】
抽出を向上させるための添加剤の塩が、発酵ブロスに、もしくは糖源用の洗浄水に、または発酵ブロスおよび糖源用の洗浄水の両方に加えられてよい。塩およびイオンに加えて、栄養を含むフィード、粗栄養源もしくは精製栄養源、窒素もしくは炭素、粗糖源もしくは部分的に精製された糖源、および/または様々な水源もまた、発酵培地に加えられてよい。
【0047】
粗糖を含む発酵ブロスに抽出法を実行する場合、粗油を回収するために全乾燥バイオマスおよび/または溶媒を利用する抽出技術と比較して、Na、K、P、Ca、Mg、Zn等の金属および無機元素がより少ない粗油が回収され得る。
【0048】
また、プレ処理中、約10psi~約150psi、または約20psi~約150psi、または約30psi~約150psi、または約50psi~約150psiの圧力が、全発酵ブロスを含有する系において維持されてよい。この有効な温度および圧力は、蒸気ジェットエジェクタを用いて真空下で系が保持される場合、より低くなり得る。
【0049】
加熱の後、全発酵ブロスは、冷却または乾燥されても、冷却かつ乾燥されてもよく、さらなる等温(常温)プロセシングが可能になる。より詳細には、「等温プロセシング」は、本明細書中で、付加的な加熱も冷却も必要のないプロセシングを指す。冷却および/または乾燥に関して、例えば、全発酵ブロスは、約60℃超、または約70℃超、または約80℃超、または約85℃超、または約90℃超に冷却されてよい。発酵ブロスはまた、さらなるプロセシングに先立って、冷却と組み合わせて減圧されて、固体がブロス中に濃縮されてもよい。さらなるプロセシングとして、ビーズミル、ホモジナイザー、オリフィスプレート、高剪断ミキサー、プレス、押出機、圧力破壊、湿式ミリング、乾式ミリング、または他の剪断もしくは機械破壊装置等の装置を用いた、1パス、2パス、またはそれを超えるパスの機械的破壊の適用が挙げられ得る。例えば、ビーズミルを通る2パスにより、90%を超える抽出率が実現され得る。酸のさらなる付加は、合体を促進し得る。全発酵ブロスは、例えば、毎分摂氏約0.2~約80度、または毎分摂氏約0.2~約1度の平均速度で冷却されてよい。加えて、または代わりに、フラッシュエバポレータが用いられて、ブロス中で固体が濃縮されてよい。
【0050】
付加的な撹拌を提供するために、全発酵ブロスは、任意選択的に約1~約60時間の還流を含んで、約70℃~約100℃の温度にてベッセル内で撹拌されてよく、これにより、例えば60~85%の油回収率が実現する。必要に応じて、全発酵ブロスは、毎秒約10~約300cm、または毎秒約120~約240cmのインペラ先端速度での撹拌が保持されてよい。この撹拌は、例えば、ラシュトン(Rushton)またはマリンインペラ等の半径流インペラおよび軸流インペラの任意の有利な組合せを用いて実行されてよい。任意選択的に、さらなる温度調整、pH調整、塩付加、またはこれらの作用の任意の組合せが、撹拌中になされてよい。例えば、NaCl、KCl、K2SO4、またはNa2SO4等の塩が、最大約2重量%まで、ベッセル内の全発酵ブロスに加えられてもよく、または代わりに、例えば、H2SO4をプラスしてNaOHまたはKOHを加えることによって、インサイチュで生産されてもよい。別の例として、ベッセル内の全発酵ブロスのpHが約3~約11に調整されるように、酸または塩基が加えられてよい。先に記載される酸および塩基の組合せから生じる熱はまた、ブロスを加熱するのに必要とされるエネルギーの引下げに寄与し得る。
【0051】
付加的なプレ処理工程として、油産生微生物は溶解に曝されて、油体および細胞破片の粒子サイズ分布が生じてよく、放出された産物油体および細胞破片の少なくとも80容量%または少なくとも95容量%は、直径において0.1μmよりも大きいサイズを有する。直径は、小滴、粒子または体の全体で最も大きな距離である。直径は、のMalvern Instruments Ltd(英国ウースターシャー(Worcestershire,United Kingdom))から入手可能なParticle Size Analyzerを用いて測定されてよい。より詳細には、熱プレ処理は溶解を補助し、これにより、バイオマスが消化されると油が解放される。この粒子サイズ分布のために、油および細胞破片の小滴は、例えば、3インチ(7.62cm)のラシュトンタイプのインペラで、毎秒120cmを超えるインペラ先端速度での単純な混合合体工程を通して、連続相として容易に回収され得る。合体脂質は、合体脂質粒子サイズ分布をもたらし得、例えば、合体脂質の少なくとも80容量%または少なくとも95容量%は、直径において約40μmよりも大きいサイズを有する。
【0052】
溶媒が、乾燥細胞または溶解発酵ブロスに加えられて、加熱後、混合物が形成され得る。適切な溶媒の例として、ヘキサン、ドデカン、デカン、ディーゼル、アルコール、極性溶媒、非極性溶媒、およびそれらの組合せが挙げられる。混合物はその後撹拌されてよく、溶媒が接触し、油が油産生微生物の細胞全体から抽出され得る。適切な期間の後、例えば遠心分離機、沈殿槽、サイクロン、またはこれらの技術の任意の組合せを用いることによって、流れは分離されて、発酵ブロスから溶媒および油が分離され得る。溶媒および油流はその後反応して、油を燃料成分に変換してから、溶媒および残りの油を、バイオ燃料を含む燃料に変換し得る。微生物油の生産に適したこの脂質抽出法は、水抽出プロセスが、発酵ブロス中の金属を、油と比較して少なくとも2の比率で濃縮するため、金属が人工的により少ない油をもたらす。
【0053】
本明細書中に記載される熱プレ処理に由来する残渣バイオミール(biomeal)、すなわち消費されたブロスは、培地および生じた塩、ならびに、溶解している、または溶解していない脱-溶媒溶解(de-solventized)細胞壁破片を含む水溶液中に、加水分解された細胞壁多糖類およびタンパク質を含み得る。残渣脱脂バイオミール、すなわち消費されたブロスは、例えば、作物の肥料、動物の飼料、酵母抽出物、または炭素/栄養源として用いられ得る。より詳細には、発酵ブロス中の高レベルのカリウムのために、消費されたブロスは、糖作物または他の作物の畑用の肥料の形態で、カリウム源としてリサイクルされ得る。水性プロセスを用いると、残渣バイオミールは、非水性プロセスに由来する残渣バイオミールと比較して、それらの他の潜在的用途についてより良好な形態となり得る。
【0054】
図1は、温度プレ処理を用い、かつ酵母抽出物の生産を含む水抽出プロセスの一例を示している。このプロセスは、発酵ブロス10で始まり、これに塩基12が加えられてよい(任意選択的)。発酵ブロス10はベッセル14内で121℃に加熱され、この温度にておよそ8時間にわたり保持される一方で、酸16が加えられてよい(任意選択的)。熱処理の後、プレ処理済みブロス18は、冷却装置20内で60℃に(例えば、フラッシュ冷却によって)冷却されて、プロセス中に水蒸気22が放出される。その後、濃縮ブロス24が遠心分離機26に移されて、ブロス24は油流28および水抽出残渣流30に分けられる。他のタイプの分離技術、例えば沈殿槽またはサイクロンもまた、単独で、または互いに組み合わせて用いられてよい。水抽出残渣流30は、加圧器32(またはエバポレータ)に向けられ、そこから圧力から水34が解放され、酵母ケーキ36が形成されて、酸40が加えられる加水分解装置38に送られる。結果的に生じるのは、加水分解された酵母ケーキ42である。
【0055】
本明細書中のプロセスが実行され得る微生物として、限定されないが、藻類、菌類、および細菌が挙げられる。例えば、適切な菌類として、ロドトルラ(Rhodotorula)属、シュードザイマ(Pseudozyma)属、またはスポリジオボルス(Sporidiobolus)属に属する油産生酵母が挙げられ得る。
【0056】
ある実施形態によると、酵母は、スポリジオボルス・パラロセウス(Sporidiobolus pararoseus)属に属する。特定の実施形態において、開示される微生物は、ATCC寄託番号PTA-12508(MK29404(Dry1-13J)株)に相当する微生物である。別の特定の実施形態において、微生物は、ATCC寄託番号PTA-12509(MK29404(Dry1-182J)株)に相当する微生物である。別の特定の実施形態において、微生物は、ATCC寄託番号PTA-12510(MK29404(Dry1-173N)株)に相当する微生物である。別の特定の実施形態において、微生物は、ATCC寄託番号PTA-12511(MK29404(Dry55)株)に相当する微生物である。別の特定の実施形態において、微生物は、ATCC寄託番号PTA-12512(MK29404(Dry41)株)に相当する微生物である。別の特定の実施形態において、微生物は、ATCC寄託番号PTA-12513(MK29404(Dry1)株)に相当する微生物である。別の特定の実施形態において、微生物は、ATCC寄託番号PTA-12515(MK29404(Dry1-147D)株)に相当する微生物である。別の特定の実施形態において、微生物は、ATCC寄託番号PTA-12516(MK29404(Dry1-72D)株)に相当する微生物である。
【0057】
酵母は、剪断力、浸透圧アンバランス、捕食者等の環境ストレスから自らを保護するための多糖類細胞壁を有する。保護用細胞壁により、バイオ燃料に変換され得る、油産生酵母中の脂質等の細胞内代謝物質の収穫が困難となり得る。
【0058】
グリコシド酵素(Glycosidic enzyme)が多糖類を破壊するため、酵母細胞壁を分解するのに有用である。グリコシド酵素は多くの場合、多糖類内の特異的糖モノマー、およびモノマー糖間の特異的結合に対して活性がある。例えば、グリコシド酵素は、α-1-4結合グルコース(アミロース)とβ-1-4結合グルコース(セルロース)とを識別し得る。しかしながら、酵母は、同一の多糖類で全て構成されるとは限らず、むしろ、糖モノマーのタイプおよび比率、ならびにモノマー間の結合のタイプに関して、広く異なっている。
【0059】
結果的に、細胞壁分解に最適なグリコシド酵素の混合は、生物に応じて決まる。糖からディーゼルへの変換に用いられる特定の一油産生酵母、スポリジオボルス・パラロセウス(Sporidiobolus pararoseus)MK29404Drylは、特に新規な細胞壁構造を有する。多く酵母において共通する構造結合は、β-1-3グルカンである。しかしながら、MK29404Drylは、わずかな1-3結合グルコースのみを示し、その代わりとして、α-1-4グルコースが主な糖結合であった。酵母細胞壁の別の共通成分はマンナンであり、これは多くの場合、1-6結合マンノースモノマーで構成される。対照的に、MK29404drylは、ごくわずかな1-6-マンノースのみを含有し、むしろ1-3結合マンノースおよび1-4結合マンノースの両方を含有する。
【0060】
MK29404Dryl酵母細胞壁の特定の組成のために、微生物の細胞壁を効果的に分解する酵素の特異的な組合せが必要とされる。アミラーゼ、1-4マンノシダーゼ、および1-3マンノシダーゼを含む酵素の組合せが、MK29404Drylを含む油産生微生物の油産生細胞壁を破壊するのに特に有効であることが発見された。特に、α-1-4結合グルコースに特異的なアミラーゼがとりわけ有効である。例えば、酵素の組合せとして、約5重量%~約30重量%、または約6重量%~約25重量%、または約7重量%~約20重量%のアミラーゼ;約5重量%~約45重量%、または約10重量%~約35重量%、または約15重量%~約30重量%の1-4マンノシダーゼ;および約5重量%~約45重量%、または約10重量%~約35重量%、または約15重量%~約30重量%の1-3マンノシダーゼが挙げられ得る。
【0061】
酵素の組合せはまた、1つまたは複数の補助酵素、例えばプロテアーゼ、スルファターゼ、キチナーゼ、またはこれらの酵素の酵素性能および脂質回収を向上させるあらゆる組合せが挙げられ得る。
【0062】
油産生微生物を含有する全発酵ブロスの内部で油産生細胞壁を破壊するために酵素の組合せを用いる前または後に、全発酵ブロスは、先に記載されるように熱プレ処理されてよい。より詳細には、ブロスは、3時間を超えて約90℃~約150℃の温度に加熱されてよい。
【0063】
油産生微生物を含有する全発酵ブロスの内部で油産生細胞壁を破壊するために酵素の組合せを用いた後、細胞内代謝物質が油産生細胞壁から収穫され得る。細胞内代謝物質は、適切には、脂質を含有する。抽出された脂質は、生物由来のディーゼル等のバイオ燃料の生産に用いられ得る。
【0064】
より詳細には、先により詳細に記載されるように、ヘキサン、ドデカン、デカン、ディーゼル、アルコール、またはこれらの溶媒の任意の組合せ等の溶媒が、乾燥細胞または溶解発酵ブロスに加えられて、混合物が形成され得る。ブロスおよび溶媒の混合物は撹拌されて接触し、油が油産生酵母細胞から抽出され得る。溶媒および油はその後、例えば遠心分離機を用いることによってブロスから分離され得る。溶媒および油は、油の少なくとも一部を燃料成分に変換するように反応し得る。溶媒および残りの油は、燃料、すなわちバイオ燃料に変換され得る。消費されたブロスは、作物の肥料、動物の飼料、酵母抽出物、酵母加水分解物、または炭素/栄養源として用いられ得る。
【0065】
以降でさらに詳細に記載されるように、細胞内代謝物質を収穫した後に残るあらゆる水抽出廃水がリサイクルされ得る。例えば、リサイクルされた抽出水は、糖を抽出するためのプロセスフィードストックを洗浄する吸収水として用いられ得る。
【0066】
図2は、脂質除去後に残る水抽出廃水が、フロントエンドの糖回収操作にリサイクルされる方法を示す、糖からディーゼルまでの統合フローシートである。より詳細には、リサイクルされた抽出水は、糖を抽出するためのプロセスフィードストックを洗浄する吸収水として用いられる。そのような統合は有益であり、なぜなら、フィード材料の収率の増大、ならびに廃棄物管理資本およびプロセシングコストの削減が実現するからである。
【0067】
廃棄物流をリサイクルすることが常に注目されるが、重要なのは、回収値を最大にする、フローシート内の適切なリサイクル点を同定する一方でまた、統合フローシートの動力学および最適な作動にリサイクルがどのように影響を及ぼすかを説明することである。
【0068】
先に記載されるように、糖は、例えば、従属栄養生物を水抽出部に用いて、ディーゼルを含むバイオ燃料に変換され得、これによって産物脂質は、水性発酵ブロスから直接取り出されて回収される。産物は、熱的力、機械力、浸透力、および酵素力の組合せによって油産生生物の内部コンパートメントから回収されて、あまり濃くない脂質、残りのブロス水、および脱脂されたバイオマスを含有する多相産物流をもたらす。
図2に示されるように、残りのブロス水は、糖を抽出するためのプロセスフィードストックを洗浄する吸収水としてリサイクルされ得、かつ用いられ得る。
【0069】
図2のフローシートは、ミル104にフィードされるサトウキビ100および吸収水102を示す。ミル104から、糖溶液106が処理装置108にフィードされる一方で、バガス110が分離される。処理装置108から、MEV(多重効用エバポレータ)フィード112がエバポレータ114に送られる一方で、マッド116が分離される。エバポレータ114から、蒸気/ガス流118がシード発酵装置124にフィードされる一方で、濃縮された糖流120が主発酵装置126にフィードされて、水122が分離される。濃縮された糖流120と共に、空気128もまた主発酵装置126に加えられる。主発酵装置126から、ブロス130が水性抽出装置134にフィードされる一方で、水蒸気およびCO
2132が放出される。水抽出装置134から、産物油136が分離され、蒸発水138が放出され、廃水140が吸収水流102中にリサイクルされる。表1は、
図2の糖からディーゼルへのフローシートにおける主要な流れおよび成分についてのサンプルフローの大きさを示す。表1のデータに基づいて、40%の吸収水減が算出され、この減少は、廃水のリサイクルに起因する。加えて、5%のバガスへの固体補足が算出され、これも廃水のリサイクルに起因する。
【0070】
【0071】
吸収水の一部として廃水をリサイクルすると、以下を含む複数の予想外の利益が生じる。
1.産物にさらに変換され得る有機炭素の回収(利益5参照)
2.非脂質バイオマスおよび削減済み第1目的(reduced first intent)栄養分フィードからの有機養分および無機養分の少なくとも部分的な回収(例えばアンモニア)
3.バガスと混ぜ合わせることによる溶液からの未回収非脂質バイオマスの分離
4.バガスおよび未回収非脂質バイオマスを混ぜ合わせることによる付加的なボイラーフィードおよびエネルギーの発生
5.リサイクルによる有機炭素スリッページおよび回収をより大きくし得る発酵操作に対するストリンジェンシーの引下げ(利益1参照)
6.シード発酵槽および主発酵槽への特異的なフィード流として用いるための糖流106および120の最適化
7.吸収用のリサイクル水を用いることによる、フレッシュ水需要の引下げ
8.廃棄物処理のための資本および運営コストの削減
【0072】
リサイクル流は、重要な成分の回収および変換を向上させ、かつ全体的な効率を向上させるための先に記載される方法において実施されてよい。例えば、ブロスが油産生微生物もしくはサトウキビ、または油産生微生物およびサトウキビの両方を含有する、水性発酵ブロスからバイオ燃料の生産に適した脂質を抽出する方法において、水性発酵ブロスは、例えば、水性発酵ブロスを、約40℃~約80℃に約1分間~最長約3時間にわたり加熱することによって、低温殺菌されてよい。水性発酵ブロスは、ブロスを、約90℃~約150℃、または約100℃~約150℃、または約110℃~約150℃、または約120℃~約150℃、または約130℃~約150℃の温度に、約30分間~約18時間、または3時間超~約18時間、または3時間超~約8時間にわたり加熱することによって、熱プレ処理されてよい。水性発酵ブロスは、加熱インターバル中に撹拌されてよい。酸、塩基、または酸および塩基の両方が、水性発酵ブロスに加えられてよい。水性発酵ブロスは、少なくとも1回、少なくとも2回、またはそれを超える回数、ビーズミルまたは他の機械装置を通過してよい。水性発酵ブロスは、ベッセル内で約70℃~約100℃にて、または還流下で約1~約60時間にわたり撹拌されてよい。塩、例えば、最大約2重量%のNaCl、KCl、K2SO4、またはNa2SO4等の塩がベッセル内の水性発酵ブロスに加えられてもよく、または代わりに、例えば、H2SO4をプラスしてNaOHまたはKOHを加えることによって、インサイチュで生産されてもよい。酸または塩基は、ベッセル内の水性発酵ブロスのpHが約3~約11に調整されるように加えられてよい。脂質は、重力分離、ハイドロサイクロン、フィルタ、および/または遠心分離機等の1つまたは複数の工程を含み得る適切な固体-液体-液体分離スキームを通して、水性発酵ブロスから、バイオマス固体および残りのブロス水を残して分離され得る。残りのブロス水は、糖を抽出するためのプロセスフィードストックを洗浄する吸収水として用いられてよい。加えて、バイオマス固体は、残りのブロス水と共にリサイクルされてもよい。
【0073】
脂質は、例えば、水素処理またはエステル転移を用いて、バイオ燃料に変換され得る。
【0074】
ある実施形態によると、本発明は、バイオ燃料を生産するための製造施設を対象とすることができる。ある実施形態によると、製造施設は、脂質抽出ユニットを備えてよい。加えて、製造施設は、熱プレ処理ユニットを備えてよい。ある実施形態において、製造施設は、残りのブロス水のリサイクルを可能にする装置を備えてよい。
【0075】
ある実施形態によると、本発明は、本明細書中に記載されるいずれかの方法にしたがって製造される再生可能材料もしくはバイオ燃料、または再生可能材料およびバイオ燃料の両方を対象とすることができる。
【0076】
ある実施形態によると、本明細書中に記載される方法は、微生物の油抽出収率の増大をもたらし得る。例えば、本方法は、少なくとも約10重量パーセントの微生物の油抽出収率の増大をもたらし得る。ある実施形態によると、油抽出収率の増大は、少なくとも約10重量パーセント、少なくとも約15重量パーセント、または少なくとも約20重量パーセントであり得る。
【0077】
[実施例]
記載した微生物の性能を特徴付けるのに用いた一測定基準が、脂肪酸抽出率、すなわちFAEである。本開示による微生物のいずれのFAEも、以下の式にしたがって算出することができる:
【数1】
式中、bは、細胞破断後の総バイオマスであり、典型的にはグラムで測定し;
C
biomassは、細胞破断前のFAMEのパーセンテージであり、C
biomassは、総グラムバイオマスあたりの総グラムFAMEとして算出し;本明細書中で用いる用語「FAME」は、脂肪酸メチルエステルを指し;
c
biomealは、細胞破断後のFAMEのパーセンテージであり、c
biomealは、総グラムバイオミールあたりの総グラムFAMEとして算出し;
lは、細胞破断後の油の総質量であるが、油回収工程の前であり、典型的にはグラムで測定する。微生物または発酵ブロスからこれらの値を得るのは、当業者の能力の範囲内である。
【0078】
一部の実施形態によると、本明細書中に記載する方法は、微生物の油または脂肪酸の抽出率インデックスの増大をもたらし得る。例えば、本方法は、少なくとも約10重量パーセントの微生物のFAEインデックスの増大をもたらし得る。
【0079】
ある実施形態において、ヘキサンによる油回収の後に、油の質量を測定する(L)。ヘキサンによる油回収の後にFAMEも測定する。一部の実施形態において、当該技術分野において知られている真空エバポレーションを、FAME測定の前にサンプルに実行する。
【0080】
本開示による微生物のいずれの抽出収率も、以下の式にしたがって算出することができる:
【数2】
式中、Bは、細胞破断前の総バイオマスであり、典型的にはグラムで測定し;
C
biomassは、細胞破断前のFAMEのパーセンテージであり、C
biomassは、総グラムバイオマスあたりの総グラムFAMEとして算出し;
C
oilは、細胞破断および油回収後のFAMEのパーセンテージであり、C
oilは、総グラム油あたりの総グラムFAMEによって算出し;
Lは、細胞破断および油回収後の油の総質量であり、典型的にはグラムで測定する。微生物または発酵ブロスからこれらの測定値を得るのは、当業者の能力の範囲内である。
【0081】
一部の実施形態によると、本明細書中に記載される方法は、微生物の油抽出収率の増大をもたらし得る。例えば、本方法は、少なくとも約10重量パーセントの微生物の油抽出収率の増大をもたらし得る。
【0082】
実施例1。糖ジュースを含んだ複合糖源を用いた油産生酵母株の発酵により、さらなるプロセシング用の低温殺菌していない全ブロスを産出した。全ブロスを、ベッセル内で30分以内に27℃から80℃に加熱し、80℃にて3時間にわたり保持することによって低温殺菌した。低温殺菌ブロスは、16.8%の脂肪酸抽出率(FAE)を示した。4500rpm(4000g)にて5分間のベンチ遠心分離機における低温殺菌非溶解ブロスの遠心分離直後に、回収可能な油相はなかった。
【0083】
2つのラシュトンインペラが取り付けられている20Lのジャケット付きタンク内で、低温殺菌ブロスのアリコートを106℃にて8時間プレ処理した。26℃から106℃への温度上昇が約45分にわたり約1.8℃/分の速度で生じた。プレ処理済みブロスは、脂肪酸抽出率の増大(80.75%)を示した。4500rpmにて5分間のベンチ遠心分離機における低温殺菌非溶解ブロスの遠心分離直後に、回収可能な油相はなかった。結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
低温殺菌プレ処理済みブロスを、KDL Pilotビーズミル(0.5mmシリカ-ジルコニアメディアで85%充填容量にまで満たした1.4Lベッセル)において、様々な流速80ml/分または380ml/分での1または2パス間でそれぞれ溶解した。プレ処理済みブロスは、ミルにおける最小の滞留時間での低温殺菌ブロスの脂肪酸抽出率(FAE)を上回った。最高速度(380ml/分)での1パス間で溶解したプレ処理済みブロスの抽出率は、最低速度(80ml/分)での複数パス間でプロセシングした場合の低温殺菌ブロスの抽出率に匹敵した。
【0086】
脂肪酸抽出率が約95%である低温殺菌プレ処理済み溶解ブロスのサンプル(200~300g)を、3N硫酸を用いてpH4に調整した。サンプルを、還流下(撹拌バー入り500mlエルレンマイヤーフラスコ)のバッチモードにおいて合体させた。ベンチ遠心分離機において4500rpm(4000g)にて5分間の、15~50mlアリコートの遠心分離によって、合体を監視した。
【0087】
遠心分離直後の合体ブロスは、明確に異なる別個の油層を示し、下層が、消費されたブロスを含んだ。プレ処理済み溶解ブロスの合体は、16時間以内に完了した。低温殺菌溶解ブロスは、合体するのに40時間超を必要とした。
【0088】
抽出収率を推定するために、遠心分離したチューブの上部から油層を回収した。プレ処理済みブロスの抽出収率は84.1%であったが、低温殺菌ブロスの抽出収率は69.9%であった。
【0089】
普通は、滴定による遊離脂肪酸(FFA)のレベルによって油品質を判定する。低温殺菌ブロスおよびプレ処理済みブロスの両方から回収した粗油における遊離脂肪酸レベルは類似していた(1.2~1.3%)。
【0090】
実施例2。糖ジュースを含む複合糖源を用いた油産生酵母株の発酵により、さらなるプロセシング用の低温殺菌していない全ブロスを産出した。この実施例のプロセスのフロー図を
図3に示す。
図3に示すように、低温殺菌していない全ブロス210を、ジャケット付き撹拌ベッセル214内でのブロス210の、80℃にて3時間の低温殺菌を含むプロトコルを用いて、抽出した。その後、低温殺菌ブロス216を、硫酸を用いてpH4に調整し、121℃、30psi(15psig)の圧力で8時間、プレ処理相218に曝した。ブロスを加熱するのに、1.8℃/分の温度勾配を用いた。ブロスを、0.23℃/分の速度で冷却した。その後、プレ処理済みブロス220を、2パス間の200ml/分のビーズミルを用いて、溶解相222に曝した。その後、溶解ブロス224を、90℃、70%水分の、十分に撹拌されるタンク内で、合体相226に曝した。その後、合体ブロス228を、固体-液体分離相230に曝し、合体ブロス228を、2相および3相の遠心分離機によって遠心分離し、粗油232を回収した。プロセスはまた、消費されたブロス相を産出した。これは、消費された重相234、および複数の種々雑多の固体流236に分離された。
【0091】
低温殺菌していない全ブロスのサンプル中の金属の、回収した油中の、および消費された重相および固体を含む各退去流中の濃度をICP分析によって分析した。低温殺菌していない全ブロス中の、および回収した粗油中の、金属濃度の比率は、出発全ブロスがプロセスから回収した油の少なくとも2倍の金属(SiおよびCuを排除した)濃度を有したことを示している。プロセスから回収した粗油は、全発酵ブロスと比較して、Na、Mg、P、K、Ca、Mn、Fe、およびZnが有意に減少した。
【0092】
抽出プロセスから回収した粗油はまた、プロセスを出た他の流れ、例えば抽出後の消費された重相および固体と比較して、Na、Mg、P、K、Ca、Mn、Fe、およびZnが有意に減少した。
【0093】
【0094】
実施例3。油産生酵母株の全発酵ブロスを、撹拌ベッセル内で4時間にわたり121℃に加熱した。その後、ブロスを60℃に冷却し、3つの異なるフロー速度(380ml/分、200ml/分、および80ml/分)にてそれぞれランさせたビーズミル(KDL Pilot、Glen Mills、NJ)により溶解し、細胞内油産物を放出させた。ミルにおける溶解後の放出油および細胞破片の粒子サイズ分布を
図4に示す。全ての計測可能な容量の溶解細胞および油小滴は、0.1ミクロンを上回り、さらなるプロセシング直後に油および固体相を分離する遠心分離等のプロセスを使用する潜在性が示される。
【0095】
油画分中の油産物は、80℃以上の温度にて混合することによって回収することができる。380ml/分にて溶解した各5Lのブロスをベッセル内に入れ、2つの3インチ(7.62cm)ラシュトンインペラで混合した。溶解ブロスを、150rpmのアジテータ速度(先端速度=60cm/秒、tower NBS16)にて、または500rpmのアジテータ速度(先端速度=200cm/秒、Tower NBS17)にて混合した。6時間の混合終了時の油および細胞破片の分布を
図5に示す。500rpm、200cm/秒の先端速度のベッセル由来の産物は、ベンチトップ遠心分離機における5分間の4500rpm(4000g)での遠心分離直後、明確に異なる別個の油層を示した。150rpm、60cm/秒の先端速度のベッセル由来の産物は、遊離した油を示さず、遠心分離直後のエマルジョン相を実証した。
【0096】
種々の修正形態および変形形態が、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、開示される構造および方法においてなされ得ることは当業者に明らかであろう。特に、いずれか1つの実施形態の記載が、他の実施形態の記載と自由に組み合わされて、2つ以上の要素または限定の組合せおよび/または変形形態をもたらしてもよい。本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書に開示される本発明の実施を考慮すれば、当業者にとって明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示であると考えられることが意図されており、本発明の真の範囲および趣旨は、特許請求の範囲によって示される。
【0097】
さらなる実施形態は以下のとおりである。
[実施形態1]
全発酵ブロスからバイオ燃料の生産に適した脂質を抽出する方法であって:
(a)油産生微生物を含有する前記ブロスを、約90℃~約150℃、または約100℃~約150℃、または約110℃~約150℃、または約120℃~約150℃、または約130℃~約150℃の温度に加熱することによって、前記全発酵ブロスをプレ処理することと;
場合により、
(i)前記全発酵ブロスを、約30分間~約18時間、または3時間超~約18時間、または3時間超~約8時間にわたり加熱すること;
(ii)前記油産生微生物を含有する前記全発酵ブロスによって45℃~80℃で費やされる時間を、前記油産生微生物を含有する前記全発酵ブロスを45℃から80℃に60分未満で加熱することによって、最小限にすること;および
(iii)前記全発酵ブロスを、毎分摂氏約0.1~約80度の平均速度で加熱すること
のうちの少なくとも1つと、
(b)その後産物を前記油産生微生物から抽出することと
を含む、方法。
[実施形態2]
前記全発酵ブロスのpHを、酸または塩基のいずれかを加えることによって調整することをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
さらなる等温プロセシングを可能にするために、前記全発酵ブロスを、約60℃超、または約70℃超、または約80℃超、または約85℃超、または約90℃超に冷却すること、および、場合により、前記全発酵ブロスを、毎分摂氏約0.2~約80度の平均速度で冷却すること、をさらに含む、実施形態1または2に記載の方法。
[実施形態4]
前記さらなる等温プロセシングは、機械的破壊を適用することを含む、実施形態3に記載の方法。
[実施形態5]
(a)前記加熱の後、前記全発酵ブロスを乾燥させること;
(b)前記全発酵ブロスを、毎秒約10cm~毎秒約240cmのインペラ先端速度で撹拌すること;および
(c)前記プレ処理中、前記全発酵ブロスを含有する系において、圧力を、約10psi~約150psi、または約20psi~約150psi、または約30psi~約150psi、または約50psi~約150psiに維持すること
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態6]
前記プレ処理中、前記全発酵ブロスを含有する系に塩が存在して、前記系中で約0.01M~約2Mのイオン強度がもたらされる、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態7]
前記油産生微生物を溶解に曝して、小滴および破片の粒子サイズ分布をもたらすことをさらに含み、放出された産物油小滴および破片の少なくとも80容量%、好ましくは95容量%は、直径において0.1μmよりも大きいサイズを有する、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態8]
120cm/秒を超えるインペラ先端速度での混合によって、前記油および細胞破片小滴を連続相として回収することをさらに含む、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]
前記プレ処理を経た前記発酵ブロスにおいて、前記発酵ブロスを付加的に30分間~8時間にわたり90℃超で加熱することによって、8時間未満の間に脂質が凝集する、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態10]
前記抽出プロセスは、前記全発酵ブロス中の金属を、油と比較して少なくとも2の比率で濃縮する、実施形態1~9のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態11]
粗糖に前記方法を実行することと、粗油を回収するために全乾燥バイオマスおよび/または溶媒を利用する抽出技術と比較して、金属および無機元素がより少ない粗油を回収することとを含む、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態12]
前記全発酵ブロスは、>0.05g/Lの濃度で塩およびイオンを伴う粗糖源を含み、
好ましくは、前記塩およびイオンは、Na、K、Ca、Mg、Zn、クロリド、サルフェート、ホスフェート、ニトレート、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
より好ましくは、前記塩およびイオンは、カリウム、カルシウム、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態13]
前記塩およびイオンは蓄積して、0.5~40g/Lの濃度となる、実施形態12に記載の方法。
[実施形態14]
前記塩およびイオンは、
(a)ナトリウムよりも高い濃度のカリウム;
(b)1g/Lを超える濃度のカルシウム;および
(c)2.5g/Lを超える濃度のカリウム
のうちの少なくとも1つを含む、実施形態12または13に記載の方法。
[実施形態15]
前記塩およびイオンは、前記産物が前記油産生微生物から放出される場合に、凝集による油相の回収に役立つ、実施形態12~14のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態16]
前記発酵ブロスは、前記凝集の間、0.5~40g/Lの濃度の塩およびイオンを含む、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]
前記凝集は、凝集脂質の粒子サイズ分布をもたらし、凝集脂質の少なくとも80容量%、好ましくは95容量%は、直径において40μmよりも大きいサイズを有する、実施形態15に記載の方法。
[実施形態18]
前記加熱の後に、前記発酵ブロスを減圧することと、さらなるプロセシング前に前記ブロス中で固体を濃縮するために前記全発酵ブロスを冷却することとをさらに含む、実施形態1~17のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態19]
混合物を形成するために、前記加熱の後に、溶媒を乾燥細胞または溶解発酵ブロスに加えることをさらに含み、
好ましくは、前記溶媒は、ヘキサン、ドデカン、デカン、ディーゼル、アルコール、およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態1~18のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態20]
(a)接触させて油を前記油産生微生物から抽出するために、前記溶解発酵ブロスおよび前記溶媒の前記混合物を撹拌すること;
(b)前記溶媒および前記油を前記溶解発酵ブロスから分離すること;および
(c)前記溶媒および前記油を前記溶解発酵ブロスから分離するために遠心分離機を用いること
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態19に記載の方法。
[実施形態21]
前記油の少なくとも一部を燃料成分に変換するために、前記溶媒および前記油を反応させることをさらに含む、実施形態20に記載の方法。
[実施形態22]
前記溶媒および残りの前記油を、バイオ燃料を含む燃料に変換することをさらに含む、実施形態21に記載の方法。
[実施形態23]
前記消費されたブロスを、作物の肥料、動物の飼料、酵母抽出物、酵母加水分解物、または炭素/栄養源として用いることをさらに含む、実施形態20~22のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態24]
前記油産生微生物を含有する前記全発酵ブロスは、糖フィードストックを含み、
好ましくは、前記油産生微生物および前記糖フィードストックを含有する前記全発酵ブロスは、発酵槽ブロスのリットルあたり約50~約250グラムの脂質、発酵槽ブロスのリットルあたり約0~約50グラムの糖、発酵槽ブロスのリットルあたり約0~約40グラムの塩、および発酵槽ブロスのリットルあたり約10~約100グラムの脂質フリー乾燥バイオマスを含む、実施形態1~23のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態25]
前記油産生微生物は、少なくとも40重量%の脂肪を含む、実施形態1~24のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態26]
前記油産生微生物を含有する全発酵ブロスを低温殺菌することをさらに含み、
好ましくは、前記全発酵ブロスを約40℃~約80℃に約1分間~約3時間にわたり加熱することによって、前記全発酵ブロスを低温殺菌することをさらに含む、実施形態1~25のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態27]
前記全発酵ブロスを、約90℃~約150℃、または約100℃~約150℃、または約110℃~約150℃、または約120℃~約150℃、または約130℃~約150℃の温度にて、約30分間~約18時間、または3時間超~約18時間、または3時間超~約8時間にわたり保持することをさらに含む、実施形態26に記載の方法。
[実施形態28]
(a)前記全発酵ブロスを、加熱インターバル中に撹拌すること;
(b)酸を前記全発酵ブロスに加えること;および
(c)塩基を前記全発酵ブロスに加えること
のうちの少なくとも1つをさらに含む、実施形態27に記載の方法。
[実施形態29]
ビーズミル、ホモジナイザー、オリフィスプレート、高剪断ミキサー、プレス、押出機、圧力破壊、湿式ミリング、乾式ミリング、または他の剪断もしくは機械破壊装置に少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、前記全発酵ブロスを通過させることをさらに含む、実施形態27または28に記載の方法。
[実施形態30]
前記溶解発酵ブロスを、ベッセル内で約70℃~約100℃にて約1~約60時間にわたり撹拌することをさらに含む、実施形態29に記載の方法。
[実施形態31]
塩を前記ベッセル内の前記溶解発酵ブロスに加えることをさらに含む、実施形態30に記載の方法。
[実施形態32]
最大約2重量%の前記塩を加えることを含み、
好ましくは、前記塩は、NaCl、KCl、K2SO4、Na2SO4であるか、またはH2SO4をプラスした少なくとも1つのNaOHおよびKOHの組合せに由来する、実施形態31に記載の方法。
[実施形態33]
前記ベッセル内の前記溶解発酵ブロスのpHを約3~約11に調整するために、塩基を加えることをさらに含む、実施形態30~32のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態34]
20%未満の遊離脂肪酸である油を、遠心分離により、前記全発酵ブロスから分離することをさらに含む、実施形態30~33のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態35]
前記油産生微生物は、油産生酵母細胞である、実施形態1~34のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態36]
前記油産生微生物の油産生細胞壁を破壊するために、アミラーゼ、1-4マンノシダーゼ、および1-3マンノシダーゼを含む酵素の組合せを用いることをさらに含み、
好ましくは、酵素の前記組合せはさらに、スルファターゼ、プロテアーゼ、およびキチナーゼからなる群から選択される少なくとも1つの補助酵素を含む、実施形態1~35のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態37]
前記アミラーゼは、α1-4結合グルコースに特異的である、実施形態36に記載の方法。
[実施形態38]
酵素の前記組合せは、約5重量%~約30重量%のアミラーゼを含む、実施形態36または37のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態39]
酵素の前記組合せは、約5重量%~約45重量%の1-4マンノシダーゼを含む、実施形態36~38のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態40]
酵素の前記組合せは、約5重量%~約45重量%の1-3マンノシダーゼを含む、実施形態36~39のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態41]
前記油産生細胞壁を破壊した後に前記油産生細胞壁から細胞内代謝物質を収穫することをさらに含む、実施形態36~40のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態42]
前記細胞内代謝物質は、脂質を含む、実施形態41に記載の方法。
[実施形態43]
前記細胞内代謝物質をバイオ燃料に変換することをさらに含む、実施形態41または42に記載の方法。
[実施形態44]
前記細胞内代謝物質を収穫した後に残る水抽出廃水をリサイクルすることをさらに含む、実施形態41~43のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態45]
前記リサイクルされた抽出水を、糖を抽出するためにプロセスフィードストックを洗浄する吸収水として用いることをさらに含む、実施形態44に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全発酵ブロスからバイオ燃料の生産に適した脂質を抽出する方法であって、
(a)油産生微生物を含有する全発酵ブロスを、90℃~150℃の温度に3時間超~18時間加熱することによって、前記全発酵ブロスをプレ処理する工程であって、
前記全発酵ブロスを45℃から80℃に60分未満で加熱すること、および、前記全発酵ブロスを、毎分0.1℃~80℃の平均速度で加熱することを含み、
前記プレ処理が、前記油産生微生物の細胞壁の透過性を増大させる、工程と、
(b)さらなる等温プロセシングを可能にするために、前記全発酵ブロスを、毎分0.2℃~80℃の平均速度で冷却する工程と、
(c)次いで、プレ処理後の全発酵ブロス中の前記油産生微生物を溶解する工程であって、放出された産物油小滴および破片の少なくとも80容量%は、直径において0.1μmよりも大きいサイズを有する、小滴および破片の粒子サイズ分布をもたらす工程と、
(d)産物を前記油産生微生物から抽出する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記全発酵ブロスのpHを、酸または塩基のいずれかを加えることによって調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)前記加熱の後、前記全発酵ブロスを乾燥させること;
(b)前記全発酵ブロスを、毎秒10cm~毎秒240cmのインペラ先端速度で撹拌すること;および
(c)前記プレ処理中、前記全発酵ブロスを含有する系において、圧力を、10psi~150psiに維持すること
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プレ処理中、前記全発酵ブロスを含有する系に塩が存在して、前記系中で0.01M~2Mのイオン強度がもたらされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記さらなる等温プロセシングが、機械的破壊を適用することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
120cm/秒を超えるインペラ先端速度での混合によって、油および細胞破片の小滴を連続相として回収することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プレ処理を経た前記発酵ブロスにおいて、前記発酵ブロスを付加的に30分間~8時間にわたり90℃超で加熱することによって、8時間未満の間に脂質が凝集する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出プロセスは、前記全発酵ブロス中の金属を、油と比較して少なくとも2の比率で濃縮する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
粗糖に前記方法を実行することと、粗油を回収するために全乾燥バイオマスおよび/または溶媒を利用する抽出技術と比較して、金属および無機元素がより少ない粗油を回収することとを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記全発酵ブロスは、>0.05g/Lの濃度で塩およびイオンを伴う粗糖源を含み、
前記塩およびイオンは、Na、K、Ca、Mg、Zn、クロリド、サルフェート、ホスフェート、ニトレート、およびそれらの組合せからなる群から選択され、
前記塩およびイオンは、カリウム、カルシウム、またはそれらの組合せを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記塩およびイオンは蓄積して、0.5~40g/Lの濃度となる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記塩およびイオンは、
(a)ナトリウムよりも高い濃度のカリウム;
(b)1g/Lを超える濃度のカルシウム;および
(c)2.5g/Lを超える濃度のカリウム
のうちの少なくとも1つを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記塩およびイオンは、前記産物が前記油産生微生物から放出される場合に、凝集による油相の回収に役立つ、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記発酵ブロスは、前記凝集の間、0.5~40g/Lの濃度の塩およびイオンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記凝集は、凝集脂質の粒子サイズ分布をもたらし、凝集脂質の少なくとも80容量%は、直径において40μmよりも大きいサイズを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱の後に、前記発酵ブロスを減圧することと、さらなるプロセシング前に前記ブロス中で固体を濃縮するために前記全発酵ブロスを冷却することとをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
混合物を形成するために、前記加熱の後に、溶媒を乾燥細胞または溶解発酵ブロスに加えることをさらに含み、
前記溶媒は、ヘキサン、ドデカン、デカン、ディーゼル、アルコール、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(a)接触させて油を前記油産生微生物から抽出するために、前記溶解発酵ブロスおよび前記溶媒の前記混合物を撹拌すること;
(b)前記溶媒および前記油を前記溶解発酵ブロスから分離すること;および
(c)前記溶媒および前記油を前記溶解発酵ブロスから分離するために遠心分離機を用いること
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記油の少なくとも一部を燃料成分に変換するために、前記溶媒および前記油を反応させることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒および残りの前記油を、バイオ燃料を含む燃料に変換することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記消費されたブロスを、作物の肥料、動物の飼料、酵母抽出物、酵母加水分解物、または炭素/栄養源として用いることをさらに含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記油産生微生物を含有する前記全発酵ブロスは、糖フィードストックを含み、
前記油産生微生物および前記糖フィードストックを含有する前記全発酵ブロスは、発酵槽ブロスのリットルあたり50~250グラムの脂質、発酵槽ブロスのリットルあたり0~50グラムの糖、発酵槽ブロスのリットルあたり0~40グラムの塩、および発酵槽ブロスのリットルあたり10~100グラムの脂質フリー乾燥バイオマスを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記油産生微生物は、少なくとも40重量%の脂肪を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記油産生微生物を含有する全発酵ブロスを低温殺菌することをさらに含み、
前記全発酵ブロスを40℃~80℃に1分間~3時間にわたり加熱することによって、前記全発酵ブロスを低温殺菌することをさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記全発酵ブロスを、90℃~150℃の温度にて、3時間超~8時間にわたり保持することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
(a)前記全発酵ブロスを、加熱インターバル中に撹拌すること;
(b)酸を前記全発酵ブロスに加えること;および
(c)塩基を前記全発酵ブロスに加えること
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ビーズミル、ホモジナイザー、オリフィスプレート、高剪断ミキサー、プレス、押出機、圧力破壊、湿式ミリング、乾式ミリング、または他の剪断もしくは機械破壊装置に少なくとも1回、前記全発酵ブロスを通過させることをさらに含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶解発酵ブロスを、ベッセル内で70℃~100℃にて1~60時間にわたり撹拌することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
塩を前記ベッセル内の前記溶解発酵ブロスに加えることをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
最大2重量%の前記塩を加えることを含み、
前記塩は、NaCl、KCl、K2SO4、Na2SO4であるか、またはH2SO4をプラスした少なくとも1つのNaOHおよびKOHの組合せに由来する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ベッセル内の前記溶解発酵ブロスのpHを3~11に調整するために、塩基を加えることをさらに含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
20%未満の遊離脂肪酸である油を、遠心分離により、前記全発酵ブロスから分離することをさらに含む、請求項2~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記油産生微生物は、油産生酵母細胞である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記油産生微生物の油産生細胞壁を破壊するために、アミラーゼ、1-4マンノシダーゼ、および1-3マンノシダーゼを含む酵素の組合せを用いることをさらに含み、
酵素の前記組合せはさらに、スルファターゼ、プロテアーゼ、およびキチナーゼからなる群から選択される少なくとも1つの補助酵素を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記アミラーゼは、α1-4結合グルコースに特異的である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
酵素の前記組合せは、5重量%~30重量%のアミラーゼを含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
酵素の前記組合せは、5重量%~45重量%の1-4マンノシダーゼを含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
酵素の前記組合せは、5重量%~45重量%の1-3マンノシダーゼを含む、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記油産生細胞壁を破壊した後に前記油産生細胞壁から細胞内代謝物質を収穫することをさらに含む、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞内代謝物質は、脂質を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞内代謝物質をバイオ燃料に変換することをさらに含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞内代謝物質を収穫した後に残る水抽出廃水をリサイクルすることをさらに含む、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記リサイクルされた抽出水を、糖を抽出するためにプロセスフィードストックを洗浄する吸収水として用いることをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【外国語明細書】