(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058684
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】MBP-FGF組み換えタンパク質を用いた三次元線維芽細胞集合体の調製、及び当該線維芽細胞集合体を含むインビトロ3D皮膚真皮モデル
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20230418BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230418BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C12N5/077
C12M1/00 C
C12N1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022415
(22)【出願日】2023-02-16
(62)【分割の表示】P 2021131745の分割
【原出願日】2016-04-19
(31)【優先権主張番号】10-2015-0159011
(32)【優先日】2015-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517119589
【氏名又は名称】エス-バイオメディックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン ホン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】パク,キ ドク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三次元線維芽細胞集合体、その製造方法、及び線維芽細胞から培養された線維芽細胞集合体を含むインビトロ三次元皮膚真皮モデル、及びそれを使用して薬物をスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】線維芽細胞を、線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質がコーティングされた表面を有する培養容器中の液体培地内で培養し、前記表面から線維芽細胞が離脱されて形成された線維芽細胞集合体を含む培養物を得る段階と、前記培養物から線維芽細胞集合体を分離する段階と、を含む線維芽細胞集合体を生産する方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞を、線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質がコーティングされた表面を有する培養容器中の液体培地内で培養し、培養された前記線維芽細胞が前記表面から離脱されて形成された線維芽細胞集合体を含む培養物を得る段階と、
前記培養物から前記線維芽細胞集合体を分離する段階と、を含む線維芽細胞集合体を生産する方法であり、
前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質と前記線維芽細胞との結合は、線維芽細胞と線維芽細胞との結合より弱く、
前記培養する段階において、前記線維芽細胞は、培養初期には、MBP-FGF組み換えタンパク質でコーティングされた前記培養容器の前記表面に接着して増殖した後、成長するにつれ、前記培養容器の前記表面から離脱し、
前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、線維芽細胞成長因子(FGF)であり、
前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、線維芽細胞の細胞膜に存在するインテグリンと結合しないタンパク質であり、
前記線維芽細胞成長因子は、マルトース結合タンパク質(MBP)によって前記培養容器の前記表面に固定されており、
前記マルトース結合タンパク質はポリペプチドリンカであり、
前記ポリペプチドリンカは、カルボキシル末端を介して、前記線維芽細胞成長因子のアミノ末端と結合し、アミノ末端に存在する疎水性ドメインを介して、疎水性表面を有する培養容器に固定できるもの
である、方法。
【請求項2】
前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、培地内において、線維芽細胞とフィブロネクチンとが結合するより、前記線維芽細胞とさらに弱く結合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養容器の前記表面は、シラン化された表面、炭化水素コーティングされた表面、高分子表面及び金属表面で構成された群から選択される疎水性表面であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高分子がポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L-乳酸)(PDLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリトリメチレンカーボネート、及びそれらの共重合体から構成された群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元線維芽細胞集合体、その生産方法、それを含むインビトロ3D皮膚真皮モデル、及びそれを使用して薬物をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、細胞治療技術は、難病などの治療の新たな分野で脚光を浴びている。以前までは、人間の難病治療のために、臓器移植または遺伝子治療などが提示されたが、免疫拒否、供給臓器不足、ベクター開発、または疾患遺伝子に対する知識不足により、効率的な実用化が十分ではなかった。
【0003】
そのために、細胞治療技術への関心が高まり、生体内で分離した細胞を、生体外で増殖して移植する技術が商用化されており、人工皮膚、軟骨または線維組織の再建など実用化が続けて進められてきた。線維芽細胞は、間質性細胞外基質(ECM:extracellular matrix)を生産して維持する細胞であり、細胞外基質によって線維芽細胞が有機的に連結されている。また、線維芽細胞は、免疫防御において、多様なサイトカイン及び生理活性因子を生産する細胞として周知されている。
【0004】
かような線維芽細胞を、細胞治療剤あるいは組織工学素材として活用するためには、線維芽細胞を二次元的に培養して大量増殖させた後、トリプシンのような酵素で処理したが、かような線維芽細胞においては、生成された細胞外基質が分解され、移植する段階において、細胞外基質の役割を期待することができなかった。組織工学技術として、生分解性の合成高分子あるいは天然高分子を利用して、スキャフォールドという人工的な三次元多孔性細胞外基質を利用して、線維芽細胞を始めとする多様な細胞を、三次元細胞集合体として培養しようとする研究がなされた。しかし、それは、生分解速度または炎症反応など素材の限界があって商用化に困難があり、そのために、三次元細胞集合体形成を誘導する技術が要求されている。
【0005】
一方、人体の皮膚組織は、大きく見て、3つの部分に分けられるが、皮膚の最も外側をなす表皮層、その下の層の真皮層、及び皮下組織からなる。そのうち表皮層は、表皮層と真皮層とをしっかりと結合させる基底膜(basement membrane)から多くの層に分化された上皮細胞、その他メラニン細胞、及び免疫細胞からなり、表皮層下の真皮層は、主に線維芽細胞と、該細胞が分泌したさまざまな細胞外基質とからなる。該真皮層は、皮膚の健康及び老化と密接に関連しているとということが知られている。
【0006】
コラーゲンは、真皮層の90%を占める主要タンパク質であり、皮膚結合組織を維持し、皮膚に弾力を提供する。一般的に、外部要因及び年齢増加により、線維芽細胞の数及び機能が低下し、それが老化の主要原因として知られている。細胞の減少は、皮膚組織への線維質成分合成、水分の損失、及び角質層の変化を起こす。また、コラゲナーゼの増加は、架橋形態のコラーゲンを減少させ、それは、皮膚の滑らかさ、水分及び弾力を低下させる。コラーゲン含量及びその合成増加は、皮膚の水分及び弾力の増大を意味する。
【0007】
皮膚マトリックス内のコラーゲンの分解及び合成は、プロテアーゼであるMMP(matrix metalloproteinase)によって調節される。構造及び機能的な特性によって、MMPは、多種に分けられる。タイプIコラーゲンは、皮膚の典型的なコラーゲンであり、MMP-1の作用によって分解される。MMP-1活性は、皮膚の恒常性を維持するために分泌されるTIMP-1のような抑制剤によって調節される。MMPs及びTIMPsのような生分子は、線維芽細胞を含む細胞によって分泌される。また、MMP-1は、細胞外基質を分解し、それにより、腫瘍の転移及び進行を促進する。MMP-1によるコラーゲン合成及び分解は、癌転移において重要な役割を行う。従って、MMP-1/コラーゲンを標的にする薬物及び物質は、癌治療剤または化粧料組成物の目的に開発されている。
【0008】
また、MMPは、炎症性疾患、例えば、関節炎、または癌、例えば、癌転移のような病理学的条件において過発現すると知られており、MMPをターゲットにするMMP抑制剤は、前述のような疾患の治療剤として開発されている。
【0009】
かような、MMPまたはコラーゲンを標的にする薬物をスクリーニングするための2D細胞基盤アッセイが開発されているが、2D細胞基盤アッセイは、薬物の敏感度、細胞及び組織に対する薬物浸透の問題によって制限的であり、生きている生命体の反応を正確に予測するのに不適である。また、かような皮膚の構造的、機能的な複雑性のために、一種の皮膚細胞を利用した皮膚研究は、限界を有するようになりながら、それを克服するために開発された三次元的構造の皮膚モデルが人工皮膚であるが、既存の人工皮膚は、高速で薬物をスクリーニングし難いという制限がある。従って、高速で薬物をスクリーニング(high-throughput)することができれば、皮膚の環境を模写することができる新たな皮膚モデルシステムの開発が要求される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一様相は、線維芽細胞を、線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質がコーティングされた表面を有する培養容器中の液体培地内で培養し、前記表面から線維芽細胞が離脱されて形成された線維芽細胞集合体(fibroblast cluster)を含む培養物を得る段階と、前記培養物から線維芽細胞集合体を分離する段階と、を含む線維芽細胞集合体を生産する方法であり、前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、線維芽細胞と線維芽細胞との結合よりさらに弱く線維芽細胞と結合する方法を提供するものである。
【0011】
他の様相は、前記方法によって製造された線維芽細胞集合体を提供するものである。
【0012】
さらに他の様相は、線維芽細胞から培養された線維芽細胞集合体を含むインビトロ(in
vitro)三次元皮膚真皮モデルを提供するものである。
【0013】
さらに他の様相は、線維芽細胞を、線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質がコーティングされた表面を有する培養容器中の液体培地内で培養し、前記表面から線維芽細胞が離脱されて形成された線維芽細胞集合体を含む培養物を得る段階であり、前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、線維芽細胞と線維芽細胞との結合よりさらに弱く線維芽細胞と結合する段階と、前記培養物からの線維芽細胞集合体を少なくとも12時間追加して培養する段階と、を含む含むインビトロ三次元人工皮膚モデルを製造する方法を提供するものである。
【0014】
さらに他の様相は、前記線維芽細胞集合体またはインビトロ三次元皮膚真皮モデルに、被検物質を処理する段階と、前記被検物質が処理される線維芽細胞集合体または皮膚真皮モデルのMMPの発現または活性のレベルを測定する段階と、測定されたMMPの発現または活性のレベルを、無処理対照群のレベルと比較する段階と、対照群に比べ、MMPの発現または活性を低下させた物質を選別する段階と、を含むMMPの発現または活性を低下させる物質をスクリーニングする方法を提供するものである。
【0015】
さらに他の様相は、前記線維芽細胞集合体またはインビトロ三次元皮膚真皮モデルに、被検物質を処理する段階と、前記被検物質が処理される線維芽細胞集合体または皮膚真皮モデルのコラーゲンの発現または活性のレベルを測定する段階と、測定されたコラーゲンの発現または活性のレベルを、無処理対照群のレベルと比較する段階と、対照群に比べ、コラーゲンの発現または活性を上昇させた物質を選別する段階と、を含むコラーゲンの発現または活性を上昇させる物質をスクリーニングする方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
一様相による線維芽細胞集合体またはその製造方法によれば、培養容器で短時間に多量の三次元線維芽細胞集合体を容易に得ることができ、細胞外基質に取り囲まれた三次元線維芽細胞集合体を細胞源として、線維細胞の損傷なしに注射製剤として生体内移植が可能であるという効果がある。
【0017】
他の様相によるインビトロ三次元皮膚真皮モデル、及びそれを使用して薬物をスクリーニングする方法は、三次元細胞集合体からなっており、構造的、機能的な複雑性を有する皮膚の生体内環境を良好に模写するだけではなく、MMPまたはコラーゲンを含む細胞外基質と係わる物質を高速(high-throughput)でスクリーニングすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一具体例による三次元線維芽細胞集合体の製作過程を図式的に示した図面である。
【
図2】一具体例による線維芽細胞の細胞接着率を、タンパク質量によって定量化したグラフを示した図面である。
【
図3】一具体例による線維芽細胞の細胞形態蛍光染色写真を示した図面である。
【
図4】一具体例による線維芽細胞のFAKのリン酸化活性を示した図面である。
【
図5】一具体例による三次元線維芽細胞集合体形成写真を示した図面である。
【
図6】一具体例による三次元線維芽細胞集合体形成写真を示した図面である。
【
図7】一具体例による三次元線維芽細胞集合のH&E染色結果を示した図面である。
【
図8】一具体例による三次元線維芽細胞集合体の第1型コラーゲン免疫蛍光学的染色結果を示した図面である。
【
図9】一具体例による三次元線維芽細胞集合体のVEGF分泌量を示した図面である。
【
図10】一具体例による三次元線維芽細胞集合体の形成過程を顕微鏡で観察した写真である。
【
図11】一具体例による三次元線維芽細胞集合体の細胞外基質関連遺伝子の相対的発現量を示したグラフである。
【
図12】一具体例による三次元線維芽細胞集合体のコラーゲン含量を、ヒドロキシプロリンアッセイで測定した結果を示したグラフである。
【
図13】一具体例による三次元線維芽細胞集合体のコラーゲンタイプI発現量を、免疫染色で測定した結果を示した図面である。
【
図14】一具体例による三次元線維芽細胞集合体のコラーゲンタイプI発現量を、ウェスタンブロッティングで測定した結果を示した図面である。
【
図15】一具体例による三次元線維芽細胞集合体のMMP1発現量及び分泌量を示したグラフである。
【
図16】一具体例による三次元線維芽細胞集合体にMMP1阻害剤を処理した後の細胞のMMP1分泌量を示した図面である。
【
図17】MMP1過発現を誘導するために、紫外線照射された、二次元で培養された線維芽細胞に、MMP1阻害剤を処理した後の細胞のMMP1分泌量を示した図面である。
【
図18】一具体例による三次元線維芽細胞集合体を含む薬物スクリーニング装置、及びそれを使用して薬物をスクリーニングする方法を図式化して示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一様相は、線維芽細胞を、線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質がコーティングされた表面を有する培養容器中の液体培地内で培養し、前記表面から線維芽細胞が離脱されて形成された線維芽細胞集合体(fibroblast cluster)を含む培養物を得る段階と、前記培養物から線維芽細胞集合体を分離する段階と、を含む線維芽細胞集合体を生産する方法であり、前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、線維芽細胞と線維芽細胞との結合よりさらに弱く線維芽細胞と結合する方法を提供する。
【0020】
他の様相は、線維芽細胞が液体培地内で線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質がコーティングされた表面を有する培養容器の表面に接着され、前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、線維芽細胞と線維芽細胞との結合よりさらに弱く線維芽細胞と結合する、線維芽細胞集合体形成のための培養容器を提供する。
【0021】
本発明において用語「線維芽細胞(fibroblast)」(「線維細胞」と互換的に使用される)は、線維性結合組織の成分をなす細胞であり、哺乳類の結合組織の細胞を意味する。該線維芽細胞は、細胞外基質(ECM:extracellular matrix)及びコラーゲンを生産することができ、傷治癒、例えば、皮膚の傷痕、火傷、褥瘡褥瘡または創傷を治療する役割を行うことができる。
【0022】
用語「線維芽細胞集合体」または「三次元線維芽細胞集合体」(「線維芽細胞組織体」と互換的に使用される)は、2以上の細胞が密集された状態をいい、組織状態でもあり、単一細胞状態でもある。それぞれの細胞集合体は、組織自体またはその一部、あるいは単一細胞の集合体として存在することができ、線維芽細胞類似組織体を含んでもよい。また、用語「三次元(three-dimension)」は、二次元ではない幾何学的な3個のパラメータ(例えば、深さ、幅、高さ、またはX,Y,Z軸)モデルを有する立体を意味し、従って、一具体例による線維芽細胞集合体は、三次元培養、すなわち、培養容器から脱着されて浮遊状態で培養され、細胞が増殖するにつれ、立体的に球形、シート(sheet)、またはそれと類似した三次元の形態(例えば、類似組織体)を有する線維芽細胞集合体を意味する。また、一具体例による線維芽細胞集合体は、組織工学技術として、人工的な三次元多孔性細胞外基質、例えば、シート、ヒドロゲル、膜、スキャフォールドのような生分解性合成高分子あるいは天然高分子の支持体を使用する必要ないsに、それ自体として三次元線維芽細胞集合体が形成されることを意味し、前記組織工学技術は、細胞ではないマトリックスが三次元であり、一具体例による三次元線維芽細胞集合体とは区別される。
【0023】
前記線維芽細胞の培養容器への播種は、培養容器に線維芽細胞を添加すること、または培養容器に線維芽細胞を接着させることを含む線維芽細胞を培養容器で培養するために遂行される全ての行為を含んでもよい。
【0024】
用語「細胞の接着または細胞の結合」は、細胞と細胞との接着または結合、及び細胞と、培養容器または生体材料の表面との接着または結合を含む意味で使用される。該培養容器または生体材料の表面で起こる細胞の接着または結合は、多様なメカニズムを有することができる。例えば、生物学的認識を媒介とする特異的細胞接着、及び静電気的あるいは表面エネルギーによって左右される非特異的細胞接着がある。特異的な細胞接着は、細胞外基質タンパク質であるコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどに存在する特定ペプチド(例:RGD:arginine-glycine-aspartid acid)を、細胞膜に存在する受容体によって結合させて起こる接着を意味する。非特異的な細胞接着は、電気的に陰性を帯びるリン脂質を有する細胞膜が接着する表面を、電気的に陽性を帯びるようにし、細胞の接着が誘導される接着を意味する。
【0025】
該培養容器は、疎水性を帯びる表面、例えば、水接触角が90ないし150゜である表面を含み、線維芽細胞に接着活性または結合活性を有するタンパク質が表面にコーティングされたものでもある。前記改質された表面を有する培養容器は、細胞・細胞間の結合より、細胞・接着基質(例えば、培養容器の表面にコーティングされた細胞と結合する活性を有するタンパク質または成長因子)間の結合がさらに弱く誘導される表面を含んでもよい。前記線維芽細胞は、血液細胞とは異なり、細胞外基質に接着して生育する上皮細胞あるいは間葉細胞のような接着依存性細胞であり、接着基質に細胞が接着しなければ、細胞死が誘導され、かような細胞死をアイノキス(anokis)という。一具体例による培養方法は、細胞・接着基質との接着または結合において、細胞死が誘導されず、細胞・接着基質との接着または結合を、細胞・細胞との接着または結合に比べ、弱く誘導することにより、二次元単層に培養されない。すなわち、前記線維芽細胞は、培養初期には、弱い細胞・接着基質との接着または結合が誘導され、細胞・細胞との接着または結合が誘導され、かような細胞間結合により、二次元線維芽細胞集合体が形成され、培養時間が長くなるにつれ、二次元線維芽細胞集合体は、培養容器表面から脱着または離脱され、脱着または離脱された二次元線維芽細胞集合体が、培養容器で浮遊された状態で続いて培養され、三次元の線維芽細胞集合体を形成することができる。
【0026】
前記細胞・細胞との接着または結合より、細胞・接着基質(例えば、培養容器の表面にコーティングされた細胞と結合する活性を有するタンパク質または成長因子)との接着または結合がさらに弱く誘導されるように、培養容器の表面を改質する方法は、線維芽細胞と結合する活性を有したタンパク質を使用することによって誘導される。
【0027】
前記細胞・接着基質との接着または結合は、線維芽細胞の細胞膜に存在するインテグリン(integrin)と結合するタンパク質、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどを使用する場合、強く誘導される。用語「インテグリン」は、細胞膜に存在し、フィブロネクチン、コラーゲンなどの細胞外基質に細胞が接着するときに作用する受容体分子を意味し、αまたはβの2つの小単位ヘテロ2合体から構成される膜貫通型糖蛋白質であり、全ての類型のインテグリンを含んでもよい。従って、前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、培地内において、線維芽細胞とフィブロネクチンとが結合するより、前記線維芽細胞とさらに弱く結合される。また、前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、培地内において、線維芽細胞とフィブロネクチンとが結合するより、前記線維芽細胞と、60ないし95%の活性で結合され、例えば、60,70,80,90または95%でもある。従って、前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、インテグリンと結合しないタンパク質を含んでもよい。また、一具体例において、前記インテグリンと結合しないタンパク質は、線維芽細胞の細胞膜に存在するヘパランスルフェートプロテオグリカン(heparan sulfate proteoglycan)に結合するタンパク質を含んでもよい。一具体例において、前記ヘパランスルフェートプロテオグリカンと結合するタンパク質は、線維芽細胞成長因子(FGF)でもある。また、前記タンパク質は、5ないし100μg/mlの濃度で培養容器表面に固定されるものでもある。
【0028】
前記用語「線維芽細胞成長因子(FGF:fibroblast growth factor)」は、成長因子の一種であり、線維芽細胞を刺激して増殖性を誘導する成長因子を意味する。線維芽細胞成長因子は、ヘパリン結合(heparin-binding)タンパク質であり、前述のように、線維芽細胞のヘパランスルフェートプロテオグリカンと相互作用が可能である。FGFは、22個の種類を含み、例えば、FGF1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21または22を含んでもよい。前記FGFの種類は、名称が異なっても、通常の当業者が同一タンパク質を意味すると認識されるならば、いずれを含んでもよい。例えば、FGF11,12,13及び14は、「iFGF」とも知られ、FGF15は、「FGF15/19」とも知られている。また、例えば、FGF1またはFGF2は、「ヘパリン結合成長因子1(HBGF-1:
heparin-binding growth factor1)」または「ヘパリン結合成長因子2(HBGF-2:heparin-binding growth factor 2)」を含んでもよい。
【0029】
培養容器表面に対する前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質の固定化は、ポリペプチドを固体基質表面に固定するのに利用されるものであり、当該技術分野に公知された全ての方法によっても達成されるが、例えば、物理的な吸着、非選択的な化学反応による共有結合などを利用することができる。かような固定化方法の例としては、タンパク質にビオチン(biotin)を結合させた後、該タンパク質をストレプタビジン(streptavidin)やアビジン(avidin)で処理された固体表面に適用させることにより、ビオチン-ストレプタビジン/アビジン結合を利用して、タンパク質を固定する方法;プラズマを利用して、基板上に活性基(化学結合によってタンパク質を固定するための化学的作用基)を集積させてタンパク質を固定する方法;固体基板表面に、ゾル・ゲル(sol-gel)法を利用して、比表面積が十分に拡大された多孔性ゾル・ゲル薄膜を形成した後、前記多孔性薄膜に、物理的な吸着によってタンパク質を固定する方法;プラズマ反応によって、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)表面に、抗血栓性タンパク質を固定する方法;陽イオン性アミノ残基が、2個の酵素に2個以上連続して融合された酵素を結合させ、タンパク質を固定する方法;基質を利用して、固体上支持台に結合されている疎水性高分子層にタンパク質を固定する方法;プラスチック表面において、緩衝成分を利用して、タンパク質を固定する方法;アルコール溶液において、疎水性表面を有する固体表面にタンパク質を接触させ、タンパク質を固定する方法などを含んでもよい。
【0030】
また、組み換え的に大量発現、及び容易な精製が可能なポリペプチドリンカを使用して、前記ポリペプチドリンカのカルボキシル末端に、成長因子(例えば、FGF)のアミノ末端が融合されているポリペプチドリンカ成長因子(例えば、FGF)組み換えタンパク質形態で固定化を行うことができる。前記成長因子を、ポリペプチドリンカを利用して、成長因子本来の生物学的活性を維持しながら、組み換えタンパク質形態で疎水性表面に固定させた後、固定された成長因子の線維芽細胞に対する接着活性を利用して、前記表面に線維芽細胞を接着させることにより、線維芽細胞の効率的な培養を図ることができる。
【0031】
本発明に適するポリペプチドリンカは、そのカルボキシル末端を介して、成長因子のアミノ末端と結合し、そのアミノ末端に存在する疎水性ドメインを介して、疎水性表面を有する培養容器に吸着することができ、組み換え的に大量発現、及び容易な精製が可能であり、線維芽細胞の培養に影響を及ぼさないものであるならば、いずれも使用することができる。ポリペプチドリンカとしては、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP:maltose-binding protein)、ヒドロポビン(hydrophobin)、疎水性細胞透過性ペプチド(CPPs:hydrophobic cell penetrating peptides)などを含んでもよい。
【0032】
MBP(NCBI GenBank Accession No.AAB59056)は、大腸菌(Escherichia coli)の細胞膜を横切り、原形質膜空間位置し、細胞内に、マルトースやマルトデキストリン(maltodextrin)のような糖類の移動に関与する膜周辺(periplasm)タンパク質を意味する。該MBPは、有用な外来タンパク質を、組み換えタンパク質形態に生産するために主に利用されるが、細胞内の遺伝子malEから解読されて作られ、クローニングされたmalE遺伝子の下部(downstream)に外来タンパク質の遺伝子を挿入し、細胞内で発現させれば、2個のタンパク質が結合した組み換えタンパク質を手軽に大量に生産することができる。特に、発現させようとするタンパク質の大きさが小さいか、あるいは他の宿主細胞内においては、その安定性が落ちる外来タンパク質である場合、かようにMBPを利用して、組み換えタンパク質形態で細胞内で発現させることが有利である。かようにmalE遺伝子が結合された遺伝子から発現される外来タンパク質は、MBPがマルトースに結合親和力を有するという特性を利用して、分離することができる。例えば、マルトースが多重化された形態であるアミロース(amylose)がコーティングされた樹脂と、細胞破鎖液とを反応させ、反応させた樹脂を数回洗浄し、汚染した他のタンパク質を除去した後、高濃度のマルトースを添加して競争させることにより、所望するタンパク質のみを簡単に溶出させることができる。
【0033】
前記MBP・細胞接着基質(例えば、成長因子)組み換えタンパク質は、当業界の一般的な化学的合成技術または遺伝子組み換え技術などを利用して製造するか、あるいはそれを発現する形質転換細菌を適切な条件下で培養した後、培養液から組み換えタンパク質を回収することによっても得られる。かように得られたMBP・細胞接着基質組み換えタンパク質を、疎水性表面を有する培養容器に固定させる過程は、特別な処理を要求せず、組み換えタンパク質において、ポリペプチドリンカのアミノ末端に位置した疎水性ドメインを利用した疎水性表面との物理的吸着によって、自発的になされる。
【0034】
また、前記細胞・細胞との接着または結合より、細胞・接着基質(例えば、線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質)との接着または結合がさらに弱く誘導されるようにする方法は、線維芽細胞と基質(例えば、培養容器の表面)との接着または結合を弱化させる物質を処理することによって誘導される。
【0035】
前記表面が疎水性を帯びる培養容器、例えば、水接触角が90ないし150゜である表面を有する培養容器は、一般的な細胞培養容器に疎水性を付与する高分子で表面処理されるか、あるいはかような高分子によって製造された細胞培養容器でもある。かような疎水性高分子としては、それらに限定されるものではないが、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、脂肪族ポリエステル系高分子であり、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L-乳酸)(PDLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリトリメチレンカーボネートのうち選択された1種であるか、またはそれら単位の共重合体であるポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(L-乳酸-co-カプロラクトン)(PLCL)、ポリ(グリコール酸-co-カプロラクトン)(PGCL)、それらの誘導体などを例として挙げることができる。また、一具体例による適する培養容器は、疎水性表面にシラン化された表面(silanized surface)、炭素ナノチューブ(CNT)表面、炭化水素コーティングされた表面(hydrocarbon coated surface)、金属(例えば、ステンレススチール、チタン、金、白金など)表面を有することができる。
【0036】
前記線維芽細胞を培養容器に播種する前、前記線維芽細胞は、継代増殖された培養された細胞を使用することができる。前記継代増殖する方法は、公知の方法によって分離された線維芽細胞を、公知の方法で継代増殖したものでもある。例えば、前記分離された線維芽細胞は、その後の三次元線維芽細胞接合体形成に対して1継代培養された細胞をそのまま使用するか、あるいは10継代以上培養された細胞を使用することができる。
【0037】
前記線維芽細胞を播種する濃度は、1.0×104ないし2.0×105細胞/cm2の細胞濃度で播種したものでもある。また、例えば、前記細胞濃度は、7.5×104ないし1.5×105細胞/cm2または1.25×105細胞/cm2でもある。前記細胞の濃度は、1.0×104以上であるならば、三次元の細胞集合体を形成することができ、1.25×105細胞/cm2以上であるならば、肉眼で識別が可能な大きさの三次元細胞集合体を形成することができる。
【0038】
また、前記培養期間は、1日ないし1週間でもある。前記培養に適する培地は、線維芽細胞の培養及び/または分化に一般的に使用される培地であり、血清あるいは無血清を含んだものであるならば、いずれも制限なしに使用され、例えば、DMEM(Dulbeco’s modified eagle medium)、Ham’s F12、それらの混合物などに血清を添加した培地を使用することができる。
【0039】
前述のように、線維芽細胞が三次元線維芽細胞集合体を形成する段階は、細胞・接着基質間の結合によって初期に形成された二次元線維芽細胞集合体が、培養容器表面から脱着され、脱着された二次元線維芽細胞集合体が、培養容器で浮遊された状態で続いて培養されることにより、三次元細胞集合体を形成することができる。
【0040】
該培養容器表面に線維芽細胞を接着させて培養して形成された線維芽細胞集合体は、肉眼で検出可能な大きさの直径を有しており、ピペットを使用して分離するか、あるいは濾過または遠心分離などの方法によって容易に得ることができる。すなわち、前記培養容器から形成された線維芽細胞集合体を得る段階は、酵素の処理なしになされる。かように得られた三次元細胞集合体は、コラゲナーゼ、トリプシンまたはディスパーゼ(dispase)を利用した酵素学的処理、圧力を利用した機械的な処理、またはそれらの併用処理によって、集合体形態を瓦解させて単一細胞形態で使用するか、あるいは三次元細胞集合体形態をそのまま使用することができる。
【0041】
他の様相は、前述の方法によって製造された線維芽細胞集合体を提供する。
【0042】
該線維芽細胞集合体を製造する方法については、前述の通りである。
【0043】
前記線維芽細胞集合体は、肉眼で識別可能な大きさの球形またはシートでもあり、例えば、直径が300ないし2,000μmである球形の線維芽細胞集合体でもあり、一具体例において、300ないし1,000μmでもある。前記球形の線維芽細胞集合体の直径は、一具体例による培養方法によって、通常の当業者が肉眼で識別可能な大きさに調節することができる。また、一具体例による球形の線維芽細胞集合体は、直径400μm内に、3.0×105ないし1.0×106個の線維細胞を含んでもよい。また、一具体例において、前記線維芽細胞集合体は、上皮細胞成長因子(EGF)、細胞外基質(ECM)または血管内皮成長因子(VEGF)を分泌することができる。
【0044】
従って、一具体例による線維芽細胞集合体は、細胞治療剤または生理活性物質の供給時、細胞源(source)として有用に使用され、以下、前記線維芽細胞集合体の用途は、次の通りである。
【0045】
他の様相は、一具体例による線維芽細胞集合体を含む皮膚再生または血管新生のための細胞治療剤を提供する。
【0046】
また、一具体例による線維芽細胞集合体またはその培養液を有効成分で含む皮膚傷痕、火傷、褥瘡または虚血性疾患の予防用及び治療用の薬学的組成物を提供する。
【0047】
前述の通り、線維芽細胞集合体は、上皮細胞成長因子、細胞外基質または血管内皮成長因子を分泌することができるために、それを必要とする個体に移植され、細胞源としての役割を行うことにより、皮膚再生または血管新生を促進することができる。また、皮膚再生または血管新生を促進することにより、皮膚傷痕、火傷、褥瘡または虚血性疾患の予防用及び治療用の薬学的組成物にも有用に利用される。前記虚血性疾患は、例えば、虚血性心臓疾患、虚血性心筋梗塞、虚血性心不全、虚血性腸炎、虚血性血管疾患、虚血性眼疾患、虚血性網膜症、虚血性緑内障、虚血性腎不全、虚血性脱毛症、虚血性脳卒中及び虚血性下肢疾患を含むものでもある。
【0048】
一具体例による細胞治療剤または薬学的組成物の投与量は、有効成分である細胞集合体を構成する線維芽細胞集合体を基準に、1.0×105ないし1.0×108細胞/kg(体重)、または1.0×107ないし1.0×108細胞/kg(体重)でもある。ただし、該投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢・体重・性別・病的状態・食べ物・投与時間・投与経路・排泄速度・反応感応性のような要因によって多様に処方され、当業者であるならば、かような要因を考慮し、投与量を適切に調節することができる。投与回数は、1回、または臨床的に容認可能な副作用の範囲内で、2回以上が可能であり、投与部位についても、1ヵ所または2ヵ所以上に投与することができる。ヒト以外の動物についても、kg当たりヒトと同一投与量にするか、あるいは、例えば、目的とする動物とヒトとの器官(心臓など)の容積比(例えば、平均値)などで、前述の投与量を換算した量を投与することができる。一具体例による治療の対象動物としては、ヒト、及びそれ以外の目的とする哺乳動物を例として挙げることができ、具体的には、ヒト、猿、マウス、ラット、兎、羊、牛、犬、馬、豚などが含まれる。
【0049】
一具体例による細胞治療剤または薬学的組成物は、有効成分として、細胞集合体と薬学的に許容可能な担体及び/または添加物を含んでもよい。例えば、滅菌水、生理食塩水、慣用緩衝制(リン酸、クエン酸、それ以外有機酸など)、安定剤、塩、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、界面活性剤、懸濁液剤、等張化剤または保存剤などを含んでもよい。局所投与のために、生体高分子(biopolymer)などの有機物、ヒドロキシアパタイトなどの無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸重合体または該共重合体、ポリエチレングリコール重合体または該共重合体、及びその化学的誘導体などと組み合わされるものも望ましい。一具体例による細胞治療剤または薬学的組成物が注射に適当な剤形に調剤される場合には、細胞集合体が薬学的に許容可能な担体中に溶解されているか、あるいは溶解されている溶液状態で凍結されたものでもある。
【0050】
一具体例による細胞治療剤または薬学的組成物は、その投与方法や剤形によって、必要な場合、懸濁液剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、還元剤、酸化防止剤などを適切に含んでもよい。前述のところで例示されたものなどを含め、本発明に適する薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19thed., 1995]に詳細に記載されている。
【0051】
一具体例による細胞治療剤または薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野で当業者が容易に実施することができる方法によって、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、あるいは多容量容器内に込めて製造される。このとき、該剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液形態であるか、粉末型、顆粒型錠剤またはカプセル型でもある。
【0052】
さらに他の様相は、一具体例による線維芽細胞集合体が生分解性高分子スキャフォールドに積載(loading)された組織工学用支持体を提供する。
【0053】
前述の通り、一具体例による線維芽細胞集合体は、上皮細胞成長因子、細胞外基質または血管内皮成長因子を分泌することができるために、スキャフォールドに積載された状態で、それを必要とする個体に移植され、皮膚再生または血管新生を促進することができる。前記組織工学用支持体は、生分解性高分子を成形して作った支持体に、線維芽細胞集合体が積載されているものでもある。
【0054】
前記生分解性高分子は、生体内において、一定期間後、自発的に徐々に分解され、生体適合性、血液親和性、抗石灰化特性、細胞の栄養成分及び細胞間基質形成能のうち1以上の特性を備えた高分子を含んでもよい。かような生分解性高分子は、本発明において、特別にその種類を限定するものではないが、代表的なものとして、フィブリン、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、アルジネート、ヒアルロン酸、デキストラン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-ε-(カプロラクトン)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ(エチレンオキサイド)-ポリ(プロピレンオキサイド)-ポリ(エチレンオキサイド)共重合体、それらの共重合体、それらの混合物などが使用される。このとき、複合支持体中の生分解性高分子の含量は、支持体の成形観点、または細胞集合体の積載観点において、5ないし99重量%でもある。前記複合支持体は、既存の公知された方法、例えば、塩浸出法(solvent-casting and particle-leaching technique)、ガス発泡法(gas forming technique)、高分子線維を不織布にし、高分子メッシュに製造する方法(fiber extrusion and fabric forming process)、相分離法(thermally induced phase separation technique)、乳化凍結乾燥法(emulsion freeze drying method)、高圧気体膨脹法(high pressure gas expansion)などによって、生分解性高分子を成形して製造することができる。
【0055】
前述のように成形製造された支持体は、積載された細胞集合体を移植された組織内に伝達し、三次元的に細胞が付着成長し、新たな組織が形成されるようにする役割を行う。このとき、複合支持体に細胞が付着成長される側面において、支持体の孔隙の大きさ及び構造が影響を及ぼすが、栄養液が支持体内部まで等しく侵透し、細胞を良好に成長させるためには、孔隙が互いに連結された(inter-connecting)構造を有することができる。また、前記支持体において、該孔隙は、50ないし600μmの平均径を有することができる。
【0056】
さらに他の様相は、一具体例による線維芽細胞集合体を含む薬物スクリーニング用三次元培養システムを提供する。
【0057】
前記三次元線維芽細胞集合体は、生体内環境を模写した人為的な細胞形態を有するものであり、実際の細胞形態及び機能研究、または治療剤(例えば、前述の皮膚疾患または血管疾患)などに有用に使用される。従って、前記三次元線維芽細胞集合体を含む薬物スクリーニング用三次元培養システムは、医薬品または化粧品などの疾病治療剤効能テスト、または炎症テスト及びアレルギーテストなどのための実験において、動物実験を代替することができる。
【0058】
さらに他の様相は、線維芽細胞から培養された線維芽細胞集合体を含むインビトロ(in
vitro)三次元皮膚真皮モデルを提供する。
【0059】
他の様相は、線維芽細胞から培養された線維芽細胞集合体を含む薬物、例えば、MMP阻害剤、細胞内コラーゲンの発現、または活性増加剤をスクリーニングするためのインビトロモデルを提供する。
【0060】
他の様相は、線維芽細胞を、線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質がコーティングされた表面を有する培養容器中の液体培地内で培養し、前記表面から線維芽細胞が離脱されて形成された線維芽細胞集合体を含む培養物を得る段階であり、前記線維芽細胞に結合する活性を有したタンパク質は、線維芽細胞と線維芽細胞との結合よりさらに弱く線維芽細胞と結合する段階と、前記培養物からの線維芽細胞集合体を少なくとも12時間追加して培養する段階と、を含む含むインビトロ三次元皮膚皮膚モデル、MMP阻害剤または細胞内コラーゲンの発現、あるいは活性増加剤をスクリーニングするためのインビトロモデルを製造する方法を提供する。
【0061】
前記線維芽細胞集合体及びその製造方法については、前述の通りである。
【0062】
一具体例において、本明細書は、線維芽細胞から培養された線維芽細胞集合体を含む薬物スクリーニングのための組成物またはモデルを提供することができる。前記薬物は、皮膚老化改善剤、炎症性疾患、関節炎または癌の治療剤でもある。従って、例えば、線維芽細胞から培養された線維芽細胞集合体を含むインビトロ三次元皮膚真皮モデルは、皮膚老化改善剤、炎症性疾患、関節炎または癌の治療剤スクリーニングのためのものでもある。
【0063】
一具体例において、前記線維芽細胞集合体は、皮膚の老化による病理学的特性を示すものでもある。例えば、前記線維芽細胞集合体は、コラーゲンの発現または活性が低下しているか、あるいはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP:matrix metalloproteinase)の発現または活性が上昇しているものでもある。前記線維芽細胞集合体は、追加してフィブロネクチンの発現または活性が低下しているか、あるいはエラスチンの発現または活性が上昇しているものでもある。本明細書において、前記発現または活性の低下または上昇は、正常細胞に比べ、または二次元的に培養された線維芽細胞に比べ、前述のタンパク質または遺伝子の発現または活性が低下または上昇していることを意味する。前記コラーゲンは、コラーゲンタイプI,II,III,IV,V,VI,VII,VIII,IX,X,XI,XII,XIIIまたはXIVを含んでもよい。また、前記MMPは、MMP1ないし28のうちいずれか1以上を含んでもよい。
【0064】
前記背景技術に言及されたように、前記コラーゲンの減少は、皮膚組織への線維質成分合成及び水分の損失、及び角質層の変化を起こす。また、前記コラーゲンは、MMPによって分解される。従って、コラーゲンの発現または活性が低下したり、MMPの発現または活性が上昇したりする一具体例による線維芽細胞集合体は、皮膚の老化を改善するための薬物をスクリーニングするのに有用に使用される。例えば、前記皮膚の老化を改善するための薬物は、皮膚の保湿効果、弾力増大、しわ減少及び抗酸化活性を有する薬物を含んでもよい。また、前記MMPは、細胞外基質を分解し、それによって、腫瘍の転移及び進行を促進し、それによるコラーゲン合成及び分解は、癌転移において役割を行う。また、MMPは、炎症性疾患、例えば、関節炎、または癌、例えば、癌転移のような病理学的条件で過発現されると知られており、MMPをターゲットにするMMP抑制剤は、前述のような疾患の治療剤として開発されている。従って、コラーゲンの発現または活性が低下したり、MMPの発現または活性が上昇したりする一具体例による線維芽細胞集合体は、炎症性疾患、関節炎または癌の治療剤をスクリーニングするのに有用に使用される。前記炎症性疾患は、皮膚炎、結膜炎、腹膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽喉炎、扁桃炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クーロン病、大腸炎、痔疾、通風、強直性脊椎炎、リュウマチ熱、ループス、線維筋痛(fibromyalgia)、乾癬関節炎、骨関節炎、リウマチ関節炎、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症侯群(Sjogren’s syndrome)、多発性硬化症、及び急性・慢性炎症疾患からなる群から選択されたものでもある。また、前記関節炎は、骨関節炎またはリウマチ関節炎でもある。前記癌治療剤は、癌自体の細胞増殖を抑制する物質を含むだけではなく、癌転移を抑制する物質も含んでもよい。
【0065】
前記線維芽細胞から線維芽細胞集合体への培養は、前記線維芽細胞を、表面が疎水性を帯びる培養容器に接着させて培養することによって分化させることができる。詳細には、前記線維芽細胞を、表面が疎水性を帯びる培養容器に接着させて培養すれば、前記接着された線維芽細胞の密度上昇につれ、線維芽細胞が培養容器から脱着され、線維芽細胞集合体を形成する。また、前記培養は、線維芽細胞集合体に培養された後、あるいは線維芽細胞集合体が形成された後、追加して少なくとも12時間以上、または少なくとも1日以上、例えば、12時間ないし15日、1日ないし15日、3日ないし10日、3日ないし7日、または5日ないし7日さらに培養されたものでもある。前記培養に適する培地は、線維芽細胞の培養及び/または分化に一般的に使用される培地であり、血清あるいは無血清を含んだものであるならば、いかなるものも制限なしに使用され、例えば、DMEM、Ham’s F12、それらの混合物などに血清を添加した培地を使用することができる。前述の培養して細胞集合体を形成する方法の詳細な説明は、後述する。
【0066】
一具体例による線維芽細胞から培養された線維芽細胞集合体は、三次元的に培養されたものであるために、生体内環境を良好に模写することができ、細胞外基質を含んでおり、インビトロ皮膚真皮モデルに有用に使用される。本明細書において用語「皮膚真皮モデル(skin dermis model)」(「人工真皮(dermal equivalent)」と互換的に使用される)は、真皮組織、または真皮の構造や形状を模式化したものを意味し、真皮内細胞間の相互作用、その構造や形態との関連性を明らかにするために考慮された模型を意味する。
【0067】
他の様相は、前記線維芽細胞集合体またはインビトロ三次元皮膚真皮モデルに、被検物質を処理する段階と、前記被検物質が処理される線維芽細胞集合体または皮膚真皮モデルのMMPの発現または活性のレベルを測定する段階と、測定されたMMPの発現または活性のレベルを、無処理対照群のレベルと比較する段階と、対照群に比べ、MMPの発現または活性を低下させた物質を選別する段階と、を含むMMPの発現または活性を低下させる物質をスクリーニングする方法を提供するものである。
【0068】
さらに他の様相は、前記線維芽細胞集合体またはインビトロ三次元皮膚真皮モデルに、被検物質を処理する段階と、前記被検物質が処理される線維芽細胞集合体または皮膚真皮モデルのコラーゲンの発現または活性のレベルを測定する段階と、測定されたコラーゲンの発現または活性のレベルを、無処理対照群のレベルと比較する段階と、対照群に比べ、コラーゲンの発現または活性を上昇させた物質を選別する段階と、を含むコラーゲンの発現または活性を上昇させる物質をスクリーニングする方法を提供するものである。
【0069】
前記スクリーニング方法において、被検物質は、低分子化合物、抗体、アンチセンスヌクレオシド、小さい干渉RNA(short interfering RNA)、短いヘアピンRNA(shorth air pin RNA)、核酸、タンパク質、ペプチド、その他抽出物及び天然物で構成された群から選択されるいずれか一つでもある。
【0070】
前記被検物質を処理する段階は、前記線維芽細胞集合体またはインビトロ三次元皮膚真皮モデルと、被検物質とを接触させる段階を含んでもよい。前記接触は、例えば、1以上の線維芽細胞集合体またはインビトロ三次元皮膚真皮モデルが含まれている各ウェルに、一定濃度の被検物質を含む溶液を注入する段階を含んでもよい。
【0071】
前記MMPまたはコラーゲンの発現レベルまたは活性レベルの測定は、逆転写重合酵素連鎖反応(RT-PCR:reverse transcription-polymerase chain reaction)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫組織化学、ウェスタンブロット(Western Blotting)、免疫沈降(immunoprecipitation)、免疫蛍光法(immunofluorescence)及び流細胞分析法(FACS)から構成された群から選択されたいずれか一つで測定することができる。また、前記MMPまたはコラーゲンの発現レベルまたは活性レベルの測定は、培養液内で分泌されたMMPまたはコラーゲンの含量を測定することを含んでもよい。前記培養液内でのコラーゲン含量の測定は、ヒドロキシプロリンアッセイを介して測定することができる。
【0072】
前記測定されたMMPの発現または活性のレベルを無処理対照群のレベルと比較し、対照群に比べ、MMPの発現または活性を低下させた物質を、MMPの発現または活性の抑制剤物質または該候補物質として選別することができる。前記MMPの発現または活性を低下させる物質または該候補物質は、皮膚老化改善剤または癌治療剤でもある。また、前記測定されたコラーゲンの発現または活性のレベルを無処理対照群のレベルと比較し、対照群に比べ、コラーゲンの発現または活性を上昇させた物質をコラーゲンの発現または活性の抑制剤物質または該候補物質として選別することができる。前記コラーゲンの発現または活性を低下させる物質または該候補物質は、皮膚老化改善剤または癌治療剤でもある。
【0073】
一具体例において、線維芽細胞から培養された線維芽細胞集合体は、コラーゲンの発現または活性が低下しているか、あるいはMMPの発現または活性が上昇しており、一具体例による線維芽細胞集合体は、コラーゲンまたはMMPの発現または活性と係わる物質をスクリーニングするのに有用に使用される。
【0074】
他の具体例において、本明細書は、1以上のウェルを有するウェルプレートを含み、前記ウェルに、1以上の前記線維芽細胞集合体が播種された薬物スクリーニング装置が提供される。前記線維芽細胞集合体については、前述の通りである。
【0075】
また、前記薬物スクリーニング装置の各ウェルに、候補物質を含む溶液を注入する段階と、前記候補物質が注入されたウェルを含むウェルプレートを培養する段階と、前記ウェルプレートから、前記線維芽細胞集合体を収集するか、あるいは前記ウェルプレートから培養液を回収する段階と、前記収集された線維芽細胞からアッセイを行うか、あるいは前記培養液からアッセイを行う段階と、を含む薬物スクリーニングする方法が提供される。前記候補物質は、同一であるか、あるいは異なる候補物質でもある。前記培養は、通常の技術者が、任意に培養時間及び温度を決定することができる。前記アッセイは、例えば、前記培養液からELISAを使用するMMP分泌アッセイ、または前記線維芽細胞集合体からウェストンブロッティングまたは免疫組織化学染色を使用するECM分泌アッセイを含んでもよい。
【0076】
以下、本発明について、実施例によってさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではない。
【実施例0077】
〔実施例1:三次元線維芽細胞集合体形成及びその特性分析〕
本実施例においては、線維芽細胞を、線維芽細胞に結合する活性を有するタンパク質がコーティングされた表面を有する培養容器で培養し、三次元線維芽細胞集合体を形成した。
【0078】
図1は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体の製作過程を図式的に示した図面である。
【0079】
図1を参照して説明すれば、線維芽細胞を、MBP-FGF2コーティングされた培養容器に播種した。その後、線維芽細胞が培養容器表面で二次元的に培養されながら脱着され、脱着または離脱された二次元線維芽細胞集合体が、培養容器で浮遊した状態で続けて培養され、1日後からは三次元線維芽細胞集合体が形成された。一具体例によって形成された三次元線維芽細胞集合体は、細胞外基質及び血管内皮成長因子(VEGF)の分泌能を有するということが確認された。以下において、
図1に提示された三次元線維芽細胞集合体形成過程、特性分析方法、及びその結果について説明する。
【0080】
(1)線維芽細胞の細胞接着特性、及び接着後の形態変化分析
三次元線維芽細胞集合体を形成を誘導する培養方法を構築するために、線維芽細胞の細胞接着特性、接着基質による細胞接着シグナル、及び細胞形態を分析した。
【0081】
(1.1)線維芽細胞の細胞接着分析
非組織細胞培養用96ウェルプレート(NTCP:non-tissue culture treated 96-wellplate、ポリスチレン材質で表面が疎水性を帯びる、Falcon社)に、それぞれECMフィブロネクチン(20μg/ml)、MBP(10μg/ml)、MBP-VEGF(10μg/ml)、MBP-HBD(100μg/ml)及びMBP-FGF2(10μg/ml)を4時間コーティングした後、PBSで3回洗浄した。その後、100μg/mlBSAを利用して、1時間ブロッキングしてPBSで3回洗浄した。1ウェル当たり5x104cells/cm2の線維芽細胞を無血清DMEM培地に懸濁した後、それぞれのタンパク質がコーティングされた96ウェルプレートに播種し、37℃培養器において1時間溶解した後、細胞の形態を観察した。接着された細胞を細胞溶解バッファで溶解した後、BCA(bicinchoninic acid)アッセイによってタンパク質を測定することにより、接着された細胞を定量した。
【0082】
図2は、一具体例による線維芽細胞の細胞接着率をタンパク質量によって定量化したグラフを示した図面である。
【0083】
図2から分かるように、BSA、MBP及びMBP-VEGFでコーティングされたNTCPにおいては、細胞接着が起きていない。一方、MBP-FGF2でコーティングされたNTCPにおいては、細胞播種1時間後、細胞膜のインテグリンと結合するECM-フィブロネクチンより低い接着率を示した。
【0084】
(1.2)線維芽細胞の接着基質による細胞形態分析
前記実施例1の(1.1)において、それぞれフィブロネクチン及びMBP-FGF2でコーティングされたNTCPで培養された線維芽細胞の細胞の形態を比較するために、接着後30分、1時間、4時間経った線維芽細胞をパロイジン(palloidin)で染色した。
【0085】
図3は、一具体例による線維芽細胞の細胞形態蛍光染色写真を示した図面である。
【0086】
図3に示されているように、MBP-FGF2に接着された線維芽細胞は、フィブロネクチンに接着された線維芽細胞に比べ、細胞骨格が活性化されていないということを確認することができる。それは、MBP-FGFに接着された線維芽細胞の接着が、フィブロネクチンに接着した線維芽細胞に比較し、細胞膜に存在する細胞接着分子であるインテグリンを媒介にした細胞接着活性が制限されているということを意味する。
【0087】
(1.3)線維芽細胞の接着基質による細胞接着シグナル分析
前記実施例1の(1.1)において、それぞれフィブロネクチン及びMBP-FGF2でコーティングされたNTCPで培養された線維芽細胞の細胞接着シグナルを比較するために、焦点接着キナーゼ(FAK:focal adhesion kinase)のリン酸化を測定した。FAKのリン酸化測定のために、接着後30分、1時間、4時間経った線維芽細胞を抗ホスホ-FAK抗体(Cell signalling社)を利用して、ウェスタンブロット分析を行った。
【0088】
図4は、一具体例による線維芽細胞のFAKのリン酸化活性を示した図面である。
【0089】
図4に示されているように、MBP-FGF2に接着された線維芽細胞は、フィブロネクチンに接着された線維芽細胞に比べ、FAKのリン酸化が活性化されていないということを確認することができる。それは、MBP-FGF2に接着された線維芽細胞において、インテグリンを媒介にした細胞接着活性が低いということを意味する。
【0090】
(2)三次元線維芽細胞集合体形成
実施例1の(1.3)ないし(1.3)の結果を基に、三次元線維芽細胞組織体を形成するための培養方法を構築した。
【0091】
線維芽細胞を高濃度グルコースDMEM培地(FGM培地)を含むMBP-FGF2でコーティングされたポリスチレン表面が稼動された12,24,48及び96ウェルNTCPの各ウェルに、0.5×104細胞/cm2ないし1.5×105細胞/cm2の細胞濃度で播種した後、37℃静置培養器で、それぞれ1,2,3日間培養した。培養初期には、シート状に存在する線維芽細胞は、経時的に培養表面から脱着され、1日後から細胞体として存在し、トリプシンのような酵素処理なしに、ピペットで容易に回収が可能である。
【0092】
図5は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体形成写真を示した図面である。
【0093】
図5に示されているように、FGMを利用して、培養時、1.25×10
5細胞/cm
2以上の細胞濃度で効率的な三次元線維芽細胞集合体形成を誘導することを確認することができる。それより低い細胞濃度条件においては、、細胞・細胞間相互作用のために要求される細胞間距離が十分に近くなく、細胞集合体形成が良好になされない。FGMではない培地においても、細胞集合体が形成されるが、FGMでの細胞集合体形成細胞濃度より高い条件が要求される。
【0094】
図6は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体形成写真を示した図面である。
【0095】
図6に示されているように、ウェルサイズによって、MBP-FGF2でコーティングされた表面において、肉眼で検出される400ないし1,000μm以上サイズの三次元球形細胞集合体を形成するということを確認することができる。
【0096】
(3)三次元線維芽細胞集合体の分泌能分析
(3.1)細胞外基質(ECM)分泌能分析
実施例1の(2)において、多種のMBP-FGF2でコーティングされたウェル-NTCP(12,24,48,96ウェル)に、1.25×105cells/cm2細胞濃度で播種して形成された三次元細胞集合体をPBSで数回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを30分間室温で処理することによって固定化した。その後、多様な濃度のエタノールを(50~100%)利用して脱水させた後、パラフィンを利用して、包埋した。製造されたパラフィンブロックは、ミクロトームを利用して、厚さ4μmに切り、スライドグラスに固定させた後、H&E染色、及びフィブロネクチンとコラーゲンタイプ1とに対する免疫学的染色とを行った。コラーゲンタイプ1の染色は、蛍光免疫染色を行った。前述のところで準備したスライドグラスを、まず、BSA(4%)で1時間処理し、その後、一次抗体を含んだPBSに浸し、一晩反応させた後、PBSで3回洗浄て、それを、再び二次抗体と暗室で1時間反応させた。DAPIを利用した核染色を追加して行った後、共焦点顕微鏡で分析した。対照群は、一次抗体を使用せず、同一処理を行って分析した。
【0097】
図7は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体に、H&E染色結果を示した図面である。
【0098】
図7に示されているように、培養1日後、全てのウェルにおいて、同一濃度で処理した線維芽細胞が細胞集合体を形成するということを確認した。
【0099】
図8は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体の第1型コラーゲン免疫蛍光学的染色結果を示した図面である。
【0100】
図8に示されているように、コラーゲンが三次元線維芽細胞集合体内において、全般的に染色されたということを確認することができ、それを介して、細胞集合体の形成時、コラーゲンが多く分泌されるということが分かる。
【0101】
(3.2)血管内皮成長因子(VEGF)分泌量分析
実施例1の(2)において、1.25×105cells/cm2細胞濃度で、MBP-FGF2でコーティングされた96ウェルNTCPに播種して形成された三次元細胞集合体を回収し、血管内皮細胞成長因子(VEGF)分泌量を測定した。
【0102】
具体的には、形成された三次元細胞集合体を10個ずつ集め、6ウェルNTCPに移した後、PBSで1回洗浄した。追加して、FBSを含んでいないalpha MEM(Lonza社)で1回洗浄した後、alpha MEM(1.5mL)を入れて静置培養器で1日間培養した。その後、既定の日付ごとに培養液を得て、同量の新たな培養液を入れた。得られた培養液内に存在するVEGFは、ELISAキット(R&D社)を利用して定量した。キット使用方法は、供給会社のプロトコルによって進めた。
図9は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体のVEGF分泌量を示した図面である。
【0103】
図9に示されているように、三次元線維芽細胞集合体は、二次元的に培養された細胞よりVEGF量が2倍以上増加するということが分かった。
【0104】
〔実施例2:インビトロ三次元人工真皮モデルの製造、及びその特性分析〕
(1)インビトロ三次元人工真皮モデルの製造
インビトロ三次元人工真皮モデルを製造するために、まず、線維芽細胞を培養した。具体的には、ヒト真皮線維芽細胞を、組織培養フラスコを使用して、37℃、5% CO2及び95% O2の大気条件において、そのグルコースダルベッコ変形イーグル培地(high glucose Dulbecco’s modified Eagle’s medium)(DMEM、ウェルゼン、大邱、大韓民国)で培養した。継代数5のヒト真皮線維芽細胞を全ての実験について使用した。
【0105】
その後、線維芽細胞の三次元培養のための培養容器は、下記のように製作した。非組織細胞培養用96ウェルプレート(NTCP、ポリスチレン材質で表面が疎水性を帯びる、Falcon社)に、MBP(マルトース結合タンパク質)-FGF(線維芽細胞成長因子)(20μg/ml)を常温で4時間コーティングした。次に、PBSで3回洗浄し、結合していないMBP-FGFを除去した。前記培養容器に係わる詳細な製造方法は、大韓民国公開特許第10-2010-0122778号に記載されており、前記文献は、その全体が参照として本明細書に含まれる。
【0106】
前記培養容器に前記線維芽細胞を播種し、三次元線維芽細胞集合体を製造した。具体的には、1ウェル当たり1.25x10
5cells/cm
2の濃度で線、維芽細胞を、線維芽細胞成長培地(FGM、Lonza)内に、前記96ウェルプレートに播種し、37℃で培養した。該線維芽細胞が培養容器表面で二次元的に培養されながら脱着され、脱着または離脱された二次元線維芽細胞集合体が培養容器で浮遊した状態で続けて培養され、24時間以内に、三次元線維芽細胞集合体が自発的に形成された。形成された三次元線維芽細胞集合体を、培養1日目(1day)、3日目(3day)及び5日目(5day)にそれぞれ収集し、接着性線維芽細胞の三次元線維芽細胞集合体の形成過程を、位相差顕微鏡(Carl Zeiss、ドイツ)で観察し、その結果を
図10に示した。以下において、前記三次元線維芽細胞集合体を「3DCM」と表示する。
【0107】
また、比較例として、前記線維芽細胞を二次元的に培養した。具体的には、組織細胞培養用96ウェルプレート(TCP)に、ウェル当たり1.25x105cells/cm2の脂肪幹細胞を接種した後、線維芽細胞成長培地(FGM、Lonza)で培養し、前記三次元細胞集合体と同一に、人工真皮モデル特性分析のために、培養1日目(1day)、3日目(3day)及び5日目(5day)の細胞を収集した。以下において、前記二次元的に培養された細胞を「2D」と表示する。
【0108】
図10は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体の形成過程を顕微鏡で観察した写真である。
【0109】
図10に示されているように、肉眼で検出される400ないし1,000μm以上サイズの三次元球形細胞集合体が形成されたということを確認することができる。
【0110】
(2)インビトロ三次元人工真皮モデルの特性分析
前述のところで製作した三次元線維芽細胞集合体の人工真皮モデルとしての特性を分析するために下記の実験を行った。
【0111】
(2.1)三次元線維芽細胞集合体の細胞外基質(ECM)遺伝子発現分析
細胞外基質関連遺伝子であるコラーゲン、フィブロネクチン及びエラスチンの遺伝子発現量を分析するために、qRT-PCR(quantitative real-time polymerase chain reaction)を使用した。
【0112】
具体的には、3DCM及び2Dから、総RNAを、異なる時間(1日目、3日目及び5日目)で、Qiagen miniprepキット(Qiagen Inc.,米国)を使用して、製造社の指示によって抽出した。抽出されたRNAをヌクレアーゼ無添加水に溶解させ、RNA濃度を、NanoDrop ND1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量化した。相補的DNA合成は、Maxime RT PreMix(iNtRon、大韓民国)を使用して、製造社の指示によって行った。全てのターゲットプライマー配列は、バイオニア(大韓民国)から購入した。全ての重合連鎖反応は、ABI Prism 7500(Applied Biosystems)を使用して行い、遺伝子発現レベルは、SYBR Premix Ex Taq(Takara、日本)を使用して定量化した。相対的遺伝子発現レベルは、相対的Ct方法(comparative Ct method)を使用して計算し、その結果を
図11に示した。
【0113】
図11は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体の細胞外基質関連遺伝子の相対的発現量を示したグラフである。
【0114】
図11に示されているように、コラーゲンタイプ1及びフィブロネクチンは、2Dに比べ、3DCMにおいて、発現量がほとんど3倍ほど低いということを確認することができ、エラスチンの場合、発現量が2Dに比べ、3DCMにおいて、増加しているということを確認することができる。特に、エラスチンの場合、培養1日目には、2Dと3DCMとの発現量が類似しているが、培養3日からは、顕著に増加しているということを確認することができる。前述の結果により、一具体例による三次元線維芽細胞集合体は、コラーゲン及びフィブロネクチンの発現が減少し、エラスチン発現が増加した皮膚真皮の環境を模写し、それらをターゲットにする物質の開発に有用に使用されるということが分かる。
【0115】
(2.2)三次元線維芽細胞集合体のコラーゲン発現量分析
三次元線維芽細胞集合体のコラーゲン分析を行うために、ヒドロキシプロリンアッセイ(hydroxyproline assay)、免疫染色及びウェスタンブロッティングを行った。
【0116】
具体的には、ヒドロキシプロリンアッセイのために、RIPAバッファ(Sigma-Aldrich)を使用し、異なる時間(1日目、3日目及び5日目)で、2D及び3DCM(3X10
6細胞)を収集し、120℃で3時間、12N HCl溶液で加水分解した。アッセイは、ヒドロキシプロリンキット(Sigma-Aldrich)を使用して、製造社の指示によって行った。吸光度は、Multisakn(Thermo)を使用して560nmで測定し、その結果を
図12に示した。
【0117】
免疫染色のために、異なる時間で収集した前記3DCM及び2Dを、PBSで3回洗浄し、30分間4% PFAで固定化した。その後、OCT化合物(optimal cutting temperature compound)(TISSUE-TEK
¢c4583、Sakura Finetek USA,Inc.)に包埋し、-28℃で凍結して6μm厚に切った。非特異的な結合を避けるために、切片を常温で、1時間BSA(4%)でインキュベーションした。その後、4℃で、コラーゲンIに対する1次抗体(Rabit、Abicam)で一晩インキュベーションした。その後、試料をPBSで洗浄し、1% BSA内の相応する蛍光コンジュゲート二次抗体(Donkey anti-rabbit)(Life Technologies)で1時間常温でインキュベーションした。また、4,5-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)(Vector Laboratories)を核染色のために使用した。対照群は、同一条件下で、一次抗体なしに遂行し、共焦点顕微鏡(CarlZeiss)で観察し、その結果を
図13に示した。
【0118】
ウェスタンブロッティングのために、前述のところと同一に培養された細胞を、プロテアーゼ抑制剤カクテル(protease inhibitor cocktail)と共に、RIPAバッファ(Sigma-Aldrich)で可溶化させた。その後、前記溶解物を4℃で30分間15,000gで遠心分離し、2% SDS及び5%(v/v)2-メルカプトエタノールを含むLaemmli試料で希釈し、90℃で5分間加熱した。タンパク質を、10%分離ゲル(resolving gel)の使用と共に、SCD-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離し、ニトロセルローズ膜(Bio-Rad、米国)に移した。前記膜を、コラーゲンタイプI(Colla1、Boster Bio CO.Ltd)及びβ-アクチン(Santan Cruz Biotechnology)に対する一次抗体と共に、4℃で一晩インキュベーションした。検出のために、前記膜を常温で1時間ペルオキシダーゼ・コンジュゲート抗体(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベーションした。イメージ分析機(LSA3000、Fujifilm)で化学発光イメージを形成してスキャニングを行い、その結果を
図14に示した。
【0119】
図12は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体のコラーゲン含量を、ヒドロキシプロリンアッセイで測定した結果を示したグラフである。
【0120】
図13は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体のコラーゲン発現量を、免疫染色で測定した結果を示した図面である。
【0121】
図14は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体のコラーゲン発現量を、ウェスタンブロッティングで測定した結果を示した図面である。
【0122】
図12に示されているように、3DCMから分泌された総コラーゲン量は、培養時間が長くなるにつれて増加するということを確認することができ、2Dに比べ、減少しているということを確認することができる。前述の結果は、前記実施例2の(2.1)の結果と一致するということが分かる。
【0123】
また、
図13に示されているように、3DCMにおいて、培養の間、コラーゲンタイプI染色が減少した一方、2Dにおいては、減少していないということを確認することができる。前述の結果は、コラーゲンタイプIが、三次元培養システム内において、培養の間、分解されたということを示している。
【0124】
また、
図14に示されているように、
図12の結果と一致するように、3DCMにおいて、培養の間、コラーゲンタイプIが断片化される一方、2Dとしては、そうではないということを確認することができる。
【0125】
前述の結果により、一具体例による三次元線維芽細胞集合体は、コラーゲン発現が減少しており、コラーゲン含量を増加させる候補物質のスクリーニングに有用に使用されるということが分かる。
【0126】
(2.3)三次元線維芽細胞集合体のMMP発現分析
三次元線維芽細胞集合体のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)1発現分析のために、RT-PCRを行った。RT-PCRは、前記実施例2の(2.1)と同一方法で遂行し、その結果を
図15(a)に示した。
【0127】
また、総MMP-1分泌量を分析するために、ELISAを行った。具体的には、培養培地を、正常2D,3DCMから、それぞれ異なる時間(1日目、3日目及び5日目)で製造した。アッセイは、Quantikine ELISAヒト総MMP1キット(R&D System)を使用し、製造社の指示によって行った。吸光度は、Multisakn(Thermo)を使用して560nmで測定し、その結果を
図15(b)に示した。
【0128】
図15は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体のMMP1の発現量及び分泌量を示したグラフである。
【0129】
図15に示されているように、3DCMにおいて、MMP1遺伝子の発現量は、2Dに比べ、顕著に発現量が増加しているということを確認することができる。また、ELISA分析と同様に、MMP1分泌量も、3DCMにおいて、2Dに比べ、顕著に増加しているということを確認することができる。前述の結果により、一具体例による三次元線維芽細胞集合体は、MMP発現が顕著に増加しており、それをターゲットにする物質開発に有用に使用されるということが分かる。
【0130】
(3)三次元線維芽細胞集合体を利用したMMP阻害剤の疎外能評価
本実施例においては、前記三次元線維芽細胞集合体がMMP阻害剤のスクリーニングに使用可能であるかということを追加して確認するために、既存に知られたMMP阻害剤を処理し、MMP分泌量を確認した。
【0131】
具体的には、前記実施例2の(1)で製作した培養1日目の三次元線維芽細胞集合体に、線維芽細胞成長培地(fibroblast growth media、FGM、Lonza社)に希釈されたレチノイン酸(retinoic acid)(10mM)、アビエチン酸(abietic acid)(100mM)、変形成長因子ベータ1(TGF-b1:transforming growth factor-b1)(5ng/ml)を接種した。その後、さらに2日及び4日間37℃にした後、静置培養器で培養した後、培養液を回収し、基質金属蛋白分解酵素-1(MMP1:matrix metalloproteinase-1)分泌量を測定した。測定は、ELISAキット(R&D社)を利用して定量し、使用法は、供給会社のプロトコルに沿って進め、その結果を
図16に示した。
【0132】
三次元線維芽細胞集合体の対照群として、二次元で培養された線維芽細胞を利用したMMP阻害剤の疎外能比較のために、紫外線Bを照射した線維芽細胞を使用した。具体的には、組織細胞培養用6ウェルプレート(tissue culture treated 6-well plate)に、2.5X10
5細胞/cm
2細胞濃度で、高濃度グルコースDMEM培地に懸濁された線維芽細胞を播種した後、37℃静置培養器で1日間培養した。その後、PBSで3回反復洗浄し、無血清MEM培地を入れ、37℃静置培養器で1時間培養した。そして、PBSを利用して、3回反復洗浄した後、MMP1過発現を誘導するために、紫外線B(20mJ/cm
2)を照射した。紫外線照射後線、維芽細胞成長培地(FGM:fibroblast growth media、Lonza社)に希釈されたさまざまな濃度のレチノイン酸(2,10,40mM)、アビエチン酸(20,100,400mM)、TGF-b1(1,5,20ng/ml)を接種した後、さらに2日間37℃静置培養器で培養した後、培養液を回収し、MMP1分泌量を測定した。測定は、ELISAキット(R&D社)を利用して定量し、使用法は、供給会社のプロトコルに沿って進め、その結果を
図17に示した。
【0133】
図16は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体にMMP1阻害剤を処理した後の細胞のMMP1分泌量を示した図面である。
【0134】
図17は、MMP1過発現を誘導するために、紫外線照射された、二次元で培養された線維芽細胞に、MMP1阻害剤を処理した後の細胞のMMP1分泌量を示した図面である。
【0135】
図16に示されているように、MMP1阻害剤が処理されていない線維芽細胞集合体の場合、培養時間が、2日、4日経過するにつれ、MMP1分泌量がそれぞれ2.1倍、2.4倍ほど増加した。一方、レチノイン酸及びアビエチン酸を処理した線維芽細胞集合体の場合、対照群対比で、それぞれ80%、81%ほどの分泌量を示し、TGF-b1を処理した群の分泌量は、約60%ほどと分かった。
【0136】
図17に示されているように、二次元で培養された紫外線Bを照射した線維芽細胞は、照射していない線維芽細胞対比で、約1.3倍ほど高いMMP1分泌量を示した。しかし、レチノイン酸を処理した線維芽細胞は、MMP1分泌量が、対照群対比で、約30%に減少し、TGF-b1処理群との比較時、処理量によって25~35%に減少するということが分かった。特に、アビエチン酸を処理した線維芽細胞は、20mM処理時、約半分ほど分泌量が減少したが、100mM以上処理した場合、対照群対比で、約2%の分泌量を示した。3DCMを利用して評価した結果と比較し、阻害剤処理時、分泌量が減少する傾向は、同一である。しかし、2DのMMP阻害剤の対照群対比の減少幅は3DCMと比較し、レチノイン酸処理群は、2.7倍、TGF-b1は、1.7ないし2.4倍、アビエチン酸は、1.7ないし40倍高いということが分かった。
【0137】
前述の結果により、2Dの場合、薬物に対する細胞の感度が顕著に高く、薬物スクリーニングには適さないということが分かり、MMP阻害剤を含んだ薬物のスクリーニングに、3DCMが有用に使用されるということが分かる。
【0138】
図18は、一具体例による三次元線維芽細胞集合体を含む薬物スクリーニング装置、及びそれを使用して薬物をスクリーニングする方法を図式化して示した図面である。
図18を参照して説明すれば、1以上のウェルを有するウェルプレートを含み、前記ウェルに1以上の一具体例による三次元線維芽細胞集合体が播種された薬物スクリーニング装置が提供される。前記三次元線維芽細胞集合体は、各細胞集合体当たり、3.0×10
5ないし1.0×10
6個の細胞を含んでもよい。また、細胞集合体の直径は、300ないし2,000μmでもあり、形状は、球形(スペロイド含む)またはシート状でもある。前記薬物、すなわち、候補物質については、前述の通りである。前記薬物スクリーニング(screening)装置の各ウェルに候補物質を含む溶液を注入する段階と、前記候補物質が注入されたウェルを含むウェルプレートを培養する段階と、前記ウェルプレートから、前記三次元線維芽細胞集合体を収集するか、あるいは前記ウェルプレートから培養液を回収する段階と、前記収集された線維芽細胞からアッセイを行うか、あるいは前記培養液からアッセイを行う段階と、を含む薬物スクリーニングする方法が提供される。前記候補物質は、同一であるか、あるいは異なる候補物質でもある。前記培養は、当業者が任意に培養時間及び温度を決定することができる。前記アッセイは、例えば、前記培養液からELISAを使用するMMP分泌アッセイ、または前記三次元線維芽細胞集合体から、ウェストンブロッティング、または免疫組織化学染色を使用するECM分泌アッセイを含んでもよい。