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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058745
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/826 20230101AFI20230418BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20230418BHJP
   H10K 50/81 20230101ALI20230418BHJP
   H10K 59/173 20230101ALI20230418BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20230418BHJP
   H10K 102/10 20230101ALN20230418BHJP
   H10K 102/20 20230101ALN20230418BHJP
【FI】
H10K50/826
H10K50/844
H10K50/81
H10K59/173
H10K50/86
H10K102:10
H10K102:20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028088
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2021128282の分割
【原出願日】2016-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健見
(57)【要約】
【課題】光透過性を有する発光装置において、裏面側に放射される光の量を少なくする。
【解決手段】第1電極110は透光性を有しており、第2電極130は光反射性を有している。そして、有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。透光性領域(第2領域104及び第3領域106)は、複数の発光部140の間に位置している。絶縁膜150は発光部140を画定しており、テーパー152,154を有している。封止部材170は発光部140及び絶縁膜150を覆っている。低反射膜190は第2電極130を挟んで基板100の反対側に位置している。低反射膜190は、テーパー152,154の上記した少なくとも一部を覆っている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板と、
前記基板に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記発光部を画定し、テーパーを有する絶縁膜と、
前記発光部及び前記絶縁膜を覆う封止部材と、
前記第2電極を挟んで前記基板とは反対側に位置する低反射膜と、
を備え、
前記第2電極は前記テーパーの少なくとも一部を覆い、
前記低反射膜は前記テーパーの前記少なくとも一部に重なる発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は有機ELを利用した発光装置の開発が進んでいる。この発光装置は、照明装置や表示装置として使用されており、第1電極と第2電極の間に有機層を挟んだ構成を有している。そして、一般的には第1電極には透明材料が用いられており、第2電極には金属材料が用いられている。
【0003】
有機ELを利用した発光装置の一つに、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1の技術は、有機EL素子に光透過性(シースルー)を持たせるために、第2電極を基板の一部にのみ設けている。このような構造において、複数の第2電極の間に位置する領域は光を透過させるため、有機EL素子は光透過性を有することができる。
【0004】
また、特許文献2には、有機層の一部を非活性領域にして、さらに第2電極に透光性を持たせた有機EL素子において、有機層の活性領域と重なる位置にミラー層を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-149376号公報
【特許文献2】特表2012-506604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光透過性を有する発光装置において、発光部が発光した光を表面(光出射側の面)からのみ出射させたい場合がある。一方、有機ELを利用した発光装置は、有機層を水分や酸素から守るために、封止部材を有している。一方、有機層から表面に向けて放射された光の一部は、層や基板の界面で反射し、封止部材に向かう。この反射光の一部は、封止部材の面における臨界角以上であるため、封止部材の表面でさらに反射し、第2電極に向かう。ここで、第2電極に傾斜している部分があると、この傾斜している部分において反射光の角度が小さくなり、その結果、封止部材を透過する光の量、すなわち裏面側に放射される光の量が増加してしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、光透過性を有する発光装置において、裏面側に放射される光の量を少なくすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、透光性の基板と、
前記基板に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記発光部を画定し、テーパーを有する絶縁膜と、
前記発光部及び前記絶縁膜を覆う封止部材と、
前記第2電極を挟んで前記有機層基板とは反対側に位置する低反射膜と、
を備え、
前記第2電極は前記テーパーの少なくとも一部を覆い、
前記低反射膜は前記テーパーの前記少なくとも一部に重なる発光装置である。
【0009】
第2の発明は、空間を外部から仕切る透光性の仕切部材と、
前記仕切部材に配置された透光性の基板と、
前記基板に形成され、透光性の第1電極、光反射性の第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を有する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する透光性領域と、
前記発光部を画定し、テーパーを有する絶縁膜と、
前記発光部及び前記絶縁膜を覆う封止部材と、
前記第2電極を挟んで前記基板とは反対側に位置する低反射膜と、
を備え、
前記第2電極は前記テーパーの少なくとも一部を覆い、
前記低反射膜は前記テーパーの前記少なくとも一部に重なる発光システムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0011】
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】変形例1に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図4】変形例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図5】変形例3に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図6】変形例4に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図7】変形例5に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図8図7の変形例に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図9図7の変形例に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図10】実施例1に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図11】実施例2に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図12】実施例3に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図13図12の変形例に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図14】実施例4に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図15】実施例5に係る発光システムの構成を示す断面図である。
図16】実施例6に係る発光システムの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す平面図である。図2図1のA-A断面図である。実施形態に係る発光装置10は、基板100、複数の発光部140、透光性領域(第2領域104及び第3領域106)、絶縁膜150、封止部材170、及び低反射膜190を有している。複数の発光部140は、それぞれ、第1電極110、有機層120、及び第2電極130を有している。第1電極110は透光性を有しており、第2電極130は光反射性を有している。そして、有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。透光性領域(第2領域104及び第3領域106)は、複数の発光部140の間に位置している。絶縁膜150は発光部140を画定しており、テーパー152,154を有している。封止部材170は発光部140及び絶縁膜150を覆っている。低反射膜190は第2電極130を挟んで基板100の反対側に位置している。第2電極130はテーパー152,154の少なくとも一部を覆っている。このため、第2電極130のうち基板100とは逆側の面の一部は傾斜している。そして、低反射膜190は、テーパー152,154の上記した少なくとも一部を覆っている。言い換えると、低反射膜190は、第2電極130のうち傾斜している部分を覆っている。以下、発光装置10について詳細に説明する。
【0014】
基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの透光性を有する基板である。基板100は可撓性を有していてもよい。可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。基板100は、例えば矩形などの多角形や円形である。基板100が樹脂基板である場合、基板100は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを用いて形成されている。また、基板100が樹脂基板である場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも一面(好ましくは両面)に、SiNやSiONなどの無機バリア膜が形成されているのが好ましい。この無機バリア膜は、例えばスパッタリング法、CVD法、又はALD法を用いて形成される。なお、基板100を樹脂基板で形成する場合は、樹脂基板に直接後述する第1電極110や有機層120を成膜する方法と、ガラス基板の上に第1電極110以降の層を形成した後に、第1電極110とガラス基板を剥離し、さらに、剥離した積層体を樹脂基板に配置する方法などがある。
【0015】
基板100の第2面100bには、発光部140が形成されている。発光部140は、第1電極110、発光層を含む有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。そして基板100の第1面100aは、光が出射する面となっている。
【0016】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極の材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。また、第1電極110は複数の膜を積層した積層構造を有していてもよい。本図において、基板100の上には、複数の長方形状(ストライプ状)の第1電極110が互いに平行に形成されている。このため、後述する第2領域104及び第3領域106には第1電極110は位置していない。
【0017】
有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極110と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。なお、有機層120の代わりに他の発光層(例えば無機発光層)を有していてもよい。また、発光層の発光する発光色(又は有機層120から放射される光の色)は、隣の発光部140の発光層の発光色(又は有機層120から放射される光の色)と異なっていてもよいし、同じでも良い。
【0018】
第2電極130は、光反射性を有しており、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。ただし、第2電極130は、第1電極110の材料として例示した材料を用いて形成されていてもよい。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。本図に示す例において、発光装置10は複数の線状の第2電極130を有している。第2電極130は、第1電極110のそれぞれに対して設けられており、かつ第1電極110よりも幅が広くなっている。このため、基板100に垂直な方向から見た場合において、幅方向において第1電極110の全体が第2電極130によって重なっており、また覆われている。このような構成にすることで、有機層120の発光層で発光した光の取出し方向を調整することができる。具体的には、発光装置10の第1面100aとは逆側への光の放射を抑えることができる。
【0019】
第1電極110の縁は、絶縁膜150によって覆われている。絶縁膜150は例えばポリイミドなどの感光性の樹脂材料によって形成されており、第1電極110のうち発光部140となる部分を囲んでいる。絶縁膜150の表面は、テーパー152(第1のテーパー)及びテーパー154(第2のテーパー)を有している。テーパー152は、発光部140に面しており、テーパー154は透光領域(第2領域104及び第3領域106)に面している。
【0020】
第2電極130は、少なくともテーパー152を覆っている。そして、第2電極130の基板100とは逆側の面のうちテーパー152と重なる部分は、テーパーを有している。また、第2電極130の幅方向の縁は、絶縁膜150上に位置しているが、第2電極130はテーパー154の少なくとも半分を覆っていない。ただし、第2電極130の縁の位置は、本図に示す例に限定されない。また本図に示す例において、有機層120は絶縁膜150の上及び側面にも形成されている。ただし、有機層120は隣り合う発光部140の間で電気的には分断されていることが好ましいが、隣り合う発光部140と連続して形成されていてもよい。
【0021】
発光装置10は、さらに低反射膜190を有している。低反射膜190は、第2電極130を介して基板100の逆側(図2における上側)に位置している。図2に示す例において、低反射膜190は第2電極130の上(封止部材170側の面)に形成されている。言い換えると、低反射膜190は、第2電極130のうち基板100とは逆側の面に接している。
【0022】
低反射膜190は、光の反射率が低い材料、例えば第2電極130の材料よりも光の反射率が低い材料を用いて形成されている。このような材料の例は、Cr、Ni、Mo、カーボンブラック、またはチタンブラックを含む材料である。低反射膜190は単層膜であってもよいし、複数の層を積層した積層膜であってもよい。後者の場合、少なくとも一つの膜は、他の膜と異なる材料を用いて形成されていてもよい。このような積層膜としては、例えば、酸化クロム膜とクロム膜の積層膜がある。また、低反射膜190は、黒色顔料を含む有機材料を用いて形成されていてもよい。低反射膜190の厚さは、例えば低反射膜190の可視光の可視光反射率が50%以下となるように定められる。
【0023】
低反射膜190は、少なくともテーパー152を覆っている。言い換えると、基板100に垂直な方向から見た場合、低反射膜190はテーパー152と重なっている。なお、低反射膜190は、テーパー152及びその周囲に位置する領域を覆っているのが好ましい。図2に示す例において、発光部140の幅は2つの絶縁膜150によって画定されている。そして、2つの絶縁膜150のそれぞれが、テーパー152及びテーパー154を有している。低反射膜190は、発光部140及び2つのテーパー152を覆っている。
【0024】
上記したように、図2に示す例において、第2電極130の端部は絶縁膜150上に位置している。そして、発光部140の幅方向において、低反射膜190の端は、第2電極130の上に位置している。言い換えると、発光部140の幅方向において、第2電極130の端部は低反射膜190から露出している。
【0025】
低反射膜190は、例えばマスクを用いたスパッタリング法、マスクを用いた蒸着法、又はスクリーン印刷法を用いて形成されている。低反射膜190が第2電極130と同じ製造方法(例えば真空蒸着法)を用いて形成されている場合、第2電極130と低反射膜190は連続して形成されていてもよい。例えば、第2電極130と低反射膜190は、同一の処理容器内で同一のマスクを用いて形成されてもよい。また、第2電極130を形成するための処理容器と低反射膜190を形成するための処理容器は、真空状態の搬送路を介して互いに繋がっていてもよい。
【0026】
基板100に垂直な方向から見た場合、複数の発光部140は、互いに平行に延在している。図1に示す例では、複数の発光部140はいずれも長方形状(ストライプ状)に延在している。ただし、発光部140は途中で曲がっていてもよい。
【0027】
そして、基板100に垂直な方向から見た場合において、基板100は、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106を有している。第1領域102は第2電極130と重なっている領域である。第2電極130が遮光性を有している場合、第1領域102は、発光装置10または基板100の表面から裏面、及び裏面から表面のそれぞれにおいて光を通さない領域である。第2領域104は、第2電極130に重なっていないが絶縁膜150に重なる領域である。第3領域106は、第2電極130及び絶縁膜150と重ならない領域である。そして、第2領域104の幅は第3領域106の幅よりも狭いため、発光装置10は、十分な光透過性を有している。
【0028】
本図に示す例において、有機層120は第2領域104及び第3領域106にも形成されている。言い換えると、複数の発光部140の有機層120は連続的に形成されている。ただし、有機層120は第3領域106に形成されていなくてもよい。また、有機層120は、第2領域104に形成されていなくてもよい。
【0029】
第2領域104の幅は、第3領域106の幅よりも狭い。また第3領域106の幅は第1領域102の幅よりも広くてもよいし、狭くてもよい。第1領域102の幅を1とした場合、第2領域104の幅は例えば0以上(又は0超若しくは0.1以上)0.2以下であり、第3領域106の幅は例えば0.3以上2以下である。また第1領域102の幅は、例えば50μm以上500μm以下であり、第2領域104の幅は例えば0μm以上(又は0μm超)100μm以下であり、第3領域106の幅は例えば15μm以上1000μm以下である。
【0030】
発光装置10は、封止部材170を有している。封止部材170は、例えば樹脂からなる板状の部材であり、少なくとも一方の面(好ましくは両面)に、バリア膜172(例えば無機膜)を有している。この場合、封止部材170を構成する樹脂は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドである。また、バリア膜172は、例えばSiN又はSiONであり、例えばスパッタリング法、CVD法、又はALD法を用いて形成されている。封止部材170は、例えば絶縁層174(例えば接着層又は粘着層)を用いて基板100の第2面100bに固定されている。なお、絶縁層174の少なくとも一部は、第2電極130に接していてもよい。
【0031】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100の第2面100bに、第1電極110を形成する。次いで、絶縁膜150を形成し、さらに、有機層120、第2電極130、及び低反射膜190をこの順に形成する。次いで、絶縁層174を用いて、基板100の第2面100bに封止部材170を固定する。
【0032】
第2電極130は光反射性を有しているため、発光部140が発光した光は第1電極110を介して発光部140の外部に放射される。ここで、第1電極110と基板100の第1面100aの間には、複数の界面(例えば第1電極110と基板100の界面、及び基板100と外部の界面)がある。このため、発光部140からの光の一部は、これらの界面の臨界角以上であるため、反射する。すべての界面がほぼ平行であった場合、反射した光の角度は変わらない。しかし、本実施形態のように絶縁膜150の一部がテーパー152となっている場合、第2電極130のうちテーパー152と重なる部分はテーパーを有する。そして、反射光の角度は第2電極130のうちテーパーを有する部分に上記した反射光が入射すると、このテーパー部分で上記した反射光がさらに反射する際に、上記した反射光の角度は小さくなる。このため、上記した反射光が発光装置10の裏面側(図2においては上側)に放射される可能性が出てくる。
【0033】
これに対して本実施形態において、低反射膜190は、第2電極130を介して基板100とは逆側に位置しており、かつ、絶縁膜150のテーパー152と重なっている。このため、第2電極130のテーパーに反射光が入射することを抑制でき、その結果、上記したメカニズムによって発光部140からの光が発光装置10の裏面側に放射されることを抑制できる。特に図2に示す例において、低反射膜190は第2電極130のうち基板100とは逆側の面に接している。このため、第2電極130のテーパーに反射光が入射することを十分に抑制できる。従って、発光装置10の裏面側(図2においては上側)に光が漏れる可能性を低くできる。
【0034】
また、発光装置10の裏面側から入射した光が第2電極130で反射されることも抑制できるため、低反射膜190を設けない場合と比較して、人に、発光装置10の透光率が上がったと認識させることができる。また、低反射膜190が発光部140を覆っている場合、第2電極130にピンホールが形成されていた場合でも、このピンホールを低反射膜190で塞ぐことができる。従って、第2電極130側から有機層120に水分等が侵入することを抑制できる。
【0035】
(変形例1)
図3は、変形例1に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態の図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、低反射膜190が絶縁膜150のテーパー152(第1のテーパー)とテーパー154(第2のテーパー)の双方を覆っている点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0036】
詳細には、低反射膜190の端は、第2電極130の端よりも発光部140から離れている。言い換えると、発光部140の幅方向において、低反射膜190は第2電極130の全体を覆っている。本図に示す例において、低反射膜190の端は絶縁膜150の側面のうち第3領域106側の側面の上に位置している。ただし、低反射膜190の少なくとも一方の端部は、第3領域106に位置していてもよい。
【0037】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。また、低反射膜190は絶縁膜150のテーパー154も覆っている。このため、第2電極130のテーパーに反射光が入射することを十分に抑制できる。従って、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性をさらに低くできる。
【0038】
(変形例2)
図4は、変形例2に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、第1領域102、第2領域104、及び第3領域106のすべてに第1電極110が形成されている点を除いて、変形例1に係る発光装置10と同様の構成である。言い換えると、複数の発光部140それぞれの第1電極110は、互いに繋がっている。
【0039】
本変形例によっても、変形例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。なお、実施形態に係る発光装置10において、第1電極110は本変形例と同様の構成を有していてもよい。この場合、本変形例と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性をさらに低くできる。
【0040】
(変形例3)
図5は、変形例3に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、隣り合う発光部140の間で有機層120が分断している点を除いて、変形例1に係る発光装置10と同様の構成である。有機層120は、例えば第3領域106の一部または全部に形成されていない。有機層120は、第2領域104のうち第3領域106側の領域にも形成されていなくてもよい。ただし、有機層120は、第2領域104、及び第3領域106のうち第2領域104側の領域に形成されていてもよい。
【0041】
本変形例によっても、変形例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。なお、実施形態又は変形例2に係る発光装置10において、有機層120は本変形例と同様の構成を有していてもよい。
【0042】
(変形例4)
図6は、変形例4に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、第1電極110が導電層180を有している点を除いて、変形例1に係る発光装置10と同様の構成である。導電層180は第1電極110の補助電極であり、例えばMo合金層、Al合金層、及びMo合金層をこの順に積層した構成を有している。導電層180は、Ag合金を用いて形成されていてもよい。導電層180は、第1電極110のうち絶縁膜150に覆われた部分の上に形成されている。ただし、導電層180は第1電極110と基板100の間(又は第1電極110と光機能層160の間)に形成されていてもよい。
【0043】
本変形例によっても、変形例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。なお、実施形態及び変形例2,3のいずれかに係る発光装置10において、導電層180が設けられていてもよい。
【0044】
(変形例5)
図7は、変形例5に係る発光装置10の構成を示す断面図であり、実施形態における図2に対応している。本変形例に係る発光装置10は、発光装置10の厚さ方向における低反射膜190の位置を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0045】
本変形例において、低反射膜190は封止部材170の基板100側のバリア膜172と絶縁層174の間に位置している。言い換えると、低反射膜190は、封止部材170の基板100側の面(具体的にはバリア膜172の上)に形成されている。基板100に垂直な方向から見た場合において、絶縁膜150及び第2電極130と低反射膜190とが重なっている領域は、実施形態と同様である。また、低反射膜190の形成方法や材料も、実施形態に示した通りである。
【0046】
なお、図8に示すように、低反射膜190は、封止部材170のうち基板100とは逆側の面(具体的にはバリア膜172の上)に形成されていてもよい。また、図9に示すように、封止部材170の両面に低反射膜190が形成されていてもよい。
【0047】
本変形例によっても、実施形態と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。なお、変形例1~4のいずれかに係る発光装置10において、低反射膜190は本変形例と同様の位置に配置されていてもよい。
【0048】
(実施例1)
図10は、実施例1に係る発光システムの構成を示す断面図である。この発光システムは、発光装置10及び仕切部材20を有している。仕切部材20は透光性を有しており、空間を外部から仕切っている。この空間は、例えば人が滞在する空間、又は商品等のものが配置されている空間である。発光装置10は、上記した実施形態及び変形例のいずれかと同様の構成を有している。本図に示す例において、基板100のうち発光部140が設けられている側の面(第2面100b)は、人が滞在する空間を向いている。
【0049】
仕切部材20は、例えば人が移動するための移動体30の窓、又はショーケースの窓であり、ガラス又は透光性の樹脂を用いて形成されている。移動体30は、例えば自動車、列車、又は飛行機である。移動体30が自動車の場合、仕切部材20はフロントガラス、リアガラス、又は座席の横に取り付けられた窓ガラス(例えばドアガラス)である。仕切部材20がリアガラスの場合、複数の発光部140は例えばブレーキランプとして機能する。また、仕切部材20がフロントガラス又はリアガラスの場合、複数の発光部140はターンランプであってもよい。また、仕切部材20は、会議室などの部屋の内部と外部を仕切る窓であってもよい。発光部140の点灯/非点灯により、会議室を利用しているか否かを識別できる発光システムでも良い。仕切部材20は、水平面に対して角度θ(例えば45°<θ<90°)で傾いていてもよいし、水平面に対して垂直(θ=90°)であってもよい。
【0050】
そして、発光装置10の第1面100a、すなわち光取出側の面は、接着層200を介して仕切部材20の内面(第1面22)に固定されている。このため、発光装置10の発光部140から放射された光は、仕切部材20を介して上記した空間(例えば移動体30)の外部に放射される。一方、発光装置10は光透過性を有している。このため、人は、仕切部材20を介して空間の外部や内部を視認することができる。例えば移動体30の内側に位置する人は、仕切部材20を介して移動体30の外部を視認することができる。なお、基板100の第1面100aの全面が接着層200を介して仕切部材20の第1面22に固定されていてもよいし、第1面100aの一部(例えば互いに対向する2辺)が仕切部材20の第1面22に固定されていてもよい。
【0051】
接着層200は発光装置10を仕切部材20に固定している。このような機能を果たす材料であれば、接着層200の材料はとくに限定はされない。また、例えば仕切部材20と基板100がともにガラスで形成された場合など、仕切部材20の屈折率と発光装置10の基板100の屈折率がほぼ同じ場合は、接着層200には、両者と同じか近い屈折率を有する材料を用いる。また、仕切部材20と基板100とで屈折率とが異なる(例えば、仕切部材20がプラスチックで形成され、基板100がガラスで形成される)場合は、接着層200の屈折率は仕切部材20の屈折率と基板100の屈折率の間の数値が好ましい。このようにすると、発光装置10の発光を、仕切部材20を介して外部へ効率よく光取り出しができる。また、発光装置10と仕切部材20とは隙間なく接着されるのが好ましい。隙間があると発光装置10からの発光が仕切部材20で反射され、その反射光が発光装置10の第2領域104、第3領域106を介して内部に伝わるからである。
【0052】
発光装置10は、実施形態及び各変形例のいずれかに示した構成を有している。従って、発光装置10の裏面側(図10においては右側)に光が漏れる可能性を低くできる。
【0053】
(実施例2)
図11は、実施例2に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、発光装置10が仕切部材20のうち移動体30の外側の面(第2面24)に取り付けられている点を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0054】
本実施例に係る発光装置10は、上記した実施形態及び各変形例のいずれかと同じ構成を有している。ただし、発光装置10は、仕切部材20とは逆側の面が光取出面となっている。このようにするためには、発光装置10の第2面100bを仕切部材20に対向させればよい。
【0055】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0056】
また、発光装置10からの光は仕切部材20を介さずに直接移動体30の外部に放射される。このため、実施形態と比較して、移動体30の外部にいる人は発光装置10からの光を認識しやすい。また、移動体30の外部すなわち仕切部材の20の第2面24側に発光装置10を取り付けているので、発光装置10の発光が仕切部材20で反射して移動体30の内部へ入ることを抑制できる。
【0057】
(実施例3)
図12は、実施例3に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、固定部材210を用いて発光装置10を仕切部材20に固定している点を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0058】
固定部材210は枠状の部材であり、下面が接着層200を用いて仕切部材20に固定されている。固定部材210の上部は固定部材210の内側に向けて折れ曲がっており、この折れ曲がっている部分で発光装置10の縁を押さえている。ただし、固定部材210の形状は本図に示す例に限定されない。
【0059】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0060】
また、図13に示すように、移動体30の外側に向けて凸になる方向に仕切部材20が湾曲している場合がある。このような場合において、平板上の発光装置10を仕切部材20の内面(第1面22)に直接固定することは難しい。しかし、固定部材210を用いると、このような場合でも発光装置10を仕切部材20の第1面22に固定することができる。
【0061】
このような方法で湾曲する仕切部材20と平板上の発光装置10とを固定した場合、仕切部材20と発光装置10との間の隙間に充填剤を充填してもよい。前述の通り、隙間があると発光装置10からの発光が仕切部材20で反射され、その反射光が発光装置10の第3領域106を介して内部に伝わるからである。仕切部材20の屈折率と発光装置10の基板100の屈折率とが互いにほぼ同じ場合(例えば両者ともにガラスで形成されている場合)は、充填部材の屈折率は、これらの屈折率と同じか近い値であることが好ましい。また、仕切部材20と基板100とで屈折率とが異なる(例えば、仕切部材20がプラスチックで形成され、基板100がガラスで形成される)場合は、充填剤の屈折率は仕切部材20の屈折率と発光装置10の基板100の屈折率の間の数値が好ましい。
【0062】
(実施例4)
図14は、実施例4に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、発光部140が仕切部材20の第1面22又は第2面24に形成されている点を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。言い換えると、本実施例において、仕切部材20は実施例1における基板100を兼ねている。
【0063】
なお、本実施例において、仕切部材20のうち発光部140が形成される面に凹部を形成し、この凹部内に発光部140を形成してもよい。例えば、複数の発光部140が形成される領域に一つの凹部を形成し、この凹部の底面に複数の発光部140を形成してもよいし、複数の発光部140のそれぞれに個別に凹部を形成してもよい。この場合、発光部140の封止は透過性の高い構成、例えば膜封止などによって、複数の凹部を一度に封止する構成であってもよい。凹部が発光部140に対して個別、または複数のいずれの場合においても、仕切部材20から発光部140が突出することを抑制できる。なお、仕切部材20の凹部に発光部140を形成する場合において、発光部140の上部は仕切部材20の第1面22(又は第2面24)から突出していてもよいし、発光部140の全体が第1面22(又は第2面24)の下方に位置していてもよい。
【0064】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0065】
(実施例5)
図15は、実施例5に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、仕切部材20に複数の発光装置10が取り付けられている点を除いて、上記した実施形態及び各変形例並びに実施例1~4のいずれかと同様の構成である。複数の発光装置10は、互いに同一の制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよいし、互いに異なる制御信号に従って発光及び消灯が制御されていてもよい。
【0066】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0067】
(実施例6)
図16は、実施例6に係る発光システムの構成を示す断面図である。本実施例に係る発光システムは、仕切部材20の構成及び発光装置10の位置を除いて、実施例1に係る発光システムと同様の構成である。
【0068】
本実施例において、仕切部材20は、複数枚の透光部材21(例えばガラス板や樹脂板)を重ねた構成を有している。そして、発光装置10は、隣り合う透光部材21の間に挟まれることにより、仕切部材20に取り付けられている。
【0069】
本実施例によっても、実施例1と同様に、発光装置10の裏面側に光が漏れる可能性を低くできる。
【0070】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16