(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058754
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230419BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20230419BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020031263
(22)【出願日】2020-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】水上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】金子 純也
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝昭
【テーマコード(参考)】
5H501
5H770
【Fターム(参考)】
5H501BB08
5H501CC01
5H501DD06
5H501HA08
5H501HA15
5H501HB07
5H501HB16
5H501LL22
5H501MM02
5H501MM11
5H770AA13
5H770BA01
5H770DA01
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02W
5H770HA02Z
5H770LA02Z
5H770LB09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】過電流保護機能を設けたモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ駆動装置1において、単相直流モータ2のコイル2aの一端に接続される第1上下アームスイッチの通電期間を制御する第1駆動回路10と、コイル2aの他端に接続される第2上下アームスイッチの通電期間を制御する第2駆動回路20と、コイルに流れる電流を検出し、電流検出信号を出力する電流検出回路30と、過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第1イネーブル信号71を第1駆動回路10に出力する第1保護回路40と、電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第2イネーブル信号72を第2駆動回路20に出力する第2保護回路50と、を備える。第1イネーブル信号を第1駆動回路10に伝達する第1イネーブル信号線71と、第2イネーブル信号を第2駆動回路に伝達する第2イネーブル信号線72とは、互いに独立した配線である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相直流モータを駆動するモータ駆動装置であって、
前記単相直流モータのコイルの一端と電源とを電気的に接続する第1上アームスイッチと、前記コイルの一端とGNDとを電気的に接続する第1下アームスイッチと、前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの通電期間を制御する回路とを有する第1駆動回路と、
前記コイルの他端と前記電源とを電気的に接続する第2上アームスイッチと、前記コイルの他端と前記GNDとを電気的に接続する第2下アームスイッチと、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの通電期間を制御する回路とを有する第2駆動回路と、
前記コイルに流れる電流を検出し、前記電流の検出結果を示す電流検出信号を出力する電流検出回路と、
前記電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第1イネーブル信号を前記第1駆動回路に出力する第1保護回路と、
前記電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第2イネーブル信号を前記第2駆動回路に出力する第2保護回路と、
を備え、
前記第1イネーブル信号を前記第1駆動回路に伝達する第1イネーブル信号線と、前記第2イネーブル信号を前記第2駆動回路に伝達する第2イネーブル信号線とは、互いに独立した配線である、
モータ駆動装置。
【請求項2】
前記第1駆動回路を制御するための第1制御信号を前記第1駆動回路に出力するとともに、前記第2駆動回路を制御するための第2制御信号を前記第2駆動回路に出力するコントローラをさらに備え、
前記コントローラは、
前記第1イネーブル信号線に電気的に接続される第1イネーブル信号出力端子と、
前記第2イネーブル信号線に電気的に接続される第2イネーブル信号出力端子と、
を有する、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記電流検出信号が入力される電流検出端子を有する、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記第1保護回路は、
第1閾値電圧を生成する第1抵抗分圧回路と、
前記電流検出信号の電圧と前記第1閾値電圧とを比較し、比較結果を示す信号を前記第1イネーブル信号として出力する第1コンパレータと、
を有し、
前記第2保護回路は、
第2閾値電圧を生成する第2抵抗分圧回路と、
前記電流検出信号の電圧と前記第2閾値電圧とを比較し、比較結果を示す信号を前記第2イネーブル信号として出力する第2コンパレータと、
を有し、
前記第1コンパレータの出力端子と前記コントローラの前記第1イネーブル信号出力端子とがワイヤードオア接続され、
前記第2コンパレータの出力端子と前記コントローラの前記第2イネーブル信号出力端子とがワイヤードオア接続される、請求項2または3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記第1保護回路は、前記第1コンパレータの出力端子と前記コントローラの前記第1イネーブル信号出力端子との間に接続される第1ダイオードをさらに有し、
前記第2保護回路は、前記第2コンパレータの出力端子と前記コントローラの前記第2イネーブル信号出力端子との間に接続される第2ダイオードをさらに有し、
前記第1ダイオードのアノード端子は前記第1イネーブル信号出力端子に接続され、
前記第1ダイオードのカソード端子は前記第1コンパレータの出力端子に接続され、
前記第2ダイオードのアノード端子は前記第2イネーブル信号出力端子に接続され、
前記第2ダイオードのカソード端子は前記第2コンパレータの出力端子に接続される、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記第1ダイオード及び前記第2ダイオードは、それぞれショットキーバリアダイオードである、請求項5に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、モータを備える機器を小型化するために、モータとして単相直流モータが使用される場合が多い。単相直流モータからの発熱及び発火を予防するために、単相直流モータを駆動するモータ駆動装置には高い安全性が要求される。そのため、単相直流モータに過電流が生じたときに、単相直流モータへの通電を遮断するための保護機能がモータ駆動装置に設けられる。
【0003】
特に、ドイツの安全規格であるVDE規格では、モータ駆動装置に設けられる上記保護機能を二重化することにより保護機能の冗長性を強化することが要求される。下記特許文献1には、二重化された保護機能を有する電動機駆動用電力変換装置が開示されている。
【0004】
一般に開示された電動機駆動用電力変換装置は、インバータ装置と、2つのゲート駆動回路と、PWM信号生成手段と、安全停止手段と、を備える。安全停止手段は、外部から与えられる2つの停止指令のうち何れか1つが入力されたとき、2つのゲート駆動回路のうち少なくとも1つのゲート駆動回路の出力をオフに固定する。例えば、特許文献1には電動機駆動用電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
VDE規格ではモータの保護機能を二重化(冗長化)することが要求されるが、仮に、この要求に対してマイコン等を使ったソフトウエア的な処理によって対応すると、コストが高く且つ評価期間が長いソフトプログラム評価を行うことが必要となる。上記特許文献1の技術では、2つの停止指令を生成するためにマイコン等が必要となるため、VDE規格を満たすかどうかの評価としてソフトプログラム評価を行わなければならない。従って、特許文献1の技術では、二重化された保護機能の評価に長い時間と高い費用を要する。
【0007】
上記の問題を解決するために、2つの停止指令をハードウエアである保護回路によって生成することが考えられるが、VDE規格で要求される保護機能の冗長性が損なわれないように、駆動回路、保護回路及び配線パターンなどを設計する必要がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて、以下の2つの要件を満たすことが可能なモータ駆動装置を提供することを一つの目的とする。
(1)VDE規格を満たすかどうかの評価を低コスト且つ短期間で実施可能である。
(2)VDE規格で要求される保護機能の冗長性が損なわれることを回避可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの態様は、単相直流モータを駆動するモータ駆動装置であって、第1駆動回路と、第2駆動回路と、電流検出回路と、第1保護回路と、第2保護回路と、を備える。前記第1駆動回路は、前記単相直流モータのコイルの一端と電源とを電気的に接続する第1上アームスイッチと、前記コイルの一端とGNDとを電気的に接続する第1下アームスイッチと、前記第1上アームスイッチ及び前記第1下アームスイッチの通電期間を制御する回路と、を有する。前記第2駆動回路は、前記コイルの他端と前記電源とを電気的に接続する第2上アームスイッチと、前記コイルの他端と前記GNDとを電気的に接続する第2下アームスイッチと、前記第2上アームスイッチ及び前記第2下アームスイッチの通電期間を制御する回路と、を有する。前記電流検出回路は、前記コイルに流れる電流を検出し、前記電流の検出結果を示す電流検出信号を出力する。前記第1保護回路は、前記電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第1イネーブル信号を前記第1駆動回路に出力する。前記第2保護回路は、前記電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第2イネーブル信号を前記第2駆動回路に出力する。前記第1イネーブル信号を前記第1駆動回路に伝達する第1イネーブル信号線と、前記第2イネーブル信号を前記第2駆動回路に伝達する第2イネーブル信号線とは、互いに独立した配線である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、以下の2つの要件を満たすことが可能なモータ駆動装置を提供できる。
(1)VDE規格を満たすかどうかの評価を低コスト且つ短期間で実施可能である。
(2)VDE規格で要求される保護機能の冗長性が損なわれることを回避可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態のモータ駆動装置の回路構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1駆動回路及び第2駆動回路の内部構成を示す図である。
【
図3】
図3は、正転モード時に単相直流モータのコイルに流れるコイル電流の向きを示す図である。
【
図4】
図4は、逆転モード時に単相直流モータのコイルに流れるコイル電流の向きを示す図である。
【
図5】
図5は、過電流発生時において単相直流モータに回生電流による回生ブレーキがかかる状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のモータ駆動装置1の回路構成を示す図である。モータ駆動装置1は、単相直流モータ2を駆動する装置である。モータ駆動装置1は、第1駆動回路10と、第2駆動回路20と、電流検出回路30と、第1保護回路40と、第2保護回路50と、コントローラ60と、を備える。
【0013】
第1駆動回路10及び第2駆動回路20は、例えばIPM(Intelligent Power Module)などのドライバICである。第1駆動回路10は、第1出力端子10aと、第1電源入力端子10bと、第1GND端子10cと、第1イネーブル信号入力端子10dと、第1PWM信号入力端子10eと、を有する。同様に、第2駆動回路20は、第2出力端子20aと、第2電源入力端子20bと、第2GND端子20cと、第2イネーブル信号入力端子20dと、第2PWM信号入力端子20eと、を有する。
【0014】
第1駆動回路10の第1出力端子10aは、単相直流モータ2のコイル2aの一端と電気的に接続される。第2駆動回路20の第2出力端子20aは、コイル2aの他端と電気的に接続される。第1駆動回路10の第1電源入力端子10bと、第2駆動回路20の第2電源入力端子20bとは、単相直流モータ2を駆動するのに必要な電源電圧を供給する電源P1と電気的に接続される。第1駆動回路10の第1GND端子10cと、第2駆動回路20の第2GND端子20cとは、電流検出回路30を介してグランド(GND)と電気的に接続される。
【0015】
詳細は後述するが、第1駆動回路10は、単相直流モータ2のコイル2aの一端と電源P1とを電気的に接続する第1上アームスイッチ11と、コイル2aの一端とGNDとを電気的に接続する第1下アームスイッチ12と、第1上アームスイッチ11及び第1下アームスイッチ12の通電期間を制御する回路と、を有する。第2駆動回路20は、コイル2aの他端と電源P1とを電気的に接続する第2上アームスイッチ21と、コイル2aの他端とGNDとを電気的に接続する第2下アームスイッチ22と、第2上アームスイッチ21及び第2下アームスイッチ22の通電期間を制御する回路と、を有する。第1駆動回路10と第2駆動回路20とが協働的に動作することにより、単相直流モータ2のコイル2aに流れる電流の大きさ及び向きが制御される。その結果、単相直流モータ2の回転数が制御される。
【0016】
電流検出回路30は、コイル2aに流れる電流(コイル電流)を検出し、コイル電流の検出結果を示す電流検出信号を出力する回路である。コイル電流とは、コイル2a、第1駆動回路10、及び第2駆動回路20を経由して、電源P1とGNDとの間に流れる電流である。電流検出回路30は、シャント抵抗器31を有する。
【0017】
シャント抵抗器31の一端は、第1駆動回路10の第1GND端子10c、第2駆動回路20の第2GND端子20c、第1保護回路40の入力端子40a、及び第2保護回路50の入力端子50aと電気的に接続される。シャント抵抗器31の他端は、GNDと電気的に接続される。シャント抵抗器31の端子間には、シャント抵抗器31に流れるコイル電流に比例する電圧が発生する。このようなシャント抵抗器31の端子間電圧が、第1保護回路40の入力端子40a及び第2保護回路50の入力端子50aに電流検出信号として入力される。
【0018】
第1保護回路40は、上記の電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第1イネーブル信号を第1駆動回路10に出力する回路である。第1保護回路40は、入力端子40aと、出力端子40bと、第1抵抗分圧回路41と、第1コンパレータ42と、第1プルアップ抵抗器43と、第1ダイオード44と、を有する。
【0019】
上記のように、第1保護回路40の入力端子40aは、シャント抵抗器31の一端と電気的に接続される。一方、第1保護回路40の出力端子40bは、第1イネーブル信号線71を介して、第1駆動回路10の第1イネーブル信号入力端子10dと電気的に接続される。
【0020】
第1抵抗分圧回路41は、第1閾値電圧を生成する回路である。第1抵抗分圧回路41は、第1上側抵抗器41aと、第1下側抵抗器41bと、を有する。第1上側抵抗器41aと第1下側抵抗器41bとは、電源P1よりも低い電源電圧を供給する電源P2とGNDとの間において直列に接続される。第1上側抵抗器41aと第1下側抵抗器41bとの間の中間ノードN1に発生する電圧、すなわち第1下側抵抗器41bの端子間電圧が、第1閾値電圧である。
【0021】
第1コンパレータ42は、電流検出信号の電圧と第1閾値電圧とを比較し、比較結果を示す信号を第1イネーブル信号として出力する回路である。第1コンパレータ42の反転入力端子42aは、第1保護回路40の入力端子40aと電気的に接続される。すなわち、第1コンパレータ42の反転入力端子42aに電流検出信号が入力される。第1コンパレータ42の非反転入力端子42bは、第1抵抗分圧回路41の中間ノードN1と電気的に接続される。すなわち、第1コンパレータ42の非反転入力端子42bに第1閾値電圧が入力される。なお、必要に応じて、反転入力端子42aの前段に、電流検出信号の電圧を分圧する抵抗分圧回路を設けてもよい。
【0022】
第1コンパレータ42は、オープンコレクタ型の出力端子42cを有する。第1コンパレータ42の出力端子42cは、第1プルアップ抵抗器43を介して電源P2と電気的に接続される。電流検出信号の電圧が第1閾値電圧以下である場合、第1コンパレータ42の出力端子42cはオープン状態になる。その結果、第1コンパレータ42の出力端子42cの電圧は、電源P2の電圧、すなわちハイレベル電圧となる。一方、電流検出信号の電圧が第1閾値電圧より高い場合、第1コンパレータ42の出力端子42cは、GNDと電気的に接続される。その結果、第1コンパレータ42の出力端子42cの電圧は、グランドレベルの電圧、すなわちローレベル電圧となる。
【0023】
言い換えれば、電流検出信号の電圧が第1閾値電圧以下である場合、すなわち過電流が生じていない場合、第1コンパレータ42の出力端子42cからハイレベル電圧を有する第1イネーブル信号が出力される。一方、電流検出信号の電圧が第1閾値電圧より高い場合、すなわち過電流が生じた場合、第1コンパレータ42の出力端子42cからローレベル電圧を有する第1イネーブル信号が出力される。
【0024】
第1コンパレータ42の出力端子42cと、第1保護回路40の出力端子40bとは、第1ダイオード44を介して電気的に接続される。第1ダイオード44のカソード端子は、第1コンパレータ42の出力端子42cと電気的に接続される。第1ダイオード44のアノード端子は、第1保護回路40の出力端子40bと電気的に接続される。すなわち、第1ダイオード44のアノード端子は、第1イネーブル信号線71を介して第1駆動回路10の第1イネーブル信号入力端子10dと電気的に接続される。本実施形態において第1ダイオード44は、ショットキーバリアダイオードである。
【0025】
第2保護回路50は、上記の電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第2イネーブル信号を第2駆動回路20に出力する回路である。第2保護回路50は、入力端子50aと、出力端子50bと、第2抵抗分圧回路51と、第2コンパレータ52と、第2プルアップ抵抗器53と、第2ダイオード54と、を有する。
【0026】
上記のように、第2保護回路50の入力端子50aは、シャント抵抗器31の一端と電気的に接続される。一方、第2保護回路50の出力端子50bは、第2イネーブル信号線72を介して、第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dと電気的に接続される。
【0027】
第2抵抗分圧回路51は、第2閾値電圧を生成する回路である。第2抵抗分圧回路51は、第2上側抵抗器51aと、第2下側抵抗器51bと、を有する。第2上側抵抗器51aと第2下側抵抗器51bとは、電源P2とGNDとの間において直列に接続される。第2上側抵抗器51aと第2下側抵抗器51bとの間の中間ノードN2に発生する電圧、すなわち第2下側抵抗器51bの端子間電圧が、第2閾値電圧である。本実施形態において第2閾値電圧は、第1閾値電圧と等しい。
【0028】
第2コンパレータ52は、電流検出信号の電圧と第2閾値電圧とを比較し、比較結果を示す信号を第2イネーブル信号として出力する回路である。第2コンパレータ52の反転入力端子52aは、第2保護回路50の入力端子50aと電気的に接続される。すなわち、第2コンパレータ52の反転入力端子52aに電流検出信号が入力される。第2コンパレータ52の非反転入力端子52bは、第2抵抗分圧回路51の中間ノードN2と電気的に接続される。すなわち、第2コンパレータ52の非反転入力端子52bに第2閾値電圧が入力される。なお、必要に応じて、反転入力端子52aの前段に、電流検出信号の電圧を分圧する抵抗分圧回路を設けてもよい。
【0029】
第2コンパレータ52は、オープンコレクタ型の出力端子52cを有する。第2コンパレータ52の出力端子52cは、第2プルアップ抵抗器53を介して電源P2と電気的に接続される。電流検出信号の電圧が第2閾値電圧以下である場合、第2コンパレータ52の出力端子52cはオープン状態になる。その結果、第2コンパレータ52の出力端子52cの電圧は、電源P2の電圧、すなわちハイレベル電圧となる。一方、電流検出信号の電圧が第2閾値電圧より高い場合、第2コンパレータ52の出力端子52cは、GNDと電気的に接続される。その結果、第2コンパレータ52の出力端子52cの電圧は、グランドレベルの電圧、すなわちローレベル電圧となる。
【0030】
言い換えれば、電流検出信号の電圧が第2閾値電圧以下である場合、すなわち過電流が生じていない場合、第2コンパレータ52の出力端子52cからハイレベル電圧を有する第2イネーブル信号が出力される。一方、電流検出信号の電圧が第2閾値電圧より高い場合、すなわち過電流が生じた場合、第2コンパレータ52の出力端子52cからローレベル電圧を有する第2イネーブル信号が出力される。
【0031】
第2コンパレータ52の出力端子52cと、第2保護回路50の出力端子50bとは、第2ダイオード54を介して電気的に接続される。第2ダイオード54のカソード端子は、第2コンパレータ52の出力端子52cと電気的に接続される。第2ダイオード54のアノード端子は、第2保護回路50の出力端子50bと電気的に接続される。すなわち、第2ダイオード54のアノード端子は、第2イネーブル信号線72を介して第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dと電気的に接続される。本実施形態において第2ダイオード54は、ショットキーバリアダイオードである。
【0032】
コントローラ60は、例えばMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサICである。コントローラ60は、第1PWM信号出力端子60aと、第2PWM信号出力端子60bと、電流検出端子60cと、第1イネーブル信号出力端子60dと、第2イネーブル信号出力端子60eと、を有する。
【0033】
コントローラ60は、第1駆動回路10を制御するための第1制御信号を第1駆動回路10に出力する。具体的には、コントローラ60の第1PWM信号出力端子60aは、第1駆動回路10の第1PWM信号入力端子10eと電気的に接続される。コントローラ60は、上記の第1制御信号として所定のデューティ比を有する第1PWM信号を、第1PWM信号出力端子60aから第1PWM信号入力端子10eへ出力する。
【0034】
コントローラ60は、第2駆動回路20を制御するための第2制御信号を第2駆動回路20に出力する。具体的には、コントローラ60の第2PWM信号出力端子60bは、第2駆動回路20の第2PWM信号入力端子20eと電気的に接続される。コントローラ60は、上記の第2制御信号として所定のデューティ比を有する第2PWM信号を、第2PWM信号出力端子60bから第2PWM信号入力端子20eへ出力する。
【0035】
コントローラ60の電流検出端子60cは、シャント抵抗器31の一端と電気的に接続される。すなわち、コントローラ60は、電流検出信号が入力される電流検出端子60cを有する。コントローラ60の第1イネーブル信号出力端子60dは、第1イネーブル信号線71と電気的に接続される。コントローラ60の第2イネーブル信号出力端子60eは、第2イネーブル信号線72と電気的に接続される。
【0036】
第1イネーブル信号出力端子60d及び第2イネーブル信号出力端子60eは、いずれもオープンコレクタ型の出力端子である。第1イネーブル信号出力端子60dは、第1イネーブル信号線71を介して第1保護回路40の出力端子40bと電気的に接続される。第2イネーブル信号出力端子60eは、第2イネーブル信号線72を介して第2保護回路50の出力端子50bと電気的に接続される。
【0037】
従って、本実施形態において、第1コンパレータ42の出力端子42cと、コントローラ60の第1イネーブル信号出力端子60dとが、第1プルアップ抵抗器43によってワイヤードオア接続される。また、本実施形態において、第2コンパレータ52の出力端子52cと、コントローラ60の第2イネーブル信号出力端子60eとが、第2プルアップ抵抗器53によってワイヤードオア接続される。
【0038】
コントローラ60は、所定のプログラムに従って、電流検出端子60cを介して入力される電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、その判定結果に応じて第1イネーブル信号出力端子60dの状態と、第2イネーブル信号出力端子60eの状態とを制御する。
【0039】
具体的には、コントローラ60は、電流検出信号の電圧が第3閾値電圧以下である場合、第1イネーブル信号出力端子60d及び第2イネーブル信号出力端子60eをハイレベル電圧に制御する。一方、コントローラ60は、電流検出信号の電圧が第3閾値電圧より高い場合、第1イネーブル信号出力端子60d及び第2イネーブル信号出力端子60eをGNDと電気的に接続する。第3閾値電圧は、第1閾値電圧及び第2閾値電圧と等しい値に設定される。
【0040】
第1コンパレータ42の出力端子42cがオープン状態となり、且つコントローラ60の第1イネーブル信号出力端子60dがハイレベル電圧となる場合、第1イネーブル信号線71の電圧は、ハイレベル電圧となる。この場合、第1駆動回路10の第1イネーブル信号入力端子10dには、ハイレベル電圧を有する第1イネーブル信号が入力される。言い換えれば、第1保護回路40とコントローラ60との両方において、過電流が生じていないと判定された場合、第1駆動回路10の第1イネーブル信号入力端子10dには、ハイレベル電圧を有する第1イネーブル信号が入力される。
【0041】
第1コンパレータ42の出力端子42cと、コントローラ60の第1イネーブル信号出力端子60dとの少なくとも一方が、GNDと接続される場合、第1イネーブル信号線71の電圧は、ローレベル電圧となる。この場合、第1駆動回路10の第1イネーブル信号入力端子10dには、ローレベル電圧を有する第1イネーブル信号が入力される。言い換えれば、第1保護回路40とコントローラ60との少なくとも一方において、過電流が生じたと判定された場合、第1駆動回路10の第1イネーブル信号入力端子10dには、ローレベル電圧を有する第1イネーブル信号が入力される。
【0042】
第2コンパレータ52の出力端子52cがオープン状態となり、且つコントローラ60の第2イネーブル信号出力端子60eがハイレベル電圧となる場合、第2イネーブル信号線72の電圧は、ハイレベル電圧となる。この場合、第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dには、ハイレベル電圧を有する第2イネーブル信号が入力される。言い換えれば、第2保護回路50とコントローラ60との両方において、過電流が生じていないと判定された場合、第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dには、ハイレベル電圧を有する第2イネーブル信号が入力される。
【0043】
第2コンパレータ52の出力端子52cと、コントローラ60の第2イネーブル信号出力端子60eとの少なくとも一方が、GNDと接続される場合、第2イネーブル信号線72の電圧は、ローレベル電圧となる。この場合、第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dには、ローレベル電圧を有する第2イネーブル信号が入力される。言い換えれば、第2保護回路50とコントローラ60との少なくとも一方において、過電流が生じたと判定された場合、第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dには、ローレベル電圧を有する第2イネーブル信号が入力される。
【0044】
本実施形態において、第1イネーブル信号を第1駆動回路10に伝達する第1イネーブル信号線71と、第2イネーブル信号を第2駆動回路20に伝達する第2イネーブル信号線72とは、互いに独立した配線である。「互いに独立した配線」とは、電気的に分離された一対の配線を意味する。より具体的には、回路基板上に電子部品が実装されていない状態で、回路基板上に設けられた第1イネーブル信号線71と第2イネーブル信号線72との間の抵抗値を測定する。このとき、10MΩ以上の抵抗値が測定されれば、第1イネーブル信号線71と第2イネーブル信号線72とは、電気的に分離された一対の配線である。
【0045】
続いて、
図2を参照しながら、第1駆動回路10及び第2駆動回路20の内部構成について詳細に説明する。
【0046】
図2に示すように、第1駆動回路10は、第1上アームスイッチ11と、第1下アームスイッチ12と、第1ゲート制御回路13と、を有する。第1ゲート制御回路13は、第1上アームスイッチ11及び第1下アームスイッチ12の通電期間を制御する回路である。
【0047】
本実施形態において第1上アームスイッチ11は、Nチャネル型MOS-FETである。第1上アームスイッチ11は、第1電源入力端子10bと第1出力端子10aとの間に接続される。第1上アームスイッチ11のドレイン端子は、第1電源入力端子10bと電気的に接続される。第1上アームスイッチ11のソース端子は、第1出力端子10a及び第1ゲート制御回路13と電気的に接続される。第1上アームスイッチ11のゲート端子は、第1ゲート制御回路13と電気的に接続される。なお、第1上アームスイッチ11は、Pチャネル型MOS-FET、またはトランジスタでもよい。
【0048】
本実施形態において第1下アームスイッチ12は、Nチャネル型MOS-FETである。第1下アームスイッチ12は、第1出力端子10aと第1GND端子10cとの間に接続される。第1下アームスイッチ12のドレイン端子は、第1出力端子10aと電気的に接続される。第1下アームスイッチ12のソース端子は、第1GND端子10c及び第1ゲート制御回路13と電気的に接続される。第1下アームスイッチ12のゲート端子は、第1ゲート制御回路13と電気的に接続される。なお、第1下アームスイッチ12は、MOS-FET、またはトランジスタでもよい。
【0049】
第1ゲート制御回路13は、第1イネーブル信号入力端子10dと電気的に接続され、且つ第1PWM信号入力端子10eと電気的に接続される。すなわち、第1ゲート制御回路13には、第1イネーブル信号と第1PWM信号とが入力される。第1ゲート制御回路13は、第1イネーブル信号及び第1PWM信号に基づいて、第1上アームスイッチ11のゲート-ソース間電圧である第1上アームゲート電圧と、第1下アームスイッチ12のゲート-ソース間電圧である第1下アームゲート電圧とを制御する。
【0050】
具体的には、第1ゲート制御回路13は、第1イネーブル信号がハイレベルであり、且つ第1PWM信号がハイレベルの場合、第1上アームゲート電圧をハイレベルに制御するとともに、第1下アームゲート電圧をローレベルに制御する。この場合、第1上アームスイッチ11はオン状態となり、第1下アームスイッチ12はオフ状態となる。また、第1ゲート制御回路13は、第1イネーブル信号がハイレベルであり、且つ第1PWM信号がローレベルの場合、第1上アームゲート電圧をローレベルに制御するとともに、第1下アームゲート電圧をハイレベルに制御する。この場合、第1上アームスイッチ11はオフ状態となり、第1下アームスイッチ12はオン状態となる。一方、第1ゲート制御回路13は、第1イネーブル信号がローレベルの場合、第1PWM信号のレベルに関係なく、第1上アームゲート電圧及び第1下アームゲート電圧の両方を強制的にローレベルに制御する。この場合、第1上アームスイッチ11及び第1下アームスイッチ12は、強制的にオフ状態となる。
【0051】
図2に示すように、第2駆動回路20は、第2上アームスイッチ21と、第2下アームスイッチ22と、第2ゲート制御回路23と、を有する。第2ゲート制御回路23は、第2上アームスイッチ21及び第2下アームスイッチ22の通電期間を制御する回路である。
【0052】
本実施形態において第2上アームスイッチ21は、Nチャネル型MOS-FETである。第2上アームスイッチ21は、第2電源入力端子20bと第2出力端子20aとの間に接続される。第2上アームスイッチ21のドレイン端子は、第2電源入力端子20bと電気的に接続される。第2上アームスイッチ21のソース端子は、第2出力端子20a及び第2ゲート制御回路23と電気的に接続される。第2上アームスイッチ21のゲート端子は、第2ゲート制御回路23と電気的に接続される。なお、第2上アームスイッチ21は、Pチャネル型MOS-FET、またはトランジスタでもよい。
【0053】
本実施形態において第2下アームスイッチ22は、Nチャネル型MOS-FETである。第2下アームスイッチ22は、第2出力端子20aと第2GND端子20cとの間に接続される。第2下アームスイッチ22のドレイン端子は、第2出力端子20aと電気的に接続される。第2下アームスイッチ22のソース端子は、第2GND端子20c及び第2ゲート制御回路23と電気的に接続される。第2下アームスイッチ22のゲート端子は、第2ゲート制御回路23と電気的に接続される。なお、第2下アームスイッチ22は、MOS-FET、またはトランジスタでもよい。
【0054】
第2ゲート制御回路23は、第2イネーブル信号入力端子20dと電気的に接続され、且つ第2PWM信号入力端子20eと電気的に接続される。すなわち、第2ゲート制御回路23には、第2イネーブル信号と第2PWM信号とが入力される。第2ゲート制御回路23は、第2イネーブル信号及び第2PWM信号に基づいて、第2上アームスイッチ21のゲート-ソース間電圧である第2上アームゲート電圧と、第2下アームスイッチ22のゲート-ソース間電圧である第2下アームゲート電圧とを制御する。
【0055】
具体的には、第2ゲート制御回路23は、第2イネーブル信号がハイレベルであり、且つ第2PWM信号がハイレベルの場合、第2上アームゲート電圧をハイレベルに制御するとともに、第2下アームゲート電圧をローレベルに制御する。この場合、第2上アームスイッチ21はオン状態となり、第2下アームスイッチ22はオフ状態となる。また、第2ゲート制御回路23は、第2イネーブル信号がハイレベルであり、且つ第2PWM信号がローレベルの場合、第2上アームゲート電圧をローレベルに制御するとともに、第2下アームゲート電圧をハイレベルに制御する。この場合、第2上アームスイッチ21はオフ状態となり、第2下アームスイッチ22はオン状態となる。一方、第2ゲート制御回路23は、第2イネーブル信号がローレベルの場合、第2PWM信号のレベルに関係なく、第2上アームゲート電圧及び第2下アームゲート電圧の両方を強制的にローレベルに制御する。この場合、第2上アームスイッチ21及び第2下アームスイッチ22は、強制的にオフ状態となる。
【0056】
上記のように、第1駆動回路10及び第2駆動回路20によってHブリッジ回路が構成される。以下では、第1駆動回路10及び第2駆動回路20によって構成されるHブリッジ回路の動作について説明する。
【0057】
まず、過電流が生じていない場合におけるHブリッジ回路の動作について説明する。
過電流が生じていない場合、電流検出回路30から出力される電流検出信号の電圧は、第1閾値電圧、第2閾値電圧、及び第3閾値電圧よりも低い。そのため、第1保護回路40とコントローラ60との両方において、過電流が生じていないと判定され、その結果、第1駆動回路10の第1イネーブル信号入力端子10dには、ハイレベル電圧を有する第1イネーブル信号が入力される。同様に、第2保護回路50とコントローラ60との両方において、過電流が生じていないと判定され、その結果、第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dには、ハイレベル電圧を有する第2イネーブル信号が入力される。単相直流モータ2は、以下で説明する正転モードと逆転モードとが交互に繰り返されることにより回転する。
【0058】
正転モードの期間において、第1駆動回路10の第1PWM信号入力端子10eには目標回転数に応じて設定されたデューティ比を有する第1PWM信号が入力され、第2駆動回路20の第2PWM信号入力端子20eにはローレベルの第2PWM信号が入力される。その結果、正転モードの期間において、第1上アームスイッチ11及び第1下アームスイッチ12は、第1PWM信号によってPWM駆動される。一方、正転モードの期間において、第2上アームスイッチ21はオフ状態となり、第2下アームスイッチ22はオン状態となる。
【0059】
例えば、単相直流モータ2の実回転数が目標回転数に対して低い回転数から近づく場合、コントローラ60は、目標回転数に対する実回転数の乖離が大きければ、第1PWM信号のハイレベル時間の変化率を大きくし、乖離が小さければ、第1PWM信号のハイレベル時間の変化率を小さくする。なお、実回転数が目標回転数に到達すると、コントローラ60は、第1PWM信号のハイレベル時間をほぼ一定に維持する。
【0060】
一方、単相直流モータ2の実回転数が目標回転数に対して高い回転数から近づく場合、コントローラ60は、実回転数が目標回転数に到達するまで、第1PWM信号のハイレベル時間をゼロか又は最小値にセットし、実回転数が目標回転数に到達すると、第1PWM信号のハイレベル時間をほぼ一定に維持する。なお、実回転数が目標回転数を下回ると、コントローラ60は、上で説明した実回転数が目標回転数に対して低い回転数から近づく場合の制御に遷移する。
【0061】
図3に示すように、正転モードの期間では、電源P1、第1上アームスイッチ11、コイル2a、第2下アームスイッチ22、電流検出回路30(シャント抵抗器31)、及びGNDの順で、コイル電流Icが流れる。正転モードの期間において、上記のように、第1上アームスイッチ11及び第1下アームスイッチ12がPWM駆動されることにより、コイル電流Icの電流値は、単相直流モータ2を目標回転数で回転させるのに必要な電流値となる。
【0062】
逆転モードの期間において、第2駆動回路20の第2PWM信号入力端子20eには目標回転数に応じて設定されたデューティ比を有する第2PWM信号が入力され、第1駆動回路10の第1PWM信号入力端子10eにはローレベルの第1PWM信号が入力される。その結果、逆転モードの期間において、第2上アームスイッチ21及び第2下アームスイッチ22は、第2PWM信号によってPWM駆動される。一方、逆転モードの期間において、第1上アームスイッチ11はオフ状態となり、第1下アームスイッチ12はオン状態となる。
【0063】
例えば、単相直流モータ2の実回転数が目標回転数に対して低い回転数から近づく場合、コントローラ60は、目標回転数に対する実回転数の乖離が大きければ、第2PWM信号のハイレベル時間の変化率を大きくし、乖離が小さければ、第2PWM信号のハイレベル時間の変化率を小さくする。なお、実回転数が目標回転数に到達すると、コントローラ60は、第2PWM信号のハイレベル時間をほぼ一定に維持する。
【0064】
一方、単相直流モータ2の実回転数が目標回転数に対して高い回転数から近づく場合、コントローラ60は、実回転数が目標回転数に到達するまで、第2PWM信号のハイレベル時間をゼロか又は最小値にセットし、実回転数が目標回転数に到達すると、第2PWM信号のハイレベル時間をほぼ一定に維持する。なお、実回転数が目標回転数を下回ると、コントローラ60は、上で説明した実回転数が目標回転数に対して低い回転数から近づく場合の制御に遷移する。
【0065】
図4に示すように、逆転モードの期間では、電源P1、第2上アームスイッチ21、コイル2a、第1下アームスイッチ12、電流検出回路30(シャント抵抗器31)、及びGNDの順で、コイル電流Icが流れる。逆転モードの期間において、上記のように、第2上アームスイッチ21及び第2下アームスイッチ22がPWM駆動されることにより、コイル電流Icの電流値は、単相直流モータ2を目標回転数で回転させるのに必要な電流値となる。
以上のような正転モードと逆転モードとが交互に繰り返されることにより、単相直流モータ2は目標回転数で回転する。
【0066】
次に、過電流が生じた場合におけるHブリッジ回路の動作について説明する。
過電流が生じた場合、電流検出回路30から出力される電流検出信号の電圧は、第1閾値電圧、第2閾値電圧、及び第3閾値電圧よりも高くなる。そのため、第1保護回路40とコントローラ60との少なくとも一方において、過電流が生じたと判定され、その結果、第1駆動回路10の第1イネーブル信号入力端子10dには、ローレベル電圧を有する第1イネーブル信号が入力される。同様に、第2保護回路50とコントローラ60との少なくとも一方において、過電流が生じたと判定され、その結果、第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dには、ローレベル電圧を有する第2イネーブル信号が入力される。
【0067】
ハイアクティブの第1イネーブル信号がローレベルになると、第1PWM信号に関係なく、第1上アームスイッチ11及び第1下アームスイッチ12の両方が強制的にオフ状態となる。同様に、ハイアクティブの第2イネーブル信号がローレベルになると、第2PWM信号に関係なく、第2上アームスイッチ21及び第2下アームスイッチ22の両方が強制的にオフ状態となる。
【0068】
上記のように、過電流が生じた場合、全てのアームスイッチが強制的にオフ状態となる。その結果、コイル2aにコイル電流が流れなくなる。
図5に示すように、コイル電流が流れなくなると、単相直流モータ2が発電機として動作し、Nチャネル型MOS-FETである第1上アームスイッチ11及び第2上アームスイッチ21のボディダイオードを介して、図示の経路に回生電流Irが流れる。回生電流Irによる回生ブレーキがかかることにより、単相直流モータ2の回転は停止する。
以上のように、過電流が生じた場合には、強制的に単相直流モータ2の回転を停止させることができる。
【0069】
例えば、第1駆動回路10の内部故障が原因で、第1イネーブル信号入力端子10dの電圧がハイレベルに固定された場合、すなわち第1イネーブル信号線71の電圧がハイレベル電圧に固定された場合を想定する。この場合、過電流が生じても、通常通り第1駆動回路10は正転モードと逆転モードとの動作を繰り返す。一方、本実施形態において、第1イネーブル信号線71と第2イネーブル信号線72とは、互いに独立した配線であるので、第2イネーブル信号線72は、第1イネーブル信号線71から電気的な影響を受けない。従って、第1イネーブル信号線71の電圧がハイレベル電圧に固定された状態で過電流が生じたとしても、第2駆動回路20の第2イネーブル信号入力端子20dには、正常にローレベル電圧を有する第2イネーブル信号が入力される。その結果、第2駆動回路20は、第1駆動回路10に関係なく、強制的にオフ状態となり、単相直流モータ2は停止する。
【0070】
以上のように、例えば第1駆動回路10の内部故障などが原因で第1イネーブル信号線71の電圧がハイレベル電圧に固定された場合であっても、過電流の発生時に第2駆動回路20に正常なローレベルの第2イネーブル信号を伝達できる。同様に、第2駆動回路20の内部故障などが原因で第2イネーブル信号線72の電圧がハイレベル電圧に固定された場合であっても、過電流の発生時に第1駆動回路10に正常なローレベルの第1イネーブル信号を伝達できる。従って、VDE規格によって要求される保護機能の冗長性が得られている。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のモータ駆動装置1は、第1駆動回路10と、第2駆動回路20と、電流検出回路30と、第1保護回路40と、第2保護回路50と、を備える。第1駆動回路10は、単相直流モータ2のコイル2aの一端と電源P1とを電気的に接続する第1上アームスイッチ11と、コイル2aの一端とGNDとを電気的に接続する第1下アームスイッチ12と、第1上アームスイッチ11及び第1下アームスイッチ12の通電期間を制御する回路と、を有する。第2駆動回路20は、コイル2aの他端と電源P1とを電気的に接続する第2上アームスイッチ21と、コイル2aの他端とGNDとを電気的に接続する第2下アームスイッチ22と、第2上アームスイッチ21及び第2下アームスイッチ22の通電期間を制御する回路と、を有する。電流検出回路30は、コイル2aに流れるコイル電流を検出し、コイル電流の検出結果を示す電流検出信号を出力する。第1保護回路40は、電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第1イネーブル信号を第1駆動回路10に出力する。第2保護回路20は、電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、判定結果を示す第2イネーブル信号を第2駆動回路20に出力する。
上記のモータ駆動装置1において、第1イネーブル信号を第1駆動回路10に伝達する第1イネーブル信号線71と、第2イネーブル信号を第2駆動回路20に伝達する第2イネーブル信号線72とは、互いに独立した配線である。
【0072】
VDE規格ではモータの保護機能を二重化(冗長化)することが要求されるが、仮に、この要求に対してマイコン等を使ったソフトウエア的な処理によって対応すると、コストが高く且つ評価期間が長いソフトプログラム評価を行うことが必要となる。これに対して、本実施形態では、VDE規格の要求に対してハードウエアである2つの保護回路で対応するため、ソフトプログラム評価が不要となる。その結果、VDE規格を満たすかどうかの評価を低コストで行うことができ、評価期間も短縮できる。
また、第1イネーブル信号線71と第2イネーブル信号線72とを独立した配線とすることにより、例えば、第1駆動回路10の内部故障によって第1イネーブル信号線71の電圧がハイレベル(アクティブ電位)に固定されてしまった場合であっても、第2イネーブル信号線72への影響を回避できる。その結果、過電流の発生時に第2駆動回路10に正常なローレベルの第2イネーブル信号を伝達でき、VDE規格によって要求される保護機能の冗長性が得られている。
【0073】
従って、本実施形態によれば、以下の2つの要件を満たすことが可能なモータ駆動装置1を提供できる。
(1)VDE規格を満たすかどうかの評価を低コスト且つ短期間で実施可能である。
(2)VDE規格で要求される保護機能の冗長性が損なわれることを回避可能である。
【0074】
本実施形態のモータ駆動装置1は、第1駆動回路10を制御するための第1PWM信号を第1駆動回路10に出力するとともに、第2駆動回路20を制御するための第2PWM信号を第2駆動回路20に出力するコントローラ60をさらに備える。コントローラ60は、第1イネーブル信号線71に電気的に接続される第1イネーブル信号出力端子60dと、第2イネーブル信号線72に電気的に接続される第2イネーブル信号出力端子60eと、を有する。
これにより、2つの保護回路に加えて、コントローラ60からも第1イネーブル信号を第1駆動回路10に出力し、且つ第2イネーブル信号を第2駆動回路20に出力できる。その結果、VDE規格で要求される保護機能の冗長性をより強化できる。
【0075】
本実施形態のモータ駆動装置1において、コントローラ60は、電流検出信号が入力される電流検出端子60cを有する。
コントローラ60に電流検出信号を入力することにより、コントローラ60によるソフトウエア的な処理によって過電流が生じたか否かを判定し、その判定結果を示す第1イネーブル信号及び第2イネーブル信号を、コントローラ60から第1駆動回路10及び第2駆動回路20に出力できる。その結果、特に過電流が生じた場合における保護機能の冗長性をより強化できる。
【0076】
本実施形態において、第1保護回路40は、第1閾値電圧を生成する第1抵抗分圧回路41と、電流検出信号の電圧と第1閾値電圧とを比較し、比較結果を示す信号を第1イネーブル信号として出力する第1コンパレータ42と、を有する。第2保護回路50は、第2閾値電圧を生成する第2抵抗分圧回路51と、電流検出信号の電圧と第2閾値電圧とを比較し、比較結果を示す信号を第2イネーブル信号として出力する第2コンパレータ52と、を有する。第1コンパレータ42の出力端子42cとコントローラ60の第1イネーブル信号出力端子60dとがワイヤードオア接続される。第2コンパレータ52の出力端子52cとコントローラ60の第2イネーブル信号出力端子60eとがワイヤードオア接続される。
これにより、簡単な回路構成で、保護回路とコントローラとの少なくとも一方からローレベル(非アクティブ電位)のイネーブル信号が出力された場合に、2つの駆動回路の少なくとも一方を停止状態にすることができる。
【0077】
本実施形態において、第1保護回路40は、第1コンパレータ42の出力端子42cとコントローラ60の第1イネーブル信号出力端子60dとの間に接続される第1ダイオード44をさらに有する。第2保護回路50は、第2コンパレータ52の出力端子52cとコントローラ60の第2イネーブル信号出力端子60eとの間に接続される第2ダイオード54をさらに有する。第1ダイオード44のアノード端子は第1イネーブル信号出力端子60dに接続され、第1ダイオード44のカソード端子は第1コンパレータ42の出力端子42cに接続される。第2ダイオード54のアノード端子は第2イネーブル信号出力端子60eに接続され、第2ダイオード54のカソード端子は第2コンパレータ52の出力端子52cに接続される。
このように第1ダイオード44を設けることにより、過電流が生じていない正常時において、第1保護回路40を、その後段に接続される回路から電気的に切り離すことができる。これにより、第1保護回路40を構成するアナログ部品から発生するノイズが、第1保護回路40の後段回路に伝搬することを防止できる。また、過電流が生じた異常時においては、コントローラから出力されるイネーブル信号よりも、保護回路(コンパレータ)から出力されるローレベルのイネーブル信号が優先的に駆動回路に伝達される。
なお、第1ダイオード44及び第2ダイオード54を必ずしも設けなくともよいが、その場合、第1保護回路40の後段回路にノイズが伝搬することを防止できるという効果は得られない。
【0078】
本実施形態において、第1ダイオード44及び第2ダイオード54は、それぞれショットキーバリアダイオードである。
第1ダイオード44及び第2ダイオード54としてショットキーバリアダイオードを用いることにより、コンパレータのオープンコレクタ型の出力端子がGNDに接続されたときに、イネーブル信号の電圧(コンパレータの出力電圧)をグランドレベルに近い値にまで落とすことができ、駆動回路を確実に停止状態に切り替えることができる。
【0079】
〔変形例〕
本発明は上記実施形態に限定されず、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【0080】
例えば、上記実施形態において、第1駆動回路10と第2駆動回路20とが、それぞれ別々のドライバICによって実現されている場合を説明した。これに対して、第1駆動回路10と第2駆動回路20とが、1つのドライバICによって実現されてもよい。
【0081】
また、上記実施形態において、コントローラ60は、所定のプログラムに従って、電流検出端子60cを介して入力される電流検出信号に基づいて過電流が生じたか否かを判定し、その判定結果に応じて第1イネーブル信号出力端子60dの状態と、第2イネーブル信号出力端子60eの状態とを制御する。この他、例えば、単相直流モータ2の温度を検出可能な温度センサの出力信号をコントローラ60に入力させてもよい。この場合、コントローラ60は、所定のプログラムに従って、温度センサの出力信号に基づいて過昇温が生じたか否かを判定し、その判定結果に応じて第1イネーブル信号出力端子60dの状態と、第2イネーブル信号出力端子60eの状態とを制御する。
【0082】
また、上記実施形態では、第1ダイオード44及び第2ダイオード54としてショットキーバリアダイオードを用いる場合を説明したが、第1ダイオード44及び第2ダイオード54として他のダイオードを使用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…モータ駆動装置、2…単相直流モータ、2a…コイル、10…第1駆動回路、11…第1上アームスイッチ、12…第1下アームスイッチ、20…第2駆動回路、21…第2上アームスイッチ、22…第2下アームスイッチ、30…電流検出回路、31…シャント抵抗器、40…第1保護回路、41…第1抵抗分圧回路、42…第1コンパレータ、44…第1ダイオード、50…第2保護回路、51…第2抵抗分圧回路、52…第2コンパレータ、54…第2ダイオード、60…コントローラ、71…第1イネーブル信号線、72…第2イネーブル信号線