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特開2023-58793水生動物を飼育している水槽中の水の浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058793
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】水生動物を飼育している水槽中の水の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
A01K63/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168511
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】501481492
【氏名又は名称】株式会社ゲノム創薬研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関水 和久
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104AA03
2B104AA08
2B104AA17
2B104AA22
2B104AA38
2B104CA01
2B104CA03
2B104CA04
2B104EA01
2B104EF01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便であり、ランニングコストがかからず、化学物質の使用が必須でないため水生動物に悪影響を与え得ない水槽中の水の浄化方法を提供する。
【解決手段】水生動物Aを飼育している水槽11中の水の浄化方法であって、該水生動物が飼育されている該水槽中の水の一部を抜き出して、該一部の水を加熱及び/又は超音波処理して溶存アンモニアを除去し、該溶存アンモニアが除去された水を、再度、該水生動物が飼育されている該水槽中に戻すことを特徴とする水の浄化方法;及び;該水の浄化方法に使用される水生動物の飼育装置であって、水生動物Aを飼育する水槽と、該水槽中の水を抜き出す抜出ポンプ13と、ヒーター12a及び/又は超音波発信機12bを具備した水処理装置12と、加熱されて溶存アンモニアが除去された水を送液する送液ポンプ14と、強制冷却又は自然冷却をする冷却装置16とを有する水生動物の飼育装置01。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生動物を飼育している水槽中の水の浄化方法であって、
該水生動物が飼育されている該水槽中の水の一部を抜き出して、該一部の水を加熱処理及び/又は超音波処理して溶存アンモニアを除去し、
該溶存アンモニアが除去された水を、再度、該水生動物が飼育されている該水槽中に戻すことを特徴とする水の浄化方法。
【請求項2】
前記溶存アンモニアが除去された水を、強制冷却又は自然冷却し、再度、該水槽中に戻す請求項1に記載の水の浄化方法。
【請求項3】
前記水槽中の水の抜き出し、該抜き出した水を加熱処理及び/又は超音波処理することによる該水中の溶存アンモニアの除去、及び、該溶存アンモニアが除去された水の該水槽中への戻しを連続的に行う請求項1又は請求項2に記載の水の浄化方法。
【請求項4】
前記溶存アンモニアが、前記水槽中で飼育されている水性動物が排泄したアンモニア、又は、前記水槽中で増殖した細菌が排泄したアンモニアである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の水の浄化方法。
【請求項5】
前記加熱処理を60℃以上100℃以下で行う請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の水の浄化方法。
【請求項6】
ペット飼育用、養殖用、又は、水族館での飼育用に使用される請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の水の浄化方法。
【請求項7】
前記水槽中において前記溶存アンモニアが化学反応して生成する含窒素有機化合物を減少若しくは無毒化させる請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の水の浄化方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の水の浄化方法に使用される水生動物の飼育装置であって、
水生動物を飼育する水槽と、該水槽中の水を抜き出す抜出ポンプと、ヒーター及び/又は超音波発信機を具備した水処理装置と、加熱処理されて溶存アンモニアが除去された水を送液する送液ポンプと、強制冷却又は自然冷却をする冷却装置とを有することを特徴とする水生動物の飼育装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の水の浄化方法に使用される水生動物の飼育装置に用いられるためのものであることを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生動物を飼育している水槽中の水の浄化方法に関し、更に詳しくは、特定の方法で該水中の溶存アンモニアを除去する水の浄化方法、及び、該水の浄化方法に使用される水生動物の飼育装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚類を飼育するための水から、そこに溶存しているアンモニアを除去する技術は幾つか知られている。
それらアンモニア除去方法としては、該水を多孔質や吸着性物質に接触又は通過させる方法、該水中に菌や化学物質を投入する方法、オゾンを使用する方法、又は、該水に通電する方法が知られている。
【0003】
上記「水を多孔質や吸着性物質に接触又は通過させる方法」として、特許文献1には、該水をセラミックに接触又はセラミック濾過した後、アンモニアを亜硝酸・硝酸塩に変換する方法が記載されている。
また、特許文献2には、通電によりアンモニウムイオンを分解し、次いで活性炭処理する方法が記載されている。
また、特許文献5には、オゾン処理後に、特定の粒径の多孔質である麦飯石で処理する方法が記載されている。
【0004】
上記「水中に菌を投入する方法」として、特許文献3には、硝化菌でアンモニアやアンモニア性窒素成分の濃度を減少させる方法が記載されている。
また、特許文献8には、脱窒菌を含んだ活性汚泥を使用して、水槽内の水の腐敗臭をなくす方法が記載されている。
【0005】
上記「水中に化学物質を投入する方法」として、特許文献4には、次亜塩素酸等の活性塩素種を投入し、アンモニアの濃度を測定して水を調整する方法が記載されている。
また、特許文献8には、水を処理する活性汚泥に水素供与体を供給し、閉塞場を作らずに腐敗臭を発生させない方法が記載されている。
また、特許文献9には硫黄、炭酸塩及び界面活性剤を含む脱窒用資材を用い、循環流路を有する脱窒処理装置が記載されている。
【0006】
特許文献5、6、7には、上記「オゾンを使用する方法」が記載され、養殖水を浄化する方法が記載されている。
【0007】
上記「水に通電する方法」として、特許文献2には、水中に陰極と陽極を配して通電し、アンモニウムイオンを分解する方法が記載されている。
【0008】
しかしながら、上記「水を多孔質や吸着性物質に接触又は通過させる方法」は、アンモニアやアンモニア由来物が付着又は吸着した「多孔質や吸着性物質」を交換しなくてはならず面倒であり、コスト的にも不利であった。
【0009】
また、「水中に菌や化学物質を投入する方法」では、水生動物を飼育している水の中に異物が混入又は溶解することとなり、該水生動物に影響を与えていた。また、該菌や該化学物質は、追加投入することがあり、その際、水中の濃度を調整することが非常に面倒であった。更に、該菌や該化学物質の使用によってコストアップとなっていた。
【0010】
また、オゾンを使用する方法では、オゾンは有害なので取り扱いが難しく、特に家庭での使用は不可能であった。
また、通電する方法は、危険である上にアンモニア除去効果に乏しかった。
更に、オゾン処理や通電では、水生動物に当然悪影響を与えるものであった。
【0011】
このような背景にあって、簡便であり、資材の交換等のランニングコストがかからず、化学物質のような「水生動物に影響を与えるもの」を使用しない「水生動物を飼育している水槽中の水の浄化方法」が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10-178966号公報
【特許文献2】特開2001-104957号公報
【特許文献3】特開2002-159244号公報
【特許文献4】特開2004-160349号公報
【特許文献5】特開2015-073458号公報
【特許文献6】特開2017-063670号公報
【特許文献7】特開2017-176046号公報
【特許文献8】特開2019-180292号公報
【特許文献9】特開2021-079321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、簡便であり、ランニングコストがかからず、化学物質の使用が必須でないため水生動物に悪影響を与え得ない「水生動物を飼育している水槽中の水の浄化方法」を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、水槽中の水生動物や細菌が排泄するアンモニア(アンモニウムイオンを含む)が、水中で化学反応をして含窒素有機化合物を生成させ、該含窒素有機化合物が水生動物に悪影響を与えていることを見出した。
そして、該悪影響を取り除くには、溶存アンモニアを除去することが極めて効果的であることを見出した。更に、溶存アンモニアの除去として、加熱処理及び/又は超音波処理が、連続処理が可能であり、装置も簡易ですみ、その上、溶存アンモニアの除去にとって極めて効果的であることを見出して本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、水生動物を飼育している水槽中の水の浄化方法であって、
該水生動物が飼育されている該水槽中の水の一部を抜き出して、該一部の水を加熱処理及び/又は超音波処理して溶存アンモニアを除去し、
該溶存アンモニアが除去された水を、再度、該水生動物が飼育されている該水槽中に戻すことを特徴とする水の浄化方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、前記水槽中の水の抜き出し、該抜き出した水を加熱処理及び/又は超音波処理することによる該水中の溶存アンモニアの除去、及び、該溶存アンモニアが除去された水の該水槽中への戻しを連続的に行う前記水の浄化方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、ペット飼育用、養殖用、又は、水族館での飼育用に使用される前記の水の浄化方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、前記水槽中において前記溶存アンモニアが化学反応して生成する含窒素有機化合物を減少若しくは無毒化させる前記の水の浄化方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、前記の水の浄化方法に使用される水生動物の飼育装置であって、
水生動物を飼育する水槽と、該水槽中の水を抜き出す抜出ポンプと、ヒーター及び/又は超音波発信機を具備した水処理装置と、加熱処理されて溶存アンモニアが除去された水を送液する送液ポンプと、強制冷却又は自然冷却をする冷却装置とを有することを特徴とする水生動物の飼育装置を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、前記水の浄化方法に使用される水生動物の飼育装置に用いられるためのものであることを特徴とする水処理装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水生動物の病気や死亡と言った問題点を極めて簡便に解消することができる。
本発明において、水中の溶存アンモニアが化学変化をして発生する含窒素有機化合物が、該水生動物に対して毒として作用する(該水生動物に悪影響を及ぼしている)ことを見出した(実施例参照)。
従って、本発明によって、該含窒素有機化合物の原料(出発物質)であるアンモニア(アンモニウムイオンを含む)を除去することによって、元凶・根源を断つことができ、該水中で飼育されている水生動物を病気や死亡等から、極めて効果的に救うことができる(実施例参照)。
以下、アンモニア又はアンモニウムイオンとして水中に存在するものを、単に「溶存アンモニア」と略記する。また、「加熱処理及び/又は超音波処理」を、単に「加熱等」と略記することがある。
【0022】
そして更に、「水中の溶存アンモニアを除去するためには、たまたま、加熱処理及び/又は超音波処理が極めて有効であったこと」により本発明はなされた。すなわち、「アンモニアの除去が水生動物の健康のために極めて効果的であること」と「溶存アンモニアの極めて有効な簡易な除去方法が存在したこと」の組み合わせによって本発明はなされた。
本発明によれば、極めて簡易的に、しかも効果的に、水生動物に対して毒として作用する「該溶存アンモニアが化学変化をして発生する含窒素有機化合物」の水槽内での生成を抑制することができる。
【0023】
本発明では、水槽中の水を全て同時に加熱処理等する(予め飼育水を調製しておく)訳ではないので、飼育水の加熱殺菌とは全く異なる。実際、本発明のように、連続処理や一部を抜き出して処理する方法では、水槽内の水全体の細菌数は減少しない(実施例参照)。水槽中に残存している細菌が常に増殖しているからである。
従って、本発明をするに当たって、飼育水の加熱殺菌や滅菌処理に関する従来の技術は、全く参考にならない。
【0024】
本発明の実施には、活性炭、ゼオライト、麦飯石、フィルター等と言った吸着性物質、担持体、多孔質物体、濾材等の消耗品の使用が必要ではないので、それらの交換にかかる手間を省略することができる。また、該消耗品にかかる費用が不要であり、運転費に関して大きなコストダウンになる。
【0025】
また、本発明に使用する装置は、通常の(最低限の)飼育装置に対して、水の抜出又は送液に使用するポンプと、ヒーター及び/又は超音波発信機を具備した水処理装置とが、少なくとも追加されるだけでよいので、装置的にも極めて簡易となる。なお、該ポンプは、水に空気(酸素)を含有させるためのポンプと共用することもできるので、主たる追加装置としては、上記水処理装置のみでもよいと言うことになる。
【0026】
本発明では、水生動物が実際に飼育されている水槽中の水(の一部)を連続して抜き出しつつ浄化(加熱処理及び/又は超音波処理)して元の水槽に戻す。すなわち、飼育中に、連続処理や装置の自動化が可能である。
従って、常時又は長時間の連続処理をすれば、単位時間当たりでは極めて少量の水の処理を行えばよいことになり、装置的に簡易となる上に運転費用も抑制される。
【0027】
本発明によれば、化学物質の使用が必須でないため水生動物に悪影響を与え得ない。しかも、該化学物質の配合し過ぎ等のおそれがなく、また、水生動物を飼育している水槽中の水の分析管理の必要もない。
また、水処理装置を通過する際の水の昇温によって、水槽中に藻類が繁殖することによる緑色の濁りも抑えられる。
【0028】
淡水に生息する水生動物は、魚、エビ、貝等を問わず、アンモニアを排出する。また、淡水であっても海水であっても、水生動物を飼育している水中には細菌(バクテリア)が多く増殖し、該細菌(バクテリア)もアンモニアを排出する。
本発明は、魚、エビ、貝等の、淡水又は海水に生息する水生動物に好適に適用でき、更に、ウニ、ナマコ、ホヤ等の海水に生息する水生動物にも好適に適用できる。
【0029】
従って、本発明は、上記した、装置的に簡易であること、消耗品が出ないこと、運転コストも掛からないこと等と相まって、ペット飼育用、養殖用、水族館での飼育用等に極めて好適である。
また、本発明によれば、上記したように、水生動物に対する悪影響が除去されると共に、水槽の内壁の汚れ、水の白濁(濁り)、藻類の繁殖等も抑制され、該水生動物の鑑賞に関しても好結果を及ぼす。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1における、実験開始3週間後の水槽中の水の濁りについて、本発明の水の浄化方法の有無による相違を示す写真である。
図2】実験開始3週間後の水に含有されるアンモニアの濃度について、本発明の水の浄化方法の有無による相違を示す写真である。
図3】実験開始1週間後の水に含まれる細菌数及び細菌の種類について、本発明の水の浄化方法の有無による相違を示す写真である。
図4】実験開始2週間後の水の中に生成した「紫外線領域に吸収のある化合物」を分光分析で確認した写真である。
図5】実験開始3週間後の水の中に生成した「紫外線領域に吸収のある化合物」を薄層クロマトグラフィーで確認した写真である。 (a)紫外線照射で確認した (b)ニンヒドリン水溶液の噴霧で確認した
図6】実験開始2週間後の水の中に生成した化合物がカイコに対して毒性を示すことを確認した写真である。
図7】本発明の「水生動物の飼育装置」の一例を示す概念図である。
図8】本発明の「水生動物の飼育装置」の一例を示す概念図である。
図9】本発明の「水生動物の飼育装置」の一例を示す概念図である。
図10】実施例2において、家庭用の実際サイズの水槽を用い、80℃で加熱処理をしたときの、水槽の水中の溶存アンモニア(mg/L)の経時(日数)変化を示すグラフである。
図11】水槽内の水の加熱処理の有無による、ヤマトヌマエビの状態の差を示す写真である。 (a)加熱処理あり (b)加熱処理なし
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0032】
本発明の水の浄化方法は、水生動物を飼育している水槽中の水の浄化方法であって、
該水生動物が飼育されている該水槽中の水の一部を抜き出して、該一部の水を加熱処理及び/又は超音波処理して溶存アンモニアを除去し、
該溶存アンモニアが除去された水を、再度、該水生動物が飼育されている該水槽中に戻すことを特徴とする。
【0033】
<水生動物>
上記水生動物Aとしては、淡水に生息する動物すなわち淡水中で飼育する動物、又は、海水に生息する動物すなわち海水中で飼育する動物、又は、汽水に生息する動物すなわち汽水中で飼育する動物が挙げられる。本願発明における「水」とは、淡水、海水、汽水が含まれる。
【0034】
上記淡水に生息する動物としては、観賞用、食用を問わず限定はされないが、例えば、熱帯魚、金魚、メダカ、アロワナ等の鑑賞魚;鯉、イワナ、鱒、ヤマメ、ドジョウ等の食用魚;カメ等の爬虫類;カエル、サンショウウオ等の両生類;ヤマトヌマエビ、ミナミヌマエビ、レッドファイアーシュリンプ、レッドルリーシュリンプ等のエビ;タニシ、イシマキガイ、カノコガイ等の貝;カニ;等が挙げられる。
また、上記海水に生息する動物としては、限定はされないが、例えば、観賞用又は食用の、魚、エビ、貝、カニ、ヒトデ、ウニ、ナマコ、ホヤ、ヤドカリ等が挙げられる。
【0035】
魚に限らず淡水に生息する動物からはアンモニアが排泄される。また、淡水中でも海水中でも、水中の細菌からアンモニアが排泄される。
本発明によれば、淡水に限らず海水中からも、加熱等によってアンモニアを除去することができる。また、アンモニウム塩からも加熱等によって、アンモニアとして除去することができる。
【0036】
従って、本発明の好適な態様は、溶存アンモニアが、前記水槽中で飼育されている水性動物が排泄したアンモニア、又は、前記水槽中で増殖した細菌が排泄したアンモニアである前記の水の浄化方法である。
【0037】
上記水槽11としては、具体的には、例えば、家庭用やペット飼育用等の水槽;水族館、動物園等の展示用や飼育用の水槽;養殖用・食用の水生動物Aを飼育するための生簀、池若しくは水槽;等が挙げられる。
すなわち、本発明の好適な態様は、ペット飼育用、養殖用、又は、水族館での飼育用に使用される前記の水の浄化方法である。
【0038】
<水槽中の水の一部を抜き出して処理、連続処理>
本発明においては、水生動物Aが飼育されている水槽11中の水Wの一部を抜き出して、該一部の水Wを加熱処理及び/又は超音波処理して溶存アンモニアを除去してから、該水生動物Aが飼育されている水槽11中に戻すことを特徴とする。
実施例に示したように、水槽11中の水Wの一部を抜き出して加熱等をして溶存アンモニアを除去してから、該一部の水Wを水槽11中に戻す行為によって、更に該行為を繰り返すことによって、水生動物Aを移動・分離させなくても、水生動物Aを実際に飼育中の水Wから溶存アンモニアを除去できる(実施例参照)。
【0039】
実施例に示したように、上記行為によって溶存アンモニアを好適に除去できたので、飼育水Wの連続処理や処理の自動化が可能であることは明らかである。
すなわち、本発明は、前記水槽11中の水の抜き出し、該抜き出した水Wを加熱処理及び/又は超音波処理することによる該水W中の溶存アンモニアの除去、及び、該溶存アンモニアが除去された水Wの該水槽11中への戻しを連続的に行う前記の水の浄化方法でもある。
連続処理や自動化に好ましい態様の例を、図7、8、9に示す。また、「水生動物の飼育装置」の説明として後述する。
【0040】
<加熱処理及び/又は超音波処理>
本発明においては、前記加熱を60℃以上100℃以下で行うことが好ましい。この温度範囲であれば、好適に溶存アンモニアを除去できる。上記「100℃」には、沸騰(煮沸)が含まれる。
水中のアンモニアは、該水Wの昇温によって簡単に系外に出る(水中から除去できる)。
該加熱は、70℃以上98℃以下がより好ましく、75℃以上96℃以下が更に好ましく80℃以上94℃以下が特に好ましい。
該温度の下限が低過ぎると、アンモニアの除去が遅くなる場合があり、一方、該温度の上限が高過ぎると、水の蒸発が問題になる場合、電力の無駄になる場合等がある。水の過度の蒸発を避けることは、該水Wが海水の場合は特に好ましい。
沸騰(煮沸)することは本発明に含まれるが、水Wの蒸発や電力の無駄等の点から、沸騰させないことが好ましい。
【0041】
例えば、常温(室温)で(加熱処理をしないで)、超音波処理のみを行ってもアンモニアを除去できる。本発明は、水槽11中の水Wを加熱処理及び/又は超音波処理して溶存アンモニアを除去する。
加熱処理又は超音波処理することが必須であるが、装置と工程の簡略化やアンモニアの効率的除去等のために、加熱処理及び超音波処理することが好ましく、加熱処理のみすることが特に好ましい。
加熱処理及び超音波処理する場合には、両者を別々に行うことができるし、又は、両者を同時に行うこともできる。
【0042】
<溶存アンモニア濃度>
加熱等された直後の水中の溶存アンモニア(一部の処理された後の水中のアンモニア)は、5mg/L以下が好ましく、1mg/L以下がより好ましく、0.01mg/L以上0.5mg/L以下が特に好ましい。
また、一部を抜き出して処理したり、連続で処理したりする場合、抜き出したり戻されたりして循環し定常的になっている水槽11内の水中のアンモニアは、15mg/L以下が好ましく、10mg/L以下がより好ましく、0.01mg/L以上5mg/L以下が特に好ましい。
【0043】
溶存アンモニア濃度が高過ぎると、水生動物が死んだり病気になったり、水槽11内の飼育水Wが濁ったりする場合がある。
一方、溶存アンモニア濃度を低くし過ぎようとすると、処理が無駄であって処理にコストや過剰設備が必要になる場合がある。
【0044】
<強制冷却又は自然冷却>
本発明は、前記溶存アンモニアが除去された水Wを、強制冷却又は自然冷却し、再度、該水槽11中に戻すことが好ましい。
加熱処理をした水Wは、冷却してから水槽11内に戻すが、水槽11内に残っている水Wの温度とほぼ同等にしてから、該水槽11内に戻すことが好ましい。
該冷却は、強制冷却又は自然冷却で行われる。該冷却は冷却装置16で行うことが好ましい。該冷却が自然冷却のときは、専用の冷却装置16を用いてもよいし、配管やリザーバータンク17等が冷却装置16を兼ねていてもよい。すなわち、配管内やリザーバータンク17内等を通過又は滞在(貯水)している際に自然冷却させてもよい。
リザーバータンク17には、水位センサー12cや水温センサー12dが具備されていることも好ましい。
【0045】
<含窒素有機化合物>
本発明によって、溶存アンモニアが水槽11中で化学反応をして生成する(化学変化して生じる)物質が、水中の水生動物に悪影響を及ぼしたり、飼育水Wを濁らしたりすることを見出した(実施例参照)。
該物質は、紫外部に吸収を有しているので、アンモニアではなく有機物であり、また、該有機物は、ニンヒドリン反応で着色するので、アミン化合物等の含窒素有機化合物である(実施例参照)。
【0046】
従って、本発明は、溶存アンモニアが水槽11中で化学反応して生成する含窒素有機化合物を、無毒化若しくは減少させることを特徴とする前記の水の浄化方法でもある。
加熱等の処理がなされた水中では、その中で飼育されている水生動物Aは健康である(実施例参照)。
また、本発明は、前記処理(加熱等)によって溶存アンモニアを除去することで、アンモニアが水槽11中で化学反応して生成する含窒素有機化合物を減少させること特徴とする前記の水の浄化方法でもある。
【0047】
<水生動物の飼育装置>
本発明に使用される装置は、前記の「水の浄化方法」に使用される水生動物Aの飼育装置01であって、水生動物Aを飼育する水槽11と、ヒーター12a及び/又は超音波発信機12bを具備した水処理装置12とを有することが好ましい。
更に、ポンプ、冷却装置16を加えて、本発明は、前記の「水の浄化方法」に使用される水生動物Aの飼育装置01であって、水生動物Aを飼育する水槽11と、該水槽11中の水Wを抜き出す抜出ポンプ13と、ヒーター12a及び/又は超音波発信機12bを具備した水処理装置12と、加熱処理されて溶存アンモニアが除去された水Wを送液する送液ポンプ14と、強制冷却又は自然冷却をする冷却装置16とを有することを特徴とする水生動物Aの飼育装置01でもある。
【0048】
図7、8、9に、本発明の「水生動物の飼育装置」の例を示す。
図7における水処理装置12は、ヒーター12aと超音波発信機12bとを具備したものであり、超音波を照射しながらヒーター12aで加熱処理するものである。
図8及び図9に示したように、該水処理装置12が、ヒーター12aと加熱処理用の水Wを溜める加熱槽を有するものであってもよい。超音波発信機12bを併用する場合、該超音波発信機12bは、該加熱槽の底等に、溜めた加熱水に浸漬されるように具備されていることも好ましい。
図9では、投げ込みヒーターが使用され、加熱槽中に投げ込まれている。
【0049】
ヒーター12aの種類は、特に限定はなく、セラミックヒーター、鋳込みヒーター、シーズヒーター、IHヒーター(電磁誘導加熱器)、カートリッジヒーター、ニクロム線等の電気抵抗線ヒーター、(透明)ガラスヒーター、ホットプレート、パネルヒーター、バンドヒーター等(一部重複している場合あり)が挙げられる。
【0050】
図8においては、加熱槽の上部に排気口12eがあり、水位センサー12cと水温センサー12dが具備されている。水位センサー12cと水温センサー12dは、制御コンピュータに接続され、それぞれ水位と水温が調整されるようになっている。
【0051】
かかる水処理装置12の、ヒーター12aの種類;加熱槽、超音波発信機12b等の要否(有無)や種類は、ペット飼育用(家庭用)、養殖用(商用)、水族館での飼育用等の用途・規模等を勘案して決められる。
【0052】
ポンプの種類は、特に限定はなく、通常のポンプが使用できる。
また、ポンプの個数は、1個以上であれば特に限定はなく、水槽11から抜き出すための抜出ポンプ13、水処理装置12から送液する送液ポンプ14、冷却された水Wを水槽11に戻すための戻しポンプ15等が挙げられる。このうち、幾つかは省略することや兼用することもできる。
図9においては、抜出ポンプ13と送液ポンプ14として、チューブポンプ(ペリスタポンプ(登録商標))が使用されている。
かかるポンプの要否(個数)や種類は、用途・規模等を勘案して決められる。
【0053】
冷却装置16としては、特に限定はなく、例えば、図8に示したような冷却塔、図9に示したようなラジエーター等が挙げられる。冷却方法は、強制冷却でも自然冷却でもよい。また、水冷方式でも空冷方式でもよい。また、配管内を通過している際の自然冷却を利用してもよい。
かかる冷却装置16や冷却方法は、用途・規模等を勘案して決められる。
【0054】
<水生動物の飼育装置用の水処理装置>
本発明は、上記「水生動物の飼育装置」に使用されるための(ヒーター12a等が具備された)水処理装置12でもある。言い換えれば、本発明は、「上記の『水の浄化方法』に使用される水生動物の飼育装置」に用いられるためのものであることを特徴とする水処理装置12でもある。
【0055】
既に所有する汎用の「水生動物の飼育装置」に、本発明の上記水処理装置12を加えて、水生動物Aの飼育装置01として使用することができる。すなわち、本発明の「水生動物の飼育装置」用として販売等されている本発明の水処理装置12のみを入手して、既に所有している飼育装置に組み合わせて使用することもできる。
【実施例0056】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の具体的範囲に限定されるものではない。以下、「%」と言う記載は、それが質量に関するものについては「質量%」を意味する。
【0057】
実施例1
<実験>
500mLのビーカー(水槽11)に500mLの脱イオン水Wを入れ、その中で体長約3cmのワキンを1匹飼育した。水温は室温(25℃)とした。
加熱処理をする方の処理群、及び、何も処理をしない対照群として、それぞれ1匹のワキンが入った6個のビーカー(水槽11)を用意した。処理群と対照群、それぞれ、n=6で評価した。
毎日、1匹当たり25mgの餌(株式会社キョーリン製「キョーリン金魚のえさ」)を与えた。
【0058】
処理群のビーカー(水槽11)の飼育水Wの中から、半量(250mL)を毎日抜き出し、電子レンジを用いて100℃で3分間加熱した。その後、自然放置で室温(25℃)にまで冷却して、元のワキンが1匹飼育されている250mLの飼育水Wの中に戻した。
対照群については、餌を与えるだけで、何もしなかった。
【0059】
<水の濁り>
実験開始後1週間で、対照群で水の濁りが目視で認められたのに対し、処理群では透明性が保たれた。
実験開始後3週間~5週間で、対照群の水の濁りは更に強くなったのに対し、処理群では透明性が常に保たれた。図1に3週間後の処理群と対照群の写真を示す。
また、実験開始後5週間で、対照群の水中には藻類が繁殖して緑色の濁りが強くなったが、処理群では無色透明性が保たれた。
【0060】
<溶存アンモニアの簡易分析>
溶存アンモニアを、市販の試験紙を用いて簡易的に分析した。
実験開始3週間後の、処理群と対照群のアンモニア濃度を示す写真を図2に示す。
【0061】
実験開始2週間後には、対照群でアンモニア含有量の増大が見られた。一方、処理群では、実験中、常にアンモニア含有量の増大が見られなかった。
【0062】
<水中の細菌の種類と細菌数>
実験開始1週間後に、エーゼで水槽11中の水Wをサンプリングして寒天培地上に塗布し、30℃にて24時間培養し、出現したコロニーの形状及び数から、水中の細菌の種類と細菌数を、処理群と対照群で比較した。
結果は、図3に示す通り、細菌の種類と細菌数について、処理群と対照群で顕著な差異は見られなかった。
【0063】
<水中での生成物質>
<<紫外線吸収スペクトル>>
処理群と対照群の飼育水Wについて、常法に従い紫外線吸収スペクトルを測定した。
実験開始2週間後の紫外線吸収スペクトルを図4に示す。
処理群の飼育水Wの紫外線吸収が、対照群の飼育水Wの紫外線吸収に比べ低くなっていた。
【0064】
<<薄層クラマトグラフィー、ニンヒドリン反応>>
実験開始2週間後に、処理群と対照群の飼育水240mLを、それぞれ、凍結乾燥し、ブタノール:酢酸:水=4:1:2の展開溶媒を用い、薄層クラマトグラフィー(Merck社製、TLCシリカゲル60F254プレートを使用)で展開した。
検出用UV照射をした後の写真を図5(a)に示し、ニンヒドリン水溶液を吹き付けた後の写真を図5(b)に示す。なお、図5(a)(b)中、「mix」は、処理群と対照群のサンプルを混合したサンプルである。
【0065】
有機物質が検出されたが、該有機物質は、対照群に比べ処理群で少なかった。加熱処理によって、紫外線を吸収する有機物が減少していることが分かった。
また、該有機物質は、ニンヒドリン陽性であることから(図5(b)参照)、アミン化合物(アミノ基を有する化合物)等の含窒素有機化合物であることが分かった。
【0066】
この結果は、ワキンの飼育水Wの一部を100℃で加熱処理することにより、含窒素有機化合物の発生量を抑えることができることを示唆している。
加熱処理により、「金魚から排出されたアンモニア」が飼育水W中から除去され、水槽11中の水Wに存在している微生物による有機物質の発生が抑えられたと考えられる。
言い換えると、処理群では、一部抜き出し水Wの加熱処理によってビーカー(水槽11)中の溶存アンモニアの含有量が常時減っていたので、該アンモニアを原料として生成する有機物質(含窒素有機化合物)の量が減少したと考えられる。
【0067】
<<溶存アンモニアから生成した有機物質の毒性>>
実験に使用したカイコは、以下のように準備した。
カイコの卵(愛媛蚕種株式会社より販売)を購入し、研究室内で5令幼虫まで飼育したものを使用した。カイコの飼育は27℃で行い、5令1日目から2日間は人工餌を与えたカイコ(5令3日目)を実験に使用した。実験に使用したカイコは、約2gであった。
【0068】
実験開始2週間後の飼育水240mLを、処理群と対照群で、それぞれ取り出して凍結乾燥した。該凍結乾燥したものを、ミリQ水(「MILLI-Q」は登録商標)5mLに溶解し、上記カイコ3匹の血液内に、それぞれ50μL注射した。
【0069】
注射後、2日で、対照群を注射したカイコは全て死亡したが、処理群を注射したカイコは全て生存していた(図6参照)。
ビーカー(水槽11)中の溶存アンモニアから生成した有機物質(含窒素有機化合物)には毒性があることが分かった。
【0070】
<ワキンの変化>
実験期間中、処理群(n=6)の6匹と、対照群(n=6)の5匹は生存していたが、対照群(n=6)の1匹が死亡した。
【0071】
実施例2
<連続運転での加熱温度80℃での結果、及び、水槽中の溶存アンモニアの定量分析>
図9に示した「水生動物の飼育装置01」を構築し、12日間連続運転をして、水槽水W中のアンモニア濃度を後記の方法で測定した。
水面が42cm×27cmの水槽11に9Lの水Wを入れ、水処理装置12にも9Lの水Wを入れ、水処理装置12の中の水Wの温度を常に80℃に保った。
なお、この水槽11の大きさと水の体積は、家庭で使用するときの実際のサイズ(大きさ)にほぼ等しい。
【0072】
この水槽11の中にワキン(2g/匹)を9匹入れた。ポンプ13による水Wの循環速度は、1L/hrとした。ワキン1匹あたり0.15gの餌を3回に分けて与えた。市販の活性炭を含む浄化装置を付け、室温(25℃)にて12日間飼育した。
これを、「加熱(80℃)システム付き」とした。
【0073】
同じサイズの加熱処理機能を持たない「ワキンを入れた水槽(水18L)」を用意し、「Control(No treatment)」とした。
【0074】
<<溶存アンモニアの定量分析>>
溶存アンモニアは、株式会社セラジャパン製の「NH4/NH3テスト」を用いて定量した。
試薬として富士フイルム社製のアンモニア水(28%)を標準液として用いた。
反応後、600nmにおける吸光度を測定し、検量線を作成し、試料中の(水槽中の水中の)アンモニア濃度を決定した。
【0075】
<<結果>>
結果を図10に示す。「Control(No treatment)」では、溶存アンモニア濃度が経時的に増加したが、「加熱(80℃)システム付き」では、溶存アンモニアの濃度の増加が見られなかった。すなわち、実機において、水槽の水Wの一部を抜き出して連続的に加熱処理した場合、水槽11中の溶存アンモニアの濃度上昇が抑えられた。
【0076】
また、上記の試験期間中において、ワキンの死亡は認められなかった。
【0077】
実施例3
<連続処理(連続運転)用の飼育装置、処理の自動化>
図7に概略を示す「水生動物の飼育装置01」を用いた。具体的には、図8及び図9に示す「水生動物の飼育装置01」を用いて、連続処理(運転)を行った。
水Wは淡水(脱イオン水)を用いた。水槽11内にはワキンを入れた。
【0078】
加熱処理は、80℃で行った。
対照として加熱処理を行わないときは、ヒーター12aをOFFにして、同様に水Wを循環させることだけを行った。
【0079】
12日後、加熱処理を行わなかった飼育水(対照群の水)は白く濁ったが、加熱処理を行った飼育水(処理群の水)には濁りがなかった。
【0080】
実施例4
実施例3で加熱処理を行った飼育水(処理群の水)中に、ヤマトヌマエビ(平均体重0.2g)10匹を入れたところ、24時間後に全ての個体は生存し、元気に動き回るのが観察された(図11(a)参照)。
これに対して、加熱処理を行わなかった飼育水(対照群の水)中のヤマトヌマエビは、24時間後に、10匹全てが、体色が赤色に変化し、死亡しているのが確認された(図11(b)参照)。
【0081】
この結果は、ワキンの飼育により生じたアンモニアがヤマトヌマエビを殺傷したが、加熱処理によりアンモニアを除いた場合には、ヤマトヌマエビが生きる環境ができたことを意味している。
【0082】
実施例5
<海水での飼育>
溶存アンモニアの加熱処理による除去については、淡水も海水も同様であるから、海水でも淡水と同様の結果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、装置や処理方法が簡便であり、ランニングコストがかからず、化学物質の使用が必要ないため水生動物に悪影響を与えない。
そのため、本発明は、家庭観賞用、ペット飼育用等の資材や装置の開発製造分野;水族館、動物園等の教育・エンターテイメント・アミューズメント分野;食用の水生動物の飼育等の食品製造分野・養殖分野;水の浄化分野;等に広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0084】
01 飼育装置
11 水層
12 水処理装置
12a ヒーター
12b 超音波発信機
12c 水位センサー
12d 水温センサー
12e 排気口
13 抜出ポンプ
14 送液ポンプ
15 戻しポンプ
16 冷却装置
17 リザーバータンク
A 水生動物
W 水、飼育水

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11