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特開2023-58852ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法
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  • 特開-ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058852
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230419BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 607
B41J2/16 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168613
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】三根 亨
(72)【発明者】
【氏名】宗像 優
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF93
2C057AG29
2C057AG45
2C057AP23
2C057AP24
2C057AP25
2C057AP53
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】アクチュエータプレートと中間プレートとの接合面積を確保した上で、ノズル孔と連通孔との位置ずれの許容代を確保することができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るヘッドチップにおいて、アクチュエータプレートと、アクチュエータプレートに向かい合って設けられたノズルプレートと、アクチュエータプレート及びノズルプレートの間に設けられた中間プレートと、を備えている。連通孔は、ノズル孔に向けて開口する下側開口部を有する溝部と、吐出チャネルに向けて開口する上側開口部を有する貫通部と、を備えている。上側開口部におけるX方向の寸法は、上側開口部におけるX方向の寸法よりも大きく、上側開口部におけるX方向の寸法は、吐出チャネルのうちチャネル開口面上で開口するチャネル開口部のX方向の寸法以下である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる噴射チャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数配列されたアクチュエータプレートと、
液体を噴出する複数の噴射孔を有し、前記アクチュエータプレートのうち前記噴射チャネルが開口するチャネル開口面に向かい合って設けられた噴射孔プレートと、
前記噴射チャネル及び前記噴射孔間を各別に連通させる連通孔を有し、前記アクチュエータプレート及び前記噴射孔プレートの間に設けられた中間プレートと、を備え、
前記連通孔は、
前記噴射孔に向けて開口する第1開口部を有し、前記噴射孔プレートから離れる向きに窪む溝部と、
前記噴射チャネルに向けて開口する第2開口部を有し、少なくとも前記溝部を含む領域で前記溝部と連通していることによって前記中間プレートを貫通する貫通部と、を備え、
前記第1開口部における前記第2方向の寸法は、前記第2開口部における前記第2方向の寸法よりも大きく、
前記第2開口部における前記第2方向の寸法は、前記噴射チャネルのうち前記チャネル開口面上で開口するチャネル開口部の前記第2方向の寸法以下であるヘッドチップ。
【請求項2】
前記中間プレートの厚さ方向から見て前記第2方向に交差する方向を第3方向とすると、
前記貫通部における前記第3方向の寸法は、前記チャネル開口部における前記第3方向の寸法よりも小さい請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記チャネル開口面は、前記アクチュエータプレートの厚さ方向を向き、
前記貫通部は、前記溝部に対して前記第1方向の両側に突出している請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記チャネル開口面は、前記アクチュエータプレートの厚さ方向を向き、
前記貫通部は、前記溝部に対して前記第1方向の片側に突出している請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記中間プレートの厚さ方向において、前記第1開口部から前記溝部の底面までの寸法は、前記溝部の底面から前記第2開口部までの寸法よりも大きい請求項1から請求項4の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
前記溝部の底面のうち、前記第2方向で前記貫通部寄りに位置する部分には、前記底面から膨出する膨出部が形成されている請求項1から請求項5の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のヘッドチップを備えている液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。
【請求項9】
第1方向に延びる噴射チャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数配列されたアクチュエータプレートと、
液体を噴出する複数の噴射孔を有し、前記アクチュエータプレートのうち前記噴射チャネルが開口するチャネル開口面に向かい合って設けられた噴射孔プレートと、
前記噴射チャネル及び前記噴射孔間を各別に連通させる連通孔を有し、前記アクチュエータプレート及び前記噴射孔プレートの間に設けられた中間プレートと、を備えたヘッドチップの製造方法であって、
前記中間プレートに前記連通孔を形成する連通孔形成工程と、
前記中間プレートに対して前記噴射孔プレートを積層する噴射孔プレート積層工程と、を備え、
前記連通孔形成工程は、
前記噴射孔に向けて開口する第1開口部を有し、前記噴射孔プレートに対して離れる向きに窪ませることで、前記中間プレートに溝部を形成する溝部形成工程と、
前記噴射チャネルに向けて開口する第2開口部を有し、少なくとも前記溝部を含む領域で前記中間プレートを貫通させることで、前記中間プレートに貫通部を形成する貫通部形成工程と、を備え、
前記溝部形成工程では、前記第1開口部における前記第2方向の寸法を、前記第2開口部における前記第2方向の寸法よりも大きく設定し、
前記貫通部形成工程では、前記第2開口部における前記第2方向の寸法を、前記噴射チャネルのうち前記チャネル開口面上で開口するチャネル開口部の前記第2方向の寸法以下に設定し、
前記噴射孔プレート積層工程は、前記第1開口部と前記噴射孔とが連通するように、前記中間プレートに対して前記噴射孔プレートを積層するヘッドチップの製造方法。
【請求項10】
前記アクチュエータプレートの前記チャネル開口面上に前記中間プレートを積層する中間プレート積層工程を備え、
前記溝部形成工程は、前記中間プレート積層工程の前に行う請求項9に記載のヘッドチップの製造方法。
【請求項11】
前記アクチュエータプレートの前記チャネル開口面上に前記中間プレートを積層する中間プレート積層工程を備え、
前記溝部形成工程及び前記貫通部形成工程は、前記中間プレート積層工程の後に行う請求項9に記載のヘッドチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに搭載されるヘッドチップは、複数のチャネルを有するアクチュエータプレートと、アクチュエータプレートに接合されたノズルプレートと、を備えている。ノズルプレートには、複数のチャネルに各別に連通する複数のノズル孔が形成されている。
ヘッドチップでは、チャネルの容積を変化させることで、チャネル内のインクがノズル孔を通じて吐出される。
【0003】
近年では、チャネルの微細化や狭ピッチ化に伴い、アクチュエータプレート(チャネル)とノズルプレート(ノズル孔)との位置ずれの許容代が小さくなっている。例えばアクチュエータプレートに対するノズルプレートの接合位置がチャネルの配列方向にずれると、吐出特性の低下やインクのリーク等に繋がる可能性がある。
【0004】
下記特許文献1には、アクチュエータプレート及びノズルプレートの間に中間プレートを配置する構成が開示されている。中間プレートには、チャネル及びノズル孔の双方に連通する連通孔が形成されている。連通孔は、チャネルの配列方向においてチャネル及びノズル孔よりも大きく形成されている。この構成によれば、連通孔を通じてチャネルとノズル孔とを連通させることで、チャネルとノズル孔とを直接連通させる場合に比べ、チャネルとノズル孔との位置ずれの許容代を大きくできると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-42979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中間プレートを採用する場合には、中間プレートに連通孔を形成した後に中間プレートをアクチュエータプレートに接合する方法(第1方法)と、アクチュエータプレートに中間プレートを接合した後に連通孔を形成する方法(第2方法)と、が考えられる。
第1方法を採用した場合には、中間プレートをアクチュエータプレートに接合する際に、連通孔とチャネルとの位置合わせに高い精度が要求される。要求される位置精度を軽減するために、連通孔を大きくすると、中間プレートとアクチュエータプレートとの接合面積を確保することが難しい。接合面積の低下は、中間プレートの剥離やインクのリーク等を引き起こす要因となる。
【0007】
第2方法を採用した場合には、中間プレートのうちチャネルと重なり合う部分を、チャネルよりも大きな寸法で貫通させる必要がある。そのため、連通孔として中間プレートを貫通させる際に、アクチュエータプレートにおける中間プレートとの接合面まで加工される可能性がある。接合面が加工されると、中間プレートの剥離やインクのリーク等を引き起こす要因となる。
【0008】
本開示は、アクチュエータプレートと中間プレートとの接合面積を確保した上で、ノズル孔と連通孔との位置ずれの許容代を確保することができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係るヘッドチップは、第1方向に延びる噴射チャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数配列されたアクチュエータプレートと、液体を噴出する複数の噴射孔を有し、前記アクチュエータプレートのうち前記噴射チャネルが開口するチャネル開口面に向かい合って設けられた噴射孔プレートと、前記噴射チャネル及び前記噴射孔間を各別に連通させる連通孔を有し、前記アクチュエータプレート及び前記噴射孔プレートの間に設けられた中間プレートと、を備え、前記連通孔は、前記噴射孔に向けて開口する第1開口部を有し、前記噴射孔プレートから離れる向きに窪む溝部と、前記噴射チャネルに向けて開口する第2開口部を有し、少なくとも前記溝部を含む領域で前記溝部と連通していることによって前記中間プレートを貫通する貫通部と、を備え、前記第1開口部における前記第2方向の寸法は、前記第2開口部における前記第2方向の寸法よりも大きく、前記第2開口部における前記第2方向の寸法は、前記噴射チャネルのうち前記チャネル開口面上で開口するチャネル開口部の前記第2方向の寸法以下である。
【0010】
本態様によれば、第2開口部における第2方向の寸法が、チャネル開口部の第2方向の寸法以下であるため、中間プレートのうちアクチュエータプレートとの接合面積を確保し易い。その結果、中間プレートとアクチュエータプレートとの接合強度を確保し、中間プレートの剥がれや中間プレートとアクチュエータプレートとの間を通じた液体のリーク等を抑制できる。
また、中間プレートとアクチュエータプレートとの接合後に、後加工として貫通部を形成した場合であっても、貫通部の加工時にアクチュエータプレートにダメージが及ぶことを抑制できる。
しかも、第1開口部における第2方向の寸法が、第2開口部における第2方向の寸法よりも大きいため、噴射孔と噴射チャネルとを直接連通させる場合に比べ、中間プレートと噴射孔プレートとの接合時において、溝部と噴射孔との位置合わせが行いやすい。すなわち、溝部における第2方向の寸法内で、溝部と噴射孔との位置ずれを許容できる。その結果、噴射孔及び噴射チャネル間の位置決め精度を確保した上で、噴射チャネルの微細化や狭ピッチ化を図ることができる。
その結果、アクチュエータプレートと中間プレートとの接合面積を確保して、ヘッドチップの耐久性を向上させた上で、噴射孔と連通孔との位置ずれの許容代を確保して、噴射チャネルの微細化や狭ピッチ化を図ることができる。
【0011】
(2)上記(1)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記中間プレートの厚さ方向から見て前記第2方向に交差する方向を第3方向とすると、前記貫通部における前記第3方向の寸法は、前記チャネル開口部における前記第3方向の寸法よりも小さいことが好ましい。
本態様によれば、貫通部における第3方向の寸法が、チャネル開口部の第3方向の寸法よりも短いため、中間プレートとアクチュエータプレートとの接合後に、後加工として貫通部を形成した場合であっても、貫通部の加工時にアクチュエータプレートのチャネル開口面にダメージが及ぶことを抑制できる。
また、貫通部の形成領域を小さくできるので、連通孔の加工時間を短縮することができる。その結果、ヘッドチップの製造効率を向上させることができる。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記チャネル開口面は、前記アクチュエータプレートの厚さ方向を向き、前記貫通部は、前記溝部に対して前記第1方向の両側に突出していることが好ましい。
本態様によれば、溝部における第1方向の寸法が貫通部よりも小さくなるので、溝部の加工時間を短縮できる。その結果、製造効率を向上させることができる。
しかも、貫通部における第1方向の寸法が溝部よりも広くなるので、噴射チャネル内を第1方向に沿って液体が流れる際に、貫通部を噴射チャネルとともにインク流路として機能させることができる。これにより、インク流路の流路断面積を確保し易くなり、圧力損失を軽減できる。
【0013】
(4)上記(1)又は(2)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記チャネル開口面は、前記アクチュエータプレートの厚さ方向を向き、前記貫通部は、前記溝部に対して前記第1方向の片側に突出していることが好ましい。
本態様によれば、溝部における第1方向の寸法が貫通部よりも小さくなるので、溝部の加工時間を短縮できる。その結果、製造効率を向上させることができる。
しかも、貫通部における第1方向の寸法が溝部よりも広くなるので、噴射チャネル内を第1方向に沿って液体が流れる際に、貫通部を噴射チャネルとともにインク流路として機能させることができる。これにより、インク流路の流路断面積を確保し易くなり、圧力損失を軽減できる。
特に、溝部に対して第1方向の両側のうち、圧力が高くなり易い方向に溝部を突出させることで、第1方向の片側での圧力損失を軽減した上で、貫通部の加工時間を可能な限り短縮できる。
【0014】
(5)上記(1)から(4)何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記中間プレートの厚さ方向において、前記第1開口部から前記溝部の底面までの寸法は、前記溝部の底面から前記第2開口部までの寸法よりも大きいことが好ましい。
本態様によれば、溝部の深さを確保できるので、中間プレートと噴射孔プレートとの接合時において、溝部のうち貫通部に対して第2方向の外側に位置する空間を接着剤収容部として利用できる。そのため、貫通部に接着剤が流れ込むことを抑制し、接着剤が噴出性能に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0015】
(6)上記(1)から(5)何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記溝部の底面のうち、前記第2方向で前記貫通部寄りに位置する部分には、前記底面から膨出する膨出部が形成されていることが好ましい。
本態様によれば、中間プレートと噴射孔プレートとの接合時において、溝部のうち膨出部よりも第2方向の外側に位置する空間を接着剤収容部として利用できる。この場合、貫通部に接着剤が流れ込むことを膨出部によって規制できるので、接着剤が噴出性能に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0016】
(7)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、上記(1)から(6)の何れかの態様に係るヘッドチップを備えている。
本態様によれば、上記態様に係るヘッドチップを備えているため、高品質で信頼性に優れた液体噴射ヘッドを提供できる。
【0017】
(8)本開示の一態様に係る液体噴射記録装置は、上記(7)の態様に係る液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、高品質で信頼性に優れた液体噴射記録装置を提供できる。
【0018】
(9)本開示の一態様に係るヘッドチップの製造方法は、第1方向に延びる噴射チャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数配列されたアクチュエータプレートと、液体を噴出する複数の噴射孔を有し、前記アクチュエータプレートのうち前記噴射チャネルが開口するチャネル開口面に向かい合って設けられた噴射孔プレートと、前記噴射チャネル及び前記噴射孔間を各別に連通させる連通孔を有し、前記アクチュエータプレート及び前記噴射孔プレートの間に設けられた中間プレートと、を備えたヘッドチップの製造方法であって、前記中間プレートに前記連通孔を形成する連通孔形成工程と、前記中間プレートに対して前記噴射孔プレートを積層する噴射孔プレート積層工程と、を備え、前記連通孔形成工程は、前記噴射孔に向けて開口する第1開口部を有し、前記噴射孔プレートに対して離れる向きに窪ませることで、前記中間プレートに溝部を形成する溝部形成工程と、前記噴射チャネルに向けて開口する第2開口部を有し、少なくとも前記溝部を含む領域で前記中間プレートを貫通させることで、前記中間プレートに貫通部を形成する貫通部形成工程と、を備え、前記溝部形成工程では、前記第1開口部における前記第2方向の寸法を、前記第2開口部における前記第2方向の寸法よりも大きく設定し、前記貫通部形成工程では、前記第2開口部における前記第2方向の寸法を、前記噴射チャネルのうち前記チャネル開口面上で開口するチャネル開口部の前記第2方向の寸法以下に設定し、前記噴射孔プレート積層工程は、前記第1開口部と前記噴射孔とが連通するように、前記中間プレートに対して前記噴射孔プレートを積層する。
【0019】
(10)上記(9)の態様に係るヘッドチップの製造方法において、前記アクチュエータプレートの前記チャネル開口面上に前記中間プレートを積層する中間プレート積層工程を備え、前記溝部形成工程は、前記中間プレート積層工程の前に行うことが好ましい。
本態様によれば、中間プレートに溝部を予め形成しておくことで、中間プレートの積層後、ヘッドチップが完成するまでの加工時間を短縮できる。
【0020】
(11)上記(9)の態様に係るヘッドチップの製造方法において、前記アクチュエータプレートの前記チャネル開口面上に前記中間プレートを積層する中間プレート積層工程を備え、前記溝部形成工程及び前記貫通部形成工程は、前記中間プレート積層工程の後に行うことが好ましい。
本態様によれば、アクチュエータプレートに中間プレートが積層された状態で、溝部及び貫通部を形成することで、噴射チャネルと連通孔との位置精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一態様によれば、アクチュエータプレートと中間プレートとの接合面積を確保して、ヘッドチップの耐久性を向上させた上で、噴射孔と連通孔との位置ずれの許容代を確保して、噴射チャネルの微細化や狭ピッチ化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
図2】第1実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図である。
図3】第1実施形態に係るノズルプレートを取り外した状態において、ヘッドチップを-Z側から見た斜視図である。
図4】第1実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
図5】第1実施形態に係るアクチュエータプレートの底面図である。
図6図5のVI-VI線に相当する断面図である。
図7図5のVII-VII線に相当する断面図である。
図8図4のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9】第1実施形態に係るノズルプレートを取り外した状態でのヘッドチップの拡大底面図である。
図10】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するフローチャートである。
図11】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図であって、図8に対応する断面図である。
図12】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図であって、図8に対応する断面図である。
図13】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図であって、図8に対応する断面図である。
図14】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図であって、図8に対応する断面図である。
図15】第1実施形態の変形例に係るヘッドチップの製造方法を説明するフローチャートである。
図16】第2実施形態に係るヘッドチップにおいて、図9に対応する底面図である。
図17】第3実施形態に係るヘッドチップにおいて、図9に対応する底面図である。
図18】第4実施形態に係るヘッドチップにおいて、図9に対応する底面図である。
図19】第5実施形態に係るヘッドチップにおいて、図8に対応する断面図である。
図20】第6実施形態に係るヘッドチップを示す断面図である。
図21】第6実施形態に係るヘッドチップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0024】
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備えている。
【0025】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向は走査機構7の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。本明細書において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0026】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インクタンク4には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク4に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。
【0027】
図2は、インクジェットヘッド5及びインク循環機構6の概略構成図である。
図1図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。
【0028】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧となっている。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧となっている。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0029】
図1に示すように、走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構7は、Y方向に延びるガイドレール28と、ガイドレール28に移動可能に支持されたキャリッジ29と、を備えている。
【0030】
<インクジェットヘッド5>
インクジェットヘッド5は、キャリッジ29に搭載されている。図示の例では、複数のインクジェットヘッド5が、一つのキャリッジ29にY方向に並んで搭載されている。インクジェットヘッド5は、ヘッドチップ50(図3参照)と、インク循環機構6及びヘッドチップ50間を接続するインク供給部(不図示)と、ヘッドチップ50に駆動電圧を印加する制御部(不図示)と、を備えている。
【0031】
<ヘッドチップ50>
図3は、ノズルプレート51を取り外した状態において、ヘッドチップ50を-Z側から見た斜視図である。図4は、ヘッドチップ50の分解斜視図である。
図3図4に示すヘッドチップ50は、インクタンク4との間でインクを循環させるとともに、後述する吐出チャネル75における延在方向(Y方向)の中央部からインクを吐出する、いわゆる循環式サイドシュートタイプのヘッドチップ50である。ヘッドチップ50は、ノズルプレート51(図4参照)と、中間プレート52と、アクチュエータプレート53と、カバープレート54と、を備えている。ヘッドチップ50は、ノズルプレート51、中間プレート52、アクチュエータプレート53及びカバープレート54が、この順番にZ方向に積層された構成である。以下の説明では、Z方向のうち、ノズルプレート51からカバープレート54に向かう方向(+Z側)を上側とし、カバープレート54からノズルプレート51に向かう方向(-Z側)を下側として説明する場合がある。
【0032】
アクチュエータプレート53は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されている。アクチュエータプレート53は、例えば分極方向がZ方向で異なる2枚の圧電板を積層してなる、いわゆるシェブロン基板である。但し、アクチュエータプレート53は、分極方向がZ方向の全域で一方向な、いわゆるモノポール基板であってもよい。
【0033】
図5は、アクチュエータプレート53の底面図である。
図4図5に示すように、アクチュエータプレート53には、複数(例えば、2列)のチャネル列61,62が形成されている。本実施形態において、チャネル列61,62は、第1チャネル列61及び第2チャネル列62である。各チャネル列61,62は、X方向に延びるとともに、Y方向に間隔をあけて配列されている。
【0034】
以下では、チャネル列61,62の構成について、第1チャネル列61を例にして説明する。
第1チャネル列61は、インクが充填される吐出チャネル(噴射チャネル)75と、インクが充填されない非吐出チャネル(非噴射チャネル)76と、を有している。各チャネル75,76は、Z方向から見た平面視において、それぞれY方向(第1方向、第3方向)に直線状に延びるとともに、X方向(第2方向)に間隔をあけて交互に並んでいる。アクチュエータプレート53のうち、吐出チャネル75及び非吐出チャネル76間に位置する部分は、吐出チャネル75及び非吐出チャネル76間をX方向で仕切る駆動壁70(図4参照)を構成している。なお、本実施形態では、チャネル延在方向がY方向に一致する構成について説明するが、チャネル延在方向がY方向に交差していてもよい。
【0035】
図6は、図5のVI-VI線に相当する断面図である。
図6に示すように、吐出チャネル75は、X方向から見た側面視において、下方に向けて凸の円弧状に形成されている。吐出チャネル75は、例えば円板状のダイサーをアクチュエータプレート53の上方(+Z側)から進入させることで形成される。具体的に、吐出チャネル75は、+Y側端部に位置する第1切り上がり部75aと、-Y側端部に位置する第2切り上がり部75bと、各切り上がり部75a,75b間に位置する吐出側貫通部75cと、を有している。
【0036】
各切り上がり部75a,75bは、X方向から見て曲率半径が一様な円弧状である。各切り上がり部75a,75bは、Y方向において吐出側貫通部75cから離れるに従いZ方向の深さが漸次浅くなっている。
吐出側貫通部75cは、吐出チャネル75におけるY方向の中央部で、アクチュエータプレート53をZ方向に貫通している。したがって、吐出チャネル75は、アクチュエータプレート53の上面上において吐出チャネル75の全体(切り上がり部75a,75b及び吐出側貫通部75c)が開口する上側開口部と、アクチュエータプレート53の下面(チャネル開口面)上において吐出側貫通部75cのみが開口する下側開口部(チャネル開口部)と、を有している。
【0037】
図7は、図5のVII-VII線に相当する断面図である。
図7に示すように、非吐出チャネル76は、駆動壁70を間に挟んで吐出チャネル75とX方向で隣り合っている。非吐出チャネル76は、例えば円板状のダイサーをアクチュエータプレート53の上方から進入させることで形成される。非吐出チャネル76は、非吐出側貫通部76aと、切り上がり部76bと、を備えている。
非吐出側貫通部76aは、アクチュエータプレート53をZ方向に貫通している。すなわち、非吐出側貫通部76aは、Z方向における溝深さが一様に形成されている。非吐出側貫通部76aは、非吐出チャネル76のうち+Y側端部以外の部分を構成している。非吐出側貫通部76aは、アクチュエータプレート53のうち-Y側を向く端面上に形成された端面開口部を通じてヘッドチップ50の外部に開放されている。
切り上がり部76bは、非吐出チャネル76のうち+Y側端部を構成している。切り上がり部76bは、X方向から見て曲率半径が一様な円弧状である。切り上がり部76bは、Y方向において非吐出側貫通部76aから離れるに従いZ方向の深さが漸次浅くなっている。
【0038】
図6図7に示すように、非吐出チャネル76(非吐出側貫通部76a)のY方向の寸法は、吐出チャネル75よりも大きくなっている。具体的に、非吐出側貫通部76aの+Y側端部は吐出チャネル75(吐出側貫通部75c)よりも+Y側に位置する第1突出部77を構成している。非吐出側貫通部76aの-Y側端部は吐出チャネル75(吐出側貫通部75c)よりも-Y側に位置する第2突出部78を構成している。
【0039】
図5に示すように、第2チャネル列62は、第1チャネル列61と同様に吐出チャネル(噴射チャネル)75及び非吐出チャネル(非噴射チャネル)76がX方向に交互に並んだ構成である。具体的に、第2チャネル列62の吐出チャネル75及び非吐出チャネル76は、第1チャネル列61の吐出チャネル75及び非吐出チャネル76の配列ピッチに対して半ピッチずれて配列されている。したがって、本実施形態のインクジェットヘッド5では、第1チャネル列61及び第2チャネル列62の吐出チャネル75同士、並びに第1チャネル列61及び第2チャネル列62の非吐出チャネル76同士が千鳥状(互い違い)に配置されている。すなわち、隣り合うチャネル列61,62間において、吐出チャネル75及び非吐出チャネル76同士がY方向で向かい合っている。但し、各チャネル列61,62間において、吐出チャネル75同士及び非吐出チャネル76同士の配列ピッチは、適宜変更が可能である。例えば、各チャネル列61,62間において、吐出チャネル75同士及び非吐出チャネル76同士がY方向で向かい合って配置されていてもよい。
【0040】
各チャネル列61,62において、吐出チャネル75は、XZ平面に対して面対称に形成されている。各チャネル列61,62において、非吐出チャネル76は、XZ平面に対して面対称に形成されている。各チャネル75,76において、それぞれの切り上がり部76b同士は、X方向から見て少なくとも一部が互いに重なり合っている。但し、各チャネル75,76の切り上がり部76b同士は、X方向から見て重なり合わなくてもよい。
【0041】
アクチュエータプレート53のうち、第1チャネル列61の吐出チャネル75(吐出側貫通部75c)に対して-Y側(第2チャネル列62とは反対側)に位置する部分は、第1尾部81を構成している。
アクチュエータプレート53のうち、第2チャネル列62の吐出チャネル75に対して+Y側(第1チャネル列61とは反対側)に位置する部分は、第2尾部86を構成している。
【0042】
図8は、図4のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図8に示すように、アクチュエータプレート53の駆動壁70のうち、各吐出チャネル75に面する内側面(吐出チャネル75の内面のうち、X方向で向かい合う面)には、共通電極95がそれぞれ形成されている。共通電極95は、Y方向における長さが吐出側貫通部75cと同等(アクチュエータプレート53の下面における吐出チャネル75の開口長と同等)とされている。共通電極95は、吐出側貫通部75cの内側面においてZ方向の全域に亘って形成されている。
【0043】
図5に示すように、アクチュエータプレート53の下面には、複数の共通端子96が形成されている。共通端子96は、Y方向に沿って互いに平行に延在する帯状とされている。各共通端子96は、対応する吐出チャネル75の開口縁において一対の共通電極95にそれぞれ接続されている。各共通端子96は、対応する尾部81,86の下面上でそれぞれ終端している。
【0044】
図8に示すように、アクチュエータプレート53の駆動壁70のうち、各非吐出チャネル76に面する内側面(非吐出チャネル76のうち、X方向で向かい合う面)には、個別電極97が形成されている。個別電極97は、Y方向の長さが非吐出側貫通部76aと同等とされている。個別電極97は、非吐出側貫通部76aの内側面において、Z方向の全域に亘って形成されている。
【0045】
図5に示すように、尾部81,86の下面において、共通端子96よりも外側に位置する部分には、個別端子98が形成されている。個別端子98は、X方向に延びる帯状とされている。個別端子98は、吐出チャネル75を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル76の開口縁において、吐出チャネル75を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極97同士を接続している。なお、尾部81,86において、共通端子96と個別端子98との間に位置する部分には、区画溝99が形成されている。区画溝99は、尾部81,86において、X方向に延びている。区画溝99は、共通端子96と個別端子98とを分離している。
【0046】
図8に示すように、吐出チャネル75の内面には、第1保護膜110が形成されている。第1保護膜110は、吐出チャネル75の内面全体に亘って形成されている。第1保護膜110は、共通電極95を覆っている。第1保護膜110は、例えば共通電極95とインクとの接触を抑制する。なお、第1保護膜110は、吐出チャネル75の内側面において、少なくとも共通電極95を覆っていればよい。
【0047】
非吐出チャネル76の内面には、第2保護膜111が形成されている。第2保護膜111は、非吐出チャネル76の内面全体に亘って形成されている。第2保護膜111は、個別電極97を覆っている。第2保護膜111は、例えば個別電極97とインクとの接触等を抑制する。なお、第2保護膜111は、非吐出チャネル76の内側面において、少なくとも個別電極97を覆っていればよい。
【0048】
保護膜110,111は、絶縁性を有する材料として、例えばパラキシリレン系樹脂材料(例えば、パリレン(登録商標))等の有機絶縁材料を含んでいる。保護膜110,111は、酸化タンタル(Ta2O5)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、酸化シリコン(SiO2)又はダイヤモンドライクカーボン(Diamond-like carbon)等により構成されていてもよく、これらの少なくともいずれか一つを含んでいてもよい。
【0049】
図6に示すように、第1尾部81の下面には、第1フレキシブルプリント基板100が圧着されている。第1フレキシブルプリント基板100は、第1尾部81の下面において、第1チャネル列61に対応する共通端子96と個別端子98に接続されている。第1フレキシブルプリント基板100は、アクチュエータプレート53の外側を通って上方に引き出されている。
【0050】
第2尾部86の下面には、第2フレキシブルプリント基板101が圧着されている。第2フレキシブルプリント基板101は、第2尾部86の下面において、第2チャネル列62に対応する共通端子96と個別端子98に接続されている。第2フレキシブルプリント基板101は、アクチュエータプレート53の外側を通じて上方に引き出されている。
【0051】
<カバープレート54>
図3図4に示すように、カバープレート54は、各チャネル列61,62を閉塞するようにアクチュエータプレート53の上面に接合されている。カバープレート54において、各チャネル列61,62と対応する位置には、入口共通インク室120及び出口共通インク室121がそれぞれ形成されている。
入口共通インク室120は、例えば第1チャネル列61の+Y側端部と平面視で重なる位置に形成されている。入口共通インク室120は、例えば第1チャネル列61を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート54の上面上で開口している。
出口共通インク室121は、例えば第1チャネル列61の-Y側端部と平面視で重なる位置に形成されている。出口共通インク室121は、第1チャネル列61を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート54の上面上で開口している。
【0052】
入口共通インク室120において、第1チャネル列61の吐出チャネル75(第1切り上がり部75a)と平面視で重なる位置には、入口スリット125が形成されている。入口スリット125は、各吐出チャネル75と、入口共通インク室120内と、の間を各別に連通している。
出口共通インク室121において、第1チャネル列61の吐出チャネル75(第2切り上がり部75b)と平面視で重なる位置には、出口スリット126が形成されている。出口スリット126は、各吐出チャネル75と、出口共通インク室121内と、の間を各別に連通している。したがって、入口スリット125及び出口スリット126は、それぞれ各吐出チャネル75に連通する一方、非吐出チャネル76には連通していない。
【0053】
<中間プレート52>
中間プレート52は、各チャネル列61,62を閉塞するようにアクチュエータプレート53の下面に接着されている。中間プレート52は、アクチュエータプレート53と同様にPZT等の圧電材料により形成されている。中間プレート52は、Z方向での厚さがアクチュエータプレート53よりも薄い。中間プレート52は、Y方向の寸法がアクチュエータプレート53よりも小さくなっている。したがって、中間プレート52に対してY方向の両側には、アクチュエータプレート53におけるY方向の両端部(尾部81,86)が露出する。アクチュエータプレート53におけるY方向の両端部において、中間プレート52から露出した部分は、第1フレキシブルプリント基板100の圧着領域として機能する。なお、中間プレート52は、圧電材料以外の材料(例えば、ポリイミドやアルミナ等の非導電材)で形成されていてもよい。
【0054】
<ノズルプレート51>
図4に示すように、ノズルプレート51は、中間プレート52の下面に接着等によって固定されている。ノズルプレート51は、Y方向における幅が中間プレート52と同等になっている。本実施形態において、ノズルプレート51は、ポリイミド等の樹脂材料により厚さが50μm程度に形成されている。但し、ノズルプレート51は、樹脂材料の他、金属材料(SUSやNi-Pd等)、ガラス、シリコン等による単層構造、又は積層構造であってもよい。
【0055】
ノズルプレート51には、X方向に延びるノズル列(第1ノズル列141及び第2ノズル列142)がY方向に間隔をあけて2列形成されている。
各ノズル列141,142は、ノズルプレート51をZ方向に貫通する複数のノズル孔(第1ノズル孔145及び第2ノズル孔146)を有している。各ノズル孔145,146は、それぞれX方向に間隔をあけて配置されている。各ノズル孔145,146は、例えば下方から上方に向かうに従い内径が漸次縮小するテーパ状に形成されている。図示の例において、各ノズル孔145,146の最大内径(上側開口部の内径)は、吐出チャネル75におけるX方向の寸法以上に設定されている。
【0056】
図9は、ノズルプレート51を取り外した状態でのヘッドチップ50の拡大底面図である。
ここで、図8図9に示すように、中間プレート52のうち、平面視でノズル孔145,146と重なり合う位置には、連通孔150が形成されている。連通孔150は、複数の吐出チャネル75及び複数のノズル孔145,146のうち、対応する吐出チャネル75及びノズル孔145,146同士を各別に連通させている。したがって、各非吐出チャネル76は、ノズル孔145,146には連通しておらず、中間プレート52により下方から覆われている。なお、各連通孔150は、何れも同様の構成である。したがって、以下の説明では、一の連通孔150を例にして連通孔150の詳細について説明する。
【0057】
連通孔150は、Y方向から見て、上方から下方に向かうに従いX方向の幅が段々と広がる段付き形状に形成されている。具体的に、連通孔150は、溝部151と、貫通部152と、を備えている。
【0058】
溝部151は、中間プレート52の下面から窪み、Y方向に延びている。溝部151は、中間プレート52の下面上で開口する下側開口部(第1開口部)151aを有している。下側開口部151aは、ノズル孔145,146の上側開口部を通じてノズル孔145,146内に連通している。溝部151におけるY方向の寸法は、吐出側貫通部75cにおけるY方向の寸法と同等に設定されている。但し、溝部151におけるY方向の寸法は、吐出側貫通部75cにおけるY方向の寸法より大きくてもよく、小さくてもよい。
溝部151におけるX方向の寸法は、ノズル孔145,146の最大内径及び吐出チャネル75におけるX方向の寸法それぞれよりも大きい。本実施形態において、溝部151におけるX方向の寸法は、ノズル孔145,146の最大内径に対して1.5倍以上であって、吐出チャネル75及び非吐出チャネル76の配列ピッチ以下であることが好ましい。
【0059】
溝部151におけるZ方向の寸法は、中間プレート52におけるZ方向の寸法に対して半分以上に設定されている。すなわち、中間プレート52の下面から溝部151の底面までのZ方向の寸法は、溝部151の底面から中間プレート52の上面(貫通部152の上側開口部152a)までのZ方向の寸法よりも大きい。したがって、溝部151の底面は、中間プレート52におけるZ方向の中心に対して上方に位置している。但し、溝部151におけるZ方向の寸法は、適宜変更が可能である。
【0060】
貫通部152は、中間プレート52のうち溝部151を含む領域をZ方向に延びている。貫通部152は、溝部151と連通することで中間プレート52を貫通している。貫通部152は、中間プレート52の上面上で開口する上側開口部(上側開口部)152aを有している。上側開口部152aは、吐出チャネル75(吐出側貫通部75c)の下側開口部を通じて吐出チャネル75内に連通している。
【0061】
本実施形態では、貫通部152の全体が、溝部151に平面視で重なり合っている。具体的に、貫通部152におけるY方向の寸法は、溝部151におけるY方向の寸法と同等になっている。
貫通部152におけるX方向の寸法は、吐出チャネル75におけるX方向の寸法以下に設定されている。本実施形態において、貫通部152におけるX方向の寸法は、吐出チャネル75におけるX方向の寸法に対して75%以上100%以下であることが好ましく、90%以上100%以下であることがより好ましい。
【0062】
貫通部152におけるX方向の寸法は、溝部151におけるX方向の寸法よりも小さくなっている。本実施形態において、貫通部152は、溝部151におけるX方向の中央部において溝部151と連通している。したがって、溝部151は、貫通部152に対してX方向の両側に張り出している。溝部151の内側空間のうち、貫通部152に対してX方向の両側に位置する部分(溝部151の底面と、ノズルプレート51の上面と、の間に位置する空間)は、接着剤収容部153を構成している。接着剤収容部153は、中間プレート52にノズルプレート51を接合する際において、余剰の接着剤が収容される。これにより、連通孔150のうち、吐出側貫通部75cとノズル孔145,146とに平面視で重なり合う部分に接着剤が流れ込むことを抑制できる。
【0063】
[プリンタ1の動作方法]
次に、上述したように構成されたプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、図1に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環機構6を介してインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0064】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、被記録媒体Pが搬送機構2,3のローラ11,12に挟み込まれながら+X側に搬送される。また、これと同時にキャリッジ29がY方向に移動することで、キャリッジ29に搭載されたインクジェットヘッド5がY方向に往復移動する。
インクジェットヘッド5が往復移動する間に、各インクジェットヘッド5よりインクを被記録媒体Pに適宜吐出させる。これにより、被記録媒体Pに対して文字や画像等の記録を行うことができる。
【0065】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて、以下に詳細に説明する。
本実施形態のような循環式サイドシュートタイプのインクジェットヘッド5では、まず図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、入口共通インク室120及び入口スリット125を通して各吐出チャネル75内に供給される。各吐出チャネル75内に供給されたインクは、各吐出チャネル75をY方向に流通する。その後、インクは、出口スリット126を通じて出口共通インク室121に排出された後、インク排出管22を通してインクタンク4に戻される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させることができる。
【0066】
そして、キャリッジ29(図1参照)の移動によってインクジェットヘッド5の往復移動が開始されると、フレキシブルプリント基板100,101を介して電極95,97に駆動電圧が印加される。この際、個別電極97を駆動電位Vddとし、共通電極95を基準電位GNDとして各電極95,97間に駆動電圧を印加する。すると、吐出チャネル75を画成する2つ駆動壁70に厚み滑り変形が生じ、2つの駆動壁70が非吐出チャネル76側へ突出するように変形する。すなわち、各電極95,97間に電圧を印加することで、駆動壁70がZ方向の中間部分を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル75の容積が増大する。そして、吐出チャネル75の容積が増大したことにより、入口共通インク室120内に貯留されたインクが入口スリット125を通じて吐出チャネル75内に誘導される。吐出チャネル75の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル75の内部に伝播する。圧力波がノズル孔145,146に到達したタイミングで、電極95,97間に印加した電圧をゼロにする。これにより、駆動壁70が復元し、一旦増大した吐出チャネル75の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル75の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、液滴状のインクが連通孔150及びノズル孔145,146を通って外部に吐出されることで、上述したように被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。
【0067】
<ヘッドチップ50の製造方法>
次に、上述したヘッドチップ50の製造方法について説明する。図10は、ヘッドチップ50の製造方法を説明するためのフローチャートである。図11図14は、ヘッドチップ50の製造方法を説明するための工程図であって、図8に対応する断面図である。以下の説明では、便宜上、ヘッドチップ50をチップレベルで製造する場合を例にして説明する。
図10に示すように、ヘッドチップ50の製造方法は、中間プレート接合工程(中間プレート積層工程)と、連通孔形成工程と、保護膜形成工程と、ノズルプレート接合工程(噴射プレート積層工程)と、を備えている。なお、各プレート51~54には、中間プレート接合工程以前に必要な加工は既に施しているものとする。
【0068】
図11に示すように、中間プレート接合工程では、アクチュエータプレート53とカバープレート54とが積層された積層体200に対して、中間プレート52を接合する。具体的に、中間プレート52は、アクチュエータプレート53の下面に対して接着剤等を介して接合する。中間プレート接合工程時において、中間プレート52には未だ連通孔150は形成されていない。
【0069】
連通孔形成工程では、中間プレート52に連通孔150を形成する。具体的に、連通孔形成工程は、中間プレート52の下面のうち、平面視で吐出チャネル75と重なり合う部分に対してレーザ加工を施すことで、中間プレート52を貫通させる。連通孔形成工程では、初めに溝部151を形成する溝部形成工程を行った後、貫通部152を形成する貫通部形成工程を行う。図12に示すように、溝部形成工程では、溝部151の形成領域に対してレーザを走査して、中間プレート52の下面から離れる向きに窪む溝部151を形成する。図13に示すように、貫通部形成工程では、中間プレート52の下方から溝部151の底面に対してレーザを走査することで、中間プレート52を貫通させる。これにより、溝部151が貫通部152を通じて吐出チャネル75内に連通する。貫通部形成工程におけるX方向でのレーザの照射幅は、吐出チャネル75におけるX方向の寸法以下に設定する。本実施形態のように、アクチュエータプレート53に中間プレート52が積層された状態で、溝部151及び貫通部152を形成することで、吐出チャネル75と連通孔150との位置精度を向上させることができる。なお、連通孔形成工程は、レーザ加工の他、エッチング等で行ってもよい。
【0070】
図14に示すように、保護膜形成工程では、吐出チャネル75に第1保護膜110を形成するとともに、非吐出チャネル76の内面に保護膜111を形成する。保護膜110,111は、例えば化学蒸着法(CVD)等を用いてパラキシリレン系樹脂材料を成膜することにより行う。具体的には、積層体をチャンバ(不図示)にセットした状態で、保護膜110,111の形成材料となる原料ガスを導入する。この際、吐出チャネル75には、スリット125,126や連通孔150を通じて原料ガスが導入される。吐出チャネル75内に導入された原料ガスが吐出チャネル75の内面に付着することで、吐出チャネル75の内面上に第1保護膜110として堆積する。
非吐出チャネル76には、非吐出側貫通部76aを通じて原料ガスが導入される。非吐出チャネル76内に導入された原料ガスが非吐出チャネル76の内面に付着することで、第2保護膜111として堆積される。
【0071】
ノズルプレート接合工程では、ノズル孔145,146が連通孔150を通じて吐出チャネル75内に連通するように、ノズルプレート51と中間プレート52とを貼り合わせる。
以上により、ヘッドチップ50が製造される。
【0072】
なお、ヘッドチップ50は、ウエハレベルで製造してもよい。ウエハレベルで製造する場合には、まず複数のアクチュエータプレート53が連なるアクチュエータウエハと、複数のカバープレート54が連なるカバーウエハと、複数の中間プレート52が連なる中間ウエハと、を接合してウエハ接合体を形成する。その後、ウエハ接合体に対して保護膜110,111を形成した後、ウエハ接合体を切断することにより複数のヘッドチップ50が形成される。
【0073】
このように、本実施形態では、溝部151の下側開口部151aにおけるX方向の寸法は、貫通部152の上側開口部152aにおけるX方向の寸法よりも大きく、上側開口部152aにおけるX方向の寸法は、吐出チャネル75(吐出側貫通部75c)のX方向の寸法以下である構成とした。
この構成によれば、上側開口部152aにおけるX方向の寸法が、吐出側貫通部75cのX方向の寸法以下であるため、中間プレート52のうちアクチュエータプレート53との接合面積を確保し易い。その結果、中間プレート52とアクチュエータプレート53との接合強度を確保し、中間プレート52の剥がれや中間プレート52とアクチュエータプレート53との間を通じたインクのリーク等を抑制できる。
また、中間プレート52とアクチュエータプレート53との接合後に、後加工として貫通部152を形成した場合であっても、貫通部152の加工時にアクチュエータプレート53にダメージが及ぶことを抑制できる。
しかも、下側開口部151aにおけるX方向の寸法が、上側開口部152aにおけるX方向の寸法よりも大きいため、ノズル孔145,146と吐出チャネル75とを直接連通させる場合に比べ、中間プレート52とノズルプレート51との接合時において、溝部151とノズル孔145,146との位置合わせが行いやすい。すなわち、溝部151におけるX方向の寸法内で、溝部151とノズル孔145,146との位置ずれを許容できる。その結果、ノズル孔145,146及び吐出チャネル75間の位置決め精度を確保した上で、吐出チャネル75の微細化や狭ピッチ化を図ることができる。
その結果、アクチュエータプレート53と中間プレート52との接合面積を確保して、ヘッドチップ50の耐久性を向上させた上で、ノズル孔145,146と連通孔150との位置ずれの許容代を確保して、吐出チャネル75の微細化や狭ピッチ化を図ることができる。
【0074】
本実施形態では、中間プレート52の厚さ方向(Z方向)において、下側開口部151aから溝部151の底面までの寸法は、溝部151の底面から上側開口部152aまでの寸法よりも大きい構成とした。
本態様によれば、溝部151の深さを確保できるので、中間プレート52とノズルプレート51との接合時において、溝部151のうち貫通部152に対してX方向の外側に位置する空間を接着剤収容部153として利用できる。そのため、貫通部152に接着剤が流れ込むことを抑制し、接着剤が吐出性能に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0075】
本実施形態に係るインクジェットヘッド5及びプリンタ1は、上述したヘッドチップ50を備えているので、高品質で信頼性に優れた液体噴射ヘッドを提供できる。
【0076】
上述した第1実施形態では、連通孔形成工程として、中間プレート接合工程の後に溝部形成工程と貫通部形成工程とを有する方法について説明したが、この構成に限られない。連通孔形成工程では、図15に示すように、中間プレート接合工程の後に少なくとも貫通部形成工程を有していればよく、溝部形成工程は中間プレート接合工程の前に行ってもよい。すなわち、中間プレート52の接合前に溝部151を予め形成しておき、溝部151が形成された中間プレート52をアクチュエータプレート53に接合してもよい。中間プレート52に溝部151を予め形成しておくことで、中間プレート52の積層後、ヘッドチップ50が完成するまでの加工時間を短縮できる。
【0077】
(第2実施形態)
図16に示すように、第2実施形態に係るヘッドチップ50では、連通孔150の平面視外形が正方形状になっている。具体的に、連通孔150において、溝部151及び貫通部152それぞれのY方向の寸法は、互いに同等であって、吐出側貫通部75cにおけるY方向の寸法よりも小さく、ノズル孔145,146の最大内径よりも大きくなっている。なお、溝部151及び貫通部152のX方向及びZ方向の寸法については、第1実施形態と同様の寸法を採用できる。
【0078】
本実施形態によれば、貫通部152におけるY方向の寸法が、吐出側貫通部75cのY方向(第3方向)の寸法よりも短いため、中間プレート52とアクチュエータプレート53との接合後に、後加工として貫通部152を形成した場合であっても、貫通部152の加工時にアクチュエータプレート53の下面にダメージが及ぶことを抑制できる。
しかも、溝部151及び貫通部152それぞれのY方向(第1方向、第3方向)の寸法を、吐出側貫通部75cにおけるY方向の寸法よりも小さくすることで、連通孔形成工程において連通孔150の加工時間を短縮できる。これにより、製造効率を向上させることができる。
【0079】
(第3実施形態)
図17に示すように、第3実施形態に係るヘッドチップ50では、連通孔150の平面視形状がX字状になっている。具体的に、溝部151におけるY方向の寸法は、吐出側貫通部75cにおけるY方向の寸法よりも小さく、ノズル孔145,146の最大内径よりも大きくなっている。
【0080】
貫通部152は、中間プレート52のうち、平面視で溝部151と重なり合う領域をY方向に跨った状態で、中間プレート52を貫通している。すなわち、貫通部152は、溝部151と重なり合う領域で溝部151を通じて中間プレート52を貫通するとともに、溝部151に対してY方向(第1方向)の両側で中間プレート52を貫通している。貫通部152のうち、溝部151に対してY方向に突出した部分は、突出部152cを構成している。本実施形態において、貫通部152におけるY方向の寸法は、吐出側貫通部75cにおけるY方向の寸法と同等になっている。
【0081】
本実施形態では、溝部151におけるY方向の寸法が貫通部152よりも小さくなるので、溝部151の加工時間を短縮できる。その結果、製造効率を向上させることができる。
しかも、貫通部152におけるY方向の寸法が溝部151よりも広くなるので、吐出チャネル75内をY方向に沿って液体が流れる際に、貫通部152を吐出チャネル75とともにインク流路として機能させることができる。これにより、インク流路の流路断面積を確保し易くなり、圧力損失を軽減できる。
【0082】
(第4実施形態)
図18に示すように、第4実施形態に係るヘッドチップ50では、貫通部152が溝部151に対してY方向(第1方向)の片側に突出している。貫通部152のうち、溝部151に対してY方向に突出した部分は、突出部152cを構成している。突出部152cのY方向の向きは、吐出チャネル75内のうちノズル孔145,146を基準にして高圧側に一致していることが好ましい。
【0083】
本実施形態では、上述した第3実施形態と同様の作用効果を奏することに加え、溝部151に対してY方向の両側のうち、圧力が高くなり易い方向に貫通部152(突出部152c)を突出させる。これにより、Y方向の片側での圧力損失を軽減した上で、貫通部152の加工時間を可能な限り短縮できる。
【0084】
(第5実施形態)
図19に示すように、第5実施形態に係るヘッドチップ50では、溝部151の底面に膨出部155が形成されている。膨出部155は、溝部151の底面のうち、貫通部152寄りに位置する部分(X方向の内側)に形成されている。膨出部155は、断面視において、三角形状に形成されている。具体的に、膨出部155は、X方向の内側に向かうに従い、溝部151の底面からの膨出量が漸次増加している。膨出部155は、接着剤収容部153に収容される接着剤が貫通部152内に流れ込むことを抑制する流れ止めとして機能する。なお、膨出部155の断面視形状は、三角形状に限らず、矩形状や半円状等、適宜変更が可能である。
【0085】
本実施形態では、中間プレート52とノズルプレート51との接合時において、溝部151のうち膨出部155よりもX方向の外側に位置する空間を接着剤収容部153として利用できる。この場合、貫通部152に接着剤が流れ込むことを膨出部155によって規制できるので、接着剤が吐出性能に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0086】
(第6実施形態)
上述した実施形態では、サイドシュートタイプのヘッドチップ50として、アクチュエータプレート53の上下方向がアクチュエータプレート53の厚さ方向に一致し、吐出チャネル75がチャネル延在方向の中央部(吐出側貫通部75c)において、アクチュエータプレート53の厚さ方向に開口する構成について説明したが、この構成に限られない。
図20図21に示すように、ヘッドチップ300は、吐出チャネル301における延在方向の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプであってもよい。以下の説明において、+Y側を表面側、-Y側を裏面側とし、+Z側を上方、-Z側を下方として説明する場合がある。
【0087】
ヘッドチップ300において、アクチュエータプレート310には、吐出チャネル301及び非吐出チャネル302が形成されている。各チャネル301,302は、アクチュエータプレート310において、X方向(第2方向)に交互に形成されている。
吐出チャネル301は、アクチュエータプレート310において、Z方向(第1方向)に延びている。吐出チャネル301は、アクチュエータプレート310の下端面(チャネル開口面)上で開口するチャネル開口部を有している。非吐出チャネル302は、アクチュエータプレート310をZ方向に貫通している。
【0088】
カバープレート320は、各チャネル301,302の表面側開口部を閉塞するように、アクチュエータプレート310の表面に接合されている。カバープレート320において、吐出チャネル301の上端部とY方向から見て重なり合う位置には、共通インク室321が形成されている。共通インク室321は、例えば各チャネル301,302を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート320の表面上で開口している。
共通インク室321において、吐出チャネル301とY方向から見て重なり合う位置には、スリット322が形成されている。スリット322は、各吐出チャネル301の上端部と、共通インク室321内と、の間を各別に連通している。スリット322は、それぞれ各吐出チャネル301に連通する一方、各非吐出チャネル302には連通していない。
【0089】
中間プレート330は、アクチュエータプレート310の下端面に接着等によって固定されている。中間プレート330において、Z方向から見て吐出チャネル301と重なり合う位置には、連通孔331が形成されている。連通孔331は、例えば上述した第1実施形態と同様に、溝部332及び貫通部333を有し、中間プレート330をZ方向に貫通している。溝部332のうち、下側開口部332aにおけるX方向の寸法は、貫通部333のうち上側開口部333aにおけるX方向の寸法よりも大きくなっている。貫通部333のうち上側開口部333aにおけるX方向の寸法は、吐出チャネル301のうちアクチュエータプレート310の下面上で開口するチャネル開口部のX方向の寸法以下になっている。なお、貫通部333におけるY方向(第3方向)の寸法は、チャネル開口部のY方向の寸法より大きくても、小さくてもよい。
【0090】
ノズルプレート340は、中間プレート330の下端面に接着等によって固定されている。ノズルプレート340には、ノズル孔341が形成されている。ノズル孔341は、連通孔331を通じて吐出チャネル301内に各別に連通している。
【0091】
本実施形態のように、エッジシュートタイプのヘッドチップ300に本開示に係る構成を採用した場合であっても、上述した各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0092】
(その他の変形例)
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
【0093】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、吐出チャネル75と非吐出チャネル76とが交互に配列された構成について説明したが、これに限らない。例えば、全チャネルから順次インクを噴射する、いわゆる3サイクル方式のヘッドチップ50に本開示を適用しても構わない。
【0094】
上述した実施形態では、アクチュエータプレート53、中間プレート52及びノズルプレート51が順次接合されている構成について説明したが、この構成に限られない。アクチュエータプレート53及び中間プレート52の間や、中間プレート52及びノズルプレート51の間に別の部材が設けられていてもよい。この場合、本開示に係る噴射プレート積層工程や中間プレート積層工程についても、積層対象物が被積層対象物(例えば、積層対象物が噴射孔プレートの場合、被積層対象物は中間プレート)に対して直接接合する場合に限らず、少なくとも被積層対象物に対して積層対象物が積層される構成であれば、被積層対象物上に別の部材が接合された状態で、別の部材上に積層対象物を接合してもよい。また、被積層対象物に対して積層対象物が直接積層される場合であっても、積層対象物と被積層対象物とが接合以外の方法で積層されていてもよい。
【0095】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1:プリンタ(液体噴射記録装置)
5:インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
50:ヘッドチップ
51:ノズルプレート(噴射孔プレート)
52:中間プレート
53:アクチュエータプレート
75:吐出チャネル(噴射チャネル)
150:連通孔
151:溝部
151a:下側開口部(第1開口部)
152:貫通部
152a:上側開口部(第2開口部)
155:膨出部
300:ヘッドチップ
301:吐出チャネル(噴射チャネル)
310:アクチュエータプレート
330:中間プレート
331:連通孔
332:溝部
332a:下側開口部(第1開口部)
333:貫通部
333a:上側開口部(第2開口部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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