(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058854
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】カプセル及びカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/48 20060101AFI20230419BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230419BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230419BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230419BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20230419BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/36
A61K47/26
A23L5/00 C
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168615
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】503315676
【氏名又は名称】中日本カプセル 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 利恭
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 康博
(72)【発明者】
【氏名】坪井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】井辰 かおる
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 智弘
【テーマコード(参考)】
4B035
4B041
4C076
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE11
4B035LG02
4B035LG07
4B035LG19
4B035LG20
4B035LG21
4B035LG25
4B035LG27
4B035LP31
4B035LP36
4B035LP46
4B041LC10
4B041LE02
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4B041LH17
4B041LK05
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4B041LP10
4B041LP12
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC40
4C076DD38A
4C076EE30
4C076FF36
(57)【要約】
【課題】3-ヒドロキシイソ吉草酸をカプセル剤の内容液に含有させた場合に、カプセル皮膜の変形が生じやすくなり、内容液の漏出につながりやすいとの課題を新たに見出した。
【解決手段】カプセル皮膜に内容液が充填されたカプセルであって、前記カプセル皮膜が、少なくともプルランを含有し、前記内容液が、3-ヒドロキシイソ吉草酸、及び、糖アルコールを含有し、前記糖アルコールのDE値が、40~80であり、前記糖アルコールに含まれる二糖の比率が、25~70%であり、前記糖アルコールに含まれる三糖の比率が、8~40%である、カプセルを調製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル皮膜に内容液が充填されたカプセルであって、前記カプセル皮膜が、少なくともプルランを含有し、
前記内容液が、3-ヒドロキシイソ吉草酸、及び、糖アルコールを含有し、
前記糖アルコールのDE値が、40~80であり、
前記糖アルコールに含まれる二糖アルコールの比率が、25~70%であり、
前記糖アルコールに含まれる三糖アルコールの比率が、8~40%である、カプセル。
【請求項2】
前記糖アルコールの含有量が、前記内容液全量に対して、1~20質量%である、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記3-ヒドロキシイソ吉草酸の含有量が、前記内容液全量に対して、98質量%以下である、請求項1又は2に記載のカプセル。
【請求項4】
3-ヒドロキシイソ吉草酸、及び、糖アルコールを含有し、
前記糖アルコールのDE値が、40~80であり、
前記糖アルコールに含まれる二糖の比率が、25~70%であり、
前記糖アルコールに含まれる三糖の比率が、8~40%である内容液を調製する工程、
少なくともプルランを含有するカプセル皮膜組成物を調製する工程、
前記皮膜組成物中に前記内容液を充填したカプセルを調製する工程を含む、カプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル、及び、該カプセルを製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードカプセルやソフトカプセルでは、特にその内容物として液状物(内容液)を含有する場合、それらのカプセル皮膜が損傷し、内容液が漏出することがある。これは、カプセル皮膜内に封入される内容液(溶液又は懸濁液等)が、温度や気圧等の環境変化により体積変化を起こすことが、主な原因である。また、カプセルが落下することや、サプリメント等で袋詰めにされた後、外圧が加わること等により、カプセル皮膜が変形すると、局部的に大きな応力が作用し、その箇所でカプセル皮膜に割れが発生し、内容液が漏出しやすくなる場合もある。
【0003】
また、このようなカプセル皮膜からの内容液の漏出には、その内容液に含有されている成分によっても影響を受ける。L-カルニチンを主成分とする内容物のソフトカプセルを製造すると、L-カルニチンの高い吸湿性がカプセル皮膜を乾燥させ、カプセル皮膜に割れが発生して内容物が漏出しやすくなる場合がある。
【0004】
本発明者らは過去に、ソフトカプセル皮膜からの内容液の漏出という問題を解決することを目的として、糖または糖アルコールを含有する水溶液を内容液としてソフトカプセル皮膜に充填し、その後に糖または糖アルコールを過飽和とするソフトカプセルの製造方法を提案している(特許文献1)。
【0005】
近年、3-ヒドロキシイソ吉草酸(β‐ヒドロキシ‐β‐メチル酪酸、HMB)は、筋肉量や筋力の維持に有効であることが注目され、スポーツ関連や高齢者向け等を目的としたサプリメントや機能性表示食品において用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
健康食品で一般的に使用されているHMBは、HMBカルシウム(HMB-Ca)の塩の状態であるが、体内での迅速な吸収性の観点から、HMBフリー体(遊離体)での摂取ニーズが高まっている。
【0008】
しかしながら、3-ヒドロキシイソ吉草酸のフリー体をカプセル剤の内容液に含有させた場合に、当該カプセル皮膜へどのように影響するかについては、十分に検証された報告はない。本発明者らにより検討を進めた結果、3-ヒドロキシイソ吉草酸のフリー体をカプセル剤の内容液に含有させた場合には、カプセル皮膜の基剤との相性等が大きく影響し、カプセル皮膜の変形が生じやすくなり、内容液の漏出につながりやすいとの課題を新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、更に検討を続けた結果、特許文献1の技術とは全く異なる手段で、カプセル皮膜の変形や、内容液の漏出防止効果を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
具体的には、カプセル皮膜に基剤として少なくともプルランを含有させ、カプセル内容液において、糖アルコールの組成を調整することで、カプセル皮膜の変形や、内容液の漏出を防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げるカプセルを提供する。
【0012】
[1]
カプセル皮膜に内容液が充填されたカプセルであって、前記カプセル皮膜が、少なくともプルランを含有し、
前記内容液が、3-ヒドロキシイソ吉草酸、及び、糖アルコールを含有し、
前記糖アルコールのDE値が、40~80であり、
前記糖アルコールに含まれる二糖類の糖アルコールの比率が、25~70%であり、
前記糖アルコールに含まれる三糖類の糖アルコールの比率が、8~40%である、カプセル。
【0013】
[2]
前記糖アルコールの含有量が、前記内容液全量に対して、1~20質量%である、[1]に記載のカプセル。
【0014】
[3]
前記3-ヒドロキシイソ吉草酸の含有量が、前記内容液全量に対して、98質量%以下である、[1]又は[2]に記載のカプセル。
【0015】
また、本発明は、下記に掲げるカプセルの製造方法を提供する。
【0016】
[4]
3-ヒドロキシイソ吉草酸、及び、糖アルコールを含有し、
前記糖アルコールのDE値が、40~80であり、
前記糖アルコールに含まれる二糖類の糖アルコールの比率が、25~70%であり、
前記糖アルコールに含まれる三糖類の糖アルコールの比率が、8~40%である内容液を調製する工程、
少なくともプルランを含有するカプセル皮膜組成物を調製する工程、
前記皮膜組成物中に前記内容液を充填したカプセルを調製する工程を含む、カプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カプセル皮膜に少なくともプルランを含有させ、カプセル内容液において、プルランを含有したカプセル皮膜を通過しにくい組成の糖アルコールの組成に調整することによって、カプセル皮膜の変形を抑制し、内容液の漏出を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態は、カプセル皮膜に内容液が充填されたカプセルであって、前記カプセル皮膜が、少なくともプルランを含有し、
前記内容液が、3-ヒドロキシイソ吉草酸、及び、糖アルコールを含有し、
前記糖アルコールのDE値が、40~80であり、
前記糖アルコールに含まれる二糖類の糖アルコールの比率が、25~70%であり、
前記糖アルコールに含まれる三糖類の糖アルコールの比率が、8~40%である、カプセルを提供する。
【0019】
カプセルとしては、食品及び医薬品の分野で用いられるカプセルであれば、特に制限されず、ハードカプセル、ソフトカプセル(シームレスカプセルを含む)等の種々の剤形が用いられる。
【0020】
(カプセル内容液)
本発明のカプセルにおいて、その内容液は、少なくとも、3-ヒドロキシイソ吉草酸、及び、糖アルコールを含有する。
【0021】
3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-Hydroxy-3-MethylButyrate、β-Hydroxy-β-Methylbutyrate、以下、HMBとも言う)は、(CH3)2C(OH)CH2COOHの構造式で表される化合物であり、HMBは、筋肉量増強効果等を有することが知られている。本発明において、HMBは遊離酸であり、HMBフリー体とも称される。
【0022】
3-ヒドロキシイソ吉草酸の含有量は、剤形、他の配合成分の種類や量、摂取対象者等によって適宜変更され、限定はされないが、例えば、内容液全量に対して、80質量%以上とすることができ、82質量%以上が好ましく、84質量%以上がより好ましく、86質量%以上が更に好ましく、88質量%以上が特に好ましい。
また、3-ヒドロキシイソ吉草酸の含有量は、例えば、内容液全量に対して、98質量%以下とすることができ、97質量%以下、96質量%以下、95質量%以下、94質量%以下等とすることができる。
また、3-ヒドロキシイソ吉草酸の含有量は、例えば、内容液全量に対して、80~98質量%、82~98質量%、84~98質量%、86~98質量%、88~98質量%、80~97質量%、82~97質量%、84~97質量%、86~97質量%、88~97質量%、80~96質量%、82~96質量%、84~96質量%、86~96質量%、88~96質量%、80~95質量%、82~95質量%、84~95質量%、86~95質量%、88~95質量%、80~94質量%、82~94質量%、84~94質量%、86~94質量%、88~94質量%等とすることができる。
【0023】
糖アルコールの種類は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されない。糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、還元水飴等の食品分野、医薬品分野で利用可能な公知の成分が挙げられる。糖アルコールのうち、例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール等は、単糖類から構成される単糖アルコールであり、ラクチトール等は、二糖から構成される二糖アルコールである。
【0024】
糖アルコールは、本発明の効果を顕著に奏する観点から、複数種類を用いることが好ましい。糖アルコールは、上記の糖アルコールを適宜組み合わせて用いてもよく、又は、複数種類配合する素材として、限定はされないが、例えば、還元水飴を用いることも可能である。還元水飴は、デンプンを酸や酵素等で加水分解して得られる水飴を原料とし、水素添加によって、グルコース末端を還元すること等により製造される単糖、及び、多糖の糖アルコール混合物の総称である。還元水飴は、還元デンプン加水分解物、還元デンプン糖化物、還元オリゴ糖等とも称される。
【0025】
還元水飴は、原料の水飴の糖化度によって分類され、高糖化度還元水飴、中糖化度還元水飴、低糖化度還元水飴等が挙げられる。還元水飴は、特に限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、中糖化度還元水飴が好ましい。これらの還元水飴は、原料の水飴における糖化度を適宜調整して製造してもよく、市販品を用いてもよい。高糖化度還元水飴の市販品としては、例えば、エスイー600(物産フードサイエンス社製)、PO-60(三菱商事ライフサイエンス社製)等が挙げられ、中糖化度還元水飴の市販品としては、例えば、スイートOL(物産フードサイエンス社製)、エスイー57(物産フードサイエンス社製)等が挙げられ、低糖化度還元水飴の市販品としては、例えば、エスイー30(物産フードサイエンス社製)、PO-30(三菱商事ライフサイエンス社製)等が挙げられる。
【0026】
糖アルコールのDE(Dextrose Equivalent)値は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、40~80であり、40~70が好ましく、40~65がより好ましく、40~60が更に好ましく、40~50が特に好ましい。DE(Dextrose Equivalent)値は、ブドウ糖の純度を示す指標であり、結晶ブドウ糖のDE値は100となる。
【0027】
また、糖アルコールにおける糖組成は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、糖アルコールに含まれる二糖アルコールの比率が、25~70%であり、且つ、糖アルコールに含まれる三糖アルコールの比率が、8~40%であることが好ましい。また、糖アルコールに含まれる二糖アルコールの比率は、例えば、30~65%であることがより好ましく、35~60%であることが更に好ましく、40~55%であることが特に好ましい。また、糖アルコールに含まれる三糖アルコールの比率は、例えば、15~40%であることがより好ましく、20~40%であることが更に好ましく、25~40%であることが特に好ましい。
【0028】
糖アルコールの含有量は、剤形、他の配合成分の種類や量、摂取対象者等によって適宜変更され、限定はされないが、例えば、内容液全量に対して、1質量%以上とすることができ、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましく、8質量%以上が特に好ましい。
また、糖アルコールの含有量は、例えば、内容液全量に対して、20質量%以下とすることができ、18質量%以下が好ましく、16質量%以下がより好ましく、14質量%以下が更に好ましく、12質量%以下が特に好ましい。
【0029】
(カプセル皮膜)
カプセル皮膜には、少なくともプルランが含有される。
【0030】
プルランは、水溶性多糖類の一種であり、グルコース3分子がα1-4結合したマルトトリオースを単位として、これらがα1-6結合で繋がった構造を有する。本発明において、カプセル皮膜の構成基剤としてプルランが含有される。
【0031】
プルランの含有量は、剤形、他の配合成分の種類や量、摂取対象者等によって適宜変更され、限定はされないが、例えば、ハードカプセル剤形の場合、皮膜組成物全量に対して、85質量%以上とすることができ、86質量%以上が好ましく、87質量%以上がより好ましく、88質量%以上が特に好ましい。
また、プルランの含有量は、例えば、皮膜組成物全量に対して、91質量%以下とすることができ、90質量%以下、89質量%以下、88質量%以下等とすることができる。プルランを含有するハードカプセルとしては、市販品を用いることも可能であり、例えば、Plantcaps(プラントキャップス)カプセル(カプスゲル社製)等が挙げられる。
【0032】
プルランの含有量は、例えば、ソフトカプセル剤形の場合、皮膜組成物全量に対して、20質量%以上とすることができ、26質量%以上が好ましく、28質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、32質量%以上が特に好ましい。
また、プルランの含有量は、例えば、皮膜組成物全量に対して、45質量%以下とすることができ、40質量%以下が好ましく、38質量%以下がより好ましく、36質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が特に好ましい。
【0033】
カプセル皮膜には、上記の他、例えば、カラギーナンを含有させることができる。
【0034】
カラギーナンの含有量は、剤形、他の配合成分の種類や量、摂取対象者等によって適宜変更され、限定はされないが、例えば、ハードカプセル剤形の場合、皮膜組成物全量に対して、0.1質量%以上とすることができ、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。
また、カラギーナンの含有量は、例えば、皮膜組成物全量に対して、2質量%以下とすることができ、1.5質量%以下、1質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下等とすることができる。
【0035】
カラギーナンの含有量は、例えば、ソフトカプセル剤形の場合、皮膜組成物全量に対して、5質量%以上とすることができ、7質量%以上が好ましく、9質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、12質量%以上が特に好ましい。
また、カラギーナンの含有量は、例えば、皮膜組成物全量に対して、25質量%以下とすることができ、23質量%以下が好ましく、21質量%以下がより好ましく、19質量%以下が更に好ましく、17質量%以下が特に好ましい。
【0036】
カプセル剤の製造方法は、公知の方法であれば特に制限なく用いることができ、ハードカプセル剤形であれば、ハードカプセル皮膜に内容液を充填し、ハードカプセルを構成するボディ部とキャップ部との継ぎ目にバンドシールを施すことで、内容液の継ぎ目からの漏出を防止することが可能である(バンドシール方式)。
【0037】
また、ソフトカプセル剤形であれば、公知のロータリーダイ方式やシームレス方式を用いることが可能である。ロータリーダイ方式であれば、例えば、ロータリーダイを利用して二枚の皮膜シートの間に内容液を充填しながら成形し、打ち抜くことでソフトカプセル剤が調製できる。また、シームレス方式では、例えば、二重ノズルを用いた滴下方式によりシームレスカプセル剤が調製できる。
【実施例0038】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。
【0039】
[試験例1.HMB含有カプセルにおける基剤の種類による影響]
基剤の異なるハードカプセルおよびソフトカプセルにHMBを充填し、室温にて保管したときの時間経過に伴う変化を確認した。少なくともプルランを含有する皮膜から製造されたハードカプセル皮膜製品(市販品)としてPlantcapsカプセル(カプスゲル社製)を用い、プルランを含まずゼラチンを含有する皮膜から製造されたハードカプセル皮膜製品としてNatural B/Cカプセル(カプスゲル社製)を用い、プルランを含まずHPMCを含有する皮膜から製造されたハードカプセル皮膜製品としてVP NaturalB/Cカプセル(カプスゲル社製)を用いた。ソフトカプセルについては、常法により表1の皮膜組成でカプセル皮膜を調製した。これらの皮膜を用いて、HMBを内容液として充填し、常法によりハードカプセルおよびソフトカプセルを製造した。具体的には、ハードカプセル剤形では、ハードカプセル皮膜に内容液を封入し、ハードカプセル剤を調製した。また、ソフトカプセル剤形では、一般的なロータリーダイ方式により、下記の皮膜組成物に内容液を封入し、ソフトカプセル剤を調製した。
【0040】
【0041】
(評価方法)
カプセル5粒に対して、「軟化」及び「割れ」の有無を確認し、下記判定基準に基づいて評価を行った。結果を表2に示す。
【0042】
(軟化の判定基準)
〇:5粒中に軟化したカプセルがない
△:5粒中に軟化したカプセルが2粒以下
×:5粒中に軟化したカプセルが3粒以上
【0043】
(割れの判定基準)
〇:5粒中に割れたカプセルがない
△:5粒中に割れたカプセルが2粒以下
×:5粒中に割れたカプセルが3粒以上
【0044】
【0045】
表2に示す通り、カプセル皮膜の基剤として、ゼラチン又はHPMCを用いた場合は、カプセル内容物中のHMBの影響を受け、カプセルが軟化し、割れやすいことが示された。一方、カプセル皮膜の基剤として、プルランを用いた場合は、カプセルの軟化に対しては効果を奏したものの、カプセルの割れに対しては十分満足する効果は得られなかった。
【0046】
[試験例2.HMB含有カプセルにおける糖アルコールの組成による影響1]
ソフトカプセル製剤化の簡易評価方法として、HMB含有内容液をハードカプセルに充填した際のハードカプセル外皮に与える影響を確認した。
各糖アルコール濃度が40質量%、25質量%、10質量%となるようにHMB内容液を作成し、プルランを基剤として含有するハードカプセルに充填し、室温にて保管したときの時間経過に伴う変化を確認した。具体的には、少なくともプルランを含有する皮膜から製造されたハードカプセル皮膜製品(市販品)としてPlantcapsカプセル(カプスゲル社製)を用い、表3のカプセル内容物組成に基づき、常法によりハードカプセルを製造した。用いた糖アルコールの組成は、表4に示す。カプセルの「軟化」及び「割れ」の評価方法は、試験例1と同様である。各糖アルコール濃度が40質量%、25質量%、10質量%の場合の結果を、それぞれ表5~表7に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
表5~表7に示す通り、プルランをカプセル皮膜の基剤としたHMB含有カプセルにおいて、糖アルコールの含有量や組成を変更することで、経時的な安定性への影響が確認された。糖アルコールのうち、スイートOLにおいて、「軟化」及び「割れ」に対する高い安定性が確認された。
【0053】
[試験例3.HMB含有カプセルにおける糖アルコールの組成による影響2]
試験例2の結果を受け、スイートOLと糖アルコール組成が類似した還元水飴市販品(PO-300:三菱商事ライフサイエンス株式会社製)を用い、「軟化」及び「割れ」に対する安定性を確認した。
具体的には、PO-300の濃度が40質量%、25質量%、10質量%となるようにHMB内容液を作成し、プルランを基剤として含有するハードカプセルに充填し、室温にて保管したときの時間経過に伴う変化を確認した。具体的には、少なくともプルランを含有する皮膜から製造されたハードカプセル皮膜製品(市販品)としてPlantcapsカプセル(カプスゲル社製)を用い、表8のカプセル内容物組成に基づき、常法によりハードカプセルを製造した。スイートOLとPO-300との、糖アルコール組成の対比表を表9に示す。カプセルの「軟化」及び「割れ」の評価方法は、試験例1と同様である。結果を表10に示す。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
表10に示す通り、スイートOLと糖アルコール組成が類似した還元水飴市販品(PO-300)においても、プルランをカプセル皮膜の基剤としたHMB含有カプセルにおいて「軟化」及び「割れ」に対する高い安定性が確認された。スイートOLとPO-300とは、糖アルコールに含まれる二糖アルコールと三糖アルコールの組成が特に類似しており、これらの配合比率が本願発明の効果に特に影響しているものと考えられる。
【0058】
[試験例4.HMBに対する糖アルコール原料の有効濃度の検討]
HMB濃度が77~82質量%、92~98質量%となるようにHMB内容液を作成し、プルラン由来のハードカプセルに充填した時の経過日数に伴う、「軟化」および「割れ」に与える影響を確認した。具体的には、少なくともプルランを含有する皮膜から製造されたハードカプセル皮膜製品(市販品)としてPlantcapsカプセル(カプスゲル社製)を用い、表11のカプセル内容物組成に基づき、常法によりハードカプセルを製造した。カプセルの「軟化」及び「割れ」の評価方法は、試験例1と同様である。結果を表12及び13に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
表12及び表13に示す通り、プルランをカプセル皮膜の基剤としたHMB含有カプセルにおいて、カプセル内容物中のHMBの含有量を70質量%~98質量%とすることにより、「軟化」及び「割れ」に対する安定性が得られることが示された。
【0063】
[試験例5.プルランを基剤としたソフトカプセル皮膜に対するHMBおよび糖アルコールの影響の確認]
HMB濃度が90質量%になるように、各糖アルコールを10質量%配合したカプセル内容物を調製した。具体的には、50ml容量の瓶に各カプセル内容物を20g量り取り、下記表14に示す処方のプルラン含有ソフトカプセル皮膜にて密栓し、逆さまにして保管した。これにより、HMB内容液とプルラン含有ソフトカプセル皮膜とを接触させたときの皮膜の割れに対する影響を確認した。カプセルの「軟化」及び「割れ」の評価方法は、試験例1と同様である。結果を表15に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
表15に示す通り、ソフトカプセル皮膜を用いた試験においても、ハードカプセルを用いた実施例3と同等の結果が得られた。この結果から、プルランをカプセル皮膜の基剤としたHMB含有カプセルにおいて、上記試験例2~4で検討した糖アルコールの組成を調整することにより、ハードカプセル皮膜だけでなく、皮膜組成の異なるソフトカプセル皮膜に対しても、「軟化」及び「割れ」に対する高い安定性が確認された。