(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058873
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230419BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230419BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
H01L29/78 658F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168651
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(57)【要約】
【課題】ゲート絶縁膜の内部応力の増加に起因したチャネル領域のアクセプタ濃度の低下を抑える技術を提供する。
【解決手段】半導体装置1,2の絶縁ゲート部36は、半導体層20の一方の主面上に設けられており、JFET領域23、及び、ボディ領域24のうちのJFET領域23とソース領域25を隔てている部分のチャネル領域CHに対向するように設けられているゲート絶縁膜36aと、ゲート絶縁膜36aを介してJFET領域23とチャネル領域CHに対向するように設けられているゲート電極36bと、を有しており、ゲート絶縁膜36aのうちのJFET領域23に対向する部分に少なくとも1つのJFET対向溝38,138が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(1,2)であって
半導体層(20)と、
前記半導体層の一方の主面上に設けられているソース電極(34)と、
前記半導体層の他方の主面上に設けられているドレイン電極(32)と、
絶縁ゲート部(36)と、を備えており、
前記半導体層は、
第1導電型のドリフト領域(22)と、
前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のJFET領域(23)と、
前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられており、前記JFET領域に隣接している第2導電型のボディ領域(24)と、
前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のソース領域(25)と、を有しており、
前記絶縁ゲート部は、
前記半導体層の前記一方の主面上に設けられており、前記JFET領域、及び、前記ボディ領域のうちの前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている部分のチャネル領域(CH)に対向するように設けられているゲート絶縁膜(36a)と、
前記ゲート絶縁膜を介して前記JFET領域と前記チャネル領域に対向するように設けられているゲート電極(36b)と、を有しており、
前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に少なくとも1つのJFET対向溝(38,138)が形成されている、半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に複数の前記JFET対向溝(138)が形成されており、
複数の前記JFET対向溝の各々は、空隙である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の前記JFET対向溝の各々は、底面に向かって幅が広がるテーパ形状である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層は、Ga系半導体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体装置(1,2)の製造方法であって、
半導体層(20)の一方の主面上にゲート絶縁膜(36a)を形成するゲート絶縁膜成膜工程であって、前記半導体層は、第1導電型のドリフト領域(22)と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられているいる第1導電型のJFET領域(23)と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられており、前記JFET領域に隣接している第2導電型のボディ領域(24)と、前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のソース領域(25)と、を有している、ゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜の膜質を改善するためのアニール処理を実施するアニール処理工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極(36b)を形成するゲート電極形成工程と、
前記ゲート絶縁膜形成工程と前記ゲート電極形成工程の間に、前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に少なくとも1つのJFET対向溝(38,138)を形成する溝形成工程と、を備えている、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記溝形成工程では、前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に複数の前記JFET対向溝(138)を形成する、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
複数の前記JFET対向溝の各々は、底面に向かって幅が広がるテーパ形状である、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記溝形成工程では、前記ソース領域に対向する部分にも少なくとも1つのソース対向溝(39)を形成する、請求項5~7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体層は、Ga系半導体である、請求項5~8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型の半導体装置の開発が進められている。この種の半導体装置は、半導体層と、半導体層の一方の主面上に設けられているソース電極と、半導体層の他方の主面上に設けられているドレイン電極と、を備えている。半導体層は、n型のドリフト領域と、ドリフト領域上に設けられているn型のJFET領域と、ドリフト領域上に設けられているとともにJFET領域に隣接しているp型のボディ領域と、ボディ領域によってJFET領域から隔てられているn型のソース領域と、を有している。ボディ領域のうちのJFET領域とソース領域を隔てる部分がチャネル領域となる。この種の半導体装置の一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲート絶縁膜の膜質改善のためにアニール処理を実施すると、ゲート絶縁膜が熱収縮し、ゲート絶縁膜の内部応力が増加する。このような内部応力がボディ領域のチャネル領域に印加されると、チャネル領域のアクセプタ濃度が低下する。チャネル領域のアクセプタ濃度の低下は、閾値電圧及びチャネル抵抗を変動させ、半導体装置の電気的特性を低下させてしまう。本明細書は、このような課題に対処するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置(1,2)は、半導体層(20)と、前記半導体層の一方の主面上に設けられているソース電極(34)と、前記半導体層の他方の主面上に設けられているドレイン電極(32)と、絶縁ゲート部(36)と、を備えることができる。前記半導体層は、第1導電型のドリフト領域(22)と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられているいる第1導電型のJFET領域(23)と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられており、前記JFET領域に隣接している第2導電型のボディ領域(24)と、前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のソース領域(25)と、を有することができる。前記絶縁ゲート部は、前記半導体層の前記一方の主面上に設けられており、前記JFET領域、及び、前記ボディ領域のうちの前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている部分のチャネル領域(CH)に対向するように設けられているゲート絶縁膜(36a)と、前記ゲート絶縁膜を介して前記JFET領域と前記チャネル領域に対向するように設けられているゲート電極(36b)と、を有することができる。前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に少なくとも1つのJFET対向溝(38,138)が形成されている。前記ゲート絶縁膜に前記JFET対向溝が形成されているので、前記ゲート絶縁膜の内部応力が緩和されている。このため、前記ボディ領域の前記チャネル領域に印加される応力も低下しており、前記半導体装置の電気的特性の低下が抑えられている。なお、このような前記JFET対向溝が前記ゲート絶縁膜のうちの前記チャネル領域に対向する部分に形成されていると、前記半導体装置の電気的特性に影響してしまう。上記半導体装置では、前記JFET対向溝が前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に選択的に形成されているので、そのような影響も抑えられている。
【0006】
本明細書が開示する半導体装置(1,2)の製造方法は、半導体層(20)の一方の主面上にゲート絶縁膜(36a)を形成するゲート絶縁膜成膜工程であって、前記半導体層は、第1導電型のドリフト領域(22)と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のJFET領域(23)と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられており、前記JFET領域に隣接している第2導電型のボディ領域(24)と、前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のソース領域(25)と、を有している、ゲート絶縁膜形成工程と、前記ゲート絶縁膜の膜質を改善するためのアニール処理を実施するアニール処理工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極(36b)を形成するゲート電極形成工程と、前記ゲート絶縁膜形成工程と前記ゲート電極形成工程の間に、前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に少なくとも1つのJFET対向溝(38,138)を形成する溝形成工程と、を備えることができる。この製造方法によると、前記ゲート絶縁膜に前記JFET対向溝を形成するので、前記ゲート絶縁膜の内部応力を緩和することができる。このため、前記ボディ領域のうちの前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている部分のチャネル領域に印加される応力も低下させることができるので、前記製造方法で製造される半導体装置は、電気的特性の低下が抑えられる。なお、このような前記JFET対向溝を前記ゲート絶縁膜のうちの前記チャネル領域に対向する部分に形成すると、前記半導体装置の電気的特性に影響してしまう。上記製造方法では、前記JFET対向溝を前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に選択的に形成するので、そのような影響も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図2】第1実施形態の半導体装置の半導体層を平面視した図を模式的に示す図であり、JFET対向溝の位置が破線で重ねて示されている図である。
【
図3】第1実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図4】第1実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図5】第1実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図6】第1実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図7】第1実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図8】第1実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図9】第2実施形態の半導体装置の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図10】第2実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図11】第2実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図12】第2実施形態の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す図である。
【
図13】第2実施形態の半導体装置の変形例の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図14】第2実施形態の半導体装置の変形例の要部断面図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態の半導体装置1の要部断面図を示す。半導体装置1は、半導体層20、半導体層20の裏面を被覆するように設けられているドレイン電極32、半導体層20の表面の一部を被覆するように設けられているソース電極34、及び、半導体層20の表面の一部に設けられているプレーナー型の絶縁ゲート部36を備えている。半導体層20は、特に限定されるものではないが、例えばGa系半導体である。Ga系半導体は、構成原子にGaを含む半導体であり、例えば窒化ガリウム系半導体、酸化ガリウム系半導体が含まれる。この例では、半導体層20は窒化ガリウム(GaN)である。ここで、半導体層20の表面に平行な一方向をx方向とし、半導体層20の表面に平行であってx方向に直交する方向をy方向とし、x方向とy方向に直交する方向をz方向(半導体層20の厚み方向ともいう)とする。
【0009】
半導体層20は、n型のドレイン領域21、n型のドリフト領域22、n型のJFET領域23、p型のボディ領域24、及び、n型のソース領域25を有している。
【0010】
ドレイン領域21は、半導体層20の裏面に露出する位置に設けられており、n型不純物を高濃度に含んでいる。ドレイン領域21は、ドレイン電極32にオーミック接触している。
【0011】
ドリフト領域22は、ドレイン領域21上に設けられており、ドレイン領域21とJFET領域23の間、且つ、ドレイン領域21とボディ領域24の間に配置されている。ドリフト領域22は、n型不純物をドレイン領域21よりも低濃度に含んでいる。
【0012】
JFET領域23は、ドリフト領域22上に設けられており、半導体層20の表面に露出する位置に設けられており、ドリフト領域22の表面から半導体層20の表面まで厚み方向に延びており、ドリフト領域22の表面から突出した形態を有している。換言すると、JFET領域23は、半導体層20の表面からボディ領域24を貫通してドリフト領域22まで延びている。JFET領域23は、n型不純物を含んでいる。この例では、JFET領域23の不純物濃度は、ドリフト領域22の不純物濃度と等しく、ドリフト領域22の一部と言うことができる。
【0013】
ボディ領域24は、ドリフト領域22上に設けられており、半導体層20の表面に露出する位置に設けられており、JFET領域23の側面に隣接している。ボディ領域24は、p型不純物を含んでおり、ソース電極34にオーミック接触している。なお、ボディ領域24とソース電極34のコンタクト抵抗を減らすために、ボディ領域24のうちの半導体層20の表面に露出する部分のp型不純物の濃度が濃く調整されていてもよい。
【0014】
ソース領域25は、ボディ領域24上に設けられており、半導体層20の表面に露出する位置に設けられており、ボディ領域24によってJFET領域23及びドリフト領域22から隔てられている。ソース領域25は、n型不純物を高濃度に含んでいる。ソース領域25は、ソース電極34にオーミック接触している。半導体層20の表面に露出する位置にあるとともにJFET領域23とソース領域25の間に位置するボディ領域24の一部を特にチャネル領域CHという。
【0015】
絶縁ゲート部36は、半導体層20の表面の一部に設けられており、酸化シリコン又は酸化アルミニウムのゲート絶縁膜36a、及び、ポリシリコン、アルミニウム又はニッケルのゲート電極36bを有している。ゲート絶縁膜36aは、JFET領域23及びチャネル領域CHに対向するように設けられている。ゲート電極36bは、ゲート絶縁膜36aを介してJFET領域23及びチャネル領域CHに対向している。
【0016】
ゲート絶縁膜36aには、JFET対向溝38が形成されている。JFET対向溝38は、ゲート絶縁膜36aのうちのJFET領域23に対向する部分に選択的に形成されている。JFET対向溝38は、ゲート絶縁膜36aの厚みの少なくとも半分を超える深さを有しており、ゲート絶縁膜36aを貫通しておらず、ゲート絶縁膜36aの一部が底部に残存している。JFET対向溝38内にはゲート電極36bが充填されている。
【0017】
図2に、半導体層20を平面視したときのレイアウトの一例を示す。図中の破線がJFET対向溝38の位置を示す。
図2に示されるように、半導体層20を平面視したときに、JFET領域23、ボディ領域24のチャネル領域CH、及び、ソース領域25はいずれも、y方向に沿って延びている。換言すると、半導体層20を平面視したときに、JFET領域23とチャネル領域CHの接合面、及び、ソース領域25とチャネル領域CHの接合面はいずれも、y方向に沿って延びている。JFET対向溝38は、これらJFET領域23とチャネル領域CHとソース領域25の各々と平行に、即ち、y方向に沿って延びている。なお、JFET対向溝38は、必要に応じてy方向に分散して配置されていてもよい。
【0018】
次に、半導体装置1の動作を説明する。使用時には、ドレイン電極32に正電圧が印加され、ソース電極34が接地される。ゲート電極36bにゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、JFET領域23とソース領域25の間のチャネル領域CHに反転層が形成され、その反転層を介してソース領域25からJFET領域23に電子が流入する。JFET領域23に流入した電子は、そのJFET領域23を縦方向に流れてドレイン電極32に向かう。これにより、ドレイン電極32とソース電極34が導通し、半導体装置1がターンオンする。ゲート電極36bが接地されると、反転層が消失し、半導体装置1がターンオフする。このように、半導体装置1は、ゲート電極36bに印加する電圧に基づいてドレイン電極32とソース電極34の間のオンとオフを切り換えるスイッチング動作を実行することができる。
【0019】
(半導体装置1の製造方法)
まず、
図3に示されるように、各種半導体領域21-25が形成された半導体層20を準備する。各種半導体領域21-25は、既知の製造方法を利用して形成することができ、例えばエピタキシャル成長技術及びイオン注入技術等を利用して形成される。
【0020】
次に、
図4に示されるように、蒸着技術を利用して、半導体層20の表面を被覆するようにゲート絶縁膜36aを形成する(ゲート絶縁膜形成工程の一例)。蒸着技術としては、特に限定されるものではないが、例えば原子層堆積法又はプラズマCVD法が利用される。次に、ゲート絶縁膜36aの膜質を改善するためにアニール処理を実施する(アニール処理工程の一例)。このアニール処理は、ポストアニール(Post Deposition Annealing: PDA)処理とも称される。このアニール処理が実施されると、ゲート絶縁膜36aが熱収縮し、ゲート絶縁膜36aの内部応力が増加する。
【0021】
次に、
図5に示されるように、ドライエッチング技術を利用して、ゲート絶縁膜36aのうちのJFET領域23に対向する部分にJFET対向溝38を形成する(溝形成工程の一例)。JFET対向溝38が形成されることにより、ゲート絶縁膜36aの内部応力が緩和される。ゲート絶縁膜36aの内部応力はその厚みに比例して増加するので、JFET対向溝38によってゲート絶縁膜36aの厚みが減少することにより、特にJFET対向溝38の周囲のゲート絶縁膜36aの内部応力が緩和される。
【0022】
次に、
図6に示されるように、蒸着技術を利用して、ゲート絶縁膜36aの表面上にゲート電極36bを成膜する。
【0023】
次に、
図7に示されるように、エッチング技術を利用して、ゲート絶縁膜36a及びゲート電極36bを加工し、絶縁ゲート部36を形成する。なお、ゲート絶縁膜36a及びゲート電極36bを加工して絶縁ゲート部36を形成するときに、半導体層20の表面の加工ダメージを減らすために、絶縁ゲート部36の形成位置以外のゲート絶縁膜36aの一部が半導体層20の表面に残存するようにゲート絶縁膜36aを薄く加工してもよい。この後、既知の製造技術を利用して、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図1に示す半導体装置1を製造することができる。
【0024】
上記製造方法では、ゲート絶縁膜36aにJFET対向溝38を形成することにより、膜質改善のためのアニール処理で加わったゲート絶縁膜36aの内部応力を緩和することができる。例えば、ゲート絶縁膜36aの内部応力が緩和されていないと、その内部応力がボディ領域24のチャネル領域CHに印加され、チャネル領域CHのアクセプタ濃度が低下する。チャネル領域CHのアクセプタ濃度の低下は、閾値電圧及びチャネル抵抗を変動させ、半導体装置1の電気的特性を低下させてしまう。上記製造方法では、JFET対向溝38を形成することによりゲート絶縁膜36aの内部応力を緩和することができるので、チャネル領域CHに印加される応力も低下させることができる。この結果、上記製造方法で製造される半導体装置1は、電気的特性の低下が抑えられている。
【0025】
なお、このようなJFET対向溝38をゲート絶縁膜36aのうちのチャネル領域CHに対向する部分に形成すると、チャネル領域CHに対向するゲート絶縁膜36aの厚みが変動し、閾値電圧の変動及びゲートリーク電流の増加が生じ、半導体装置1の電気的特性に影響してしまう。上記製造方法では、JFET対向溝38をゲート絶縁膜36aのうちのJFET領域23に対向する部分に選択的に形成することにより、そのような影響も抑えることができる。
【0026】
Ga系半導体では、熱酸化によってゲート絶縁膜36aを成膜する技術が確立しておらず、蒸着技術(例えば、原子層堆積法又はプラズマCVD法)を利用してゲート絶縁膜36aを成膜する必要がある。蒸着技術を利用して成膜されたゲート絶縁膜36aの膜質は、熱酸化によって成膜される場合に比して低い。このため、蒸着技術を利用して成膜されたゲート絶縁膜36aに対しては、膜質改善のためのアニール処理が必要である。しかしながら、このようなアニール処理によりゲート絶縁膜36aの内部応力が増加してしまう。本明細書が開示する技術は、このようなゲート絶縁膜36aの内部応力の増加を緩和することができる。即ち、本明細書が開示する技術は、Ga系半導体の半導体層にゲート絶縁膜が成膜された半導体装置とその製造方法において特に有用である。
【0027】
図8に示されるように、JFET対向溝38を形成するときに、ゲート絶縁膜36aのうちのソース領域25に対向する部分を含むようにソース対向溝39を形成してもよい。ゲート絶縁膜36aの内部応力はその厚みに加えて面方向の長さにも比例して増加するので、ソース対向溝39が形成されることにより、ゲート絶縁膜36aの内部応力がさらに緩和される。
【0028】
上記製造方法では、膜質改善のためのアニール処理を実施した後に、JFET対向溝38を形成する溝形成工程を実施していた。この例に代えて、膜質改善のためのアニール処理を実施する前に、JFET対向溝38を形成してもよい。JFET対向溝38を予め形成して置くことにより、アニール処理を実施したときのゲート絶縁膜36aの内部応力の増加を抑えることができる。この結果、チャネル領域CHに印加される応力も低下させることができるので、半導体装置1の電気的特性の低下が抑えられる。
【0029】
(第2実施形態)
図9に、第2実施形態の半導体装置2の要部断面図を示す。なお、第1実施形態の半導体装置1と共通する構成要素には共通の符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態の半導体装置2では、ゲート絶縁膜36aのうちのJFET領域23に対向する部分に複数のJFET対向溝138が形成されている。この例では、3つのJFET対向溝138が例示されているが、2つのJFET対向溝138が形成されていてもよく、4以上のJFET対向溝138が形成されていてもよい。
【0030】
複数のJFET対向溝138の各々も、第1実施形態のJFET対向溝38と同様に、平面視したときにy方向に沿って延びている。複数のJFET対向溝138の各々にはゲート電極36bが充填されておらず、複数のJFET対向溝138の各々は空隙となっている。後述の製造方法で説明するように、複数のJFET対向溝138の各々のアスペクト比は2以上であり、これにより、ゲート電極36bが充填されることがないので、複数のJFET対向溝138の各々は空隙となることができる。なお、JFET対向溝138のアスペクト比は、JFET対向溝138の深さに対するJFET対向溝138の表面における最小幅(この例では、JFET対向溝138の短手方向の幅であり、x軸方向の幅)の比である。
【0031】
第2実施形態の半導体装置2では、複数のJFET対向溝138の各々が空隙となっている。このため、ゲート電極36bが溝内に充填される場合に比してゲートリーク電流が抑えられる。また、溝内にゲート電極36bが充填された場合、溝内のゲート電極36bの熱膨張によってゲート電極36bがゲート絶縁膜36aを面方向に押圧し、ゲート絶縁膜36aの内部応力が増加することが懸念される。第2実施形態の半導体装置2では、このようなゲート絶縁膜36aの内部応力も抑えられる。
【0032】
(半導体装置2の製造方法)
ゲート絶縁膜形成工程及びアニール処理工程までの工程(
図4)は、第1実施形態の半導体装置1の製造方法同様である。次に、
図10に示されるように、ドライエッチング技術を利用して、ゲート絶縁膜36aのうちのJFET領域23に対向する部分に複数のJFET対向溝138を形成する(溝形成工程の一例)。複数のJFET対向溝138の各々のアスペクト比が2以上となるように形成する。複数のJFET対向溝138が形成されることにより、ゲート絶縁膜36aの内部応力が緩和される。
【0033】
次に、
図11に示されるように、蒸着技術を利用して、ゲート絶縁膜36aの表面上にゲート電極36bを成膜する。複数のJFET対向溝138の各々のアスペクト比が2以上であることから、ゲート電極36bを成膜するための反応ガスがJFET対向溝138内に十分に供給されず、JFET対向溝138内に空隙が形成される。
【0034】
次に、
図12に示されるように、エッチング技術を利用して、ゲート絶縁膜36a及びゲート電極36bを加工し、絶縁ゲート部36を形成する。なお、ゲート絶縁膜36a及びゲート電極36bを加工して絶縁ゲート部36を形成するときに、半導体層20の表面の加工ダメージを減らすために、ゲート絶縁膜36aの形成位置以外のゲート絶縁膜36aの一部が半導体層20の表面に残存するようにゲート絶縁膜36aを薄く加工してもよい。この後、既知の製造技術を利用して、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図2に示す半導体装置2を製造することができる。
【0035】
上記製造方法でも、第1実施形態の半導体装置1を製造する場合と同様に、複数のJFET対向溝138を形成するときにソース対向溝を形成してもよい。また、膜質改善のためのアニール処理を実施する前に、複数のJFET対向溝138を形成してもよい。
【0036】
図13に示されるように、複数のJFET対向溝138の各々は、ゲート絶縁膜36aを貫通していてもよい。複数のJFET対向溝138の各々は空隙となっているので、JFET対向溝138がゲート絶縁膜36aを貫通していても、ゲートリーク電流の増加は抑えられる。一方、複数のJFET対向溝138を形成するときのエッチングを半導体層20とゲート絶縁膜36aの界面で止めればよいので、複数のJFET対向溝138の加工が容易となる。
【0037】
図14に示されるように、複数のJFET対向溝138の各々は、底面に向かって幅が広がるテーパ形状であってもよい。ゲート電極36bを成膜するための反応ガスがJFET対向溝138内に供給され難くなるので、複数のJFET対向溝138の各々をより確実に空隙とすることができる。
【0038】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0039】
本明細書が開示する半導体装置は、半導体層と、前記半導体層の一方の主面上に設けられているソース電極と、前記半導体層の他方の主面上に設けられているドレイン電極と、絶縁ゲート部と、を備えることができる。前記半導体層は、第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のJFET領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられており、前記JFET領域に隣接している第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のソース領域と、を有することができる。前記絶縁ゲート部は、前記半導体層の前記一方の主面上に設けられており、前記JFET領域、及び、前記ボディ領域のうちの前記JFET領域と前記ソース領域を隔てている部分のチャネル領域(CH)に対向するように設けられているゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して前記JFET領域と前記チャネル領域に対向するように設けられているゲート電極と、を有することができる。前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に少なくとも1つのJFET対向溝が形成されている。
【0040】
上記半導体装置では、前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に複数の前記JFET対向溝が形成されていてもよい。複数の前記JFET対向溝の各々は、空隙であってもよい。この半導体装置では、ゲートリーク電流の低下及び前記ゲート絶縁膜の内部応力のさらなる緩和が期待できる。
【0041】
上記半導体装置では、複数の前記JFET対向溝の各々は、底面に向かって幅が広がるテーパ形状であってもよい。この半導体装置では、ゲートリーク電流の低下及び前記ゲート絶縁膜の内部応力のさらなる緩和が期待できる。
【0042】
前記半導体層は、Ga系半導体であってもよい。本明細書が開示する技術は、前記半導体層がGa系半導体の場合に特に有用である。
【0043】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、半導体層の一方の主面上にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜成膜工程であって、前記半導体層は、第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられているいる第1導電型のJFET領域と、前記ドリフト領域上に設けられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられており、前記JFET領域に隣接している第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域によって前記JFET領域から隔てられており、前記半導体層の前記一方の主面に露出する位置に設けられている第1導電型のソース領域と、を有している、ゲート絶縁膜形成工程と、前記ゲート絶縁膜の膜質を改善するためのアニール処理を実施するアニール処理工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、前記ゲート絶縁膜形成工程と前記ゲート電極形成工程の間に、前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に少なくとも1つのJFET対向溝を形成する溝形成工程と、を備えることができる。
【0044】
前記溝形成工程では、前記ゲート絶縁膜のうちの前記JFET領域に対向する部分に複数の前記JFET対向溝を形成してもよい。この製造方法によると、複数の前記JFET対向溝の各々が空隙となり得る。このため、この製造方法で製造される半導体装置では、ゲートリーク電流の低下及び前記ゲート絶縁膜の内部応力のさらなる緩和が期待できる。
【0045】
複数の前記JFET対向溝の各々は、底面に向かって幅が広がるテーパ形状であってもよい。この製造方法で製造される半導体装置では、ゲートリーク電流の低下及び前記ゲート絶縁膜の内部応力のさらなる緩和が期待できる。
【0046】
前記溝形成工程では、前記ソース領域に対向する部分にも少なくとも1つのソース対向溝(39)を形成してもよい。この製造方法では、前記ゲート絶縁膜の内部応力のさらなる緩和が期待できる。
【0047】
前記半導体層は、Ga系半導体であってもよい。本明細書が開示する技術は、前記半導体層がGa系半導体の場合に特に有用である。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
1,2:半導体装置、 20:半導体層、 21:ドレイン領域、 22:ドリフト領域、 23:JFET領域、 24:ボディ領域、 25:ソース領域、 32:ドレイン電極、 34:ソース電極、 36:絶縁ゲート部、 36a:ゲート絶縁膜、 36b:ゲート電極、 38,138:JFET対向溝、 39:ソース対向溝、 CH:チャネル領域