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特開2023-58874逆水性ガスシフト反応用触媒及びこれを用いた一酸化炭素の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058874
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】逆水性ガスシフト反応用触媒及びこれを用いた一酸化炭素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/652 20060101AFI20230419BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20230419BHJP
【FI】
B01J23/652 M ZAB
C01B32/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168653
(22)【出願日】2021-10-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/CO2とH2からの高付加価値化学品合成に関する先導的研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】鳥屋尾 隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 研一
(72)【発明者】
【氏名】峯 真也
(72)【発明者】
【氏名】王 剛
(72)【発明者】
【氏名】陳 鐸天
(72)【発明者】
【氏名】松下 康一
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC02
4G146JC18
4G146JC22
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC01A
4G169BC05A
4G169BC05B
4G169BC06A
4G169BC06B
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC12A
4G169BC12B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC20A
4G169BC22B
4G169BC24A
4G169BC25B
4G169BC39B
4G169BC41A
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44A
4G169BC44B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC55A
4G169BC55B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB02
4G169CB81
4G169DA06
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB44
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】低温の反応条件下であっても反応性が高い、優れた触媒活性を有する逆水性ガスシフト反応用触媒、及びこれを用いた一酸化炭素の製造方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素及び水素から一酸化炭素を製造するために用いる逆水性ガスシフト反応用触媒であって、前記逆水性ガスシフト反応用触媒は、金属酸化物担体と、前記金属酸化物担体に担持された複合酸化物と、金属触媒とを備え、前記複合酸化物は、第1の金属酸化物として、第4族元素、第5族元素、及び第6族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物と、第2の金属酸化物として、第1族元素、及び第2族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物とを含む、逆水性ガスシフト反応用触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素及び水素から一酸化炭素を製造するために用いる逆水性ガスシフト反応用触媒であって、前記逆水性ガスシフト反応用触媒は、金属酸化物担体と、前記金属酸化物担体に担持された複合酸化物と、金属触媒とを備え、
前記複合酸化物は、第1の金属酸化物として、第4族元素、第5族元素、及び第6族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物と、
第2の金属酸化物として、第1族元素、及び第2族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物と、
を含む、逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物担体は、TiOである、請求項1に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項3】
前記金属触媒は、Ptである、請求項1又は2に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項4】
前記第1の金属酸化物は、Mo、V、Nb、及びWからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項5】
前記第2の金属酸化物は、Rb、Cs、Ca、Sr、及びBaからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項6】
前記第1の金属酸化物は、Moの酸化物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項7】
前記Moの酸化物の含有量は、前記逆水性ガスシフト反応用触媒全量基準で、Mo金属元素として0.2~3.0質量%である、請求項6に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項8】
前記複合酸化物は、第3の金属酸化物として、ランタノイドの酸化物を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項9】
前記第3の金属酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Dy、Er、及びLuからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物である、請求項8に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項10】
二酸化炭素及び水素を含む原料ガスを、請求項1~9のいずれか一項に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒に接触させて一酸化炭素を含む生成ガスを得る、逆水性ガスシフト反応工程を備える、
一酸化炭素の製造方法。
【請求項11】
前記逆水性ガスシフト反応工程の反応温度が、100~400℃である、請求項10に記載の一酸化炭素の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆水性ガスシフト反応用触媒及びこれを用いた一酸化炭素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、グリーン・サスティナブルケミストリーに基づく持続可能な低炭素社会の創生を目的に、二酸化炭素(CO)を再生可能エネルギーである水素(H)で還元することにより基幹化学品へ変換する研究が行われている。例えば、COをHで還元することによって得られる一酸化炭素(CO)は、有機合成におけるカルボニル原料や、アルコール、ジェット燃料、ガソリンなどの液体炭化水素の原料として有用な化学原料となる。
【0003】
COをHで還元する方法としては、下記式(1)に示される逆水性ガスシフト反応が知られている。
CO+H→CO+HO・・・(1)
【0004】
逆水性ガスシフト反応は、平衡反応であり、吸熱反応で高温が有利である。逆水性ガスシフト反応用触媒としては、例えば、Ca、Sr、又はBaからなるアルカリ土類金属の炭酸塩と、Ca、Sr、又はBaとTi、Al、Zr、Fe、W、又はMoとの複合酸化物を含有した触媒が報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-194534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の触媒は触媒活性が十分ではないために逆水性ガスシフト反応の反応温度を700℃以上の高温にする必要があり、省エネルギー化が望まれていた。また、高温の反応温度を要するため、高い耐熱性を有する材料や多段の熱交換器等の特別な製造設備が必要となり、COの製造コストの上昇を招くという問題があった。さらに、高温条件下で触媒を長時間曝すことにより触媒劣化が促進され、さらなる製造コストの上昇を招くという問題があった。
一方、低温の反応条件下では平衡制約のために反応性が低くなり、逆水性ガスシフト反応によりCOを効率的に製造することは困難であった。
【0007】
本発明は、低温の反応条件下であっても反応性が高い、優れた触媒活性を有する逆水性ガスシフト反応用触媒、及びこれを用いた一酸化炭素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属酸化物担体と、金属酸化物担体に担持された特定の金属元素の酸化物を含む複合酸化物と、金属触媒とを備えた触媒を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]二酸化炭素及び水素から一酸化炭素を製造するために用いる逆水性ガスシフト反応用触媒であって、前記逆水性ガスシフト反応用触媒は、金属酸化物担体と、前記金属酸化物担体に担持された複合酸化物と、金属触媒とを備え、
前記複合酸化物は、第1の金属酸化物として、第4族元素、第5族元素、及び第6族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物と、
第2の金属酸化物として、第1族元素、及び第2族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物と、
を含む、逆水性ガスシフト反応用触媒。
[2]前記金属酸化物担体は、TiOである、[1]に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
[3]前記金属触媒は、Ptである、[1]又は[2]に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
[4]前記第1の金属酸化物は、Mo、V、Nb、及びWからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物である、[1]~[3]のいずれかに記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
[5]前記第2の金属酸化物は、Rb、Cs、Ca、Sr、及びBaからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物である、[1]~[4]のいずれかに記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
[6]前記第1の金属酸化物は、Moの酸化物である、[1]~[5]のいずれかに記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
[7]前記Moの酸化物の含有量は、前記逆水性ガスシフト反応用触媒全量基準で、Mo金属元素として0.2~3.0質量%である、[6]に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
[8]前記複合酸化物は、第3の金属酸化物として、ランタノイドの酸化物を更に含む、[1]~[7]のいずれかに記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
[9]前記第3の金属酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Dy、Er、及びLuからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物である、[8]に記載の逆水性ガスシフト反応用触媒。
[10]二酸化炭素及び水素を含む原料ガスを、[1]~[9]のいずれかに記載の逆水性ガスシフト反応用触媒に接触させて一酸化炭素を含む生成ガスを得る、逆水性ガスシフト反応工程を備える、
一酸化炭素の製造方法。
[11]前記逆水性ガスシフト反応工程の反応温度が、100~400℃である、[10]に記載の一酸化炭素の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温の反応条件下であっても反応性が高い、優れた触媒活性を有する逆水性ガスシフト反応用触媒、及びこれを用いた一酸化炭素の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0012】
(逆水性ガスシフト反応用触媒)
本実施形態に係る逆水性ガスシフト反応用触媒は、CO及びHからCOを製造するために用いるものであって、金属酸化物担体と、金属酸化物担体に担持された複合酸化物と、金属触媒とを備える。
【0013】
本実施形態に係る逆水性ガスシフト反応用触媒の作用機構は全て明らかとなっていないが、推察される作用機構の一例を下記に示す。
本実施形態に係る逆水性ガスシフト反応触媒は、金属酸化物担体に、例えばモリブデンの酸化物を含む複合酸化物が担持され、さらに金属酸化物担体及び/又は複合酸化物に金属触媒が担持されている。本実施形態に係る逆水性ガスシフト反応用触媒が低温の反応条件下であっても優れた反応性を有するのは、複合酸化物を構成する酸化物の酸素欠損がCOの吸着及び活性化を担うとともに、金属触媒がHの乖離を担う、複合酸化物と金属触媒との協働的な触媒作用によるものと推察される。また、複合酸化物及び/又は金属触媒を担持する金属酸化物担体は、多孔質構造を有しているため、比表面積が大きく反応活性点が多く存在する。このため、本実施形態に係る逆水性ガスシフト反応触媒は、低温の反応条件下であっても逆水性ガスシフト反応の反応性が高いと推察される。
【0014】
<金属酸化物担体>
金属酸化物担体は、主な役割として、複合酸化物及び/又は触媒としての活性を有する金属触媒を担持する。
【0015】
本実施形態の金属酸化物担体は、逆水性ガスシフト反応をより促進できる観点から、多孔質構造を有する。なお、特許文献1のような担体を有さない触媒は、通常1000℃以上の焼成温度により形成される。この場合、触媒は多孔質構造を形成することができず、逆水性ガスシフト反応の反応性に劣る傾向がある。一方、本実施形態の逆水性ガスシフト反応用触媒は、多孔質構造を有する金属酸化物担体を備えることから、比表面積が大きく反応活性点が多く存在し、触媒活性に優れる。
【0016】
金属酸化物担体としては、多孔質構造を形成できるものであれば制限されないが、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アルミニウム(Al)、又は酸化ケイ素(SiO)等が挙げられる。これらの中でも、逆水性ガスシフト反応をより促進できる観点から、TiOが好ましい。
【0017】
逆水性ガスシフト反応用触媒は、粉体でもよく、その一方で反応系に密に充填する観点から、金属酸化物担体としては、球形や円柱形などの成型体であることが好ましい。
【0018】
金属酸化物担体としての粒子の一次粒子の粒径としては、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。また、同粒径としては、1000nm以下が好ましく、800nm以下がより好ましい。粒径が10nm以上であれば、反応系における接触効率を悪化させることなく、COの製造効率を高めることができる。また、粒径が1000nm以下であれば、十分な比表面積が得られ易く、逆水性ガスシフト反応をより促進できる傾向がある。粒子の一次粒子の粒径は、X線回折法によって求めることができる。
【0019】
金属酸化物担体としての粒子の比表面積は、逆水性ガスシフト反応の反応性を向上させる観点から、10m/g以上が好ましく、20m/g以上がより好ましく、30m/g以上がさらに好ましい。一方、同比表面積は、触媒強度を維持する観点から、1,000m/g以下が好ましく、500m/g以下がより好ましく、400m/g以下がさらに好ましい。
金属酸化物担体としての粒子の比表面積は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)1点法によって求めることができる。
【0020】
<複合酸化物>
複合酸化物は、金属酸化物担体に担持される。複合酸化物は、後述する金属触媒を担持する担体としての機能と逆水性ガスシフト反応を促進する触媒としての機能を兼ねる。また、複合酸化物は、逆水性ガスシフト反応用触媒の機械的強度を向上させる機能を有する。
【0021】
複合酸化物は、還元処理によって酸素欠損を生じるものと考えられる。酸素欠損が生じた部位は、COから酸素原子を引き抜き、COを生成する反応の活性部位として機能し得る。このため、本実施形態に係る複合酸化物は、後述する金属触媒を担持する担体としての機能と逆水性ガスシフト反応を促進する触媒としての機能を兼ねる。
【0022】
複合酸化物は、第1の金属酸化物として、第4族元素、第5族元素、及び第6族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物と、第2の金属酸化物として、第1族元素、及び第2族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物とを含む。
第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを組み合わせることによって、逆水性ガスシフト反応の反応性をより一層向上させることができる。
【0023】
<<第1の金属酸化物>>
第1の金属酸化物は、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第4族元素、第5族元素、又は第6族元素に属する金属元素の酸化物であれば、特に限定されない。具体的には、第1の金属酸化物としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ラザホージウム(Rf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ドブニウム(Db)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、又はシーボーギウム(Sg)の酸化物を用いることができる。第1の金属酸化物は、1種単独でもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0024】
上記のなかでも、逆水性ガスシフト反応の反応性に優れる観点から、第1の金属酸化物としては、V、Nb、Mo、及びWからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物であることが好ましく、Moの酸化物であることが特に好ましい。
【0025】
Moは、6、5、4、3、2、1、-1、-2の少なくとも8つの酸化数を取り得ることが知られている。Moの酸化物である酸化モリブデンとしては、例えば、酸化モリブデン(IV)(MoO)、及び酸化モリブデン(VI)(MoO)の少なくとも2つが知られている。これらの酸化モリブデンのうち、適度な還元処理により逆水性ガスシフト反応の反応性に優れる観点から、酸化モリブデン(VI)(MoO)がより好ましい。ただし酸化モリブデンは還元反応や逆シフト反応を通して異なる酸化状態を取り得るものと思料される。
【0026】
<<第2の金属酸化物>>
第2の金属酸化物は、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第1族元素、又は第2族元素に属する金属元素の酸化物であれば、特に限定されない。具体的には、第2の金属酸化物としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、又はラジウム(Ra)の酸化物を用いることができる。第2の金属酸化物は、1種単独でもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0027】
上記のなかでも、逆水性ガスシフト反応の反応性に優れる観点から、第2の金属酸化物としては、Rb、Cs、Ca、Sr、及びBaからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物であることが好ましい。
【0028】
<<第3の金属酸化物>>
複合酸化物は、任意選択で、第3の金属酸化物を更に含んでもよい。第3の金属酸化物としては、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第3族元素、第14族元素、及び第15族元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物が好ましく、ランタノイドの酸化物であることがより好ましい。ランタノイドとは、原子番号57及び71を含む、原子番号57~71の任意の金属元素を意味する。第3の金属酸化物は、1種単独でもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0029】
ランタノイドのなかでも、逆水性ガスシフト反応の反応性に優れる観点から、第3の金属元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、及びルテチウム(Lu)からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物であることが好ましい。
【0030】
また、第3の金属酸化物としては、上述したランタノイドの酸化物以外に、周期表第3族元素に属するスカンジウム(Sc)の酸化物、周期表第14族元素に属するスズ(Sn)の酸化物、又は周期表第15族元素に属するビスマス(Bi)の酸化物も良好に用いることができる。
【0031】
複合酸化物中の金属酸化物の含有量は、逆水性ガスシフト反応の反応性に優れる観点から、逆水性ガスシフト反応用触媒全量基準で、金属元素として0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。一方、同含有量は、酸素引き抜きと水素化のバランスの観点から、逆水性ガスシフト反応用触媒全量基準で、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。なお、複合酸化物中の金属酸化物の含有量は、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物、及び任意の第3の金属酸化物を含む、2種類以上の金属元素としての含有量を合計した値である。
【0032】
第1の金属酸化物がMoの酸化物である酸化モリブデン(MoO)を含む場合、Mo金属元素としての含有量は、逆水性ガスシフト反応の反応性に優れる観点から、逆水性ガスシフト反応用触媒全量基準で、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。一方、同含有量は、プロセスの経済的観点から、逆水性ガスシフト反応用触媒全量基準で、3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。
なお、従来の触媒におけるMoの含有量は、触媒全量基準で、通常10質量%以上である。本発明者らは、複合酸化物として上記範囲内の酸化モリブデンを含む触媒が、逆水性ガスシフト反応の反応性に優れることを初めて見出した。
【0033】
複合酸化物は、上述したように金属酸化物として使用され、金属として担体に担持された後に酸化されてもよく、あるいは金属酸化物としてそのまま担体に担持されていてもよい。
【0034】
<金属触媒>
金属触媒は、金属酸化物担体及び/又は複合酸化物に担持される。金属触媒は、逆水性ガスシフト反応を促進する触媒としての機能を有する。
【0035】
金属触媒としては、逆水性ガスシフト反応を促進するものであれば特に制限されないが、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第8族元素、第9族元素、又は第10族元素に属する金属元素であることが好ましい。これらの中でも、金属触媒としては、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、又は白金(Pt)が好ましく、Ptが特に好ましい。金属触媒は、1種単独でもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0036】
金属触媒の含有量は、逆水性ガスシフト反応の反応性に優れる観点から、逆水性ガスシフト反応用触媒全量基準で、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。一方、同含有量は、経済的観点から、逆水性ガスシフト反応用触媒全量基準で、10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましい。
【0037】
<その他の成分>
逆水性ガスシフト反応用触媒は、成形性を向上させる観点から、本発明の目的を損なわない限り、成形助剤等のその他の成分を任意に含有していてもよい。成型助剤は、例えば、増粘剤、界面活性剤、保水剤、可塑剤、バインダー原料等からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。また、逆水性ガスシフト反応用触媒は、本発明の目的を損なわない限り、他の有用な成分を含有してもよい。
【0038】
(逆水性ガスシフト反応用触媒の調製方法)
逆水性ガスシフト反応用触媒は、特に制限されず、従来公知の方法によって調製することができる。
例えば、金属酸化物担体及び複合酸化物前駆体の水溶液を混合し、溶媒を除去した後、残留した金属酸化物担体及び複合酸化物を含む固形物を焼成する工程と、該固形物に金属触媒前駆体の水溶液を接触させ、溶媒を除去した後、残留した金属酸化物担体、複合酸化物及び金属触媒を含む固形物を焼成する工程と、を含む方法等によって、逆水性ガスシフト反応用触媒を得ることができる。
【0039】
固形物を焼成する際の焼成温度としては、特に制限はないが、300~600℃が好ましい。焼成温度が300℃以上であれば、長期間の使用に耐えられる熱安定性が得られ易く、高い触媒活性を有する触媒が得られる傾向がある。また、焼成温度が600℃以下であれば、金属酸化物担体が多孔質構造を形成し易い傾向がある。焼成時間としては特に制限はないが、0.1~24時間が好ましい。
【0040】
逆水性ガスシフト反応用触媒は、通常、反応触媒として用いられる前に還元処理されるとよい。還元処理の方法は、特に制限されない。例えば、水素ガスを含む雰囲気下で逆水性ガスシフト反応用触媒を加熱する方法によって還元処理することができる。還元処理のための加熱温度は、例えば150~450℃である。還元処理の時間は、例えば0.1~5時間である。
【0041】
(一酸化炭素の製造方法)
本実施形態に係る一酸化炭素の製造方法は、下記式(2)に示されるように、CO及びHを含む原料ガスを、上述した本実施形態に係る逆水性ガスシフト反応用触媒に接触させてCOを含む生成ガスを得る、逆水性ガスシフト反応工程を備える。
CO+H→CO+HO・・・(2)
【0042】
<原料ガス>
原料ガスとしては、少なくともCO及びHを含有していればよい。CO及びHの製造由来は特に制限されない。例えばCOは、石油精製、石油化学、発電、製鉄、ボイラーなどにおいて、炭化水素を燃料として燃焼させる工程、又は、未反応の炭化水素を燃焼させる工程から発生した混合ガスをそのまま用いてもよいし、精製したものを用いてもよい。また、大気中のCOを濃縮して使用してもよい。
【0043】
原料ガスにおけるCOとHとの容積比(H/CO)は、特に制限されないが、7:1~1:2が好ましく、5:1~1:1がより好ましい。原料ガスにおけるH/COが高い方が、逆水性ガスシフト反応が十分に進行し易い傾向があるが、高すぎると副反応であるメタン化反応が起こり易い傾向がある。
【0044】
原料ガスは、逆水性ガスシフト反応を阻害しないものであれば、CO及びH以外の他の化合物を更に含有してもよい。例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスを更に含有してもよい。
【0045】
<逆水性ガスシフト反応工程>
逆水性ガスシフト反応工程では、例えば、逆水性ガスシフト反応用触媒が充填された反応器を用い、当該反応器に原料ガスを流通させることにより反応を実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
【0046】
原料ガスを逆水性ガスシフト反応用触媒に接触させる際の温度(逆水性ガスシフト反応の反応温度、又は、反応器内の温度ということもできる。)は、省エネルギー化及び製造コストの観点から、400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。本実施形態に係る逆水性ガスシフト反応用触媒は、上述したように触媒活性に優れるため、400℃以下の低温であってもCOを効率的に製造することができる。一方、同温度は、COの収率及び生成速度をより一層向上させる観点から、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。
【0047】
原料ガスを逆水性ガスシフト反応用触媒に接触させる際の圧力(逆水性ガスシフト反応の反応圧力、又は、反応器内の圧力ということもできる。)は、特に限定されないが、例えば0~4.0MPaGであってよい。
【0048】
逆水性ガスシフト反応工程を、原料を連続的に供給する連続式の反応形式で行う場合、ガス空間速度(以下、「GHSV」と称する場合がある。)は、10h-1以上が好ましく、100h-1以上がより好ましい。GHSVが10h-1以上であれば、反応器サイズをより小さくできる。一方、GHSVは100,000h-1以下が好ましく、50,000h-1以下が好ましい。GHSVが100,000h-1以下であれば、COの収率がより高くなる傾向がある。ここで、GHSVとは、連続式の反応装置における、逆水性ガスシフト反応用触媒の容量Vに対する原料ガスの供給速度(供給量/時間)Fの比(F/V)である。なお、原料ガス及び触媒の使用量は、反応条件、触媒の活性等に応じて更に好ましい範囲を適宜選定してよく、GHSVは上記範囲に限定されるものではない。
【実施例0049】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
(逆水性ガスシフト反応用触媒の調製)
複合酸化物前駆体としてペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)3.67mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)4.42mg、硝酸バリウム(関東化学)2.28mg、金属酸化物担体として酸化チタン(P-25、日本アエロジル)286.6mg及び水100mLの混合物を室温で30分撹拌した。混合物を50℃に加熱しながら減圧下で溶媒を留去し、残渣を110℃で1時間乾燥した。乾燥後の固形物を、瑪瑙乳鉢及び乳棒ですりつぶした。得られた粉体を大気雰囲気下、500℃で3時間焼成して、酸化チタン、これに担持された酸化ニオブ、酸化モリブデン、及び酸化バリウムを有する粒子を得た。得られた粒子150mgに金属触媒前駆体としてジニトロジアンミン白金(II)硝酸溶液(フルヤ金属、Pt純度として4.60wt%)0.1g、及び水20mLの混合物を室温で30分撹拌した。混合物を50℃に加熱しながら減圧下で溶媒を留去し、残渣を110℃で1時間乾燥した。乾燥後の固形物を、瑪瑙乳鉢及び乳棒ですりつぶすことで、酸化チタン、これに担持された酸化ニオブ(Nbとして0.2質量%)、酸化モリブデン(Moとして0.8質量%)、酸化バリウム(Baとして0.4質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する、実施例1の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。
【0051】
(一酸化炭素の製造)
逆水性ガスシフト反応用触媒10mgを、40mL/minの水素気流下、300℃で0.5時間、常圧で還元処理した。還元処理した逆水性ガスシフト反応用触媒全量を固定床反応器に充填した。その後、固定床反応器に水素60mL/min、二酸化炭素20mL/min、及び窒素5mL/minを常圧で導入した。反応は、250℃で実施した。
【0052】
反応開始時から40時間が経過した時点で、生成ガスを固定床反応器から採取した。なお、反応開始時とは、原料ガスの供給が開始された時間である。採取された生成ガスを、熱伝導度検出器を備えたガスクロマトグラフ(TCD-GC)を用いて分析した。ガスクロマトグラフに基づき、採取された生成ガスの各成分を定量し、一酸化炭素の収率を算出した。また、触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0053】
なお、触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度は、以下のようにして行った。
CO濃度と流速とからCO供給速度を算出し、CO供給速度にCO収率を乗じることでCOの生成速度(mmol/min)を求めた。さらに、COの生成速度を逆水性ガスシフト反応用触媒量(g)で除することにより、触媒量あたりのCO生成速度(mmol/min/gcat)を算出した。
【0054】
<実施例2>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、ペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)3.67mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)4.42mg、炭酸ルビジウム(富士フイルム和光純薬工業)0.81mg、硝酸ルテチウム(富士フイルム和光純薬工業)1.24mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例2の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例2の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化ニオブ(Nbとして0.2質量%)、酸化モリブデン(Moとして0.8質量%)、酸化ルビジウム(Rbとして0.2質量%)、酸化ルテチウム(Luとして0.2質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0055】
<実施例3>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、ペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)18.34mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)5.52mg、炭酸ルビジウム(富士フイルム和光純薬工業)4.05mg、硝酸ガドリウム(富士フイルム和光純薬工業)17.22mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例3の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例3の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化ニオブ(Nbとして1.0質量%)、酸化モリブデン(Moとして1.0質量%)、酸化ルビジウム(Rbとして1.0質量%)、酸化ガドリニウム(Gdとして2.0質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0056】
<実施例4>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)4.42mg、硝酸バリウム(関東化学)3.43mg、硝酸エルビウムn水和物(富士フイルム和光純薬工業)1.27mg、硝酸ビスマス五水和物(富士フイルム和光純薬工業)4.18mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例4の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例4の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化モリブデン(Moとして0.8質量%)、酸化バリウム(Baとして0.6質量%)、酸化エルビウム(Erとして0.2質量%)、酸化ビスマス(Biとして0.6質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0057】
<実施例5>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)4.42mg、硝酸バリウム(関東化学)2.28mg、塩化スズ(II)(無水)(富士フイルム和光純薬工業)2.88mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例5の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例5の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化モリブデン(Moとして0.8質量%)、酸化バリウム(Baとして0.4質量%)、酸化スズ(Snとして0.6質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0058】
<実施例6>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、バナジン(V)酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬工業)3.44mg、ペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)18.34mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)2.76mg、硝酸ストロンチウム(関東化学)7.25mg、硝酸バリウム(関東化学)4.57mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例6の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例6の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化バナジウム(Vとして0.5質量%)、酸化ニオブ(Nbとして1.0質量%)、酸化モリブデン(Moとして0.5質量%)、酸化ストロンチウム(Srとして1.0質量%)、酸化バリウム(Baとして0.8質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0059】
<実施例7>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、ペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)3.67mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)3.31mg、タングステン酸アンモニウムパラ5水和物(富士フイルム和光純薬工業)0.43mg、硝酸セシウム(関東化学)0.44mg、酢酸スカンジウム(III)水和物(東京化成工業)2.96mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例7の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例7の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化ニオブ(Nbとして0.2質量%)、酸化モリブデン(Moとして0.6質量%)、酸化タングステン(Wとして0.1質量%)、酸化セシウム(Csとして0.1質量%)、酸化スカンジウム(Scとして0.2質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0060】
<実施例8>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)8.28mg、硝酸ストロンチウム(関東化学)3.62mg、硝酸ランタン(III)六水和物(富士フイルム和光純薬工業)18.70mg、硝酸ユーロピウム六水和物(Alfa Aesar)4.40mg、硝酸ルテチウム(富士フイルム和光純薬工業)6.19mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例8の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例8の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化モリブデン(Moとして1.5質量%)、酸化ストロンチウム(Srとして0.5質量%)、酸化ランタン(Laとして2.0質量%)、酸化ユウロピウム(Euとして0.5質量%)、酸化ルテチウム(Luとして1.0質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0061】
<実施例9>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、バナジン(V)酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬工業)3.44mg、ペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)18.34mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)2.76mg、硝酸カルシウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)8.84mg、硝酸ランタン(III)六水和物(富士フイルム和光純薬工業)4.68mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例9の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例9の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化バナジウム(Vとして0.5質量%)、酸化ニオブ(Nbとして1.0質量%)、酸化モリブデン(Moとして0.5質量%)、酸化カルシウム(Caとして0.5質量%)、酸化ランタン(Laとして0.5質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0062】
<実施例10>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、ペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)18.34mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)2.76mg、硝酸ストロンチウム(関東化学)3.62mg、硝酸セリウム(III)六水和物(富士フイルム和光純薬工業)13.95mg、硝酸ジスプロシウム六水和物(富士フイルム和光純薬工業)16.86mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例10の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例10の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化ニオブ(Nbとして1.0質量%)、酸化モリブデン(Moとして0.5質量%)、酸化ストロンチウム(Srとして0.5質量%)、酸化セリウム(Ceとして1.5質量%)、酸化ジスプロシウム(Dyとして2.0質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0063】
<実施例11>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、ペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)3.67mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)3.31mg、硝酸セシウム(関東化学)6.16mg、硝酸バリウム(関東化学)5.71mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例11の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例11の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化ニオブ(Nbとして0.2質量%)、酸化モリブデン(Moとして0.6質量%)、酸化セシウム(Csとして1.4質量%)、酸化バリウム(Baとして1.0質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0064】
<実施例12>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、ペンタキス(しゅう酸水素)ニオブ(V)(n水和物)(三津和化学薬品)3.67mg、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)3.31mg、炭酸ルビジウム(富士フイルム和光純薬工業)4.05mg、硝酸バリウム(関東化学)5.71mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、実施例12の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。実施例12の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化ニオブ(Nbとして0.2質量%)、酸化モリブデン(Moとして0.6質量%)、酸化ルビジウム(Rbとして1.0質量%)、酸化バリウム(Baとして1.0質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0065】
<比較例1>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)27.60mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、比較例1の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。比較例1の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化モリブデン(Moとして5.0質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0066】
<比較例2>
実施例1の複合酸化物前駆体に代えて、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(富士フイルム和光純薬工業)0.55mgを用いた以外は、実施例1と同様の手順により、比較例2の逆水性ガスシフト反応用触媒を得た。比較例2の逆水性ガスシフト反応用触媒は、酸化チタン、これに担持された酸化モリブデン(Moとして0.1質量%)、及び白金(Ptとして3.0質量%)を有する。
実施例1と同様の手順で一酸化炭素の収率、及び逆水性ガスシフト反応用触媒量あたりの一酸化炭素の反応速度を算出した。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、反応温度250℃の低温条件下、本実施形態に係る実施例1~12の触媒を使用した結果、副生物のメタンは検出されず、COのみ生成した。実施例1~12におけるCOの生成速度はいずれも2.5mmol/min/gcat以上であり、実施例1~12の触媒は、触媒活性が高いことが分かる。また、実施例1~12の触媒は、優れたCO収率を示すものであった。
一方、比較例1及び2の触媒は、反応温度250℃の低温条件下であってもCOを生成することが可能なものであったが、実施例1~12の触媒と比較するとCOの生成速度及び収率に劣るものであった。