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特開2023-58916電圧監視回路およびこの電圧監視回路を用いた装置
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  • 特開-電圧監視回路およびこの電圧監視回路を用いた装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058916
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】電圧監視回路およびこの電圧監視回路を用いた装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168708
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】大中 智貴
(72)【発明者】
【氏名】福井 規生
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA18
5H730BB23
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE08
5H730FD11
5H730XC04
5H730XX02
5H730XX13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】入力電圧が異なる種々の外部電源に対応する電圧監視回路及びその電圧監視回路を用いた装置を提供する。
【解決手段】電源装置10において、監視電圧と所定の基準電圧を比較して比較結果信号を出力する電圧監視回路1は、監視電圧を入力する電圧入力部2と、基準電圧に所定比で比例する比例基準電圧を生成する比例基準電圧生成部3と、電圧入力部から入力した監視電圧に所定比で比例する比例監視電圧との大小を比較して比較結果信号を生成する電圧比較部4と、比較結果信号を出力する信号出力部5、6と、を備える。監視電圧は、少なくとも1つの電圧境界値によって複数の監視電圧領域に区切られており、監視電圧領域の夫々と1対1に対応する複数の設定基準電圧値のうち、予め設定された1つを選択可能になっており、監視電圧が監視電圧領域の1つにあるとき、当該監視電圧領域に対応する設定基準電圧値を選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視電圧と所定の基準電圧との大小を比較して比較結果信号を出力する電圧監視回路であって、
前記監視電圧を入力する電圧入力部と、前記基準電圧に所定比で比例する比例基準電圧を生成する比例基準電圧生成部と、前記電圧入力部から入力した監視電圧に前記所定比で比例する比例監視電圧との大小を比較して前記比較結果信号を生成する電圧比較部と、前記比較結果信号を出力する信号出力部とを備え、
前記監視電圧は、少なくとも1つの電圧境界値によって複数の監視電圧領域に区切られており、前記基準電圧は、前記監視電圧領域のそれぞれと1対1に対応する複数の設定基準電圧値のうちあらかじめ設定された1つを選択可能になっており、前記監視電圧が、前記監視電圧領域の1つにあるとき、前記基準電圧は、当該監視電圧領域に対応する設定基準電圧値を選択するよう構成されている、
電圧監視回路。
【請求項2】
前記比例基準電圧は、一定の電圧値を有する回路電源電圧を、相互に直列接続された上流側抵抗部及び下流側抵抗部で分圧することにより生成され、
前記上流側抵抗部及び下流側抵抗部のいずれか一方は、可変抵抗部として、前記設定基準電圧値に対応してあらかじめ設定された複数の設定抵抗値を選択可能であり、
前記監視電圧が前記電圧範囲の1つにあるとき、前記基準電圧が当該電圧範囲に対応する設定基準電圧値となるよう当該設定基準電圧値に対応する設定抵抗値が前記可変抵抗部の抵抗値として選択される請求項1に記載の電圧監視回路。
【請求項3】
前記可変抵抗部は、第1抵抗素子よりなる基本抵抗部と、前記基本抵抗部に並列接続された追加抵抗部を備え、前記追加抵抗部は、前記第1抵抗素子に並列に接続された第2抵抗素子と、前記第2抵抗素子に直列接続されたスイッチング素子と、前記電圧境界値と監視電圧との大小を判定して判定結果信号を出力する監視電圧範囲判定部とを有し、
前記スイッチング素子は、前記監視電圧範囲判定部から前記判定結果信号を入力し、前記判定結果信号が示す監視電圧と前記電圧境界値との大小に応じて、オン状態とオフ状態とを切り替え、それにより前記第2抵抗素子を第1抵抗素子から断接するように構成された請求項2に記載の電圧監視回路。
【請求項4】
前記可変抵抗部は、第1抵抗素子よりなる基本抵抗部と、前記基本抵抗部に直列接続された追加抵抗部を備え、前記追加抵抗部は、前記第1抵抗素子に直列に接続された第2抵抗素子と、前記第2抵抗素子に並列接続されたスイッチング素子と、前記電圧境界値と監視電圧との大小を判定して判定結果信号を出力する監視電圧範囲判定部とを有し、
前記スイッチング素子は、前記監視電圧範囲判定部から前記判定結果信号を入力し、前記判定結果信号が示す監視電圧と前記電圧境界値との大小に応じて、オン状態とオフ状態とを切り替え、それにより前記第2抵抗素子を第1抵抗素子から断接するように構成された請求項2に記載の電圧監視回路。
【請求項5】
前記追加抵抗部が複数個設けられ、それぞれの追加抵抗部において、前記監視電圧との大小判定に用いる電圧境界値が相互に異なっている請求項3又は4に記載の電圧監視回路。
【請求項6】
前記基準電圧は、対応する監視電圧の電圧領域が大きいときには大きく、小さいときには小さくなるよう選択される請求項1~5のいずれかに記載の電圧監視回路。
【請求項7】
異なる複数の電圧の監視電圧に対して使用可能な装置であって、ソフトスタート制御回路を備え、前記監視電圧と前記所定の基準電圧との大小を比較した結果の比較結果信号がソフトスタート制御回路のトリガー信号として用いられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の電圧監視回路を用いた装置。
【請求項8】
異なる複数の電圧の出力電圧を出力可能な装置であって、出力電圧の異常低下時に出力を遮断する遮断制御回路を備え、前記監視電圧と前記所定の基準電圧との大小を比較した結果の比較結果信号が前記遮断制御回路のトリガー信号として用いられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の電圧監視回路を用いた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧監視回路およびこの電圧監視回路を用いた装置に関し、特に、電圧の異なる複数の電源に対応することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1~3に示すように、電源装置の出力電圧を検出し、瞬間的な電圧降下を検出するとともに所定の電圧まで低下したときソフトスタートを実行することにより電圧復帰するときのオーバーシュートを抑制できるようにしたスイッチング電源装置が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの装置によると、外部電源の公称電圧として、例えば100Vを用いた場合と200Vを用いた場合とで、瞬間的な電圧低下の後の電圧復帰に際し、ソフトスタートを開始するための閾値となる電圧を、外部電源の電圧の違いで異ならせるようになっていないため、例えば100Vの外部電源を用いた場合にソフトスタートができたとしても、200Vの外部電源を用いた場合には、100V用に設定したソフトスタート開始電圧まで電源電圧が低下しないうちに電圧が復帰することがあるためソフトスタートが開始せず、それによりオーバーシュートを抑制できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願昭56-146529
【特許文献2】特願昭63-36658
【特許文献3】特願平3-99058
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、入力電圧が異なる種々の外部電源に対応することのできる電圧監視回路、及びその電圧監視回路を用いた装置を提供することを目的とする。
【0006】
装置(例えば電源装置)として異なる複数の外部電源に対応できるということは、商品として重要であり、本開示の発明は、その点で大きく貢献することができる。例えば、日本国内においても、電力事情によっては、100Vか200Vのどちらかしか使えない地域や場所が存在し、また、海外まで含めると制限される電源電圧は種々雑多であり、電源事情を気にせず装置を使用できるということは消費者や流通業者にとって極めて重要なポイントとなるからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電圧監視回路は、監視電圧と所定の基準電圧との大小を比較して比較結果信号を出力する電圧監視回路であって、
前記監視電圧を入力する電圧入力部と、前記基準電圧に所定比で比例する比例基準電圧を生成する比例基準電圧生成部と、前記電圧入力部から入力した監視電圧に前記所定比で比例する比例監視電圧との大小を比較して前記比較結果信号を生成する電圧比較部と、前記比較結果信号を出力する信号出力部とを備え、
前記監視電圧は、少なくとも1つの電圧境界値によって複数の監視電圧領域に区切られており、前記基準電圧は、前記監視電圧領域のそれぞれと1対1に対応する複数の設定基準電圧値のうちあらかじめ設定された1つを選択可能になっており、前記監視電圧が、前記監視電圧領域の1つにあるとき、前記基準電圧は、当該監視電圧領域に対応する設定基準電圧値を選択するよう構成されている。
【0008】
本開示に係る電圧監視回路によると、この電圧監視回路を用いた電源装置において、ソフトスタート開始のための閾値となる基準電圧として、外部入力電圧の変化を表す監視電圧の電圧範囲に応じて、予め設定した電圧を選択することができるので、外部入力電圧が、例えば、100Vと200Vとで異なっても、瞬時停電後の電圧復帰時のオーバーシュートを簡易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の電圧監視回路とこの電圧監視回路を用いた電源装置の構成を示す概略回路構成図である。
図2】実施形態の電圧監視回路の監視電圧と基準電圧との関係を示す関係図である。
図3】従来の電圧監視回路の監視電圧と基準電圧との関係を示す関係図である。
図4】従来の電圧監視回路を用いた装置において公称100Vの入力電圧が変化したときの、監視電圧、基準電圧、出力電圧、及びソフトスタート電圧の変化を示すチャートである。
図5】従来の電圧監視回路を用いた装置において公称200Vの入力電圧が変化したときの、監視電圧、基準電圧、出力電圧、及びソフトスタート電圧の変化を示すチャートである。
図6】実施形態の電圧監視回路を用いた装置において公称100Vの入力電圧が変化したときの、監視電圧、基準電圧、出力電圧、及びソフトスタート電圧の変化を示すチャートである。
図7】実施形態の電圧監視回路を用いた装置において公称200Vの入力電圧が変化したときの、監視電圧、基準電圧、出力電圧、及びソフトスタート電圧の変化を示すチャートである。
図8】実施形態の電圧監視回路を示す回路構成図である。
図9】変形例の電圧監視回路の比例基準電圧生成部を示す概略構成図である。
図10】変形例の電圧監視回路の比例基準電圧生成部によって生成される基準電圧の監視電圧依存性を示す関係図である。
図11】他の変形例の電圧監視回路の比例基準電圧生成部を示す概略構成図である。
図12】実施形態の電圧監視回路を用いた出力装置の構成を示す概略回路構成図である。
図13】従来の電圧監視回路を用いた装置において公称100Vの出力電圧が変化したときの、監視電圧、基準電圧、の変化を示すチャートである。
図14】従来の電圧監視回路を用いた装置において公称200Vの出力電圧が変化したときの、監視電圧、基準電圧、の変化を示すチャートである。
図15】本実施形態の電圧監視回路を用いた装置において公称100Vの出力電圧が変化したときの、監視電圧、基準電圧、の変化を示すチャートである。
図16】本実施形態に係る電圧監視回路を用いた装置において公称200Vの出力電圧が変化したときの、監視電圧、基準電圧、の変化を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態の電圧監視回路1を用いた電源装置10を示す概略回路構成図である。電源装置10は、入力端18から、交流電圧VIを入力し変圧して出力端19から直流電圧を出力する。11は整流器、12は力率改善回路、13はスイッチングレギュレータ部、そして、14はスイッチング用ドライバである。
【0011】
また、M1、M2は、起動時や電圧復帰時の急激な電圧上昇やそれに伴うオーバーシュートを抑えるためのソフトスタート回路である。M1、M2は、それぞれ、入力したトリガー信号S1、S2に応じて、ソフトスタート信号ST1、ST2を出力する。このソフトスタート信号により瞬時停電後の電圧復帰時の出力電圧がオーバーシュートすることなく上昇復帰するように機能する。
【0012】
電源装置10には、入力電圧VIの変化を表す監視電圧Vmを所定の基準電圧Vbとその大小を比較して比較結果信号を出力する電圧監視回路1が設けられる。電圧監視回路1は、監視電圧Vmを入力する電圧入力部2と、所定比で基準電圧Vbに比例する比例基準電圧V1を生成する比例基準電圧生成部3と、前記電圧入力部2から入力した監視電圧Vmに前記所定比で比例する比例監視電圧V2との大小を比較して比較結果信号S1、S2を生成する電圧比較部4と、生成された比較結果信号S1、S2を出力する信号出力部5、6とを備える。比較結果信号S1、S2はソフトスタート回路M1、M2にトリガー信号として入力される。このように、基準電圧Vbは、ソフトスタートを開始するための閾値となる機能を有する。
【0013】
このように電圧監視回路1は、入力電圧VIの変化を表す監視電圧Vmを所定の基準電圧Vbとその大小を比較して比較結果信号S1、S2を出力する機能を有するが、本実施形態の電圧監視回路1の特徴は、監視電圧Vmが、少なくとも1つの電圧境界値によって複数の監視電圧領域に区切られており、基準電圧Vbは、監視電圧領域のそれぞれと1対1に対応する複数の設定基準電圧値のうちあらかじめ設定された1つを選択可能になっており、監視電圧Vmが、前記監視電圧領域の1つに含まれるとき、基準電圧Vbは、当該監視電圧領域に対応する設定基準電圧値を選択するよう構成されている点にある。
【0014】
例えば、電圧監視回路1を使用する電源装置10が、外部電源事情に応じて100Vと200Vとの両方を公称入力電圧として使えるようになっている場合、電圧監視回路1に供給する監視電圧Vmは、電圧境界値Vd(例えば150V)で第1の監視電圧範囲Vr1と第2の電圧範囲Vr2とに区切られ、電源装置10は、外部電源として100Vの入力電圧を用いる場合には、電圧監視回路1に供給される監視電圧Vmは、入力電圧に従い、第1の監視電圧範囲Vr1内にあり、200Vの入力電圧を用いる場合には、第2の監視電圧範囲Vr2内にあるようになっている。
【0015】
ここで、電圧監視回路1では、例えば、第1の監視電圧範囲Vr1に対応する基準電圧Vbとして設定基準電圧値Vb1=70Vがあらかじめ設定され、第2の監視電圧範囲Vr2に対応する基準電圧Vbとして設定基準電圧値Vb2=140Vがあらかじめ設定されている。そして、第1の監視電圧範囲Vr1にある監視電圧Vmが電圧監視回路1に入力したときには、基準電圧Vbとして70Vの設定基準電圧値Vb1が自動的に選択され、第2の監視電圧範囲Vr2にある監視電圧Vmが入力したときには、基準電圧Vbとして140Vの設定基準電圧値Vb2が自動的に選択されるようになっている。
【0016】
図2は、上記に説明した、本実施形態に係る監視電圧Vmと、Vmに対応して自動的に選択される基準電圧Vbとの関係を、監視電圧Vmを横軸に、基準電圧Vbを縦軸にとって示す関係図である。これに対して、図3は、入力電圧が100Vか200Vかにかかわらず基準電圧が1つしか設定されていない、従来の電圧監視回路の場合の監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を参照のために示したものである。
本実施形態に係る電圧監視回路1は、図2に示すように、監視電圧の大きさに応じて、異なる設定電圧を自動的に選択するようになっているという特徴を有するが、この特徴が実際にどのような効果としては発現されるかについて次に説明する。
【0017】
図4は、図3に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係(監視電圧Vmにかかわらずと基準電圧Vbは常に1つ)を有する従来の電圧監視回路において、電源装置の外部入力電圧が100Vのときの入力電圧VI、監視電圧Vm、基準電圧Vb、出力電圧Vo、ソフトスタート電圧Vsfの時間変化を、図5は、同様に従来の電源において、電源装置の外部入力電圧が200Vのときの、入力電圧VI、監視電圧Vm、基準電圧Vb、出力電圧Vo、ソフトスタート電圧Vsfを、それぞれ表すチャートである。
なお、入力電圧VI、監視電圧Vm、基準電圧Vb、出力電圧Vo、ソフトスタート電圧Vsfは、図1にて、それぞれ同じ符号で示した箇所で測定される電圧である。
【0018】
これに対して、図6は、図2に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を有する実施形態の電圧監視回路を用いた場合において、電源装置の外部電源電圧が100Vのときの入力電圧VI、監視電圧Vm、基準電圧Vb、出力電圧Vo、ソフトスタート電圧Vsfの時間変化を、図7は、同様に、本開示に係る実施形態の電圧監視回路を用いた場合において、電源装置の外部電源電圧が200Vのときの、入力電圧VI、監視電圧Vm、基準電圧Vb、出力電圧Vo、ソフトスタート電圧Vsfの時間変化を、それぞれ表すチャートである。
【0019】
図4図7においては、横軸は時刻tを、縦軸は電圧Vを示す。そして、これらのいずれの図も、入力電圧VIが、時刻t0でONとなったあと徐々に上昇して時刻t1で一定の電圧(例えば100Vまたは200V)に達し、次いでこの一定電圧を保持したあと、時刻t2で電圧が徐々に下降し始め時刻t3に完全にゼロになり、その後時刻t4で再び電圧が徐々に上昇し始め時刻t5で元の電圧に戻り、しばらくしたあと、時刻t6で今度は瞬間的にOFFとなり時刻t7ですぐに復帰するという一連の変化を生じたときに、監視電圧Vm、基準電圧Vb、出力電圧Vo、ソフトスタート電圧Vsfがそれぞれどのように変化するかを示している。
【0020】
まず、図4に示す電圧変化について詳細に説明する。図4は、前述の通り、図3に示すような従来の監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を有する従来の電圧監視回路を用いた場合において100Vの公称入力電圧を外部電圧として用いた場合の電圧変化を示している。図4において、時刻t0より前の時刻では、入力電圧VI、監視電圧Vm、基準電圧Vb、出力電圧Vo、ソフトスタート電圧Vsfは、すべてOFF状態でありゼロとなっている。時刻t0で、入力電圧VIが徐々に上昇すると、監視電圧Vmもそれに応じて徐々に上昇する。監視電圧Vmが上昇し始めた直後は、基準電圧Vb、出力電圧Vo、ソフトスタート電圧Vsfはまだゼロである。しばらくして、まず基準電圧Vbが70Vまで矩形状に(垂直に)立ち上がる。その後、すでに徐々に上昇し始めていた監視電圧Vmが基準電圧Vbを超えたとき、ソフトスタート電圧Vsfが立ち上がり、その後は一定の速度で上昇するようになっている。これに合わせ、出力電圧Voも、ソフトスタート電圧Vsfに制御されながら一定の速度で上昇することとなる。
【0021】
次いで、時刻t2で入力電圧VIが徐々に下降し始めると、入力電圧VIの変化は緩やかなので監視電圧Vmもこれに遅れることなく徐々に低下しはじめる。そして、監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回った時、これをトリガーとして、ソフトスタート電圧Vsfは矩形状に(垂直に)OFFとなる。これにより、出力電圧もOFFとなって徐々にゼロに低下する。その後、入力電圧VIは、時刻t3に完全にゼロになる。
【0022】
ここで、時刻t2からt3までの間に、監視電圧Vmは下降し続けるが、監視電圧Vmが下降し始めてから基準電圧Vbを下回るようになるまでの時間Δt2Aは、下降し始める前の監視電圧Vm、基準電圧Vb及び、監視電圧Vmの下降速度に依存する。
入力電圧VIは、その後、時刻t4で再び徐々に上昇し始めるが、そのときの他の電圧の変化は、時刻t0で入力電圧VIが上昇し始めたときの変化とまったく同じなので説明を省略する。
【0023】
次に、入力電圧VIは、時刻t6で瞬間的にOFFする(電圧が垂直に低下する)。このとき、監視電圧Vmと出力電圧Voとは、入力電圧VIの変化が急激なため十分に追従できず一定の速度で低下することになるが、監視電圧Vmは、時刻t7の前に、基準電圧Vbを下回った時(時刻t6A)ソフトスタート電圧VsfがOFFするように設定されている。
【0024】
その後、時刻t7において、入力電圧VIは復帰し監視電圧Vmもほぼ垂直に(矩形的に)復帰するが、このとき、ソフトスタート電圧VsfもONされ一定の速度で上昇する。これに合わせ、下降中だった出力電圧Voも、ソフトスタート電圧Vsfに制御されながら一定の速度で上昇して元の電圧に戻る。
【0025】
このように、時刻t7の前の時刻t6Aで、ソフトスタート電圧Vsfが一旦OFFすることにより、その後の時刻t7で入力電圧が復帰したとき、ソフトスタート電圧VsfをOFFからONに切り替えることができ、入力電圧の復帰時における出力電圧のソフトスタートが可能になる。
なお、時刻t6~t7の間、基準電圧は、入力電圧VIの変化は瞬間的なので、これに影響されることなく一定に保持されている。
【0026】
次に、図5に示す電圧変化について、説明する。図5は、同じく(基準電圧が入力電圧にかかわらず1つだけしか設定されていない)従来の電圧監視回路を用いた場合であるが、公称入力電圧が100Vではなく200Vである点が、図4に示すものと異なっている。記載を簡明にするため、図4と相違する点だけについて説明する。
【0027】
第1の相違点は、図4のチャートでは、入力電圧VIが時刻t2で下降し始め、同時に監視電圧Vmも下降し始めたあと、監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回るようになるまでの時間がΔt2Aであったのに対比して、図5においては、この時間が、Δt2Aより長いΔt2Bとなっている点である。これは主に、図4図5では、基準電圧Vbが70Vと同じであるのに、下降し始める前の監視電圧Vmが図5のものは図4のものより高くなっていることに原因がある。
【0028】
第2の相違点は、図4では、時刻t6で、入力電圧VIが瞬間的にOFFし同時に監視電圧Vmも下降し始めたあと、監視電圧Vmは時刻t6Aで基準電圧Vbを下回るのに対し、図5においては、入力電圧VIが瞬間的にOFFになったあと時刻t7で復帰するまでに、監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回るようになることがない点で図4に示したものと異なっている。
【0029】
このため、図5に示すものでは、ソフトスタート電圧VsfはいったんOFFして再度ONするという動作をすることがなく、出力電圧Voはソフトスタートが働かないまま入力電圧VIの復帰に伴って復帰することなる。その結果、図示するように、出力電圧Voには好ましくない過渡的な鋭いピークVpが生じてしまう。
【0030】
従来は、このように、100Vを用いた場合にも200Vを用いた場合にも基準電圧Vbは同じなので、100Vのときは、ソフトスタートが働きピークVpは発生しないが、200Vのときはソフトスタートが働かずピークVpが発生してしまうという問題があった。
【0031】
次に、図6に示す電圧変化について説明する。図6は、図2に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を有する実施例の電圧監視回路を用いた場合であって、電源装置の外部電源電圧が100Vのときの電圧変化を示しているが、電圧変化は、図4に示す場合とまったく同様である。
【0032】
これに対して、図7は、図2に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を有する実施例の電圧監視回路において電源装置の外部電源電圧が200Vのときの電圧変化を示すものであるが、従来の電圧監視回路を200Vの入力電圧に用いた場合の図である図5の電圧変化とは大きく異なり改善されている。
【0033】
すなわち、時刻t0のあと、監視電圧Vmは上昇するが、基準電圧Vbは、監視電圧Vmの上昇に伴って、図2に示した関係に従って2段階の値をとり、まず70Vの値をとったあと監視電圧Vmがさらに上昇すると2段階目で140Vの値をとるようになっている。
【0034】
このように基準電圧Vbが2段階の値をとることによって、時刻t2のあと、監視電圧Vmが下降し始めたとき、監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回るようになるまでの時間Δt2Cを、100Vに対する時間Δt2Aと同じようにすることができる。すなわち、監視電圧Vmも下降し始めたあと、監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回るようになるまでの時間は、下降し始める前の監視電圧Vm、基準電圧Vb及び、監視電圧Vmの下降速度に依存するが、監視電圧Vmの下降速度は100Vと200Vとではさほど変わらないものの監視電圧Vmが100Vから200Vに高まった分、基準電圧Vbも70Vから140Vに高くすることによって、Δt2C=Δt2Aとすることができるのである。
【0035】
同様にして、基準電圧Vbは可変なので、入力電圧が200Vの場合には、基準電圧Vbを100V使用時の70Vではなく140Vとすることによって、時刻t6で瞬間的な電圧の低下のあと時刻t7で復帰するまでの間(図7では時刻t6Aに)に必ず監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回るようにし、その結果ソフトスタートが必ず発生するようにすることができる。これにより、ピークVpの発生をおさえることができる。
【0036】
次に、図2に示すように、監視電圧Vmに応じた基準電圧の自動的な変更を可能にする電圧監視回路の構成について説明する。
【0037】
図8は、実施形態の電圧監視回路1の内部構成を示す回路図である。電圧監視回路1は、監視電圧Vmを入力する電圧入力部2と、基準電圧Vbに所定比αで比例する比例基準電圧V1を生成する比例基準電圧生成部3と、前記電圧入力部2から入力した監視電圧Vmに所定比αで比例する比例監視電圧V2とを比較して比較結果信号S1、S2を生成する電圧比較部4と、生成された比較結果信号S1、S2を出力する信号出力部5、6とを備える。比較結果信号S1、S2はソフトスタート回路M1、M2にトリガー信号として入力される。このように、基準電圧Vbは、ソフトスタートを開始するための閾値として機能する。
【0038】
第1の実施形態の電圧監視回路1において、電圧入力部2から入力された監視電圧Vmは、相互に直列接続された固定抵抗R21及びR22により分圧された比例監視電圧V2として、電圧比較部4を構成するコンパレータ41の負側入力端子に入力される。
なお、入力電圧を監視電圧として検出する場合、入力電圧には、ACリプルや入力ラインノイズを含んでいるので、コンデンサC1を設け、でリプル除去やノイズ除去により電圧平滑化を行っている。
【0039】
一方、コンパレータ41の正側入力端子には、比例基準電圧V1が入力される。コンパレータ41では、比例監視電圧V2と比例基準電圧V1とが比較され、その大小により比較結果信号S1、S2が生成される。例えば、S1信号は、導通、非導通の2値をとる信号として、また、S2信号は、ハイとローとの2値をとる信号として出力される。そして、比例監視電圧V2が比例基準電圧V1より低下すると、S1信号は導通状態となってソフトスタート回路M1に入力され、その結果ソフトスタート回路M1はオン状態となりソフトスタート信号を出力する。また、このとき、S2信号はハイ状態となってソフトスタート回路M2に入力され、その結果ソフトスタート回路M2もオン状態となってソフトスタート信号を出力する。
【0040】
上記のような基準電圧Vbに対する自動選択機能を実現するために、電圧監視回路1の比例基準電圧生成部3は以下のように構成されている。
【0041】
電圧監視回路1の比例基準電圧生成部3は、相互に直列接続された上流側抵抗部Zu及び下流側抵抗部Zwを備え、基準電圧Voは、一定の電圧値を有する回路電源電圧Vsをこれらの抵抗部Zu、Zwで分圧することにより生成される。すなわち、

Vo=Vs×Zw/(Zu+Zw) (1)

と表せる。ここで、上流側抵抗部Zu及び下流側抵抗部Zwのいずれか一方(例えば、図1に示す実施形態においては下流側抵抗部Zw)が可変抵抗部として構成され、他の一方、例えば、上流側抵抗部Zuは上流側抵抗素子R3よりなる固定抵抗部として構成される。
【0042】
そして、ここで可変抵抗部として機能する下流側抵抗部Zwは、第1抵抗素子R4よりなる基本抵抗部31と、基本抵抗部31に並列接続された追加抵抗部32とを備え、追加抵抗部32は、第1抵抗素子R4と並列に接続されている第2抵抗素子R41と、第2抵抗素子R41に直列接続されたスイッチング素子Q11と、前記電圧境界値Vdと監視電圧Vmとの大小を判定して判定結果信号Sjを出力する監視電圧範囲判定部33とを有する。
【0043】
前記スイッチング素子Q11は、監視電圧範囲判定部33から判定結果信号Sjを入力し、前記判定結果信号Sjが示す、監視電圧VIと電圧境界値Vbとの大小に応じて、オン状態とオフ状態とを切り替え、それにより前記第2抵抗素子R41と第1抵抗素子R4との断接を司るように構成されている。
【0044】
監視電圧範囲判定部33において、電圧境界値Vbは、回路電源電圧Vsを抵抗素子R11と抵抗素子R12とで分圧して生成され、コンパレータ42の正側入力端子に入力され、一方、監視電圧Vmは、コンパレータ42の負側入力端子に入力され、これらの電圧が比較され、出力された判定結果信号Sjがハイ・ローの信号としてスイッチング素子Q11に出力される。スイッチング素子Q11は、判定結果信号Sjがハイのとき駆動されて導通状態となり、判定結果信号Sjがローのときは駆動されず非導通となるよう機能する。
【0045】
例えば、電圧監視回路1が用いられる装置10の入力電圧VIが、100Vを標準とする第1の電圧範囲Vr1と、200Vを標準とする第2の電圧範囲Vr1との両方にまたがって使用可能となっており、これらの電圧範囲Vr1、Vr2を区切る電圧境界値Vbとして、150Vがあらかじめ設定されている場合を考える。入力電圧VIが第1の電圧範囲Vr1にあるときは、監視電圧Vmも第1の電圧範囲Vr1にあり、このとき、Vm<Vdなので、監視電圧範囲判定部33からの判定結果信号Sjはハイとなり、スイッチング素子Q11は駆動されて導通状態となる。したがって、可変抵抗部Zwの抵抗は、第1抵抗素子R4と第2抵抗素子R41とを並列接続したものとなり、その結果、可変抵抗部Zwの抵抗は、

Zw1=1/(1/R4+1/R41) (2)

となる。
【0046】
一方、監視電圧Vmが電圧境界値Vb(=150V)以上の、200Vを標準とする第2の電圧範囲Vr2にあるときは、Vm>Vdなので、判定結果信号Sjはローとなり、スイッチング素子Q11は駆動されず非導通状態となる。その結果、可変抵抗部Zwの抵抗は、第1抵抗素子R4の分だけとなり、

Zw2=R4 (3)

となる。
【0047】
ここで、Zw1<Zw2 なので、(1)式より、監視電圧VIが200Vを標準とする第2の電圧範囲Vr2にあるときの基準電圧Vo2は、監視電圧VIが100Vを標準とする第1の電圧範囲Vr1にあるときの基準電圧Vo1より高くなる。そして、例えば、固定抵抗R3、R4、R41の抵抗値を調整することにより、Vo1=70V、Vo2=140Vとすることができる。
【0048】
以上の説明から明らかなように、本開示に係る発明の電圧監視回路1は、下流側抵抗部Zwの構成において、第1抵抗素子R4よりなる基本抵抗部31に加えて、基本抵抗部31に並列接続された追加抵抗部32を設けることによって、追加抵抗部32がない場合には、単一の基準電圧V0しか得られなかったのに対して、監視電圧に応じて複数の相互に異なる値に設定された基準電圧を選択することができるという作用をもたらすことができる。
なお、以上の説明において、コンパレータ41の代わりにトランジスタを使用することもでき、また、抵抗を構成する抵抗素子として、通常の固定抵抗の代わりにツェナーダイオードを用いることもできる。
また、前述の説明においては、上流側抵抗部Zuを固定抵抗部、下流側抵抗部Zwを可変抵抗部として説明を進めてきたが、これを逆にして、上流側抵抗部Zuを可変抵抗部、下流側抵抗部Zwを固定抵抗部として構成することもでき、この場合も、本明細書にて説明をした原理により同様の効果をえることができる。
【0049】
図8に示す実施形態に係る電圧監視回路1の比例基準電圧生成部3では、可変抵抗部となる下流側抵抗部Zwが有する追加抵抗部32は1個であるが、これを多数並列にもうけることによって、n(n>1)個の境界値により区切られたn+1個の電圧領域に応じてn+1個の基準電圧を生成することのできる比例基準電圧生成部を構成することができる。
【0050】
図9は、n=3とした場合の変形例の比例基準電圧生成部3Aを示す構成図である。比例基準電圧生成部3Aは、相互に直列接続された上流側抵抗部Zu及び下流側抵抗部Zwを備え、基準電圧Vrは、一定の電圧値を有する回路電源電圧Vsをこれらの抵抗部Zu、Zwで分圧することにより生成される。下流側抵抗部Zwは、可変抵抗部として構成され、一方、上流側抵抗部Zuは上流側抵抗素子R3よりなる固定抵抗部として構成される。
【0051】
そして、可変抵抗部として機能する下流側抵抗部Zwは、第1抵抗素子R4よりなる基本抵抗部31と、基本抵抗部31に並列接続された3つの追加抵抗部32A,32B、32Cとを備える。追加抵抗部32A,32B、32Cは、いずれも、図8に示した基準電圧生成部3の追加抵抗部32と同様の構成を有する。
【0052】
追加抵抗部32Aは、第1抵抗素子R4と並列に接続されている第2抵抗素子R41A、第2抵抗素子R41Aに直列接続されたスイッチング素子Q11Aと、電圧境界値VdAと監視電圧Vmとの大小を判定して判定結果信号SjAを出力する監視電圧範囲判定部33Aとを有する。
【0053】
同様に、追加抵抗部32Bは、第1抵抗素子R4と並列に接続されている第2抵抗素子R41B、第2抵抗素子R41Bに直列接続されたスイッチング素子Q11Bと、電圧境界値VdBと監視電圧Vmとの大小を判定して判定結果信号SjBを出力する監視電圧範囲判定部33Bとを有し、また、追加抵抗部32Cは、第1抵抗素子R4と並列に接続されている第2抵抗素子R41C、第2抵抗素子R41Cに直列接続されたスイッチング素子Q11Cと、電圧境界値VdBと監視電圧Vmとの大小を判定して判定結果信号SjCを出力する監視電圧範囲判定部33Cとを有する。
【0054】
監視電圧範囲判定部33A、33B、33Cの内部構成は、図8に示した追加抵抗部32の監視電圧範囲判定部33について説明した通りであるので、説明を省略する。
【0055】
ここで、監視電圧Vmは、n個(この例ではn=3)の境界値VdA、VdB、VdC(VdA<VdB<VdCとする)で区切られた、4つの電圧領域のいずれかに含まれた値をとることになる。
【0056】
例えば、監視電圧VmがVdAより小さいとき(Vm<VdA)、Vmは、判定基準となる境界値VdA、VdB、VdCのどれよりも小さいので、すべての監視電圧範囲判定部33A、33B、33Cで、判定結果信号SjA、SjB、SjCがハイとなり、スイッチング素子Q11A、Q11B、Q11Cがすべて導通状態となる。そして、このときの合成抵抗は、以下のZw11として表される。

Zw11=1/(1/R4+1/R41A+1/R41B+1/R41C) (4)
【0057】
次に、VdA<Vm<VdBのとき、同様にして合成抵抗を算出すると、

Zw12=1/(1/R4+1/R41B+1/R41C) (5)

と表され、VdB<Vm<VdCのとき、及び、Vm>VdCのときはそれぞれ、

Zw13=1/(1/R4+1/R41C) (6)
Zw14=1/(1/R4) (7)

と表される。そして、Zw11<Zw12<Zw13<Zw14 であるから、これを、式(1)に導入すると、それぞれの合成抵抗に対応する基準電圧をVb11、Vb12、Vb13、Vb14として、Vb11<Vb12<Vb13<Vb14 となり、基準電圧Vbは、Vmが高ければ高いほど高くなることがわかる。
【0058】
そして、監視電圧Vmの値に応じて、可変抵抗部となる下流側抵抗部Zwの抵抗値も変化し、その結果、下流側抵抗部Zwと上流抵抗部Zuの抵抗値の関数で表される基準電圧が変化することになる。
【0059】
図10は、図9に示した比例基準電圧生成部3Aによって生成される基準電圧Vbの、監視電圧Vmに対する依存性を示したグラフである。監視電圧Vmの増加に伴い、基準電圧Vbも自動的に段階的することがわかる。
【0060】
図10に示した、基準電圧Vbの、監視電圧Vmに対する依存性は、比例基準電圧生成部3Aの代わりに、複数の追加抵抗部を直列接続することによっても実現することができる。このような比例基準電圧生成部3Bを、他の変形例として、図11に示す。
【0061】
比例基準電圧生成部3Bも、比例基準電圧生成部3Aと同様に、相互に直列接続された上流側抵抗部Zu及び下流側抵抗部Zwを備え、基準電圧Voは、一定の電圧値を有する回路電源電圧Vsをこれらの抵抗部Zu、Zwで分圧することにより生成され、下流側抵抗部Zwは、可変抵抗部として構成され、一方、上流側抵抗部Zuは上流側抵抗素子R3よりなる固定抵抗部として構成されている。
【0062】
ここで可変抵抗部として機能する下流側抵抗部Zwは、第1抵抗素子R4よりなる基本抵抗部31と、基本抵抗部31に直列接続された3つの追加抵抗部32E,32F、32Gとを備える。比例基準電圧生成部3Bの追加抵抗部32E,32F、32Gは、それぞれ、第2抵抗素子R41E、R41F、R41G、及び、スイッチング素子Q11E,Q11F、Q11Gを備えるが、第2抵抗素子R41E、R41F、R41Gは、いずれも第1抵抗素子R4と直列に接続され、スイッチング素子Q11E,Q11F、Q11Gは、対応する第2抵抗素子R41E、R41F、R41Gに対してそれぞれ並列に接続されている。
【0063】
スイッチング素子Q11E,Q11F、Q11Gは、監視電圧範囲判定部33E、33F、33Gからの判定結果信号SjE、SjF、SjGによって駆動される。
【0064】
例えば、追加抵抗部32Eの判定結果信号SjEがハイのとき、スイッチング素子Q11Eは駆動されて導通状態となり、追加抵抗部32Eの抵抗はゼロとなる。
そして、追加抵抗部32E,32F、32Gに異なる境界値VdE、VdF、VdGを割り当てることにより、追加抵抗部32E,32F、32Gの全部の抵抗をゼロにしたり、2つをゼロにしたり、1つだけをゼロにしたり、または、全部の抵抗をゼロではないものにしたりすることができ、これにより、合成抵抗を変え、よって基準電圧を、監視電圧に応じて変化させることができる。その結果、比例基準電圧生成部3Bによっても、図10に示す、監視電圧と基準電圧の関係を実現することができる。
【0065】
電圧監視回路1の電圧監視の対象となる装置として、図1の電源装置10を例示したが、このほかにも応用例が種々考えられる。このうちの1つとして、出力装置の出力電圧の異常低下を監視する場合について説明する。
【0066】
図12は、電圧監視回路1を用いた出力装置20を示す概略回路構成図ある。出力装置220は、入力端28から、交流電圧を入力し変圧して出力端29から直流電圧を出力する。23はスイッチングレギュレータ部、そして、24はスイッチング用ドライバである。
【0067】
そして、出力端29の出力電圧Voが、監視電圧Vmとして、実施形態の電圧監視回路1により監視される。電圧監視回路1は、すでに説明したように、比例基準電圧生成部3、監視電圧Vmを所定の基準電圧Vbと比較して比較結果信号を出力する電圧比較部4を備える。そして、比較結果信号Sは、制御部M4に入力され、M4にて出力を停止する制御が行われる。
【0068】
図13は、図3に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を有する従来の電圧監視回路を用いた場合において、公称出力電圧が100Vのときの出力電圧Vo、監視電圧Vm、基準電圧Vbの時間変化を、図14は、同様に従来の電圧監視回路を用いた場合において、公称出力電圧が200Vのときの、出力電圧Vo、監視電圧Vm、基準電圧Vb、の時間変化を、それぞれ表すチャートである。
なお、出力電圧Vo、監視電圧Vm、出力電圧Voは、図12にて示された対応する符号の箇所で測定されたものである。
【0069】
これに対して、図15は、図2に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を有する本開示に係る実施形態の電圧監視回路において、公称出力電圧が100Vのときの出力電圧Vo、監視電圧Vm、基準電圧Vbの時間変化を、図16は、同様に、本開示に係る実施形態の電圧監視回路において、公称出力電圧が200Vのときの、出力電圧Vo、監視電圧Vm、基準電圧Vbの時間変化を、それぞれ表すチャートである。
【0070】
図13~16において、横軸は時刻tを、縦軸は電圧Vを示す。そして、これらのいずれの図も、出力電圧Voが、時刻t0でONとなった徐々に上昇して一定の電圧(例えば100Vまたは200V)に達し、次いでこの一定電圧を保持したあと、時刻t1で電圧が徐々に下降し始め、最終的にゼロになったときに、出力電圧Vo、監視電圧Vm、基準電圧Vbがそれぞれどのように変化するかを示している。
【0071】
まず、図13に示す電圧変化について説明する。図13は、上述の通り、図3に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係(基準電圧が監視電圧の大きさにかかわらず1つだけしか設定されていない)を有する従来の電圧監視回路を用いた場合において100Vの公称入力電圧を外部電圧として用いた場合の電圧変化を示している。図13において、時刻t0より前の時刻では、出力電圧Vo、監視電圧Vm、基準電圧Vb、は、すべてOFF状態でありゼロとなっている。時刻t0で、出力電圧Voが徐々に上昇すると、監視電圧Vmもそれに応じて徐々に上昇する。監視電圧Vmが上昇し始めしばらくして、基準電圧Vbが70Vまで矩形状に(垂直に)立ち上がる。その後、すでに徐々に上昇し始めていた監視電圧Vmは、基準電圧Vbを超え、出力電圧Voの変化に合わせ一定の値に到達した後その一定値を継続する。時刻t1で、出力電圧Voの低下の開始にあわせ、監視電圧Vmも徐々に下降し始め、基準電圧Vbを下回った時点で、電圧監視回路1から比較結果信号Sが出力され、その結果、制御部M4が働き出力電圧Voを遮断しゼロにする。
このとき、時刻t1から監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回るまでの遮断遅延時間Δt1Aは、監視電圧Vm、基準電圧Vb及び監視電圧Vbの低下速度に依存する。
【0072】
次に、図14に示す電圧変化について説明する。図14は、同じく(基準電圧が監視電圧の大きさにかかわらず1つだけしか設定されていない)従来の電圧監視回路を用いた場合の図であるが、公称入力電圧が100Vではなく200Vである点が、図13に示すものと異なっている。
【0073】
そして、図13のチャートにおいて、時刻t1から、監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回るようになるまでの時間が、Δt1Aであったのに対比して、図14においては、この時間が、Δt1Aより長いΔt1Bとなっている。これは主に、図13図14では、基準電圧Vbが70Vと同じであるのに、主に下降し始める前の監視電圧Vmが図5のものは図4のものより高くなっていることに原因がある。
そして、この時間Δt1Bが長くなると、電源装置20の遮断までの時間がかかってしまい、電源装置の遮断遅延によるシステム全体の保護機能に支障をきたす恐れが生じてくるという問題がある。
【0074】
次に、図15に示す電圧変化について説明する。図15は、図2に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を有する実施例の電圧監視回路を用いた場合であって、電源装置の外部電源電圧が100Vのときの電圧変化を示しているが、電圧変化は、図13に示す場合とまったく同様であるので、詳細説明は省略する。
【0075】
これに対して、図16は、は、図2に示すような監視電圧Vmと基準電圧Vbとの関係を有する実施例の電圧監視回路を用いた場合において、電源装置の外部電源電圧が200Vのときの電圧変化を示すものであるが、従来の電圧監視回路を用いた場合で200Vの入力電圧に用いたときの図である図14の電圧変化とは大きく異なっている。
すなわち、時刻t0のあと、監視電圧Vmは上昇するが、基準電圧Vbは、監視電圧Vmの上昇に伴って、図2に示した関係に従って2段階の値をとり、まず70Vの値をとったあと2段階目で140Vの値をとるようになっている。
【0076】
それにより、時刻t1において、出力電圧Voの低下に伴い監視電圧Vmも低下するがその際の、監視電圧Vmが基準電圧Vbを下回るようになるまでの時間は、図14では、Δt1Bと、Δt1Aよりも長いものであったのに対比して、図16においては、この時間が、Δt1AΔt1CとほぼΔt1Aと同じ長さになっている。図16図14との差は、図16のものでは、監視電圧Vmの高さに合わせて基準電圧Vbも高くしたことによる。
【0077】
このように、選択する基準電圧Vbを監視電圧Vm、したがって、公称の出力電圧Voに合わせて変えることができるので、遮断遅延時間を、公称の出力電圧にかかわらず一定に保てることができ、電源出力装置の定電圧異常低下に伴うシステムを故障から保護することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 電圧監視回路
2 電圧入力部
3 比例基準電圧生成部
4 電圧比較部
5、6 信号出力部
11 整流器
12 力率改善回路
13、23 はスイッチングレギュレータ部
14、24 スイッチング用ドライバ
18、28 装置の入力端
19、29 装置の出力端
20 出力装置
31 基本抵抗部
32、32A,32B、32C、32E,32F、32G 追加抵抗部
33、33A、33B、33C、33E、33F、33G 監視電圧範囲判定部
41、42 コンパレータ
R4 第1抵抗素子
R41、R41A、R41B、R41C、R41E、R41F、R41G 第2抵抗素子
M1、M2 ソフトスタート回路
M4 制御部
Q11、Q11A、Q11B、Q11C、Q11E,Q11F、Q11G スイッチング素子
S1、S2 トリガー信号
Zu 上流側抵抗部
Zw 下流側抵抗部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16