IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人 名城大学の特許一覧 ▶ 国立大学法人電気通信大学の特許一覧

特開2023-58923テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部
<>
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図1
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図2
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図3
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図4
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図5
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図6
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図7
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図8
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図9
  • 特開-テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058923
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/10 20060101AFI20230419BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20230419BHJP
   A63H 33/08 20060101ALI20230419BHJP
   E04B 1/34 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
F16B5/10 M
F16B19/00 F
A63H33/08 C
E04B1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168720
(22)【出願日】2021-10-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年6月1日、The 4th international Symposium on Swarm Behavior and Bio-inspired Robotics 2021の予稿集に要約として、テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部に関する研究について公開した。 令和3年6月1日、The 4th international Symposium on Swarm Behavior and Bio-inspired Robotics 2021にて、テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部に関する研究について公開した。 令和3年6月6日、ロボティクス・メカトロニクス講演会2021 in Osakaの予稿集に要約として、テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部に関する研究について公開した。 令和3年6月6日、ロボティクス・メカトロニクス講演会2021 in Osakaの説明動画にて、テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部に関する研究について公開した。 令和3年6月7日、ロボティクス・メカトロニクス講演会2021 in Osakaの質疑応答にて、テンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部に関する研究について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 将成
(72)【発明者】
【氏名】池本 有助
(72)【発明者】
【氏名】新竹 純
【テーマコード(参考)】
2C150
3J001
3J036
【Fターム(参考)】
2C150BC01
2C150CA06
2C150EH06
2C150EH16
2C150EH25
2C150FB14
2C150FB43
2C150FD08
3J001FA09
3J001GA06
3J001GB01
3J001KA19
3J036AA01
3J036BA01
(57)【要約】
【課題】複雑な構造を有したテンセグリティ構造を容易に構築することができるテンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部を提供する。
【解決手段】テンセグリティ構造物S1は板材10を複数組み合わせた立体的な剛体10Cと、複数の剛体10C同士を、張力を作用させつつ連結する連結部材11と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を複数組み合わせた立体的な剛体と、
複数の前記剛体同士を、張力を作用させつつ連結する連結部材と、
を備えるテンセグリティ構造物。
【請求項2】
前記連結部材は、弾性体である請求項1に記載のテンセグリティ構造物。
【請求項3】
各前記板材には、スリットが形成されており、
前記剛体は、各前記板材の前記スリットを嵌め合わせて形成されている請求項1又は請求項2に記載のテンセグリティ構造物。
【請求項4】
各前記板材は、同じ形状である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のテンセグリティ構造物。
【請求項5】
張力を作用させつつ複数の板材同士を連結する連結部材を係止するテンセグリティ構造物の係止部であって、
前記連結部材を挿通する隙間を形成する一対の腕部を備え、
少なくとも一方の前記腕部に環状をなしたチューブが挿通され、
前記隙間に挿通された前記連結部材には、少なくとも一方の前記腕部を挿通した前記チューブが接触するテンセグリティ構造物の係止部。
【請求項6】
前記隙間に近づく向きに凹んでおり、前記チューブが嵌る凹部が形成されている請求項5に記載のテンセグリティ構造物の係止部。
【請求項7】
前記凹部の先端面は、前記凹部の底面に向けて先端方向に傾斜している請求項6に記載のテンセグリティ構造物の係止部。
【請求項8】
前記凹部よりも先端側が先細り形状である請求項6又は請求項7に記載のテンセグリティ構造物の係止部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、棒状部材の両端部を繋ぐように、2本の紐状部の両端部を保持した棒状部材が開示されている。この棒状部材の両端部には、他の棒状部材の紐状部を係止することができ、これによって複数の棒状部材同士を、紐状部を介して連結したテンセグリティ構造を構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-325395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の棒状部材は、一方向(すなわち、一次元)に延びる構造であり、三次元的に拡がるテンセグリティ構造を構築することには限界がある。また、特許文献1の棒状部材は、他の棒状部材の紐状部を係止しても、外れ易いと考えられ、テンセグリティ構造の構築を困難にする要因になると考えられる。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、複雑な構造を有したテンセグリティ構造の構築が容易なテンセグリティ構造物、及びテンセグリティ構造物の係止部を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明のテンセグリティ構造物は、
板材を複数組み合わせた立体的な剛体と、
複数の前記剛体同士を、張力を作用させつつ連結する連結部材と、
を備える。
【0007】
このテンセグリティ構造物は、板材を複数組み合わせた立体的な剛体を用いて複雑な構造を有したテンセグリティ構造を容易に構築することができる。
【0008】
第2発明のテンセグリティ構造物の係止部は、
張力を作用させつつ複数の板材同士を連結する連結部材を係止するテンセグリティ構造物の係止部であって、
前記連結部材を挿通する隙間を形成する一対の腕部を備え、
少なくとも一方の前記腕部に環状をなしたチューブが挿通され、
前記隙間に挿通された前記連結部材には、少なくとも一方の前記腕部を挿通した前記チューブが接触する。
【0009】
このテンセグリティ構造物の係止部は、接触するチューブと連結部材との間に摩擦力が生じるので、連結部材が隙間から脱落したり、隙間内においてずれたりすることを防止できる。このため、複雑な構造を有したテンセグリティ構造を容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のテンセグリティ構造物を用いたテンセグリティ構造を示す斜視図である。
図2】2つの板材を示す斜視図である。
図3】アームに対して、複数の連結部材、鍔部、及びチューブを取り付ける順番の一例を示す斜視図である。
図4】実施例2のテンセグリティ構造物の係止部を用いたテンセグリティ構造を示す斜視図である。
図5】板材に連結部材を取り付けた平面図、及び係止部を拡大して示す部分拡大図を示す。
図6】板材の係止部に他の連結部材を挿通した状態を示す部分拡大斜視図である。
図7】板材の係止部に他の連結部材を挿通した後、チューブを取り付けた状態を示す部分拡大斜視図である。
図8】他の実施例の板材を示す平面図である。
図9】他の実施例の係止部を示す部分拡大平面図である。
図10】他の実施例の剛体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0012】
第1発明のテンセグリティ構造物の連結部材は、弾性体であり得る。この構成によれば、連結部材を伸張させることによって、連結部材に弾性エネルギーを蓄えることができ、剛体同士を相対的に変位させることができるようになり、より様々な形態のテンセグリティ構造を構築することができる。
【0013】
第1発明のテンセグリティ構造物の各板材には、スリットが形成されており、
剛体は、各板材のスリットを嵌め合わせて形成され得る。この構成によれば、スリット同士を嵌め合わせるという簡単な構造で立体的な剛体を容易に形成できる。
【0014】
第1発明のテンセグリティ構造物の各板材は、同じ形状であり得る。この構成によれば、部品の種類を減らすことができ、部品を作製する段取りを少なく抑えることができる。
【0015】
第2発明のテンセグリティ構造物の係止部は、隙間に近づく向きに凹んでおり、チューブが嵌る凹部が形成され得る。この構成によれば、凹部にチューブが嵌ることによって、係止部からチューブが脱落することを防止することができる。
【0016】
第2発明のテンセグリティ構造物の係止部の凹部の先端面は、凹部の底面に向けて先端方向に傾斜し得る。この構成によれば、凹部の先端面にチューブが引っかかり易くなり、チューブが凹部から離脱し難くすることができる。
【0017】
第2発明のテンセグリティ構造物の係止部は、凹部よりも先端側が先細り形状であり得る。この構成によれば、凹部にチューブを嵌め込み易くすることができる。
【0018】
次に、第1発明のテンセグリティ構造物を具体化した実施例1、及び第2発明のテンセグリティ構造物の係止部を具体化した実施例2ついて、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<実施例1>
実施例1のテンセグリティ構造1は、図1に示すように、複数の板材10を組み合わせた立体的な剛体10C、及び連結部材11を備えたテンセグリティ構造物S1によって構築されている。
【0020】
[板材について]
複数の板材10は、例えば、平板状のアクリル樹脂から切り出して作製される。各板材10は、同じ外形形状である。板材10は、図2に示すように、一対のアーム10AがV字状に延びた形態をなしている。一対のアーム10Aがなす角度θは、109.5°である。各アーム10Aの先端部は、基部に比べて幅寸法(アーム10Aの長手方向に直交する方向の寸法)が細く形成されている。一対のアーム10Aが連結する板材10の中央部10Eには、スリット10Bが形成されている。スリット10Bは、一対のアーム10Aから離れる向きに延びている。スリット10Bの幅寸法は、先端から奥部にかけて概ね同じ寸法である。スリット10Bの幅寸法は、板材10の厚み寸法(切り出す前の平板状のアクリル樹脂の板厚)よりも僅かに小さく形成されている。
【0021】
[剛体について]
剛体10Cは、2つの板材10のスリット10B同士を嵌め合わせることによって形成される(図1参照)。板材10は、アクリル製である。このため、スリット10Bは、スリット10B同士を嵌め合わせる際に相手の板材によって幅が広がる方向に押し広げられ、相手の板材10を挟み込むように相手の板材10のスリット10Bに嵌合する。これによって、スリット10B同士が嵌め合わされた板材10同士は、容易に外れない。図1に示すように、1つの剛体10Cにおいて4つのアーム10Aは、スリット10Bが嵌め合わされた部分(すなわち、中央部10E)から放射状に延びた形態になる。剛体10Cの各アーム10Aの先端は、正四面体の各頂点に対応する位置に配置される。ここでいう剛体とは、厳密な剛体を意味するものではなく、押圧された場合に大きく変形しない(実質的に変形しない)ことを意味する。
【0022】
[連結部材について]
連結部材11は、一方向に延びた形態をなしている。連結部材11は、可撓性を有している。連結部材11には、例えば、ゴムや、シリコーン樹脂等の弾性を有する弾性体が用いられる。連結部材11の両端部の各々には、係止孔11Aが貫通して形成されている(図3参照)。
【0023】
[テンセグリティ構造の一例]
テンセグリティ構造物S1(剛体10C、及び連結部材11)を用いたテンセグリティ構造の一例について説明する。図1に示すテンセグリティ構造1は、複数の剛体10C及び複数の連結部材11によって構成されている。
【0024】
先ず、剛体10Cの各アーム10Aの先端部に、環状をなした鍔部10Dを挿通する(図3参照)。鍔部10Dは、例えば、板材10に用いるものと同じ平板状のアクリル樹脂から切り出して作製される。アーム10Aの先端部に挿通した鍔部10Dは、アーム10Aの先端部から鍔状に張り出す(図1参照)。
【0025】
複数の剛体10Cは、図1に示すように、同じ姿勢で一方向に並べられる。具体的には、複数の剛体10Cは、同じ姿勢にされて、各々のスリット10Bが一直線状になるように一列に並べられる。
【0026】
隣合う剛体10Cの各々において、同じ姿勢のアーム10Aの先端部同士が1つの連結部材11で連結される。具体的には、1つの連結部材11の両端の各々の係止孔11Aに、同じ姿勢であって、スリット10Bに平行に位置するアーム10Aの先端部が1つずつ挿通される。そして、隣合う剛体10Cにおいて対向する板材10のアーム10Aの先端部同士を連結部材11で連結する。隣合う剛体10Cにおいて対向する板材10のアーム10Aの先端部は、四角形状の各角に位置するように配置されている。四角形状の各角に位置するように配置されたアーム10Aの内、隣合うアーム10Aの先端部同士は、1つの連結部材11で連結される。
【0027】
連結部材11を係止したアーム10Aの先端部には、鍔部10Dが挿通される(図3参照)。鍔部10Dを挿通したアーム10Aの先端部には、ゴム、又はシリコーン樹脂によって形成されたチューブ12が挿通される(図3参照)。チューブ12は、アーム10Aの先端部に挿通されると僅かに拡径する。チューブ12にアーム10Aの先端部から抜ける方向に力が付与されると、アーム10Aの先端部とチューブ12との間に摩擦力が生じ、これによって、チューブ12がアーム10Aの先端部から脱落し難くなる。こうして、テンセグリティ構造1が構築される。
【0028】
テンセグリティ構造1において、連結部材11は、僅かに伸張した状態(すなわち、張力を作用させた状態)で剛体10C同士を連結している。連結部材11は、弾性体なので一つの剛体10Cの姿勢を保持しつつ他の剛体10Cに力を付与すると、剛体10Cの相対位置を変化させることができる。そして、他の剛体10Cへの力の付与を止めると、剛体10C同士の相対位置は、元の位置に復元する。
【0029】
次に、実施例1の作用効果を説明する。
【0030】
テンセグリティ構造物S1は、板材10を複数組み合わせた立体的な剛体10Cと、複数の剛体10C同士を、張力を作用させつつ連結する連結部材11と、を備える。この構成によれば、板材10を複数組み合わせた立体的な剛体10Cを用いて複雑な構造を有したテンセグリティ構造1を容易に構築することができる。
【0031】
テンセグリティ構造物S1の連結部材11は、弾性体である。この構成によれば、連結部材11を伸張させることによって、連結部材11に弾性エネルギーを蓄えることができ、剛体10C同士を相対的に変位させることができるようになり、より様々な形態のテンセグリティ構造1を構築することができる。
【0032】
テンセグリティ構造物S1の各板材10には、スリット10Bが形成されており、剛体10Cは、各板材10のスリット10Bを嵌め合わせて形成されている。この構成によれば、スリット10B同士を嵌め合わせるという簡単な構造で立体的な剛体10Cを容易に形成できる。
【0033】
テンセグリティ構造物S1の各板材10は、同じ形状である。この構成によれば、部品の種類を減らすことができ、部品を作製する段取りを少なく抑えることができる。
【0034】
<実施例2>
実施例2のテンセグリティ構造物S2は、図4に示すように、板材20の外形形状、連結部材21の外形形状等が実施例1と相違する。実施例1と同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
[板材について]
複数の板材20は、例えば、平板状のアクリル樹脂から切り出して作製される。各板材20は、同じ外形形状である。板材20は、一方向に延びた形態をなしている。板材20の両端部の各々には、係止部22が設けられている。
【0036】
[係止部について]
係止部22は、図5に示すように、一対の腕部22Aを備えている。一対の腕部22Aは、互いに平行をなして、板材20の長手方向に沿って延びている。一対の腕部22Aは、切り出す前の平板状のアクリル樹脂が拡がる向きに並んでいる。一対の腕部22Aの間には、隙間22Bが形成されている。隙間22Bの幅方向は、切り出す前の平板状のアクリル樹脂が拡がる向きに平行である。隙間22Bの幅寸法は、先端から奥部にかけて概ね同じ寸法である。
【0037】
係止部22には、一対の凹部22Dが形成されている。凹部22Dは、先端面22E、底面22F、及び基端面22Gによって形成されている。先端面22Eは、凹部22Dにおいて係止部22の先端側に位置している。底面22Fは、先端面22Eの隙間22Bに近い端に連結し、隙間22Bが延びる方向に沿って係止部22の基端側に延びている。基端面22Gは、底面22Fの基端側に連結し、隙間22Bが延びる方向に直交し、且つ隙間22Bから離れる向きに延びている。
【0038】
凹部22Dの先端面22Eは、凹部22Dの底面22Fから離れるにつれて、凹部22Dの基端面22Gに近づく向きに傾斜している。換言すると、凹部22Dの先端面22Eは、凹部22Dの底面22Fに向け、係止部22の先端に向けて(すなわち、先端方向)に傾斜している。凹部22Dが凹む向きは、隙間22Bの対向する各面の法線方向に沿った方向である。
【0039】
係止部22において、凹部22Dよりも先端側は、隙間22Bに近づく向きに傾斜した傾斜面22Hが形成されている。係止部22において、凹部22Dよりも先端側は、先細り形状とされている。
【0040】
[連結部材について]
連結部材21は、円環状をなしている。連結部材21は、可撓性を有している。連結部材21には、例えば、ゴムや、シリコーン樹脂等が用いられる。連結部材21は、1つの板材20の2つの係止部22の各々の隙間22Bに挿通され、2つの係止部22に掛け渡されている。つまり、一対の腕部22Aによって形成された隙間22Bに連結部材21が挿通される。連結部材21は、僅かに伸張した状態で2つの係止部22に掛け渡されている。こうして、テンセグリティ構造物S2が構成されている。
【0041】
2つのテンセグリティ構造物S2を連結する手順の一例について説明する。先ず、図6に示すように、一つの板材20の一方の係止部22の隙間22Bに、他のテンセグリティ構造物S2の連結部材21A(以下、単に、他の連結部材21Aともいう)を係止する。そして、図7に示すように、他の連結部材21Aを係止した係止部22にチューブ12を取り付ける。具体的には、チューブ12は、一対の腕部22Aに挿通され、凹部22Dに嵌め込まれる。このとき、チューブ12は、2つの傾斜面22Hによって押し広げられて一対の腕部22Aに挿通され、凹部22Dに到達すると、縮径する。こうして、凹部22Dにチューブ12が嵌る。
【0042】
板材20の長手方向において、隙間22Bと、凹部22Dとが重なる寸法L1は、チューブ12の軸方向の寸法L2よりも短い。このため、他の連結部材21Aを挿通した係止部22にチューブ12を取り付けると、チューブ12に他の連結部材21Aが押し付けられた状態になる。つまり、隙間22Bに挿通された他の連結部材21Aには、腕部22Aを挿通したチューブ12が接触する。このため、他の連結部材21Aに隙間22Bに対して移動するように力が付与された場合、チューブ12と他の連結部材21Aとの間に摩擦力が生じる。これによって、隙間22Bに対する他の連結部材21Aのずれが防止される。
【0043】
凹部22Dの先端面22Eが延びる向きは、隙間22Bから他の連結部材21Aが引き出される向きと交差している。このため、他の連結部材21Aを隙間22Bから取り外す向きに(すなわち、腕部22Aの先端に向けて)引っ張っても、凹部22Dに取り付けられたチューブ12は、凹部22Dの先端面22Eに係止した状態が維持されるので、凹部22Dから外れることが防止される。これによって、他の連結部材21Aが係止部22から外れることが防止される。
【0044】
[テンセグリティ構造の一例]
このように複数のテンセグリティ構造物S2を連結することによって、例えば、図4に示すようなテンセグリティ構造2を構成することができる。このテンセグリティ構造2は、概ね平行に配置した一対のテンセグリティ構造物S2を三対用いている。各対のテンセグリティ構造物S2は、他の対のテンセグリティ構造物S2に概ね直交するように配置されている。テンセグリティ構造2において、係止部22には、僅かに伸張した状態(すなわち、張力を作用させた状態)で複数の板材20同士を連結する連結部材21を係止している。
【0045】
次に、実施例2の作用効果を説明する。
【0046】
テンセグリティ構造物S2の係止部22は、張力を作用させつつ複数の板材20同士を連結する連結部材21を係止する。この係止部22は、連結部材21を挿通する隙間22Bを形成する一対の腕部22Aを備え、一対の腕部22Aに環状をなしたチューブ12が挿通され、隙間22Bに挿通された連結部材21には、一対の腕部22Aを挿通したチューブ12が接触する。この構成によれば、接触するチューブ12と連結部材21との間に摩擦力が生じるので、連結部材21が隙間22Bから脱落したり、隙間22B内においてずれたりすることを防止できる。
【0047】
テンセグリティ構造物S2の係止部22は、隙間22Bに近づく向きに凹んでおり、チューブ12が嵌る凹部22Dが形成されている。この構成によれば、凹部22Dにチューブ12が嵌ることによって、チューブ12が係止部22から脱落することを防止することができる。
【0048】
テンセグリティ構造物S2の係止部22の凹部22Dの先端面22Eは、凹部22Dの底面22Fに向けて先端方向に傾斜している。この構成によれば、凹部22Dの先端面22Eにチューブ12が引っかかり易くなり、チューブ12が凹部22Dから離脱し難くすることができる。
【0049】
テンセグリティ構造物S2の係止部22は、凹部22Dよりも先端側が先細り形状である。この構成によれば、凹部22Dにチューブ12を嵌め込み易くすることができる。
【0050】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1、2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)各実施例とは異なり、一部の連結部材を他の連結部材よりも柔らかく伸縮し易い材質に変更してもよい。この場合、柔らかい連結部材が係止したアームの先端部同士は、他の連結部材が係止したアームの先端部同士に比べて、相対距離が変更し易くなる。このため、柔らかい連結部材を用いることによって、所定の方向に選択的に動作するテンセグリティ構造を構築することが可能になる。
(2)一対のアームがなす角度は、実施例1に開示されたものに限らない。
(3)図8に示すように、板材110の2つのアーム110Aの先端部の各々に係止部22を設けてもよい。
(4)実施例2とは異なり、一方の腕部にのみチューブを挿通してもよい。また、凹部や凸部を一つのみ設けてもよい。つまり、チューブを少なくとも一方の腕部に挿通してもよい。そして、少なくとも一方の腕部を挿通したチューブが隙間に挿通された連結部材に接触してもよい。
(5)実施例2とは異なり、係止部32を図9に示すような形態としてもよい。隙間32Bを形成する一対の腕部32Aの各々の先端部には、呼込み面32Cが形成されている。各呼込み面32Cは、腕部32Aの先端に向かうにつれて、互いの間の寸法が拡がるように傾斜している。これにより、隙間32Bに他の連結部材や、チューブを挿通し易くすることができる。
(6)実施例1とは異なり、複数の板材を組み合わせて剛体を構成してもよい。例えば、図10に示すように、2つのスリット30Bが形成された板材30によって、2つの板材10を連結して剛体210Cを構成してもよい。つまり、板材の形状は、同じでなくてもよい。
(7)各実施例とは異なり、連結部材を紐や鎖などで構成してもよい。
(8)板材の材質は、各実施例のものに限らない。
【符号の説明】
【0051】
S1,S2…テンセグリティ構造物
10,20,30,110…板材
10B,30B…スリット
10C,210C…剛体
11,21,21A…連結部材
12…チューブ
22,32…係止部
22A,32A…腕部
22B…隙間
22D…凹部
22E…先端面
22F…底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10