(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058935
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/11 20200101AFI20230419BHJP
H05B 45/48 20200101ALI20230419BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20230419BHJP
【FI】
H05B47/11
H05B45/48
H05B45/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168741
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516131843
【氏名又は名称】ANP株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521452681
【氏名又は名称】DC Power Vil.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】門馬 友香
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】牧野 瑛子
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
(72)【発明者】
【氏名】村 文夫
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273BA19
3K273CA02
3K273CA12
3K273EA02
3K273EA21
3K273EA36
3K273FA03
3K273FA07
3K273FA14
3K273FA27
3K273GA06
3K273GA07
(57)【要約】
【課題】複数の照明器具に直流電力を供給する照明システムにおいて、供給電圧の変化に応じて照明器具を調光可能な照明システムを提供すること。
【解決手段】照明システム1は、直流電力を供給する直流電源部と、その出力端に接続される直流給電線3A,3Bと、これらに並列接続する複数の照明器具4A~4Cとを備える。照明器具4Aは、複数のLEDを接続したLED列と、直流電源部からLED列への供給電圧の変化に応じて当該LED列を調光する制御回路とを有する。直流電源部は、交流電力を直流電力に変換する交直変換部2A,2Bと、再生可能エネルギー電源5,6との組合せである。電源5,6の供給電圧が変化した場合、その変化に応じてLED列が調光される。電力の供給元が、再生可能エネルギー電源5,6と交直変換部2A,2Bとの間で切り替わる際も、供給電力が途切れることなくスムーズに切り替わる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を供給する直流電源部と、
前記直流電源部の出力端に接続される直流給電線と、
前記直流給電線に並列に接続される複数の照明器具と、を備え、
前記照明器具は、
複数の半導体発光素子を接続した発光素子列と、
前記直流電源部から前記発光素子列への供給電圧の変化に応じて当該発光素子列を調光する制御回路と、を有することを特徴とする照明システム。
【請求項2】
請求項1記載の照明システムにおいて、
前記直流電源部は、交流電力を直流電力に変換する交直変換部、再生可能エネルギー電源、もしくは、蓄電池、または、これらの組合せを有することを特徴とする照明システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の照明システムにおいて、
前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部と再生可能エネルギー電源とを有し、前記再生可能エネルギー電源の供給電圧が前記交直変換部の供給電圧よりも高いことを特徴とする照明システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の照明システムにおいて、
前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部と蓄電池とを有し、前記蓄電池はダイオードを介して直流電力を前記直流給電線に供給し、前記蓄電池の供給電圧が前記交直変換部の供給電圧よりも低いことを特徴とする照明システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の照明システムにおいて、
前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部を有し、前記交直変換部は、当該交直変換部の供給電圧を変更する電圧可変部を有することを特徴とする照明システム。
【請求項6】
請求項5記載の照明システムにおいて、
前記電圧可変部は、外部からの調光信号を受信し、当該調光信号に応じて前記交直変換部の供給電圧を変更するように構成されることを特徴とする照明システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の照明システムにおいて、
前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部を有し、前記交直変換部は、6相以上の相数の整流回路を有することを特徴とする照明システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の照明システムにおいて、
前記発光素子列は、当該発光素子列を構成する複数の半導体発光素子のうちの少なくとも1つの半導体発光素子をバイパスするバイパス路を有し、当該バイパス路上に半導体スイッチ素子が設けられ、
前記制御回路は、前記発光素子列に印加される前記供給電圧の大きさに応じて前記半導体スイッチ素子の開度を調整するように構成されていることを特徴とする照明システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の照明システムにおいて、
前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部を有し、前記交直変換部は、前記直流給電線の両端に設けられていることを特徴とする照明システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の照明システムにおいて、
前記直流電源部は、少なくとも、蓄電池と、当該蓄電池の劣化状況を検出するバッテリーチェッカーとを備えることを特徴とする照明システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の照明システムにおいて、
正極および負極の前記直流給電線と接地点と間を結ぶ抵抗中点アース回路を備えることを特徴とする照明システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の照明システムにおいて、
前記照明器具の正極および負極の端子間を結ぶアーク抑止回路を備えることを特徴とする照明システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の照明システムは、トンネル照明用であり、前記直流給電線がトンネルに沿って配設され、前記複数の照明器具が前記トンネルに沿って間隔を空けて配置されていることを特徴とする照明システム。
【請求項14】
請求項13記載のトンネル照明用の照明システムは、さらに、トンネル外部に設けられた照度センサを備え、前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部を有し、前記交直変換部は、前記照度センサで測定された照度に応じて供給電圧を変更する電圧可変部を有することを特徴とする照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の照明器具に直流電力を供給する照明システムに関し、特に、照明器具に調光機能を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
気候変動に関する政府間パネルでは、2050年までに温室効果ガス(CO2)の排出量を実質ゼロにする目標を立てており、この目標に従って、様々な技術開発がなされている。社会インフラを支える道路・公共施設等の照明においては、従来、低消費電力、長寿命等の利点から、発光ダイオード(LED)が多用されているが、更なる技術開発が求められている。
【0003】
LEDのような半導体発光素子は直流電力によって発光することから、街路灯、トンネル照明、天井照明等における複数の照明器具への電力供給システムを、従来の交流電力の供給システムから直流電力の供給システム(以下、直流給電システムと呼ぶ。)へ切り替えることの検討が進められている(特許文献1参照)。つまり、共通の直流電源部を設けて、その直流電源部で商用交流電力を直流電力に変換し、変換された直流電力を正極および負極の給電線を介して、複数の照明器具に供給するシステムである。
【0004】
直流給電システムの方が、再生可能エネルギーとの相性がよく、例えば、太陽光発電や風力発電を電源に用いる場合に、発電された直流電力から交流電力への変換が不要になり、変換時の電力損失が生じないことが期待される。同様に、停電時のバックアップ用に蓄電池を用いる場合も、蓄電池の直流電力をそのまま供給できるという期待もある。
また、従来の交流電力の供給システムでは、停電時に交流電力から蓄電池の直流電力へ切り替えるために、交流電源との断絶を検知してから、蓄電池に接続するという制御が必要になり、照明器具が一時的に消灯してしまう。これに対して、直流給電システムでは、蓄電池との常時接続が可能になって、停電時の一時的な消灯の回避を期待できる。
【0005】
一方、LEDはその特性上、印加する直流電圧や温度の僅かな変動に対して、流れる電流が大きく変動してしまうため、一般的には、LED電流を一定にする定電流回路を設けて、照明器具の光の品質低下やLEDの破損などを回避している。例えば、特許文献1の照明システムは、直流電源部、これに接続される正極側および負極側の直流給電線、および、直流給電線に並列に接続された複数の照明器具を備え、照明器具には、高速でオンオフを繰り返すスイッチング素子の動作によって、LED電流を一定にする定電流回路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、直流給電システムが本来、電圧変動の許容幅が大きいという特徴をもっていることに着目し、直流電源部から照明器具への供給電圧が変化した際に、その変化に応じて照明器具を調光できれば、例えば周辺環境(日光量など)の変化に照明器具の照度を連動させるといった再生可能エネルギーの有効利用が可能な照明システムを実現できると考え、鋭意開発に取り組んできた。しかしながら、特許文献1の定電流回路は、LEDに直列接続された電流検出抵抗からLED電流値を検出し、この電流値が所定の大きさになるようにスイッチング素子のデューティーを調整するため、直流電源部からの供給電圧を増減させても、LED電流が一定に制御されるだけで、複数のLEDの照度をその供給電圧に応じて変化させることはできなかった。
【0008】
本発明の目的は、複数の照明器具に直流電力を供給する照明システムにおいて、供給電圧の変化に応じて照明器具を調光可能な照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、直流電源部からの供給電圧の変化に応じて半導体発光素子を調光する制御回路の開発に成功し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明に係る照明システムは、
直流電力を供給する直流電源部と、
前記直流電源部の出力端に接続される直流給電線と、
前記直流給電線に並列に接続される複数の照明器具と、を備え、
前記照明器具は、
複数の半導体発光素子を接続した発光素子列と、
前記直流電源部から前記発光素子列への供給電圧の変化に応じて当該発光素子列を調光する制御回路と、を有することを特徴とする。
ここで、前記直流電源部は、交流電力を直流電力に変換する交直変換部、再生可能エネルギー電源、もしくは、蓄電池、または、これらの組合せを有することが好ましい。
【0010】
上記の構成の照明システムを用いれば、直流電源部(例えば、交直変換部、再生可能エネルギー電源、蓄電池など)からの供給電圧が変化した場合に、その変化に応じて制御回路が発光素子列を調光することができる。さらに、直流電源部が、交直変換部、再生可能エネルギー電源および蓄電池のうちの少なくとも2種類の電源によって構成されていて、それぞれの供給電圧の変化に伴って直流電力の供給元を順番に切り替えたい場合に、直流であるから、つまり、単純に供給電圧が高い電源が優先的に供給元になるから、供給電力が途切れることなく供給元がスムーズに切り替わる。よって、直流電源部の切り替えを制御する機構を必要としない。そして、引き続き、切り替わった直流電源部の供給電圧に応じて、制御回路が発光素子列を調光することができる。
このように直流電源部の供給電圧が変化した際に、その変化に応じて照明器具が調光されるので、例えば周辺環境(日光量など)の変化に連動して照明器具の照度を変えるといった調光制御が可能になる。
【0011】
また、前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部と再生可能エネルギー電源とを有し、前記再生可能エネルギー電源の供給電圧が前記交直変換部の供給電圧よりも高いことが好ましい。
【0012】
再生可能エネルギー電源(太陽光発電、風力発電など)は、周辺環境(日光量や風速など)の変化によって、供給可能な電圧が変化するという特性がある。上記の構成によれば、交直変換部からの供給電圧によって所定の照度を確保しつつ、再生可能エネルギー電源(太陽光発電、風力発電など)の供給電圧が交直変換部の供給電圧よりも高くなる期間は、環境負荷の低い再生可能エネルギーが優先的に供給される。よって、商用交流電力の消費を抑制することができ、環境負荷の低減および電力料金の負担軽減などのメリットがある。
加えて、太陽光発電の供給電圧が交直変換部の供給電圧よりも高い(日光量が多い)期間に、その日光量に応じた照明器具の調光が可能になる。例えば昼間の日光が強い時間帯は、照明器具の照度を上げ(または下げ)たり、夕方の日光が弱い時間帯は、照明器具の照度を下げ(または上げ)たりするなど、再生可能エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0013】
また、前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部と蓄電池とを有し、前記蓄電池はダイオードを介して直流電力を前記直流給電線に供給し、前記蓄電池の供給電圧が前記交直変換部の供給電圧よりも低いことが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、交直変換部が一定以上の供給電圧を維持している期間は、その供給電圧が蓄電池の供給電圧よりも高いため、蓄電池は直流電力を供給しない。停電等で交直変換部が供給電圧を維持できなくなり、その供給電圧が蓄電池の供給電圧よりも低くなると、蓄電池からの直流電力の供給が開始される。従って、交流電力の停電等の際に、照明器具が消灯することなく、点灯を継続することができる。
【0015】
また、前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部を有し、前記交直変換部は、当該交直変換部の供給電圧を変更する電圧可変部を有することが好ましい。さらに、前記電圧可変部は、外部からの調光信号を受信し、当該調光信号に応じて前記交直変換部の供給電圧を変更するように構成されることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、直流電源部である交直変換部に電圧可変部を設けたので、交直変換部の供給電圧を積極的に変更することができ、照明器具を所望の照度で点灯させることができる。また、外部からの調光信号によって供給電圧を変更するように電圧可変部を構成すれば、調光の遠隔操作や、センサ等の検出値に応じた自動調光を実現することができる。
【0017】
また、前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部を有し、前記交直変換部は、6相以上の相数の整流回路を有することが好ましい。
上記の構成によれば、交直変換部からの直流電力に含まれる高調波が、従来のスイッチング電源の照明システムよりも少なくなり、電磁ノイズの発生が抑制されて信頼性の高い照明システムを提供することができる。
【0018】
また、前記発光素子列は、当該発光素子列を構成する複数の半導体発光素子のうちの少なくとも1つの半導体発光素子をバイパスするバイパス路を有し、当該バイパス路上に半導体スイッチ素子が設けられ、
前記制御回路は、前記発光素子列に印加される前記供給電圧の大きさに応じて前記半導体スイッチ素子の開度を変えるように構成されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成において、例えば、直流電源部の供給電圧が最大である場合にバイパス路の半導体スイッチ素子の開度が全開になるように設定されているとする。全ての電流が発光素子列を流れるため、発光素子列は最大(調光率100%)の明るさになる。そして、供給電圧が低下した場合、制御回路はその低下に伴って、半導体スイッチ素子の開度を全開から閉じる方向に変更するので、その閉度に応じてバイパスする電流量が増えていき、そのバイパス路が設けられている半導体発光素子の照度が低下する。このようにして、供給電圧に応じた発光素子列の調光が実行される。
上記に限られず、例えば、供給電圧が最大である場合に半導体スイッチ素子の開度を全閉にして、バイパス路を流れる電流量が最大(発光素子列に流れる電流が最小)になるようにしてもよい。発光素子列はもっとも暗くなる。そして、制御回路は、供給電圧の低下に伴って、半導体スイッチ素子の開度を全閉から開ける方向に変更して、その開度に応じてバイパスする電流量が減っていき、バイパス路が設けられている半導体発光素子を流れる電流が増えていくので、照度が上昇する。
【0020】
また、前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部を有し、前記交直変換部は、前記直流給電線の両端に設けられていることが好ましい。この構成のように、交直変換部を直流給電線の両端に設けることで、一方の交直変換部に断線などのトラブルが生じても、もう一方の交直変換部からの電力供給によって照明器具が完全に消灯してしまうことを回避できる。
【0021】
また、前記直流電源部は、少なくとも、蓄電池と、当該蓄電池の劣化状況を検出するバッテリーチェッカーとを備えることが好ましい。この構成によれば、遠隔で蓄電池の劣化状況を確認することができる。
【0022】
また、本発明に係る照明システムは、さらに、正極および負極の前記直流給電線と接地点と間を結ぶ抵抗中点アース回路を備えることが好ましい。この構成によれば、通電時に抵抗中点アース回路が安全回路として作用して、直流給電線の絶縁抵抗の劣化を検出することができる。
【0023】
また、本発明に係る照明システムは、さらに、前記照明器具の正極および負極の端子間を結ぶアーク抑止回路を備えることが好ましい。この構成によれば、スイッチ解放時にアーク抑止回路が安全回路として作用して、アーク発生を防止し、断線を回避することができる。
【0024】
また、本発明に係る照明システムは、トンネル照明用であり、前記直流給電線がトンネルに沿って配設され、前記複数の照明器具が前記トンネルに沿って間隔を空けて配置されていることが好ましい。
ここで、前記トンネル照明用の照明システムは、さらに、トンネル外部に設けられた照度センサを備え、前記直流電源部は、少なくとも、交流電力を直流電力に変換する交直変換部を有し、前記交直変換部は、前記照度センサで測定された照度に応じて供給電圧を変更する電圧可変部を有することが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、トンネル照明において、トンネル外部の照度(日光量)が変化した際、照度センサの検出値に応じて交直変換部の供給電圧が変更され、これに連動して、照明器具が調光されるので、例えばトンネル外部が明るいときはトンネル内も明るくし、トンネル外部が暗いときはトンネル内も暗くするといったトンネル照明の調光制御を実現することができる。この構成では、照度センサの検出値に応じた調光信号を、多数の照明器具に向けて個別に送信する必要がなく、交直変換部における供給電圧の変更のみで調光することができるので、トンネル照明の調光制御の構成をシンプルかつ安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトンネル照明システムの全体構成を示す図。
【
図2】前記照明システムの交直変換器の一例を示す図。
【
図3】前記照明システムの供給電圧と調光率の関係の一例を示す図。
【
図4】前記調光制御によるトンネル内の照度の変化の一例を示す図。
【
図5】前記照明システムの照明器具の第1例を示す図。
【
図7】前記照明システムの照明器具の第2例を示す図。
【
図8】前記照明システムの照明器具の第3例を示す図。
【
図9】前記照明システムの抵抗中点アース回路の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図を用いて本発明にトンネル照明システムの実施形態を具体的に説明する。
【0028】
図1は、トンネル照明システムの全体構成を表す概略図である。この照明システム1は、直流電力の主電源として照明システムの両端に設けられた交直変換器2A,2Bと、交直変換器2A,2Bの正極の出力端間を結ぶ正極の直流給電線3Aと、その負極の出力端間を結ぶ負極の直流給電線3Bと、直流給電線3A,3Bに並列に接続された複数のLED照明器具4A~4Cと、第1補助電源としての太陽光発電機5と、第2補助電源としての風力発電機6と、非常用電源としての蓄電池7と、安全回路である抵抗中点アース回路8と、を含んでいる。
【0029】
一対の直流給電線3A,3Bは、トンネルに沿って配設され、交直変換器2A,2Bは、トンネルの出入口付近に設置されており、いずれか一方の交直変換器が使用不能になっても、もう一方の交直変換器からの電力供給が継続されるので、トンネル内が完全に消灯してしまうことを回避できる。また、交直変換器2A,2Bは、トンネル外部の照度センサ9と信号線で接続され、照度センサ9が検出するトンネル外部の照度信号を取得する。
図2(A)に交直変換器2Aの具体例として、センタータップ式の整流回路の回路構成を示す。交直変換器2Aは、交流電源からの交流電圧を電力変換するトランスTと、当該トランスTの二次コイルの両端にそれぞれアノードが接続されたダイオードD1,D2と、電圧可変部として機能する負荷時タップ切替器21とを有する。2つの整流素子D1,D2のカソードは接続されて正極の出力端を形成し、正極の直流給電線3Aに接続される。また、トランスTの二次コイルの中点は負極の出力端を形成し、負極の直流給電線3Bに接続される。反対側の交直変換器2Bも交直変換器2Aと同じ構成であり、これらは、交流電力を直流電力に変換し、正極の直流給電線3Aを介して、LED照明器具4A~4Cの正極端子に印加電圧(正極電位)を与える。負荷時タップ切替器21は、照度センサ9からの照度信号に応じてトランスTの巻数比を変更する装置であり、トンネル外部の照度に応じて、直流電力の供給電圧を変更するために用いられる。
【0030】
なお、
図2では単相の交直変換部を例示したが、三相交流を6相以上の相数の整流回路を用いて交直変換すれば、高調波がさらに少なくなり、ノイズを生じ難い直流電力を供給できる。例えば12相整流回路や24相整流回路を用いるとよい。
【0031】
図2(B)に示す変形例の交直変換器2Cでは、トランスTの二次コイルの両端が分岐していて、追加のダイオードD3,D4を経由して、それらの分岐線同士が接続され、別系統の正極の直流給電線3Cに直流電力を出力する。そして、2本の正極の直流給電線3A,3Cをトンネルに沿って配設し、照明器具の正極端子を両方の直流給電線3A,3Cに接続しておけば、どちらか一方の直流給電線の断線による照明器具の消灯を回避することができる。
【0032】
次に、複数のLED照明器具4A~4Cはトンネルに沿って間隔を空けて配設され、それぞれの正極端子は、逆流防止用のダイオードD5~D7を介して正極の直流給電線3Aに接続される。負極端子は負極の直流給電線3Bに接続される。照明器具4Aの具体例は、
図5~
図8を用いて後で述べる。
【0033】
次に、太陽光発電機5および風力発電機6は、どちらも正極の出力端がダイオードD8,D9を介して正極の直流給電線3Aに接続され、発電機5,6の出力が直流給電線3Aの電圧に達したら、これらの再生可能エネルギーが直流給電線3Aに供給されるようになっている。
【0034】
蓄電池7は、正極の出力端がダイオードD10のアノードに接続され、このダイオードD10のカソードが直流給電線3Aに接続される。加えて、ダイオードD10の極性とは反対向きのダイオードD11とスイッチ素子SW1と抵抗R1からなる直列接続が、ダイオードD10に並列に接続される。スイッチ素子SW1は、蓄電池7の電圧が規定値(充電開始電圧)より低下した場合にオンし、直流給電線3Aの電圧によって充電が開始される。また、スイッチ素子SW1は、充電によって蓄電池7の電圧が別の規定値(充電停止電圧)に達したらオフし、充電を停止する。これらの充電の開始・停止は自動的に実行される。また、蓄電池7はバッテリーチェッカー71を有し、蓄電池の電圧値や劣化状態を示す情報を遠隔操作で確認するために用いられる。
【0035】
なお、本実施形態の照明システム1において直流電源は、主電源(交直変換器3A,3B)と、補助電源(太陽光発電機5および風力発電機6)と、非常用電源(蓄電池7)とを含むが、主電源のみ、または補助電源のみであってもよいし、主電源と補助電源の組合せ、主電源と非常用電源の組合せ、または、補助電源と非常用電源の組合せでもよい。
【0036】
照明器具4A~4Cは同じ構成の照明器具であり、照明器具4Aは、光源として複数のLEDを含む。これらのLEDは、複数のLEDのグループであるLED列を形成し、そのようなLED列を複数個持っている。
【0037】
また、照明器具4Aは、直流給電線3Aからの供給電圧に応じて複数のLED列を調光する制御回路を有する。制御回路の具体例は、
図5~
図8を用いて後で述べる。ここでは、複数のLED列を供給電圧に応じて調光可能な照明器具4A~4Cを利用したトンネル照明システム1の特徴点について説明する。
【0038】
図3に、照明システム1の供給電圧(V)と調光率(%)の関係がリニアなケースを例示する。この例では、主電源の交直変換器2Aの供給電圧V1の範囲を225~300Vとし、補助電源の太陽光発電機5(または風力発電機6)の供給電圧V2(またはV3)の範囲を300~380Vとし、非常用電源の蓄電池7の供給電圧V4の範囲を100~190Vとしている。すなわち、調光率の全範囲(5%~100%)に対応する供給電圧の範囲(100~380V)が複数に区分され、異なる種類の直流電源がそれぞれの区分における電力供給を担うようになっている。
【0039】
図3では、太陽光発電機5の供給電圧V2が交直変換器2Aの供給電圧V1よりも高く設定されている。
【0040】
太陽光発電機5は、日光量の変化によって供給可能な電圧が変化しやすいが、時間帯や気象情報に基づく供給電圧の予測も可能である。ここでは、V1<V2の設定によって、太陽光発電機5の供給電圧V2が交直変換器2Aの供給電圧V1(225~300V)よりも高くなる期間に太陽光発電という再生可能エネルギーが優先的に供給されるようにした。同時に、太陽光発電機5が300V以上の供給電圧V2を維持できない期間は、主電源である交直変換部からの供給電圧V1によって所定の照度が確保されるようにした。なお、太陽光発電機5から交直変換器2Aへの供給元の切り替えは、直流給電システムがベースになっているから、単純に供給電圧が高い電源が優先的に供給元になるのであり、供給電力が途切れることなくスムーズに実行される。
【0041】
図4に、照明システム1の調光制御によるトンネル内の照度の変化の一例を示す。上のグラフは、一日の供給電圧の変化であり、太陽光発電機5の供給電圧V2と交直変換器2Aの供給電圧V1とを示す。ここでは、供給電圧V1を一定にしている。照明システム1によれば、日中(8時から16時)は太陽光発電機5の供給電圧V2の変化に応じて照明器具が調光されることで、下のグラフに示すようにトンネル外部の日光量の変化とほぼ同じように、トンネル内の照度が変化するようになる。トンネル外部が明るいときはトンネル内も明るくし、トンネル外部が暗いときはトンネル内も暗くするといった調光制御によって、トンネルを利用する運転者に優しいトンネル内の照度管理を実現できる。
【0042】
図3は、照明システム1が、交直変換器2Aの供給電圧V1の範囲(225~300V)においても、照明器具を調光制御できることを示している。つまり、トンネル外部の照度(日光量)の変化を照度センサ9が検出し、その照度信号に基づいて交直変換器2A,2Bの負荷時タップ切換器21が動作して、交直変換器2A,2Bの供給電圧V1が変更される。従って、照明器具4A~4Cの制御回路は、太陽光発電機5の供給電圧V2の変化時と同様に、交直変換器2A,2Bの供給電圧V1の変化に連動した調光を実行することができる。交直変換器2A,2Bにおいて供給電圧V1が一括して調整されるので、照度センサの照度信号を多数の照明器具に向けて個別に送信する必要がなくなり、トンネル照明の調光制御の構成がシンプルになる。
【0043】
このように、太陽光発電機5から交直変換器2Aに供給元が切り替わった後も、引き続き供給電圧の変化に応じた照明器具4A~4Cの調光が行われるので、225~380Vの広い供給電圧の範囲における連続的な調光制御が可能になる。ここでは、分かり易く、日光量の変化に応じたトンネル内の照度調整について述べたが、本発明の照明システムは、日光量以外の条件に基づく調光制御にも適用できる。
【0044】
また、
図3では、蓄電池6の供給電圧V4が交直変換器2Aの供給電圧V1よりも低く設定されている。
【0045】
交直変換器2Aが一定以上の供給電圧V1を維持している期間は、その供給電圧V1が蓄電池7の供給電圧V4よりも高いため、蓄電池7は直流電力を供給しない。停電等で外部からの交流電力の供給が停止した場合は、点灯したまま交直変換器2Aの供給電圧V1が190Vまで徐々に低下して、非常用電源の蓄電池7による電力供給が開始される。そして、蓄電池7の保持電力量の範囲で、点灯が継続される。また、蓄電池7の供給電圧V4が徐々に低下するにつれて、その供給電圧V4の変化に応じた照明器具4A~4Cの調光が行われる。つまり、調光率の下限(5%)まで照度が低下し、供給電圧V4が100V以下になるタイミングで消灯する。
【0046】
以下、LED照明器具4Aの具体例を
図5~
図8を用いて説明する。
【0047】
図5の照明器具41は、複数のLEDからなるLED列51~53を有する。
図5に示すように、照明器具41の正極端子に1つ目のLED列51のアノードが接続し、LED列51のカソードが分岐して、分岐の一方が2つ目のLED列51のアノードに接続し、分岐の他方が電界効果トランジスタ(FET1)のドレインに接続する。FET1のソースはさらに分岐して、分岐の一方がダイオードD12のカソードに接続し、分岐の他方が3つ目のLED列53のアノードに接続する。ダイオードD12のアノードと2つ目のLED列51のカソードが合流し、FET2のドレインに接続する。そして、3つ目のLED列53のアノードとFET2のソースが交流し、定電流制御回路(CC制御回路)60を介して、照明器具41の負極端子に接続する。
【0048】
図5の照明器具41は、FET1,2のオンまたはオフによって、複数のLED列51~53の接続状態が直列から並列に切り替わる。このことを
図6(A),(B)を用いて説明する。
図6では5つのLED列51~55の接続状態が直列から並列に切り替わる様子を示す。例えば供給電圧が最大の380Vである場合、CC制御回路60は、供給電圧を検知して、FET1~4をオフにするゲート電圧を発するようにFET制御回路61を動作させる。これによって、すべてのFET1~4がオフを維持し、
図6(A)に示すように、5つのLED列51~55の直列接続回路が形成される。つまり、正極端子からの電流は、LED列51→LED列52→ダイオードD12→LED列53→ダイオードD13→LED列54→ダイオードD14→LED列55の順に流れる。CC制御回路60が、電流を一定に制御するため、照明器具41は調光率100%で点灯する。
【0049】
次に、供給電圧が閾値まで低下した場合、CC制御回路60は、FET1~4がオンにするゲート電圧を発するようにFET制御回路61を動作させる。これによって、すべてのFET1~4がオンになり、
図6(B)に示すように、LED列51を除く4つのLED列52~55が、LED列52と54の直列接続と、LED列53と55の直列接続とを形成し、2つの直列接続の並列接続である並列接続回路が形成される。つまり、LED列51からの電流は分岐して、電流の半分はLED列52→FET2→LED列54→FET4の順に流れ、電流の残りの半分はFET1→LED列53→FET3→LED列55の順に流れて、その後、合流する。CC制御回路60は、並列接続回路に切り換わった後も、複数のLED列の全体で電流が一定になるように制御するため、個々のLED列に流れる電流は半分になり、照明器具41は調光率50%で点灯する。
【0050】
このようにして、照明器具41は、供給電圧に応じて複数のLED列51~53の接続状態を直列から並列に切り換えることで、調光を行う。
【0051】
図5において、アーク抑止回路70の具体例を説明する。アーク抑止回路70は、複数のLED列51~53による接続回路の両端を結ぶように接続されており、抵抗R2とダイオードD17の並列接続部と、これに直列接続されたコンデンサC2とを有する回路構成である。アーク抑止回路70を設けることで、スイッチ解放時のアーク発生が抑止され、断線などを回避することができる。
【0052】
また、
図7に示す例のように、正極および負極の直流給電線3A、3Bに、複数の照明器具42~44の直列接続回路を接続してもよい。ただし、CC制御回路60は、最終段の照明器具44にのみ設ける。各々の照明器具42~44において、FET制御回路61~63によるLED列の直列接続から並列接続への切り換えが実行される。
【0053】
図8の照明器具45では、複数のLED列51~54が直列に接続されており、2つ目と4つ目のLED列52,54にはバイパス路が設けられる。LED列52のバイパス路にはFET1が接続され、LED列54のバイパス路にはFET2が接続される。ここで、
図5の照明器具41との大きな違いは、FET1,FET2が、ゲート電圧に応じて、ドレイン-ソース間の開度(または閉度)を連続的に調整可能なことである。つまり、バイパス路の電流量がFETの開度(または閉度)の大小で調製される。照明器具45において、CC制御回路80は、供給電圧を検知して、その供給電圧に応じた開度になるようにFET1,2のゲート電圧を発するようにFET制御回路81を動作させる。また、CC制御回路80は、複数のLED列51~54の全体で電流が一定になるように制御するため、FET制御回路81によるFETの開度調整が実行されると、バイパス電流の分だけがLED列52,54の照度が低下する。このようにして、供給電圧に応じて、LED列51~54の全体での照度が連続的に変更される。
【0054】
最後に、
図9を用いて、抵抗中点アース回路8の具体例を説明する。抵抗中点アース回路8は、正極および負極の直流給電線3A、3Bと接地点との間に設けられる。直流給電線3A、3Bは非接地状態の直流回路であるため、直流給電線3A、3Bと接地点との間の絶縁抵抗の低下を検出する回路として、抵抗中点アース回路8が機能する。
【0055】
抵抗中点アース回路8は、等しい抵抗値の抵抗器R3,R4からなる直列接続回路と、互いに逆向きの極性で接続されたフォトカプラ81,82の並列接続回路とを有し、抵抗器R3,R4の直列接続回路は、正極および負極の直流給電線3A、3B間に接続される。また、フォトカプラ81,82の並列接続回路は、抵抗器R,Rの接続点と接地点とを結ぶ電路に接続されている。フォトカプラ81の受光素子の一方の端子はVCCに接続され、他方の端子には発光ダイオード83が接続され、接地点から抵抗器R,Rの接続点に向けて電流が流れた場合にフォトカプラ81の発光および受光作用が生じて、発光ダイオード83が点灯する。同様に、フォトカプラ82の受光素子の一方の端子はVCCに接続され、他方の端子には別の発光ダイオード84が接続され、抵抗器R,Rの接続点から接地点に向けて電流が流れた場合にフォトカプラ82の発光および受光作用が生じて、発光ダイオード84が点灯する。
【0056】
このような構成の抵抗中点アース回路8において、正極の直流給電線3Aの絶縁抵抗の抵抗値が低下すると、フォトカプラ81の発光素子に微弱な電流が流れるので、その微弱な電流を受光素子が捉えて、発光ダイオード83が点灯する。これにより、正極の直流給電線3Aの絶縁抵抗の低下が発光ダイオード83の発光で表示される。同様に、負極の直流給電線3Bの絶縁抵抗の抵抗値が低下すると、反対側のフォトカプラ82の発光素子に微弱な電流が流れるので、その微弱な電流を受光素子が捉えて、発光ダイオード84が点灯する。これにより、負極の直流給電線3Bの絶縁抵抗の低下が発光ダイオード84の発光で表示される。
【符号の説明】
【0057】
1 トンネル照明システム
2A,2B 直流給電線
3A,3B 交直変換器
4A~4C LED照明器具
5 太陽光発電機
6 風力光発電機
7 蓄電池
8 抵抗中点アース回路
9 照度センサ
21 負荷時タップ切換器
41~45 LED照明器具
51~57 LED列
60,80 CC制御回路
61~63,81 FET制御回路
70 アーク抑止回路