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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058944
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】コーティング層を有する帯電部材
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
G03G15/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168771
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】黒田 紀明
(72)【発明者】
【氏名】小澤 透
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA08
2H200FA09
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB43
2H200HB45
2H200MA03
2H200MA04
2H200MA17
2H200MA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外添剤による汚染が抑制されるとともに、クラックの発生を抑制され、長期にわたり帯電均一性が維持される帯電部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体1と、該導電性支持体上に設けられた導電性本体と、を備える帯電部材であって、導電性本体が、導電性支持体上に設けられた弾性層2と、弾性層上に設けられた樹脂層3と、樹脂層上に設けられたコーティング層4と、を備え、コーティング層が、Si-O-Ti結合、及び、TiO4/1単位を含む分子構造を有するポリシロキサンを含有する帯電部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性本体と、を備える帯電部材であって、
前記導電性本体が、
前記導電性支持体上に設けられた弾性層と、
前記弾性層上に設けられた樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられたコーティング層と、
を備え、
前記コーティング層が、Si-O-Ti結合、及び、TiO4/1単位を含む分子構造を有するポリシロキサンを含有する、帯電部材。
【請求項2】
前記ポリシロキサンの前記分子構造が、式(I):
【化1】

で表される、前記TiO4/1単位を含む部分構造を含み、
前記式(I)中、複数のRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を示し、wは、2~20の整数を示し、*は結合手を示す、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記式(I)で表される部分構造を1つのモノマー単位としたとき、該モノマー単位の含有量が、前記ポリシロキサンに含まれるモノマー単位の全量を基準として、約5.0~20.0mol%である、請求項2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記ポリシロキサンが、エポキシ基に由来する架橋構造を有する、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記ポリシロキサンの前記分子構造が、Si-O-Zr結合を含む、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項6】
前記コーティング層が、Si-O-Ti結合、及び、TiO4/1単位を含む分子構造を有する架橋性ポリシロキサンと、酸発生剤と、を含有する硬化性組成物の硬化物からなり、
前記架橋性ポリシロキサンが、架橋性基としてエポキシ基を有する、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項7】
前記酸発生剤が、250℃以下の温度で活性化される熱酸発生剤である、請求項6に記載の帯電部材。
【請求項8】
前記酸発生剤が、365~405nmの波長の光により活性化される光酸発生剤である、請求項6に記載の帯電部材。
【請求項9】
前記コーティング層の厚さが、約50~500nmである、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項10】
前記樹脂層が、マトリックス材料と、該マトリックス材料中に分散された粒子と、を含有する、請求項1に記載の帯電部材。
【請求項11】
前記粒子が、第一の粒子と、該第一の粒子とは種類の異なる第二の粒子とを含む、請求項10に記載の帯電部材。
【請求項12】
帯電部材の製造方法であって、
導電性支持体上に設けられる導電性ベースの表面に、硬化性組成物を含むコーティング液を塗布すること、
ここで、
前記硬化性組成物は、Si-O-Ti結合、及び、TiO4/1単位を含む分子構造を有する架橋性ポリシロキサンと、酸発生剤と、を含有し、
前記架橋性ポリシロキサンは、架橋性基としてエポキシ基を有し、
前記導電性ベースは、弾性層と、前記弾性層上に設けられ、コーティングされる表面を有する樹脂層と、を備える、と、
前記硬化性組成物を硬化させて前記導電性ベース上にコーティング層を形成すること、
とを備える、帯電部材の製造方法。
【請求項13】
前記架橋性ポリシロキサンの前記分子構造が、式(I):
【化2】

で表される、前記TiO4/1単位を含む部分構造を含み、
前記式(I)中、複数のRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を示し、wは、2~20の整数を示し、*は結合手を示す、請求項12に記載の帯電部材の製造方法。
【請求項14】
前記架橋性ポリシロキサンの前記分子構造は、Si-O-Zr結合を含む、請求項12に記載の帯電部材の製造方法。
【請求項15】
感光体と、前記感光体を帯電させる帯電部材と、を備える画像形成装置であって、
前記帯電部材は、導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性本体と、を備え、
前記導電性本体が、
前記導電性支持体上に設けられた弾性層と、
前記弾性層上に設けられた樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられたコーティング層と、
を備え、
前記コーティング層が、Si-O-Ti結合、及び、TiO4/1単位を含む分子構造を有するポリシロキサンを含有する、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
画像形成装置は、感光体、帯電装置、感光体に対して静電潜像を形成する露光装置、静電潜像にトナーを塗布して現像する現像装置、及び感光体上のトナー像を転写材に転写する転写装置を備える。帯電装置には、感光体を帯電させる帯電部材が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】帯電部材の例の模式断面図である。
図2図1の帯電部材の一例を拡大して示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、帯電部材の例について説明する。なお、図面に基づいて説明するにあたり、同一の要素又は同一の機能を有する類似の要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、各要素の寸法比率は図示の比率に限られない。また、本明細書中、「約」で表記した値は、当該値を含むとともに、当該値の近傍を含む範囲を示している。このため、「約」で表記した値は、「約」を削除した値そのものであってもよい。また、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0004】
<帯電部材及び画像形成装置>
帯電部材は、導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた導電性本体と、を備える。導電性本体は、導電性支持体上に設けられた弾性層と、弾性層上に設けられた樹脂層と、樹脂層上に設けられたコーティング層と、を備える。コーティング層は、帯電部材の最表面を形成しており、Si-O-Ti結合、及び、TiO4/1単位を含む分子構造を有するポリシロキサンを含有する。ここで、TiO4/1単位とは、4つのO(酸素)原子と、該O原子に直接結合するTi(チタン)原子とからなる構成単位であり、4つのO原子のうちの2つが結合手となって他の構成単位と結合しているものをいう。なお、残り2つのO原子は、他の構成単位と結合することなく、1価の有機基と結合している。
【0005】
帯電部材はその表面(最表面)を感光体の表面に押し付けて使用される。この際、帯電部材の表面に外添剤が付着し、帯電部材が汚染されることがある。特に、帯電部材の表面が柔らかい層で構成されている場合には、外添剤による汚染が生じ易い。一方、帯電部材の表面硬度が高くなりすぎると、該表面にクラックが発生し易くなる。これに対して、上記帯電部材は、感光体と接触する表面がSi-O-Ti結合、及び、TiO4/1単位を含む分子構造を有するポリシロキサンを含有するコーティング層で形成されていることから、その表面は、充分に高い硬度(弾性率)を有しながら、クラックが生じ難い柔軟性(靭性)を有する。そのため、上記帯電部材によれば、外添剤による汚染が抑制されるとともに、クラックの発生(特に、低温低湿度環境(15℃×10%RH)で、感光体と帯電部材との間のニップ部位(接触部位)での圧縮及び引張の繰り返し変形が生じた場合に生じ易いクラックの発生)、及び、これに伴う画像不良等の不具合の発生が抑制され、長期にわたり帯電均一性が維持される。
【0006】
上記効果が得られる理由は明らかではないが、TiO4/1単位は、4つのO原子のうちの2つが他の構成単位と結合していないことから、一般的なポリシロキサンを構成するSiO4/2単位と比較して、自由度が高く、動き易い部分構造(金属アルコキシドの2次元構造)を構成し易いと推察され、ポリシロキサンがこのような部分構造を有することで、上記効果が得られると推察される。
【0007】
以下では、図1に示される帯電ローラ10を例に挙げて、帯電部材の詳細を説明する。
【0008】
帯電ローラ(帯電部材)10は、導電性本体5と、導電性本体5の回転軸となる導電性支持体1を備えている。導電性本体5は、導電性支持体1の回転軸線Lを中心に回転するローラ形状を呈している。導電性本体5は、回転軸線Lを中心に回転対称であり、回転軸線Lを中心に回転する。
【0009】
導電性本体5は、導電性支持体1の外周面に接する弾性層2及び弾性層2の外周面に接する樹脂層3を備える導電性ベース6と、樹脂層3の外周面に接するコーティング層4と、を備えている。弾性層2及び樹脂層3は、通常、導電性を有する。したがって、弾性層2は導電性弾性層といいかえてよく、樹脂層3は導電性樹脂層といいかえてよい。コーティング層4は、コーティングにより形成される層であり、通常、絶縁性を有する。したがって、コーティング層4は絶縁性コーティング層といいかえてよい。
【0010】
樹脂層3は、その他の層を介して弾性層2の周りに設けられていてもよい。弾性層2と樹脂層3との間に、耐電圧性(耐リーク性)を高めるための抵抗調整層のような中間層が介在してもよい。
【0011】
コーティング層4は、その他の層を介して樹脂層3の周りに設けられていてもよい。ただし、コーティング層4に接する層の種類によっては、コーティング層4を構成するポリマー(ポリシロキサン)の配向状態が変化し、最表面の物理状態(凹凸の状態)、化学的特性(表面自由エネルギー等)などが変化する場合がある。コーティング層4が樹脂層3の外周面に直接接するように形成される場合、感光体との接触による導電性本体5表面の汚染(例えば外添剤による汚染)が抑制され易い。
【0012】
[導電性支持体]
導電性支持体1は、導電性を有する金属からなるものであれば特に限定されない。導電性支持体1は、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等からなる金属製の中空体(パイプ状(円管状))又は中実体(ロッド状)等であってもよい。導電性支持体1の外周面には、導電性を損なわない程度において、防錆、耐傷性付与等を目的として、めっき処理が施されていてもよい。また、導電性支持体1の外周面には、弾性層2との接着性を高めるため、接着剤、プライマー等が塗布されていてもよい。その際、導電性を高めるために、これらの接着剤、プライマー等は導電化されていてもよい。
【0013】
導電性支持体1は、長さが約250~360mmの円柱状の形状であってもよい。導電性支持体1における弾性層2によって覆われる部位は、導電性支持体1の回転軸線L方向(導電性支持体1の延在方向)に沿って延びる円柱状又は円管状に形成されてよく、回転軸線L方向において直径(外径)が一定(ストレートの円柱形状又は円管状)であってもよい。導電性支持体1における弾性層2によって覆われる部位の直径は、約8mm以上であってよく、約10mm以下であってよい。
【0014】
導電性支持体1における弾性層2によって覆われていない部位、すなわち、導電性支持体1の両端部は、図示しない支持部材によって支持される。導電性支持体1における弾性層2によって覆われていない部位の直径は、弾性層2によって覆われている部位の直径よりも小さくてもよい。導電性支持体1は、支持部材に支持された状態で、導電性支持体1における回転軸線Lを中心に回転する。
【0015】
導電性支持体1は、コーティング層4の表面が感光体の表面に接触するように、感光体側に向けて付勢されている。すなわち、コーティング層4の表面を感光体の表面に押し付けるために、導電性支持体1の両端部には、感光体側に向けてそれぞれ荷重が加えられている。回転する感光体に対して帯電ローラ10を適切に密着させるという観点から、導電性支持体1の片側の端部に加えられている荷重は、約450g以上であってよく、約750g以下であってよい。
【0016】
[弾性層]
弾性層2は、感光体に対する均一な密着性を確保するために適度な弾性を有している。弾性層2は、天然ゴム;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ポリウレタン系エラストマー、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR(H-NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴム;ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂;などをベースポリマーとして用いて形成されていてよい。換言すれば、弾性層2は、これらのベースポリマー又はその架橋体を含有する弾性体で構成されていてよい。これらは、一種を単独で又は二種以上を併せて用いられてよい。感光体に対する均一な密着性の観点では、ベースポリマーは、ゴム成分(天然ゴム又は合成ゴム)を主成分としてよい。ベースポリマーは、ゴム成分を約50質量%以上含有していてもよく、約80質量%以上含有していてもよい。
【0017】
ベースポリマーには、弾性層2に所望の特性を付与することを目的として、導電剤、加硫剤、加硫促進剤、滑剤、助剤等の周知の添加剤が必要に応じて適宜配合されてもよい。ただし、安定した抵抗を形成するという観点から、弾性層2(弾性体)はエピクロルヒドリンゴム及びその架橋体を主成分として含有してもよい。弾性層2は、エピクロルヒドリンゴム及びその架橋体を約50質量%以上含有していてもよく、約80質量%以上含有していてもよい。
【0018】
導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、導電性酸化チタン(c-TiO)、導電性酸化亜鉛(c-ZnO)、導電性酸化錫(c-SnO)、第四級アンモニウム塩等が用いられてもよい。加硫剤としては、硫黄等が用いられてもよい。加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(CZ)等が用いられてもよい。滑剤としては、ステアリン酸等が用いられてもよい。助剤としては、亜鉛華(ZnO)等が用いられてもよい。
【0019】
弾性層2の厚さは、適度な弾性を発現させるため、約1.25mm以上であってよく、約3.00mm以下であってよい。
【0020】
[樹脂層]
樹脂層3は、樹脂を含有する層である。樹脂層3は、弾性層よりも硬い層である。例えば、JIS K7162に準拠して測定される樹脂層3の弾性率は、弾性層の該弾性率よりも高い。弾性層2上に樹脂層3が設けられることで、導電性本体5の表面への弾性層2からの可塑剤等のブリードを抑制できる。
【0021】
樹脂層3は、凹凸表面を形成していてよい。すなわち、樹脂層3の外周面は樹脂層3に起因する凹凸を有していてよい。樹脂層3が凹凸表面を形成する場合、コーティング層が該凹凸表面を被覆することになり、導電性本体の表面が凹凸を有することとなる。その結果、放電点を確保し易くなり、画質を向上させることができる。一方、導電性本体の表面が凹凸を有する場合、該表面の凸部と凹部との境界付近においてクラックが生じ易くなる。しかし、帯電ローラ10では、上記表面が上記特定のポリシロキサンを含有するコーティング層によって被覆されているため、クラックが発生し難く、クラックに伴う不具合の発生も抑制される。
【0022】
樹脂層3は、図2に示すように、マトリックス材料30と、同材料中に分散された粒子とを含有してよい。図2では、粒子が、第一の粒子31と、第一の粒子31とは種類の異なる第二の粒子32と、を含む。図2では、樹脂層3が粒子を含有することにより、凹凸表面を形成している。ここで、粒子の種類が異なるとは、材質、形状等が異なることを含む。例えば、第一の粒子31の材質と第二の粒子32の材質とが互いに同じであっても、形状が互いに異なっていれば、第一の粒子31と第二の粒子32とは種類が異なる。図2とは異なり、樹脂層3に含まれる粒子が一種であってもよく、三種以上であってもよい。
【0023】
マトリックス材料30は、ベースポリマーを含む。ベースポリマーとしては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン-エチレン・ブチレン-オレフィン共重合体(SEBC)、オレフィン-エチレン・ブチレン-オレフィン共重合体(CEBC)等のポリマーが用いられてよい。これらは、一種を単独で又は二種以上を併せて用いられてよい。ベースポリマーは、取扱いの容易性等の観点から、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であってもよく、ナイロン樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0024】
樹脂層3中のベースポリマーの含有量は、樹脂層全量を基準として、約30質量%以上であってよく、約90質量%以下であってよい。
【0025】
マトリックス材料30は、各種導電剤(導電性カ-ボン、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、導電性酸化錫、導電性酸化チタン、イオン導電剤等)、帯電制御剤などを更に含んでいてもよい。
【0026】
粒子(例えば第一の粒子31及び第二の粒子32)は絶縁性粒子であってよい。粒子は、樹脂粒子であってよく、無機粒子であってもよい。樹脂粒子の材料としては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。無機粒子の材料としては、シリカ、アルミナ等が挙げられる。これらは一種を単独で又は二種以上を併せて用いられてよい。粒子は、マトリックス材料との相溶性、粒子添加後の分散保持性、塗料化後の安定性(ポットライフ)等の観点から、ナイロン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子及びポリアミド樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも一種であってよく、ナイロン樹脂粒子及びアクリル樹脂粒子からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
【0027】
粒子は、樹脂層の表面に凹凸を形成し、放電点を確保し易くすることができるものであってよい。粒子の形状は、樹脂層3の表面に対し凹凸を形成することができる形状であってよい。粒子の形状は、真球状、楕円球状、不定形等であってもよい。
【0028】
粒子が第一の粒子31及び第二の粒子32を含有する場合、優れた帯電性能がより発現し易いという観点から、第一の粒子31と第二の粒子32の含有量の比は、約5:1~1:5であってよく、約3:1~1:3であってもよい。
【0029】
粒子の含有量は、樹脂層3の全質量を基準として、約5~50質量%であってよい。粒子の含有量が約5質量%以上であることにより、帯電性能をより満足し易くなる傾向がある。粒子の含有量が約50質量%以下であることにより、塗料化した際の粒子沈降の制御がより容易になり、塗料安定性が悪化し難い傾向がある。同様の観点から、粒子の含有量は、樹脂層3の全質量を基準として、約10~40質量%又は約20~30質量%であってもよい。ここで、樹脂層3に含まれる粒子が複数種存在する場合、上記粒子の含有量は、複数種の粒子の合計量を意味する。なお、樹脂層3に含まれる粒子の含有量は、例えば、樹脂層3を帯電部材からサンプリングし、それを加熱することによって生じる重量変化(TG)、示差熱(DTA)、熱量(DSC)及び揮発成分の質量(MS)を測定することで定量化することができる(TG-DTA-MS、DSC(熱分析))。
【0030】
樹脂層3の断面において、厚さ方向に粒子が存在せず、マトリックス材料30のみで構成される部分の層厚A(図2中の「A」部分)は、約1.0μm以上、約2.0μm以上又は約3.0μm以上であってよく、約7.0μm以下、約6.0μm以下又は約5.0μm以下であってよい。樹脂層3が粒子を含む場合、層厚Aは、最寄りの粒子同士の中間点における厚さである。層厚Aが約1.0μm以上であることにより、添加する樹脂粒子を長期にわたって脱落させずに、継続的に保持し易くなる。層厚Aが約7.0μm以下であることにより、帯電性能を良好に維持し易くなる。なお、層厚Aは、導電性本体5の断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することで測定される。
【0031】
樹脂層3が、第一の粒子31と第二の粒子32とを含有する場合、第一の粒子31の粒子径(図2中の「B」部分)の平均(平均粒子径B)は、初期画像不良である帯電ムラ抑制という観点から、約15.0~40.0μmであってよい。また、第二の粒子32の粒子径(図2中の「C」部分)の平均(平均粒子径C)は、初期画像不良である帯電ムラ抑制という観点から、約15.0μm以上であってよく、約40.0μm以下であってよい。また、帯電ムラ抑制という観点から、第一の粒子31の平均粒子径Bは第二の粒子32の平均粒子径Cより大きくてよい。第一の粒子31の平均粒子径Bは第二の粒子32の平均粒子径Cより約10μm以上大きくてよい。
【0032】
樹脂層3が、粒子として第一の粒子のみを含む場合、第一の粒子の粒子径の平均(第一の粒子の平均粒子径)は、初期画像不良である帯電ムラ抑制という観点から、約5.0~50.0μmであってよく、約15.0~30.0μmであってもよい。
【0033】
本明細書中、粒子の平均粒子径は、SEM観察により複数の粒子の母集団から任意に100個の粒子を抽出し、それらの粒子径の平均値をとることで導出することができる。ただし、粒子形状が真球状ではなく、楕円球状(断面が楕円の球)、不定形等のように一律に粒子径が定まらない場合には、最長径と最短径との単純平均値をその粒子の粒子径とする。
【0034】
樹脂層3の層厚Aに対する第一の粒子31の平均粒子径Bの比(B/A)は約5.0~30.0であってよい。B/Aが約5.0以上であることにより、帯電均一性を高め易くなる。B/Aが約30.0以下であることにより、樹脂層形成用塗布液の塗工性を向上し易くなり、また、粒子脱落を抑制し易くなる。同様の観点から、B/Aは約7.5~20.0であってよく、約8.0~12.5であってよい。
【0035】
樹脂層3における粒子間距離(すなわち、第一の粒子31及び場合により含まれる第二の粒子32を含む全粒子における粒子間距離)は約50~400μmであってよい。粒子間距離が約50μm以上であることにより、樹脂層3の表面のガサツキ及び粒子脱落を抑制し易くなる。粒子間距離が約400μm以下であることにより、粒子脱落を抑制し易くなる。同様の観点から、粒子間距離は約75~300μmであってよく、約100~250μmであってよい。なお、粒子間距離は、JIS B0601-1994に則り、計測することができる。
【0036】
樹脂層3は、当初存在した弾性層の表面にイソシアネート化合物を含有する溶液を含浸させた後硬化させることで形成される層であってもよい。この場合、当初存在した弾性層の表面側の硬化部分が樹脂層3となり、それ以外の未硬化部分が弾性層2となる。この方法では、溶液含浸後に形成される樹脂層3が凹凸表面を形成するように、弾性層を研磨により成型することによって弾性層の表面に凹凸を形成してよい。
【0037】
イソシアネート化合物は、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、並びに、これらの多量体及び変性体等であってよい。
【0038】
イソシアネート化合物を含有する溶液の溶媒は、イソシアネート化合物を溶解させることができる有機溶剤であれば特に限定されない。有機溶剤は、酢酸エチル等であってよい。溶液には、カーボンブラック、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一種のポリマー、導電性付与剤等を更に含有させてよい。
【0039】
イソシアネート化合物を含有する溶液を弾性層に含浸させた後硬化させることで形成される樹脂層は、弾性層2を構成する弾性体と、イソシアネート化合物由来の樹脂と、を含有してよい。この場合、弾性体は、イソシアネート化合物由来の樹脂との結着性が良好である観点から、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)又はエピクロルヒドリンゴムを主成分とするベースポリマーを用いて形成されてよい。ベースポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)又はエピクロルヒドリンゴムを50質量%以上含有していてもよく、80質量%以上含有していてもよい。イソシアネート化合物由来の樹脂は、ウレア結合、ウレタン結合等を有する樹脂(ユリア樹脂、ウレタン樹脂等)であってよい。イソシアネート化合物由来の樹脂は、弾性体中のベースポリマー及び/又は架橋体とウレタン結合等により結合していてよい。
【0040】
上記イソシアネート化合物を含有する溶液を含浸させる方法で樹脂層3を形成する場合、樹脂層3の厚さは、約1.0μm以上、約10.0μm以上又は約20.0μm以上であってよく、約250.0μm以下、約200.0μm以下又は約150.0μm以下であってよい。
【0041】
[コーティング層]
コーティング層4は、Si-O-Ti結合、及び、TiO4/1単位を含む分子構造を有するポリシロキサンを含有する。ここで、「ポリシロキサン」とは、Si-O-Si結合(シロキサン結合)を複数含む分子構造を有する化合物を意味する。Si-O-Si結合を構成するSi(ケイ素)原子には、3つ又は4つのO(酸素)原子が結合していてよい。ポリシロキサンは、例えば、加水分解性シランを含むモノマー成分の縮合物又はその誘導体であり、下記式(1)で表される加水分解性シリル基を有する化合物(以下、「加水分解性シラン」という)に由来するモノマー単位を含む。
【化1】
【0042】
式(1)中、R31~R33は、各々独立して、炭化水素基を示す。炭化水素基は、例えば、炭素数1~4のアルキル基である。
【0043】
ポリシロキサンの分子構造に含まれるSi-O-Ti結合は、例えば、チタンオリゴマー等の有機チタン化合物の存在下で加水分解性シランを重合(縮合)させた際に、有機チタン化合物と加水分解性シランとの間で形成される結合である。すなわち、Si-O-Ti結合を分子構造中に含むポリシロキサンは、加水分解性シランに由来するモノマー単位に加えて、有機チタン化合物に由来するモノマー単位も含むということができる。有機チタン化合物に由来するモノマー単位は、TiO4/1単位を含んでおり、TiO4/1単位を含む部分構造として、ポリシロキサンに含まれる。Si-O-Ti結合を構成するSiは、Si-O-Si結合を構成するSiと同一であり得る。Si-O-Ti結合を構成するSiには、3つ又は4つの酸素原子が結合していてよい。
【0044】
ポリシロキサンの上記分子構造は、複数のTiO4/1単位が連続してなる部分構造を含んでいてよい。すなわち、ポリシロキサンは、Ti-O-Ti結合を有していてよい。該部分構造は、上記分子構造中に複数含まれていてよい。該部分構造を有するポリシロキサンは、加水分解性シランの重合(縮合)の際に、有機チタン化合物として、TiO4/1単位を繰り返し単位として含む化合物(例えばチタンオリゴマー)を用いることで得ることができる。TiO4/1単位を含む部分構造としては、下記式(I)で表される構造を例示できる。
【化2】
【0045】
式(I)中、複数のRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を示し、wは、2~20の整数を示し、*は結合手を示す。wは、2~10又は2~6であってもよい。*は、TiO4/1単位以外の構成単位への結合手であり、通常、Siへの結合手である。ポリシロキサンの上記分子構造が後述するSi-O-Zr結合を含む場合は、Si又はZrへの結合手となる。
【0046】
炭化水素基の炭素数は、例えば、1~12であり、2~8又は3~6であってもよい。炭化水素基の炭素原子の一部は、酸素原子等に置換されていてもよい。炭化水素基は、置換基(例えばキレート構造を構成する置換基)を有していてもよい。炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0047】
の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0048】
上記式(I)で表される部分構造を形成するための有機チタン化合物としては、下記式(Ia)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0049】
式(Ia)中のR及びwは式(I)中のR及びwと同一であり、複数のRは、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を示す。Rで示される炭化水素基の例は、Rと同じである。
【0050】
有機チタン化合物に由来するモノマー単位の含有量は、コーティング層の表面硬度が高くなり過ぎず、クラックの発生がより抑制される観点から、ポリシロキサンに含まれるモノマー単位の全量を基準として、約5.0mol%以上、約7.5mol%以上又は約10.0mol%以上であってよい。有機チタン化合物に由来するモノマー単位の含有量は、コーティング層の表面硬度により優れる観点から、ポリシロキサンに含まれるモノマー単位の全量を基準として、約20.0mol%以下、約17.5mol%以下又は約15.0mol%以下であってよい。これらの観点から、有機チタン化合物に由来するモノマー単位の含有量は、ポリシロキサンに含まれるモノマー単位の全量を基準として、約5.0~20.0mol%、約7.5~17.5mol%又は約10.0~15.0mol%であってよい。上記式(I)で表される部分構造を1つのモノマー単位としたとき、該モノマー単位(上記式(I)で表される構造のモノマー単位)の含有量が上記範囲であると、クラックの発生がより一層抑制される傾向があり、また、コーティング層の表面硬度により一層優れる傾向がある。
【0051】
ポリシロキサンは、Si-O-Zr結合を上記分子構造中に含んでいてもよい。Si-O-Zr結合は、例えば、ジルコニウムキレート化合物の存在下で加水分解性シランを重合(縮合)させた際に、ジルコニウムキレート化合物と加水分解性シランとの間で形成される結合である。すなわち、Si-O-Zr結合を分子構造中に有するポリシロキサンは、ジルコニウムキレート化合物に由来するモノマー単位を含むということができる。Si-O-Zr結合を構成するSiは、Si-O-Si結合を構成するSiと同一であり得る。Si-O-Zr結合を構成するSiには、3つ又は4つの酸素原子が結合していてよい。
【0052】
ジルコニウムキレート化合物は、中心金属であるジルコニウム原子(Zr)と、ジルコニウム原子に配位する1~4つのキレート配位子(多座配位子)とを有する。ジルコニウムキレート化合物は、加水分解性シランの重合(縮合)反応を促進し、表面自由エネルギーの低いコーティング層の形成に寄与する。
【0053】
キレート配位子は、二座又は三座配位子であってよい。キレート配位子の配位原子は、酸素原子であってよい。キレート配位子は、アセチルアセトネート基又はアルキルアセトアセテート基であってよい。アルキルアセトアセテート基のアルキルは、炭素数が1~10のアルキルであってよい。
【0054】
ジルコニウムキレート化合物は、単座配位子を有していてもよい。単座配位子は、アルコキシ基であってよい。アルコキシ基の炭素数は、1~10であってよい。
【0055】
ジルコニウムキレート化合物は、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等であってよい。これらの中でも、ジルコニウムキレート化合物がジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)である場合、ポリシロキサンの合成時により高い反応効率が得られ易い。そのため、ポリシロキサンがジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)に由来するモノマー単位を含む場合、より高い表面硬度が得られ易く、外添剤による汚染がより生じ難くなる。ジルコニウムキレート化合物は、一種を単独で又は二種以上を併せて用いられてよい。
【0056】
ジルコニウムキレート化合物に由来するモノマー単位は、例えば、ZrO4/2で表される。ジルコニウムキレート化合物に由来するモノマー単位(例えばZrO4/2単位)の含有量は、反応時間、縮合率等の観点から調整されてよい。ジルコニウムキレート化合物の使用量が多いほど反応時間を短縮できる傾向があり、ジルコニウムキレート化合物の使用量が少ないほど縮合率が高くなる傾向がある。ジルコニウムキレート化合物に由来するモノマー単位の含有量は、ポリシロキサンに含まれるモノマー単位の全量を基準として、約2.0mol%以上、約3.0mol%以上又は約4.0mol%以上であってよく、10.0mol%以下、8.0mol%以下又は6.0mol%以下であってよい。
【0057】
ポリシロキサンに含まれる加水分解性シランに由来するモノマー単位は、架橋性基を有する加水分解性シランに由来するモノマー単位であってよい。ここで、架橋性基は、カチオン等の存在下で、他の架橋性基と反応して架橋構造を形成する基であり、例えば、エポキシ基等のカチオン重合性基である。すなわち、架橋性基を有する加水分解性シランの一例は、カチオン重合性基(エポキシ基等)を有する加水分解性シランである。
【0058】
ポリシロキサンは、上記架橋性基同士の反応により形成される架橋構造を含んでいてよい。換言すれば、ポリシロキサンは、架橋性基を有するポリシロキサン(架橋性ポリシロキサン)の架橋体であってよい。上記架橋構造は、架橋性基に由来する架橋構造といいかえてよい。上記架橋構造は、例えば、エポキシ基に由来する架橋構造である。架橋性ポリシロキサンについては後述する。
【0059】
架橋性基を有する加水分解性シランは、単官能であっても二官能以上であってもよい。すなわち、架橋性基の数は1つであっても、複数であってもよい。架橋性基を有する加水分解性シランの架橋性基の当量(架橋性基1molあたりの分子量)は、例えば、約100.0~300.0g/molである。
【0060】
架橋性基を有する加水分解性シランは、ポリシロキサンの形成時における酸素による重合阻害が起こり難くなり、表面硬化性が向上することで、表面硬度に優れるコーティング層が得られ易くなる観点から、下記式(2)又は(3)で表される化合物であってよい。
【化4】

【化5】
【0061】
式(2)中、R~Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシ基又はアミノ基を示し、Xは、単結合又は2価の有機基を示し、Qは、上記式(1)で表される加水分解性シリル基(-Si(OR31)(OR32)(OR33))を示す。
【0062】
式(3)中、R~Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、カルボキシ基又はアミノ基を示し、R~Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基を示し、mは、4~12の整数を示し、Qは、上記式(1)で表される加水分解性シリル基(-Si(OR31)(OR32)(OR33))を示す。
【0063】
Xの2価の有機基は、炭素数1~16の2価の炭化水素基であってよい。炭化水素基の炭素原子の一部は、酸素原子に置換されていてもよい。炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。2価の有機基は下記式(4)又は式(5)で表される基であってよい。
【化6】

【化7】
【0064】
式(4)中、R~Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、lは1~8の整数を示す。式(5)中、R10~R13は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、p及びqは、各々独立して、1~8の整数を示す。式(4)及び式(5)中の*は、Qへの結合手を示す。
【0065】
架橋性基を有する加水分解性シランは、具体的には、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等であってよい。架橋性基を有する加水分解性シランは、一種を単独で又は二種以上を併せて用いられてよい。
【0066】
架橋性基を有する加水分解性シランが上記式(2)で表される化合物である場合、架橋性基を有する加水分解性シランに由来するモノマー単位は、下記式(6)で表すことができる。
【化8】
【0067】
式(6)中、R~R及びXは、式(2)中のR~R及びXと同義であり、nは、0又は1を示す。
【0068】
上記式(6)で表される構造のモノマー単位は、下記式(7)又は式(8)で表される構造のモノマー単位であってよい。
【化9】

【化10】
【0069】
式(7)及び式(8)中、nは、式(6)中のnと同一である。式(7)中のlは、式(4)中のlと同一であり、式(8)中のp及びqは、式(5)中のp及びqと同一である。
【0070】
架橋性基を有する加水分解性シランが上記式(3)で表される化合物である場合、架橋性基を有する加水分解性シランに由来するモノマー単位は、下記式(9)で表される構造を有する。
【化11】
【0071】
式(9)中、R~R、m及びXは、式(3)中のR~R、m及びXと同義である。
【0072】
上記式(9)で表される構造のモノマー単位は、下記式(10)又は(11)で表される構造のモノマー単位であってよい。
【化12】

【化13】
【0073】
式(10)中のlは、式(4)中のlと同一であり、式(11)中のp及びqは、式(5)中のp及びqと同一である。
【0074】
架橋性基を有する加水分解性シランに由来するモノマー単位の含有量は、コーティング層の表面硬度により優れる観点から、ポリシロキサンに含まれるモノマー単位の全量を基準として、約60.0mol%以上、約64.0mol%以上又は約74.0mol%以上であってよい。架橋性基を有する加水分解性シランに由来するモノマー単位の含有量は、コーティング層の表面硬度が高くなり過ぎず、クラックの発生がより抑制される観点では、ポリシロキサンに含まれるモノマー単位の全量を基準として、約95.0mol%以下、約93.0mol%以下又は約90.0mol%以下であってよい。これらの観点から、架橋性基を有する加水分解性シランに由来するモノマー単位の含有量は、ポリシロキサンに含まれるモノマー単位の全量を基準として、約60.0~95.0mol%、約64.0~93.0mol%又は約74.0~90.0mol%であってよい。エポキシ基を有する加水分解性シランに由来するモノマー単位の含有量が上記範囲であると、クラックの発生がより一層抑制される傾向があり、また、コーティング層の表面硬度により一層優れる傾向がある。
【0075】
ポリシロキサンは、上述したモノマー単位以外のモノマー単位を更に含んでいてもよい。例えば、ポリシロキサンは、架橋性基を有しない加水分解性シランに由来するモノマー単位を更に含んでいてもよい。
【0076】
ポリシロキサンの含有量は、コーティング層の全質量を基準として、90質量%以上、95質量%以上又は98質量%以上であってよい。
【0077】
上記ポリシロキサンを含むコーティング層は、架橋性ポリシロキサンを含有する硬化性組成物の硬化物を含む層であってよい。この場合、コーティング層は、架橋性ポリシロキサンの架橋体(架橋性基同士の反応により形成される結合(架橋)を含むもの)を含有する。
【0078】
架橋性ポリシロキサンは、架橋性基を有するポリシロキサンであり、例えば、架橋性基を有する加水分解性シランと、有機チタン化合物と、任意でジルコニウムキレート化合物と、を含むモノマー成分の縮合物である。したがって、架橋性ポリシロキサンは、架橋性基を有する加水分解性シランに由来するモノマー単位と、有機チタン化合物に由来するモノマー単位と、任意でジルコニウムキレート化合物に由来するモノマー単位と、を含み得る。
【0079】
架橋性ポリシロキサンが架橋性基としてカチオン重合性基(エポキシ基等)を有する場合、硬化性組成物は、架橋性ポリシロキサンと、酸発生剤と、を含有する。
【0080】
酸発生剤は、光酸発生剤であってもよく、熱酸発生剤であってもよい。酸発生剤は、一種を単独で又は二種以上を併せて用いられてよい。
【0081】
光酸発生剤は、光源からの熱による基材へのダメージ及びコーティング層の酸化劣化を抑制する観点から、UV-LED光源による365~405nmの波長の光で活性化させることができる光酸発生剤であってよい。光酸発生剤は、トリアリールスルホニウム塩系光酸発生剤等であってよい。
【0082】
熱酸発生剤は、熱による基材へのダメージ及びコーティング層の酸化劣化を抑制する観点から、低温(例えば250℃以下)で活性化させることができる熱酸発生剤であってよい。熱酸発生剤は、芳香族スルホニウム塩系熱酸発生剤、芳香族ヨードニウム塩系熱酸発生剤等であってよい。これらの熱酸発生剤の対アニオンは、六フッ化リン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸等であってよい。
【0083】
酸発生剤の含有量は、反応時間等の観点から調整されてよい。酸発生剤の含有量は、カチオン重合性化合物、有機チタン化合物及びジルコニアキレート化合物の合計量(例えばエポキシ基を有する化合物と有機チタン化合物とジルコニアキレート化合物との合計量)100質量部に対して、1.0質量部以上、3.0質量部以上又は5.0質量部以上であってよく、10.0質量部以下、8.0質量部以下又は7.0質量部以下であってよい。
【0084】
コーティング層は、硬化性組成物由来の成分以外の成分(コーティング液由来の液状媒体等)を更に含んでいてもよい。コーティング層中、硬化性組成物由来の成分以外の成分の含有量は、コーティング層の全質量を基準として、5質量%以下、1質量%以下又は0.5質量%以下であってよい。
【0085】
コーティング層4の厚さD(図2中の「D」部分)は、約50nm以上又は約70nm以上であってよく、約500nm以下、約400nm以下又は約300nm以下であってよい。したがって、コーティング層4の厚さDは、約50~500nmであってよい。コーティング層4の層厚を厚くすると、コーティング層4の応力耐性が上がるため、クラックがより発生し難くなる。
【0086】
コーティング層4の表面、すなわち、導電性本体5の最表面Sは、樹脂層3によって形成される凹凸を有していてよい。
【0087】
導電性本体5の最表面Sの凹凸の平均間隔(Sm)は、より良好な画質が得られる観点から、約50~400μmであってよく、約75μm以上又は約100μm以上であってもよく、約300μm以下又は約250μm以下であってもよい。
【0088】
導電性本体5の最表面Sの十点平均粗さ(Rzjis)は、帯電ムラを抑制する観点から、11.5μm以上、15.0μm以上、18.0μm以上、20.0μm以上、22.0μm以上、22.5μm以上又は23.0μm以上であってよい。導電性本体5の最表面の十点平均粗さ(Rzjis)は、帯電ローラ10の回転ムラ(周速偏差)を抑制する観点から、32.0μm以下、30.0μm以下、29.0μm以下、28.0μm以下、27.5μm以下、27.0μm以下、26.5μm以下又は26.0μm以下であってもよい。
【0089】
上記凹凸の平均間隔(Sm)及び十点平均粗さ(Rzjis)は、株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定器SE-3400を用いて、JIS B0601-2001に準拠して測定される。凹凸の平均間隔(Sm)及び十点平均粗さ(Rzjis)、更には導電性本体のその他の表面性状は、樹脂層3に含まれる粒子の大きさ、形状、量、粒子間距離等、及び、コーティング層4の層厚等を変更することにより調整され得る。
【0090】
導電性本体5は、回転軸線Lに対して湾曲した表面を有していてよい。すなわち、コーティング層4の表面が回転軸線Lに対して湾曲していてもよい。回転軸線Lから導電性本体5の表面(コーティング層4の表面)までの最短距離(導電性本体5の外径の1/2に相当)は、回転軸線Lに沿って変化しており、回転軸線L上の導電性本体5の中心点(導電性本体5の長手方向の中心点)で最大となり、導電性本体5の両端部に向かって小さくなっている。
【0091】
このような導電性本体5のローラ形状を表現する指標として、クラウン量を用いることができる。導電性本体5のクラウン量は、以下のように定義される。
クラウン量=d2-(d1+d3)/2
式中、d1は、導電性本体5の長手方向(ゴム長)の一端から中心点に向けて30mm離れた位置における導電性本体5の外径を表し、d2は、導電性本体5の長手方向(ゴム長)の中心点における導電性本体5の外径を表し、d3は、導電性本体5の長手方向(ゴム長)の他端から中心点に向けて30mm離れた位置における導電性本体5の外径を表す。
【0092】
導電性本体5のクラウン量は、帯電ローラ10を感光体に対して適切に密着させつつ、長期にわたり安定した帯電均一性を実現し且つ画質の粒状性を維持するという観点から、50μm以上、60μm以上又は70μm以上であってよく、130μm以下、120μm以下又は110μm以下であってよい。
【0093】
以上説明した帯電部材は、画像形成装置において、感光体を帯電させる帯電手段として設けられてよい。帯電部材は、像担持体である感光体表面を一様に帯電処理する。画像形成装置の一例は、感光体と、感光体を帯電させる帯電部材とを備えている。
【0094】
画像形成装置において、帯電部材には、直流電圧のみが印加されてよい。その際、画像出力中に印加されるバイアス電圧は-1000~-1500Vであってよい。
【0095】
<帯電部材の製造方法>
以下では、帯電ローラ10の製造方法を例に挙げて、帯電部材の製造方法の詳細を説明する。
【0096】
帯電ローラ10の製造方法は、導電性支持体1上に設けられる導電性ベース6を用意することと、硬化性組成物を含むコーティング液を用意することと、導電性ベース6の表面に上記コーティング液を塗布することと、上記硬化性組成物を硬化させて導電性ベース6上にコーティング層4を形成することと、を備える。
【0097】
導電性ベース6は、例えば、次のようにして作製され得る。すなわち、まず、弾性層形成用材料と樹脂層形成用塗布液を調製する。弾性層形成用材料は、弾性層2の材料をニーダー等の混練機を用いて混練することで調製することができる。また、樹脂層形成用塗布液は、樹脂層3の材料をロール等の混練機を用いて混練し、この混合物に有機溶剤を加えて混合、攪拌することにより調製することができる。つぎに、導電性支持体1となる芯金をセットした射出成形用金型内に、弾性層形成用材料を充填し、所定の条件で加熱架橋を行う。その後、脱型することで、導電性支持体1の外周面に沿って弾性層が形成されてなるベースロールを製造する。次いで、上記ベースロールの外周面に、樹脂層形成用塗布液を塗工して樹脂層3を形成する。このようにして、導電性支持体1の外周面に形成された弾性層2と、弾性層2の外周面に形成された樹脂層3と、を備える導電性ベース6を作製することができる。
【0098】
なお、弾性層の形成方法は、射出成形法に限定されず、注型成形法や、プレス成形及び研磨を組み合わせた方法が採用されてもよい。また、樹脂層形成用塗布液の塗工方法も、特に制限されず、従来公知のディッピング法、ロールコート法等が採用されてもよい。
【0099】
コーティング液は、例えば、硬化性組成物と、該組成物中の成分を溶解又は分散させる液状媒体(溶媒又は分散媒)と、を含む。硬化性組成物は、例えば、架橋性ポリシロキサンと、有機チタン化合物と、任意でジルコニウムキレート化合物及び酸発生剤と、を含有する。
【0100】
液状媒体は、水を含んでよい。液状媒体は、アルコール溶剤を更に含有してよい。すなわち、液状媒体は、水とアルコール溶剤との混合液であってよい。この場合、液状媒体中の水の含有量は、液状媒体の全質量を基準として、10.0質量%以上であってよく、60.0質量%以下であってよい。アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を用いてよい。
【0101】
液状媒体の含有量は、コーティング液の粘度の観点から調整してよい。液状媒体の含有量は、コーティング液の全質量を基準として、95.0~99.9質量%であってよい。
【0102】
上記コーティング液は、硬化性組成物に含まれる各成分と液状媒体とを混合することにより得ることができる。カチオン重合性基(エポキシ基等)を有する加水分解性シラン用いる場合、例えば、まず、カチオン重合性基(エポキシ基等)を有する加水分解性シランと、有機チタン化合物と、任意で、ジルコニウムキレート化合物と、を含むモノマー成分を、溶媒の存在下で加熱還流し、反応(重合)生成物として、カチオン重合性基を有する架橋性ポリシロキサンを得る。ここで、モノマー成分とは、反応後に生成するポリシロキサンの構造に組み込まれる成分を意味する。溶媒は、水であってよく、エタノール等のアルコールであってもよく、これらの混合物等であってもよい。次いで、得られた反応生成物と、酸発生剤と、液状媒体とを混合し、コーティング液を得る。この際、反応生成物及び酸発生剤は、予め液状媒体に溶解させてから混合されてよい。
【0103】
上記コーティング液の製造に使用されるモノマー成分及び酸発生剤の使用量は、各成分に由来するモノマー単位の含有量が上述した範囲となるように調整してよい。エポキシ基を有する加水分解性シランの使用量は、モノマー成分の全量を基準として、約60.0~95.0mol%であってよい。有機チタン化合物の使用量は、モノマー成分の全量を基準として、約5.0~20.0mol%であってよい。ジルコニウムキレート化合物の使用量は、モノマー成分の全量を基準として、約2.0~10.0mol%であってよい。
【0104】
コーティング液の塗布方法は、特に制限されず、従来公知のディッピング法、スプレーコーティング法、ロールコート法等が採用されてよい。
【0105】
コーティング液の塗布後、硬化性組成物を硬化させる前に、乾燥等を行うことで、形成されたコーティング中の溶媒を除去してよい。乾燥は、130~220℃で行ってよい。
【0106】
硬化性組成物の硬化方法は、特に限定されない。硬化性組成物が酸発生剤を含有する場合、酸発生剤の種類に応じて、適した硬化手段(加熱、光照射等)を採用してよい。硬化手段として加熱及び光照射を併用してもよい。光酸発生剤を用いる場合、光源から発生する熱による基剤へのダメージ及びコーティング層の酸化劣化を抑制する観点から、UV-LED光源により365~405nmの波長の光を照射することで硬化性組成物を硬化させてよい。UV-LED光源は、浜松ホトニクス(株)製のUV-LED光源、HOYA(株)製のUV-LED光源、岩崎電気(株)製のUV-LED光源、ウシオ電機(株)製のUV-LED光源、へレウス(株)製のUV-LED光源、(株)アイテックシステム製のUV-LED光源、マイクロ・スフィア(株)製のUV-LED光源等であってよい。また、熱酸発生剤を用いる場合、熱による基材へのダメージ及びコーティング層の酸化劣化を抑制する観点から、250℃以下で加熱することで硬化性組成物を硬化させてよい。
【実施例0107】
以下、実施例によって帯電部材を更に詳細に説明するが、帯電部材は実施例に限定されない。
【0108】
<実施例1~21>
(弾性層形成用材料の調製)
ゴム成分としてエピクロルヒドリンゴム(ダイソー(株)製、「エピクロマーCG-102」)100.00質量部、滑剤としてソルビタン脂肪酸エステル(花王(株)、「スプレンダーR-300」)5.00質量部、軟化剤としてリシノール酸5.00質量部、受酸剤としてハイドロタルサイト類化合物(協和化学工業(株)製、「DHT-4A」)0.50質量部、導電剤としてテトラブチルアンモニウムクロリド(イオン導電剤)(東京化成工業(株)製、「テトラブチルアンモニウムクロリド」)1.00質量部、フィラーとしてシリカ(東ソー・シリカ(株)製、「Nipsil ER」)50.00質量部、架橋促進剤として酸化亜鉛5.00質量部、ジベンゾチアゾールスルフィド1.50質量部及びテトラメチルチウラムモノサルファイド0.50質量部、並びに架橋剤として硫黄1.05質量部を配合し、所定のロールを用いて混練することで、弾性層形成用材料を調製した。
【0109】
(樹脂層形成用塗布液の調製)
THF(テトラヒドロフラン)中に、ポリマー成分として熱可塑性N-メトキシメチル化6-ナイロン(ナガセケムテックス(製)製、「トレジンF-30K」)100.00質量部、硬化剤としてメチレンビスエチルメチルアニリン(イハラケミカル工業(株)製、「キュアハード-MED」)5.00質量部、及び導電剤としてカーボンブラック(電子導電剤)(デンカ(株)製、「デンカブラックHS100」)18.00質量部を混合した。この混合液に、第一の粒子31及び第二の粒子32として異なる平均粒子径(25.0μm及び5.0μm)を有する不定形のナイロン樹脂粒子(アルケマ社製、「オルガソルシリーズ」)二種類を添加し、溶液が均一になるまで十分に撹拌した。なお、得られる樹脂層3の全量を基準として、第一の粒子31の含有量が25質量%、第二の粒子32の含有量が5質量%となるように添加量を調整した。その後、二本ロールを用いて溶液中の各成分を分散させた。これにより、樹脂層形成用塗布液を調製した。
【0110】
なお、第一の粒子31及び第二の粒子32の平均粒子径は次のようにして測定した。すなわち、SEM観察により複数の粒子の母集団から任意に100個の粒子を抽出し、それらの粒子径の平均値を樹脂粒子の平均粒子径とした。なお、使用した樹脂粒子の粒子形状が不定形であったため、観察した粒子の最長径と最短径との単純平均値を個々の粒子の粒子径とした。
【0111】
(導電性ベースの作製)
円柱状のロール成形空間を有するロール成形金型を準備し、ロール成形空間と同軸となるように、導電性接着剤を塗布した直径8mmの芯金(導電性支持体1)をセットした。この芯金をセットしたロール成形空間に、上記のとおり調製した弾性層形成用材料を注入し、170℃にて30分間加熱した後、冷却、脱型した。これにより、導電性の軸体としての導電性支持体1と、当該導電性支持体1の外周面に沿って形成された、厚さ2mm(回転軸線L方向の中央位置での厚さ)の弾性層2と、を備えるベースロールを得た。
【0112】
次いで、ロールコート法により、ベースロールの弾性層2の表面に、上記のとおり調製した樹脂層形成用塗布液を塗工した。この際、所望の膜厚となるようにスクレーパーで不要な塗布液を欠き落としながら塗工を行った。塗膜形成後、これを150℃で30分間加熱し、層厚A=5.0μmの樹脂層3を形成した。これにより、軸体(導電性支持体1)の外周面に沿って形成された弾性層2と、弾性層2の外周面に沿って形成された樹脂層3とを備える導電性ベースを作製した。
【0113】
以上の操作により、軸体(導電性支持体1)と、導電性ベース(弾性層2及び樹脂層3)と、を備えるローラを得た。
【0114】
(コーティング液の調製)
まず、表1~3に示す組み合わせで、モノマー成分である、エポキシ基を有する加水分解性シラン(Epシラン)、有機チタン化合物(有機Ti化合物)、及び、ジルコニウムキレート化合物(Zrキレート化合物)と、液状媒体である、水及びエタノールと、を混合した後、室温で撹拌した。次いで、24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シランの縮合物を含む反応生成物を得た。縮合物は、Si-O-Ti結合、Si-O-Zr結合、TiO4/1単位及びZrO4/2単位を含む分子構造を有するポリシロキサンである。得られた反応生成物を2-ブタノールとエタノールとの混合溶剤に添加することによって、表1~3に示す固形分量の縮合物含有アルコール溶液を調製した。この際、モノマー成分(エポキシを有する加水分解性シランと有機チタン化合物とジルコニウムキレート化合物)は、合計量が100mol%となるように、表1~3に示す配合比で配合した。また、水の配合量は、RORが表1~3に示す値となるように調整した。ここで、RORとは、使用する加水分解性シランの縮合点に対する水の必要モル数比を意味する。例えば、1分子のトリメトキシ基を有する加水分解性シランを縮合するのに必要な最低の水分子は3分子となる。この関係をROR=1.0とする。最適なRORの範囲は、1.0≦ROR≦2.0とする。
【0115】
次いで、表1~3に示す酸発生剤を縮合物含有アルコール溶液に添加した。この際、酸発生剤の添加量は、縮合物含有アルコール溶液中の固形分100質量部に対して5質量部の量で添加した。これにより、実施例1~21のコーティング液をそれぞれ得た。
【0116】
(帯電ローラ10の製造)
調製したコーティング液を、上記のとおり作製したローラの導電性ベースの表面に、ロールコート法により塗工して塗膜を形成した。塗膜形成後、酸発生剤として熱酸発生剤を用いた場合には、表2又は3に示す条件で加熱し、酸発生剤として光酸発生剤を用いた場合には、UV-LED光源を備えるUV照射装置(へレウス社製)を用いて、表1~3に示す条件で光を照射し、塗膜を硬化させた。これにより表1~3に示す層厚のコーティング層4を形成した。なお、表中、波長365/405nmとは、365nmと405nmの両方に波長ピークを有するUV-LEDを使用したことを意味する。
【0117】
以上の操作により、軸体(導電性支持体1)と、軸体の外周面に沿って形成された弾性層2、弾性層2の外周面に沿って形成された樹脂層3及び樹脂層3の外周面に沿って形成されたコーティング層4からなる導電性本体5と、を備える帯電ローラ10を作製した。
【0118】
<比較例1>
有機チタン化合物を使用しなかったことを除き、実施例1~21と同様にして帯電ローラを作製した。コーティング液の調製に使用した成分の組み合わせ及び配合比、縮合物含有アルコール溶液の固形分量、水の配合量(ROR)、硬化手段、及び、コーティング層の層厚は、表2に示すとおりとした。
【0119】
<評価>
(微小硬度測定)
株式会社フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬度計(商品名:FISCHERSCOPE HM2000(「FISCHERSCOPE」は登録商標))を用い、ISO 14577に準拠して、25℃におけるコーティング層のマルテンス硬さ(HM)及び弾性変形仕事率(ηIT)を測定した。押し込み深さは、下地の影響を受けないように、膜厚の1/10とした。結果を表1~3に示す。
【0120】
(耐久試験)
画像形成装置としてSamsung製MultixpressC8640NDに、上記のとおり得られた帯電部材(帯電ローラ)を組み込み、以下の条件に従って耐久試験(画像の形成)を行った。
[画像形成条件]
・印刷環境:低温低湿環境下(15℃/10%RH)
・印刷条件:印刷通常スピード305mm/secとその半速スピード、印刷枚数(80kPV)、紙の種類(OfficePaperEC)
・導電性支持体端部への荷重:片側5.88N
・印加バイアス:感光体表面電位が-600Vとなるように便宜調整して決定した。
【0121】
(クラック耐性の評価)
上記耐久試験後(500kcycle後)の帯電ローラの表面状態を目視にて確認し、クラック耐性を評価した。クラック耐性の評価は、以下の基準で行った。結果を表1~3に示す。
A:クラックの発生が確認されない。
B:微粒子周辺に僅かにクラックの発生が確認されるが、画像には全く問題レベルの数及び大きさである。
C:微粒子の周辺に多数クラックの発生が確認されるが、画像には全く問題ないレベルの数及び大きさである。
D:微粒子の周辺に多数クラックの発生が確認され、画像に影響するレベルの数及び大きさである。
【0122】
(表面汚染の評価)
上記耐久試験後(500kcycle後)の帯電ローラの表面汚染を評価した。帯電ローラの表面汚染は、主にトナーで使用される外添剤のシリカに由来するため、蛍光X線測定装置(EDXL300:(株)リガク製)を用い、帯電ローラの表面における元素Siを定量することにより評価した。具体的には、蛍光X線測定装置のチャンバー内において、検出器上部に帯電ローラの中心がくるように帯電ローラを配置し、帯電ローラの表面における元素Siを定量した。この測定を画像形成前、画像形成後(20kPV毎)の帯電ローラそれぞれについて実施し、Si量の差分ΔSi[cps/mA](=耐久試験後のSi量[cps/mA]-耐久試験前のSi量[cps/mA])を求めた。次いで、このΔSiを縦軸に、感光体の総回転数を横時にプロットし、得られたグラフの傾きを指標として、以下の基準に基づき、表面汚染を評価した。
評価A:ΔSi<1000[cps/mA]
評価B:1000[cps/mA]≦ΔSi<2000[cps/mA]
評価C:2000[cps/mA]≦ΔSi<3000[cps/mA]
評価D:3000[cps/mA]≦ΔSi
上記傾きが小さいほど、感光体の回転回数に比してΔSiが少なく、外添剤による汚れが付きにくいことを意味する。結果を表1~3に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
表1~3に示す化合物の詳細は以下のとおりである。
・KBM-303:商品名、信越化学工業株式会社製、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
・KBM-403:商品名、信越化学工業株式会社製、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン
・PC-200:商品名、マツモトファインケミカル株式会社製、チタンオリゴマー(上記式(Ia)で表される化合物)
・ZC-580:商品名、マツモトファインケミカル株式会社製、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)の溶液(固形分70mass%)
・AKZ947:商品名、Gelest社製、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)の溶液(固形分25mass%)
・ZC-540:商品名、マツモトファインケミカル株式会社製、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネートの溶液(固形分70mass%)
・CPI-310S:商品名、サンアプロ株式会社製、トリアリールスルホニウム塩系光酸発生剤
・CPI-410S:商品名、サンアプロ株式会社製、トリアリールスルホニウム塩系光酸発生剤
・SI-B3:商品名、三新化学工業株式会社製、芳香族スルホニウム塩系熱酸発生剤
・SI-B5:商品名、三新化学工業株式会社製、芳香族スルホニウム塩系熱酸発生剤
【0127】
以上、帯電部材の様々な例について具体的に説明したが、特許請求の範囲の精神の範囲を逸脱しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは当業者にとって明らかである。すなわち、特許請求の範囲に記載した精神を逸脱しない範囲内において全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0128】
1…導電性支持体、2…弾性層、3…樹脂層、4…コーティング層、5…導電性本体、10…帯電ローラ(帯電部材)、30…マトリックス材料、31…第一の粒子、32…第二の粒子、L…回転軸線。

図1
図2