(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058963
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】避難情報提供システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/10 20060101AFI20230419BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20230419BHJP
G08B 27/00 20060101ALI20230419BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20230419BHJP
G06Q 50/26 20120101ALI20230419BHJP
【FI】
G08B25/10 D
G08B21/10
G08B27/00 A
H04M11/04
G06Q50/26
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168802
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 暢浩
(72)【発明者】
【氏名】吉野 千春
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修一
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5K201
5L049
【Fターム(参考)】
5C086AA11
5C086AA52
5C086BA23
5C086CA06
5C086CA25
5C086CB26
5C086EA13
5C086FA02
5C086FA12
5C086FA17
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA11
5C087AA25
5C087AA32
5C087AA46
5C087BB11
5C087BB18
5C087DD02
5C087DD16
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF16
5C087GG22
5C087GG32
5C087GG38
5C087GG66
5C087GG68
5C087GG82
5C087GG84
5K201BA03
5K201CC05
5K201EC06
5K201ED04
5K201EF07
5K201EF09
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】海上の船舶が避難する際に有用な情報を提供する。
【解決手段】Jアラート受信機4から送信される登録制メールを受信すると災害発生情報を送信する専用サーバ5と、船舶に乗る人に携行されるとともに現在位置を検出する機能を備える携帯端末である避難情報提供装置2と、を有し、避難情報提供装置2は、災害発生情報を受信するとともに、現在位置が利用されて作成される、船舶を避難させる場所に関する避難情報を表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Jアラート受信機から送信される登録制メールを受信すると災害発生情報を送信する専用サーバと、
船舶に乗る人に携行されるとともに現在位置を検出する機能を備える携帯端末と、を有し、
前記携帯端末は、前記災害発生情報を受信するとともに、前記現在位置が利用されて作成される、前記船舶を避難させる場所に関する避難情報を表示する、
ことを特徴とする避難情報提供システム。
【請求項2】
前記避難情報が、前記現在位置から漁港までの距離、前記現在位置から斜路までの距離、および前記現在位置から避難水域までの距離のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の避難情報提供システム。
【請求項3】
前記避難情報が、前記現在位置から斜路までの距離を少なくとも含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の避難情報提供システム。
【請求項4】
前記避難情報が、前記現在位置から避難水域までの距離を少なくとも含む、
ことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の避難情報提供システム。
【請求項5】
前記船舶に搭載される報知機をさらに有し、
前記携帯端末が前記災害発生情報を受信すると作動命令を出力して前記報知機が作動する、
ことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の避難情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、避難情報提供システムに関し、具体的には、災害発生時に避難情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生時にユーザの端末に電子メールを配信する従来の技術として、災害の発生地域情報を含む発生情報を受信する災害地域情報受信手段と、ユーザのうち予め指定されたユーザの可搬端末の位置情報を受信し、当該受信した位置情報が示す可搬端末の位置が、災害地域情報受信手段により受信した発生地域情報が示す発生地域内であるか否かを確認する端末位置情報確認手段と、端末位置情報確認手段が、発生地域内にあると確認したユーザの可搬端末に安否情報を送信し、送信した安否情報に対する返信を所定時間内に受信するか否かを確認する安否情報確認手段と、安否情報確認手段が所定時間内に返信を受信しないユーザ宛に送信された電子メールを、予め定められた順位を記憶する転送先順位記憶手段に基づいて他のユーザに転送する転送モードに切り替えるメール転送先設定手段と、を備えることを特徴とする電子メール配信サーバが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、漁業者が海上において操業中に携帯するスマートフォン等は衣類のポケットにしまわれてさらに作業用合羽などの装備を着ているため、また、船舶のエンジンなどの騒音のため、例えば緊急地震速報や津波警報が発出された場合の緊急のメール等を受信しても気が付かない、という問題がある。また、緊急のメール等を受信したことに気が付いた場合に、現在位置からどこの海岸の斜路(即ち、船の陸揚げ場)や漁港へと避難すればよいのか、あるいは沖出しした方がよいのか、などの判断を速やかに且つ適切に行うことは困難である、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、海上の船舶が避難する際に有用な情報を提供することが可能な、避難情報提供システムを提供することを目的とする。この発明は、また、船上の人が情報を受信したことに気付くことが可能な、避難情報提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る避難情報提供システムは、Jアラート受信機から送信される登録制メールを受信すると災害発生情報を送信する専用サーバと、船舶に乗る人に携行されるとともに現在位置を検出する機能を備える携帯端末と、を有し、前記携帯端末は、前記災害発生情報を受信するとともに、前記現在位置が利用されて作成される、前記船舶を避難させる場所に関する避難情報を表示する、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る避難情報提供システムは、前記避難情報が、前記現在位置から漁港までの距離、前記現在位置から斜路までの距離、および前記現在位置から避難水域までの距離のうちの少なくとも1つを含む、ようにしてもよい。
【0008】
この発明に係る避難情報提供システムは、前記避難情報が、前記現在位置から斜路までの距離を少なくとも含む、ようにしてもよい。
【0009】
この発明に係る避難情報提供システムは、前記避難情報が、前記現在位置から避難水域までの距離を少なくとも含む、ようにしてもよい。
【0010】
この発明に係る避難情報提供システムは、前記船舶に搭載される報知機をさらに有し、前記携帯端末が前記災害発生情報を受信すると作動命令を出力して前記報知機が作動する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る避難情報提供システムによれば、船舶に乗る人に携行される携帯端末が船舶を避難させる場所に関する避難情報を表示するようにしているので、海上の船舶が避難する際に有用な情報を提供することが可能となり、具体的には、災害が発生した場合に、現在位置に応じた避難の判断を速やかに且つ適切に行うことを支援することが可能となる。
【0012】
この発明に係る避難情報提供システムによれば、避難情報が漁港までの距離と斜路までの距離と避難水域までの距離とのうちの少なくとも1つを含むようにした場合には、具体的に、どこの海岸の漁港や斜路へと避難すればよいのか、あるいは沖出しした方がよいのか、などの判断を速やかに且つ適切に行うことを支援することが可能となる。
【0013】
この発明に係る避難情報提供システムによれば、避難情報が斜路までの距離を含むようにした場合には、特に小型船舶が避難する際に有用な情報を提供することが可能となる。
【0014】
この発明に係る避難情報提供システムによれば、避難情報が避難水域までの距離を含むようにした場合には、特に中型船舶が避難する際に有用な情報を提供することが可能となる。
【0015】
この発明に係る避難情報提供システムによれば、携帯端末からの命令に応じて動作する報知機が船舶に搭載されるようにした場合には、緊急地震速報や津波警報が発出されたことに船上の人が気付くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態に係る避難情報提供システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1の避難情報提供装置のインターフェース部に表示される小型船舶向けの情報の例を示す図である。
【
図3】
図1の避難情報提供装置のインターフェース部に表示される中型船舶向けの情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係る避難情報提供システム1の概略構成を示す機能ブロック図である。この発明では、例えば、1人ないし2人乗り程度の沿岸漁業用の船外機船であって漁業無線を受信する受信機を装備していない船舶に乗船して操業する漁業者が利用者として想定される。
【0019】
避難情報提供システム1は、災害発生時に利用者へと避難情報を提供するための仕組みであり、主として、避難情報提供装置2と、報知機3と、Jアラート受信機4と、専用サーバ5と、データサーバ6と、を有する。図に示す例では1つの避難情報提供装置2を図示しているが、避難情報提供システム1は複数の避難情報提供装置2を有するようにしてもよい。
【0020】
報知機3は、船舶に搭載されて、船上の利用者に対して注意を促す知らせを発する機序である。報知機3は、船舶に対して着脱自在に搭載されるようにしてもよい。
【0021】
報知機3は、避難情報提供装置2との間で例えばWiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を行う機能を備えるとともに、例えばスピーカ,警告灯/回転灯,大型ディスプレイ/電子看板を含む仕組みとして構成される。
【0022】
Jアラート受信機4は、全国瞬時警報システム(「J-ALERT」,「Jアラート」などとも呼ばれる)の受信機であり、具体的には、気象庁から発出されて消防庁の送信設備を経由して全国の都道府県や市町村などに送信される緊急地震速報,津波警報,気象警報などの防災気象情報を受信し、所定の自動起動装置を介して、防災行政無線や登録制メールを利用して情報を伝達する(消防庁「平成29年版 消防白書」参照)。
【0023】
Jアラート受信機4は、地方公共団体の庁舎などに設置され、人工衛星や地上回線(図に示す例では、通信回線網9)から防災気象情報を受信する。
【0024】
専用サーバ5は、図に示す例では有線の通信回線を介して通信回線網9と接続可能に構成されて通信回線網9を介してデータ通信する機能を備え、所定の登録手続を経て、Jアラート受信機4から送信される登録制メールの配信先として予め登録されて、避難情報提供システム1による避難情報の提供の対象とされている地域・海域に関係する登録制メールを受信する。
【0025】
専用サーバ5は、Jアラート受信機4から送信される登録制メールを受信し、前記登録制メールの内容が緊急地震速報または津波警報である場合に、地震または津波が発生したことを通知するデータ信号(「災害発生情報」と呼ぶ)を避難情報提供装置2に対して送信する。災害発生情報には、当該のデータ信号が専用サーバ5から送信された災害発生情報であることを識別するための情報(例えば、固有の符号)が含まれる。災害発生情報(に相当するデータ信号)は、電子メールの形式であってもよい。
【0026】
専用サーバ5は、避難情報提供装置2に対して送信する災害発生情報に、Jアラート受信機4から送信される登録制メールに基づいて所定の情報を含めるようにしてもよい。専用サーバ5は、例えば、登録制メールの内容が緊急地震速報である場合には震源地,震源深度,マグニチュード,および地震発生時刻のうちの少なくとも1つを災害発生情報に含めたり、また、登録制メールの内容が津波警報である場合には津波の予想到達時間を災害発生情報に含めたりするようにしてもよい。
【0027】
データサーバ6は、ストレージ機能を備えるとともに、図に示す例では有線の通信回線を介して通信回線網9と接続可能に構成されて通信回線網9を介してデータ通信する機能を備える。
【0028】
通信回線網9は、例えばインターネット,イントラネット,WAN(Wide Area Network の略),およびLAN(Local Area Network の略)を含む種々の無線/有線の通信ネットワークである。
【0029】
データサーバ6には、送信先データベース61,漁港等データベース62,および避難水域データベース63が格納される。
【0030】
送信先データベース61は、専用サーバ5から送信される災害発生情報を受信する避難情報提供装置2の情報が記録され蓄積されるデータベースである。送信先データベース61には、具体的には、所定の登録手続を経て、避難情報提供装置2の例えばメールアドレスが災害発生情報の送信先として記録され蓄積される。
【0031】
専用サーバ5は、つまり、Jアラート受信機4から送信される登録制メールを受信すると、送信先データベース61に記録されている送信先を参照して、前記送信先として登録されている避難情報提供装置2に対して災害発生情報を送信する。
【0032】
漁港等データベース62は、避難情報提供システム1によって提供される避難情報の利用者の船舶が避難可能な(言い換えると、現実的な到達可能距離が考慮されるなどしたうえで前記船舶の避難先として想定される)漁港および斜路各々の位置情報(具体的には、緯度および経度)が記録され蓄積されるデータベースである。漁港等データベース62の内容は、漁港や斜路の新設,廃止,休止などに応じて適宜更新される。
【0033】
避難水域データベース63は、例えば津波が発生した際に沖出しして津波の影響を回避する際の沖出しに好適な水域(「避難水域」と呼ぶ)の分布情報が記録されるデータベースである。避難水域データベース63には、例えば、海底地形データや水深・等深線データに基づいて水深50m以深の範囲/水域の分布状況が地図情報として利用可能であるように記録される。
【0034】
送信先データベース61,漁港等データベース62,および避難水域データベース63のうちの少なくとも1つが専用サーバ5に格納されるようにしてもよい。
【0035】
避難情報提供装置2は、専用サーバ5から送信される災害発生情報の受信をきっかけとして利用者に対して避難情報を提示するための機序であり、主として、制御部21と、記憶部22と、インターフェース部23と、測位部24と、通信部25と、接続部26と、情報提供部27と、を有する。
【0036】
避難情報提供装置2は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant の略)などの種々の携帯端末に、装置全体の制御プログラムや避難情報の提供に纏わる各種処理を行うためのアプリケーション(この実施の形態では、記憶部22に格納される避難情報提供プログラム221)がインストールされて実行されることによって構成される。
【0037】
制御部21は、避難情報提供装置2を構成する各部の動作を制御する機能を備え、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit の略)を含んで構成され、記憶部22に格納される制御プログラムなどに従って各機能を実現する。
【0038】
制御部21は、この発明としては特に、記憶部22に格納される、避難情報の提供に纏わる演算処理を行うための避難情報提供プログラム221を中央処理装置が実行することにより、避難情報提供プログラム221に従って避難情報提供装置2を構成する各部の処理の開始,内容,および終了を統制して制御する。
【0039】
記憶部22は、中央処理装置が避難情報の提供に纏わる演算処理を行う際に生成されるデータや情報などを一時的に記憶などするための作業領域となったり各種の情報,プログラム,およびデータなどを記憶して格納などするための記憶領域となったりする機能を備え、例えば、RAM(Random Access Memory の略),ROM(Read Only Memory の略),ストレージなどの記憶媒体から構成される。
【0040】
記憶部22には、避難情報提供装置2全体の制御プログラムや避難情報提供プログラム221が格納される。
【0041】
インターフェース部23は、利用者による操作を受けて避難情報提供装置2へと各種の情報や指示などを入力する機能を備えるとともに、当該インターフェース部23を介して入力される各種の情報や指示などを利用者に対して出力/表示したり避難情報提供装置2としての処理結果を利用者に対して出力/表示したりなどする機能を備えるインターフェースであり、例えば、タッチパネルとしての機能を備える液晶ディスプレイによって構成される。なお、避難情報提供装置2は、ユーザインターフェースとして、マイクなどの入力器やスピーカなどの出力器をさらに備えるようにしてもよい。
【0042】
測位部24は、測位により避難情報提供装置2の現在位置(具体的には、少なくとも緯度および経度)を常時検出する機能を備え、例えば、GPS(Global Positioning System の略;全地球測位システム)受信機によって構成される。
【0043】
通信部25は、無線の通信回線を介して通信回線網9と接続するとともに通信回線網9を介して伝送される各種の信号・情報の送受信/入出力を行う機能を備えてデータ通信を実現するネットワークインターフェース/通信インターフェースである。
【0044】
通信部25は、例えば、専用サーバ5から送信される災害発生情報を受信したり、データサーバ6とデータ通信を行ったりする。
【0045】
接続部26は、報知機3との間で例えばWiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を行う機能を備え、報知機3と信号伝送可能に接続される。
【0046】
そして、実施の形態に係る避難情報提供システム1は、Jアラート受信機4から送信される登録制メールを受信すると災害発生情報を送信する専用サーバ5と、船舶に乗る人に携行されるとともに現在位置を検出する機能を備える携帯端末である避難情報提供装置2と、を有し、避難情報提供装置2は、災害発生情報を受信するとともに、現在位置が利用されて作成される、船舶を避難させる場所に関する避難情報を表示する、ようにしている。
【0047】
実施の形態に係る避難情報提供システム1は、また、船舶に搭載される報知機3を有し、避難情報提供装置2が災害発生情報を受信すると作動命令を出力して報知機3が作動する、ようにしている。
【0048】
避難情報提供装置2は、利用者が出港する際に携行される。利用者は、船舶に乗り込んで出港する際に、避難情報提供プログラム221を起動させる。
【0049】
避難情報提供プログラム221が起動すると、データサーバ6に格納されている漁港等データベース62および避難水域データベース63が通信回線網9および通信部25を介してダウンロードされる。ダウンロードされた漁港等データベース62および避難水域データベース63は記憶部22に格納される。
【0050】
漁港等データベース62は、避難情報提供プログラム221が起動するたびにダウンロードされるようにしてもよく、または、所定の間隔で定期的にダウンロードされるようにしてもよい(この場合、漁港等データベース62の内容は漁港や斜路の新設,廃止,休止などに応じて適宜更新され得ることが考慮されることが好ましい)。
【0051】
避難水域データベース63は、一度ダウンロードされて記憶部22に既に格納されている場合にはダウンロードされないようにしてもよく、或いは、避難情報提供プログラム221が起動するたびにダウンロードされるようにしてもよく、または、所定の間隔で定期的にダウンロードされるようにしてもよい。
【0052】
避難情報提供プログラム221が起動することにより、通信部25が受信した信号・情報が専用サーバ5から送信された災害発生情報であるか否かを判別する機能(具体的には、当該のデータ信号が専用サーバ5から送信された災害発生情報であることを識別するための情報(例えば、固有の符号)を認識する機能)が実現され、通信部25が災害発生情報を受信すると、前記災害発生情報が情報提供部27の情報受信タスク271へと伝送される。
【0053】
情報提供部27は、避難情報を作成して提示するための機序であり、情報受信タスク271,位置取得タスク272,情報生成タスク273,および情報表示タスク274を含む。
【0054】
情報受信タスク271は、通信部25から伝送される災害発生情報の入力を受けると、接続部26を介して報知機3へと作動命令(に相当する信号)を出力する。
【0055】
これにより、例えば、報知機3がスピーカである場合は電子サイレンがスピーカから出力/吹鳴され、報知機3が警告灯/回転灯である場合は警告灯/回転灯が所定の点灯パターンで点灯し、また、報知機3が大型ディスプレイ/電子看板である場合は大型ディスプレイ/電子看板に所定のメッセージや画像が表示される。
【0056】
情報受信タスク271からの作動命令(に相当する信号)の出力から所定時間経過後に、情報受信タスク271が接続部26を介して報知機3へと停止命令(に相当する信号)を出力することにより、報知機3の作動が停止するようにしてもよい。あるいは、利用者が避難情報提供装置2のインターフェース部23を操作することによって接続部26を介して報知機3へと停止命令(に相当する信号)が出力されることにより、報知機3の作動が停止するようにしてもよい。
【0057】
情報受信タスク271は、通信部25から伝送される災害発生情報の入力を受けると、さらに、位置取得タスク272へと処理開始命令(に相当する信号)を出力する。
【0058】
情報受信タスク271は、また、通信部25から伝送される災害発生情報に緊急地震速報の内容や津波警報の内容が含まれている場合には、前記災害発生情報に含められている内容を情報生成タスク273へと伝送する。
【0059】
位置取得タスク272は、情報受信タスク271から出力される処理開始命令(に相当する信号)の入力を受けると、測位部24によって常時検出されている避難情報提供装置2の現在位置(即ち、避難情報提供装置2を携行している利用者が乗っている船舶の位置;具体的には、少なくとも緯度および経度)を取得し、前記現在位置を情報生成タスク273へと伝送する。位置取得タスク272から情報生成タスク273へと伝送される前記現在位置のデータのことを「位置情報データ」と呼ぶ。
【0060】
情報生成タスク273は、位置取得タスク272から伝送される位置情報データの入力を受けると、前記位置情報データに基づいて避難情報を生成する。
【0061】
避難情報は、地震や津波が発生した際に船舶をどのように避難させるかの判断を支援する情報であり、具体的には船舶を避難させる場所に関する例えば下記の内容を含む。
ア)小型船舶向けの情報
1)現在位置から漁港までの距離
2)現在位置から斜路までの距離
イ)中型船舶向けの情報
1)現在位置から漁港までの距離
2)現在位置から避難水域までの距離
【0062】
津波が発生した際には引き波で岸壁が高くて上がれないために漁港への避難は適切とは言えない場合も考えられるため、特に小型船舶に対しては、漁港までの距離と斜路までの距離とを提供することが有用であると考えられる。
【0063】
中型船舶は、現在位置から最寄りの漁港までの距離が長い場合は沖出しして例えば水深50m以深の避難水域へと避難することが適切な場合も考えられるため、中型船舶に対しては、漁港までの距離と避難水域までの距離とを提供することが有用であると考えられる。
【0064】
この発明では、上記も踏まえ、津波などの災害が発生した際に漁港または斜路へと避難する船舶を小型船舶として想定し、津波などの災害が発生した際に漁港または避難水域へと避難する船舶を中型船舶として想定する。
【0065】
避難情報提供装置2は、小型船舶用と中型船舶用とのそれぞれの避難情報提供プログラム221が準備されてどちらかがインストールされて実行されることによって小型船舶向けの情報と中型船舶向けの情報とのうちのどちらか一方のみを提供するようにしてもよく、または、避難情報提供プログラム221に関するユーザ設定の1つとして利用者が指定/選択することによって小型船舶向けの情報と中型船舶向けの情報とのうちのどちらか一方のみを提供するようにしてもよく、或いは、小型船舶向けの情報と中型船舶向けの情報とを区別することなく提供するようにしてもよい。
【0066】
情報生成タスク273は、記憶部22に格納されている漁港等データベース62に記録されている漁港および斜路各々の位置情報(具体的には、緯度および経度)と位置取得タスク272から伝送される位置情報データとを用いて、避難情報提供装置2の現在位置(即ち、船舶の位置)から漁港までの距離を計算したり、避難情報提供装置2の現在位置から斜路までの距離を計算したりする。
【0067】
情報生成タスク273は、また、記憶部22に格納されている避難水域データベース63に記録されている避難水域の分布情報と位置取得タスク272から伝送される位置情報データとを用いて、避難情報提供装置2の現在位置(即ち、船舶の位置)から避難水域までの距離を計算したりする。
【0068】
情報生成タスク273は、距離が短い順に予め定められる所定の数の漁港や斜路までの距離を計算したり、予め定められる所定の距離以内の漁港や斜路までの距離を計算したりする。
【0069】
上記もふまえ、情報生成タスク273は、現在位置から漁港までの距離と、現在位置から斜路までの距離と、現在位置から避難水域までの距離と、のうちの少なくとも1つを計算する。そして、小型船舶向けの情報としては現在位置から斜路までの距離が含まれることが好ましく、中型船舶向けの情報としては現在位置から避難水域までの距離が含まれることが好ましい。
【0070】
通信部25から伝送される災害発生情報に緊急地震速報の内容が含まれている場合には避難情報に震源地,震源深度,マグニチュード,および地震発生時刻のうちの少なくとも1つが含められるようにしてもよく、また、通信部25から伝送される災害発生情報に津波警報の内容が含まれている場合には避難情報に津波の予想到達時間が含められるようにしてもよい。
【0071】
避難情報には、漁港や斜路の緯度および経度が含まれるようにしてもよく、また、現在位置から避難水域へと向かう方角が含まれるようにしてもよい。
【0072】
情報生成タスク273は、生成した避難情報を情報表示タスク274へと伝送する。
【0073】
情報表示タスク274は、情報生成タスク273から伝送される避難情報の入力を受け、前記避難情報をインターフェース部23に表示する。
【0074】
情報表示タスク274は、具体的には、入力された避難情報に基づいて、例えば、小型船舶向けの情報を表示したり(
図2参照)、或いは、中型船舶向けの情報を表示したりする(
図3参照)。
図2に示す例では、小型船舶向けの情報として、現在位置からの距離が短い順に、漁港や斜路の名称および前記漁港や斜路までの距離が表示される。
図3に示す例では、中型船舶向けの情報として、現在位置からの距離が短い順に、漁港の名称および前記漁港までの距離が表示されるとともに避難水域までの距離が表示される。
【0075】
実施の形態に係る避難情報提供システム1によれば、船舶に乗る人に携行される携帯端末である避難情報提供装置2が船舶を避難させる場所に関する避難情報を表示するようにしているので、海上の船舶が避難する際に有用な情報を提供することが可能となり、具体的には、緊急地震速報や津波警報が発出された場合に、現在位置に応じた避難の判断を速やかに且つ適切に行うことを支援することが可能となる。
【0076】
実施の形態に係る避難情報提供システム1によれば、避難情報が漁港までの距離と斜路までの距離と避難水域までの距離とのうちの少なくとも1つを含むようにしているので、具体的に、現在位置からどこの海岸の漁港や斜路へと避難すればよいのか、あるいは沖出しした方がよいのか、などの判断を速やかに且つ適切に行うことを支援することが可能となる。
【0077】
実施の形態に係る避難情報提供システム1によれば、避難情報が斜路までの距離を少なくとも含むようにした場合には、特に小型船舶が避難する際に有用な情報を提供することが可能となる。
【0078】
実施の形態に係る避難情報提供システム1によれば、避難情報が避難水域までの距離を少なくとも含むようにした場合には、特に中型船舶が避難する際に有用な情報を提供することが可能となる。
【0079】
実施の形態に係る避難情報提供システム1によれば、避難情報提供装置2からの命令に応じて動作する報知機3が船舶に搭載されるようにしているので、緊急地震速報や津波警報が発出されたことに船上の人が気付くことが可能となる。あるいは浅瀬にて、船舶から降りて船舶の周囲で作業をしている人にも気付きを与えることが可能になる。
【0080】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0081】
例えば、避難情報提供装置2は、地方公共団体に設置される端末(「地方公共団体端末7」と呼ぶ)から通信回線網9および通信部25を介して送信される信号・情報に基づいて所定の動作を実行するようにしてもよい。例えば、地方公共団体の担当者から送信される情報の内容をインターフェース部23に表示するようにしてもよい。
【0082】
避難情報提供装置2は、また、漁業協同組合に設置される端末(「漁業協同組合端末8」と呼ぶ)から通信回線網9および通信部25を介して送信される信号・情報に基づいて所定の動作を実行するようにしてもよい。例えば、漁業協同組合の担当者から漁の開始時刻や終了時刻に合わせて送信される信号に基づいて接続部26を介して報知機3へと作動命令(に相当する信号)が出力されるようにしてもよい。これにより、報知機3によって漁の開始や終了が周囲に知らされるようにしてもよい。
【0083】
地方公共団体端末7や漁業協同組合端末8から送信される信号・情報に基づいて報知機3が作動する場合は、専用サーバ5から送信される災害発生情報を受信したときに報知機3が作動する場合と、動作内容が異なる(例えば、電子サイレンの吹鳴パターンが異なる、警告灯/回転灯の点灯パターンが異なる、大型ディスプレイ/電子看板のメッセージや画像が異なる、など)ようにしてもよい。
【0084】
また、上記の実施の形態では登録制メールの内容が緊急地震速報または津波警報である場合に災害発生情報が専用サーバ5から送信されて避難情報提供装置2や報知機3が作動するようにしているが、他の場合に災害発生情報が送信されるようにしてもよい。すなわち、この発明は海上の船舶が避難する際に有用な情報を提供したり情報を受信したことを船上の人に気付かせたりすることが要点であり、緊急地震速報や津波警報を内容とする登録制メールが送信された場合に限らず、船舶が避難することが必要とされる内容の登録制メールが送信された場合に、災害発生情報が送信されるようにしてもよい。
【0085】
また、上記の実施の形態では避難情報提供装置2が情報生成タスク273を備えて自身の前記情報生成タスク273が生成する避難情報をインターフェース部23に表示するようにしているが、避難情報提供装置2は、外部のサーバ(ここでは、専用サーバ5)によって生成される避難情報を通信回線網9および通信部25を介して取得し、前記外部のサーバ(ここでは、専用サーバ5)によって生成される避難情報をインターフェース部23に表示するようにしてもよい。この場合は、専用サーバ5が情報生成タスク273に相当する機能を備えるとともに、避難情報提供装置2の測位部24によって常時検出されている避難情報提供装置2の現在位置(即ち、位置情報データ)が所定の時間間隔で通信部25および通信回線網9を介して専用サーバ5へと送信される。そして、専用サーバ5が、漁港等データベース62に記録されている漁港および斜路各々の位置情報や避難水域データベース63に記録されている避難水域の分布情報と避難情報提供装置2から送信される位置情報データとを用いて所定の距離を計算し、計算した前記所定の距離を通信回線網9を介して(例えば、災害発生情報として)避難情報提供装置2へと送信する。
【0086】
また、上記の実施の形態ではJアラート受信機4から送信される登録制メール(具体的には、その内容が緊急地震速報または津波警報)を専用サーバ5が受信すると専用サーバ5が災害発生情報を避難情報提供装置2に対して送信するようにしているが、Jアラート受信機4が登録制メール(具体的には、その内容が緊急地震速報または津波警報)を受信したときに地方公共団体の担当者によって地方公共団体端末7が操作されて、災害発生情報を避難情報提供装置2に対して送信する指令が専用サーバ5に対して為されるようにしてもよい。
【0087】
また、上記の実施の形態では漁港等データベース62に記録されている漁港および斜路各々の位置情報や避難水域データベース63に記録されている避難水域の分布情報と位置取得タスク272から伝送される位置情報データとを用いて所定の距離を計算するようにしているが、他の情報もふまえて避難情報が生成されるようにしてもよい。例えば、避難情報提供装置2の現在位置(即ち、船舶の位置),気象情報,海象情報,漁労機器(例えば、魚群探知機,潮流計)の情報のうちの少なくとも1つが入力されると避難先としての漁港,斜路,避難水域が出力されるように機械学習された学習済みモデルが用いられて避難情報が生成されるようにしてもよい。この場合、前記の情報それぞれの計測値・観測値と、漁港,斜路,避難水域までの所要時間と、の組み合わせデータが収集され、前記組み合わせデータの集合が教師データとして用いられて機械学習が行われて学習済みモデルが作成されるようにしてもよい。前記組み合わせデータは、前記の計測値・観測値がいろいろな条件になっている様々な状況のもとでの漁港や斜路までの所要時間の計測や避難水域までの所要時間の計測がデータ収集のための実験/試行として繰り返し行われて実績データとして整備されたり、前記の計測値・観測値がいろいろな条件になっている様々な状況のもとでの漁港や斜路各々までの所要時間の計算や避難水域までの所要時間の計算がデータ収集のためのシミュレーションとしてコンピュータ上で繰り返し行われて計算結果/シミュレーション結果データとして整備されたりする。
【符号の説明】
【0088】
1 避難情報提供システム
2 避難情報提供装置
21 制御部
22 記憶部
221 避難情報提供プログラム
23 インターフェース部
24 測位部
25 通信部
26 接続部
27 情報提供部
271 情報受信タスク
272 位置取得タスク
273 情報生成タスク
274 情報表示タスク
3 報知機
4 Jアラート受信機
5 専用サーバ
6 データサーバ
61 送信先データベース
62 漁港等データベース
63 避難水域データベース
7 地方公共団体端末
8 漁業協同組合端末
9 通信回線網