(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058974
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】チューブポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 5/00 20060101AFI20230419BHJP
F04B 43/12 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
F04C5/00 341N
F04C5/00 341L
F04C5/00 341A
F04B43/12 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168813
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】597095957
【氏名又は名称】株式会社アクアテック
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】玉川 長雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛士
(72)【発明者】
【氏名】中本 浩
(72)【発明者】
【氏名】井上 広昭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 誠
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA08
3H077BB10
3H077CC04
3H077CC10
3H077DD02
3H077EE04
3H077EE15
3H077FF06
3H077FF31
(57)【要約】
【課題】チューブポンプにおいて、流体の吐出量における脈流を低減し、流体を連続的に吐出する。
【解決手段】チューブポンプ1は、内部に流体が流れるチューブ2と、円筒室3aの内壁面に沿ってチューブ2が配置されるポンプべース3と、チューブ2を圧閉する回転体4と、回転体4を回転駆動させるモータ5と、を備え、回転体4の回転運動によってチューブ2を圧閉及び復元させることでチューブ2内の流体を吐出する。モータ5は、チューブ2の容積と復元時間との関係により生じる機械的共振により流体の吐出量の脈流が低減される回転体4の回転数に従って、回転体4を回転駆動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が流れるチューブと、円筒室を有し該円筒室の内壁面に沿って前記チューブが配置されるポンプべースと、前記円筒室内に回転可能に配置され前記チューブを前記内壁面に対して圧閉する回転体と、前記回転体を前記内壁面に沿って回転駆動させる駆動機構と、を備え、前記回転体の回転運動によって前記チューブを圧閉及び復元させることで該チューブ内の流体を吐出するチューブポンプにおいて、
前記駆動機構は、前記チューブの容積と復元時間との関係により生じる機械的共振により流体の吐出量の脈流が低減される前記回転体の回転数に従って、前記回転体を回転駆動させることを特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
前記回転体の回転数は、下記式(1)に基づき、リアクタンス成分Xが0インピーダンスとなるときの回転数Fであることを特徴とする請求項1に記載のチューブポンプ。
X=ω×(A×L)-1/ω×t ・・・(1)
※ただし、ω=2πF
t=復元時間、A=チューブの断面積、L=チューブの有効長、
F=回転数
【請求項3】
前記チューブに流体を流入させる入口側経路又は流体を吐出させる出口側経路に直列に取り付けられる流量調整機構を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチューブポンプ。
【請求項4】
前記流量調整機構は、その断面積が前記チューブの断面積よりも小さい細管であることを特徴とする請求項3に記載のチューブポンプ。
【請求項5】
前記流量調整機構は、前記入口側経路又は前記出口側経路を変形させてそれら断面積を変更可能とする変形機構を有することを特徴とする請求項3に記載のチューブポンプ。
【請求項6】
前記円筒室の中心と、前記回転体の回転軸が一致していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のチューブポンプ
【請求項7】
前記駆動機構は、前記回転体の軸受け部に設けられた凸部を有し、
前記ポンプべースは、前記回転体の挿入口に設けられて前記凸部が嵌合する凹部を有することを特徴とする請求項6に記載のチューブポンプ。
【請求項8】
前記回転体は、偏芯ロータと前記チューブを圧閉するリング状の加圧部材と、前記加圧部材の内周に当接する偏芯ロータと、を有し、
前記偏芯ロータは、前記加圧部材との当接面において前記偏芯ロータの回転軸と直交する方向に形成された凹凸構造を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のチューブポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブを圧閉してポンプ作用を行うチューブポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポンプベースに形成された円筒形の内壁面に沿わせてリング状に配置したチューブをローラの回転運動によって圧閉して、チューブ内の流体を吐出するチューブポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のチュービングポンプは、チューブ内の流体がポンプの部材に直接的に接触しないことや、チューブの取付け及び取外しが簡単であることなど、多数のメリットがあり、医療機器や研究開発部門等で広く使用されている。
【0003】
図10(a)(b)は、従来のチューブポンプの一種であり、チューブをリング状の加圧部材の偏芯運動によって圧閉する構成例を示す。図例のチューブポンプ101は、偏芯ロータ102の回転により、リング状の加圧部材103の中心を偏芯回転させて、チューブ104を順次圧閉し、チューブ104の圧閉点Pを時計回りに移動させることで、チューブ104内の流体を吐出させてポンプ作用を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11は、従来のチューブポンプの流量波形の一例を示す。チューブポンプは、偏芯ロータの1回転につき、1つの圧閉点が移動する。チューブの圧閉点では、流体が実質的に寸断されるので、圧閉点がチューブの吐出端部側に向かうときには、流体の吐出量が減退する。これにより、チューブポンプの吐出量は、山なりとなった流量波形として現れ、偏芯ロータが連続的に回転することで、図示したような脈流を伴う流量波形で流体を吐出することになる。
【0006】
しかしながら、医療機器や研究開発部門等の分野で、例えば、細胞の培養において培養液を循環させるために、この種のチューブポンプを用いる場合には、脈流により培養液の循環が不均一になる虞があり、脈流の少ないチューブポンプを要望する声が市場には存在する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、流体の吐出量における脈流を低減し、流体を連続的に吐出することができるチューブポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、内部に流体が流れるチューブと、円筒室を有し該円筒室の内壁面に沿って前記チューブが配置されるポンプべースと、前記円筒室内に回転可能に配置され前記チューブを前記内壁面に対して圧閉する回転体と、前記回転体を前記内壁面に沿って回転駆動させる駆動機構と、を備え、前記回転体の回転運動によって前記チューブを圧閉及び復元させることで該チューブ内の流体を吐出するチューブポンプにおいて、前記駆動機構は、前記チューブの容積と復元時間との関係により生じる機械的共振により流体の吐出量の脈流が低減される前記回転体の回転数に従って、前記回転体を回転駆動させることを特徴とする。
【0009】
また、上記チューブポンプにおいて、前記回転体の回転数は、下記式(1)に基づき、リアクタンス成分Xが0インピーダンスとなるときの回転数Fであることが好ましい。
X=ω×(A×L)-1/ω×t ・・・(1)
※ただし、ω=2πF
t=復元時間、A=チューブの断面積、L=チューブの有効長、
F=回転数
【0010】
また、上記チューブポンプにおいて、前記チューブに流体を流入させる入口側経路又は流体を吐出させる出口側経路に直列に取り付けられる流量調整機構を更に備えることが好ましい。
【0011】
また、上記チューブポンプにおいて、前記流量調整機構は、その断面積が前記チューブの断面積よりも小さい細管であることが好ましい。
【0012】
また、上記チューブポンプにおいて、前記流量調整機構は、前記入口側経路又は前記出口側経路を変形させてそれら断面積を変更可能とする変形機構を有することが好ましい。
【0013】
また、上記チューブポンプにおいて、前記円筒室の中心と、前記回転体の回転軸が一致していることが好ましい。
【0014】
また、上記チューブポンプにおいて、前記駆動機構は、前記回転体の軸受け部に設けられた凸部を有し、前記ポンプべースは、前記回転体の挿入口に設けられて前記凸部が嵌合する凹部を有することが好ましい。
【0015】
また、上記チューブポンプにおいて、前記回転体は、偏芯ロータと前記チューブを圧閉するリング状の加圧部材と、前記加圧部材の内周に当接する偏芯ロータと、を有し、前記偏芯ロータは、前記加圧部材との当接面において前記偏芯ロータの回転軸と直交する方向に形成された凹凸構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、駆動機構の駆動を制御して、所定の回転数で回転体を回転させることにより、機械的共振により流体の吐出量の脈流を低減することができ、流体を連続的に吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係るチューブポンプの正面図、(b)は(a)のA-A断面図。
【
図2】上記チューブポンプを使用した際のロータ回転数と、流体の吐出量の流量波形との関係を示す図。
【
図3】(a)は上記チューブポンプにおいて、リング状の加圧部材の回転移動と、チューブの復元を水平展開してキャパシタンス要素を説明するために模式的に示す図、(b)は、インダクタンス要素を説明するために模式的に示す図。
【
図4】(a)は上記チューブポンプの吐出量の脈流発生原理を等価回路として例えた図、(b)は共振時の等価回路とその条件を示す図。
【
図5】上記実施形態の第1の変形例に係るチューブポンプの構成図。
【
図6】上記実施形態の第2の変形例に係るチューブポンプの構成図。
【
図7】上記実施形態の第3の変形例に係るチューブポンプにおいて、ポンプ部分とロータ回転軸の関係を示す図と、その拡大図。
【
図8】
図7のE-E断面であって、上記変形例に係るチューブポンプのモータ、偏芯ロータをポンプ部分から分離した構成図。
【
図9】上記実施形態の第4の変形例に係るチューブポンプに用いられる偏芯ロータの構成図。
【
図10】(a)(b)は一般的なチューブポンプの動作例を示す断面図。
【
図11】一般的なチューブポンプの流量波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るチューブポンプについて、図面を参照して説明する。
図1に示すように、チューブポンプ1は、内部に培養液等の流体が流れるチューブ2と、チューブ2が配置されるポンプベース3と、ポンプベース3に対してチューブ2を圧閉する回転可能な回転体4と、回転体4を駆動させるモータ5(駆動機構)と、を備える。
【0019】
ポンプベース3は、円筒室3aを有し、この円筒室3aの内壁面3bに沿ってチューブ2が配置されている。また、ポンプべース3は、扁平な6面体箱形状の外装を有し、その内部空間にチューブ2及び回転体4が収納される。回転体4は、チューブ2をポンプベースの内壁面3bに対して圧閉し、リング状の加圧部材4aと、この加圧部材4aを内壁面3bに沿って偏芯運動させる偏芯ロータ4bと、を有する。モータ5は、回転体4を内壁面3bに沿って回転駆動させる。チューブポンプ1は、加圧部材4aの偏芯運動(回転体の回転運動)によってチューブ2を圧閉してチューブ2内の流体を吐出する。
【0020】
チューブ2は、加圧部材4aから受ける圧力に耐え得るように、例えば、ゴム又は合成樹脂等の可撓性材料により形成され、復元性を有している。チューブ2は、加圧部材4aにより圧閉されたとき、その内部が閉塞された状態(以下、圧閉状態という)となり(
図3(a)も参照)、また、加圧部材4aにより圧閉されていないとき、その圧閉状態が解放されて元の状態(以下、解放状態という)に戻る。チューブ2の表面には、加圧部材4aとの摩擦を低減するために、例えば、潤滑剤が塗布されていてもよい。
【0021】
ポンプべース3は、例えば、ABS樹脂等の成形品により構成され、6面に配置された部材から成る矩形の内部に所定形状の立体収容空間を有している。また、ポンプベース3は、上記円筒室3aの他に、チューブ2を円筒室3a内に導入する入り口側からこの円筒室3aの円周方向に沿って設けられた入口側経路6と、チューブ2を円筒室3a内から導出する出口側に向けて設けられたた出口側経路7と、を有している。
【0022】
加圧部材4aは、チューブ2の損傷を防ぐために摩擦係数が小さい材料をリング状に形成されており、例えば、フッ素樹脂系の合成樹脂成形品により構成される。偏芯ロータ4bは、加圧部材4aに内接する断面が偏心円又は略楕円形状の部材であり、加圧部材4aの内周面に摺接して回転することにより、加圧部材4aをポンプベース3の内壁面3bに沿って偏芯運動させる。なお、本実施形態のチューブポンプ1は、医療機器や細胞培養等の医療分野での使用を考慮したものであり、ポンプ部分(チューブ2、ポンプベース3、加圧部材4a、偏芯ロータ4b)とモータ5とを分離できるディスポーザブル機能を有する。
【0023】
モータ5は、偏芯ロータ4bを回転させるためのものであり、ポンプベース3の背面側に配置される。モータ5の回転軸5aは、偏芯ロータ4bに嵌装される。モータ5には、例えば、小型の直流モータであって、回転軸5aの回転数を自在に変化させることができるものが用いられる。モータ5の回転数を上げることで、偏芯ロータ4b及び加圧部材4aも高速で回転し、流体が吸引及び吐出される回数を増大させることで、流体の吐出量が増加する。ただし、上記のように構成されたチューブポンプ1は、基本的な動作においては、
図10及び
図11で示したように、流体の吐出量に脈流を伴うものとなる。
【0024】
図2は、上述したチューブポンプ1の構成を採用したポンプを用いて、偏芯ロータの回転数を560rpm~1050rpmまでスイープしたときの流量変化を測定したグラフである。このポンプでは、回転数800rpmまで通常使用した場合には、顕著な脈流を伴う流量波形を示すが、回転数800rpmを超えると、流量波形の波長が長くなり、回転数894rpmあたりで、流量波形が平坦になる。なお、回転数900rpmを超えると、再び流量波形の波長が短くなる。このように、本件発明者らは、チューブポンプ1では、偏芯ロータ4bがある固有の回転数において、流量波形が平坦になる、すなわち、流体の吐出量の脈流が低減されるポイントがあることを見出した、また、本件発明者らは、この脈流が低減される偏芯ロータの回転数は、チューブの容積と復元時間との関係により生じる機械的共振によるものであることを見出した。以下、その原理を説明する。
【0025】
図3では、模式的に、本来は円筒室3a内に周回するように配置されるチューブ2を水平な直線状に展開し、本来は円運動する加圧部材4aが水平移動するように図示している。機械的共振を起こすリアクタンス成分の一つは、
図3(a)に示すチューブ2の復元時間tであり、これによりキャパシタンス要素が構成される。図示したS点にあった圧閉する加圧部材4aが、E点に移動した時、チューブ2の内部形状は図示したC1からC2に復元する。その時の復元時間tは一定の為、偏芯ロータ4bが低回転の時は、復元するのに十分な時間があり、チューブ2の内部形状はC1からC2の変化を繰り返す。しかし、偏芯ロータ4bが高回転になると、復元する時間もなくなり、インピーダンスが高くなるコンプライアンス成分になり、これがキャパシタンス要素Cとなる。
【0026】
もう一つのリアクタンス成分は、チューブ内容量である。
図3(b)に示すように、加圧部材4aがS点からE点を経て、回転移動して再びS点に戻るときのチューブ2の有効長L(加圧部材4aの移動距離)と断面積Aにより、チューブ2の容量(容量L×A)がマス成分となり、これがインダクタンス要素Lとなる。このインダクタンス要素Lは、チューブポンプ1のサイズで決まる要素である。
【0027】
1つの圧閉するポイントを持つ偏芯ロータ4bでチューブ2を圧閉し、蠕動運動を起こして連続的に送液を行うチューブポンプ1における吐出量の脈流発生原理は、
図4(a)に示す等価回路に例えることができる。この等価回路は、L、C、Rの直列共振回路で、偏芯ロータ4bの回転数で発生する特定の周波数で共振現象を起こす。共振現象を起こすことにより、
図4(b)に示すように、リアクタンス成分Xがなくなり、流路抵抗Rのみがインピーダンスとして存在することになる。
【0028】
より、具体的には、リアクタンス成分Xが0インピーダンスになるロータ4bの回転数の条件は、下記式(1)により表される。
X=ω×(A×L)-1/ω×t ・・・(1)
※ただし、ω=2πF
t=復元時間、A=チューブの断面積、L=チューブの有効長、
F=回転数
【0029】
すなわち、本実施形態のチューブポンプ1においては、モータ5(駆動機構)の駆動を制御して、上記式(1)に基づいて算出された、リアクタンス成分Xが0インピーダンスとなるときのロータ回転数Fで偏芯ロータ4bを回転させることにより、機械的共振により流体の吐出量の脈流を低減することができ、流体を連続的に吐出することができる。
【0030】
次に、本実施形態のチューブポンプの第1の変形例について、
図5を参照して説明する。従来の一般的なチューブポンプでは、駆動するモータの回転数を増減することで、流体の流量を任意に調整するが、上述した本実施形態のチューブポンプ1では、脈流を低減した流量特性を得るために、モータの回転数を一定にする必要があり、そのままでは流量を任意の値に設定できない。特に、本実施形態のチューブポンプで脈流が低減されるロータ回転数は、偏芯ロータ4bが高速で回転することで、チューブ2の復元時間よりも圧閉回数が多くなる回転数であることが条件となるので、低流量での動作に課題がある。
【0031】
そこで、本変形例のチューブポンプ1では、チューブ2における流体の入口側経路6又は、出口側経路7に直列に取り付けられる流量調整機構8を更に備えるものである。本変形例における流量調整機構8は、その断面積がチューブ2の断面積よりも小さい細管81、82である。このような細管81、82を用いることで、ロータ回転数が高くても、チューブポンプ1吸引される流体量又は吐出される流体量を物理的に抑制して、それらを低減することができる。また、径が異なる細管81、82を用いることで、任意の流量を得ることができる。
【0032】
次に、本実施形態のチューブポンプの第2の変形例について、
図6を参照して説明する。本変形例では、上記変形例とは流量調整機構の構造が異なり、入口側経路6又は出口側経路7を押圧することで変形させてそれら断面積を変更可能とする変形機構83を有するものである。変形機構83は、両側方向にスライドすることで入口側経路6又は出口側経路7を押圧する1一対の押圧片83aと、押圧片83aの内辺を押圧する押圧調整部材83bと、押圧調整部材83bの位置を調整する調整ネジ83cから成る。
【0033】
押圧片83aは、対向する内辺の距離がポンプ中心(回転軸)方向に向けて狭くなるように形成された傾斜面を有し、押圧調整部材83bは押圧片83aの傾斜面に対応する傾斜面を有する台形形状の部材である。押圧調整部材83bの底辺部には調整ネジ83cが配置され、調整ネジ83cを回すことで、押圧調整部材83bの位置が変化し、押圧調整部材83bがポンプ中心方向に移動することで、押圧片83aを入口側経路6又は出口側経路7に受けて移動させる。本変形例によれば、上記変形例よりも更に微細に入口側経路6又は出口側経路7の口径断面を調整することができ、より高精度に所望の流量を得ることができる。なお、変形機構83は、例えば、押圧部材83bと押圧片83aの接する傾斜面の角度を変えることで、押圧片83aの移動量を変えることができ、入口側経路6又は押圧側経路7の口径断面を片側のみ又は両方、或いはそれぞれ異なる変化量で調整ができる構成であってもよい。
【0034】
次に、本実施形態のチューブポンプの第3の変形例について、
図7及び
図8を参照して説明する。上記実施形態のチューブポンプ1は、上述したように、ポンプ部分(チューブ2、ポンプベース3、加圧部材4a、偏芯ロータ4b)とモータ5とを分離できるディスポーザブル機能を有する。このような、偏芯ロータ4bでチューブ2を圧閉するチューブポンプ1は、
図7に示すように、チューブ2を保持するポンプベース3の円筒室3aの内周と偏芯ロータ4bの回転軸(中心点)を安定的に一致させる必要がある。特に、本実施形態のチューブポンプ1は、偏芯ロータ4bを高速回転させるケースが多いので、回転軸の一致は、動作安定性を確保する上で、極めて重要となる。
【0035】
そこで、本変形例のチューブポンプ1では、モータ5(駆動機構)が、偏芯ロータ4bの軸受け部に設けられた凸部51を有し、ポンプべース3は、偏芯ロータ4bの挿入口に設けられてモータ5側の凸部51が嵌合する凹部31を有するものである。これにより、例えば、内部清掃のためにポンプ部分とモータ5とを分離した後に、再び連結させる場合にも、凸部51が凹部31に嵌合することで位置決めがなされ、ポンプベース3の円筒室3aの内周と偏芯ロータ4bの回転軸(中心点)を安定的に一致させることができる。
【0036】
次に、本実施形態のチューブポンプの第4の変形例について、
図9を参照して説明する。上記実施形態のチューブポンプ1は、偏芯ロータ4bとチューブ2の間にパイプ状の加圧部材4aがある。この加圧部材4aは、偏芯ロータ4bが直接的にチューブ2に接触しないようにすると共に、加圧部材4aもそれ自体は回転せず、摩擦等の機械的ストレスをチューブ2に与えないようにする目的で用いられる。しかしながら、回転しないリング状の加圧部材4aと偏芯ロータ4bとの間では、滑り摩擦が発生して、それらの間では摩耗、発熱が起きる。上記実施形態のチューブポンプ1は、偏芯ロータ4bを高速回転させるケースが多いので、摩耗や発熱がより生じ易い状態となる。
【0037】
そこで、本変形例においては、偏芯ロータ4bが、単純な円柱形状ではなく、
図9に示すように、加圧部材4aとの当接面において偏芯ロータ4bの回転軸と直交する方向に形成された凹凸構造41を有するものを用いている。この凹凸構造41の凹状環部を設けたことで、リング状の加圧部材4aとの接触面が凸状環部に低減されるので、滑り摩擦を低減する効果がある。また、長時間の使用時には、凸状環部に摩耗が集中し易くなるが、凹状環部に潤滑グリスを溜めておくことで、接触面となる凸状環部にグリスが供給され、接触摩擦と摩擦による発熱とを低減することができる。
【0038】
本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、回転体4として、加圧部材4aと偏芯ロータ4bを用いた構成を示したが、モータの回転動力を利用してチューブ2を圧閉する構成であれば、図例に限られない。
【符号の説明】
【0039】
1 チューブポンプ
2 チューブ
3 ポンプベース
31 凹部
3a 円筒室
3b 内壁面
4a 加圧部材(回転体)
4b 偏芯ロータ(回転体)
41 凹凸構造
5 モータ(駆動機構)
51 凸部
6 入口側経路
7 出口側経路
8 流量調整機構
81 細管
82 変形機構