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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058989
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】電力線通信装置、及び電力線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/54 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
H04B3/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168842
(22)【出願日】2021-10-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「車載ハーネスの軽量化を実現する有線/無線連携通信技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 和司
【テーマコード(参考)】
5K046
【Fターム(参考)】
5K046AA03
5K046BA03
5K046BB05
5K046BB06
5K046PS31
5K046PS51
(57)【要約】
【課題】移動体において直流電源の電力線を用いて電力線通信を行う際に、適切な通信を実現することができる電力線通信装置を提供する。
【解決手段】移動体において直流電源(バッテリ)3の電力線2を用いて電力線通信を行う電力線通信装置10は、直流の電力線2を用いて電力線通信を行う通信部11と、電力線通信で用いられる複数の周波数帯のうち、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定する特定部12と、特定された周波数帯によって電力線通信を行うように通信部11を制御する通信制御部13とを備え、特定部12は、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の特定を繰り返して行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体において直流電源の電力線を用いて電力線通信を行う電力線通信装置であって、
直流の電力線を用いて電力線通信を行う通信部と、
前記電力線通信で用いられる複数の周波数帯のうち、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定する特定部と、
前記特定された周波数帯によって電力線通信を行うように前記通信部を制御する通信制御部と、を備えた電力線通信装置。
【請求項2】
前記特定部は、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の特定を繰り返して行う、請求項1記載の電力線通信装置。
【請求項3】
前記特定部は、周波数帯ごとの伝送特性を取得し、当該伝送特性を用いて、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定する、請求項1または請求項2記載の電力線通信装置。
【請求項4】
前記伝送特性は、パケット誤り率、パケット取得率、または減衰特性である、請求項3記載の電力線通信装置。
【請求項5】
前記特定部は、他の電力線通信装置から送信された信号に含まれる、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を取得する、請求項1または請求項2記載の電力線通信装置。
【請求項6】
移動体において直流電源の電力線を用いて電力線通信を行う電力線通信方法であって、
前記電力線通信で用いられる複数の周波数帯のうち、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定するステップと、
前記特定された周波数帯によって、直流の電力線を用いて電力線通信を行うステップと、を備えた電力線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源の電力線を用いて電力線通信を行う電力線通信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の移動体の機能が高度化するにつれて、移動体内部における配線が増えてきている。配線が増えると移動体全体の重量が増え、燃費(電気で駆動する場合には電費)が悪くなる。それを避けるための方法として、バッテリライン(電力線)を用いて制御等の情報を伝送することが考えられる。
【0003】
例えば、自動車のバッテリラインを用いた電力線通信を行うことによって、ワイヤハーネスの数を削減することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-193799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された電力線通信システムでは、自動車に搭載されている電装品におけるモータ駆動時に発生するノイズの電力線通信への影響を低減するため、電装品から発生するノイズレベルの低い周波数帯を求めて、その周波数帯で電力線通信が行われている。
【0006】
しかしながら、自動車等の移動体における電力線通信に影響を与えるのは、搭載されている電装品のみではない。バッテリラインは、本来は直流電力を供給するものであるため、高い周波数の信号は通りにくいという特性を有しており、電力線通信は、例えば、通信を行う機器間の電力線の配線状況や電力線の長さ、太さ、屈曲などの影響も受ける。そのような配線状況等は、移動体の種類ごとに異なっており、また移動体ごとに異なっていることもある。さらに、移動体の周囲からの雑音や干渉波がバッテリラインを介した電力線通信に干渉することもある。この場合には、時間帯や移動体の現在位置に応じて伝送特性が変化し得ることになる。
【0007】
このように、電装品のノイズレベルの低い周波数帯であったとしても、配線状況等に応じては、伝送特性がよくないこともあり得、また、時間帯や移動体の現在位置に応じて伝送特性がよくないこともあり得ることになる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、移動体において直流電源の電力線を用いて電力線通信を行う際に、適切な通信を実現することができる電力線通信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による電力線通信装置は、移動体において直流電源の電力線を用いて電力線通信を行う電力線通信装置であって、直流の電力線を用いて電力線通信を行う通信部と、電力線通信で用いられる複数の周波数帯のうち、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定する特定部と、特定された周波数帯によって電力線通信を行うように通信部を制御する通信制御部と、を備えたものである。
このような構成により、移動体における直流電源の電力線を介して、減衰の少ない周波数帯を用いて電力線通信を行うことができるようになる。そのため、例えば、よりエラーの少ない電力線通信を実現することができ、機器間の電力線通信の品質が向上することになる。
【0010】
また、本発明の一態様による電力線通信装置では、特定部は、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の特定を繰り返して行ってもよい。
このような構成により、干渉電波等の時間的な変化や位置に応じた変化に応じて、好適な周波数帯を用いた電力線通信を実現することができるようになる。
【0011】
また、本発明の一態様による電力線通信装置では、特定部は、周波数帯ごとの伝送特性を取得し、その伝送特性を用いて、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定してもよい。
また、本発明の一態様による電力線通信装置では、伝送特性は、パケット誤り率、パケット取得率、または減衰特性であってもよい。
また、本発明の一態様による電力線通信装置では、特定部は、他の電力線通信装置から送信された信号に含まれる、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を取得してもよい。
【0012】
また、本発明の一態様による電力線通信装置では、通信部と直流の電力線との間でインピーダンス整合を行うインピーダンス整合部をさらに備えてもよい。
このような構成により、通信部と電力線との間のインピーダンスを整合させることができ、電力線に効率よく信号を伝送することができるようになる。
【0013】
また、本発明の一態様による電力線通信方法は、移動体において直流電源の電力線を用いて電力線通信を行う電力線通信方法であって、電力線通信で用いられる複数の周波数帯のうち、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定するステップと、特定された周波数帯によって、直流の電力線を用いて電力線通信を行うステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様による電力線通信装置等によれば、移動体において直流電源の電力線を介して、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を用いて電力線通信を行うことによって、より高品質な通信を実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態による電力線通信システムの構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による電力線通信装置の動作を示すフローチャート
図3】同実施の形態における移動体内の装置の配置の一例を示す図
図4】同実施の形態における移動体内の装置の配置の一例を示す図
図5A】同実施の形態における周波数ごとの伝送特性の実測値の一例を示す図
図5B】同実施の形態における周波数ごとの伝送特性の実測値の一例を示す図
図6A】同実施の形態における周波数ごとの伝送特性の一例を示す図
図6B】同実施の形態における周波数ごとの伝送特性の一例を示す図
図7】同実施の形態における通信部と電力線との接続の一例を示す図
図8】同実施の形態における通信部と電力線との接続の一例を示す図
図9】同実施の形態における通信部の他の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による電力線通信装置、及び電力線通信方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による電力線通信装置は、移動体における直流電源の電力線を介した電力線通信(PLC:Power Line Communication)において、減衰の少ない周波数帯を特定し、その特定した周波数帯を用いて電力線通信を行うものである。
【0017】
図1は、本実施の形態による電力線通信システム100の構成を示すブロック図である。本実施の形態による電力線通信システム100は、移動体において直流電源であるバッテリ3に接続された電力線(バッテリライン)2を介して電力線通信を行う、マスタ装置1-1及びスレーブ装置1-2~1-Nを備える。ここで、Nは、2以上の整数である。なお、マスタ装置1-1が基地局、それ以外のスレーブ装置1-2~1-Nが端末局と考えてもよい。
【0018】
移動体は、直流電源の電力線を有するものであれば特に限定されないが、例えば、自動車であってもよく、船舶であってもよく、飛行機であってもよく、電車であってもよく、直流電源の電力線を有するその他の移動体であってもよい。本実施の形態では、移動体が自動車である場合について主に説明する。自動車においては、例えば、シャーシをグランドとして1本の電力線(配線)2を用いて電力が供給されるため、電力線通信も、シャーシのグランドと1本の電力線2とを用いて行われることになる。また、電力線2の配線は複雑であり、伝送特性が場所に応じて大きく異なるが、本実施の形態による電力線通信システム100では、その伝送特性に応じて周波数を切り替えて電力線通信を行うことになる。
【0019】
なお、電力線を介して供給される直流電源からの電力は、例えば、電気自動車などのように移動のための駆動に用いられてもよく、または、自動車におけるナビゲーションシステムやオーディオ、窓の開閉用のモータなどの電気機器等を動作させるために用いられてもよい。
【0020】
マスタ装置1-1は、電力線通信装置10-1と、受付部20-1とを備える。マスタ装置1-1は、受付部20-1によって受け付けられた操作に応じた情報(例えば、制御のための情報など)を、スレーブ装置1-2~1-Nに送信する。マスタ装置1-1に含まれる各構成要素、例えば、電力線通信装置10-1や受付部20-1は、通常、電力線2によって供給されるバッテリ3からの電力によって動作する。
【0021】
スレーブ装置1-2は、電力線通信装置10-2と、電気機器20-2とを備える。スレーブ装置1-2では、電力線通信装置10-2によってマスタ装置1-1から受信された情報を用いて電気機器20-2が動作される。電気機器20-2は、例えば、オーディオや、ナビゲーションシステム、窓の開閉用のモータ、ドアミラーの開閉用のモータ、ワイパーの駆動用のモータ、空調のファンを駆動させるためのモータ等であってもよい。スレーブ装置1-2に含まれる各構成要素、例えば、電力線通信装置10-2や電気機器20-2は、通常、電力線2によって供給されるバッテリ3からの電力によって動作する。なお、スレーブ装置1-3~1-Nも、スレーブ装置1-2と同様の構成であり、その詳細な説明を省略する。例えば、スレーブ装置1-3~1-Nはそれぞれ、電力線通信装置10-3~10-Nと、電気機器20-3~20-Nとを備えていてもよい。また、例えば、電力線通信装置10-3~10-Nはそれぞれ、通信部11-3~11-Nと、特定部12-3~12-Nと、通信制御部13-3~13~Nと、制御部14-3~14-Nとを備えていてもよい。
【0022】
なお、電力線通信装置10-1、10-2等を区別しない場合には、電力線通信装置10と呼ぶこともある。他の構成、例えば、通信部11-1、11-2や、特定部12-1、12-2等についても同様であるとする。
【0023】
図3図4は、自動車である移動体4におけるマスタ装置1-1と、スレーブ装置1-2~1-5と、バッテリ3との電力線2による接続状況の一例を示す図である。図3図4で示されるように、移動体4における各装置の接続状況が異なる場合には、装置間の伝送特性が変わることになる。例えば、図3におけるマスタ装置1-1とスレーブ装置1-3との間の伝送特性と、図4におけるマスタ装置1-1とスレーブ装置1-3との間の伝送特性とは異なり得ることになる。したがって、装置間での伝送特性を測定する必要がある。また、その伝送特性は、経時的にも変化することがある。移動体4の移動に応じて、周囲の干渉電波の状況が変化するからである。したがって、装置間での伝送特性の測定は、繰り返されることが好適である。
【0024】
通信部11は、直流の電力線2を用いて電力線通信を行う。通信部11は、例えば、電力線通信を行うための通信デバイスを有していてもよい。電力線通信で用いられる周波数は、特に限定されないが、例えば、10kHzから150MHzの範囲の周波数であってもよく、その他の周波数であってもよい。なお、電力線通信についてはすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0025】
特定部12は、電力線通信で用いられる複数の周波数帯のうち、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定する。なお、減衰の少ない周波数帯とは、例えば、より品質の高い伝送を実現できる周波数帯であってもよい。また、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯は、例えば、最も減衰の少ない周波数帯であってもよく、2番目に減衰の少ない周波数帯などであってもよい。後者の場合には、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯は、例えば、減衰の少ない複数の周波数帯から、干渉の多いことが分かっている周波数帯を除いて選択した周波数帯であってもよい。ここで、電力線通信装置10の搭載されている移動体の移動に応じて、または、時間の経過に応じて干渉電波が変化し、その結果、減衰の少ない周波数が変化することがある。そのため、特定部12は、上記のように、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の特定を繰り返して行うことが好適である。特定部12は、例えば、減衰の少ない周波数帯の特定を、定期的に繰り返してもよい。この場合には、例えば、その特定結果を用いて、電力線通信で用いられる周波数帯が適応的に切り替えられることになる。また、特定部12は、例えば、移動体のあらかじめ決められた移動距離ごとに、減衰の少ない周波数帯の特定を繰り返してもよい。
【0026】
また、特定部12は、例えば、電力線通信システム100における電力線通信が開始される際、例えば、電力線通信システム100が起動された際に、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の特定を行ってもよい。また、移動体内の電力線2に関する配線状況が変化した場合、例えば、新たな装置を電力線2に接続した場合などには、伝送特性が変化する可能性もある。そのような場合にも、例えば、特定部12は、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の特定を行ってもよい。
【0027】
減衰の程度は、伝送特性によって知ることができる。伝送特性は、例えば、伝送品質であってもよい。伝送特性は特に限定されないが、例えば、パケット誤り率、パケット取得率、または減衰特性などであってもよい。パケット取得率は、送信されたパケットの個数に対する、受信されたパケットの個数の割合を示す値である。減衰特性は、送信された信号に対する、受信された信号の減衰の程度を示す情報である。送信される信号の強度が一定である場合には、減衰特性は、例えば、受信された信号の受信電力によって示されてもよい。また、減衰特性は、例えば、減衰率であってもよい。この信号は、例えば、正弦波の信号などであってもよい。減衰特性は、例えば、Sパラメータの透過係数S21によって示されてもよい。また、伝送特性は、例えば、パケット誤り率等を知ることができる情報であれば、どのような情報であってもよい。具体的には、パケットロス率が分かれば、パケット取得率を知ることができるため、パケット取得率は、パケットロス率によって示されてもよい。
【0028】
図5A図5Bは、自動車における2個の電力線通信装置10の間の伝送特性である減衰特性(Sパラメータの透過係数S21)の周波数ごとの測定結果を示す図である。図5A図5Bで示される測定結果は、ネットワークアナライザを用いて取得した。なお、S21は、各周波数における送信側の装置から受信側の装置に信号が届く強さを示している。図5A図5Bでは、それぞれ電力線2における異なる2点間の通信における伝送特性を示している。図5A図5Bから明らかなように、電力線2における通信経路が異なれば、周波数ごとの伝送特性も大きく変化することになる。したがって、電力線通信を行う装置間ごとに、伝送特性を取得する必要がある。
【0029】
次に、特定部12が、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定する方法について、(1)装置間で複数の周波数帯ごとの信号を送受信する場合、(2)装置間で複数の周波数帯ごとのパケットを送受信する場合のそれぞれについて説明する。
【0030】
(1)装置間で複数の周波数帯ごとの信号を送受信する場合
この場合には、送信側の電力線通信装置10が、あらかじめ決められた送信電力のプローブ信号を、電力線通信で用いる複数の周波数帯のそれぞれを用いて送信し、受信側の電力線通信装置10が、そのプローブ信号の受信電力を、複数の周波数帯のそれぞれについて特定してもよい。特定された複数の周波数帯ごとのプローブ信号の受信電力または減衰特性を示す情報は、プローブ信号の送信側の電力線通信装置10に送信されてもよい。その送信は、例えば、特定の周波数帯(例えば、伝送特性の最もよい周波数帯や、あらかじめ決められている周波数帯など)を用いて行われてもよく、または、複数の周波数帯を用いて行われてもよい。
【0031】
複数の周波数帯ごとのプローブ信号の受信電力または減衰特性を示す情報が、プローブ信号の受信側の電力線通信装置10から送信側の電力線通信装置10に送信される場合には、その送信側の電力線通信装置10の特定部12は、周波数帯ごとの伝送特性を、算出することによって、または、プローブ信号の受信側の電力線通信装置10から受信することによって取得し、その取得した伝送特性を用いて、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定してもよい。例えば、最も減衰の少ない周波数帯が特定されてもよい。なお、プローブ信号の受信側の電力線通信装置10から送信側の電力線通信装置10に受信電力が送信される場合には、その送信側の電力線通信装置10の特定部12では、その受信電力を用いて、複数の周波数帯ごとに減衰特性が算出されてもよい。また、プローブ信号の送信側の電力線通信装置10の特定部12は、通信部11を介して、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を示す情報を受信側の電力線通信装置10に送信してもよい。そして、その受信側の電力線通信装置10の特定部12は、他の電力線通信装置10から送信された信号に含まれる、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を取得してもよい。この場合には、プローブ信号の受信側の電力線通信装置10の特定部12では、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の取得が、その周波数帯の特定に相当することになる。
【0032】
一方、プローブ信号の受信側の電力線通信装置10の特定部12は、複数の周波数帯ごとのプローブ信号の減衰特性を用いて、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定してもよい。この場合には、プローブ信号の受信側の電力線通信装置10の特定部12は、通信部11を介して、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を示す情報を送信側の電力線通信装置10に送信してもよい。そして、その送信側の電力線通信装置10の特定部12は、他の電力線通信装置10から送信された信号に含まれる、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を取得してもよい。この場合には、プローブ信号の送信側の電力線通信装置10の特定部12では、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の取得が、その周波数帯の特定に相当することになる。
【0033】
図6A図6Bは、伝送特性の周波数に応じた変化の一例を示す図である。図6Aが、第1の装置と第2の装置との間の電力線2の伝送特性であるとすると、周波数が50MHzの場合は、約10dBの損失で第1の装置から第2の装置に信号が送信されることになる。なお、第2の装置から第1の装置への通信についても同様である。周波数が100MHzの場合は、約40dBの損失となる。つまり、損失量は約1000倍異なることになる。したがって、図6Aで示される伝送特性の場合には、50MHz付近の周波数帯で電力線通信を行うことが好適である。一方、図6Bで示される伝送特性の場合には、50MHz付近の周波数よりも、100MHz付近の周波数の方が、第1の装置から第2の装置に信号が送信される際の損失が少ないことになる。したがって、図6Bで示される伝送特性の場合には、100MHz付近の周波数帯で電力線通信を行うことが好適である。
【0034】
(2)装置間で複数の周波数帯ごとのパケットを送受信する場合
この場合には、送信側の電力線通信装置10が、あらかじめ決められたプローブパケットを、電力線通信で用いる複数の周波数帯のそれぞれを用いて送信し、受信側の電力線通信装置10が、そのプローブパケットを受信し、複数の周波数帯のそれぞれについてパケット取得率やパケット誤り率を算出してもよい。なお、パケット取得率が算出される場合には、あらかじめ決められた個数のパケットが送信されることが好適である。複数の周波数帯ごとのパケット取得率やパケット誤り率を示す情報は、プローブパケットの送信側の電力線通信装置10に送信されてもよい。
【0035】
複数の周波数帯ごとのパケット取得率やパケット誤り率を示す情報が、プローブパケットの受信側の電力線通信装置10から送信側の電力線通信装置10に送信される場合には、その送信側の電力線通信装置10の特定部12は、周波数帯ごとの伝送特性を受信することによって取得し、その取得した伝送特性を用いて、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定してもよい。また、プローブパケットの送信側の電力線通信装置10の特定部12は、通信部11を介して、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を示す情報を受信側の電力線通信装置10に送信してもよい。そして、その受信側の電力線通信装置10の特定部12は、他の電力線通信装置10から送信された信号に含まれる、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を取得してもよい。この場合には、プローブパケットの受信側の電力線通信装置10の特定部12では、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の取得が、その周波数帯の特定に相当することになる。なお、プローブパケットの受信側の電力線通信装置10から送信側の電力線通信装置10に、受信されたパケットの個数や、受信されたパケットそのものが送信され、送信側の電力線通信装置10において、パケット取得率やパケット誤り率が算出されてもよい。
【0036】
一方、プローブパケットの受信側の電力線通信装置10の特定部12は、複数の周波数帯ごとのプローブパケットのパケット取得率やパケット誤り率を用いて、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定してもよい。この場合には、プローブパケットの受信側の電力線通信装置10の特定部12は、通信部11を介して、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を示す情報を送信側の電力線通信装置10に送信してもよい。そして、その送信側の電力線通信装置10の特定部12は、他の電力線通信装置10から送信された信号に含まれる、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を取得してもよい。この場合には、プローブパケットの送信側の電力線通信装置10の特定部12では、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯の取得が、その周波数帯の特定に相当することになる。
【0037】
なお、プローブパケットの送信側の電力線通信装置10が、プローブパケットをあらかじめ決められた送信電力で送信する場合には、上記(1)と同様の減衰特性も取得することができる。したがって、この(2)の場合には、特定部12は、パケット取得率やパケット誤り率の取得と共に、減衰特性の取得も行ってもよい。なお、複数の伝送特性(例えば、パケット取得率とパケット誤り率や、パケット取得率と減衰特性など)が取得された場合には、例えば、各値の代表値を用いて減衰の少ない周波数帯が特定されてもよく、各値の重み付け加算の結果を用いて減衰の少ない周波数帯が特定されてもよい。代表値は、例えば、平均値や、最大値、最小値などであってもよい。また、代表値の算出や、重み付け加算を行う際には、例えば、各値について正規化してもよい。この正規化とは、例えば、各値を、0から1までの範囲の値であって、1に近いほど、減衰がより少ないことを示す値に変換することであってもよい。
【0038】
また、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定する対象は、電力線通信を行う装置間の伝送路である。通常、マスタ装置1-1と、スレーブ装置1-2~1-Nとの間で、電力線2を介した電力線通信が行われるため、マスタ装置1-1と、スレーブ装置1-2~1-Nとの間の伝送路のそれぞれについて、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定することになる。そのため、プローブ信号やプローブパケットは、例えば、マスタ装置1-1からブロードキャストによって各スレーブ装置1-2~1-Nに送信されてもよい。そして、マスタ装置1-1は、例えば、プローブ信号等の送信を、周波数帯を変更しながら繰り返して行ってもよい。
【0039】
スレーブ装置1-2~1-Nの各特定部12-2~12-Nは、例えば、マスタ装置1-1との電力線通信で用いる周波数帯のみを特定してもよい。一方、マスタ装置1-1の特定部12-1は、例えば、スレーブ装置1-2~1-Nごとに、電力線通信で用いる周波数帯を特定してもよい。
【0040】
通信制御部13は、特定部12によって特定された周波数帯によって電力線通信を行うように通信部11を制御する。通信制御部13は、例えば、特定部12によって特定された周波数帯を、電力線通信を行う周波数帯として、通信部11に設定してもよい。そして、通信部11は、その設定された周波数帯を用いて、電力線2を介した電力線通信を行ってもよい。
【0041】
マスタ装置1-1の制御部14-1は、例えば、受付部20-1で受け付けられた操作に応じた情報を、通信部11-1を介して、スレーブ装置1-2~1-Nの該当する装置に送信する制御を行ってもよい。
【0042】
スレーブ装置1-2の制御部14-2は、通信部11-2で受信されたマスタ装置1-1からの情報に応じて、電気機器20-2を動作させる制御を行ってもよい。例えば、電気機器20-2が、窓を開閉させるためのモータである場合には、マスタ装置1-1から受信した、窓を開ける旨の指示に応じて、制御部14-2は、窓を開ける方向に、モータである電気機器20-2を動作させてもよい。なお、他のスレーブ装置1-3~1-Nについても同様である。
【0043】
ここで、通信部11のいくつかの例について説明する。図7は、電力線2に接続された通信部11の一例を示す図である。図7では、通信部11は、コンデンサ15を介して電力線2に接続されている。このような構成により、コンデンサ15によって直流成分を除去することができる。このコンデンサ15は、例えば、電力線通信装置10に含まれていてもよい。また、通信部11は、スイッチ111と、受信部112と、送信部113と、電力線通信制御部114とを備えていてもよい。そして、スイッチ111は、受信部112及び送信部113の一方を電力線2に接続させるように、電力線通信制御部114によって制御されてもよい。例えば、電力線通信によって情報を受信する際には、受信部112が電力線2に接続されるように、スイッチ111が制御されてもよい。一方、例えば、電力線通信によって情報を送信する際には、送信部113が電力線2に接続されるように、スイッチ111が制御されてもよい。また、受信部112による受信周波数、送信部113による送信周波数も、電力線通信制御部114によって制御されてもよい。例えば、通信制御部13によって設定された周波数帯で送受信が行われるように、電力線通信制御部114による制御が行われてもよい。
【0044】
図8では、電力線2に信号を効率よく伝送できるようにするため、インピーダンス整合部16を介して通信部11が電力線2に接続されている。インピーダンス整合部16は、直流成分を除去する機能も有していてもよい。インピーダンス整合部16は、通信部11と直流の電力線2との間で、インピーダンス整合を行う。このインピーダンス整合は、例えば、自動的に行われてもよく、手動で行われてもよい。ダイナミックに周波数帯が変更される観点からは、インピーダンス整合部16において自動的なインピーダンス整合が行われることが好適である。このインピーダンス整合部16は、例えば、電力線通信装置10に含まれていてもよい。インピーダンス整合部16を備えることによって、電力線通信装置10は、電力線2に効率よく信号を送信することができ、また、電力線2から効率よく信号を受信することができるようになる。
【0045】
なお、図7図8では、送受信の周波数を同一にして、スイッチ111で送信と受信を切り替える構成としているが、送信の周波数と受信の周波数とが異なるようにしてもよい。送信の周波数帯と受信の周波数帯とを異なるようにすることができれば、スイッチ111をサーキュレータに変えることによって、送信と受信とを同時に行うことも可能になる。その送受信の周波数帯は、十分に離れていることが好適である。
【0046】
また、通信部11において、無線通信で用いられるモジュールを利用した例を考えることもできる。例えば、2.4GHz帯の無線通信モジュールの周波数を、電力線通信で用いる50MHzにシフトさせて利用することが考えられる。この場合には、送信時にはダウンコンバートを行い、受信時にはアップコンバートを行うことになる。図9は、そのような通信部11の一例を示すブロック図である。図9において、通信部11は、スイッチ121,122と、アップコンバータ123と、ダウンコンバータ124と、無線通信モジュール125とを備える。
【0047】
無線通信モジュール125は、破線で示される制御線を介してスイッチ121,122を制御する。無線通信モジュール125は、例えば、信号の受信を行う場合には、スイッチ121が、電力線2とアップコンバータ123とを接続させ、スイッチ122が、アップコンバータ123と無線通信モジュール125とを接続させるように制御してもよい。また、無線通信モジュール125は、例えば、信号の送信を行う場合には、スイッチ121が、電力線2とダウンコンバータ124とを接続させ、スイッチ122が、ダウンコンバータ124と無線通信モジュール125とを接続させるように制御してもよい。また、無線通信モジュール125は、通信先の装置との電力線通信で用いる周波数帯にダウンコンバート、または、その周波数帯から無線通信モジュール125の周波数帯にアップコンバートするように、ダウンコンバータ124、またはアップコンバータ123を制御してもよい。
【0048】
例えば、通信制御部13によって、通信部11が、通信先の装置との電力線通信で、第1の周波数帯を用いることが設定されている場合には、無線通信モジュール125は、アップコンバータ123に、第1の周波数帯の信号を2.4GHzの信号にアップコンバートする旨を設定し、ダウンコンバータ124に、2.4GHzの信号を第1の周波数帯の信号にダウンコンバートする旨を設定してもよい。そして、通信先の装置に信号を送信する際には、無線通信モジュール125は、スイッチ121,122がそれぞれダウンコンバータ124側に接続されるように制御してもよい。その後、無線通信モジュール125が2.4GHzの送信信号をスイッチ122に出力すると、その送信信号はダウンコンバータ124に入力され、第1の周波数帯にダウンコンバートされてスイッチ121を介して電力線2に出力される。そして、その送信信号は、電力線2を介して通信先の装置に伝送されることになる。
【0049】
また、通信先の装置から第1の周波数帯で送信された送信信号を受信する際には、無線通信モジュール125は、スイッチ121,122がそれぞれアップコンバータ123側に接続されるように制御してもよい。そして、電力線2、及びスイッチ121を介して、送信信号がアップコンバータ123に入力されると、アップコンバータ123は、その送信信号を2.4GHzにアップコンバートしてスイッチ122に出力してもよい。そのアップコンバート後の送信信号は、スイッチ122を介して無線通信モジュール125で受信されることになる。
【0050】
このように、アップコンバータ123、ダウンコンバータ124、及び無線通信モジュール125を用いることによって、電力線通信を実現することができる。また、この場合には、例えば、電力線通信装置10ごとに、無線通信モジュール125が2.4GHzの異なるチャネルの信号を送受信するようにしてもよい。そのようにすることで、送信側の電力線通信装置10と受信側の電力線通信装置10とが、無線と有線との両方で接続されることを回避できる。仮に、両装置が無線と有線との両方で接続された場合には、マルチパスと同様の現象が起こることになり、通信品質が低下するが、電力線通信装置10ごとに、無線通信モジュール125で使用する周波数(チャネル)を変更することによって、そのような問題が発生しないようにすることができる。なお、電力線2を介して伝送される信号の周波数帯を、送信側の電力線通信装置10と受信側の電力線通信装置10とで同じにすることは当然である。
なお、通信部11のいくつかの例について説明したが、通信部11は、これらの例に限定されるものではなく、他の構成であってもよいことは言うまでもない。
【0051】
次に、電力線通信装置10の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)通信部11は、通信を行うかどうか判断する。そして、通信を行う場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS103に進む。なお、通信を行うかどうかの判断は、例えば、他の装置から送信された情報を受信したかどうかの判断、または、他の装置に情報を送信するかどうかの判断であってもよい。後者の場合には、通信部11は、例えば、他の装置に送信する情報が存在する場合(例えば、送信キューに情報が存在する場合)に、他の装置に情報を送信すると判断してもよい。
【0052】
(ステップS102)通信部11は、通信に関する処理を行う。例えば、ステップS101において、情報を受信したと判断した場合には、通信部11は、その受信した情報を制御部14に渡してもよく、その他の構成要素に渡してもよい。また、例えば、ステップS101において、情報を送信すると判断した場合には、通信部11は、その送信対象の情報を、電力線通信によって送信先の装置に送信してもよい。そして、ステップS101に戻る。
【0053】
(ステップS103)特定部12は、減衰の少ない周波数帯の特定を行うかどうか判断する。そして、減衰の少ない周波数帯の特定を行う場合には、ステップS104に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、例えば、マスタ装置1-1の特定部12-1は、減衰の少ない周波数帯の特定を行うと定期的(例えば、10分ごとや30分ごと、1時間ごとなど)に判断してもよい。また、例えば、スレーブ装置1-2~1-Nの特定部12-2~12-Nは、マスタ装置1-1から送信されたプローブ信号やプローブパケットが通信部11で受信された場合に、減衰の少ない周波数帯の特定を行うと判断してもよい。
【0054】
(ステップS104)特定部12は、減衰の少ない周波数帯の特定を行う。なお、例えば、マスタ装置1-1の特定部12-1は、通信部11-1にプローブ信号やプローブパケットを送信させ、それに応じて各スレーブ装置1-2~1-Nから受信した情報を用いて、減衰の少ない周波数帯を特定してもよい。そして、特定した周波数帯を、各スレーブ装置1-2~1-Nに送信してもよい。また、例えば、スレーブ装置1-2~1-Nの特定部12-2~12-Nは、プローブ信号やプローブパケットの受信に応じて伝送特性を取得し、その取得した伝送特性を通信部11-2~11-Nを介してマスタ装置1-1に送信し、その送信に応じてマスタ装置1-1から送信され、通信部11-2~11-Nで受信された減衰の少ない周波数帯を取得してもよい。
【0055】
(ステップS105)通信制御部13は、ステップS104で特定された、減衰の少ない周波数帯を、電力線通信で用いる周波数帯として通信部11に設定する。そして、ステップS101に戻る。
【0056】
なお、図2のフローチャートには、制御部14に関する処理は含まれていないが、制御部14による処理が適宜、行われてもよいことは言うまでもない。また、図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。また、図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0057】
次に、本実施の形態による電力線通信システム100の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、N=5であるとする。すなわち、4個のスレーブ装置1-2~1-5が電力線2に接続されているものとする。この具体例では、周波数帯は通信チャネルであり、伝送特性はパケット取得率であるとする。
【0058】
まず、電力線通信システム100が起動されたとする。例えば、自動車である移動体4が始動させた場合に、電力線通信システム100が起動されてもよい。電力線通信システム100が起動すると、マスタ装置1-1の特定部12-1は、減衰の少ない通信チャネルを特定すると判断し(ステップS103)、通信部11-1を介して、第1の通信チャネルから所定個数のプローブパケットをブロードキャストで各スレーブ装置1-2~1-5に送信する。また、特定部12-1は、その所定個数のプローブパケットの送信を、第2の通信チャネル、第3の通信チャネルなどの複数の通信チャネルについても同様に行う。
【0059】
そのようにして送信されたプローブパケットは、各スレーブ装置1-2~1-5で受信され(ステップS101)、特定部12-2~12-5に渡される(ステップS102)。プローブパケットを受け取ると、特定部12-2~12-5は、減衰の少ない通信チャネルを特定すると判断し(ステップS103)、通信チャネルごとに、受信したプローブパケットの個数をカウントしてパケット取得率を算出し、その算出した通信チャネルごとのパケット取得率を、通信部11-2~11-5を介して、マスタ装置1-1に送信する。なお、算出された通信チャネルごとのパケット取得率は、各スレーブ装置1-2~1-5の識別子と一緒にマスタ装置1-1に送信されることが好適である。マスタ装置1-1において、送信元のスレーブ装置を特定できるようにするためである。
【0060】
各スレーブ装置1-2~1-5から送信された、通信チャネルごとのパケット取得率と各装置の識別子とは、マスタ装置1-1の通信部11-1で受信され、特定部12-1に渡される。特定部12-1は、スレーブ装置1-2~1-5ごとに、各通信チャネルのパケット取得率を用いてパケット取得率が最も高い通信チャネルを特定し、その通信チャネルを、他の通信チャネルより減衰の少ない通信チャネルとする。そして、特定部12-1は、スレーブ装置1-2~1-5ごとに、各装置に対応する特定した通信チャネルを、通信部11-1を介して送信する(ステップS104)。また、特定部12-1は、その特定した通信チャネルと、スレーブ装置の識別子とを対応付ける情報を、通信制御部13-1に渡す。すると、通信制御部13-1は、その情報を、通信部11-1に設定する(ステップS105)。
【0061】
また、マスタ装置1-1から送信された通信チャネルは、各スレーブ装置1-2~1-5の通信部11-2~11-5によって受信され、それぞれ特定部12-2~12-5に渡される(ステップS104)。そして、受信された通信チャネルは、特定部12-2~12-5からそれぞれ通信制御部13-2~13-5に渡され、電力線通信で用いる通信チャネルとして、それぞれ通信部11-2~11-5に設定される(ステップS105)。
【0062】
この後、例えば、マスタ装置1-1と、スレーブ装置1-2との間で電力線通信が行われる場合には、マスタ装置1-1の通信部11-1において、スレーブ装置1-2の識別子に対応付けられている通信チャネル、及びスレーブ装置1-2の通信部11-2に設定されている通信チャネルが用いられることになる。例えば、窓の開閉のための制御情報がマスタ装置1-1からスレーブ装置1-2に送信される際には、通信部11-1から、そのスレーブ装置1-2の識別子に対応付けられている通信チャネルを用いて、その制御情報が送信されてもよい。
【0063】
以上のように、本実施の形態による電力線通信装置10によれば、特定部12によって、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯を特定し、その特定した周波数帯を用いて電力線通信を行うことによって、移動体における電力線2を介した電力線通信において、信号の減衰の少ない通信、すなわち高品質な通信を実現することができる。したがって、例えば、マスタ装置1-1からスレーブ装置1-2~1-Nに対して、的確に情報を送信することができるようになり、より正確な制御を実現することができるようになる。また、減衰の少ない周波数の特定が繰り返して行われることにより、例えば、移動体の移動に応じて干渉電波の周波数が変化したとしても、その変化に応じて好適な周波数帯をダイナミックに選択して電力線通信を行うことができるようになる。
【0064】
なお、本実施の形態では、電気機器20-2等の制御のために、主にマスタ装置1-1からスレーブ装置1-2~1-Nに電力線通信による情報の送信が行われる場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、電力線通信装置10は、マスタ装置1-1や、スレーブ装置1-2~1-Nに含まれていなくてもよい。また、移動体に設けられている任意の2以上の電力線通信装置10の間で電力線通信が行われる場合にも、上記説明のように、他の周波数帯より減衰の少ない周波数帯が特定され、その特定された周波数帯を用いた電力線通信が行われてもよい。また、電力線通信は、電気機器の制御以外のために行われてもよい。電力線通信は、例えば、カメラで撮影された動画像を、モニタ装置や録画装置に送信するために行われてもよい。より具体的には、自動車のバックカメラで撮影された映像を、車内のモニタや、録画装置に送信するために、電力線2を介した電力線通信が行われてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0066】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
2 電力線
10、10-1~10-N 電力線通信装置
11、11-1~11-N 通信部
12、12-1~12-N 特定部
13、13-1~13-N 通信制御部
16 インピーダンス整合部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9