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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059029
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】警報音検知回路
(51)【国際特許分類】
   G01H 3/00 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
G01H3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168900
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國井 昌志
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB13
2G064CC02
2G064CC15
2G064CC17
2G064CC35
2G064CC53
2G064CC54
(57)【要約】
【課題】消費電力をより低減することが可能な警報音検知回路を提供する。
【解決手段】警報音検知回路は、周囲の環境音の中から、複数の基本周波数によって特定される警報音を検知する。当該警報音検知回路は、周囲の環境音を集音する集音手段と、集音手段から出力される音信号に基づいて、複数の基本周波数のうちの第1の周波数を検出するように構成された第1の検出手段と、音信号に基づいて、複数の基本周波数のうちの第2の周波数を検出するように構成された第2の検出手段と、第1の検出手段で設定されている第1の設定周波数と第1の周波数が一致したことを検知し、かつ、第2の検出手段で設定されている第2の設定周波数と第2の周波数が一致したことを検知した場合に、トリガ信号を生成する生成手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の環境音の中から、複数の基本周波数によって特定される警報音を検知するための警報音検知回路であって、
前記周囲の環境音を集音する集音手段と、
前記集音手段から出力される音信号に基づいて、前記複数の基本周波数のうちの第1の周波数を検出するように構成された第1の検出手段と、
前記音信号に基づいて、前記複数の基本周波数のうちの第2の周波数を検出するように構成された第2の検出手段と、
前記第1の検出手段で設定されている第1の設定周波数と前記第1の周波数が一致したことを検知し、かつ、前記第2の検出手段で設定されている第2の設定周波数と前記第2の周波数が一致したことを検知した場合に、トリガ信号を生成する生成手段と
を備えた警報音検知回路。
【請求項2】
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段はトーンデコーダである、請求項1に記載の警報音検知回路。
【請求項3】
前記集音手段は、コンデンサマイクまたは加速度センサである、請求項1または2に記載の警報音検知回路。
【請求項4】
前記トリガ信号は、前記警報音検知回路を備えるマイコンのウェイクアップ信号である、請求項1から3のいずれか1項に記載の警報音検知回路。
【請求項5】
前記第1の周波数および前記第2の周波数の組み合わせは、700Hzおよび750Hzの組み合わせであるか、または、1.4kHzおよび1.5kHzの組み合わせである、請求項1から4のいずれか1項に記載の警報音検知回路。
【請求項6】
FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成された請求項1から5のいずれか1項に記載の警報音検知回路。
【請求項7】
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段に接続されたコンデンサは、温度特性変化が小さいコンデンサである、請求項1から6のいずれか1項に記載の警報音検知回路。
【請求項8】
前記第1の検出手段および前記第2の検出手段に接続された電流制御発振器用の抵抗は、温度特性変化が小さい抵抗である、請求項1から7のいずれか1項に記載の警報音検知回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、警報音検知回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、踏切において電車の接近を知らせる警報音が鳴っているかどうかを知るために、周囲の観測音に関する振動に基づいて観測音信号を生成し、当該観測音信号の中から踏切の警報音を検出する技術が知られている(特許文献1参照)。かかる技術では、観測音信号に対してフーリエ変換を行って周波数分析を行い、観測音信号に所定の周波数の信号が含まれているかどうかを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/235031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような手法では、警報音が鳴っているかどうかを知るために、観測音信号に対して常に周波数分析を行っていなくてはならないため、消費電力が大きくなってしまう。
【0005】
本開示は、このような問題に鑑みてなされたものであり、消費電力をより低減することが可能な警報音検知回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様において、周囲の環境音の中から、複数の基本周波数によって特定される警報音を検知するための警報音検知回路は、前記周囲の環境音を集音する集音手段と、前記集音手段から出力される音信号に基づいて、前記複数の基本周波数のうちの第1の周波数を検出するように構成された第1の検出手段と、前記音信号に基づいて、前記複数の基本周波数のうちの第2の周波数を検出するように構成された第2の検出手段と、前記第1の検出手段で設定されている第1の設定周波数と前記第1の周波数が一致したことを検知し、かつ、前記第2の検出手段で設定されている第2の設定周波数と前記第2の周波数が一致したことを検知した場合に、トリガ信号を生成する生成手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、消費電力をより低減することが可能な警報音検知回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る警報音検知回路の概略構成図である。
図2】一実施形態に係るトーンデコーダに搭載される位相周波数比較器の一例を説明する図である。
図3】一実施形態に係るトーンデコーダの内部回路と周辺回路の簡略図である。
図4】一実施形態に係るトーンデコーダの内部回路と周辺回路の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】一実施形態に係る検出対象の基本周波数の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本開示の実施形態について詳細に説明する。本明細書及び添付の図面を通して同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
(概要)
踏切は、市街地の雑踏、列車の通過音など、雑音が多い環境に設置されていることも多い。そのため、単純に音のレベルを検出するだけでは、踏切の警報音が鳴っているかどうかを判断することは難しい。そこで、PLL(Phase Locked Loop、位相同期ループ(位相同期回路とも呼ぶ))方式のトーンデコーダを用いた警報音検知回路にて、特定の基本周波数を選択して踏切の警報音が鳴っているかを判定する。踏切の警報音は、2つの特定の基本周波数(例えば、700Hzと750Hzの和音)で構成されていることが分かっているため、当該2つの基本周波数を検知することで、踏切の警報音が鳴っていると判定できる。警報音が鳴っていない状態では、警報音検知回路のみを起動させておき、警報音が鳴っているときだけ、警報音検知回路に接続されたマイコン(装置)を起動すればよい。そうすることで、消費電力をより低減することを可能にする。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る警報音検知回路の概略構成図である。警報音は、700Hzと750Hzの和音で構成されているため、それぞれの周波数を検出するための2つのトーンデコーダを用いる。また、当該2つのトーンデコーダがそれぞれの周波数を検知したときにLOWを出力するため、論理和の否定演算回路(NOR回路)を用いて、トリガ信号を生成する。
【0012】
本実施形態に係る警報音検知回路100は、集音器101、増幅器(AMP)103、コンデンサ105、109、第1のトーンデコーダ107、第2のトーンデコーダ111、抵抗108、112、論理和の否定演算回路113、およびウェイクアップ端子115を備える。
【0013】
集音器101は、周囲の環境音を検知して、音信号を出力する。集音器101は、信号を音で検知する場合はコンデンサマイクを使用してよく、特に指向性マイクが好適である。また、集音器101は、信号を振動で検知する場合はアナログ出力式の加速度センサを使用してよい。このように、集音器101は、トーンデコーダに入力するための電気信号変換センサとして動作する。
【0014】
増幅器(AMP)103は、集音器101から入力された音信号を増幅し、コンデンサ105を介して第1のトーンデコーダ107に出力し、コンデンサ109を介して第2のトーンデコーダ111に出力する。
【0015】
第1のトーンデコーダ107は、入力された音信号に基づいて、あらかじめ設定された特定の周波数(例えば、700Hz:第1の設定周波数)を検出するように構成されている。第2のトーンデコーダ111は、入力された音信号に基づいて、第1のトーンデコーダ107に設定された検出対象の周波数とは異なる特定の周波数(例えば、750Hz:第2の設定周波数)を検出するように構成されている。第1のトーンデコーダ107および第2のトーンデコーダ111は、特定の周波数を検出すると、出力信号(パルス)がLOWになる。なお、第1のトーンデコーダ107および第2のトーンデコーダ111は、例えば、700Hzと750Hzの周波数の組み合わせを検出できればよく、どちらが700Hzまたは750Hzの周波数を検出するようにしてもよい。また、第1のトーンデコーダ107および第2のトーンデコーダ111にはそれぞれ、抵抗108、112が接続されている。
【0016】
本実施形態では、PLL方式のトーンデコーダを使用することにより、検出対象の周波数に対する中心周波数の精度を向上させ、PLLの帯域幅(ロックレンジ)を設定することにより、周波数公差を設定可能にする。また、振幅レベルも設定可能である。
【0017】
論理和の否定演算回路(NOR回路)113は、第1のトーンデコーダ107および第2のトーンデコーダ111からの2つの入力信号の論理和の否定を算出し、トリガ信号を生成してウェイクアップ端子115に出力する。すなわち、論理和の否定演算回路(NOR回路)113によると、第1のトーンデコーダ107および第2のトーンデコーダ111の双方がそれぞれに設定された特定の周波数を検出したこと(それぞれの出力信号がLOWであること)を識別することができ、その場合に、トリガ信号としてウェイクアップ信号を生成する。そうすることで、特定の周波数の組み合わせを有する警報音が鳴っているときに、トリガ信号(ウェイクアップ信号)をウェイクアップ端子に出力することができる。
【0018】
一実施形態における警報音検知回路は、第1のトーンデコーダ107で設定されている第1の設定周波数と第1のトーンデコーダ107で検出した第1の周波数が一致したことを検知し、かつ、第2のトーンデコーダ111で設定されている第2の設定周波数と第2のトーンデコーダ111で検出した第2の周波数が一致したことを検知した場合に、トリガ信号を生成する生成手段を備えればよい。
【0019】
このように、警報音検知回路100は、トリガ信号としてマイコンに入力するウェイクアップ信号(起動信号)を生成し、通常、マイコンはスリープ状態にしておき、起動信号を受信した時だけ、システムが起動するように構成する。そうすることによってシステム全体の消費電力を低減することができる。
【0020】
図2は、一実施形態に係るトーンデコーダに搭載される位相周波数比較器の構成の一例を説明する図である。
【0021】
位相周波数比較器200は、位相検出器201、ローパスフィルタ203、および電流制御発振器205を有する。
【0022】
位相周波数比較器200では、位相検出器210で入力信号と電流制御発振器205の設定値(例えば、700Hz)とのずれを比較し、周波数が等倍の場合に誤検出されないように、ローパスフィルタ203で高周波をカットする。また、ローパスフィルタ203を通して信号を平滑化することによって、位相検出器201より出力される入力信号と電流制御発振器205からの入力との位相差に比例したDC電圧が得られる。出力信号は、後述する図3の比較器209に入力される。
【0023】
図3は、一実施形態に係るトーンデコーダの内部回路と周辺回路の簡略図であり、図4は、一実施形態に係るトーンデコーダの内部回路と周辺回路の動作の一例を示すフローチャートである。以下では、図3および図4を参照しながら、トーンデコーダの内部回路と周辺回路についてより詳細に説明する。ここでは、第1のトーンデコーダ107を用いて内部回路と周辺回路を説明しており、第2のトーンデコーダも、設定された検出対象の周波数が異なる点を除いて、同様の構成を有し、同様に動作する。
【0024】
まず、ステップ401において、集音器101は、周囲の環境音を検知して、増幅器103に対して音信号を入力する。
【0025】
次いで、ステップ403において、増幅器103は、入力された音信号を増幅し、コンデンサ105に出力する。
【0026】
次いで、ステップ405において、コンデンサ105により、DC成分をカットする。
【0027】
次いで、ステップ407において、位相検出器201は、入力信号と電流制御発振器205の設定値(ここでは、700Hzとする)を比較する。
【0028】
次いで、ステップ409において、ローパスフィルタ203が、設定値(700Hz)より高い信号成分をカットすると共に、ステップ410において、位相検出器201により出力される、入力信号と電流制御発振器205からの入力との位相差に応じたDC電圧を出力する。
【0029】
次いで、ステップ411において、比較器(AMP)209が、ローパスフィルタ203からの入力電圧と基準電圧とを比較し、ステップ413において、ローパスフィルタ203からの入力電圧が基準電圧以上である場合(すなわち、入力信号が700Hzである場合、つまりは、入力信号が検出帯域幅内である場合)、出力信号がLOWになる。
【0030】
なお、トーンデコーダに接続するコンデンサ211は、温度特性変化が小さいものを使用する。コンデンサ211によって、ローパスフィルタの特性が決まり、ローパスフィルタの性能で、中心周波数からの帯域幅が決まる。トーンデコーダに接続する電流制御発振器205用の抵抗213についても、温度特性変化が小さいものを使用する。抵抗213も、中心周波数を決める役割を果たし、コンデンサ211のCR回路の組合せで、電流制御発振器205の中心周波数が決まる。
【0031】
一実施形態では、例えば、装置の動作保証温度を-10~50℃とし、トーン出力精度を0.5%とする。トーンデコーダの判定中心周波数(f0)は、抵抗で決まるので、抵抗値許容差±0.1%、抵抗温度係数±5ppm/℃を使用して中心周波数を合わせる。動作保証範囲で抵抗値は、最大で0.18%ほど変化する。中心周波数を決めるコンデンサは、フィルタコンデンサに比べ低容量なので、容量許容値と容量変化率(温度特性変化)に優れた低誘電率系のコンデンサを用いる。
【0032】
フィルタ周波数は低周波(700Hz,750Hz)のため高容量のコンデンサが必要になる。入力信号振幅対検出帯域幅特性より、コンデンサ容量が決まる。検出帯域幅を2%にするには、高容量のコンデンサが必要になる。コンデンサ容量は、通常入手可能な5%のものを使用する。容量許容差(5%)と容量変化率(温度特性変化)から検出帯域幅が変化する。トーン精度が0.5%なので、検出帯域幅は変化してもよい。また、2トーンを検知しているので、多少、検出帯域幅が変化してもよい。
【0033】
このようにして、第1のトーンデコーダおよびその周辺回路において、踏切の警報音を構成する複数の基本周波数のうちの1つの周波数が検出される。
【0034】
図5は、一実施形態に係る検出対象の基本周波数の一例を説明する図である。図5のグラフでは、検出対象の基本周波数の組み合わせとして、700Hzと750Hzの周波数を示す。また、グラフの横軸を周波数とし、グラフの縦軸を振幅とする。
【0035】
検出対象の周波数は、トーンデコーダ内の電流制御発振器205に設定され、中心周波数からの帯域幅(ロックレンジ)を、中心周波数に対して2~14%に設定する。また、振幅レベルは、10~200mVrmsとする。
【0036】
本実施形態では、このように検出対象の周波数を設定することで検出を行う。
【0037】
なお、上述した実施形態では、踏切の警報音における検出対象の基本周波数の組み合わせを、700Hzおよび750Hzの組み合わせとして説明したが、警報音のタイプに応じて、1.4kHzおよび1.5kHz(倍音)の組み合わせとしてもよく、本実施形態における基本周波数の組み合わせは限定されるものではない。
【0038】
また、本実施形態における警報音検知回路は、PLLとVCOが内蔵された、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて基本周波数を検知するように構成してもよい。信号が入力された時のみ、後段回路(マイコン、FPGAなど)を起動するように設定することで、更なる省エネ効果を図ることができる。
【0039】
上記のように、FPGAを用いて警報音検知回路を構成する場合は、2つのトーンデコーダ107、111、抵抗108、112、および演算回路113を、FPGAに置き換えることができる。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0041】
(1)消費電力をより低減することが可能な警報音検知回路を提供することができる。具体的には、本実施形態における警報音検知回路は、警報音を検知したときだけ、トリガ信号としてマイコンに入力するウェイクアップ信号(起動信号)を生成する。通常、マイコンはスリープ状態にしておき、起動信号を受信した時だけ、システムが起動するように構成することで、システム全体の消費電力を低減することができる。
【0042】
(2)上述したように、消費電力が低減できるので、装置のバッテリ駆動にも有利である。
【0043】
(3)また、特定の基本周波数に対応したトーンデコーダを用いることで、雑音が多い環境での誤作動を減少させることもできる。
【0044】
(4)また、FPGAを用いて警報音検知回路を構成することで、更なる省エネ効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
100 警報音検知回路
101 集音器
103 増幅器
105 コンデンサ
107 第1のトーンデコーダ
109 コンデンサ
111 第2のトーンデコーダ
113 論理和の否定演算回路
115 ウェイクアップ端子
図1
図2
図3
図4
図5