(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059031
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20230419BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230419BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230419BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q5/00
A61Q5/06
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168902
(22)【出願日】2021-10-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年10月21日ウェブサイト(www.ifscc2020.com)で公開されたThe 31st IFSCC Congress 2020 YOKOHAMA、2020年10月21日ウェブサイト(www.ifscc2020.com)で公開されたThe 31st IFSCC Congress 2020 YOKOHAMAの予稿集にて発表した。
(71)【出願人】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富樫 孝幸
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC692
4C083AC711
4C083AC712
4C083AD441
4C083AD442
4C083CC31
4C083CC32
4C083CC33
4C083DD01
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】α-ケラチンが形成する結晶構造を修復し、ダメージを受けた毛髪の弾力感および指通りを改善する毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含む、毛髪化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)を20~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記水(C)との質量比(A:C)が1:5~3:2であり、
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、グリシン(B)を10~20質量%の範囲で含むとともに、前記グリシン(B)と前記水(C)との質量比(B:C)が1:9~1:4であり、
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、
下記(i)~(iii)のいずれかの条件を満たす、毛髪化粧料:
(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合、前記トリメチルグリシン(A)を20~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が20質量%を超えて61質量%以下の範囲である;
(ii)トリメチルグリシン(A)の配合量に対して、グリシン(B)の配合量が多い場合、前記グリシン(B)を10~20質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が10質量%を超えて21質量%以下の範囲である;
(iii)トリメチルグリシン(A)の配合量と、グリシン(B)の配合量とが同じ場合、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が20~30質量%の範囲である。
【請求項2】
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、下記(i)の条件を満たす、請求項1に記載の毛髪化粧料:
(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合、前記トリメチルグリシン(A)を40~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が40質量%を超えて61質量%以下の範囲である。
【請求項3】
透明な液状である、請求項1または2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
パーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理された後の毛髪に用いる、請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
洗い流すトリートメントに用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
pHが4~9である、請求項1~5のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
ローション状、またはミスト状で毛髪に用いる、請求項1~6のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
剤型が非乳化型である、請求項1~7のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
α-ケラチンが形成する結晶構造の修復に用いられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、ブラッシング、シャンプー、ドライヤーなどによって日常的にダメージを受けている。また、毛髪はパーマ、縮毛矯正、染毛、ブリーチ処理などの化学的処理によってもダメージを受ける。ダメージを受けた毛髪は、毛髪強度や滑らかさなどの物性が低下するだけでなく、毛皮質中における親水性マトリックスタンパク質であるγ-ケラチンの溶出を引き起こす。
【0003】
毛髪からγ-ケラチンが溶出すると、疎水性結晶性タンパク質であるα-ケラチンが形成する結晶構造を変化させてしまう。α-ケラチンが形成する結晶構造が変化した毛髪は、弾力感が少なくなり、さらには脆くなってしまう。
【0004】
例えば、非特許文献1では、ベタインの毛髪に対する損傷修復についての記載がある(非特許文献1 75ページ)。ベタイン処理を施した毛髪は、毛小皮先端の剥離状況が改善することが報告されている。また、ベタインは毛小皮表面に吸着し、親水性の高い保護膜として働くと同時に、毛皮質内部にも浸透拡散し、その強い親和力でケラチンタンパクに吸着して、失われたγ-ケラチンの代替成分として機能することが報告されている。
【0005】
特許文献1では、化学的に処理された毛髪の弾性の増加および/または維持のために、ベタインを使用することが開示されている。また、化学的ダメージに対する毛髪保護のために、ベタインを使用することが開示されている。そして、毛髪の弾性に及ぼすベタインの効果は、毛髪の引張り強度を測定することにより調査され(特許文献1[0010])、ベタインは毛髪の強化に有効であることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル1991年2月号 70-77ページ
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1の報告では、ベタインの毛髪に対する損傷修復効果は確認されたものの、α-ケラチンが形成する結晶構造の修復に関しての検討や評価は無かった。
【0009】
また、特許文献1の技術では、毛髪の引張り強度を測定しているが、当該試験では、毛皮質中のγ-ケラチンが形成するマトリックス領域の応力を主に測定していると考えられ、α-ケラチンが形成する結晶構造に由来する応力は測定していないと考えられた。つまり、α-ケラチンが形成する結晶構造の修復に関する検討はなかった。
このようなことから、本発明は、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復し、ダメージを受けた毛髪の弾力感および指通りを改善する毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪化粧料は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[9]である。
【0011】
[1]トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)を20~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記水(C)との質量比(A:C)が1:5~3:2であり、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、グリシン(B)を10~20質量%の範囲で含むとともに、前記グリシン(B)と前記水(C)との質量比(B:C)が1:9~1:4であり、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、下記(i)~(iii)のいずれかの条件を満たす、毛髪化粧料:(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合、前記トリメチルグリシン(A)を20~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が20質量%を超えて61質量%以下の範囲である;(ii)トリメチルグリシン(A)の配合量に対して、グリシン(B)の配合量が多い場合、前記グリシン(B)を10~20質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が10質量%を超えて21質量%以下の範囲である;(iii)トリメチルグリシン(A)の配合量と、グリシン(B)の配合量とが同じ場合、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が20~30質量%の範囲である。
【0012】
[2]前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、下記(i)の条件を満たす、[1]に記載の毛髪化粧料:(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合、前記トリメチルグリシン(A)を40~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が40質量%を超えて61質量%以下の範囲である。
【0013】
[3]透明な液状である、[1]または[2]に記載の毛髪化粧料。
[4]パーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理された後の毛髪に用いる、[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【0014】
[5]洗い流すトリートメントに用いられる、[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[6]pHが4~9である、[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【0015】
[7]ローション状、またはミスト状で毛髪に用いる、[1]~[6]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[8]剤型が非乳化型である、[1]~[7]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[9]α-ケラチンが形成する結晶構造の修復に用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復し、ダメージを受けた毛髪の弾力感および指通りを改善する毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の毛髪化粧料について具体的に説明する。
【0018】
<毛髪化粧料>
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)を20~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記水(C)との質量比(A:C)が1:5~3:2であり、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、グリシン(B)を10~20質量%の範囲で含むとともに、前記グリシン(B)と前記水(C)との質量比(B:C)が1:9~1:4であり、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、下記(i)~(iii)のいずれかの条件を満たす:(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合、前記トリメチルグリシン(A)を20~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が20質量%を超えて61質量%以下の範囲である;(ii)トリメチルグリシン(A)の配合量に対して、グリシン(B)の配合量が多い場合、前記グリシン(B)を10~20質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が10質量%を超えて21質量%以下の範囲である;(iii)トリメチルグリシン(A)の配合量と、グリシン(B)の配合量とが同じ場合、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が20~30質量%の範囲である。
【0019】
なお、本発明における各成分の含有量は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の含有量を示している。
本発明の毛髪化粧料は、パーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理された後の毛髪に用いることが好ましい。
【0020】
本発明の毛髪化粧料は、パーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理された後の毛髪に用いることによって、化学的処理によりダメージを受けた毛髪のα-ケラチンが形成する結晶構造を修復し、弾性を回復させる傾向があるため好ましい。また、毛髪の指通りが滑らかになる傾向があるため好ましい。
【0021】
<α-ケラチン>
本発明の毛髪化粧料は、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復し、ダメージを受けた毛髪の弾力感および指通りを改善することができる。
【0022】
本発明の毛髪化粧料は、α-ケラチンが形成する結晶構造の修復に用いられることが好ましい。
α-ケラチンは、らせん構造(α-ヘリックス構造)を含む繊維状の構造を有し、繊維状ケラチンとも呼ばれ、毛髪繊維軸方向に規則正しく並ぶことにより結晶構造を形成している。
【0023】
α-ケラチンは、パーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理等の化学的処理によって化学反応を受け、その結晶構造が変形してしまう。
α-ケラチンの結晶構造の変形については、後述の水中での引張り試験(水中引張り試験)、高圧示差走査熱量測定等で評価することができる。
【0024】
<成分(I)>
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)を20~60質量%、好ましくは40~60質量%、より好ましくは50~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記水(C)との質量比(A:C)が1:5~3:2、好ましくは2:3~3:2、より好ましくは1:1~3:2である。
【0025】
成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)を上記の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記水(C)との質量比(A:C)が上記の範囲内であると、弾力感に富み、指通りにも優れ、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復する効果が得られるため好ましい。
【0026】
成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)が前記下限量より少ないと、毛髪の弾力感が乏しく、滑らかではない場合がある。また、トリメチルグリシン(A)が前記上限量より多いと、溶解しない、または析出が生じやすくなり、剤型を安定に保ちにくい場合がある。
【0027】
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)を40~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記水(C)との質量比(A:C)が2:3~3:2であることが好ましい。
【0028】
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)を50~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記水(C)との質量比(A:C)が1:1~3:2であることがより好ましい。
【0029】
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、グリシン(B)を10~20質量%、好ましくは15~20質量%の範囲で含むとともに、前記グリシン(B)と前記水(C)との質量比(B:C)が1:9~1:4、好ましくは3:17~1:4である。
【0030】
成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、グリシン(B)を上記の範囲で含むとともに、前記グリシン(B)と前記水(C)との質量比(B:C)が上記の範囲内であると、弾力感に富み、指通りも向上し、α-ケラチンが形成する結晶構造の修復効果が得られるため好ましい。
【0031】
成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、グリシン(B)が前記下限量より少ないと、毛髪の弾力感が乏しく、滑らかではない場合がある。また、グリシン(B)が前記上限量より多いと、溶解しない、または析出が生じやすくなり、剤型を安定に保ちにくい場合がある。
【0032】
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、グリシン(B)を15~20質量%の範囲で含むとともに、前記グリシン(B)と前記水(C)との質量比(B:C)が3:17~1:4であることが好ましい。
【0033】
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、下記(i)~(iii)のいずれかの条件を満たす:
(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合、前記トリメチルグリシン(A)を20~60質量%、好ましくは40~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が20質量%を超えて61質量%以下、好ましくは、40質量%を超えて61質量%以下の範囲である;
(ii)トリメチルグリシン(A)の配合量に対して、グリシン(B)の配合量が多い場合、前記グリシン(B)を10~20質量%、好ましくは15~20質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が10質量%を超えて21質量%以下、好ましくは、15質量%を超えて21質量%以下の範囲である;
(iii)トリメチルグリシン(A)の配合量と、グリシン(B)の配合量とが同じ場合、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が20~30質量%の範囲である。
【0034】
本発明の毛髪化粧料は、上記(i)~(iii)のいずれかの条件を満たすと、弾力感に富み、指通りにも優れ、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復する効果が得られるため好ましい。
【0035】
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、下記(i)の条件を満たす、毛髪化粧料であることが好ましい:(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合、前記トリメチルグリシン(A)を40~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記グリシン(B)との質量の合計が40質量%を超えて61質量%以下の範囲である。
【0036】
本発明の毛髪化粧料は、水(C)にトリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)が溶解していることが好ましい。
なお、本発明において、水(C)にトリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)が溶解しているとは、水(C)にトリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)が均一に分散しており、沈殿や析出等が生じていない状態のことを指す。
【0037】
〔トリメチルグリシン(A)〕
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含む。
【0038】
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)を含むことにより、ダメージを受けた毛髪の弾力感と指通りを良好にする傾向があるため好ましい。より具体的には、本発明の毛髪化粧料は、パーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理等の化学的処理によってダメージを受けた毛髪の弾力感と指通りを良好にする傾向がある。
【0039】
トリメチルグリシン(A)は、一般的に皮膚や毛髪の保湿剤や感触改良剤として用いられており、非特許文献1および特許文献1の従来技術により、毛髪のγ-ケラチンに対する損傷修復効果が知られていた。一方、毛髪のα-ケラチンに対する損傷修復効果に関しては、何ら検討がされていなかった。本発明では、従来技術では開示されていなかった、トリメチルグリシン(A)が毛髪のα-ケラチンが形成する結晶構造を修復する効果を見出した。
【0040】
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、トリメチルグリシン(A)を50~60質量%の範囲で含むとともに、前記トリメチルグリシン(A)と前記水(C)との質量比(A:C)が1:1~3:2であり、その他に任意の成分を含有しないことが好ましい。その他に任意の成分を含有すると、弾力感、滑らかさの向上効果、およびα-ケラチンが形成する結晶構造の修復効果が低下する場合がある。
【0041】
本発明において、トリメチルグリシン(A)は、例えば、無水物、一水和物、または塩として使用されてもよく、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
トリメチルグリシン(A)としては、例えば、旭化成ファインケム株式会社「アミノコート」を使用することができる。
【0042】
〔グリシン(B)〕
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含む。
【0043】
本発明の毛髪化粧料は、グリシン(B)を含むことにより、ダメージを受けた毛髪の弾力感と指通りを良好にする傾向があるため好ましい。より具体的には、本発明の毛髪化粧料は、パーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理等の化学的処理によってダメージを受けた毛髪の弾力感と指通りを良好にする傾向がある。
【0044】
グリシン(B)は、一般的に皮膚や毛髪の保湿剤や感触改良剤として用いられてきた。しかし、毛髪のα-ケラチンに対する損傷修復効果に関しては、何ら検討がされていなかった。本発明では、従来技術では開示されていなかった、グリシン(B)が毛髪のα-ケラチンが形成する結晶構造を修復する効果を見出した。
【0045】
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含み、前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、グリシン(B)を15~20質量%の範囲で含むとともに、前記グリシン(B)と前記水(C)との質量比(B:C)が3:17~1:4であり、その他に任意の成分を含有しないことが好ましい。その他に任意の成分を含有すると、弾力感、滑らかさの向上効果、およびα-ケラチンが形成する結晶構造の修復効果が低下する場合がある。
グリシン(B)としては、例えば、日本理化学薬品株式会社「グリシン」を使用することができる。
【0046】
〔水(C)〕
本発明の毛髪化粧料は、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)から選択される少なくとも1種の成分(I)と、水(C)とを含む。
【0047】
本発明の毛髪化粧料において、水(C)を好ましくは39~90質量%の範囲で含む。
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合、水(C)を好ましくは40~60質量%、より好ましくは40~50質量%含む。
【0048】
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合、水(C)を好ましくは80~90質量%、より好ましくは80~85質量%含む。
【0049】
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、水(C)を好ましくは39~90質量%含む。
前記成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合、下記(i)~(iii)のいずれかの条件で水(C)を含むことがより好ましい:
(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合、水(C)をより好ましくは39~80質量%含む;
(ii)トリメチルグリシン(A)の配合量に対して、グリシン(B)の配合量が多い場合、水(C)をより好ましくは79~90質量%含む;
(iii)トリメチルグリシン(A)の配合量と、グリシン(B)の配合量とが同じ場合、水(C)をより好ましくは70~80質量%含む。
【0050】
本発明において、水(C)として、具体的には、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
水(C)としては、例えば、イオン交換水を使用することができる。
【0051】
《その他成分》
本発明の毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外に任意の成分を含有することができる。任意の成分としては、例えば、保湿剤、生薬類、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、帯電防止剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、増粘剤、乳化剤、乳化安定剤、界面活性剤、高級アルコール、シリコーン類、油剤、溶剤、および色素が挙げられる。
【0052】
本発明の毛髪化粧料は、任意の成分として、具体的には、保湿剤としてプロピレングリコール、ヘキシレングリコール;防腐剤としてエタノール、フェノキシエタノール;pH調整剤としてクエン酸、乳酸、乳酸ナトリウム;帯電防止剤としてジステアリルジモニウムクロリドを用いることができる。
【0053】
《pH》
本発明の毛髪化粧料は、pHが好ましくは4~9、より好ましくは5~8である。
pHが前記範囲内にあると、毛髪への負担が少なく、効果が充分に得られることから好ましい。
【0054】
《製法等》
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、加熱条件下で行ってもよい。加熱条件下で製造する場合の温度としては、例えば75~85℃が挙げられる。
【0055】
《剤型》
本発明の毛髪化粧料の状態としては、例えば、ローション状(液状)、クリーム状、ミルク状、ジェル状、ミスト状、スプレー状が挙げられ、毛髪へのなじみやすさや、製剤としての安定性の観点から、ローション状、ミスト状が好ましい。
【0056】
本発明の毛髪化粧料の外観は、例えば、透明または不透明な外観が挙げられる。本発明の毛髪化粧料の各種配合成分を均一に混合する観点から、透明な外観であることが好ましい。
【0057】
本発明の毛髪化粧料は、透明なローション状であることがより好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、製剤としての安定性の観点から、剤型が非乳化型であることが好ましい。
【0058】
《使用方法》
本発明の毛髪化粧料は、例えば、ローション状またはクリーム状で毛髪に塗布して使用することや、ミスト状で毛髪に吹きかけて使用することができる。
【0059】
本発明の毛髪化粧料は、ローション状、またはミスト状で毛髪に用いることが好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、用途について特に制限はないが、パーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理された後の毛髪に用いることが好ましい。
【0060】
本発明の毛髪化粧料は、シャンプー、トリートメント等の毛髪洗浄剤とともに用いることができ、特に制限はないが、本発明の毛髪化粧料は、洗い流さない場合、仕上がりの毛髪にべたつきを感じる可能性があることから、洗い流すトリートメントに用いられることが好ましい。
【0061】
本発明の毛髪化粧料は、毛髪が乾燥している状態でも、濡れている状態でも特に制限なく使用することができるが、本発明における毛髪化粧料は、毛髪が乾燥している状態で塗布した場合、塗布ムラが生じる可能性があることから、毛髪が濡れている状態で塗布して使用することが好ましい。
【0062】
〔引張り試験〕
引張り試験は、毛髪を一定の荷重で引張った際の初期弾性率や応力を測定する試験であり、空中で行う場合(空中引張り試験)と、水中で行う場合(水中引張り試験)がある。
【0063】
空中引張り試験では、α-ケラチンが形成する結晶構造からの初期弾性率や応力への寄与に比べ、結晶構造の周囲に存在するγーケラチンが形成する非結晶構造からの寄与が大きいことが知られている。
【0064】
水中引張り試験では、水の影響によりγーケラチンが形成する非結晶構造からの初期弾性率や応力の寄与が大幅に小さくなる。そのため、フック領域と呼ばれる伸長率約0~2%の範囲で得られる初期弾性率は、α-ケラチンが形成する結晶構造の変形に主に由来すると考えられている。
【0065】
本発明では、後述の実施例において、水中引張り試験を行っている。ダメージを受けた毛髪を用いて、本発明の毛髪化粧料で処理する前と後の初期弾性率を測定することにより、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復する効果を確認することができる。
なお、当該試験については、M. Feughelman et al / Textile Research Journal,41, p. 469-474 (1971) に詳細が記載されている。
【0066】
〔高圧示差走査熱量測定〕
高圧示差走査熱量測定では、毛髪の熱変性がもたらすα-ケラチンが形成する結晶構造の融解のエンタルピー変化を、変性エンタルピーとして測定することができる。
【0067】
本発明では、後述の実施例において、高圧示差走査熱量測定を行っている。ダメージを受けた毛髪を用いて、本発明の毛髪化粧料で処理する前と後の変性エンタルピーを測定することにより、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復する効果を確認することができる。
なお、当該試験については、F.J. Wortmann et al / Journal of Cosmetic Science, 53, p. 219-228 (2002) に詳細が記載されている。
【実施例0068】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0069】
<実施例1~25、比較例1~26>
実施例および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0070】
【0071】
表3~表10に示す処方で各成分を混合することにより毛髪化粧料を製造し、(1)~(2)の官能評価、(3)~(4)の物性評価の試料とした。
(1)~(4)の結果は、表3~表10に示す。なお、表中の処方の数値は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
【0072】
〔毛束の作製〕
同一人物由来の人毛黒髪(製品名BS-PG、ビューラックス社製、約60cm、100g)から毛束(2g)を複数作製した。作製した毛束の全量をラウレス硫酸ナトリウム10%水溶液で洗浄し、自然乾燥させた。ここで、毛束を一つ採取して未処理毛とし、評価基準とした。
【0073】
〔ダメージ処理〕
あらかじめ一般人の毛髪のダメージを再現するために、上記の毛束のダメージ処理を行った。
【0074】
毛束に、脱色剤であるアリミノ120ブリーチ(株式会社アリミノ製)5gと、カラーストーリー アドミオ OX6%(株式会社アリミノ製)10gとを混合したものを刷毛で塗布し、25℃で30分放置した。その後、毛束を流水ですすぎ、シェルパ デザインサプリD-2シャンプー(株式会社アリミノ製)1gを用いて、シャンプーを行った。シャンプー後、流水ですすぎ、ドライヤーで乾燥させた。一連のダメージ処理を二回繰り返して行い、ダメージ毛とした。
【0075】
〔官能評価〕
ダメージ処理した毛束を、35℃程度のお湯で濡らした後、表3~表10に記載の各処方で調製した毛髪化粧料20gに、30℃で30分間浸漬した。その後、35℃程度のお湯で3分間すすぎ、タオルドライ後、ドライヤーで乾燥させ、仕上げた。
【0076】
仕上げたそれぞれの毛束について、(1)~(2)の評価項目に従って官能評価を行った。
官能評価は、専門パネラー(美容師)10人が1人ずつ評価を行った。評価は評価項目ごとに記載した下記の評価点基準による10人の平均点を算出し、平均点に基づいて以下のとおり評価した。
【0077】
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0078】
(1)弾力感
毛束を曲げたときにかかる指への応力を弾力感とし、弾力感を評価した。
4点:指へかかる応力が非常に強く、弾力感に富む
3点:指にかかる応力が強く、弾力感がある
2点:指にかかる応力が弱く、弾力感に乏しい
1点:指にかかる応力が無く、弾力感が無い
【0079】
(2)滑らかさ
毛束に指を通した時の指通りについて、触感で評価した。
4点:毛髪が全くひっかからず、非常に滑らかである
3点:毛髪があまりひっかからず、滑らかである
2点:毛髪がひっかかり、滑らかではない
1点:毛髪が非常にひっかかり、滑らかではない
【0080】
〔物性評価〕
(3)引張り試験(水中引張り試験)
未処理毛、ダメージ毛、表3~表10に示す処方の試料での処理毛、それぞれについて、各毛束から無作為に30本の毛髪を採取した。採取した毛髪を1本ごとに毛髪直径測定機(製品名SK2000、カトーテック株式会社製)を用いて、20℃、60%RH条件下で、精密に毛髪の短径と長径を測定し、楕円と近似して毛髪断面積を求めた。
【0081】
次いで、引張り破断試験機(製品名KES-G1-SH、カトーテック株式会社製)を用いて、毛髪の破断荷重を測定した。
未処理毛、ダメージ毛、表3~表10に示す処方の試料での処理毛、それぞれについて、各毛束から無作為に30本の毛髪を採取した。採取した30本の毛髪のうちの1本を、引張り治具に初期長20mmとして設置した。その後、水中20℃の条件下で、2mm/minの速度で、破壊が生じるまで引っ張った。治具はコンピュータ制御下で操作され、それぞれの毛髪に関して、伸長に対して加えられた負荷を記録した。
【0082】
伸長に対して加えられた負荷から、毛髪の破断荷重を求め、毛髪の断面積で割ることで、単位面積当たりの応力(×10-9N/m2)に変換し、30本の平均値を求めた。この値を初期弾性率(×10-9N/m2)とした。初期弾性率の数値が大きい程、切れにくいことを意味する。
なお、上述の試験は、M. Feughelman et al / Textile Research Journal, 41, p. 469-474 (1971) に記載されている試験と同様に行った。
【0083】
(4)高圧示差走査熱量測定
未処理毛、ダメージ毛、表3~表10に示す処方の試料での処理毛、それぞれについて、各毛束から無作為に5mgの毛髪を採取して細断した。細断した毛髪5mgおよび蒸留水10μLをステンレス製密封試料容器に入れ、密封し、サンプルとした。また、蒸留水10μLのみをステンレス製密封試料容器に入れ、密封し、参照用とした。これらを高圧示差走査熱量計(HPDSC)(日立ハイテクサイエンス社製:DSC7020)に供した。
【0084】
乾燥空気パージ下、30℃で平衡化した後、10℃/minの速度で、190℃まで昇温させ、変性エンタルピーを測定した。各サンプルについて3回分析を行った。
得られた分析結果については、日立ハイテクサイエンス社熱分析ソフトウェア(Software for NEXTA)を用いて解析を行い、変性エンタルピー(J/g)の値を得た。変性エンタルピーの値が大きいほど、α-ケラチンが形成する結晶構造の量が多い、または結晶性が高いことを意味する。
なお、上述の測定は、F. J. Wortmann et al / Journal of Cosmetic Science, 53, p. 219-228 (2002) に記載されている試験と同様に行った。
【0085】
〔物性評価の基準〕
表3~表10に示す処方の試料での処理毛について、引張り試験により得られた初期弾性率(×10-9N/m2)、および高圧示差走査熱量測定により得られた変性エンタルピー(J/g)から、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復する効果について、下記の通り評価した。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
実施例14~19は、本発明の毛髪化粧料をパーマ、ストレート、ブリーチ、またはカラーリング処理された後の毛髪に用いる処理剤とした実施例である。
【0092】
【0093】
【0094】
実施例20~25は、本発明の毛髪化粧料を洗い流すトリートメントに用いた実施例である。
【0095】
【0096】
【0097】
実施例1~25で製造した毛髪化粧料は、官能評価および物性評価において良好な結果となった。実施例3、4、8、15、21は、特に良好な結果となった。
本発明の毛髪化粧料は、α-ケラチンが形成する結晶構造を修復し、ダメージを受けた毛髪の弾力感および指通りを改善することがわかる。
【0098】
比較例1~4で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合に該当する。比較例1~3では、トリメチルグリシン(A)が規定量より少ないため、指通りが悪く、滑らかではない傾向があった。比較例4では、トリメチルグリシン(A)が規定量より多いため溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。
【0099】
比較例5~7で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合に該当する。比較例5~6では、グリシン(B)が規定量より少ないため、指通りが悪く、滑らかではない傾向があった。比較例7では、グリシン(B)が規定量より多いため溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。
【0100】
比較例8~12で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合に該当する。比較例8は、(ii)トリメチルグリシン(A)の配合量に対して、グリシン(B)の配合量が多い場合に該当し、グリシン(B)の配合量が規定量より少ないため、弾力感が無く、指通りが滑らかではない傾向があった。比較例9および10は、(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合に該当し、トリメチルグリシン(A)の配合量が規定量より少ないため、弾力感および指通りの滑らかさを感じにくい傾向があった。
比較例11~12では、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)が溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。
【0101】
比較例13で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)もグリシン(B)も含まないため、弾力感および指通りの滑らかさを感じられなかった。
比較例14~15で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合に該当する。比較例14では、トリメチルグリシン(A)が規定量より少ないため、指通りが悪く、滑らかではない傾向があった。比較例15では、トリメチルグリシン(A)が規定量より多いため溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。
【0102】
比較例16~17で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合に該当する。比較例16では、グリシン(B)が規定量より少ないため、弾力感に乏しく、指通りが悪く、滑らかではない傾向があった。比較例17では、グリシン(B)が規定量より多いため溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。
【0103】
比較例18~19で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合に該当する。比較例18は、(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合に該当し、トリメチルグリシン(A)の配合量が規定量より少ないため、指通りの滑らかさを感じにくい傾向があった。比較例19では、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)が溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。
【0104】
比較例20で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)もグリシン(B)も含まないため、弾力感および指通りの滑らかさを感じられなかった。
比較例21~22で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含み、かつ、グリシン(B)を含まない場合に該当する。比較例21では、トリメチルグリシン(A)が規定量より少ないため、指通りが悪く、滑らかではない傾向があった。比較例22では、トリメチルグリシン(A)が規定量より多いため溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。
【0105】
比較例23~24で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)を含まず、かつ、グリシン(B)を含む場合に該当する。比較例23では、グリシン(B)が規定量より少ないため、弾力感に乏しく、指通りが悪く、滑らかではない傾向があった。比較例24では、グリシン(B)が規定量より多いため溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。
【0106】
比較例25~26で製造した毛髪化粧料は、成分(I)として、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)を含む場合に該当する。比較例25は、(i)グリシン(B)の配合量に対して、トリメチルグリシン(A)の配合量が多い場合に該当し、トリメチルグリシン(A)の配合量が規定量より少ないため、弾力感に乏しく、指通りの滑らかさを感じにくい傾向があった。比較例26では、トリメチルグリシン(A)およびグリシン(B)が溶解せず、または析出し、剤型を安定に保てなかった。