(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059043
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】自動開閉ドア用トルクリミッター
(51)【国際特許分類】
E05F 15/63 20150101AFI20230419BHJP
E05F 15/40 20150101ALI20230419BHJP
F16D 43/20 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
E05F15/63
E05F15/40
F16D43/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168918
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229380
【氏名又は名称】日本ドアーチエック製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】出向井 康司
【テーマコード(参考)】
2E052
3J068
【Fターム(参考)】
2E052AA01
2E052CA06
2E052DA06
2E052DB06
2E052EA01
2E052EB01
2E052EC01
2E052HA05
3J068AA02
3J068AA07
3J068BA02
3J068BB06
3J068CB03
3J068EE12
3J068GA14
(57)【要約】
【課題】外観体裁を良好とすることができるトルクリミッターの提供。
【解決手段】第1軸と、該第1軸と同一軸線状に配置される第2軸と、前記第1軸及び第2軸に対して軸方向に付勢する弾性体とを備え、前記弾性体の付勢下で、第1軸側の一定未満のトルクによって第1軸と第2軸が共回りし、第2軸側の一定以上のトルクにより第1軸への動力伝達が遮断され第2軸のみが回動する自動開閉ドア用トルクリミッターにおいて、前記第1軸と共回りする複数の第1軸側摩擦板と、前記第2軸と共回りする一又は複数の第2軸側摩擦板とを備え、前記複数の第1軸側摩擦板は、少なくとも前記一の第2軸側摩擦板の上方及び下方に配置したものとし、前記複数の第1軸側摩擦板と少なくとも前記一の第2軸側摩擦板との間に摩擦シートを備えた自動開閉ドア用トルクリミッター。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸と、該第1軸と同一軸線状に配置される第2軸と、前記第1軸及び第2軸に対して軸方向に付勢する弾性体とを備え、前記弾性体の付勢下で、第1軸側の一定未満のトルクによって第1軸と第2軸が共回りし、第2軸側の一定以上のトルクにより第1軸への動力伝達が遮断され第2軸のみが回動する自動開閉ドア用トルクリミッターにおいて、
前記第1軸と共回りする複数の第1軸側摩擦板と、前記第2軸と共回りする一又は複数の第2軸側摩擦板とを備え、前記複数の第1軸側摩擦板は、少なくとも前記一の第2軸側摩擦板の上方及び下方に配置したものとし、
前記複数の第1軸側摩擦板と少なくとも前記一の第2軸側摩擦板との間に摩擦シートを備え、
前記弾性体の軸方向の付勢力によって、前記複数の第1軸側摩擦板と前記摩擦シートが当接し、前記摩擦シートと前記一の第2軸側摩擦板が当接していることを特徴とする自動開閉ドア用トルクリミッター。
【請求項2】
第2軸の上端部には、摩擦面部を有する摩擦面形成部を設け、前記摩擦面部と、前記下側の第1軸側摩擦板との間に摩擦シートを備え、軸方向の付勢力によって、前記下側の第1軸側摩擦板と前記摩擦シートが当接し、前記摩擦シートと前記摩擦面部が当接していることを特徴とする請求項1に記載の自動開閉ドア用トルクリミッター。
【請求項3】
第1軸受と、第2軸受とを備え、
前記第1軸受は、その内側軌道輪が最上部の第1軸側摩擦板に当接し、
前記第2軸受は、その内側軌道輪が第2軸に当接し、
前記最上部の第1軸側摩擦板は、前記第1軸を通す貫通穴と、該貫通穴の周縁に上方に突出する突出部を備え、当該突出部が前記第1軸受の内側軌道輪の内側に嵌入する構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動開閉ドア用トルクリミッター。
【請求項4】
第1板部と、該第1板部に対向する第2板部と、前記第1板部と前記第2板部との間に形成される格納空間を備え、
前記第1軸は、前記第1板部を上方から貫通して前記格納空間内に配置され、
前記第2軸は、前記格納空間内から第2板部を貫通して下方へ延設され、
前記弾性体はコイルばねとし、
前記第1軸受を保持する保持部と該保持部の下端周縁に形成される鍔部とを有する弾性体受け部を備え、前記鍔部と前記第1板部の下面との間に前記コイルばねを備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の自動開閉ドア用トルクリミッター。
【請求項5】
第1軸の長さは、前記第1板部の厚さ寸法と、弾性体の自然長寸法と、複数の第1軸側摩擦板、一又は複数の第2軸側摩擦板、複数の摩擦シートの厚さ寸法と、弾性体に対して突出する第1軸受の突出量寸法と、の合計寸法よりも大きいものとしたことを特徴とする請求項4に記載の自動開閉ドア用トルクリミッター。
【請求項6】
第2軸の下端部には、当該第2軸とともに回動可能なカムを備え、第2軸の回転角度に応じて前記カムによりスイッチの入力動作を行う構成としたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の自動開閉ドア用トルクリミッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてトイレブースドア等の自動開閉ドアに用いられるトルクリミッターに関する。
【背景技術】
【0002】
自動開閉ドアは、各種のセンサーの検知等により制御装置がモーターを駆動あるいは停止させて、ドア(開閉扉)の開閉を行うものである。このため基本的には、人力によるドアの開閉操作は不要であるが、ドアの開閉に不具合が生じた場合などには、使用者の意思によってドアを手動で開閉させることができることが望まれる。また、意図せずドアに人や物が挟まった場合にも、過度の力がかからないようにすることが望まれる。このような観点から、自動開閉ドアには、トルクリミッターが設けられる。トルクリミッターは、設定以上の過大なトルクが生じたときにこれを遮断する装置である。
【0003】
トルクリミッターを開示するものとしては、駆動機構内に一定以上の力がかかったとき滑る摩擦接手部を設けた電動扉開閉装置が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る電動扉開閉装置における摩擦接手部は、トルクリミッターとして機能するものである。
特許文献1による機構によれば、閉動作の途中に物を挟む等で設定以上のトルクがかかれば、摩擦接手部が滑るので過大な力が加わらず、また、非常時でも人力で開閉でき、減速機構や電動機に無理な力が加わることがないものとすることができる。このため、トルクリミッターとして基本的な性能を満たすことができる。
【0006】
特許文献1に係る考案によれば、摩擦接手部は、自動で開閉させる際には、モーターからの動力によってウォームホイール等を動作させ、当該ウォームホイール等と摩擦板とが一体に動作する必要がある。このときの両者間の摩擦力をある程度大きく設定しておかないと、ウォームホイール等が空転してドアを開閉することができない。摩擦力の大きさを確保するためには、バネによる押圧力を高めることによっても可能であるが、そのようにすると、機構全体に大きな負荷がかかりやすく機構の強度を過度に高めなければならず、また組立時には、バネを強く押圧して組み立てる必要が生じ、組立の容易性にも悪影響を及ぼすこととなる。
【0007】
このため、摩擦力を確保するために、ウォームホイール等と摩擦板の表面積を大きくすることとなるが、結果として、摩擦板等が大型化することとなる。摩擦板等の大型化は、摩擦接手部(トルクリミッター)の大型化に直結し、自動開閉ドアの外観の体裁を損なうこととなる。
【0008】
また、上記一定の摩擦力を確保しておく必要から、手動で自動開閉ドアを開閉する際には、上記摩擦力を越える力をかける必要が生じ、自動開閉ドアの開閉は重たいものとなる。
【0009】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、摩擦板等をコンパクトにして、外観体裁を良好とし、併せて生産性を向上することができるトルクリミッターの提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【0010】
また本発明は、上記課題に加え、手動で自動開閉ドアを開閉させる際に必要となる力を低減させることができるトルクリミッターの提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1軸と、該第1軸と同一軸線状に配置される第2軸と、前記第1軸及び第2軸に対して軸方向に付勢する弾性体とを備え、前記弾性体の付勢下で、第1軸側の一定未満のトルクによって第1軸と第2軸が共回りし、第2軸側の一定以上のトルクにより第1軸への動力伝達が遮断され第2軸のみが回動する自動開閉ドア用トルクリミッターにおいて、
前記第1軸と共回りする複数の第1軸側摩擦板と、前記第2軸と共回りする一又は複数の第2軸側摩擦板とを備え、前記複数の第1軸側摩擦板は、少なくとも前記一の第2軸側摩擦板の上方及び下方に配置したものとし、
前記複数の第1軸側摩擦板と少なくとも前記一の第2軸側摩擦板との間に摩擦シートを備え、
前記弾性体の軸方向の付勢力によって、前記複数の第1軸側摩擦板と前記摩擦シートが当接し、前記摩擦シートと前記一の第2軸側摩擦板が当接していることを特徴とする自動開閉ドア用トルクリミッターを、解決手段とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の第1軸側摩擦板と前記摩擦シートが当接し、前記摩擦シートと前記一の第2軸側摩擦板が当接していることにより、複数の摩擦面を備えることで、大きな摩擦力を得ることができる。このため、各摩擦板、摩擦シートを大径化させる必要がなくコンパクトに形成でき、自動開閉ドア用トルクリミッターの外観体裁を良好とすることができる。また、弾性体の反発力を小さくすることができるため、弾性体を組み込む際の組立を容易とし、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る自動開閉ドア用トルクリミッターと、モーターと、減速機と、アームとの関係を示す一部断面とした説明図である。
【
図2】本発明の実施例に係る自動開閉ドア用トルクリミッターを示す縦断面図である。
【
図3】本発明の実施例に係る自動開閉ドア用トルクリミッターと、モーターと、減速機との関係を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施例に係る自動開閉ドア用トルクリミッターにおける(a)第2軸を示す平面図、(b)第2軸に第2軸側摩擦板を取り付けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る自動開閉ドア用トルクリミッターは、第1軸と、該第1軸と同一軸線状に配置される第2軸と、前記第1軸及び第2軸に対して軸方向に付勢する弾性体とを備え、前記弾性体の付勢下で、第1軸側の一定未満のトルクによって第1軸と第2軸が共回りし、第2軸側の一定以上のトルクにより第1軸への動力伝達が遮断され第2軸のみが回動する自動開閉ドア用トルクリミッターにおいて、
前記第1軸と共回りする複数の第1軸側摩擦板と、前記第2軸と共回りする一又は複数の第2軸側摩擦板とを備え、前記複数の第1軸側摩擦板は、少なくとも前記一の第2軸側摩擦板の上方及び下方に配置したものとし、
前記複数の第1軸側摩擦板と少なくとも前記一の第2軸側摩擦板との間に摩擦シートを備え、
前記弾性体の軸方向の付勢力によって、前記複数の第1軸側摩擦板と前記摩擦シートが当接し、前記摩擦シートと前記一の第2軸側摩擦板が当接している構成とすることができる(第1の構成)。
【0015】
上記第1の構成によれば、複数の第1軸側摩擦板と前記摩擦シートが当接し、前記摩擦シートと前記一の第2軸側摩擦板が当接していることにより、複数の摩擦面を備えることによって、大きい摩擦力を得ることができる。このため、各摩擦板、摩擦シートを大径化させる必要がなくコンパクトに形成でき、自動開閉ドア用トルクリミッターの外観体裁を良好とすることができる。また、弾性体の反発力を小さくすることができるため、弾性体を組み込む際の組立を容易とし、前記反発力に対応した構成全体の強度を不必要に高める必要がなくなる利点を有する。
【0016】
また本発明の実施形態に係る自動開閉ドア用トルクリミッターは、上記第1の構成において、第2軸の上端部には、摩擦面部を有する摩擦面形成部を設け、前記摩擦面部と、前記下側の第1軸側摩擦板との間に摩擦シートを備え、軸方向の付勢力によって、前記下側の第1軸側摩擦板と前記摩擦シートが当接し、前記摩擦シートと前記摩擦面部が当接している構成とすることができる(第2の構成)。
【0017】
上記第2の構成によれば、下側の第1軸側摩擦板と前記摩擦シートが当接し、前記摩擦シートと前記摩擦面部が当接している構成とすることにより、第1の構成に加えて摩擦面を更に増加させることで大きい摩擦力を得ることができる。このため、各摩擦板、摩擦シートを大径化させる必要がなくコンパクトに形成でき、自動開閉ドア用トルクリミッターの外観体裁を良好とすることができる。
【0018】
また本発明の実施形態に係る自動開閉ドア用トルクリミッターは、上記第1又は第2の構成において、第1軸受と、第2軸受とを備え、
前記第1軸受は、その内側軌道輪が最上部の第1軸側摩擦板に当接し、
前記第2軸受は、その内側軌道輪が第2軸に当接し、
前記最上部の第1軸側摩擦板は、前記第1軸を通す貫通穴と、該貫通穴の周縁に上方に突出する突出部を備え、当該突出部が前記第1軸受の内側軌道輪の内側に嵌入する構成とすることができる(第3の構成)。
【0019】
上記第3の構成によれば、上記第1の構成若しくは第2の構成の作用効果を奏する上に、弾性体による負荷を第1軸受および第2軸受の各外側軌道輪で受けることで、モーターからの駆動力の摩擦損失を大幅に低減できる。
また、弾性体による負荷を第1軸受および第2軸受の各外側軌道輪で受けることで、第1軸側摩擦板、第2軸の回動を、円滑なものとすることができる。
これによって、手動による自動開閉ドアの開閉時においても、開閉に必要となる力を低減させることができる。
【0020】
また本発明の実施形態に係る自動開閉ドア用トルクリミッターは、上記第1から第3のいずれかの構成において、第1板部と、該第1板部に対向する第2板部と、前記第1板部と前記第2板部との間に形成される格納空間を備え、
前記第1軸は、前記第1板部を上方から貫通して前記格納空間内に配置され、
前記第2軸は、前記格納空間内から第2板部を貫通して下方へ延設され、
前記弾性体はコイルばねとし、
前記第1軸受を保持する保持部と該保持部の下端周縁に形成される鍔部とを有する弾性体受け部を備え、前記鍔部と前記第1板部の下面との間に前記コイルばねを備えた構成とすることができる(第4の構成)。
【0021】
上記第4の構成によれば、上記第1から第3の構成のいずれかの作用効果を奏する上に、突出部が第1軸受の内側軌道輪の内側に嵌入し、コイルばねが前記鍔部と前記第1板部の下面との間に配置されることによって、コイルばねと第1軸受の回転軸の中心が一致し、円滑な回転と、コイルバネによる均等な負荷を与えることができる。また、弾性体受け部の構成を、第1軸受を保持する保持部と該保持部の下端周縁に形成される鍔部とを有するものとし、前記鍔部と前記第1板部の下面との間に前記コイルばねを備えることによって、トルクリミッターの軸方向の長さ寸法を抑え、よりコンパクトなものとすることができる。
【0022】
また本発明の実施形態に係る自動開閉ドア用トルクリミッターは、上記第4の構成において、第1軸の長さは、前記第1板部の厚さ寸法と、弾性体の自然長寸法と、複数の第1軸側摩擦板、一又は複数の第2軸側摩擦板、複数の摩擦シートの厚さ寸法と、弾性体に対して突出する第1軸受の突出量寸法と、の合計寸法よりも大きいものとすることができる(第5の構成)。
【0023】
上記第5の構成によれば、上記第4の構成の作用効果を奏する上に、トルクリミッターの組立時において、弾性体を圧縮させることなく、第1軸を複数の第1軸側摩擦板に取り付けることができ、組立作業を容易とすることができる。
【0024】
また本発明の実施形態に係る自動開閉ドア用トルクリミッターは、上記第1~第5のいずれかの構成において、第2軸の下端部には、当該第2軸とともに回動可能なカムを備え、第2軸の回転角度に応じて前記カムによりスイッチの入力動作を行う構成とすることができる(第6の構成)。
【0025】
上記第6の構成によれば、上記第1~第5のいずれかの構成の作用効果を奏する上に、自動開閉ドアの最大開放位置、閉止位置について、動力を停止させるタイミングを設定することができる。
【実施例0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施例に係る自動開閉ドア用トルクリミッター(以下、トルクリミッターという。)Lについて説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。尚、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0027】
本発明の実施例に係るトルクリミッターLは、
図1から
図3に示すように、第1板部であるモーター取付金具Fとこれに対向して設けられる第2板部である第2軸受支持金具Sとを有する。モーター取付金具Fと第2軸受支持金具Sによって囲まれる空間を格納空間Gとする。モーター取付金具Fは、プレス加工により金属板を90°に屈曲させることによって、側板部F1と上板部F2とを有している。側板部F1は壁に取り付けるための部分であり、図示されない複数の取付螺子によって、壁に固着することができる。上板部F2は、モーターM及びモーターMに連結される減速機Dを設置する部分である。
【0028】
モーター取付金具Fの上板部F2の上面には、モーターM及びモーターMに連結される減速機Dが設けられている。本実施例においては、モーターMの駆動軸に従動する減速機Dの駆動軸を本発明における第1軸10としている。モーター取付金具Fには、第1軸10を通す穴が穿設されており、第1軸10は、モーター取付金具Fの上方から格納空間G内に配置されている。第1軸10は、円柱の側面の一部を軸方向に切り欠いた形状としている。換言すれば、円柱の幅方向断面として表れる輪郭をD字状としてある。
【0029】
第1軸10は、上方から順に、コイルばね3、弾性体受け部4、第1軸受5、上部の第1軸側摩擦板11、上部の摩擦シート7、第2軸側摩擦板21、中央部の摩擦シート7、下部の第1軸側摩擦板11、下部の摩擦シート7を連通し、当該第1軸10の下端は、第2軸20に設けた中央穴205内に差し込まれている。
【0030】
複数の第1軸側摩擦板11、即ち、上部の第1軸側摩擦板11および下部の第1軸側摩擦板11は、第1軸10が貫通する貫通穴の平面視輪郭をD字状としてある。このため、これらの第1軸側摩擦板11は、断面視輪郭がD字状の第1軸10と一体となって、共回りする。
上部(最上部)の第1軸側摩擦板11は、貫通穴の周縁に上方に突出する突出部110を備えている。
【0031】
弾性体受け部4、各摩擦シート7および第2軸側摩擦板21の各中央に設けられる貫通穴は平面視丸穴形状であり、コイルばね3による押圧力がない状態では、第1軸10とは共回りしないようになっている。
【0032】
上部の第1軸側摩擦板の上には、第1軸受5が配置される。第1軸受5は下方側に内側軌道輪50が表れるように配置される。上部の第1軸側摩擦板の突出部110は、第1軸受5の内側軌道輪50内に嵌り込んでおり、当該第1軸側摩擦板と第1軸受5の内側軌道輪50は当接している。当該構成によって、第1軸10と、第1軸10に共回りする第1軸側摩擦板と、第1軸受5は、回転軸の中心が一致する。
【0033】
第1軸受5の上には、弾性体受け部4が配置されている。弾性体受け部4は、第1軸受5を被覆して保持する円筒の上端を天板で閉塞した形状の保持部40と、該保持部40の下端周縁に幅方向へ延設して形成される鍔部41とを有する。
【0034】
コイルばね3は、第1板部であるモーター取付金具Fの下面と、弾性体受け部4における鍔部41との間に配置される。当該構成によって、コイルばね3と第1軸受5は、回転軸の中心が一致する。このため、円滑な回転と均等なコイルばね3による負荷を与えることができる。
【0035】
また、弾性体受け部4の形状が円筒の上端を天板で閉塞した形状の保持部40と、該保持部40の下端周縁に幅方向へ延設される鍔部41とから構成され、前記鍔部41と前記モーター取付金具Fの上板部F2の下面との間に前記コイルばね3を備えることによって、トルクリミッターLの軸方向の長さ寸法を抑え、よりコンパクトなものとすることができる。
【0036】
また、コイルばね3は、モーター取付金具Fと第2軸受支持金具Sに挟持されることで圧縮されており、反発力によって、各構成部材(弾性体受け部4、第1軸受5、上部の第1軸側摩擦板11、上部の摩擦シート7、第2軸側摩擦板21、中央部の摩擦シート7、下部の第1軸側摩擦板11、下部の摩擦シート7、第2軸20、第2軸受6)を押圧している。
【0037】
上部の摩擦シート7は、上部の第1軸側摩擦板11と第2軸側摩擦板21との間に挟持される。中央部の摩擦シート7は、第2軸側摩擦板21と下部の第1軸側摩擦板11との間に挟持される。下部の摩擦シート7は、下部の第1軸側摩擦板11と第2軸受20の摩擦面部202との間に挟持される。これらの摩擦シート7は、カーボン製のシート材料で構成される。摩擦シート7の厚さは1mm程度としてある。摩擦シート7は、当接する部材に貼着することなく挟持する構成としているため、貼着工程が省略され、生産性を向上させている。また、摩擦シート7を変更することで、摩擦力を変更させることができる利点を有する。
【0038】
第2軸受支持金具Sは、保持板部S1と、その一端から上方へ起立した起立板部S2と、上板部F2と連結するための第1接続板部S3と、側板部F1と連結するための第2接続板部S4とを有している。
【0039】
保持板部S1は、第2軸を通す穴部S10と該穴部S10を囲んで配置される円筒状の第2軸受保持壁部S11を有する。上板部F2と第1接続板部S3は螺子で固定される。側板部F1と第2接続板部S4は螺子で固定される。
【0040】
第2軸20は、上端側が格納空間G内にあり、下端側は、第2軸受6と第2板部である第2軸受支持金具S(保持板部S1)の穴部S10を通して、当該第2軸受支持金具S(保持板部S1)の下方に位置する。
【0041】
第2軸20の上端部は拡径した摩擦面形成部201を設けてあり、その周縁から上方に壁部203を立設した形状を有する。
図4(a)に示すように、摩擦面形成部201の上面は、摩擦面部202となる。摩擦面部202の中央には、前記中央穴205が設けられている。壁部203の内面には、平面視円周状に一定間隔で凹部204を設けてある。
【0042】
第2板部である第2軸受支持金具S(保持板部S1)の上面であって第2軸20の摩擦面形成部201の下方となる位置に第2軸受6が配置される。第2軸受6は上方側に内側軌道輪60が表れるように配置される。摩擦面形成部201と第2軸受6の内側軌道輪60は当接している。
【0043】
第2軸側摩擦板21は、
図4(b)に示すように、側周面から平面視円周状に一定間隔で凸部210を設けてある。凸部210は、第2軸20の壁部203の内面に形成した凹部204に嵌り込むように構成されている。当該構成によって、第2軸側摩擦板21は、第2軸20と一体となって、共回りする。
【0044】
第2軸20の下端側には、2基の板カム22が上下に並設されている。一方の板カム22は自動開閉ドアの開放状態の検知に用いるものであり、他方の板カム22は自動開閉ドアの閉止状態の検知に用いるものである。板カム22は第2軸20が貫通する中央穴を有している。下側の板カム22の下面に当接して止め輪25を設けている。板カム22は、第2軸20に対して進退可能な固定ネジ24を備えており、固定ネジ24を第2軸に当接させることで当該第2軸に固定され、固定ネジ24を緩める(第2軸から退行させる)ことで回転方向の調節を行うことができる。回転方向の位置を変更することにより、自動開閉ドアの開放終了位置、閉塞終了位置の調節を行うことができる。
【0045】
第2板部である第2軸受支持金具Sの下面には、各板カム22に対応したリミットスイッチ23が設けられている。第2軸20の最下端部は、自動開閉ドアに取着されるアーム部8の一端に取り付けられている。
【0046】
上記実施例に係る自動開閉ドア用トルクリミッターの構成部材のうち、モーター取付金具F、第2軸受支持金具S、第1軸側摩擦板11、第2軸側摩擦板21、摩擦シート7はプレス加工によって、簡単に形成することができるため、量産性を良好とすることができ、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0047】
以上の構成により、例えば、トイレブースに使用した場合には、センサー(図示しない)がブース内で人を検知すると、制御部(図示しない)がモーターMを正転駆動させる。モーターMの駆動軸の回動に伴って、減速機Dの駆動軸である第1軸10と複数の第1軸側摩擦板11が回動すると、コイルばね3の押圧力によって、摩擦シート7、第2軸側摩擦板21、摩擦面部202を含む第2軸20は、第1軸側摩擦板11とともに押圧されて、一定の範囲内のトルクで、共回りする。第2軸20が回動することでアームが移動し、自動開閉ドアは閉塞状態となる。閉塞終了位置で、一方のリミットスイッチ23が板カム22によって入力され、制御部はモーターMを停止させる。ブース内のセンサーに手をかざすと、制御部がモーターMを逆転駆動させ、第1軸10と第2軸20は共回りし、同様に自動開閉ドアは開放状態となる。開放終了位置で、他方のリミットスイッチ23が板カム22によって入力され、制御部はモーターMを停止させる。
【0048】
自動開閉ドアの動作中、停止中に関係なく、手動で自動開閉ドアを開放若しくは閉塞しようとすると、設定以上のトルクが自動開閉ドアに連動するアームから第2軸20へ伝達され、第2軸20および第2軸側摩擦板21は回動するが、摩擦シート7若しくは第1軸側摩擦板11との間で滑りを生じ、第1軸側摩擦板11および第1軸10には、動力が伝達されない。そして、第1軸受5の内側軌道輪50が第1軸側摩擦板11に当接し、第2軸受6の内側軌道輪60が第2軸20に当接していることによって、自動開閉ドアは円滑に回動することができる。
【0049】
また上記構成によって、自動開閉ドアの自重が直接第1軸に伝達されないため、長期的な自動開閉ドアの自重による負荷により第1軸10、減速機D、モーター軸の変形や破損することを防止することができる。
【0050】
上記実施例においては、第2軸側摩擦板21は1枚のみとしたが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、第2軸側摩擦板21は複数設けるものとすることができる。また、この際に増加する第2軸側摩擦板21に対応して、摩擦シート7、第1軸側摩擦板11を追加することも可能である。
【0051】
また、上記実施例においては、摩擦シート7はカーボン製のシートとしたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、摩擦シートの材質は耐摩耗性を有する合成樹脂、金属等とすることも可能である。
【0052】
また、上記実施例においては、摩擦シート7は、第1軸側摩擦板11、第2軸側摩擦板21、摩擦面部202とは貼着されることなく配置されているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、第1軸側摩擦板11、第2軸側摩擦板21、摩擦面部202に貼着された構成とすることもできる。