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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059045
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】超音波流量計の作製方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20230419BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
G01F1/66 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168920
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】林 智仁
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA08
2F035DA14
2F035DA19
(57)【要約】
【課題】配管表面とダンピング材の間の気泡の形成を防止する。
【解決手段】貫通する空気穴102を備えるダンピング材101を用意し、ダンピング材101を配管103に巻き付けて、配管103の外側側面に接した状態で、配管103の周面をダンピング材101で覆う。ダンピング材101は、例えば、シート状とされている。ダンピング材101には、空気穴102が形成されているので、ダンピング材101と配管103の外壁(表面)との間に空気(気体)が入り込んでも、空気穴102より外方に抜ける。
【選択図】 図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外側壁面に取り付けられた一対の超音波トランスデューサの間で、配管の中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測を実施し、計測した前記超音波信号の順・逆方向における伝搬時間の差に基づいて、前記流体の流量を計測する超音波流量計の作製方法であって、
ダンピング材を前記配管に巻き付けて、前記配管の外側壁面に接した状態で、前記配管の周面を前記ダンピング材で覆う工程と、
前記ダンピング材に貫通する空気穴を形成する工程と
を備えることを特徴とする超音波流量計の作製方法。
【請求項2】
請求項1記載の超音波流量計の作製方法において、
前記ダンピング材に前記空気穴を形成した後で、前記配管の周囲を前記ダンピング材で覆うことを特徴とする超音波流量計の作製方法。
【請求項3】
請求項1記載の超音波流量計の作製方法において、
前記配管の周囲を前記ダンピング材で覆った後で、前記ダンピング材に前記空気穴を形成することを特徴とする超音波流量計の作製方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の超音波流量計の作製方法において、
前記ダンピング材は、前記超音波トランスデューサの周囲の前記配管に巻き付けることを特徴とする超音波流量計の作製方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波流量計の作製方法において、
筒状の治具を用いて前記ダンピング材に前記空気穴を形成することを特徴とする超音波流量計の作製方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の超音波流量計の作製方法において、
前記配管の周面を覆った前記ダンピング材の前記空気穴を塞ぐ工程をさらに備えることを特徴とする超音波流量計の作製方法。
【請求項7】
請求項6記載の超音波流量計の作製方法において、
前記ダンピング材の粘性による前記ダンピング材の変形で前記空気穴を塞ぐことを特徴とする超音波流量計の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、超音波の伝搬速度の変化を利用して、流体の流量(流速)を計測する超音波流量計がある。超音波流量計では、流体の流れを横切るように2つの超音波トランスデューサを向かい合わせて配置し、順逆方向のそれぞれで超音波を送受信して、2つの超音波トランスデューサの間における超音波の伝搬時間を測定し、順逆方向における超音波の伝搬時間の差に基づいて流体の流量を求めている。
【0003】
この種の超音波流量計として、後付けで配管に設置することができるクランプオン式超音波流量計がある。クランプオン式超音波流量計は、超音波信号が、測定対象流体と音響インピーダンスが異なる管壁を横断するため、伝達ロスが発生しやすい。音響インピーダンスの値が大きく異なると、管壁と流体との界面における反射によって伝達ロスが発生する。また、これに加えてノイズ成分が生じる。ノイズ成分の強度が大きくなると、正規の経路で伝播する超音波信号の検出が困難になる。この問題を解消するために、超音波を吸収するダンピング材が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-060490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノイズ低減の目的のため、配管の表面の広い面積を、ダンピング材で覆うものとなる。また、ダンピング材は、配管表面に密着させるために高粘性を備えている。このため、配管の表面にダンピング材を貼り付けるときに、配管表面とダンピング材との間に空気層(気泡)が形成されやすいものとなる。気泡の箇所では、ダンピング材が配管表面に密着していないため、ノイズ低減の機能が発揮されない。このように、従来、配管にダンピング材を貼り付けるときに、ダンピング材の性能を低下させる気泡が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、配管表面とダンピング材の間の気泡の形成を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
配管の外側壁面に取り付けられた一対の超音波トランスデューサの間で、配管の中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測を実施し、計測した超音波信号の順・逆方向における伝搬時間の差に基づいて、流体の流量を計測する超音波流量計の作製方法であって、ダンピング材を配管に巻き付けて、配管の外側壁面に接した状態で、配管の周面をダンピング材で覆う工程と、ダンピング材に貫通する空気穴を形成する工程とを備える。
【0008】
上記超音波流量計の作製方法の一構成例において、ダンピング材に空気穴を形成した後で、配管の周囲をダンピング材で覆う。
【0009】
上記超音波流量計の作製方法の一構成例において、配管の周囲をダンピング材で覆った後で、ダンピング材に空気穴を形成する。
【0010】
上記超音波流量計の作製方法の一構成例において、ダンピング材は、超音波トランスデューサの周囲の配管に巻き付ける。
【0011】
上記超音波流量計の作製方法の一構成例において、筒状の治具を用いてダンピング材に空気穴を形成する。
【0012】
上記超音波流量計の作製方法の一構成例において、配管の周面を覆ったダンピング材の空気穴を塞ぐ工程をさらに備える。
【0013】
上記超音波流量計の作製方法の一構成例において、ダンピング材の粘性によるダンピング材の変形で空気穴を塞ぐ。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、配管に巻き付けるダンピング材に空気穴を形成するので、配管表面とダンピング材の間の気泡の形成が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す平面図である。
図1B図1Bは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す側面図である。
図1C図1Cは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す断面図である。
図1D図1Dは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す断面図である。
図1E図1Eは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す断面図である。
図1F図1Fは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す断面図である。
図1G図1Gは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す断面図である。
図1H図1Hは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す断面図である。
図1I図1Iは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す断面図である。
図1J図1Jは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための途中工程の超音波流量計の状態を示す断面図である。
図1K図1Kは、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法を説明するための超音波流量計の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波流量計の作製方法について図1A図1Kを参照して説明する。
【0017】
まず、図1A図1Bに示すように、貫通する空気穴102を備えるダンピング材101を用意する。ダンピング材101は、例えば、シート状とされている。ダンピング材101は、例えば、未架橋ゴムを主体とした高分子材料から構成することができる。ダンピング材101は、例えば、ブチルゴム(イソブチエン・イソプレンゴム)、エチレン-プロピレンゴム、ニトリルゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ化ビニリデン系のフッ素ゴム(FKM)、エピクロルヒドリンゴム、ノルボルネンゴムなどから構成することができる。
【0018】
次に、図1C図1Dに示すように、ダンピング材101を配管103に巻き付けて、配管103の外側壁面に接した状態で、配管103の周面をダンピング材101で覆う(第2工程)。ダンピング材101は、超音波トランスデューサ104,105の周囲の配管103に巻き付ける。ダンピング材101には、空気穴102が形成されているので、ダンピング材101と配管103の外壁(表面)との間に空気(気体)が入り込んでも、空気穴102より外方に抜けるので、気泡などが形成されることが防止できる。
【0019】
なお、上述では、ダンピング材101に空気穴102を形成した後で、配管103の周囲をダンピング材101で覆うようにしたが、これに限るものではない。配管103の周囲をダンピング材101で覆った後で、ダンピング材101に空気穴102を形成することができる。
【0020】
空気穴102は、例えば、平面視円形の筒状に形成されている。空気穴102は、所定の間隔を開けて複数設けることができる。空気穴102の穴径、隣り合う空気穴102の間隔などは、適宜に設定することができる。なお、空気穴102の平面視の形状は、円形に限るものではなく、楕円形や、三角形、四角形などの多角形とすることができる。例えば、筒状の治具を用いることで、ダンピング材101に空気穴102を形成することができる。例えば、平面視円形の空気穴102を形成する場合、円筒形状の治具を用いることができる。
【0021】
次に、配管103の周面を覆ったダンピング材101の空気穴102を塞ぐ(第3工程)。例えば、ダンピング材101の粘性によるダンピング材101の変形で空気穴102を塞ぐことができる。また、ダンピング材101と同様の材料を空気穴102に充填することで、空気穴102を塞ぐことができる。
【0022】
また、図1Eに示すように、空気穴102の周囲に、パッチ材106を形成しておき、図1F図1Gに示すように、扉を閉めるようにすることで、パッチ材106で空気穴102を塞ぐことができる。また、図1Hに示すように、空気穴102の周囲に、パッチ材106aを形成しておき、図1I図1Jに示すように、パッチ材106aで空気穴102を塞ぐことができる。
【0023】
この超音波流量計は、配管103の外側壁面に取り付けられた一対の超音波トランスデューサ104,105の間で、配管103の中を流れる計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で送受信する計測を実施し、図1Kに示すように、流量演算装置110により、計測した超音波信号の順・逆方向における伝搬時間の差に基づいて、流体の流量を計測する。
【0024】
流量演算装置110は、制御部111、計測部112、算出部113、入出力I/F部114、出力部115を備える。
【0025】
制御部111は、予め設定されている周期的な計測タイミングの到来、あるいはオペレータや上位装置(図示せず)からの任意のタイミングにおける指示に応じて、入出力I/F部114から、超音波トランスデューサ104,超音波トランスデューサ105に対して超音波駆動信号を出力し、超音波トランスデューサ104,超音波トランスデューサ105間で計測対象となる流体を介して超音波信号を両方向で交互に送受信する計測を実施する。
【0026】
計測部112は、超音波トランスデューサ104から送信された超音波が、超音波トランスデューサ105で受信されるまでの第1伝搬時間、および超音波トランスデューサ105から送信された超音波が超音波トランスデューサ104で受信されるまでの第2伝搬時間を計測する。
【0027】
算出部113は、計測部112が計測した第1伝搬時間と第2伝搬時間との差により、流体の流量または流速を算出する。算出部113が算出した流量または流速は、例えば、出力部115に出力される。出力部115は、通信ネットワーク121を介して上位装置(図示せず)と接続し、定期的あるいは上位装置からの出力指示に応じて、算出された流量を上位装置へ出力する。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、配管に巻き付けるダンピング材に空気穴を形成するので、配管表面とダンピング材の間の気泡の形成が防止できるようになる。
【0029】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0030】
101…ダンピング材、102…空気穴、103…配管、104…超音波トランスデューサ、105…超音波トランスデューサ、110…流量演算装置、111…制御部、112…計測部、113…算出部、114…入出力I/F部、115…出力部、121…通信ネットワーク。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K