(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059084
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20230419BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230419BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20230419BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20230419BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20230419BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230419BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230419BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K3/013
C08L23/04
C08K5/20
C08K5/103
C08K3/34
C08J5/18 CES
C08J3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168987
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 朗
(72)【発明者】
【氏名】森 豊一郎
(72)【発明者】
【氏名】有留 憲文
(72)【発明者】
【氏名】木谷 誠
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA14
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4J002BB022
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4J002FD340
(57)【要約】
【課題】機械的特性に優れる成形体を加工性よく製造することを可能とする、ポリプロピレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂と、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン系樹脂と、フィラーと、フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含む、ポリプロピレン系樹脂組成物であって、該ポリプロピレン系樹脂組成物中、該超高分子量ポリエチレン系樹脂の含有割合が、3重量%~30重量%であり、該ポリプロピレン系樹脂組成物中、該フィラーの含有割合は、20重量%~60重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂と、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン系樹脂と、フィラーと、フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含む、ポリプロピレン系樹脂組成物であって、
該ポリプロピレン系樹脂組成物中、該超高分子量ポリエチレン系樹脂の含有割合が、3重量%~30重量%であり、
該ポリプロピレン系樹脂組成物中、該フィラーの含有割合は、20重量%~60重量%である、
ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記フィラー分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記フィラー結着剤が、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記フィラー結着剤が、ポリオレフィン系樹脂である、請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂組成物中、フィラー分散剤およびフィラー結着剤の合計含有割合が、0.1重量%~10重量%である、請求項1から4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記フィラーが、タルクおよび/またはマイカを含む、請求項1から5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリプロピレン系樹脂と、前記超高分子量ポリエチレン系樹脂と、フィラー造粒物とを溶融混練することを含む、ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、
該フィラー造粒物が、前記フィラーと、前記フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含み、
前記フィラー造粒物中、該フィラーの含有割合が、該フィラー造粒物100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である、
請求項1から6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記溶融混練において、2軸押出機を使用する、請求項7に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
第1の溶融混練工程において、前記超高分子量ポリエチレン系樹脂と、前記フィラー造粒物とを溶融混練して混合物Aを調製し、
次いで、第2の溶融混練工程において、該混合物Aとポリプロピレン系樹脂とを溶融混練することを含む、請求項7または8に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物から形成された、射出成形体。
【請求項11】
請求項1から6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物から形成された、押出成形体。
【請求項12】
請求項1から6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物から形成された、シート状賦形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料のひとつとして、ポリプロピレン系樹脂を含む樹脂組成物(ポリプロピレン系樹脂組成物)が知られている。ポリプロピレン系樹脂は、安価で、良好な機械的特性、成形性、耐溶剤性、外観等を有するため、自動車用途、電気・電子用途、包装用途等の各種の広い分野で使用されている。また用途に応じて、性能・機能向上のため、ポリプロピレン系樹脂組成物には、種々のフィラーやエラストマーが添加されることがある。例えば、ホモポリプロピレンとエチレンプロピレン共重合体(EP共重合体)からなるハイインパクトポリプロピレン系樹脂に、さらにエチレン系エラストマー等の耐衝撃改良剤と、タルク等のフィラーが添加され、剛性、耐衝撃性が改良される。この際、フィラーは粉体状である場合が多く、粉体状のフィラーは、一般に嵩比重が小さく、粉体の流動性が悪い。そのため、高濃度(例えば、30重量%~60重量%)のフィラーを押出機等の溶融混練装置に、高い生産性でフィードすることは困難である。また、高濃度でフィラーを添加することは、低衝撃性低下に繋がる。すなわち、ポリプロピレン系樹脂において、剛性と耐衝撃性は相反関係にあり、これら両特性について、高度にバランスを取ることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、機械的特性に優れる成形体を加工性よく製造することを可能とする、ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂と、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン系樹脂と、フィラーと、フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含む、ポリプロピレン系樹脂組成物であって、該ポリプロピレン系樹脂組成物中、該超高分子量ポリエチレン系樹脂の含有割合が、3重量%~30重量%であり、該ポリプロピレン系樹脂組成物中、該フィラーの含有割合は、20重量%~60重量%である。
1つの実施形態においては、上記フィラー分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記フィラー結着剤が、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記フィラー結着剤が、ポリオレフィン系樹脂である。
1つの実施形態においては、上記ポリプロピレン系樹脂組成物中、フィラー分散剤およびフィラー結着剤の合計含有割合が、0.1重量%~10重量%である。
1つの実施形態においては、上記フィラーが、タルクおよび/またはマイカを含む。
本発明の別の局面によれば、上記ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法が提供される。この製造方法は、上記ポリプロピレン系樹脂と、上記超高分子量ポリエチレン系樹脂と、フィラー造粒物とを溶融混練することを含む、ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、該フィラー造粒物が、上記フィラーと、上記フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含み、上記フィラー造粒物中、該フィラーの含有割合が、該フィラー造粒物100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である。
1つの実施形態においては、上記溶融混練において、2軸押出機を使用する。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、第1の溶融混練工程において、上記超高分子量ポリエチレン系樹脂と、上記フィラー造粒物とを溶融混練して混合物Aを調製し、次いで、第2の溶融混練工程において、該混合物Aとポリプロピレン系樹脂とを溶融混練することを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、上記ポリプロピレン系樹脂組成物から形成された射出成形体が提供される。
本発明のさらに別の局面によれば、上記ポリプロピレン系樹脂組成物から形成された押出成形体が提供される。
本発明のさらに別の局面によれば、上記ポリプロピレン系樹脂組成物から形成されたシート状賦形物が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、超高分子量ポリエチレン系樹脂およびフィラーを含むポリプロピレン系樹脂組成物であって、機械的特性に優れる成形体を加工性よく製造することを可能とする、ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
A.ポリプロピレン系樹脂組成物
A-1.ポリプロピレン系樹脂組成物の概要
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂と、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン系樹脂(以下、単に超高分子量ポリエチレン系樹脂ともいう)と、フィラーと、フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含む。ポリプロピレン系樹脂組成物中の上記超高分子量ポリエチレン系樹脂の含有割合は、3重量%~30重量%である。また、ポリプロピレン系樹脂組成物中の上記フィラーの含有割合は、20重量%~60重量%である。「超高分子量ポリエチレン系樹脂」、「フィラーの含有割合」、ならびに、後述の「ポリプロピレン系樹脂の含有割合」、「フィラー分散剤の含有割合」および「フィラー結着剤の含有割合」等のポリプロピレン系樹脂組成物中の各成分の含有割合はそれぞれ、ポリプロピレン系樹脂組成物中の全固形分を基準とした重量割合である。
【0007】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、通常、相反する関係にある剛性と耐衝撃性が共に改良できている。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性と衝撃強度に優れる成形体を形成し得る樹脂材料として用いられ得る。また、フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤と共にフィラーを含むことにより、当該フィラー由来の特性(例えば、結晶化度向上による剛性、耐熱性の向上)が、効果的に付与され得る。本発明によれば、含有される各成分による効果が相まって、機械的特性に優れる成形体を加工性よく製造することを可能とする、ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
【0008】
1つの実施形態においては、上記フィラーとフィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とはフィラー造粒物の形態で添加される。この実施形態においては、上記フィラーとフィラー分散剤および/またはフィラー結着剤と含むフィラー造粒物を形成し、その後、当該フィラー造粒物と、ポリプロピレン系樹脂と、超高分子量ポリエチレン系樹脂とを混合すること(例えば、溶融混練により混合すること)により、上記ポリプロピレン系樹脂を得ることができる。このような製造方法を採用することにより、フィラー添加の作業性(フィード特性(供給量と安定性))、およびフィラー分散性が著しく向上し、生産性よく高含有量でフィラーを含有させることが可能となる。高含有量でフィラーを含有するポリプロピレン系樹脂組成物によれば、機械的特性に顕著に優れる成形体を形成することができる。例えば、卓越した剛性と耐衝撃性とのバランスに優れる成形体を得ることができる。詳細には以下の通りである。上記実施形態においては、フィラー造粒物を使用する製法により、粉体原料の溶融混練機へのフィードネックが解消されることで、高濃度の粉体状フィラーと、超高分子量ポリエチレン系樹脂とが高分散された溶融混練物を、高い吐出生産性で製造することができる。上記実施形態においては、例えば、フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤と共に、高濃度の粉体状フィラーの存在下で、超高分子量ポリエチレン系樹脂(必要に応じてポリプロピレン系樹脂が部分的に含まれていても良い)が溶融混練される工程を経て、ポリプロピレン系樹脂と段階的に溶融混練されることにより、ポリプロピレン系樹脂マトリックス中への、超高分子量ポリエチレン系樹脂の微分散化が達成されており、このために、通常は相反する関係にある、剛性の向上と衝撃強度の向上が同時に達成されるという驚くべき効果を得ることができる。すなわち、本発明においては、超高分子量ポリエチレン系樹脂へフィラーを分散性よく添加し得ると共に、超高分子量ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との混和性も同時に高め得、その結果、超高分子量ポリエチレン系樹脂とフィラーの特性が効果的に発揮され得るという利点を有する。
【0009】
上記ポリプロピレン系樹脂組成物の23℃におけるシャルピー衝撃強度は、好ましくは3kJ/m2以上であり、より好ましくは8kJ/m2以上であり、さらに好ましくは12kJ/m2以上である。当該シャルピー衝撃強度は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、60.0kJ/m2である。なお、ポリプロピレン系樹脂組成物の23℃におけるシャルピー衝撃強度は、ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて形成された所定のサンプルを用いて測定される。シャルピー衝撃強度の測定方法は、後述する。
【0010】
上記ポリプロピレン系樹脂組成物の23℃における曲げ弾性率は、好ましくは1,800MPa以上であり、より好ましくは2,000MPa以上であり、さらに好ましくは2,500MPa以上である。当該曲げ弾性率は、高いほど好ましいが、その上限は、例えば、6,000MPaである。なお、ポリプロピレン系樹脂組成物の23℃における曲げ弾性率は、ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて形成された所定のサンプルを用いて測定される。曲げ弾性率の測定方法は、後述する。
【0011】
A-2.ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモプロピレン)またはプロピレンとプロピレンと共重合可能なその他のモノマーとの共重合体が挙げられる。共重合体としてのポリプロピレン系樹脂は、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)であってもよく、ランダム共重合体(ランダムプロピレン)であってもよい。1つの実施形態においては、ホモプロピレンおよび/またはブロックプロピレンが用いられる。なかでも好ましくは、エチレン由来の構成単位を含むブロックポリプロピレンである。当該ブロックポリプロピレンを用いれば、耐衝撃性および剛性に優れる成形体を形成し得るポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。上記ブロックポリプロピレンは、例えば、ホモポリプロピレンにエチレンを共重合して得ることができる。ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
プロピレンと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-イコセン等が挙げられる。
【0013】
1つの実施形態においては、その他のモノマーとして、エチレンおよび/または炭素数4~10のα-オレフィンが用いられる。ポリプロピレン系樹脂中のα―オレフィン(好ましくは炭素数4~10)由来の構成単位の含有割合は、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。また、ポリプロピレン系樹脂中のエチレンの含有割合は、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下である。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂中のプロピレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは50mol%以上であり、より好ましくは80mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上であり、さらに好ましくは95mol%以上である。
【0015】
上記ポリプロピレン系樹脂の230℃、2.16kgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは0.1g/10min~100g/minであり、より好ましくは0.5g/10min~80g/minであり、さらに好ましくは1g/10min~50g/minである。このような範囲であれば、成形加工性に特に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。メルトフローレートは、JIS K7210に準じて測定される。
【0016】
上記ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5万~100万であり、より好ましくは10万~60万であり、さらに好ましくは12万~50万である。このような範囲であれば、成形加工性に特に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂組成物中、上記ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、好ましくは20重量%~75重量%であり、より好ましくは25重量%~70重量%であり、さらに好ましくは30重量%~65重量%である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。例えば、このような範囲であれば、フィラー添加の効果が好ましく発揮され、かつ、ポリプロピレン系樹脂由来の特性が好ましく発揮され得るポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
上記ポリプロピレン系樹脂として、フィラーを結着させるように作用し得るポリプロピレン系樹脂が含まれていてもよい。フィラーを結着させるように作用し得るポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン(h-PP)、ブロックポリプロピレン(b-PP)、ランダムポリプロピレン(r-PP)、ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレン変性物(例えば、無水マレイン酸、アクリル酸、等の変性物)等が挙げられる。
【0019】
A-3.超高分子量ポリエチレン系樹脂
超高分子量ポリエチレン系樹脂は、エチレンを主成分とする単量体組成物(全単量体中、エチレンの含有割合が最大となる単量体組成物)を重合して得られる樹脂である。超高分子量ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと該エチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
【0020】
超高分子量ポリエチレン系樹脂中、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは95モル%以上である。
【0021】
エチレンと共重合可能な他の単量体としては、例えば、炭素数3以上(好ましくは、炭素数3~20)のα-オレフィンなどが挙げられる。この炭素数3以上のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-メチル-
1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-イコセン等が挙げられる。
【0022】
超高分子量ポリエチレン系樹脂は、任意の適切な方法により製造され得る。例えば、特開昭58-83006号公報に記載されている方法により、任意の適切な触媒の存在下で、上記単量体を重合して得ることができる。
【0023】
上記超高分子量ポリエチレン系樹脂の粘度平均分子量は、上記の通り、100万以上であり、好ましくは100万~1,500万であり、より好ましくは100万~1,000万であり、さらに好ましくは100万~500万である。1つの実施形態においては、100万~300万である。また、上記ポリプロピレン系樹脂組成物は、分子量が異なる2種以上の超高分子量ポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。
【0024】
なお、上記粘度平均分子量(Mv)は、ASTMD4020に規定の粘度法により測定することができる。具体的には、ASTMD4020の粘度法に基づき極限粘度(η(dl/g))を測定し、次式(1)から粘度平均分子量(Mv)を求めることができる。
Mv=5.37×104η1.37 ・・・(1)
このような範囲であれば、分散性に優れ、好ましい衝撃強度改良効果を発揮し得るポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
上記の通り、ポリプロピレン系樹脂組成物中の上記超高分子量ポリエチレン系樹脂の含有割合は、3重量%~30重量%である。ポリプロピレン系樹脂組成物中の上記超高分子量ポリエチレン系樹脂の含有割合は、好ましくは5重量%~25重量%であり、より好ましくは10重量%~20重量%である。このような範囲であれば、フィラー由来の特性(例えば、剛性や耐熱性)と耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ、溶融加工も可能なポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0026】
A-4.フィラー
フィラーとしては、ポリプロピレン系樹脂組成物および/または当該ポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体に要求される特性に応じて、任意の適切なフィラーを用いることができる。フィラーは1種のみを用いもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記フィラーによって付与できる特性・効果としては、例えば、増量化または軽量化、補強(高剛性化、高弾性率化、高強度化)、寸法安定性、成形サイクル(結晶化速度)、結晶化度、熱伝導性、導電性、磁性、圧電性、制振性、遮音性、摺動性、断熱性、電磁波吸収性、光反射性、光散乱性、熱線輻射性、難燃性、放射線防護、紫外線防護、脱湿、脱水、脱臭、ガス吸収、ガスバリア、アンチブロッキング、吸油、抗菌性、生分解促進性、バイオ度向上(天然物由来成分量の比率向上)等が挙げられる。例えば、増量の目的では、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレーが好適である。補強の目的では、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、繊維状マグネシウム化合物(MOS)、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー等が好適である。抗菌付与の目的では、カテキン、銀イオン担持ゼオライト、銅フタロシアニン、等が好適である。ガスバリア性付与の目的では、合成マイカ系、クレー・合成マイカのナノフィラー、等が好適である。軽量化の目的では、シリカバルーン、ガラスバルーン、セノスフィア、パーライト、シラスバルーン、等のバルーン系が好適である。導電性付与の目的では、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔、が好適である。磁性付与の目的では、各種磁性材料、各種フェライト系、磁性酸化鉄、サマコバ(Sm-Co)、Nd-Fe-B、等が好適である。熱伝導性付与の目的では、アルミナ、AlN、BN、BeO、等が好適である。圧電性付与の目的では、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、等が好適である。制振性付与の目的では、マイカ、黒鉛、チタン酸カリウム、ゾノトライト、炭素繊維、フェライト、等が好適である。遮音性付与の目的では、鉄粉、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。摺動性付与の目的では、黒鉛、六方晶BN、硫化モリブデン、テフロン(登録商標)粉、タルク、高分子量ポリエチレン、等が好適である。電磁波吸収付与の目的では、電磁波吸収フェライト、黒鉛、木炭粉、カーボンマイクロコイル(CMC)、カーボンナノチューブ(CNT)、PZT、等が好適である。光反射、光散乱付与の目的では、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカ、等が好適である。熱線輻射付与の目的では、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、MOS、アルミナ、木炭粉末、等が好適である。難燃化の目的では、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、赤燐、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ドーソナイト、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、等が好適である。放射線防護の目的では、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。紫外線防護の目的では、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、等が好適である。脱湿、脱水の目的では、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。脱臭、ガス吸収の目的では、ゼオライト、等が好適である。アンチブロッキング(フィルムの圧着防止)の目的では、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、球状微粒子(シリコーンやアクリルビーズ)、等が好適である。吸油(印刷インク吸収、速乾性等)の目的では、毬藻状炭酸カルシウム、毬藻状ゾノトライト、等が好適である。吸水の目的では、吸水用の高分子ゲル、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。バイオ度向上の目的には、セルロース系材料(木粉、木繊維、おがくず、木屑、新聞用紙、紙、亜麻、麻、麦わら、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツの殻、大豆の外皮、等)、でんぷん、天然ゴム、等が好適である。
【0028】
1つの実施形態においては、上記フィラーとして、層状珪酸塩化合物が用いられる。層状珪酸塩化合物を用いれば、剛性と耐衝撃性とが高度にバランスされた成形体を形成し得るポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。層状珪酸塩化合物としては、例えば、タルクおよび/またはマイカが好ましく用いられる。タルクおよびマイカは、上記効果を奏する他、ポリプロピレン系樹脂の結晶化核剤として好ましく機能し得る。本実施形態においては、タルクおよび/またはマイカを高濃度に含み得、その結果、ポリプロピレン系樹脂の結晶化速度が高まる点で有利である。
【0029】
フィラーの数平均粒子径は、任意の適切な粒子径とされ得る。フィラーの数平均粒子径は、好ましくは10nm~100μmである。フィラーのサイズはレーザー回折法により求めることができる。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂組成物中、上記フィラーの含有割合は、上記の通り、20重量%~60重量%である。ポリプロピレン系樹脂組成物中、上記フィラーの含有割合は、好ましくは25重量%~55重量%であり、より好ましくは30重量%~50重量%である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
【0031】
A-5.フィラー分散剤
上記フィラー分散剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。フィラー分散剤(界面活性剤)における親水性/疎水性バランスは、フィラー分散剤となる化合物のエステル化度や脂肪酸の種類(水酸基の有無、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル鎖長)、重合度を調整することにより、制御することができる。フィラー分散剤はその界面活性剤的作用により、フィラーの分散性を高める作用を発揮する。
【0032】
上記フィラー分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸スルホン酸塩、脂肪酸アマイド、アクリルアミド、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。フィラー分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。
【0033】
1つの実施形態においては、フィラー分散剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0034】
上記多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールと炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸のエステル類が用いられる。
【0035】
上記脂肪酸アマイドとは、脂肪酸とアンモニアあるいは1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つ化合物である。上記脂肪酸アマイドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類が挙げられる。
【0036】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂組成物中、フィラー分散剤の含有割合は、好ましくは0.1重量%~10重量%であり、より好ましくは0.3重量%~7重量%であり、さらに好ましくは0.3重量%~5重量%である。このような範囲であれば、フィラー起因の特性に優れる成形体を形成し得、かつ、生産性およびフィラーの分散性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
A-6.フィラー結着剤
上記フィラー結着剤は、フィラー同士を結着させる機能を有し得る。また、上記フィラー結着剤を用いれば、フィラーの分散性を高めることができる。さらに、フィラーがフィラー造粒物の形態で添加される場合、フィラー結着剤は、適度な嵩密度、崩壊強度を有する造粒物を得ることを目的として使用される。また、好適なフィラー結着剤を選択することにより、フィラー造粒物の生産性が向上し得る。
【0039】
上記フィラー結着剤としては、樹脂が好ましく使用され、とりわけ、水溶性あるいは水分散系の樹脂を特に好ましく使用できるが、多糖類や粘土鉱物等も使用することができる。フィラー結着剤としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等のポリマー系の結着剤;水溶性多糖類;スメクタイト、バーミキュライト等の膨潤性粘土鉱物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、「フィラー結着剤」としてのポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を含まない概念とする。
【0040】
1つの実施形態においては、フィラー結着剤は、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエポキシ系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく使用され得る。なかでも好ましくは、ポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくは、ポリエチレン系樹脂が用いられ得る。
【0041】
フィラー結着剤としての上記ポリエチレン系樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン-ブテン、エチレン-オクテン等)、ポリオレフィン変性物(例えば、無水マレイン酸、アクリル酸、等の変性物)、ポリオレフィンベースのイオノマーを含む機能性ポリオレフィンコポリマー等が挙げられる。
【0042】
上記フィラー結着剤として、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、三井化学社製のケミパール(登録商標)、ダウ・ケミカルカンパニーのHYPOD(登録商標)、ビックケミー・ジャパン社製のAQUACER(登録商標)、住友精化社製のザイクセン、セポルジョン、セポレックス(登録商標)、マイケルマン・ジャパン社製のMichem(登録商標)、DIC社のボンディック(登録商標)、サイデン化学社製のサイビノール、サイデングルー(登録商標)、等を挙げることができる。他の好ましい例として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH;クラレ社製のエバール(登録商標))、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH;三菱ケミカル社製のニチゴーGポリマー(登録商標))が挙げられる。他の好ましい例として、イーストマンケミカル社製のイーストマンAQ(登録商標)で販売されている水性スルホポリエステル分散液、Ascend Performanceから販売されている、水で希釈されて水性ポリマー分散液を形成する、ヘキサン-1、6-ジアミンおよびアジピン酸の塩(AH塩)が挙げられる。
【0043】
ポリプロピレン系樹脂組成物中のフィラー結着剤の含有割合は、好ましくは0.1重量%~10重量%であり、より好ましくは1重量%~8重量%であり、さらに好ましくは1重量%~5重量%である。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂組成物中、フィラー分散剤およびフィラー結着剤の合計含有割合は、好ましくは0.1重量%~10重量%であり、より好ましくは0.3重量%~7重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%~5重量%である。このような範囲であれば、フィラー起因の特性に優れ、かつ、生産性およびフィラーの分散性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。なお、「フィラー分散剤およびフィラー結着剤の合計含有割合」とは、ポリプロピレン系樹脂組成物がフィラー分散剤を含まない場合は、フィラー結着剤の含有割合を意味し、ポリプロピレン系樹脂組成物がフィラー結着剤を含まない場合は、フィラー分散剤の含有割合を意味する。
【0045】
A-7.その他の成分
上記ポリプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて、任意の適切なその他の成分(添加剤)をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、相溶化剤、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、カップリング剤、難燃剤、脱酸素剤、着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、流動性向上剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0046】
B.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
上記ポリプロピレン系樹脂組成物は、任意の適切な方法により製造することができる。1つの実施形態においては、上記ポリプロピレン系樹脂組成物は、上記ポリプロピレン系樹脂と、上記超高分子量ポリエチレン系樹脂と、上記フィラーと、上記フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを溶融混練して得ることができる。好ましくは、上記ポリプロピレン系樹脂組成物は、上記ポリプロピレン系樹脂と、上記超高分子量ポリエチレン系樹脂と、フィラー造粒物(上記フィラーと、上記フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含む造粒物)とを、溶融混練して得ることができる。溶融混練の方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは二軸以上の多軸押出機を使用することができる。好ましくは、二軸スクリュー押出機が用いられる。溶融混練された組成物はペレット化され得る。ポリプロピレン系樹脂の形状は特に限定されず、粉状であってもよく、ペレット状であってもよい。また、超高分子量ポリエチレン系樹脂の形状は特に限定されず、粉状であってもよく、ペレット状であってもよい。
【0047】
1つの実施形態においては、ポリプロピレン系樹脂組成物に含有される成分は、段階的に混合される。1つの実施形態においては、第1の溶融混練工程において、超高分子量ポリエチレン系樹脂と、フィラーと、フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを溶融混練して溶融混練物Aを調製し、次いで、第2の溶融混練工程以降において、溶融混練物Aとポリプロピレン系樹脂とを溶融混練することにより、上記ポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。1つの実施形態においては、第2の溶融混練工程において、溶融混練物Aとポリプロピレン系樹脂とを溶融混練する。なお、フィラーと、フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とは、これらを含む造粒物として投入されてもよい。また、含有されるポリプロピレン系樹脂の一部は、第1の溶融混練工程で混合されてもよい。第1の溶融混練工程における、超高分子量ポリエチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂の配合重量比(超高分子量ポリエチレン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂)は、1以上であることが好ましい。上記実施形態において、例えば、二軸押出機を用いる場合、押出機の最上流投入口から溶融混練物A用の材料を投入し、最上流投入口の下流に設けた溶融混練ゾーンで第1の溶融混練工程を行い、当該溶融混練ゾーンより下流に設けられたサイドフィード供給口からポリプロピレン系樹脂を供給した後、第2の溶融混練工程が行われる。必要により、第2の溶融混練工程後に更にサイドフィード供給口を設け、ポリプロピレン系樹脂を追加供給した後、第3の溶融混練工程が行われ得る。上記のように、ポリプロピレン系樹脂組成物に含有される成分を段階的に混合すれば、高粘度の超高分子量ポリエチレン系樹脂中にフィラーを良分散させた後に、比較的低粘度のポリプロピレン系樹脂を混合することができ、超高分子量ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との混和性を高めることができる。その結果、超高分子量ポリエチレン系樹脂による衝撃強度改良効果とフィラー由来の特性(例えば、剛性、耐熱性等)を効果的に発揮し得るポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。なお、ポリプロピレン系樹脂組成物に含有される成分を段階的に混合する場合、フィラーとフィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とは、後述のフィラー造粒物として、添加されることが好ましい。
【0048】
1つの実施形態においては、上記フィラーとフィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含むフィラー造粒物を得た後、当該フィラー造粒物と、上記ポリプロピレン系樹脂とを溶融混練することにより、上記ポリプロピレン系樹脂組成物が得られる。このような製造方法を採用することにより、フィラー添加の作業性、およびフィラー分散性が著しく向上し、高含有量でフィラーを含有させることが可能となる。より詳細には、上記フィラー造粒物は、押出機等の装置への投入安定性に著しく優れて、フィードネックが解消されるため、当該フィラー造粒物を用いれば、ポリプロピレン系樹脂組成物の生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度;吐出速度(単位;kg/Hr))を飛躍的に向上させることができる。さらに当該フィラー造粒物を使用した場合、フィラー分散性および成形加工性(流動性)が向上するため、フィラー造粒物を使用して得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、高濃度かつ高分散でフィラーを含み得る。その結果、フィラー添加の効果(例えば、結晶化促進効果)が、効果的に付与され得るポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0049】
(フィラー造粒物)
上記フィラー造粒物は、任意の適切な方法により製造することができる。上記フィラー造粒物は、例えば、上記フィラーと、上記フィラー分散剤および/またはフィラー結着剤とを含む混合物を半湿式造粒法に供することにより得ることができる。より好ましくは、上記フィラー造粒物は、上記フィラーと、上記フィラー分散剤と、フィラー結着剤とを含む混合物を半湿式造粒法に供することにより得ることができる。フィラー、フィラー分散剤、フィラー結着剤は、A項で説明したものが用いられ得る。フィラー結着剤は、バインダーとして機能し得る。
【0050】
上記フィラー造粒物中、上記フィラーの含有割合は、フィラー造粒物の全固形分量100重量部に対して、好ましくは80重量部~99.9重量部であり、より好ましくは82重量部~99重量部であり、さらに好ましくは85重量部~98重量部であり、特に好ましくは87重量部~97重量部であり、最も好ましくは90重量部~96重量部である。
【0051】
1つの実施形態においては、フィラー結着剤は、当該フィラー結着剤を含む水溶液または水系分散液の形態で、混合に供される。
【0052】
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物の製造方法は、上記フィラーと上記フィラー結着剤と上記フィラー分散剤とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。
【0053】
上記混合工程においては、水をさらに混合してもよい。添加される水は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
【0054】
上記水の混合量は、フィラー造粒物中のフィラー100重量部に対して、通常、1重量部~30重量部、好ましくは3重量部~25重量部、より好ましくは5重量部~20重量部である。
【0055】
混合工程においては、常温下で各成分を配合し、任意の適切な混合機を用いて、均一化することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)、等を挙げることができる。
【0056】
混合工程における混合時間は、成分の種類、混合機の種類、成分配合比等に応じて、任意の適切な混合時間とすることができる。混合工程では各成分が均一に分散されるように混合時間が設定される。ヘンシェルミキサーやスパルタンミキサー等の高速撹拌機では1~10分の処理時間で行うことができる。一方、粉体用ニーダーの場合は、数分~60分の処理時間が必要になる場合がある。
【0057】
造粒工程においては、圧縮造粒法が好ましく採用される。また、造粒工程においては、半湿式造粒法が好ましく採用され得る。圧縮造粒法/半湿式造粒法としては、例えば、ディスクペレッター方式、タブレッティング方式、ブリケッティング方式等が挙げられる。
生産性と得られるフィラー造粒物の品位のバランスの観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。
【0058】
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個または2個のディスクと、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された原料が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。ここで、ディスク孔にはテーパーが設けられており、フィラー混合物が孔を通過する過程で、ダイス孔の外周から圧縮応力が与えられる仕組みになっている。このテーパーのついた孔の長さを有効長と呼ぶ。押し出された造粒物前駆体は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状のフィラー造粒物を得ることができる。造粒物前駆体(結果としてフィラー造粒物)の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数、によって調整が可能である。ディスクの裏面とカッター間の距離は、フィラーの種類等に応じて、任意の適切な数値とされ得、通常、1mm~30mmの範囲である。
【0059】
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
【0060】
乾燥工程における乾燥方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。乾燥工程後、振動ふるい等により、微粉を除去したフィラー造粒物が得られ得る。乾燥工程では、任意の適切な乾燥設備が用いられる。例えば、振動流動式乾燥機が短時間に効率的に乾燥を行うことができるので好ましく、例えば、ダルトン社製の振動流動乾燥機VDFシリーズを挙げることができる。
【0061】
上記ポリプロピレン系樹脂組成物を用い、種々の成形体が提供される。例えば、射出成形体、押出成形体、シート等が提供され得る。また、上記シートからは賦形物(真空成形体、プレス成形体、シート状賦形物、等)が得られ得る。ポリプロピレン系樹脂組成物の成形体を成形する方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、異形押出成形法、発泡成形法、ラム押出成形法、固化押出法、パイプ成形法、チューブ成形法、異種成形体の被覆成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、延伸成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、回転成形法、真空成形法、圧空成形法、溶融紡糸等が挙げられる。
【実施例0062】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0063】
[製造例1]タルク造粒物の製造
粉体用ニーダー(ダルトン社製、商品名「KDHJ-10」;処理量:6L)に、フィラー(タルク(以下、タルク(JM300)とも表す)、浅田製粉社製、商品名「JM300」;嵩比重:0.17、平均粒子径4.7μm)100重量部と、フィラー結着剤(ポリオレフィン分散液(水性PEディスパージョン);三井化学社製、商品名「ケミパールA100」;ポリオレフィン固形分濃度:40重量%;ポリオレフィン粒子の密度:0.89g/cm3;ポリオレフィン粒子の平均粒子径4μm)20重量部と、フィラー分散剤(ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル;太陽化学社製、商品名「チラバゾールH818」)3重量部とを投入し、回転数30rpmで6分間の攪拌処理を行った後、混合物Aを得た。
この混合物Aを、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175」)に投入し、ペレット状のタルク造粒物前駆体を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、140℃で6時間乾燥させてタルク造粒物(MB-1)を得た。乾燥後の水分量は0.4重量%、フィラー量(タルク含有量)は90重量%であった。水分量は、赤外線水分計(ケット科学研究所製 FD-660)を用いて、測定した(単位:重量%)。フィラー量は、600℃で3時間焼成処理した灰分量(単位:重量%)より算出した。
【0064】
[製造例2]炭酸カルシウム造粒物の製造
タルク(JM300)に代えて、フィラー(炭酸カルシウム、日東粉化工業社製、商品名「NS#100」;平均粒子径2.1μm、嵩比重0.46)を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、炭酸カルシウム造粒物(MB-2)を得た。乾燥後の水分量は0.45重量%、フィラー量(炭酸カルシウム含有量)は90重量%であった。
【0065】
[実施例1]
超高分子量ポリエチレン粉体(旭化成社製、商品名「サンファインUH650」;粘度平均分子量:100万、嵩比重:0.5)10重量部と、製造例1で得られたタルク造粒物(MB-1)55重量部と、ポリプロピレン系樹脂(ブロックポリプロピレン(b-PP)のペレット、日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックBCE2」、MFR:16g/10min(230℃/2.16kg荷重条件))35重量部を、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37SS」、L/D=48)に投入して、連続的に溶融混練を行い、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを製造した。
各成分はそれぞれ独立に、重量式フィーダーを介して、二軸押出機の最上流部のホッパー位置から投入した。
押出機のスクリュー構成は、2カ所の溶融混練ゾーンを設け、押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を200℃に設定した。また、二軸押出機の主スクリューの回転数を100rpmとした。原料の供給速度は全ての成分の総量として、20kg/Hrの吐出速度とした。溶融混練して得られたポリプロピレン系樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
得られたポリエチレン系樹脂組成物は、押出機への原料の供給安定性に優れ、安定した吐出速度で生産を行うことができ、また、溶融混練分散性にも優れ、ストランドの引き取り安定性に優れていた。
【0066】
[実施例2]
超高分子量ポリエチレン粉体の配合量を5重量部とし、ポリプロピレン系樹脂の配合量を40重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0067】
[比較例1]
ブロックポリプロピレン系樹脂(ノバテックBCE2)のみを、実施例1と同じ条件で二軸押出機にてペレット化した。
【0068】
[比較例2]
ホモポリプロピレン系樹脂(h-PP、日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックMA1B」、MFR:21g/10min(230℃/2.16kg荷重条件))のみを、実施例1と同じ条件で二軸押出機にてペレット化した。
【0069】
[比較例3]
超高分子量ポリエチレン粉体(旭化成社製、商品名「サンファインUH650」)10重量部と、タルク(JM300)50重量部と、ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックBCE2」)40重量部とを、実施例1と同じ条件で二軸押出機にて溶融混練を行い、ペレット化を試みた。タルク粉体が供給口でブリッジ(詰まり)を生じて、フィード不良となり、造粒が不能であった。
【0070】
[参考例1~4]
表1に示す組成で、超高分子量ポリエチレン粉体(サンファインUH650)を使用せずに、実施例1と同じ条件で二軸押出機にて溶融混練を行い、ポリエチレン系樹脂組成物のペレットを得た。得られたポリエチレン系樹脂組成物は、押出機への原料の供給安定性に優れ、安定した吐出速度で生産を行うことができ、また、溶融混練分散性にも優れ、ストランドの引き取り安定性に優れていた。
【0071】
<評価>
ポリプロピレン系樹脂組成物を、下記の評価に供した。結果を表1および表2に示す。
(a)押出機への原料のフィード特性
原料の連続投入状況を確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇:安定に供給できる。
×:粉体状の原料の供給でブリッジが生じることがあり、フィードが不安定。
(b)樹脂組成物のペレットの造粒性押出機への原料のフィード特性
〇:樹脂組成物のストランドが安定しており、安定に連続生産を行うことができる。
×:ストランド切れが発生し、連続生産を安定に行うことができない。
(c)分散性
樹脂組成物から厚み100μmの熱プレスフィルムを作成し、光学顕微鏡観察により、組成物中のフィラーの分散性を、以下の基準で造粒性を評価した。
AA:フィラーがより良く溶融分散性している。
A:フィラーが良く溶融分散している。
B:フィラーが溶融分散性している。
C:フィラーの凝集物がみられる。
(フィラーの分散の良さ; AA>A>B>C)
(1)灰分測定(単位:重量%)
ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを1~3g採取し、電気炉にて、るつぼ内で600℃で3時間保持し、灰分重量を算出した。
(2)MFR(単位:g/10min)
JIS K7210に準拠し、東洋精機製作所社製の「メルトインデクサー」を用いてメルトマスフローレート(MFR)を測定し、流動性を評価した。測定条件は、230℃/2.16kg荷重および、230℃/5kg荷重とした。
(3)曲げ測定
ISO178に準拠して曲げ試験(測定温度:23℃)を行い、曲げ強度(単位:MPa)、および曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。測定は、東洋精機製作所社製の「ストログラフVG20E」を用いて行った。
尚、測定用の試験片としては、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを、射出成形機(東洋機械金属社製「SI-80W」、型締め100トン)を使用し、シリンダー設定温度200℃、金型温度60℃(固定側、稼働側共に)、冷却時間60秒で成形したダンベル型試験片(1A型多目的試験片)を用いた。
(4)シャルピー衝撃試験(単位:kJ/m2)
ISO179に準拠し、ポリプロピレン系樹脂組成物から形成されたノッチ付き試験片のシャルピー衝撃強度を測定した(測定温度:23℃)。なお、測定用の試験片は、上記引張測定で得たダンベル型試験片を切り出して使用した。測定は、東洋精機製作所社製の「デジタル衝撃試験機DG-CB」を用いて行った。シャルピー衝撃試験用の試験片の作製において、ノッチ先端半径(R)は0.25mmとした。また、ハンマー容量は2Jとした。
(5)荷重たわみ温度測定(DTUL、単位:℃)
ISO75に準拠し、0.45MPa荷重条件で荷重たわみ温度を測定した。なお、測定用の試験片は、上記曲げ測定で得たダンベル型試験片を切り出して使用した。測定は、東洋精機製作所社製の「HDT試験装置(6M-2)」を用いて行った。
【0072】
【0073】
表2の実施例1、2と比較例1の対比により、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、ベース樹脂(比較例1)に較べ、剛性、衝撃強度、耐熱性(荷重たわみ温度)のバランスが向上していることが明らかである。通常は、剛性と耐衝撃強度は相反性の関係にあるが、本発明では、高い剛性と衝撃強度を共に発現することが示される。参考例1は超高分子量ポリエチレンを欠く例であるが、衝撃強度が実施例1に較べて劣る。参考例4はフィラー造粒物としてMB-2(炭酸カルシウム)を使用した例であるが、MB-1(タルク)を使用した場合に較べて、剛性と荷重たわみ温度のバランスに劣る。