(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059094
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】電子調光レンズ、電子調光眼鏡、電子調光レンズの製造方法及び電子調光眼鏡の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/10 20060101AFI20230419BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20230419BHJP
G02F 1/155 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G02C7/10
G02F1/15 503
G02F1/155
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169006
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 滋樹
【テーマコード(参考)】
2H006
2K101
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BA02
2H006BE03
2H006DA01
2K101AA22
2K101DA01
2K101EA41
2K101EC22
2K101EC57
2K101EC61
2K101EC64
2K101EE01
2K101EF03
2K101EG52
2K101EJ23
2K101EJ31
2K101EK04
(57)【要約】
【課題】調光用の電子素子の電極に接続する端子の信頼性、耐久性、生産性に優れる電子調光レンズを提供する。
【解決手段】調光用の電子素子(21、52)とレンズ(20、51)とを組み合わせた電子調光レンズ(11、40、50)であって、電子調光レンズの外面に開口し、電子素子における正極用と負極用のそれぞれの電極(22、23、41、42、53、54)に通じる孔(32、34、43、44、55、56)と、孔の形状に合うように成形され、孔に挿入された端子部材(24、25、45、46、57、58)と、を備え、端子部材が、孔の内部で電極と電気的に接続するとともに、孔の開口に一端部を露出させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光用の電子素子とレンズとを組み合わせた電子調光レンズであって、
電子調光レンズの外面に開口し、前記電子素子における正極用と負極用のそれぞれの電極に通じる孔と、
前記孔の形状に合うように成形され、前記孔に挿入された端子部材と、を備え、
前記端子部材が、前記孔の内部で前記電極と電気的に接続するとともに、前記孔の開口に一端部を露出させていることを特徴とする電子調光レンズ。
【請求項2】
前記端子部材は、前記孔の内部に圧入状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子調光レンズ。
【請求項3】
前記電極は前記孔の底面に位置し、前記端子部材のうち前記一端部と反対側の端部が前記電極に接触することを特徴とする請求項1または2に記載の電子調光レンズ。
【請求項4】
前記孔は前記電極を貫通し、前記端子部材の外周面が前記電極に接触することを特徴とする請求項1または2に記載の電子調光レンズ。
【請求項5】
前記孔は、前記電極の外縁部分に設けた凹部と重なり、
前記端子部材のうち前記凹部への進入部分が前記電極に接触することを特徴とする請求項1または2に記載の電子調光レンズ。
【請求項6】
前記端子部材は、ニッケル製のコア部分の外面を金メッキで覆った構造であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子調光レンズ。
【請求項7】
前記孔は、前記電子調光レンズの前面と後面の少なくとも一方に開口していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子調光レンズ。
【請求項8】
前記孔は、前記電子調光レンズの外周面に開口していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子調光レンズ。
【請求項9】
前記レンズの外周面から外側に突出し、前記孔が形成される張出部と、
前記張出部に重なって配置されて、前記端子部材に接触する給電用の導電部材と、
前記導電部材上から前記張出部に取り付けられて、前記導電部材と前記端子部材を前記張出部に対して保持させる保持部材と、
を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電子調光レンズ。
【請求項10】
前記張出部は、前記孔が開口する孔形成面に隣接する一対の側面に被係合部を有し、
前記保持部材は、前記孔形成面と前記一対の側面とを囲む形状を有して前記被係合部に係合することを特徴とする請求項9に記載の電子調光レンズ。
【請求項11】
前記電子調光レンズが取り付けられて、前記張出部、前記導電部材及び前記保持部材を覆う眼鏡フレームを有し、
前記眼鏡フレームに内蔵した調光制御部に前記導電部材が接続して、前記調光制御部から前記導電部材と前記端子部材を介して前記電子素子へ給電することを特徴とする、請求項9または10に記載の電子調光レンズを備えた電子調光眼鏡。
【請求項12】
調光制御部に接続する導電部材を支持し、前記電子調光レンズを保持する環状部の内周面に前記導電部材のコネクタ部が露出する眼鏡フレームを有し、
前記環状部に前記電子調光レンズを保持した状態で、前記端子部材が前記コネクタ部に接触して、前記調光制御部から前記導電部材と前記端子部材を介して前記電子素子へ給電することを特徴とする、請求項8に記載の電子調光レンズを備えた電子調光眼鏡。
【請求項13】
調光用の電子素子とレンズとを組み合わせた電子調光レンズの製造方法であって、
電子調光レンズの外面に開口し、前記電子素子における正極用と負極用のそれぞれの電極に通じる孔を形成し、
前記孔の形状に合う形状の端子部材を成形し、
成形された前記端子部材を、前記孔に開口側から挿入して前記電極と電気的に接続させ、挿入された前記端子部材の一端部を前記孔の開口に露出させることを特徴とする電子調光レンズの製造方法。
【請求項14】
前記孔への前記端子部材の挿入は、圧入によって行うことを特徴とする請求項13に記載の電子調光レンズの製造方法。
【請求項15】
前記レンズの外周面から外側に突出する張出部に前記孔を形成し、
前記孔に前記端子部材を挿入してから、給電用の導電部材を前記張出部に重ねて、前記孔の内部に位置する前記端子部材の前記一端部に前記導電部材を接触させ、
前記導電部材上から保持部材を前記張出部に取り付けて、前記導電部材と前記端子部材を前記張出部に対して保持させることを特徴とする請求項13または14に記載の電子調光レンズの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法により製造される電子調光レンズを有する電子調光眼鏡の製造方法において、
前記端子部材と前記導電部材と前記保持部材を組み付けた状態の前記電子調光レンズを眼鏡フレームに取り付け、
前記眼鏡フレーム内に設けた調光制御ユニットに前記導電部材を接続させることを特徴とする電子調光眼鏡の製造方法。
【請求項17】
前記レンズの外周面上に開口させて前記孔を形成し、
前記孔に前記端子部材を挿入して、前記一端部を前記レンズの外周面側に露出させることを特徴とする請求項13または14に記載の電子調光レンズの製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の製造方法により製造される電子調光レンズを有する電子調光眼鏡の製造方法において、
前記電子調光レンズを保持する眼鏡フレームの環状部分の内周面に沿って、給電用の導電部材を配設し、
前記電子調光レンズを眼鏡フレームに取り付けて、前記孔の内部に位置する前記端子部材の前記一端部に前記導電部材を接触させることを特徴とする電子調光眼鏡の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子調光レンズ、電子調光眼鏡、電子調光レンズの製造方法及び電子調光眼鏡の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの内部や表面に積層する電子素子を備え、電子素子への電気エネルギーの供給によって光学的特性(光透過率や色など)を変化させて調光効果を得る電子調光レンズが知られている。このような電子調光レンズを眼鏡フレームに組み込んで、電子調光眼鏡が構成される。
【0003】
調光用の電子素子の一例として、エレクトロクロミック素子(EC素子)が知られている(例えば、特許文献1)。エレクトロクロミック素子は、球面状のレンズ面に対応した湾曲形状に形成することが可能であり、電子調光眼鏡用の電子素子に適している。
【0004】
特許文献2には、電子調光レンズにおける電子素子の電極パターン(正極、負極)をレンズ外周部に露出させ、眼鏡フレームのリムの内側に敷設した電気接続手段を電極パターンに接続させた構成が記載されている。
【0005】
電子素子や眼鏡フレームにおける構造的制約が少ない給電用の構造として、レンズ外面に開口して電子素子の電極まで達する孔を形成し、この孔の内部に、導電性銀ペーストを注入するものが知られている。銀ペーストが注入後に硬化することで、電子調光レンズの外面に一部が露出する端子部となり、端子部に対して外部から給電用の導電部材を接続させる。この構成は、孔を形成する位置によって端子部の位置を後から選択できるという自由度の高さがあり、様々な形態の電子素子や眼鏡フレームに対応させやすいという利点がある。
【0006】
また、電子調光レンズを電子調光眼鏡に搭載する際に、眼鏡フレームのリムによって、電子調光レンズと導電部材を両側から挟み込んで、電子調光レンズ側の端子部と導電部材との接触を維持させるという構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6624206号公報
【特許文献2】特許第5511997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の電子調光レンズにおいて、上述した銀ペーストを用いて形成した端子部には、いくつかの課題があった。まず、銀ペーストに含まれる銀粒子は酸化しやすく、特に孔の開口部分に露出する箇所の劣化が生じやすい。また、銀ペーストは、孔への注入時に拡散や振動による移動を生じやすく、安定した形状の端子部を形成しにくい。このような理由から、材料として銀ペーストを用いた端子部は、導電性能において長期的な信頼性を得ることが難しい。
【0009】
また、流動性のある銀ペーストを微細な孔へ注入する作業は、周辺への銀ペーストの飛散などを防ぎながら慎重に行う必要があると共に、銀ペーストがレンズ上に飛散した場合は除去する必要があり、手間がかかる。また、孔へ注入した銀ペーストの露出部分の形状が粗くなっていると、導電部材との接触不良が生じやすくなるので、研磨などを用いて平滑な形状にさせる加工が必要になる。このような理由から、銀ペーストによって端子部を形成する作業は、手間がかかり難度の高いものであった。
【0010】
特に、電子調光レンズを多量に生産する場合には、以上のような銀ペーストの使用における難点が顕著になるため、電子調光レンズの量産により適した新たな電極接続用の端子構造が求められている。
【0011】
また、電子調光眼鏡への適用において、電子調光レンズの端子部と導電部材を、眼鏡フレームのリムを用いて両側から挟み込む構造の場合、電子調光レンズと導電部材を位置合わせしながら眼鏡フレームに取り付けるという両方の動作が必要で、作業を行いにくいという問題があった。
【0012】
本発明は、以上の課題を解決するべく、調光用の電子素子の電極に接続する端子の信頼性、耐久性、生産性に優れる電子調光レンズ、電子調光眼鏡、電子調光レンズの製造方法及び電子調光眼鏡の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、調光用の電子素子とレンズとを組み合わせた電子調光レンズであって、電子調光レンズの外面に開口し、電子素子における正極用と負極用のそれぞれの電極に通じる孔と、孔の形状に合うように成形され、孔に挿入された端子部材と、を備え、端子部材が、孔の内部で電極と電気的に接続するとともに、孔の開口に一端部を露出させていることを特徴とする。
【0014】
端子部材は、孔の内部に圧入状態で配置されていることが好ましい。
【0015】
電極が孔の底面に位置し、端子部材のうち一端部と反対側の端部が電極に接触する構成を用いることができる。あるいは、孔が電極を貫通し、端子部材の外周面が電極に接触する構成を用いることもできる。あるいは、孔が電極の外縁部分に設けた凹部と重なり、端子部材のうち凹部への進入部分が電極に接触する構成を用いることもできる。
【0016】
端子部材は、ニッケル製のコア部分の外面を金メッキで覆った構造であることが好ましい。
【0017】
端子部材が挿入される孔は、電子調光レンズの前面と後面の少なくとも一方に開口している。あるいは、端子部材が挿入される孔は、電子調光レンズの外周面に開口している。
【0018】
レンズの外周面から外側に突出し、孔が形成される張出部と、張出部に重なって配置されて、端子部材に接触する給電用の導電部材と、導電部材上から張出部に取り付けられて、導電部材と端子部材を張出部に対して保持させる保持部材と、を有することが好ましい。
【0019】
張出部は、孔が開口する孔形成面に隣接する一対の側面に被係合部を有し、保持部材は、張出部の孔形成面と一対の側面とを囲む形状を有して被係合部に係合することが好ましい。
【0020】
電子調光レンズを、張出部、導電部材及び保持部材を覆う眼鏡フレームに取り付けて電子調光眼鏡として構成することができる。この電子調光眼鏡では、眼鏡フレームに内蔵した調光制御部に導電部材が接続して、調光制御部から導電部材と端子部材を介して電子素子へ給電する。
【0021】
また、端子部材が挿入される孔が外周面に開口する電子調光レンズを、眼鏡フレームに取り付けて、電子調光眼鏡として構成することができる。この眼鏡フレームは、調光制御部に接続する導電部材を支持し、電子調光レンズを保持する環状部の内周面に導電部材のコネクタ部が露出する。そして、環状部に電子調光レンズを保持した状態で、端子部材がコネクタ部に接触して、調光制御部から導電部材と端子部材を介して電子素子へ給電する。
【0022】
本発明の一態様は、調光用の電子素子とレンズとを組み合わせた電子調光レンズの製造方法であって、電子調光レンズの外面に開口し、電子素子における正極用と負極用のそれぞれの電極に通じる孔を形成し、孔の形状に合う形状の端子部材を成形し、成形された端子部材を、孔に開口側から挿入して電極と電気的に接続させ、挿入された端子部材の一端部を孔の開口に露出させることを特徴とする。
【0023】
孔への端子部材の挿入は、圧入によって行うことが好ましい。
【0024】
電子調光レンズの製造方法の一つの形態として、レンズの外周面から外側に突出する張出部に孔を形成し、孔に端子部材を挿入してから、給電用の導電部材を張出部に重ねて、孔の内部に位置する端子部材の一端部に導電部材を接触させ、導電部材上から保持部材を張出部に取り付けて、導電部材と端子部材を張出部に対して保持させる。
【0025】
この形態の製造方法により製造される電子調光レンズを有する電子調光眼鏡の製造方法では、端子部材と導電部材と保持部材を組み付けた状態の電子調光レンズを眼鏡フレームに取り付け、眼鏡フレーム内に設けた調光制御ユニットに導電部材を接続させる。
【0026】
電子調光レンズの製造方法の別の形態として、レンズの外周面上に開口させて孔を形成し、孔に端子部材を挿入して、端子部材の一端部をレンズの外周面側に露出させる。
【0027】
この形態の製造方法により製造される電子調光レンズを有する電子調光眼鏡の製造方法では、電子調光レンズを保持する眼鏡フレームの環状部分の内周面に沿って、給電用の導電部材を配設し、電子調光レンズを眼鏡フレームに取り付けて、孔の内部に位置する端子部材の一端部に導電部材を接触させる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、調光用の電子素子の電極に接続する端子の信頼性、耐久性、生産性に優れる電子調光レンズ、電子調光眼鏡、及びそれぞれの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】電子調光眼鏡を分解した状態の斜視図である。
【
図2】電子調光眼鏡を構成する電子調光レンズの斜視図である。
【
図3】電子調光レンズに設けた張出部を示す斜視図である。
【
図4】電子調光レンズに端子部材と導電部材を取り付ける工程を示す図である。
【
図5】電子調光レンズへの端子部材と導電部材の取り付けが完了した状態を示す図である。
【
図6】端子部材と導電部材の取り付けが完了したレンズアッセンブリを示す図である。
【
図7】端子部材を含む位置における電子調光レンズの断面構造を示す、電子調光レンズの厚み方向に沿う断面図である。
【
図8】電子調光レンズにおける端子部材の取付構造の第1の形態を示す、電子調光レンズの厚み方向に沿う断面図である。
【
図9】電子調光レンズにおける端子部材の取付構造の第2の形態を示す、電子調光レンズの厚み方向に沿う断面図である。
【
図10】端子部材の取付構造を変更した変形例の電子調光レンズを示す斜視図である。
【
図11】端子部材の取付構造を変更した別の変形例の電子調光レンズを示す斜視図である。
【
図12】
図11の電子調光レンズにおける端子部材とその付近の構造を示す、電子調光レンズの厚み方向に沿う断面図である。
【
図13】
図11の電子調光レンズにおける端子部材とその付近の構造を示す、電子調光レンズの厚み方向と交差する方向に沿う断面図である。
【
図14】
図11の電子調光レンズが取り付けられる眼鏡フレームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本実施形態の電子調光眼鏡10を主要なパーツに分解した状態を示している。電子調光眼鏡10は、左右一対(左眼用と右眼用)の電子調光レンズ11を眼鏡フレーム19に組み付けて構成されている。
【0031】
図2及び
図7に示すように、電子調光レンズ11は、前側の凸面11aと、後側の凹面11bと、凸面11a及び凹面11bの周縁を囲む外周面11cとを有している。電子調光レンズ11は、光学素子であるレンズ20と、調光用の電子素子であるエレクトロクロミック素子(EC素子)21とを組み合わせて構成されており、その詳細は後述する。
【0032】
電子調光眼鏡10の眼鏡フレーム19は、前後方向に分けられるフロントリムパーツ12とリアリムパーツ13を備えている。フロントリムパーツ12が前側に位置し、リアリムパーツ13が後側に位置しており、左右一対の電子調光レンズ11の周縁部をフロントリムパーツ12及びリアリムパーツ13によって前後方向から挟む形で保持する。フロントリムパーツ12とリアリムパーツ13は、複数のビス18を用いて互いに固定される。
【0033】
フロントリムパーツ12は、左右一対の電子調光レンズ11の周縁部分を保持する一対の環状部分12a、12bと、一対の環状部分12a、12bを接続するブリッジ12cと、を有している。リアリムパーツ13も同様に、左右一対の電子調光レンズ11を保持する一対の環状部分13a、13bと、一対の環状部分13a、13bを接続するブリッジ13cと、を有している。
【0034】
電子調光眼鏡10の眼鏡フレーム19はさらに、フロントリムパーツ12の環状部分12aの右側に接続する右テンプル14と、フロントリムパーツ12の環状部分12bの左側に接続する左テンプル15とを有している。右テンプル14のヒンジ部14aが、フロントリムパーツ12に対してヒンジピン14bを中心として回動可能に接続する。左テンプル15のヒンジ部15aが、フロントリムパーツ12に対してヒンジピン15bを中心として回動可能に接続する。フロントリムパーツ12には、右テンプル14の一部と重なる蓋部12dが設けられている。
【0035】
右テンプル14には。蓋部12dによって覆われる収納空間14cが設けられている。収納空間14cの内部に、調光制御部である調光制御ユニット16が収容される。調光制御ユニット16は、電源(電池)と制御部を有しており、各電子調光レンズ11のエレクトロクロミック素子21(
図7)への電力供給(電圧印加)を制御する。
【0036】
電子調光眼鏡10の内部には導電部材17が配されている。導電部材17は、左右の電子調光レンズ11の凸面11aの周縁部分に重ねて配設されて(
図5、
図6参照)、各電子調光レンズ11に取り付けた第1端子部材24及び第2端子部材25(詳細は後述する)と調光制御ユニット16の電源とを電気的に接続する。導電部材17は、可撓性を有する帯状の部材であり、内部のパターン配線を絶縁材からなる外皮(可撓性のあるプラスチックなど)で覆った構造である。具体的には、導電部材17はフレキシブルプリント基板などで構成される。
【0037】
フロントリムパーツ12における左右一対の環状部分12a、12bの上縁寄りの位置に、ブリッジ12c、右テンプル14(ヒンジ部14a)、左テンプル15(ヒンジ部15a)が接続している。このようなフレーム形状に対応して、導電部材17は、フロントリムパーツ12の上縁部分に沿って概ね左右方向に延びる細長形状になっている。より詳しくは、
図6に示すように、導電部材17は、一対の環状部分12a、12bのそれぞれの上縁付近に沿う湾曲形状である左右一対の弧状部17aを、ブリッジ12cに沿う形状の接続部17bで接続している。
【0038】
また、導電部材17には、右側の弧状部17aから延びる延長部17cを有している(
図1、
図6参照)。延長部17cは、右テンプル14の収納空間14cの内部に配設されて、調光制御ユニット16に接続する。
【0039】
導電部材17には、各弧状部17aの両端付近にそれぞれ第1コネクタ部17dと第2コネクタ部17eが一つずつ設けられている。より詳しくは、一方(右眼用の電子調光レンズ11と重なる側)の弧状部17aと延長部17cとの境界付近に第1コネクタ部17dが1つ設けられ、延長部17cとは反対側に位置する導電部材17の先端付近に第1コネクタ部17dが1つ設けられている。また、一方(右眼用の電子調光レンズ11と重なる側)の弧状部17aと接続部17bとの境界付近に第2コネクタ部17eが1つ設けられ、他方(左眼用の電子調光レンズ11と重なる側)の弧状部17aと接続部17bとの境界付近に第2コネクタ部17eが1つ設けられている。
【0040】
各コネクタ部17d、17eには、電子調光レンズ11の凸面11aに対向する後面側に、配線の一部を外部と導通可能に露出させた導通部17fが設けられている(
図4参照)。導電部材17において、延長部17cのうち調光制御ユニット16に接続する部分と、各コネクタ部17d、17eの導通部17f以外の部分は、絶縁性の外皮により覆われている。
【0041】
右テンプル14の外面には、電子調光眼鏡10のユーザーが操作可能な操作部(図示略)が設けられている。操作部を操作すると調光制御ユニット16に信号が入力され、調光制御ユニット16の制御によって、導電部材17を経由して、電子調光レンズ11のエレクトロクロミック素子21への通電制御が行われ、電子調光レンズ11での調光効果が得られる。調光制御ユニット16は、操作部の操作に応じて電子調光レンズ11の調光効果(光透過率)を複数の段階で変化させてもよい。
【0042】
図7に断面視で示すように、電子調光レンズ11は、樹脂製の光学素子であるレンズ20の内部に、調光用の電子素子であるエレクトロクロミック素子21を配して(積層して)構成されている。
図7では省略しているが、凸面11a上などに、所定の機能(反射防止効果、紫外線や赤外線の透過制御、レンズ保護効果など)を有するコート層を形成してもよい。
【0043】
具体的な図示を省略するが、エレクトロクロミック素子21は、樹脂などの基板上に、第1電極層とエレクトロクロミック層(調光層)と第2電極層とを積層して構成されている。エレクトロクロミック層は、電圧の印加による酸化還元反応で可逆的に光物性を変化させるエレクトロクロミック材料を含んでいる。第1電極層と第2電極層がエレクトロクロミック層を挟んで位置し、第1電極層が正極、第2電極層が負極を構成する。
【0044】
エレクトロクロミック素子21のエレクトロクロミック層は、電圧を印加しない通常状態で透明(可視光の透過率が最も高い)状態にあり、電圧印加によってエレクトロクロミック材料に対応した所定の色に着色されて光透過率を低下させる。
【0045】
エレクトロクロミック素子21の第1電極層と第2電極層はそれぞれ、透明且つ導電性を有する材料からなる透明電極層(透明導電膜)である。
図4や
図7に示すように、電子調光レンズ11の周縁部には、第1電極層に積層する金属製のバス電極22と、第2電極層に積層する金属製のバス電極23が配されている。バス電極22は第1電極層と共に正極用の電極を構成し、バス電極23は第2電極層と共に負極用の電極を構成する。バス電極22、23は、エレクトロクロミック素子21の第1電極層と第2電極層に重なる平坦な構造であり、前方または後方から見ると、電子調光レンズ11の周縁付近に沿う湾曲した帯状の形状を有している。
【0046】
一般的に、透明電極は金属電極と比較して抵抗率が高い。そのため、エレクトロクロミック素子21の駆動時に、透明電極層である第1電極層と第2電極層において、給電箇所から遠い部分で駆動電圧が低下して、エレクトロクロミック層の色変化にムラが発生するおそれがある。このような不具合を防ぐために、金属電極であるバス電極22とバス電極23を第1電極層と第2電極層に積層させて設けて、電気的な抵抗値を下げている。
【0047】
各電子調光レンズ11には、バス電極22に接続して電子調光レンズ11の前面(凸面11a)側に露出する第1端子部材24と、バス電極23に接続して電子調光レンズ11の前面(凸面11a)側に露出する第2端子部材25とが取り付けられている。第1端子部材24が正極用の端子部を構成し、第2端子部材25が負極用の端子部を構成する。そして、第1端子部材24が、導電部材17の第1コネクタ部17dの導通部17fに対して接触し、第2端子部材25が、導電部材17の第2コネクタ部17eの導通部17fに対して接触することにより、調光制御ユニット16から導電部材17を経由して各電子調光レンズ11に至る給電用の経路が完成する。第1端子部材24と第2端子部材25に関する電子調光レンズ11の構成を以下に説明する。
【0048】
図2に示すように、各電子調光レンズ11は、外周面11cから外側(外径方向)に突出する第1張出部30と第2張出部31を有する。第1張出部30は、導電部材17の第1コネクタ部17dと重なる位置に設けられ、第2張出部31は、導電部材17の第2コネクタ部17eと重なる位置に設けられている。
【0049】
より詳しくは、右眼用の電子調光レンズ11では、フロントリムパーツ12の環状部分12aが右テンプル14に接続する箇所の近傍に第1張出部30が設けられ、環状部分12aとブリッジ12cが接続する箇所の近傍に第2張出部31が設けられている。左眼用の電子調光レンズ11では、フロントリムパーツ12の環状部分12bが左テンプル15に接続する箇所の近傍に第1張出部30が設けられ、環状部分12bとブリッジ12cが接続する箇所の近傍に第2張出部31が設けられている。つまり、右眼用の電子調光レンズ11と左眼用の電子調光レンズ11では、第1張出部30と第2張出部31が互いに左右略対称に配置されている。
【0050】
図4及び
図7に示すように、各電子調光レンズ11において、バス電極22は第1張出部30の箇所まで延びており、バス電極23は第2張出部31の箇所まで延びている。各バス電極22、23は、各張出部30、31内でエレクトロクロミック素子21と重ならずに単独で存在する部分を有し、各バス電極22、23の当該部分が、各端子部材24、25の接続対象となる。
【0051】
図3に示すように、第1張出部30は、前面部30a、後面部30b、側面部30c、側面部30d、端面部30eを有している。前面部30aは、電子調光レンズ11の凸面11aに連続する面であり、凸面11aと共に電子調光レンズ11の前面を構成している。後面部30bは、凹面11bに連続する面であり、凹面11bと共に電子調光レンズ11の後面を構成している。側面部30cと側面部30dはそれぞれ、外周面11cに連続しており、前後方向に延びて前面部30aと後面部30bを接続する略平行な面である。端面部30eは、第1張出部30の先端に位置しており、側面部30cと側面部30dを滑らかに接続する面である。第1張出部30は、これらの各面30a~30eによって囲まれる箱型の突起である。
【0052】
前面部30aと後面部30bを結ぶ方向を、第1張出部30の厚み方向とする。第1張出部30の厚み方向は、電子調光レンズ11の厚み方向と同義である。側面部30cと側面部30dを結ぶ方向を、第1張出部30の横幅方向とする。また、外周面11cに接続する第1張出部30の基端部と端面部30eを結ぶ方向を、第1張出部30の縦幅方向とする。
【0053】
第1張出部30には、第1端子部材24を取り付けるための収容孔32が形成されている。収容孔32は、前面部30a上に開口する略円形の孔である。換言すれば、前面部30aは、収容孔32が開口する孔形成面である。収容孔32は、第1張出部30の厚み方向で所定の深さで形成されている。所定の深さとは、少なくともバス電極22に達するまでの深さである。より詳しくは、収容孔32を介した第1端子部材24の取付構造について、
図8に示す第1の形態と、
図9に示す第2の形態を選択できる。
【0054】
図8に示すように、第1の形態では、収容孔32の底部に平坦形状のバス電極22が位置するように構成されている。
図9に示すように、第2の形態では、平坦形状のバス電極22を厚み方向に収容孔32が貫通しており、収容孔32の底面がバス電極22よりも後面部30b寄りに位置している。なお、第2の形態では、収容孔32が後面部30bまで貫通しないように設定される。つまり、第1の形態と第2の形態のいずれでも、収容孔32は、前面部30a側のみが開口し、底部が塞がれた有底孔として構成される。
【0055】
図8に示す第1の形態では、収容孔32の底部にバス電極22の前面が露出している。換言すれば、収容孔32の底面をバス電極22が構成している。
図9に示す第2の形態では、収容孔32の内周面に、バス電極22の貫通孔の内縁部分22aが環状に露出している。
【0056】
第1張出部30にはさらに、被係合部である一対の保持溝33が形成されている。保持溝33は、側面部30cと側面部30dに一つずつ形成されており、第1張出部30の縦幅方向に延びる長溝である。一対の保持溝33は、互いの長手方向を略平行としている。
【0057】
第2張出部31は、第1張出部30と同様の構成を有している。第1張出部30と第2張出部31は、外観上の形状などが類似しているため、第2張出部31の詳細構造については、先に説明した第1張出部30と同じく
図3を参照して説明する。
図3中の括弧内の符号が、第2張出部31に適用した場合のものである。
【0058】
第2張出部31は、前面部31aと、後面部31bと、側面部31cと、側面部31dと、端面部31eと、を有している。前面部31aは、電子調光レンズ11の凸面11aに連続する面であり、後面部31bは、凹面11bに連続する面である。側面部31cと側面部31dはそれぞれ、外周面11cに連続しており、前後方向に延びて前面部31aと後面部31bを接続する略平行な面である。端面部31eは、第2張出部31の先端に位置しており、側面部31cと側面部31dを接続する面である。第2張出部31は、これらの各面31a~31eによって囲まれる箱型の突起である。
【0059】
前面部31aと後面部31bを結ぶ方向を、第2張出部31の厚み方向とする。第2張出部31の厚み方向は、電子調光レンズ11の厚み方向と同義である。側面部31cと側面部31dを結ぶ方向を、第2張出部31の横幅方向とする。また、外周面11cに接続する第2張出部31の基端部と端面部31eを結ぶ方向を、第2張出部31の縦幅方向とする。
【0060】
第2張出部31には、第2端子部材25を取り付けるための収容孔34が形成されている。収容孔34は、前面部31a上に開口する略円形の孔である。換言すれば、前面部31aは、収容孔34が開口する孔形成面である。収容孔34は、第2張出部31の厚み方向で所定の深さで形成されている。所定の深さとは、少なくともバス電極23に達するまでの深さである。より詳しくは、収容孔34を介した第2端子部材25の取付構造について、
図8に示す第1の形態と、
図9に示す第2の形態を選択できる。
【0061】
図8に示すように、第1の形態では、収容孔34の底部に平坦形状のバス電極23が位置するように構成されている。
図9に示すように、第2の形態では、平坦形状のバス電極23を厚み方向に収容孔34が貫通しており、収容孔34の底面がバス電極23よりも後面部31b寄りに位置している。なお、第2の形態では、収容孔34が後面部31bまで貫通しないように設定される。つまり、第1の形態と第2の形態のいずれでも、収容孔34は、前面部31a側のみが開口し、底部が塞がれた有底孔として構成される。
【0062】
図8に示す第1の形態では、収容孔34の底部にバス電極23の前面が露出している。換言すれば、収容孔34の底面をバス電極23が構成している。
図9に示す第2の形態では、収容孔34の内周面に、バス電極23の貫通孔の内縁部分23aが環状に露出している。
【0063】
第2張出部31にはさらに、被係合部である一対の保持溝35が形成されている。保持溝35は、側面部31cと側面部31dに一つずつ形成されており、第2張出部31の縦幅方向に延びる長溝である。一対の保持溝35は、互いの長手方向を略平行としている。
【0064】
電子調光レンズ11の製造の一例として、エレクトロクロミック素子21とバス電極22、23を含めて電子調光レンズ11を一通り形成した後で、ドリルなどの穿孔用工具を用いて収容孔32と収容孔34が形成される。保持溝33と保持溝35についても同様に、電子調光レンズ11を一通り形成した後で、切削用の工具を用いて形成される。
【0065】
穿孔用工具が各バス電極22、23に達した段階で穿孔を完了すれば、各バス電極22、23が各収容孔32、34の底面に位置する構造(
図8)になる。穿孔用工具が各バス電極22、23を貫通するまで穿孔作業を行えば、各バス電極22、23の貫通孔の内縁部分22a、23aが各収容孔32、34の内周面に露出する構造(
図9)になる。このような製造方法によれば、各収容孔32、34の底部または内周面に、各バス電極22、23を簡単且つ確実に露出させることができる。
【0066】
第1端子部材24は、第1張出部30の収容孔32に取り付けられる導電性部品である。第2端子部材25は、第2張出部31の収容孔34に取り付けられる導電性部品である。第1端子部材24と第2端子部材25はそれぞれ、少なくとも外面(表面)が電気伝導率の高い金属からなり、対応する収容孔32、34の形状に合うように成形されて、収容孔32、34に取り付ける前の状態で、一定の形状を保つ形状維持性を有している。
【0067】
本実施形態では、第1端子部材24と第2端子部材25はいずれも、ニッケル製のコア部分の外面を金メッキで覆った構成である。外面の材料として電気伝導率の高い金を用い、内部の材料としてニッケルを用いることによって、部品コストを抑えつつ、強度や耐久性や導電性に優れた第1端子部材24と第2端子部材25を得ることができる。
【0068】
第1端子部材24は、略円形(円筒状)の孔である収容孔32に収まる略円柱(円筒)形状であり、それぞれが略円形である前方端面24a及び後方端面24bを両端に有し、前方端面24aと後方端面24bを円筒状の外周面24cが接続している(
図8、
図9参照)。
【0069】
第1端子部材24は、後方端面24b側を先頭にして、前面部30a側から収容孔32内に挿入される。第1端子部材24における外周面24cの外径(直径)は、収容孔32の内径(直径)よりも僅かに大きく、収容孔32への第1端子部材24の挿入は、軽い圧入として行われる。
【0070】
前方端面24aから後方端面24bまでの第1端子部材24の厚みは、収容孔32の深さと略同じに設定されている。従って、後方端面24bが収容孔32の底部に当て付くまで挿入させると、第1端子部材24の一端部である前方端面24aが前面部30aと略面一になる。
【0071】
なお、収容孔32の深さよりも第1端子部材24の厚みを僅かに大きく設定して、第1端子部材24を収容孔32に挿入したときに、前面部30aよりもごく僅かに前方端面24aが突出するように構成してもよい。
【0072】
第2端子部材25は、第1端子部材24と同様の構造を有している。つまり、第2端子部材25は、略円形(円筒状)の孔である収容孔34に収まる略円柱(円筒)形状であり、それぞれが略円形である前方端面25a及び後方端面25bを両端に有し、前方端面25aと後方端面25bを円筒状の外周面25cが接続している(
図8、
図9参照)。
【0073】
第2端子部材25は、後方端面25b側を先頭にして、前面部31a側から収容孔34内に挿入される。第2端子部材25における外周面25cの外径(直径)は、収容孔34の内径(直径)よりも僅かに大きく、収容孔34への第2端子部材25の挿入は、軽い圧入として行われる。
【0074】
前方端面25aから後方端面25bまでの第2端子部材25の厚みは、収容孔34の深さと略同じに設定されている。従って、後方端面25bが収容孔34の底部に当て付くまで挿入させると、第2端子部材25の一端部である前方端面25aが前面部31aと略面一になる。
【0075】
なお、収容孔34の深さよりも第2端子部材25の厚みを僅かに大きく設定して、第2端子部材25を収容孔34に挿入したときに、前面部31aよりもごく僅かに前方端面25aが突出するように構成してもよい。
【0076】
図8に示す第1の形態では、収容孔32に挿入された第1端子部材24は、前方端面24aとは反対側の端部である後方端面24bをバス電極22に対して面接触させる。また、収容孔34に挿入された第2端子部材25は、前方端面25aとは反対側の端部である後方端面25bをバス電極23に対して面接触させる。
【0077】
図9に示す第2の形態では、収容孔32に挿入された第1端子部材24は、後方端面24bを収容孔32の底部に当接させる。そして、バス電極22のうち、収容孔32により貫通された孔の内縁部分22aが、第1端子部材24の外周面24cに対して接触する。また、収容孔34に挿入された第2端子部材25は、後方端面25bを収容孔34の底部に当接させる。そして、バス電極23のうち、収容孔34により貫通された孔の内縁部分23aが、第2端子部材25の外周面25cに対して接触する。
【0078】
第1端子部材24と第2端子部材25はそれぞれ、対応する収容孔32、34に対して圧入されるため、第2の形態では、各端子部材24、25の外周面24c、25cを各バス電極22、23の孔の内縁部分22a、23aに対して、隙間が生じずに確実に接触させることができる。
【0079】
以上のようにして、第1張出部30の収容孔32に第1端子部材24を挿入(圧入)して取り付け、第2張出部31の収容孔34に第2端子部材25を挿入(圧入)して取り付けたら、電子調光レンズ11の凸面11a側に導電部材17を配置する。そして、導電部材17に設けた4箇所の導通部17fが、右眼用の電子調光レンズ11と左眼用の電子調光レンズ11にそれぞれ取り付けた第1端子部材24と第2端子部材25に接触する。
【0080】
より詳しくは、導電部材17における一対の弧状部17aは、右眼用の電子調光レンズ11と左眼用の電子調光レンズ11のそれぞれの凸面11aの上縁付近に沿って配置される形状である。
【0081】
そして、右眼用の電子調光レンズ11と左眼用の電子調光レンズ11のそれぞれの第1張出部30の前面部30a上に、導電部材17の2つの第1コネクタ部17dが重なる。各第1張出部30の前面部30a上には、収容孔32に取り付けた第1端子部材24の前方端面24aが露出しており、各第1コネクタ部17dの導通部17fが前方端面24aに対向して接触する。
【0082】
また、右眼用の電子調光レンズ11と左眼用の電子調光レンズ11のそれぞれの第2張出部31の前面部31a上に、導電部材17の2つの第2コネクタ部17eが重なる。各第2張出部31の前面部31a上には、収容孔34に取り付けた第2端子部材25の前方端面25aが露出しており、各第2コネクタ部17eの導通部17fが前方端面25aに対向して接触する。
【0083】
第1端子部材24と第2端子部材25はいずれも、第1張出部30と第2張出部31に取り付ける前の状態で形状が定まっており、前方端面24a、25aや後方端面24b、25bや外周面24c、25cを、予め高い精度で形成することが可能である。
【0084】
そのため、各端子部材24、25を対応する各収容孔32、34の底部に当て付くまで挿入すれば、それぞれの前方端面24a、25aが各張出部30、31の前面部30a、31a上の適切な位置に露出し、各端子部材24、25に対する複雑で手間のかかる位置調整が不要である。
【0085】
そして、各端子部材24、25を対応する各収容孔32、34に取り付けた後で、各端子部材24、25に対して別途加工を施すことなく、高い面精度を有する前方端面24a、25aを、各コネクタ部17d、17eの導通部17fに確実に接触させることができる。
【0086】
また、
図8に示す第1の形態では、各端子部材24、25の後方端面24b、25bを、バス電極22、23に対して確実且つ高精度に面接触させることができる。
図9に示す第2の形態では、各端子部材24、25の外周面24c、25cを、バス電極22、23の内縁部分22a、23aに対して確実且つ高精度に接触させることができる。
【0087】
第1端子部材24と第2端子部材25の取り付けと、導電部材17の位置合わせが完了したら、続いて、右眼用の電子調光レンズ11と左眼用の電子調光レンズ11のそれぞれの第1張出部30と第2張出部31に対して、保持部材であるクリップ36を取り付ける。
【0088】
図4に示すように、クリップ36は、平坦な上面部36aと、上面部36aの両端から略垂直に延びる一対の脚部36bと、各脚部36bの端部を内側(互いに接近する方向)に屈曲した一対の屈曲部36cと、を有する。一対の屈曲部36cは、上面部36aと略平行に延びている。
【0089】
クリップ36は、可撓性のある材料で形成されており、弾性変形によって一対の脚部36bや一対の屈曲部36cの間隔を変化させることが可能である。クリップ36の材料として、金属や合成樹脂などを使用可能である。
【0090】
本実施形態では、第1張出部30と第2張出部31の形状と寸法が略同じであり、共通構造のクリップ36を用いている。なお、第1張出部30と第2張出部31の形状や寸法が異なる場合には、第1張出部30と第2張出部31のそれぞれに対応する形状及び寸法のクリップが別々に準備される。
【0091】
クリップ36に対して外力を加えない自由状態(初期状態)では、前後方向における上面部36aから各屈曲部36cまでの距離は、第1張出部30の厚み方向における前面部30aから保持溝33までの距離や、第2張出部31の厚み方向における前面部31aから保持溝35までの距離よりも、僅かに小さい。
【0092】
また、クリップ36に対して外力を加えない自由状態(初期状態)では、一対の脚部36bの間隔が、第1張出部30の横幅方向における側面部30cと側面部30dの間隔(第1張出部30の横幅方向の外寸)や、第2張出部31の横幅方向における側面部31cと側面部31dの間隔(第2張出部31の横幅方向の外寸)よりも、僅かに小さい。
【0093】
クリップ36の各屈曲部36cの幅は、第1張出部30の縦幅方向での各保持溝33の長さや、第2張出部31の縦幅方向での各保持溝35の長さと略等しい。
【0094】
第1張出部30に対するクリップ36の取り付け作業を説明する。クリップ36の取り付けに際しては、一対の脚部36bの間隔を拡げて弾性変形させ、一対の屈曲部36cの先端の間隔が側面部30cと側面部30dの間隔よりも広くなるようにする。この状態で、クリップ36を前面部30aから第1張出部30に被せるように、第1張出部30の厚み方向へクリップ36を移動させる。あるいは、第1張出部30の厚み方向で一対の屈曲部36cと一対の保持溝33の位置を合わせた上で、端面部30e側から外周面11c側に向けてスライドさせるように、第1張出部30の縦幅方向へクリップ36を移動させる。
【0095】
前面部30aに重なっている第1コネクタ部17d(導通部17fが露出している側とは反対の前面側)に上面部36aが当て付くと、第1張出部30の厚み方向において、一対の屈曲部36cが一対の保持溝33に対応する位置に達する。すると、クリップ36の弾性変形を解消しようとする力により、一対の脚部36bの間隔が狭まって、一対の屈曲部36cが一対の保持溝33に進入して係合する。
【0096】
上面部36aが前面部30a(前面部30a上の第1コネクタ部17d)に接し、一対の屈曲部36cが一対の保持溝33に係合することによって、第1張出部30の厚み方向でのクリップ36の位置が定まる。そして、一対の屈曲部36cが一対の保持溝33の内面(前方の面)に係合するため、第1張出部30に対して前方へのクリップ36の脱落が規制される。
【0097】
このとき、クリップ36は、上面部36aと各屈曲部36cとの間隔を自由状態よりも僅かに拡大させた状態にあり、上面部36aと各屈曲部36cを互いに接近させようとする復元方向の力が加わる。これにより、第1コネクタ部17dが第1張出部30の前面部30aに押し付けられて、第1コネクタ部17dの導通部17fと第1端子部材24の前方端面24aが安定して接触する。また、第1張出部30の厚み方向でのクリップ36自体の位置も安定する。
【0098】
また、一対の脚部36bが側面部30cと側面部30dを挟むことによって、第1張出部30の横幅方向でのクリップ36の位置が定まる。このとき、クリップ36は、一対の脚部36bの間隔を自由状態よりも僅かに拡大させた状態にあり、一対の脚部36bを互いに接近させようとする復元方向の力が加わる。これにより、第1張出部30の横幅方向でのクリップ36の位置が安定する。
【0099】
また、一対の屈曲部36cの側端部がそれぞれ一対の保持溝33の長手方向の端部に係合することにより、第1張出部30の縦幅方向でのクリップ36の位置が定まる。
【0100】
クリップ36は、以上のように各方向への位置が定まった状態で、第1張出部30に対して密着状態で支持される。その結果、第1コネクタ部17dが第1張出部30の前面部30aに重なった状態で保持され、第1コネクタ部17dの導通部17fと第1端子部材24の前方端面24aが導通状態で接触する。
【0101】
続いて、第2張出部31に対するクリップ36の取り付け作業を説明する。この取り付け作業は、上述した第1張出部30へのクリップ36の取り付け作業と同様である。
【0102】
一対の屈曲部36cの先端の間隔を、側面部31cと側面部31dの間隔よりも広くさせるように弾性変形させながら、クリップ36を第2張出部31に接近させる。接近の方向は、第2張出部31の厚み方向(前面部31aから被せる方向)と、第2張出部31の縦幅方向(端面部30e側からスライドさせる方向)のいずれかである。
【0103】
前面部31aに重なっている第2コネクタ部17e(導通部17fが露出している側とは反対の前面側)に上面部36aが当て付くと、クリップ36が弾性変形を解消しようとする力によって一対の脚部36bの間隔が狭まって、一対の屈曲部36cが一対の保持溝35に進入して係合する。
【0104】
上面部36aが前面部31a(前面部31a上の第2コネクタ部17e)に接し、一対の屈曲部36cが一対の保持溝35に係合することによって、第2張出部31の厚み方向でのクリップ36の位置が定まる。一対の保持溝33への一対の屈曲部36cの係合によって、第2張出部31に対して前方へのクリップ36の脱落が規制されると共に、第2張出部31の縦幅方向でのクリップ36の位置が定まる。また、一対の脚部36bが側面部31cと側面部31dを挟むことによって、第2張出部31の横幅方向でのクリップ36の位置が定まる。
【0105】
このようにして、第2張出部31に対してクリップ36が密着して取り付けられると、第2コネクタ部17eが第2張出部31の前面部31aに重なった状態で保持され、第2コネクタ部17eの導通部17fと第2端子部材25の前方端面25aが導通状態で接触する。
【0106】
各張出部30、31にクリップ36を取り付ける作業としては、クリップ36を弾性変形させて、一対の屈曲部36cを各張出部30、31の各一対の保持溝33、35に係合させるだけであるため、複雑な操作を要さず短時間で行うことができる。
【0107】
また、各張出部30、31の厚み方向、横幅方向、縦幅方向の全てにおいて、クリップ36の位置が確実に定まる構成であるため、各張出部30、31の前面部30a、31aに重ねられる各コネクタ部17d、17eの位置の正確性や安定性が良好なものとなる。
【0108】
例えば、
図4及び
図5に示すように、第1コネクタ部17dと第2コネクタ部17eはいずれも、クリップ36の一対の脚部36bの間隔に沿う略平行な一対の直線部分を両側に有している。この一対の直線部分が一対の脚部36bに挟まれることによって、各コネクタ部17d、17eの位置が定まるようになっている。
【0109】
なお、導電部材17は、延長部17cの一部と導通部17f以外の箇所が絶縁材からなる外皮で覆われており、導電部材17に対してクリップ36が接触する部分では、内部のパターン配線が露出していない。そのため、クリップ36が導電性のある金属材で形成されていても、導電部材17から第1端子部材24及び第2端子部材25への給電には影響が生じない。
【0110】
図5及び
図6は、左眼用の電子調光レンズ11と右眼用の電子調光レンズ11のそれぞれの第1張出部30と第2張出部31に対して、第1端子部材24と第2端子部材25を取り付けると共に、クリップ36を用いて導電部材17を取り付けた状態のレンズアッセンブリを示している。
【0111】
図1に示すように、このレンズアッセンブリを、フロントリムパーツ12とリアリムパーツ13によって前後から挟んで保持する。レンズアッセンブリにおける各張出部30、31と各クリップ36は、フロントリムパーツ12の環状部分12a、12bとリアリムパーツ13の環状部分13a、13bにより覆われる位置にある。また、導電部材17の一対の弧状部17aは、フロントリムパーツ12の環状部分12aと環状部分12bによって前方から覆われ、導電部材17の接続部17bは、フロントリムパーツ12のブリッジ12cによって前方から覆われる。さらに、導電部材17の延長部17cは、フロントリムパーツ12の蓋部12dに沿って配設されて、収納空間14c内で調光制御ユニット16に接続する。
【0112】
従って、レンズアッセンブリを電子調光眼鏡10の眼鏡フレーム19(特にフロントリムパーツ12、リアリムパーツ13、右テンプル14)に組み込んだ状態では、調光制御ユニット16から導電部材17を経て各電子調光レンズ11の第1端子部材24と第2端子部材25に接続する給電構造の全体が、外観には露出せずに眼鏡フレーム19の各部によって覆われた状態になる。
【0113】
図示を省略するが、フロントリムパーツ12の環状部分12a、12bとリアリムパーツ13の環状部分13a、13bの内側には、レンズアッセンブリを保持した状態で、各張出部30、31と各コネクタ部17d、17eを前後から挟み込む挟持部が設けられている。挟持部による挟み込みによって、各コネクタ部17d、17eの各導通部17fと各端子部材24、25の各前方端面24a、25aの接触を維持する力が与えられ、クリップ36による保持に加えてさらに安定した接続状態が得られる。
【0114】
以上の構成の電子調光眼鏡10では、各電子調光レンズ11に形成した収容孔32、34に対して、流動性の無い固体形態の第1端子部材24と第2端子部材25を挿入して取り付けている。これにより、各電子調光レンズ11においてエレクトロクロミック素子21を導電部材17に接続させるための端子部を、簡単な作業で設けることが可能になる。
【0115】
例えば、本実施形態とは異なり、電子調光レンズに設けた孔に対して、銀粒子を含み流動性のある銀ペーストを注入して端子部を形成する場合、周囲への飛散防止などを考慮しながら銀ペーストを微細な孔に注入するので、難度の高い作業になる。また、銀ペーストに流動性がある状態で取り扱う必要があるので、温度管理などが煩雑になり、作業環境の構築に手間やコストがかかる。また、孔への注入後に銀ペーストが硬化するまでの時間を要する。さらに、銀ペーストが硬化した後の端子表面の精度を確保するべく、研磨などの後加工によって端子表面を仕上げる必要がある。
【0116】
これに対し、本実施形態の電子調光レンズ11及び電子調光眼鏡10では、各収容孔32、34に対応する形状を予め有する第1端子部材24及び第2端子部材25を、各収容孔32、34に対して挿入させるだけであるため、銀ペーストで端子部を形成する場合のような作業の煩雑さはなく、挿入後の待ち時間も要さない。
【0117】
第1端子部材24及び第2端子部材25は、各収容孔32、34に対して圧入状態で挿入されるので、挿入後に不用意に脱落するおそれがなく、しかも電子調光レンズ11内のバス電極22、23に対して隙間を生じず確実に導通状態で接触させることができる。
【0118】
また、第1端子部材24及び第2端子部材25を各収容孔32、34の最奥まで挿入すると、前方端面24a、25aが各張出部30、31における前面部30a、31aに露出する。第1端子部材24及び第2端子部材25の外面形状を、挿入前に予め高精度に整えておくことで、各収容孔32、34への挿入後に、前方端面24a、25aなどに対して面精度を整える加工を不要にできる。従って、各収容孔32、34に第1端子部材24及び第2端子部材25を取り付けるだけで、前方端面24a、25aを導電部材17に接続するための端子表面として機能させることができる。
【0119】
また、第1端子部材24及び第2端子部材25には、材料や構造の選択自由度が高いという利点がある。第1端子部材24及び第2端子部材25では、少なくとも、導電部材17の導通部17fに接触する部分(前方端面24a、25a)と、バス電極22、23に接触する部分(
図8に示す第1の形態では後方端面24b、25b、
図9に示す第2の形態では外周面24c、25c)と、これらを接続する部分とが、導電性を有していればよい。
【0120】
そのため、第1端子部材24及び第2端子部材25のうち、一端部を構成する前方端面24a、25aと、他端部を構成する後方端面24b、25bと、両端面を接続する外周面24c、25cという外面部分を導電性の高い材料で形成し、その内側の内部構造は別の材料で形成する、という選択が可能である。
【0121】
本実施形態の第1端子部材24及び第2端子部材25は、このような選択に基づいて構成されており、ニッケル製のコア部分の外面を金メッキで覆った構造としている。この第1端子部材24及び第2端子部材の構造は、銀ペーストで形成した端子部に比べて、劣化(酸化など)のしにくさ、耐久性の向上、といった点で有利である。また、第1端子部材24及び第2端子部材25では、外面のみを金メッキにすることにより、部品コストを抑えると共に、部品強度の確保も実現している。
【0122】
なお、本実施形態の第1端子部材24及び第2端子部材25の材料構成は一例であり、これとは異なる材料や構造によって端子部材を構成する変形例を排除するものではない。
【0123】
第1張出部30及び第2張出部31に対して導電部材17、第1端子部材24及び第2端子部材25を保持させるための保持部材として、クリップ36を用いている。クリップ36は、第1張出部30における前面部30aと一対の側面部30c、30dや、第2張出部31における前面部31aと一対の側面部31c、31dを囲むコ字型の形状を有しており、導電部材17の第1コネクタ部17dと第2コネクタ部17eを高い安定性で保持することができる。
【0124】
また、クリップ36は、弾性変形させて第1張出部30及び第2張出部31に取り付けられ、各張出部30、31の外面上の一対の保持溝33、35に対して一対の屈曲部36cを係合させることで位置が定まるので、複雑な作業手順や煩雑な位置調整を要さずに、簡単に取り付けが可能である。そして、クリップ36は各張出部30、31に対して弾性変形からの復元力を利用した密着状態で取り付けられ、第1コネクタ部17dと第2コネクタ部17eに対して、第1端子部材24の前方端面24aと第2端子部材25の前方端面25aに押し付ける力を付与するので、各コネクタ部17d、17eの各導通部17fと各前方端面24a、25aとを安定して高い精度で接触させることができる。
【0125】
第1端子部材24及び第2端子部材25は各収容孔32、34に対して圧入状態で挿入されているが、さらにクリップ36を取り付けることによって、各収容孔32、34の開口部分が覆われる。その結果、各収容孔32、34からの第1端子部材24及び第2端子部材25の脱落を、クリップ36によって確実に防ぐことができる。
【0126】
また、クリップ36を取り付けることによって、各電子調光レンズ11を眼鏡フレーム19(フロントリムパーツ12やリアリムパーツ13)に組み込む前の段階で、導電部材17、第1端子部材24、第2端子部材25がそれぞれ各電子調光レンズ11に対して適切な位置で保持された状態が維持される。換言すれば、各電子調光レンズ11と導電部材17を組み合わせたレンズアッセンブリ(
図6)が、眼鏡フレーム19への組み込み前に完成する。これにより、分離した関係の電子調光レンズ11と導電部材17を位置合わせして押さえながら眼鏡フレーム19に組み込むという複雑な動作が不要となり、電子調光眼鏡10の組み立て時の作業性が向上する。
【0127】
なお、レンズアッセンブリにおける端子部分(各コネクタ部17d、17eの各導通部17fと各端子部材24、25の各前方端面24a、25a)の接触を維持させる保持力の付与については、3つの形態を選択できる。
【0128】
端子部分への保持力を付与する第1の形態は、クリップ36による保持力と、フロントリムパーツ12及びリアリムパーツ13による挟み込み力とを併用するものである。まず、各電子調光レンズ11にクリップ36を取り付けて導電部材17を保持したレンズアッセンブリの状態(
図6)で、クリップ36が弾性変形から復元しようとする力によって、各張出部30、31の厚み方向で、各コネクタ部17d、17eが各前面部30a、31aに押し付けられる。さらに、フロントリムパーツ12とリアリムパーツ13の間にレンズアッセンブリを取り付ける際に、環状部分12a、12bと環状部分13a、13bの内部に設けた挟持部が、各クリップ36、各コネクタ部17d、17e、各張出部30、31を前後から挟み込んで、各クリップ36上からの押し付け力を付与する。
【0129】
この第1の形態では、クリップ36による保持と、フロントリムパーツ12及びリアリムパーツ13による保持とを併用するので、端子部分の接続の確実性が高いという利点がある。例えば、部品の精度誤差などが原因で、これら2つの保持部分のうちいずれかの保持力が不足する場合でも、他方の保持力によって端子部分の接触を維持できる可能性が高くなる。
【0130】
端子部分への保持力を付与する第2の形態は、クリップ36による保持力を主として用いるというものである。各前面部30a、31aに対して各クリップ36が強い力で密着するように、各クリップ36の形状や寸法関係を設定することにより、クリップ36の保持力のみで、各導通部17fと各前方端面24a、25aの接触を維持させることが可能である。
【0131】
この第2の形態では、フロントリムパーツ12とリアリムパーツ13において、各張出部30、31と各コネクタ部17d、17eを挟み込むための挟持部を要さず、仮に挟持部を設けるとしても厳密な精度管理が不要となる。その結果、眼鏡フレーム19の設計の自由度が向上する。例えば、本実施形態とは異なり、フロントリムパーツ12とリアリムパーツ13のような前後部材に分割しないタイプの眼鏡フレームへの適用も可能になる。
【0132】
また、小型の部品であるクリップ36による導電部材17や各端子部材24、25の保持は、大型の部品であるフロントリムパーツ12やリアリムパーツ13による保持に比べて、各部品の精度誤差の影響を受けにくく、精度管理を行いやすいという利点がある。
【0133】
端子部分への保持力を付与する第3の形態は、フロントリムパーツ12及びリアリムパーツ13による挟み込み力を主として用いるというものである。各クリップ36においては、レンズアッセンブリの状態(
図6)で、導電部材17が位置ずれしない程度の軽い保持を行うが、各導通部17fを各前方端面24a、25aに対して確実に導通状態で接触させるような大きな押し付け力は与えないように設定される。そして、レンズアッセンブリをフロントリムパーツ12及びリアリムパーツ13で前後から挟んだときに、環状部分12a、12bと環状部分13a、13bの内部に設けた挟持部が、各クリップ36、各張出部30、31、各コネクタ部17d、17eに対して所定以上の挟み込み力を与えながら保持して、各導通部17fを各前方端面24a、25aを確実に接触させる。
【0134】
この第3の形態では、各クリップ36において、各導通部17fと各前方端面24a、25aの導通維持という機能を省略させることができる。そのため、第1及び第2の形態に比べて、各張出部30、31に対する各クリップ36の精度や位置的な要件が緩和される。そして、レンズアッセンブリの状態(
図6)で導電部材17の位置が定まっており、導電部材17を別途保持する必要が無いという点では、第1及び第2の形態と同様であるため、眼鏡フレーム19への電子調光レンズ11の組み込みの作業性に優れるという利点は得られる。
【0135】
以上のように、端子部分への保持力を付与する3つの形態には、それぞれに利点がある。本実施形態の電子調光眼鏡10では、第1の形態を適用しているが、第2の形態や第3の形態を採用することも可能である。
【0136】
各収容孔32、34への第1端子部材24及び第2端子部材25の挿入、各張出部30、31へのクリップ36の取り付けは、いずれも接着などの不可逆的な固定手段を必須としない構造のため、分解時の作業性にも優れている。
【0137】
例えば、電子調光眼鏡10の完成状態から、ビス18による固定を外してフロントリムパーツ12及びリアリムパーツ13からレンズアッセンブリを取り外し、レンズアッセンブリからクリップ36を取り外すことによって、電子調光レンズ11から導電部材17を非破壊で取り外すことができる。
【0138】
また、必要に応じて、第1端子部材24と第2端子部材25に対して引き抜き方向(前方)への所定以上の力を加えることで、各収容孔32、34から第1端子部材24や第2端子部材25を取り外すこともできる。
【0139】
従って、電子調光眼鏡10の組み立て時だけでなく、組み立て後のメンテナンスなども行いやすい構造である。
【0140】
なお、組み立て後の分解を前提としない場合には、各収容孔32、34に対して第1端子部材24や第2端子部材25を接着で固定させたり、各張出部30、31に対してクリップ36を接着で固定させたりすることも可能である。
【0141】
図10は、端子部材の取付構造を変更した変形例である電子調光レンズ40を示している。電子調光レンズ40は、前面である凸面40aと、後面である凹面40bと、外周面40cとを有している。
【0142】
電子調光レンズ40を構成する光学素子であるレンズの内部には、調光用の電子素子であるエレクトロクロミック素子(図示略)が配されており、エレクトロクロミック素子の第1電極層に接続する正極用のバス電極41と、エレクトロクロミック素子の第2電極層に接続する負極用のバス電極42が、レンズ周縁の内部に設けられている。電子調光レンズ40を構成するエレクトロクロミック素子は、上述した電子調光レンズ11のエレクトロクロミック素子21と同様の構成及び配置である。
【0143】
上述した電子調光レンズ11とは異なり、電子調光レンズ40は、外周面40cよりも外側に突出する張出部を有していない。そして、外周面40cよりもレンズ中心側である凸面40a上に、収容孔43と収容孔44が開口している。収容孔43はバス電極41に通じる位置に設けられ、収容孔44はバス電極42に通じる位置に設けられている。第1端子部材45が収容孔43の形状に合うように成形され、第2端子部材46が収容孔44の形状に合うように成形される。
【0144】
収容孔43に第1端子部材45が圧入状態で挿入され、挿入された第1端子部材45がバス電極41に接触する。収容孔44に第2端子部材46が圧入状態で挿入され、挿入された第2端子部材46がバス電極42に接触する。この状態で、第1端子部材45と第2端子部材46のそれぞれの前方端面が、凸面40aと略面一になる。あるいは、第1端子部材45と第2端子部材46のそれぞれの前方端面が、凸面40aよりも僅かに前方へ突出する。
【0145】
各収容孔43、44及び各端子部材45、46は、設けられる位置の違いを除いて、上述した電子調光レンズ11の各収容孔32、34及び各端子部材24、25と同様の形状や機能を有している。また、各端子部材45、46は、上述した各端子部材24、25と同様の材料で形成されている。
【0146】
より詳しくは、各バス電極41、42が各収容孔43、44の底面に位置し、各端子部材45、46の後方端面が各バス電極41、42に接触する第1の形態(
図8と同様の構造)や、各収容孔43、44が各バス電極41、42を貫通し、各端子部材45、46の外周面が各バス電極41、42に接触する第2の形態(
図9と同様の構造)として構成される。
【0147】
電子調光レンズ40が取り付けられる眼鏡フレーム(図示略)は、電子調光レンズ40の周縁部を保持する環状部分を有する。眼鏡フレームの環状部分による保持領域は、凸面40aのうち第1端子部材45と第2端子部材46のそれぞれの前方端面の露出部分(各収容孔43、44の開口)を含んでいる。そして、眼鏡フレームの環状部分の内側に配設した導電部材(図示略)の一対のコネクタ部が、第1端子部材45の前方端面と第2端子部材46の前方端面に接触する。これにより、眼鏡フレーム内に設けた調光制御ユニット(図示略)から導電部材を経由して電子調光レンズ40の各端子部材45、46に至る給電用の経路が完成する。
【0148】
以上の電子調光レンズ40のように、外周面40cよりも外側に突出する張出部を有さないレンズ形状にして、凸面40a上に各収容孔43、44を設ける構成を採用してもよい。各収容孔43、44が形成されるレンズ周縁部は、電子調光眼鏡の完成部分で眼鏡フレームの環状部分によって覆われるため、各端子部材45、46を設ける位置として適している。また、第1端子部材45と第2端子部材46は、対応するそれぞれの収容孔43、44に対して圧入状態で挿入され、電子調光レンズ40の完成状態で脱落せずに保持されるため、電子調光レンズ40を眼鏡フレームに取り付ける際の作業性にも優れている。
【0149】
上述した電子調光レンズ11と電子調光レンズ40は、張出部の有無を除けば、各収容孔32、34や各収容孔43、44が前面側に開口しているという点で共通している。
図11から
図13は、端子部材の取付構造を変更した別の変形例である電子調光レンズ50を示している。
図14は、電子調光レンズ50が取り付けられる眼鏡フレーム60を示している。
【0150】
電子調光レンズ50は、レンズ51の内部に、エレクトロクロミック素子52(
図12参照)と、エレクトロクロミック素子52の第1電極層に接続する正極用のバス電極53と、エレクトロクロミック素子52の第2電極層に接続する負極用のバス電極54とを有している。電子調光レンズ50は、
図10の電子調光レンズ40と同様に、外径側への張出部を有さないシンプルな外周形状になっている。
【0151】
電子調光レンズ50では、前面側の凸面50aや後面側の凹面50bではなく、外径側を向く外周面50cに、第1端子部材57を取り付けるための収容孔55と、第2端子部材58を取り付けるための収容孔56が設けられている。各収容孔55、56は、外周面50c上に開口し、電子調光レンズ50の中心側に向けて形成された有底孔である。各収容孔55、56は略円形の孔であり、第1端子部材57と第2端子部材58は略円柱(円筒)形状である。第1端子部材57及び第2端子部材58の構成や材料は、上述した第1端子部材24及び第2端子部材25と同様である。第1端子部材57が収容孔55の形状に合うように成形され、第2端子部材58が収容孔56の形状に合うように成形される。
【0152】
図13に示すように、各バス電極53、54には、電子調光レンズ50の外周面50c側を向く外縁部53a、54aから内径側に入り込むコ字状の形状の凹部53b、54bが設けられている。各収容孔55、56は、各凹部53b、54bと重なって設けられており、各収容孔55、56の底部と各凹部53b、54bの底部の位置が一致する。そして、各凹部53b、54bのコ字状の縁部が、各収容孔55、56の内面(底面、内周面の一部)に露出している。
【0153】
電子調光レンズ50の製造の一例として、各バス電極53、54が各凹部53b、54bを有さない状態から、ドリルなどの穿孔用工具を用いて各収容孔55、56を形成する。各収容孔55、56を形成した結果、各バス電極53、54の一部が除去されて、各凹部53b、54bが形成される。このような製造方法によれば、各収容孔55、56と各凹部53b、54bの位置を簡単に一致させて、各収容孔55、56の内側に各凹部53b、54bの縁部を確実に露出させることができる。
【0154】
第1端子部材57は、内方端面57b側を先頭にして、収容孔55内に挿入される。第1端子部材57における外周面57cの外径(直径)は、収容孔55の内径(直径)よりも僅かに大きく、収容孔55への第1端子部材57の挿入は、軽い圧入として行われる。
【0155】
外方端面57aから内方端面57bまでの第1端子部材57の厚みは、収容孔55の深さと略同じに設定されている。従って、内方端面57bが収容孔55の底部に当て付くまで挿入させると、第1端子部材57の外方端面57aが、電子調光レンズ50の外周面50cと略面一になる。なお、収容孔55の深さよりも第1端子部材57の厚みを僅かに大きく設定して、第1端子部材57を収容孔55に挿入したときに、外周面50cからごく僅かに外方端面57aが突出するように構成してもよい。
【0156】
第1端子部材57を収容孔55に挿入させると、第1端子部材57の一部がバス電極53の凹部53bに進入して嵌合し、内方端面57bの一部と外周面57cの一部(第1端子部材57のうち凹部53bへの進入部分)が、凹部53bの内縁部分に対して接触する。これにより、第1端子部材57とバス電極53が導通する状態になる。収容孔55に対して第1端子部材57が圧入されるので、第1端子部材57とバス電極53の間に隙間が生じず確実に導通させることができる。
【0157】
第2端子部材58は、内方端面58b側を先頭にして、収容孔56内に挿入される。第2端子部材58における外周面58cの外径(直径)は、収容孔56の内径(直径)よりも僅かに大きく、収容孔56への第2端子部材58の挿入は、軽い圧入として行われる。
【0158】
外方端面58aから内方端面58bまでの第2端子部材58の厚みは、収容孔56の深さと略同じに設定されている。従って、内方端面58bが収容孔56の底部に当て付くまで挿入させると、第2端子部材58の外方端面58aが、電子調光レンズ50の外周面50cと略面一になる。なお、収容孔56の深さよりも第2端子部材58の厚みを僅かに大きく設定して、第2端子部材58を収容孔56に挿入したときに、外周面50cからごく僅かに外方端面58aが突出するように構成してもよい。
【0159】
第2端子部材58を収容孔56に挿入させると、第2端子部材58の一部がバス電極54の凹部54bに進入して嵌合し、内方端面58bの一部と外周面58cの一部(第2端子部材58のうち凹部54bへの進入部分)が、凹部54bの内縁部分に対して接触する。これにより、第2端子部材58とバス電極54が導通する状態になる。収容孔56に対して第2端子部材58が圧入されるので、第2端子部材58とバス電極54の間に隙間が生じず確実に導通させることができる。
【0160】
なお、各バス電極53、54に凹部53b、54bを設けずに、各収容孔55、56の底部に各バス電極53、54の外縁部53a、54aが位置する構造であっても、各端子部材57、58(内方端面57b、58b)と各バス電極53、54を接触させることが可能である。しかし、この構成の場合、接触面積が外縁部53a、54aに沿う短い線状の領域に限られる点と、外縁部53a、54aに対する各端子部材57、58の位置精度の管理が難しいという点が課題になる。これに対し、各凹部53b、54bに対して各端子部材57、58を進入させる構造によれば、このような課題を解決して、各バス電極53、54と各端子部材57、58を安定して接触させることができる。
【0161】
第1端子部材57及び第2端子部材58は、各収容孔55、56に対して圧入状態で挿入されるので、挿入後に不用意に脱落するおそれがなく、また電子調光レンズ50内のバス電極53、54に対して確実に導通状態で接触させることができる。そして、上述した電子調光レンズ11、40と同様に、第1端子部材57及び第2端子部材58による端子構造は、銀ペーストを注入して端子部を形成する既存の端子構造に対する様々な利点を有している。
【0162】
左眼用の電子調光レンズ50と右眼用の電子調光レンズ50を、
図14に示す眼鏡フレーム60に取り付けて、電子調光眼鏡が構成される。
【0163】
眼鏡フレーム60は、左右一対の環状部分61a、61bを有するリムパーツ61と、リムパーツ61の左右に回動可能に取り付けられる左テンプル62及び右テンプル63とを有している。上述した眼鏡フレーム19(
図1)とは異なり、眼鏡フレーム60では、リムパーツ61を前後に分割しない一体構造としている。そして、環状部分61a、61bの内周側に、各電子調光レンズ50の周縁部を嵌め込んで保持するレンズ保持部61cが形成されている。なお、
図13では左眼用の環状部分61aの内周構造を示しているが、右眼用の環状部分61bの内周側にも同様にレンズ保持部61cが形成されている。
【0164】
眼鏡フレーム60の左テンプル62の内部には、調光制御ユニット64が設けられている。電子調光レンズ50に取り付けた第1端子部材57及び第2端子部材58と調光制御ユニット64の電源とを電気的に接続する導電部材65が、眼鏡フレーム60の内部に配設されている。導電部材65は、フレキシブルプリント基板などで構成される。
【0165】
導電部材65は、リムパーツ61の環状部分61a、61bに沿って延びており、レンズ保持部61cの内周面上に第1コネクタ部65aと第2コネクタ部65bを露出させている。
図13では環状部分61aにおける各コネクタ部65a、65bを示しているが、環状部分61bにも同様の各コネクタ部65a、65bが設けられる。
【0166】
なお、リムパーツ61への導電部材65の配設構造は、以下の2つの形態のいずれであってもよい。第1の形態は、各環状部分61a、61bの内部に埋め込む形で導電部材65を配設(埋設)した上で、リムパーツ61の内周側の開口を通して各コネクタ部65a、65bのみが露出する構造である。第2の形態は、各環状部分61a、61bの内周面上に沿って導電部材65を配設した上で、導電部材65の絶縁性の外皮の一部を除去した部分として各コネクタ部65a、65bを露出させる構造である。
【0167】
左眼用の電子調光レンズ50と右眼用の電子調光レンズ50をそれぞれリムパーツ61の環状部分61a、61bに取り付けると、各電子調光レンズ50の第1端子部材57の外方端面57aが第1コネクタ部65aに接触し、第2端子部材58の外方端面58aが第2コネクタ部65bに接触する。
【0168】
各電子調光レンズ50は、眼鏡フレーム60のレンズ保持部61cに対してガタつきを生じずに嵌合する輪郭形状となるように玉形加工されている。そのため、レンズ保持部61cに対して各電子調光レンズ50を取り付けると、各端子部材57、58の外方端面57a、58aが、対応する各コネクタ部65a、65bに確実に接触する。そして、調光制御ユニット64から導電部材65を経由して電子調光レンズ50の各端子部材57、58に至る給電用の経路が完成する。
【0169】
電子調光レンズ50では、第1端子部材57及び第2端子部材58が外周面50c上に露出している。そして、外周面50cが眼鏡フレーム60のレンズ保持部61cに嵌合する構造を利用して、各端子部材57、58を導電部材65の第1コネクタ部65a及び第2コネクタ部65bに接触させている。この構成により、電子調光レンズ50の厚み方向で挟み込む構造を用いずに、第1端子部材57及び第2端子部材58と導電部材65との接触を行わせることができ、リムパーツ61が前後に分離しないシンプルな構造の眼鏡フレーム60の採用が可能になっている。
【0170】
また、導電部材65を眼鏡フレーム60側に支持した状態で電子調光レンズ50を取り付けるため、上述したクリップ36のような保持部材を用いずに、各端子部材57、58を導電部材65に接続させることができる。そして、各端子部材57、58はそれぞれが収容孔55、56に対して圧入状態で挿入されるため、保持部材を用いなくても電子調光レンズ50から脱落しない。
【0171】
以上、図示実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0172】
例えば、図示の電子調光レンズ11、40では、前面(凸面11a、40a)側に開口する収容孔32、34や収容孔43、44を設けているが、後面(凹面11b、40b)側に開口する収容孔に対して、第1端子部材24、45や第2端子部材25、46を挿入させる構成を採用してもよい。
【0173】
あるいは、第1端子部材24、45と第2端子部材25、46の一方を収容する孔が電子調光レンズ11、40の前面側に開口し、第1端子部材24、45と第2端子部材25、46の他方を収容する孔が電子調光レンズ11、40の後面側に開口する構成を採用することも可能である。
【0174】
つまり、電子調光レンズの前後方向に開口する孔を設ける場合には、前面と後面の少なくとも一方に孔が開口する構成であればよく、導電部材や眼鏡フレームなどの周辺構造に応じて、孔の開口方向は適宜選択可能である。
【0175】
また、導電部材の配置も変更が可能である。上述した電子調光レンズ11では、前面(凸面11a)側に第1端子部材24及び第2端子部材25の前方端面24a、25aが露出し、導電部材17の一対の弧状部17a、第1コネクタ部17d及び第2コネクタ部17eが全て電子調光レンズ11の前面(凸面11a)側に配置されている。この構成は、導電部材17の形状を、電子調光レンズ11の片面だけに沿うシンプルなものにできるという利点がある。しかし、電子調光レンズ11の前面(凸面11a)と後面(凹面11b)の一方の側に第1コネクタ部17d及び第2コネクタ部17eが重なり、他方の側に弧状部17aが重なるような導電部材17の配置を採用することも可能である。
【0176】
一般的に電子調光レンズでは、レンズの拡がりに沿った平坦な形状の電極を用いる場合が多い。実施形態及び変形例として図示した電極と端子部材の接続構造は、このような電子調光レンズの条件に適したものである。
【0177】
例えば、電子調光レンズ11における各収容孔32、34のように、レンズの厚み方向に向けて形成される孔の場合、レンズの厚み方向に厚みを有する平坦な形状のバス電極22、23に対して、垂直もしくは垂直に近い交差角で孔が形成される。そのため、各端子部材24、25の後方端面24b、25bがバス電極22、23の前面側に対向して接触する構造(
図8)や、各端子部材24、25の外周面24c、25cがバス電極22、23の貫通孔の内縁部分22a、23aに囲まれて接触する構造(
図9)が適している。
【0178】
電子調光レンズ50における各収容孔55、56のように、レンズの径方向(レンズの拡がり方向)に向けて形成される孔の場合、レンズの厚み方向に厚みを有する平坦な形状のバス電極53、54に対して、平行もしくは平行に近い交差角で孔が形成される。そのため、各端子部材57、58の内方端面57b、58b及び外周面57c、57cが、各バス電極53、54の外縁部分に設けた凹部53bに入り込んで接触する構造(
図13)が適している。
【0179】
しかしながら、電子調光レンズの電極の配置や形状によっては、端子部材と電極の接続構造が図示したものとは異なる可能性があり、このような別の接続構造を除外するものではない。
【0180】
例えば、バス電極の一部に、レンズの厚み方向へ延びる屈曲部分が設けられていてもよい。この場合、電子調光レンズの前面や後面に開口する孔から挿入される端子部材は、
図13のような構造(端子部材がバス電極の凹部に進入する構造)でバス電極の屈曲部分に接続させることができる。また、電子調光レンズの外周面に開口する孔から挿入される端子部材は、
図8のような構造(端子部材の端面がバス電極に面で対向する構造)や、
図9のような構造(端子部材の外周面がバス電極の貫通孔の内縁部分に囲まれる構造)で、バス電極の屈曲部分に接続させることができる。
【0181】
図示の電子調光レンズ11、40、50はいずれも、各端子部材の接続対象が、金属電極であるバス電極であるが、バス電極を備えないタイプの電子調光レンズに適用することも可能である。この場合、各端子部材は、エレクトロクロミック素子を構成する第1電極層(透明電極層)と第2電極層(透明電極層)に対して接続される。例えば、エレクトロクロミック素子の周縁部に、前後から見て、第1電極層が単独で存在する第1の領域と、第2電極層が単独で存在する第2の領域とを設ける。そして、第1の領域に通じる孔と第2の領域に通じる孔を個別に形成することで、正極用の端子部材が第1電極層のみに接続し、負極用の端子部材が第2電極層のみに接続する構造を実現できる。この場合、それぞれの孔は、必要に応じてエレクトロクロミック素子を構成する基板を貫通させて形成される。
【0182】
図示の電子調光レンズ11では、レンズ20の内部(厚み方向の途中)にエレクトロクロミック素子21を配して電子調光レンズ11を構成しているが、レンズ20外面上にエレクトロクロミック素子21を積層したタイプに適用することも可能である。例えば、エレクトロクロミック素子21を、凸面11aに対応した形状にプレフォーミングし、凸面11a上にエレクトロクロミック素子21を重ねてレンズ20に貼り合わせて、電子調光レンズ11を構成してもよい。この構成で、端子部材を挿入するための孔を前面側に開口させると、エレクトロクロミック素子21を構成する基板に対して孔が形成され、レンズ20の部分には孔が形成されない場合もある。
【0183】
つまり、光学素子であるレンズのみに端子部材の挿入用の孔を形成する構成と、調光用の電子素子のみに端子部材の挿入用の孔を形成する構成と、レンズ及び電子素子の両方に亘って端子部材の挿入用の孔を形成する構成が存在する。そして、端子部材が接続する電極の種類や電極の配置などの条件に応じて、これらの構成が適宜選択される。
【0184】
図示の電子調光レンズ11では、第1端子部材24と第2端子部材25を各収容孔32、34に挿入した状態で、前方端面24a、25aが前面部30a、31aと略面一になる。あるいは、前方端面24a、25aが前面部30a、31aよりも僅かに突出するものとしている。これらの構成によれば、導電部材17の第1コネクタ部17dと第2コネクタ部17eを第1張出部30と第2張出部31に重ねたときに、各導通部17fを各前方端面24a、25aに対して確実に接触させることができる。
【0185】
図示の電子調光レンズ50では、第1端子部材57と第2端子部材58を各収容孔55、56に挿入した状態で、外方端面57a、58aが外周面50cと略面一になる。あるいは、外方端面57a、58aが外周面50cよりも僅かに突出するものとしている。これらの構成によれば、電子調光レンズ50を眼鏡フレーム60のレンズ保持部61cに取り付けたときに、各コネクタ部65a、65bを各外方端面57a、58aに対して確実に接触させることができる。
【0186】
しかし、前方端面24a、25aが、前面部30a、31aよりも各収容孔32、34の内部に入り込んだ位置に配されるという変形例や、外方端面57a、58aが、外周面50cよりも各収容孔55、56の内部に入り込んだ位置に配されるという変形例を排除するものではない。
【0187】
例えば、導電部材17において、各導通部17fが第1コネクタ部17dと第2コネクタ部17eの基準となる面から突出する構造にすることで、各導通部17fを各収容孔32、34内に入り込ませて、各前方端面24a、25aに接触させることができる。
【0188】
また、導電部材65において、第1コネクタ部65aと第2コネクタ部65bを、各収容孔55、56の開口径に収まる寸法の突起形状にしてレンズ保持部61cの内周面から突出させることで、各コネクタ部65a、65bを各収容孔55、56内に入り込ませて、各外方端面57a、58aに接触させることができる。
【0189】
図示実施形態では、各端子部材(24、25、45、46、57、58)が、対応する各収容孔(32、34、43、44、55、56)に対して圧入状態で挿入される(挿入を圧入によって行う)。これにより上述の利点が得られるが、圧入ではない挿入によって端子部材を収容孔の内部に配置することも可能である。例えば、収容孔に挿入した端子部材を接着剤で固定させる場合や、収容孔に挿入した端子部材をクリップ36のような保持部材を用いて保持する場合には、収容孔への挿入の際に圧入させなくても成立する。あるいは、端子部材の外周面と収容孔の内周面に、ねじのような螺合形状や、セレーションのような係合形状や、挿入方向への移動を許すが離脱方向への移動を規制する抜け止め形状などを設けて、螺合や係合や抜け止めを伴う形態の挿入にさせることも可能である。つまり、本発明は、収容孔の形状に合うように予め成形された端子部材を、圧入を伴うか否かを問わず収容孔の内部に配置して、調光用電子素子のための端子として機能させる構成や製造方法であればよい。
【0190】
図示実施形態では、電子調光レンズを構成する電子素子としてエレクトロクロミック素子を適用しているが、本発明は、エレクトロクロミック素子以外の電子素子を有する電子調光レンズ及び電子調光眼鏡にも適用が可能である。例えば、電気泳動素子や液晶素子などは、電気エネルギーの供給によって光物性を変化させる点でエレクトロクロミック素子と共通している。従って、電気泳動素子や液晶素子を電子素子として用いる電子調光レンズの端子構造において上述した技術を適用することで、同様の効果が得られる。なお、本発明における「調光」とは、このような様々な電子素子が光学素子に及ぼす光学的な効果全般を意味しており、狭義の光透過性(光透過率)や色の変更に限定されるものではない。
【0191】
図示実施形態では、光学素子であるレンズを樹脂製としたが、ガラス製のレンズに適用しても良い。
【符号の説明】
【0192】
10 :電子調光眼鏡
11 :電子調光レンズ
11a :凸面(電子調光レンズの外面、前面)
11b :凹面(電子調光レンズの外面、後面)
11c :外周面(電子調光レンズの外面)
12 :フロントリムパーツ
13 :リアリムパーツ
14 :右テンプル
15 :左テンプル
16 :調光制御ユニット(調光制御部)
17 :導電部材
17a :弧状部
17b :接続部
17c :延長部
17d :第1コネクタ部
17e :第2コネクタ部
17f :導通部
19 :眼鏡フレーム
20 :レンズ
21 :エレクトロクロミック素子(調光用の電子素子)
22 :バス電極(正極用の電極)
23 :バス電極(負極用の電極)
24 :第1端子部材(端子部材)
24a :前方端面(端子部材の一端部)
24b :後方端面(端子部材の反対側の端部)
24c :外周面
25 :第2端子部材(端子部材)
25a :前方端面(端子部材の一端部)
25b :後方端面(端子部材の反対側の端部)
25c :外周面
30 :第1張出部(張出部)
30a :前面部(孔形成面)
30b :後面部
30c :側面部(側面)
30d :側面部(側面)
30e :端面部
31 :第2張出部(張出部)
31a :前面部(孔形成面)
31b :後面部
31c :側面部(側面)
31d :側面部(側面)
31e :端面部
32 :収容孔(孔)
33 :保持溝(被係合部)
34 :収容孔(孔)
35 :保持溝(被係合部)
36 :クリップ(保持部材)
36a :上面部
36b :脚部
36c :屈曲部
40 :電子調光レンズ
40a :凸面(電子調光レンズの外面、前面)
40b :凹面(電子調光レンズの外面、後面)
40c :外周面(電子調光レンズの外面)
41 :バス電極(正極用の電極)
42 :バス電極(負極用の電極)
43 :収容孔(孔)
44 :収容孔(孔)
45 :第1端子部材(端子部材)
46 :第2端子部材(端子部材)
50 :電子調光レンズ
50a :凸面(電子調光レンズの外面、前面)
50b :凹面(電子調光レンズの外面、後面)
50c :外周面(電子調光レンズの外面)
51 :レンズ
52 :エレクトロクロミック素子(調光用の電子素子)
53 :バス電極(正極用の電極)
53a :バス電極の外縁部
53b :凹部
54 :バス電極(負極用の電極)
54a :バス電極の外縁部
54b :凹部
55 :収容孔(孔)
56 :収容孔(孔)
57 :第1端子部材(端子部材)
57a :外方端面(端子部材の一端部)
57b :内方端面
57c :外周面
58 :第2端子部材(端子部材)
58a :外方端面(端子部材の一端部)
58b :内方端面
58c :外周面
60 :眼鏡フレーム
61 :リムパーツ
62 :左テンプル
63 :右テンプル
64 :調光制御ユニット(調光制御部)
65 :導電部材
65a :第1コネクタ部
65b :第2コネクタ部