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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059108
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】車両充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20230419BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230419BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230419BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230419BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20230419BHJP
   B60L 53/51 20190101ALI20230419BHJP
   B60L 53/67 20190101ALI20230419BHJP
   B60L 53/63 20190101ALI20230419BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J7/35 K
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J3/14
B60L53/51
B60L53/67
B60L53/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169033
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】田原 万里花
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G066KA11
5G066KD01
5G503AA06
5G503BA04
5G503BB01
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC11
5H125AC24
5H125BE01
5H125CC06
5H125DD02
5H125EE27
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】 商用電力に加えて太陽光発電電力の余剰分も車両充電にスムーズに振り分けできる車両充電システムを提供する。
【解決手段】 充電制御部は商用電力及び太陽光発電電力の余剰分の充電器への供給を制御する充電制御親機2と、充電器毎に設置されて、接続先の充電器が車両へ供給する電流を制御する複数の充電制御子機3とを有し、充電制御親機2は太陽光発電電力の余剰電力を監視する第2計測部22と、余剰電力が発生したら各充電制御子機3に余剰電力情報を一斉通知する通信部25と、各充電器4へ供給する電流を管理する親機CPU26とを備え、余剰電力が無い状態で車両充電中に新規車両5が充電器4に接続されたら、既に充電中の車両5の充電電流を一定量削減し、削減した電流を新規車両5に供給させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を充電するための複数の充電器と、前記充電器の充電電流を制御する充電制御部とを有し、商用電力及び太陽光発電電力により車両充電を実施する車両充電システムであって、
前記太陽光発電電力は、前記充電器とは異なる負荷に供給されており、その余剰電力が車両充電に提供され、
前記充電制御部は、商用電力及び太陽光発電電力の余剰分の前記充電器への供給を制御する充電制御親機と、
前記充電器毎に設置されて、接続先の前記充電器が車両へ供給する電流を制御する複数の充電制御子機とを有し、
前記充電制御親機は、太陽光発電電力の前記余剰電力を監視する余剰電力監視部と、
前記余剰電力が発生したら、各充電制御子機に余剰電力情報を一斉通知する通知部と、
各充電器へ供給する電流を管理する上限値管理部とを備え、
前記余剰電力が無い状態で車両充電中に新規車両が前記充電器に接続されたら、既に充電中の車両の充電電流を一定量削減し、削減した電流を前記新規車両に供給させることを特徴とする車両充電システム。
【請求項2】
前記充電制御子機は、前記充電制御親機から前記余剰電力情報の通知を受けたら、充電開始時に設定された必要充電量である閾値に対する充電量、及び前記余剰電力情報を基に、所定の演算により充電電流の増加分を算出し、電流増加制御を実施する子機電流制御部を有することを特徴とする請求項1記載の車両充電システム。
【請求項3】
前記充電制御親機は、充電する車両の蓄電池残量情報及び電費情報を車両から入手して、所定の距離の走行を可能とする電力量を算出し、算出した前記電力量に達するまで必要な充電量を前記閾値とする閾値算出部を有すると共に、
前記上限値管理部は、受電電力のデマンド値が設定された上限値を超えないよう管理し、
前記充電制御親機は、前記閾値に達していない車両の充電が、前記閾値に達した車両の充電より優先されるよう車両の優先順位を設定し、且つ受電電力が前記上限値を超えないよう前記充電器へ供給する電流を制御することを特徴とする請求項2記載の車両充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同時に複数の車両の充電が可能な車両充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle )等の蓄電池を搭載した複数の車両の充電を行うことができる車両充電システムがある。
例えば、特許文献1では、電力供給事業者との契約電力を超えないように電力を管理する一方で、利用者の利便性を図るために、蓄電容量が大きな車両に対しては比較的大きな電流での充電を実施して、充電時間が極端に長くなるような事が無いよう制御した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-162555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両充電システムは、車両の電池容量に合わせて優先順位が設定されるため、多くの充電電力を必要とする車両ほど優先順位を高く設定して大きな電流で充電でき、複数の車両の充電を同時に行う場合に有効であり、効率の良い充電を実施できた。
【0005】
しかしながら、後から充電を開始する車両に対しても、先に充電が開始されている車両と同一条件で充電が行われたため、満充電に至るまでの充電時間が長くなる場合があった。この充電量を検討すると、例えば蓄電池容量の20%程度の充電が成されていれば、自宅に帰る等の一定の距離の走行が可能であるため、走行に支障をきたすとは考え難い。そのため、満充電に至るまでの時間が長くなっても所定の距離の走行を可能とする充電量までの充電時間を短くできれば、利用者にとって利便性が良い。
【0006】
一方で、太陽光発電設備を備えた充電スタンドの事業者は、これまで売電していた太陽光発電電力の余剰分を車両充電に回したいとの要望がある。
しかしながら、複数の電動車両の蓄電池を同時に充電する車両充電システムに太陽光発電電力の余剰分を供給する場合、無駄の無い供給は難しかった。その原因は、複数の蓄電池(車両)へ充電電力を割り振る制御は、車両との相互通信を実施して行う必要があり、制御に時間が掛かる点にあった。制御に時間が掛かることで、変動し易い太陽光発電電力を良好に車両に供給することが難しかった。また、太陽光発電電力の余剰分を優先する場合、太陽光発電電力に余剰分が無い状態で新たな車両が追加されたら、直ぐに充電が開始されないことが考えられた。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、商用電力に加えて太陽光発電電力の余剰分が発生したら車両充電に優先利用し、受電する商用電力の負担を軽減できる車両充電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、車両を充電するための複数の充電器と、充電器の充電電流を制御する充電制御部とを有し、商用電力及び太陽光発電電力により車両充電を実施する車両充電システムであって、太陽光発電電力は、充電器とは異なる負荷に供給されており、その余剰電力が車両充電に提供され、充電制御部は、商用電力及び太陽光発電電力の余剰分の充電器への供給を制御する充電制御親機と、充電器毎に設置されて、接続先の充電器が車両へ供給する電流を制御する複数の充電制御子機とを有し、充電制御親機は、太陽光発電電力の余剰電力を監視する余剰電力監視部と、余剰電力が発生したら、各充電制御子機に余剰電力情報を一斉通知する通知部と、各充電器へ供給する電流を管理する上限値管理部とを備え、余剰電力が無い状態で車両充電中に新規車両が充電器に接続されたら、既に充電中の車両の充電電流を一定量削減し、削減した電流を新規車両に供給させることを特徴とする。
この構成によれば、太陽光発電電力の余剰分を車両充電に振り向けるため、太陽光発電電力を有効活用できる。そして、太陽光発電電力の余剰分が無いときに新たな充電車両が発生したら、充電中の車両への電流を減らして新規車両に振り分けるため、商用電力を増加させること無く充電を開始でき、電力料金を抑制できる。また、新規車両は速やかに充電が開始されるため、新規充電者は不満を抱くことが無い。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、充電制御子機は、充電制御親機から余剰電力情報の通知を受けたら、充電開始時に設定された必要充電量である閾値に対する充電量、及び余剰電力情報を基に、所定の演算により充電電流の増加分を算出し、電流増加制御を実施する子機電流制御部を有することを特徴とする。
この構成によれば、太陽光発電の余剰分の個々の車両への分配は、充電開始時に設定された閾値情報を基に各充電制御子機で決定されるため、スムーズな充電制御を実施でき、効率の良い充電を実施できる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の構成において、充電制御親機は、充電する車両の蓄電池残量情報及び電費情報を車両から入手して、所定の距離の走行を可能とする電力量を算出し、算出した電力量に達するまで必要な充電量を閾値とする閾値算出部を有すると共に、上限値管理部は、受電電力のデマンド値が設定された上限値を超えないよう管理し、充電制御親機は、閾値に達していない車両の充電が、閾値に達した車両の充電より優先されるよう車両の優先順位を設定し、且つ受電電力が上限値を超えないよう充電器へ供給する電流を制御することを特徴とする。
この構成によれば、商用電力による車両充電は、車種や車両の蓄電池残量に依らず、所定の距離を走行可能とする電力量を基準に充電量の閾値を設定し、この閾値に達していない車両の充電が閾値に達した車両の充電より優先されるため、閾値に達するまでの時間を短くでき、利用者にとって利便性が良い。また、充電量が閾値に達した車両の走行距離は車種に依らずほぼ等しくできるため、利用者に対して平等に対応できる。そして、デマンド制御を併せて実施するため、電気料金の上昇を防止できる。
尚、電費とは電力消費率であり、電力1kWh当たりの走行キロ数で表される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太太陽光発電電力の余剰分を車両充電に振り向けるため、太陽光発電電力を有効活用できる。そして、太陽光発電電力の余剰分が無いときに新たな充電車両が発生したら、充電中の車両への電流を減らして新規車両に振り分けるため、商用電力を増加させること無く充電を開始でき、電力料金を抑制できる。また、新規車両は速やかに充電が開始されるため、新規充電者は不満を抱くことが無い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る車両充電システムの一例を示す構成図である。
図2】閾値設定の流れを示すフローチャートである。
図3】優先順位を割り振る流れを示すフローチャートである。
図4】充電制御の流れを示すフローチャートである。
図5】太陽光発電電力を車両充電に使用する際の充電制御親機の制御の流れを示すフローチャートである。
図6】太陽光発電電力を車両充電に使用する際の充電制御子機の制御の流れを示すフローチャートである。
図7】太陽光発電電力に余剰分が無い状態で新規充電車両が発生した場合の充電制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る車両充電システムの一例を示すブロック図である。図1において、2は充電制御親機(以下、単に「親機」と称する。)、3は充電制御子機(以下、単に「子機」と称する。)であり、双方で充電制御部を構成している。
子機3は車両5が接続される充電器4毎に設置され、子機3と充電器4とは信号線L1で接続され、親機2と子機3とは信号線L2を介して接続され、互いに通信が成される。
【0014】
一方、負荷9や充電器4に電力を供給する受電設備7には、商用電力Pに加えて太陽光発電設備8が接続され、高電圧で供給される商用電力Pは受電設備7で低電圧に変換されて、負荷9及び充電器4にそれぞれ電力ケーブルL3,L4を介して供給される。
尚、太陽光発電設備8が発電した電力は、主に負荷9に供給され、発電電力に余剰分が発生したら、商用電力Pの系統に逆潮流可能に形成されているが、後述する制御により逆潮流させる分を充電器4に供給する制御を実施するよう構成されている。また、親機2と各子機3とは信号線L2で接続されているが、信号線L2を無くして互いに無線通信させても良い。
【0015】
親機2は、商用電力Pの引き込み線L5に設置されたスマートメータ10から受電電力情報を入手する第1計測部21、太陽光発電電力の余剰分を商用電力系統への逆潮流から検出する第2計測部22、デマンド値、上限値(最大デマンド値より例えば10%小さい電力値であり、最大デマンド値を削減して契約料金を削減するために需要家が設定する数値)、閾値及び演算式等を記憶する記憶部23、各子機3と通信する通信部25(第1通信部25a、第2通信部25b・・・第n通信部25n)、充電器4の充電電流を決定すると共に親機2の各部を制御する親機CPU26等を備えている。
尚、閾値は、所定距離の走行を可能とするのに必要な充電量であり、後述するよう算出される。
【0016】
通信部25は、子機3と通信する機能に加えて、子機3を介して充電器4に接続された車両5と通信する機能を有し、親機CPU26の制御により、車両5から車両5に搭載されている蓄電池の残量(kWh)、電費(電力1kWh当たりの走行キロ数)の情報を入手可能としている。
この通信部25の機能により、車両5から取得した蓄電池残量情報、電費情報を基に、親機CPU26は閾値を算出する。
【0017】
子機3は、親機2と通信する子機第1通信部31、充電器4と通信する子機第2通信部32、充電電流の増加分を演算する演算式等を記憶する子機記憶部33、接続された充電器4を制御すると共に子機3を制御する子機CPU34等を備えている。
子機CPU34は、親機2から通知された太陽光発電電力の余剰電力情報を受けて、充電器4の充電電流を制御する。また、充電器4が車両に供給した充電量(充電電流と充電時間とから把握する)情報を親機2に送信する。
【0018】
上記の如く構成された車両充電システムは以下のように動作する。図2は閾値設定のフローチャートであり、図2を参照して説明する。
親機CPU26は、子機3、充電器4を介して車両5から蓄電池残量と電費情報を取得する(S11)と、取得した情報を基に所定距離の走行を可能とする電力量を算出し、蓄電池残量情報を基に必要な充電量を算出(S12)する。
所定距離の走行を可能とするのに必要な充電量は次式により算出される。
必要充電量(kWh)=所定走行距離(km)/電費(km/kWh)-蓄電池残量(kWh) ・・・(式1)
【0019】
閾値とは車種に関わらず所定の距離を走行するのに必要な充電量であり、こうして算出された必要充電量が閾値に設定される(S13)。
尚、所定距離とは、自宅或いは次の充電ステーションまで走行できる距離(例えば50km)で設定される。
【0020】
閾値が設定されると、次に充電の優先順位の割り振りが行われ、その後個々の車両5の充電制御が実施される。優先順位の割り振りは以下のように行われる。
図3は優先順位を割り振る流れを示すフローチャートであり、図3を参照して説明する。親機CPU26は、充電器4に車両5が接続されて(車両5の充電プラグが接続されて)、閾値が設定されると充電が開始される。同時に、既に充電制御を実施している他の車両5と合わせて、優先順位の割り振りが行われる。
【0021】
まず、充電量が閾値未満の車両5の数(未達成数:n)を把握(S21)し、次に閾値以上に充電が成されている車両5の数(達成数:m)を把握(S22)する。
尚、親機CPU26は、個々の車両5に対する充電を開始してからの充電量情報を、子機3から入手して把握し、この値と閾値とを比較し判断する。
【0022】
次に、未達成数nに含まれる車両5を充電量の多い順に並べて、1番目からn番目と順位付けして割り振り(S23)、更に達成数mに含まれる車両5を充電量の多い順に並べて、n+1番目からn+m番目まで順位付けして割り振る(S24)。こうして1番目からn+m番まで順番付けが成される。
このとき、1~n番目の車両5は、1番目の車両5の充電量が最も多く、n番目の車両5が最も少ない順となり、n+1~n+m番目の車両5の中ではn+1番目の車両5の充電量が最も多く、n+m番目の車両5の充電量が最も少ない順となる。このように優先順位を割り振ったら、電流の増減制御に進む。
【0023】
図4は、順番付けされた個々の車両5に対する電流の増減制御の流れを示すフローチャートを示し、このフローを参照して充電制御を説明する。この制御も親機2が実施し、上述した上限値に対して現在の受電電力がどうかで制御は大きく変化する。
【0024】
以下、逸脱情報の判断基準が上限値であるとして説明する。優先順位の割り振り(S31)情報を受けて、まず逸脱情報が0に等しい場合(S32で左へ進む)、即ち現在の受電電力が上限値にほぼ等しい場合は、何れの車両5の充電電流も変更せず終了し、最初のステップであるS31に戻り、優先順位の割り振りが行われる。尚、現在の受電電力は、第1計測部21がスマートメータ10から入手する受電電力の値である。
但し、逸脱情報は次式の式2のように定義された値である。
逸脱情報(kW)=現在の受電電力(kW)-上限値(kW) ・・・(式2)
【0025】
次に逸脱情報が正の値の場合(S32で下へ進む)、即ち受電電力が上限値を超えている場合は、電流を削減する制御が実施される。尚、正確には、現在の受電電力から30分間の平均電力を計算して予想した場合、上限値を超える可能性があると判断した場合、電流を削減する制御が実施される。
具体的に、オーバーする電流値(逸脱値)を次の式3で算出(S33)し、閾値に達して且つ充電量の最も少ない車両5から順に充電電流の削減制御(S34)が実施される。
逸脱値=逸脱情報(kW)/電圧(V) ・・・ (式3)
【0026】
但し、車両1台あたり最大の削減量は、現在の電流値から所定の最小電流値を引いた値か、算出した逸脱値のうちの小さい方とする(S35)。例えば、逸脱値が10アンペアで、現在の電流値から所定の最小電流値を引いた値が5アンペアであれば、5アンペアが選択され、充電量の多いn+m番目の車両5の充電電流を5アンペア削減する制御が実施される。こうして、閾値に達した中で最も充電量の少ない車両5は充電電流削減の最優先対象となる。換言すれば、充電の優先度が最下位となる。尚、最小電流値とは、車両充電を実施する際に設定された充電電流の最小値で、充電はこの最小電流値以下では行われないよう設定されている。
【0027】
そして、逸脱値から削減した電流値を引いた電流値を新たな逸脱値とし(S36)、逸脱値が0に成るまで或いは全ての充電対象の車両5に対してS34からS37のステップを繰り返し、設定された順番の車両順に制御を実施する。こうして、新たに設定された充電電流値が通信部25から子機3を介して個々の充電器4に通知(S43)され、このS31からS43の制御が1秒等の所定の時間間隔で繰り返されて実施される。
この結果、商用電力Pからの受電電力を減らす場合は、閾値に達した車両5から充電電流が削減される。そして、その際、最も充電量の少ない車両5から充電電流が削減される。よって、後から充電を開始した車両5の充電量が先に充電を開始した車両5の充電量を上回る事が無く、充電時間の長い利用者が不満を抱くような事が無い。
【0028】
一方、逸脱情報が負の場合、即ち受電電力が上限値に達していない場合は、充電電流を増やす制御が実施される。
具体的に、増やせる電流値(余裕値)を次式の式4で算出(S38)し、閾値に満たない車両5のうち、充電量の最も多い車両5から少ない車両5の順に充電電流を増加させる(S39)。
余裕値=-逸脱情報(kW)/電圧(V) ・・・(式4)
【0029】
但し、車両1台あたり最大の増加量は、所定の充電最大電流値から現在の電流値を引いた値か算出した余裕値のうちの小さい方とする(S40)。例えば、充電最大電流値から現在の電流値を引いた値が5アンペアで、余裕値が10アンペアであれば、5アンペアが選択されて最も充電量の多い1番目の車両5の充電電流を5アンペア増やす制御が実施される。こうして、閾値に達していない車両5の中で最も充電量の多い車両5が、充電電流増加の最優先対象となり、電流増が実施される。尚、充電最大電流値とは、安定した充電制御を実施するために予め設定された電流値である。
【0030】
そして、余裕値から増加させた電流値を引いた電流値を新たな余裕値とし(S41)、余裕値が0になるまで或いは全ての充電対象の車両5に対してS39からS42のステップを繰り返し、設定された順番の車両順に制御を実施する。こうして、新たに設定された充電電流値が個々の充電器4に通知(S43)され、充電が制御される。
【0031】
尚、商用電力Pからの受電電力を減らす場合は、閾値に達した車両5から充電電流の削減が実施されるし、商用電力Pからの受電電力を増やす場合は、充電量が閾値を下回る車両5から充電電流が増加される。
【0032】
次に、商用電力による車両充電が成されている状態で、太陽光発電電力に余剰分が発生した場合の車両充電制御を説明する。
図5は、太陽光発電電力を車両充電に使用する際の親機2の制御の流れを示すフローチャート、図6は太陽光発電電力を車両充電に使用する際の子機3の制御の流れを示すフローチャートであり、このフローを参照して説明する。
第2計測部22が商用電力系統への逆潮流、即ち売電を検出(S51)しており、親機CPU26は売電が発生したら(S52でYes)、第2計測部22から売電電流値を取得(S52)し、この売電電流を余剰分とみなして0にするための車両5への充電電流の増加分を算出する(S53)。
この充電電流の増加分は、次式の式5で算出される。
電流上昇値=(売電電流値/システム余裕度)/稼働中の充電器の数 ・・・(式5)
算出された電流上昇値は、稼働中の全ての子機3に一斉通知される(S54)。電流上昇値の通知は、一定の時間間隔で実施され、売電が発生していなければ「0」が通知される(S55)。
【0033】
尚、システム余裕度は、システムによって留意すべき点がある場合の調整値であり、理論的には「1」が望ましいが、例えば0.8等システムの設置環境に応じて設定される。また稼働中の充電器4の数の情報は、子機3から取得される。また、受電設備7から充電器4に供給される電力は、200V等の一定電圧の交流電力であり、電流上昇値は同じ割合の電力上昇値でもある。
【0034】
一方、各子機3は、親機2から電流上昇値の通知(S61)を受けて、子機CPU33が以下の制御を実施する。上昇値が0でなければ、子機3が担当している(子機3に接続されている)充電器4の割り当て量を演算する(S62でYes)。割当量を含む制御後の充電電流は、通知された電流上昇値を基に次式の式6で算出する(S63)。通知された電流上昇値が0であれば、充電電流の上昇はない(S62でNo)。
制御後の充電電流(A)=制御前の充電電流値(A)+充電電流の上昇値×(1+(充電量(Wh)/閾値(Wh)))×係数 ・・・(式6)
【0035】
尚、「係数」は、充電の優先度に関係なく、充電電流の上昇値を最低限上昇させる電流量を算出するための係数で、例えば0.5であるし、「閾値」は、親機2から取得される。また「充電量」は、上述したように充電器4の充電電流と充電時間とから子機3が算出した現在までの充電電力量であり、「充電量/閾値」は、結果が1より大きくなった場合は、0として優先度を下げる処理をする。
子機3は、こうして算出した電流値で充電するよう充電器4を制御する(S64)。
【0036】
次に、新たな充電車両が発生した際に、太陽光発電電力に余剰分が無い場合の車両充電制御を説明する。図7は、親機2の制御の流れを示すフローチャートであり、このフローを参照して説明する。
充電中の車両5のうちn台が閾値に達していない状態で、新たな車両(n+1台目)が充電器4に接続(S71)されると、この車両は優先順位がn+1番目として仮の優先順位が付与され、親機CPU26の制御により充電制御が開始される。このとき、太陽光発電の余剰分が最小電流より大きい(S72でYES)場合は、新規車両に余剰電流が供給されて充電制御は終了するが、太陽光発電電力の余剰分が最小電流と等しいか小さい場合は、以下のように充電制御が行われる。
【0037】
最初に優先順位n番目の車両5の充電電流を見て(S74)、この車両5の充電電流が最小電流より大きく(S75でYES)、且つ少なくとも最小電流値の2倍を超える電流であったら(S76でYES)、この車両5の充電電流から最小電流値分の電流を削減して、新規車両(n+1番目の車両)5の充電電流とする(S77)。
最小電流値の2倍を超えていなければ、次に優先順位n-1番目の車両5の充電電流を見る。そして、n番目と同様の判断/制御を行い、充電電流を確保する制御(S75~S79)を実施する。
充電電流が確保できなければ、この制御を優先順位1番の車両5まで順次実施(S80)する。この間、例えば優先順位1番の車両5の充電電流から充電電流を確保できたら(S80、S81でYES)、新規車両5の充電を開始する(S82)。それでも確保できなければ、充電電流を新規車両5に供給せず、充電電流を確保できるまで待機状態となる(S83)。
尚、待機状態を経て、充電電流を確保できたら、上述したように新規車両5に閾値が設定されて正式な優先順位が設定され、他の車両5と同様に充電制御が継続して実施される。
【0038】
このように、太陽光発電電力の余剰分を車両充電に振り向けるため、太陽光発電電力を有効活用できる。そして、太陽光発電電力の余剰分が無いときに新たな充電車両5が発生したら、充電中の車両5への電流を減らして新規車両5に振り分けるため、商用電力を増加させること無く充電を開始でき、電力料金を抑制できる。また、新規車両5は速やかに充電が開始されるため、新規充電者は不満を抱くことが無い。
また、太陽光発電の余剰分の個々の車両5への分配は、充電開始時に設定された閾値情報を基に各充電制御子機3で決定されるため、スムーズな充電制御を実施でき、効率の良い充電を実施できる。
更に、商用電力による車両充電は、車種や車両5の蓄電池残量に依らず、所定の距離を走行可能とする電力量を基準に充電量の閾値を設定し、この閾値に達していない車両の充電が閾値に達した車両の充電より優先されるため、閾値に達するまでの時間を短くでき、利用者にとって利便性が良い。また、充電量が閾値に達した車両5の走行距離は車種に依らずほぼ等しくできるため、利用者に対して平等に対応できる。そして、デマンド制御を併せて実施するため、電気料金の上昇を防止できる。
【0039】
尚、上記実施形態では、閾値を車両5の走行可能距離を算出して設定しているが、車両5に搭載されている蓄電池容量の例えば20%等の一定の割合、或いは一定充電容量で一律に設定しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1・・車両充電システム、2・・充電制御親機(充電制御部)、3・・充電制御子機(充電制御部)、4・・充電器、5・・車両、7・・受電設備、8・・太陽光発電設備、9・・負荷、10・・スマートメータ、10・・スマートメータ(電力量計)、21・・第1計測部、22・・第2計測部(余剰電力監視部)、23・・記憶部、25・・通信部(充電車両情報入手部、通知部)、26・・親機CPU(上限値管理部、閾値算出部)、33・・子機CPU(子機電流制御部)、P・・商用電力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7