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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059136
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ダストカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20230419BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20230419BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
B62D1/16
F16J15/52 C
F16J3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169078
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
【テーマコード(参考)】
3D030
3J043
3J045
【Fターム(参考)】
3D030DC33
3J043AA03
3J043AA15
3J043CA02
3J043CB13
3J043DA11
3J043FA01
3J043FA05
3J043FB10
3J043HA01
3J045AA14
3J045BA02
3J045CB14
3J045CB21
3J045EA03
(57)【要約】
【課題】より少ない作業工数で製造することが可能なダストカバーを提供すること。
【解決手段】ダストカバーは、ステアリングシャフトの外周面に取り付けられる環状のブッシュと、ブッシュの径方向外側に設けられる環状のシール部材と、ベローズと、を備える。シール部材は、ブッシュの外周面とベローズの径方向内側端部とに挟持される筒部と、筒部における軸方向の一方側に当該筒部と一体に設けられる第1シール部と、筒部における軸方向の他方側に当該筒部と一体に設けられる第2シール部とを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルの筒状部材を貫通して中心軸の軸方向に延びるステアリングシャフトの外周面に取り付けられる環状のブッシュと、
前記ブッシュの径方向外側に設けられ、且つ、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる1つのシール部材と、
前記筒状部材と前記シール部材との間の隙間を塞ぐベローズと、
を備え、
前記1つのシール部材は、
前記ブッシュの外周面と前記ベローズの径方向内側端部とに挟持される筒部と、
前記筒部における前記軸方向の一方側に当該筒部と一体に設けられ、且つ、前記軸方向の一方側の先端が前記ステアリングシャフトの前記外周面に接する第1シール部と、
前記筒部における前記軸方向の他方側に当該筒部と一体に設けられ、且つ、前記軸方向の他方側の先端が前記ステアリングシャフトの前記外周面に接する第2シール部と、
を有する、
ダストカバー。
【請求項2】
前記シール部材は、前記ベローズよりも硬質である、
請求項1に記載のダストカバー。
【請求項3】
前記シール部材の外周に、前記ベローズの径方向内側端部が嵌る凹部が設けられ、
当該凹部の底面は、前記筒部の外周面である、
請求項1または2に記載のダストカバー。
【請求項4】
前記第1シール部は、
前記ブッシュの外周面の径方向外側に位置し、且つ、当該外周面に当接する第1環状部と、
前記ブッシュにおける軸方向の一方側の第1側面よりも軸方向の一方側に位置し、且つ、当該第1側面に当接する第2環状部と、
前記第1環状部と前記第2環状部とを連結し、且つ、前記第1環状部および前記第2環状部と一体化された連結部と、
前記連結部の軸方向の一方側に隣接され、且つ、当該連結部と一体化された第1リップ部と、を有する、
請求項1または2に記載のダストカバー。
【請求項5】
前記第1環状部の径方向厚さは、前記第2環状部の軸方向厚さよりも大きい、
請求項4に記載のダストカバー。
【請求項6】
前記第1環状部の外周面と、前記連結部の外周面と、前記第1リップ部の外周面と、は面一である、
請求項4または5に記載のダストカバー。
【請求項7】
前記第2シール部は、
前記ブッシュの外周面の径方向外側に位置し、且つ、当該外周面に当接する第3環状部と、
前記ブッシュにおける軸方向の他方側の第2側面よりも軸方向の他方側に位置し、且つ、当該第2側面に当接する第4環状部と、
前記第3環状部と前記第4環状部とを連結し、且つ、前記第3環状部および前記第4環状部と一体化された連結部と、
前記連結部の軸方向の他方側に隣接され、且つ、当該連結部と一体化された第2リップ部と、を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のダストカバー。
【請求項8】
前記第3環状部の径方向厚さは、前記第4環状部の軸方向厚さよりも大きい、
請求項7に記載のダストカバー。
【請求項9】
前記第3環状部の外周面と、前記連結部の外周面と、前記第2リップ部の外周面と、は面一である、
請求項7または8に記載のダストカバー。
【請求項10】
前記シール部材が前記ブッシュに当接しない状態において、
前記第1シール部の第2環状部と、前記第2シール部の第2環状部と、の軸方向長さは、
前記ブッシュの軸方向長さよりも小さい、
請求項7に記載のダストカバー。
【請求項11】
前記筒部は、
径方向外側に突出する第1突出部と、
径方向内側に突出する第2突出部と、を有し、
前記ベローズの径方向内側端部には、前記第1突出部が嵌まる凹溝が設けられ、
前記ブッシュの外周面には、前記第2突出部が嵌まる凹溝が設けられる、
請求項1または2に記載のダストカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの間の隙間に配置されるダストカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングシャフトとダッシュパネルの貫通部との間の隙間にダストカバーが設けられる場合がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載されたダストカバーは、ベローズと、ステアリングシャフトに取り付けられる筒状のブッシュと、ブッシュの軸方向の一方側と他方側とに加硫接着される2つのシール部材と、を備える。このように、特許文献1では、シール部材が2つ設けられ、且つ、2つのシール部材はブッシュに加硫接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-6268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シール部材がブッシュと別体の場合は、当該シール部材をブッシュに接着させる必要があるため、ダストカバーを製造する作業工数が増大する。例えば、シール部材を加硫接着する加硫接着工程は、ブッシュに接着剤を塗布するステップと、接着剤を乾燥させるステップと、シール部材をブッシュに加硫接着させるステップと、を含む。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、より少ない作業工数で製造することが可能なダストカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様のダストカバーは、ダッシュパネルの筒状部材を貫通して中心軸の軸方向に延びるステアリングシャフトの外周面に取り付けられる環状のブッシュと、前記ブッシュの径方向外側に設けられ、且つ、前記中心軸の軸回りの周方向に延びる1つのシール部材と、前記筒状部材と前記シール部材との間の隙間を塞ぐベローズと、を備え、前記1つのシール部材は、前記ブッシュの外周面と前記ベローズの径方向内側端部とに挟持される筒部と、前記筒部における前記軸方向の一方側に当該筒部と一体に設けられ、且つ、前記軸方向の一方側の先端が前記ステアリングシャフトの前記外周面に接する第1シール部と、前記筒部における前記軸方向の他方側に当該筒部と一体に設けられ、且つ、前記軸方向の他方側の先端が前記ステアリングシャフトの前記外周面に接する第2シール部と、を有する。
【0007】
前述したように、特許文献1のダストカバーでは、シール部材がブッシュと別体の場合は、当該シール部材をブッシュに接着させる必要があるため、ダストカバーを製造する作業工数が増大する。
【0008】
これに対して、本開示では、第1シール部と第2シール部とが筒部を介して一体化されて1つのシール部材になっている。従って、本開示では、特許文献1に対して、より少ない作業工数で製造することが可能なダストカバーを提供することができる。なお、特許文献1においては、複数のシール部材を同時に加硫接着する場合には、金型の構造も複雑になるため、金型のコストも高くなる。しかし、本開示では、加硫接着の工程がないため、金型のコストも抑制される。さらに、第1シール部と第2シール部とが一体化される場合は、第1シール部と第2シール部とが別体の場合に対して、第1シール部および第2シール部が、より確実にブッシュに固定される。従って、第1シール部および第2シール部がブッシュから外れにくく、ステアリングシャフトとの確実なシールが可能となる。また、第1シール部と第2シール部とが一体化されるため、第1シール部および第2シール部の軸方向位置が安定するので、ステアリングシャフトとの安定したシールが得られる。
【0009】
ダストカバーの望ましい態様として、前記シール部材は、前記ベローズよりも硬質である。第1シール部と第2シール部とは、ステアリングシャフトの外周面と接するため、ステアリングシャフトが回転すると、第1シール部および第2シール部と、ステアリングシャフトとが擦れる。しかし、シール部材が、ベローズよりも硬質である場合は、シール部材がベローズよりも軟質である場合よりも、シール部材がステアリングシャフトと擦れる際の異音がより低減される。
【0010】
ダストカバーの望ましい態様として、前記シール部材の外周に、前記ベローズの径方向内側端部が嵌る凹部が設けられ、当該凹部の底面は、前記筒部の外周面である。このように、シール部材の外周の凹部に、ベローズの径方向内側端部が嵌るため、ベローズをシール部材に組み付ける作業がより軽減される。
【0011】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第1シール部は、前記ブッシュの外周面の径方向外側に位置し、且つ、当該外周面に当接する第1環状部と、前記ブッシュにおける軸方向の一方側の第1側面よりも軸方向の一方側に位置し、且つ、当該第1側面に当接する第2環状部と、前記第1環状部と前記第2環状部とを連結し、且つ、前記第1環状部および前記第2環状部と一体化された連結部と、前記連結部の軸方向の一方側に隣接され、且つ、当該連結部と一体化された第1リップ部と、を有する。
【0012】
このように、第1シール部は、ブッシュの外周面と第1側面とに当接する。従って、第1シール部によって、ブッシュを径方向および軸方向の双方から抑えることができる。
【0013】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第1環状部の径方向厚さは、前記第2環状部の軸方向厚さよりも大きい。ここで、ブッシュに対して、軸方向に作用する力は、径方向に作用する力よりも小さい。従って、第1環状部の剛性をより大きくして、径方向でブッシュを抑える力を、軸方向でブッシュを抑える力よりも大きく設定することができる。
【0014】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第1環状部の外周面と、前記連結部の外周面と、前記第1リップ部の外周面と、は面一である。
【0015】
仮に、第1環状部の外周面と、連結部の外周面と、第1リップ部の外周面と、の径方向高さをそれぞれに変えると、第1環状部と連結部との間に段差ができ、連結部と第1リップ部との間に段差ができてしまう。車両の走行時には車体の振動による荷重が段差部分に集中するため、当該段差部分に破損が生じる可能性がある。従って、第1環状部の外周面と、連結部の外周面と、第1リップ部の外周面とを面一にすることにより、車体の振動による荷重の集中を抑制することができる。
【0016】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第2シール部は、前記ブッシュの外周面の径方向外側に位置し、且つ、当該外周面に当接する第3環状部と、前記ブッシュにおける軸方向の他方側の第2側面よりも軸方向の他方側に位置し、且つ、当該第2側面に当接する第4環状部と、前記第3環状部と前記第4環状部とを連結し、且つ、前記第3環状部および前記第4環状部と一体化された連結部と、前記連結部の軸方向の他方側に隣接され、且つ、当該連結部と一体化された第2リップ部と、を有する。
【0017】
このように、第2シール部は、ブッシュの外周面と第2側面とに当接する。従って、第2シール部によって、ブッシュを径方向および軸方向の双方から抑えることができる。
【0018】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第3環状部の径方向厚さは、前記第4環状部の軸方向厚さよりも大きい。このため、第3環状部の剛性は第4環状部の剛性よりも大きくなる。ここで、ブッシュに対して、軸方向に作用する力は、径方向に作用する力よりも小さい。従って、第3環状部の剛性をより大きくして、径方向でブッシュを抑える力を、軸方向でブッシュを抑える力よりも大きく設定することができる。
【0019】
ダストカバーの望ましい態様として、前記第3環状部の外周面と、前記連結部の外周面と、前記第2リップ部の外周面と、は面一である。
【0020】
仮に、第3環状部の外周面と、連結部の外周面と、第2リップ部の外周面と、の径方向高さをそれぞれに変えると、第3環状部と連結部との間に段差ができ、連結部と第2リップ部との間に段差ができてしまう。車両の走行時には車体の振動による荷重が段差部分に集中するため、当該段差部分に破損が生じる可能性がある。従って、第3環状部の外周面と、連結部の外周面と、第2リップ部の外周面とを面一にすることにより、車体の振動による荷重の集中を抑制することができる。
【0021】
ダストカバーの望ましい態様として、前記シール部材が前記ブッシュに当接しない状態において、前記第1シール部の第2環状部と、前記第2シール部の第2環状部と、の軸方向長さは、前記ブッシュの軸方向長さよりも小さい。
【0022】
従って、ブッシュをシール部材の内周に嵌め込むと、ブッシュの第1側面は第2環状部の側面を軸方向の一方側に向けて押し、ブッシュの第2側面は第4環状部の側面を軸方向の他方側に向けて押す。すると、中心軸を含む断面において、第1シール部は、例えば、時計回り方向に回転する。また、第2シール部は、第1シール部と反対の反時計回り方向に回転する。これにより、第1環状部の側面と、第3環状部の側面とは、軸方向で互いに近づく。凹部には、ベローズの径方向内側端部が嵌められる。以上より、ブッシュをシール部材の内周に嵌め込むと、ベローズの径方向内側端部が、第1環状部と第3環状部との両側からより強固に挟んで保持することができる。
【0023】
ダストカバーの望ましい態様として、前記筒部は、径方向外側に突出する第1突出部と、径方向内側に突出する第2突出部と、を有し、前記ベローズの径方向内側端部には、前記第1突出部が嵌まる凹溝が設けられ、前記ブッシュの外周面には、前記第2突出部が嵌まる凹溝が設けられる。
【0024】
従って、ベローズに対して軸方向の荷重がかかった場合には、第1突出部によってベローズの軸方向移動が抑制される。また、ブッシュに対して軸方向の荷重がかかった場合には、第2突出部によってブッシュの軸方向移動が抑制される。さらに、シール部材に対して軸方向の荷重がかかった場合には、第1突出部および第2突出部によってシール部材の軸方向移動が抑制される。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、より少ない作業工数で製造することが可能なダストカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。
図2図2は、第1実施形態のステアリング装置の斜視図である。
図3図3は、車両に取り付けられたダストカバーの断面図である。
図4図4は、第1実施形態のダストカバーの正面図である。
図5図5は、図4におけるV-V断面図である。
図6図6は、図5のブッシュおよびシール部材の断面図である。
図7図7は、図5のブッシュの断面図である。
図8図8は、図5のシール部材の断面図である。
図9図9は、図8の第1シール部を拡大した模式図である。
図10図10は、図8の第2シール部を拡大した模式図である。
図11図11は、第1変形例に係るダストカバーの断面図である。
図12図12は、第2実施形態に係るダストカバーの断面図である。
図13図13は、図12のブッシュおよびシール部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、各図において車室側をINと表示し、エンジンルーム側をOUTと表示する。
【0028】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を説明する。図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。図2は、第1実施形態のステアリング装置の斜視図である。
【0029】
図1に示すように、ステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、第1ユニバーサルジョイント84と、第2ステアリングシャフト85と、第2ユニバーサルジョイント86と、を備え、第3ステアリングシャフト87に接合されている。
【0030】
図1に示すように、第1ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一方の端部がステアリングホイール81に連結され、入力軸82aの他方の端部が出力軸82bに連結される。また、出力軸82bの一方の端部が入力軸82aに連結され、出力軸82bの他方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結される。
【0031】
図1に示すように、第2ステアリングシャフト85は、第1ユニバーサルジョイント84と第2ユニバーサルジョイント86とを連結している。第2ステアリングシャフト85の一方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結される。第3ステアリングシャフト87の一方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結され、第3ステアリングシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。図2に示すように、第2ステアリングシャフト85は、ダッシュパネル10を貫通している。ダッシュパネル10は、車室とエンジンルームとを隔てる仕切り板である。
【0032】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、第3ステアリングシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
【0033】
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォームおよびウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80はコラムアシスト方式である。以下に、コラムアシスト方式について簡単に説明する。電動パワーステアリングは、油圧を使わずにモータでステアリングホイールの操舵をアシストするシステムである。電動パワーステアリングの方式には、例えば、コラムアシスト方式、ピニオンアシスト方式およびラックアシスト方式がある。このうち、コラムアシスト方式は、例えば、車室内のステアリングシャフトのコラム部にモータと減速ギヤ、トルクセンサを実装しコラムシャフトを駆動するものである。
【0034】
図1に示すように、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94と、車速センサ95と、を備える。電動モータ93、トルクセンサ94および車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ94は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0035】
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ94および車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクおよび車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ93を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0036】
図3は、車両に取り付けられたダストカバーの断面図である。図4は、第1実施形態のダストカバーの正面図である。図5は、図4におけるV-V断面図である。図6は、図5のブッシュおよびシール部材の断面図である。図7は、図5のブッシュの断面図である。図8は、図5のシール部材の断面図である。図9は、図8の第1シール部を拡大した模式図である。図10は、図8の第2シール部を拡大した模式図である。
【0037】
以下の説明において、第2ステアリングシャフト85の中心軸Zに沿う方向は軸方向と記載され、軸方向に対する直交方向は径方向と記載され、中心軸Zを中心とした円に沿う方向は周方向と記載される。また、エンジンルーム側(OUT)を軸方向の一方側、車室側(IN)を軸方向の他方側とも称する。
【0038】
図3に示すように、ダッシュパネル10は、筒状部材101を備える。筒状部材101の内周面は、第2ステアリングシャフト85の外周面85aと対向する。第2ステアリングシャフト85は、ステアリングホイール81の位置の調整又は走行中の振動等に伴って移動することがある。このため、筒状部材101の内周面と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間には環状の隙間が設けられている。この隙間を塞ぐために、ステアリング装置80は、ダストカバー1を備える。
【0039】
ダストカバー1は、筒状部材101の内周面に嵌められている。筒状部材101の外周面に取り付けられたバンド100によって、ダストカバー1が筒状部材101に固定されている。筒状部材101は、バンド100で締め付けられることで変形する。例えば、筒状部材101は金属で形成されている。筒状部材101が金属である場合、筒状部材101は図3に示すように軸方向に沿ったスリット102を有することが好ましい。筒状部材101がスリット102を有することで、筒状部材101がバンド100で締め付けられた時に容易に変形する。
【0040】
図4および図5に示すように、ダストカバー1は、ベローズ2と、シール部材3と、ブッシュ5と、取付部材6と、を備える。ベローズ2、シール部材3、ブッシュ5および取付部材6は、中心軸Zの軸回りの周方向に沿って環状に延びる。
【0041】
取付部材6は、ベローズ2を図3に示す筒状部材101に押し付ける部材である。取付部材6は、例えばアルミニウム合金で形成される。取付部材6は、合成樹脂で形成されていてもよい。図5に示すように、取付部材6は、本体部61と、フランジ部62と、を備える。本体部61は、円筒状であって、外周面に環状の第1溝611を備える。フランジ部62は、本体部61から径方向外側に向かって突出する。フランジ部62が筒状部材101に接することで、取付部材6が位置決めされる。
【0042】
ベローズ2は、例えばゴムで形成されている。図5に示すように、ベローズ2は、径方向内側端部20と、第1可撓部21と、第1嵌合部22と、第2可撓部25と、第2嵌合部26と、を備える。径方向内側端部20は、ベローズ2の部位のうち径方向内側の端部に位置している。図5に示すように、第1可撓部21は、径方向内側端部20と第1嵌合部22とを連結している。中心軸Zを含む断面において、第1可撓部21はエンジンルーム側(軸方向の一方側)に凸の略U字状である。第1嵌合部22は、取付部材6の第1溝611に嵌まる。第2可撓部25は、径方向内側端部20と第2嵌合部26とを連結している。中心軸Zを含む断面において、第2可撓部25はエンジンルーム側(軸方向の一方側)に凸の略U字状である。第2嵌合部26は、フランジ部62と第1嵌合部22との間に嵌まる。第1可撓部21および第2可撓部25は、径方向内側端部20により連結されている。
【0043】
ブッシュ5は、第2ステアリングシャフト85を回転可能に支持する軸受である。ブッシュ5は、図3に示すように、ダッシュパネル10の筒状部材101を貫通して中心軸Zの軸方向に延びる第2ステアリングシャフト85の外周面85aに取り付けられる。ブッシュ5は、ナイロン等の合成樹脂で形成されている。ブッシュ5は、第2ステアリングシャフト85の中心軸Zの軸回りの周方向に沿って延びる円筒部材である。図7に示すように、ブッシュ5は、外周面51と、内周面52と、第1側面53と、第2側面54と、潤滑剤溝55と、を備える。外周面51は、平滑な円筒面である。内周面52には、潤滑剤溝55が設けられる。潤滑剤溝55は、軸方向に沿って延びる。潤滑剤溝55は、例えばブッシュ5の軸方向の全長に亘って延びる。例えば、複数の潤滑剤溝55が周方向で等間隔に配置されている。潤滑剤溝55には、潤滑剤としてのグリースが充填されている。これにより、ブッシュ5の内周面52と第2ステアリングシャフト85の外周面85aとの間の摩擦が低減される。
【0044】
シール部材3は、図5に示すように、ブッシュ5の径方向外側に設けられ、且つ、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる。図8に示すように、シール部材3は、軸方向の中央CLに対して左右対称の形状を有する。図8に示すように、シール部材3は、筒部30と、第1シール部31と、第2シール部32と、を備える。シール部材3においては、筒部30、第1シール部31および第2シール部32が一体化されている。ここで、一体化とは、例えば、射出成形の金型内に樹脂やゴムを充填し、硬化後に金型から取り出すことにより成形できる態様を示す。従って、筒部30、第1シール部31および第2シール部32の材質は、全て同じである。シール部材3は、例えば樹脂またはゴムである。シール部材3は、ベローズ2よりも硬質である。なお、図5に示すように、シール部材3の外周に、ベローズ2の径方向内側端部20が嵌る凹部110が設けられる。
【0045】
筒部30は、図5に示すように、ブッシュ5の外周面51とベローズ2の径方向内側端部20とに挟持される。図8に示すように、筒部30は、第1シール部31および第2シール部32を軸方向で連結する。筒部30は、外周面301および内周面302を有する。
【0046】
第1シール部31は、図5および図6に示すように、筒部30におけるエンジンルーム側(軸方向の一方側)に設けられる。軸方向の一方側の先端311が第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85の外周面85aに接する。図9に示すように、第1シール部31は、第1環状部312と、第2環状部313と、連結部314と、第1リップ部315と、を有する。
【0047】
図9に示すように、第1環状部312は、ブッシュ5の外周面51の径方向外側に位置する。第1環状部312の内周面312aは、外周面51に当接する。筒部30におけるエンジンルーム側(軸方向の一方側)の端は、二点鎖線で示す端303である。従って、第1環状部312と筒部30との境界は、端303である。第1環状部312と連結部314との境界は、端312cである。第1環状部312における車室側の側面312bは、筒部30の外周面301の端から径方向外側に延びる。従って、凹部110は、側面312bおよび外周面301に面する。なお、凹部110の底面は、外周面301である。第1環状部312の外周面312dは、筒部30の外周面301よりも径方向外側に位置する。このように、第1環状部312は、内周面312a、端303、側面312b、端312cおよび外周面312dによって囲まれた部位である。即ち、第1環状部312は、中心軸Zを含む断面において、矩形状である。第1環状部312の径方向厚さD1は、筒部30の径方向厚さD2よりも大きい。
【0048】
図9に示すように、第2環状部313は、ブッシュ5の第1側面53よりもエンジンルーム側(軸方向の一方側)に位置する。第2環状部313は、中心軸Zを含む断面において、矩形状である。具体的には、第2環状部313は、側面313aと、側面313bと、内周面313cと、端313dとで囲まれる。側面313aは、第1側面53に当接する。第2環状部313の軸方向に沿った厚さは、軸方向厚さD3である。径方向厚さD1は、軸方向厚さD3よりも大きい。なお、第2環状部313の径方向厚さは、ブッシュ5の径方向厚さの約半分である。従って、第1側面53の径方向距離の約半分が、側面313aと当接している。
【0049】
図9に示すように、連結部314は、第1環状部312と第2環状部313とを連結する。連結部314は、第1環状部312および第2環状部313と一体化されている。連結部314は、中心軸Zを含む断面において、矩形状である。具体的には、連結部314は、端312cと、端314aと、端313dと、外周面314bとで囲まれる。
【0050】
図9に示すように、第1リップ部315は、連結部314のエンジンルーム側(軸方向の一方側に隣接して配置される。第1リップ部315は、連結部314と一体化されている。第1リップ部315は、端314aと、外周面315aと、内周面315bと、側面315cと、で囲まれる部位である。内周面315bと側面315cとは、先端311に向かうにつれて先細りする。なお、第1リップ部315の外周面315aと、連結部314の外周面314bと、第1環状部312の外周面312dとは、面一である。
【0051】
第2シール部32は、図5に示すように、筒部30における車室側(軸方向の他方側)に設けられる。軸方向の他方側の先端321が第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85の外周面85aに接する。図10に示すように、第2シール部32は、第3環状部322と、第4環状部323と、連結部324と、第2リップ部325と、を有する。
【0052】
図10に示すように、第3環状部322は、ブッシュ5の外周面51の径方向外側に位置する。第3環状部322の内周面322aは、外周面51に当接する。筒部30における車室側(軸方向の他方側)の端は、二点鎖線で示す端304である。従って、第3環状部322と筒部30との境界は、端304である。第3環状部322と連結部324との境界は、端322cである。第3環状部322におけるエンジンルーム側の側面322bは、筒部30の外周面301の端から径方向外側に延びる。従って、凹部110は、側面322bおよび外周面301に面する。なお、凹部110の底面は、外周面301である。第3環状部322の外周面322dは、筒部30の外周面301よりも径方向外側に位置する。このように、第3環状部322は、内周面322a、端304、側面322b、端322cおよび外周面322dによって囲まれた部位である。即ち、第3環状部322は、中心軸Zを含む断面において、矩形状である。第3環状部322の径方向厚さD4は、筒部30の径方向厚さD2よりも大きい。
【0053】
図10に示すように、第4環状部323は、ブッシュ5の第2側面54よりも車室側(軸方向の他方側)に位置する。第4環状部323は、中心軸Zを含む断面において、矩形状である。具体的には、第4環状部323は、側面323aと、側面323bと、内周面323cと、端323dとで囲まれる。側面323aは、第2側面54に当接する。第4環状部323の軸方向に沿った厚さは、軸方向厚さD5である。径方向厚さD4は、軸方向厚さD5よりも大きい。なお、第4環状部323の径方向厚さは、ブッシュ5の径方向厚さの約半分である。従って、第2側面54の径方向距離の約半分が、側面323aと当接している。
【0054】
図10に示すように、連結部324は、第3環状部322と第4環状部323とを連結する。連結部324は、第3環状部322および第4環状部323と一体化されている。連結部324は、中心軸Zを含む断面において、矩形状である。具体的には、連結部324は、端322cと、端324aと、端323dと、外周面324bとで囲まれる。
【0055】
図10に示すように、第2リップ部325は、連結部324の車室側(軸方向の他方側に隣接して配置される。第2リップ部325は、連結部324と一体化されている。第2リップ部325は、端324aと、外周面325aと、内周面325bと、側面325cと、で囲まれる部位である。内周面325bと側面325cとは、先端321に向かうにつれて先細りする。なお、第2リップ部325の外周面325aと、連結部324の外周面324bと、第3環状部322の外周面322dとは、面一である。
【0056】
ここで、図7図8を参照して、ブッシュ5をシール部材3の内周に嵌め込んだ際の第1シール部31および第2シール部32の動きを説明する。図7に示すように、ブッシュ5の軸方向長さは、長さD6である。換言すると、第1側面53と第2側面54との軸方向に沿った離隔距離は、長さD6である。また、図8に示すように、シール部材3においては、第1シール部31の第2環状部313と、第2シール部32の第4環状部323との軸方向長さは、長さD7である。換言すると、第2環状部313の側面313aと、第4環状部323の側面323aとの軸方向に沿った離隔距離は、長さD7である。そして、長さD7は長さD6よりも小さい。従って、ブッシュ5をシール部材3の内周に嵌め込むと、ブッシュ5の第1側面53は第2環状部313の側面313aを軸方向の一方側(エンジンルーム側)に向けて押し、ブッシュ5の第2側面54は第4環状部323の側面323aを軸方向の他方側(車室側)に向けて押す。すると、図8の矢印120に示すように、中心軸Zを含む断面において、第1シール部31は、時計回り方向に回転する。また、図8の矢印130に示すように、第2シール部32は、反時計回り方向に回転する。これにより、第1環状部312の側面312bと、第3環状部322の側面322bとは、軸方向で互いに近づく。凹部110には、ベローズ2の径方向内側端部20が嵌められるため、側面312bと側面322bとで、ベローズ2の径方向内側端部20を軸方向の両側から抑える力が作用する。
【0057】
以上説明したように、第1実施形態によれば、ダストカバー1は、ダッシュパネル10の筒状部材101を貫通して中心軸Zの軸方向に延びる第2ステアリングシャフト85(ステアリングシャフト)の外周面85aに取り付けられる環状のブッシュ5と、ブッシュ5の径方向外側に設けられ、且つ、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる1つのシール部材3と、筒状部材とシール部材3との間の隙間を塞ぐベローズ2と、を備える。
【0058】
1つのシール部材3は、ブッシュ5の外周面51とベローズ2の径方向内側端部20とに挟持される筒部30と、筒部30における軸方向の一方側に筒部30と一体に設けられ、且つ、軸方向の一方側の先端311が第2ステアリングシャフト85(ステアリングシャフト)の外周面85aに接する第1シール部31と、筒部30における軸方向の他方側に筒部30と一体に設けられ、且つ、軸方向の他方側の先端321が第2ステアリングシャフト85(ステアリングシャフト)の外周面85aに接する第2シール部32と、を有する。
【0059】
前述したように、特許文献1のダストカバーでは、シール部材をブッシュに接着させる必要があるため、ダストカバーを製造する作業工数が増大する。例えば、シール部材を加硫接着する場合には、ブッシュに接着剤を塗布し、接着剤を乾燥させたのち、シール部材を接着剤を介して加硫接着させる。
【0060】
これに対して、本実施形態では、第1シール部31と第2シール部32とが筒部30を介して一体化されて1つのシール部材3になっている。従って、本実施形態では、特許文献1のように、第1シール部31および第2シール部32をブッシュ5に接合する必要がないため、より少ない作業工数で製造することができる。なお、特許文献1においては、複数のシール部材を同時に加硫接着する場合には、金型の構造も複雑になるため、金型のコストも高くなる。しかし、本実施形態では、加硫接着の工程がないため、金型のコストも抑制される。さらに、第1シール部31と第2シール部32とが一体化される場合は、第1シール部31と第2シール部32とが別体の場合に対して、第1シール部31および第2シール部32が、より確実にブッシュ5に固定されるため、ブッシュ5から外れにくく第2ステアリングシャフト85との確実なシールが可能となる。また、第1シール部31と第2シール部32とが一体化されるため、第1シール部31および第2シール部32の軸方向位置が安定するので、第2ステアリングシャフト85との安定したシールが得られる。
【0061】
シール部材3は、ベローズ2よりも硬質である。ここで、第1シール部31と第2シール部32とは、第2ステアリングシャフト85の外周面85aと接するため、第2ステアリングシャフト85が回転すると、第1シール部31および第2シール部32と、第2ステアリングシャフト85とが擦れる。しかし、シール部材3が、ベローズ2よりも硬質である場合は、シール部材3がベローズ2よりも軟質である場合よりも、第2ステアリングシャフト85と擦れる際の異音がより低減される。
【0062】
シール部材3の外周に、ベローズ2の径方向内側端部20が嵌る凹部110が設けられ、凹部110の底面は、筒部30の外周面301である。このように、シール部材3の外周の凹部110に、ベローズ2の径方向内側端部20が嵌るため、ベローズ2をシール部材3に組み付ける作業がより軽減される。
【0063】
第1シール部31は、ブッシュ5の外周面51の径方向外側に位置し、且つ、外周面51に当接する第1環状部312と、ブッシュ5における軸方向の一方側の第1側面53よりも軸方向の一方側に位置し、且つ、第1側面53に当接する第2環状部313と、第1環状部312と第2環状部313とを連結し、且つ、第1環状部312および第2環状部313と一体化された連結部314と、連結部314の軸方向の一方側に隣接され、且つ、連結部314と一体化された第1リップ部315と、を有する。
【0064】
このように、第1シール部31は、ブッシュ5の外周面51と第1側面53とに当接する。従って、第1シール部31によって、ブッシュ5を径方向および軸方向の双方から抑えることができる。
【0065】
第1環状部312の径方向厚さD1は、第2環状部313の軸方向厚さD3よりも大きいため、第1環状部312の剛性は第2環状部313の剛性よりも大きくなる。ここで、ブッシュ5に対して、軸方向に作用する力は、径方向に作用する力よりも小さい。従って、第1環状部312の剛性をより大きくして、径方向でブッシュ5を抑える力を、軸方向でブッシュ5を抑える力よりも大きく設定することができる。
【0066】
第1環状部312の外周面312dと、連結部314の外周面314bと、第1リップ部315の外周面315aとは面一である。仮に、外周面312dと、連結部314の外周面314bと、第1リップ部315の外周面315aと、の径方向高さをそれぞれに変えると、第1環状部312と連結部314との間に段差ができ、連結部314と第1リップ部315との間に段差ができてしまう。車両の走行時には車体の振動による荷重が段差部分に集中するため、当該段差部分に破損が生じる可能性がある。従って、第1環状部312の外周面312dと、連結部314の外周面314bと、第1リップ部315の外周面315aとを面一にすることにより、車体の振動による荷重の集中を抑制することができる。
【0067】
第2シール部32は、ブッシュ5の外周面51の径方向外側に位置し、且つ、外周面51に当接する第3環状部322と、ブッシュ5における軸方向の他方側の第2側面54よりも軸方向の他方側に位置し、且つ、第2側面54に当接する第4環状部323と、第3環状部322と第4環状部323とを連結し、且つ、第3環状部322および第4環状部323と一体化された連結部324と、連結部324の軸方向の他方側に隣接され、且つ、連結部324と一体化された第2リップ部325と、を有する。
【0068】
このように、第2シール部32は、ブッシュ5の外周面51と第2側面54とに当接する。従って、第2シール部32によって、ブッシュ5を径方向および軸方向の双方から抑えることができる。
【0069】
第3環状部322の径方向厚さD4は、第4環状部323の軸方向厚さD5よりも大きいため、第3環状部322の剛性は第4環状部323の剛性よりも大きくなる。ここで、ブッシュ5に対して、軸方向に作用する力は、径方向に作用する力よりも小さい。従って、第3環状部322の剛性をより大きくして、径方向でブッシュ5を抑える力を、軸方向でブッシュ5を抑える力よりも大きく設定することができる。
【0070】
第3環状部322の外周面322dと、連結部324の外周面324bと、第2リップ部325の外周面325aと、は面一である。仮に、外周面322dと、連結部324の外周面324bと、第2リップ部325の外周面325aと、の径方向高さをそれぞれに変えると、第3環状部322と連結部324との間に段差ができ、連結部324と第2リップ部325との間に段差ができてしまう。車両の走行時には車体の振動による荷重が段差部分に集中するため、当該段差部分に破損が生じる可能性がある。従って、第3環状部322の外周面322dと、連結部324の外周面324bと、第2リップ部325の外周面325aとを面一にすることにより、車体の振動による荷重の集中を抑制することができる。
【0071】
シール部材3がブッシュ5に当接しない状態において、第1シール部31の第2環状部313と、第2シール部32の第4環状部323と、の軸方向長さD7は、ブッシュ5の軸方向長さD6よりも小さい。
【0072】
従って、ブッシュ5をシール部材3の内周に嵌め込むと、ブッシュ5の第1側面53は第2環状部313の側面313aを軸方向の一方側(エンジンルーム側)に向けて押し、ブッシュ5の第2側面54は第4環状部323の側面323aを軸方向の他方側(車室側)に向けて押す。すると、図8の矢印120に示すように、中心軸Zを含む断面において、第1シール部31は、時計回り方向に回転する。また、図8の矢印130に示すように、第2シール部32は、反時計回り方向に回転する。これにより、第1環状部312の側面312bと、第3環状部322の側面322bとは、軸方向で互いに近づく。凹部110には、ベローズ2の径方向内側端部20が嵌められる。以上より、ブッシュ5をシール部材3の内周に嵌め込むと、ベローズ2の径方向内側端部20が、第1環状部312の側面312bと第3環状部322の側面322bとの両側からより強固に挟んで保持することができる。
【0073】
[第1変形例]
次に、第1変形例について説明する。図11は、第1変形例に係るダストカバーの断面図である。
【0074】
第1変形例のダストカバー1Aは、第1実施形態のダストカバー1に対して、取付部材6Aの構造、およびベローズ2Aの端部の形状が相違し、その他の部位は同一である。以下に、相違点のみを説明する。
【0075】
図11に示すように、取付部材6Aは、本体部61と、フランジ部62Aと、を備える。フランジ部62Aには、貫通孔621Aが貫通して設けられる。
【0076】
図11に示すように、ベローズ2Aは、径方向内側端部20と、第1可撓部21と、第1嵌合部22Aと、第2可撓部25と、第2嵌合部26Aと、を備える。第1嵌合部22Aには、凹溝221Aが設けられる。第1嵌合部22Aは、凹溝221Aの先に、フランジ222Aと、突起部223Aとを備える。突起部223Aは、フランジ222Aから車室側に向けて延び、フランジ部62Aの貫通孔621Aに挿通される。突起部223Aは、拡径部224Aを有する。拡径部224Aは、突起部223Aの抜け止め機能を有する。このように、第1嵌合部22Aは、取付部材6Aの本体部61およびフランジ部62Aに当接する。なお、第2嵌合部26Aは、径方向内側に突出しており、凹溝221Aに嵌められる。
【0077】
以上説明したように、第1変形例においても、第1シール部31と第2シール部32とが筒部30を介して一体化されて1つのシール部材3になっている。従って、第1変形例によっても、特許文献1に対して、より少ない作業工数で製造することが可能なダストカバーを提供することができる。
【0078】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図12は、第2実施形態に係るダストカバーの断面図である。図13は、図12のブッシュおよびシール部材の断面図である。
【0079】
第2実施形態のダストカバー1Bは、第1実施形態のダストカバー1に対して、主にシール部材3Bが相違する。以下に、相違点のみを説明する。
【0080】
図13に示すように、シール部材3Bは、筒部30Bと、第1シール部31Bと、第2シール部32Bと、を備える。シール部材3Bにおいては、筒部30B、第1シール部31Bおよび第2シール部32Bが一体化されている。
【0081】
筒部30Bは、図13に示すように、第1突出部304Bと、第2突出部305Bとを有する。第1突出部304Bおよび第2突出部305Bは、筒部30Bにおける軸方向の中央に設けられる。第1突出部304Bは、外周面301から径方向外側に突出する。第2突出部305Bは、内周面302から径方向内側に突出する。第1突出部304Bおよび第2突出部305Bは、中心軸Zを含む断面において、矩形状である。
【0082】
図12に示すように、ベローズ2Bの径方向内側端部20Bには、凹溝201Bが設けられ、凹溝201Bに第1突出部304Bが嵌まる。また、ブッシュ5の外周面51には、凹溝511Bが設けられ、凹溝511Bに第2突出部305Bが嵌まる。
【0083】
以上説明したように、筒部30Bは、径方向外側に突出する第1突出部304Bと、径方向内側に突出する第2突出部305Bと、を有する。ベローズ2Bの径方向内側端部20Bには、第1突出部304Bが嵌まる凹溝201Bが設けられ、ブッシュ5Bの外周面51には、第2突出部305Bが嵌まる凹溝511Bが設けられる。
【0084】
従って、ベローズ2Bに対して軸方向の荷重がかかった場合には、第1突出部304Bによってベローズ2Bの軸方向移動が抑制される。また、ブッシュ5Bに対して軸方向の荷重がかかった場合には、第2突出部305Bによってブッシュ5Bの軸方向移動が抑制される。さらに、シール部材3Bに対して軸方向の荷重がかかった場合には、第1突出部304Bおよび第2突出部305Bによってシール部材3Bの軸方向移動が抑制される。
【符号の説明】
【0085】
1、1A、1B ダストカバー
2、2A、2B ベローズ
3、3B シール部材
5、5B ブッシュ
6、6A 取付部材
10 ダッシュパネル
20、20B 径方向内側端部
21 第1可撓部
22、22A 第1嵌合部
25 第2可撓部
26、26A 第2嵌合部
30、30B 筒部
31、31B 第1シール部
32、32B 第2シール部
51 外周面
52 内周面
53 第1側面
54 第2側面
55 潤滑剤溝
61 本体部
62、62A フランジ部
80 ステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 第1ステアリングシャフト
82a 入力軸
82b 出力軸
83 操舵力アシスト機構
84 第1ユニバーサルジョイント
85 第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)
85a 外周面
86 第2ユニバーサルジョイント
87 第3ステアリングシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオン
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU
92 減速装置
93 電動モータ
94 トルクセンサ
95 車速センサ
98 イグニッションスイッチ
99 電源装置
100 バンド
101 筒状部材
102 スリット
110 凹部
120、130 矢印
201B 凹溝
221A 凹溝
222A フランジ
223A 突起部
224A 拡径部
301 外周面
302 内周面
303 端
304 端
304B 第1突出部
305B 第2突出部
311 先端
312 第1環状部
312a 内周面
312b 側面
312c 端
312d 外周面
313 第2環状部
313a 側面
313b 側面
313c 内周面
313d 端
314 連結部
314a 端
314b 外周面
315 第1リップ部
315a 外周面
315b 内周面
315c 側面
321 先端
322 第3環状部
322a 内周面
322b 側面
322c 端
322d 外周面
323 第4環状部
323a 側面
323b 側面
323c 内周面
323d 端
324 連結部
324b 外周面
325 第2リップ部
325a 外周面
325b 内周面
325c 側面
511B 凹溝
611 第1溝
621A 貫通孔
Z 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13