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特開2023-59163ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート、成形体及び部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059163
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート、成形体及び部材
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/10 20060101AFI20230419BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20230419BHJP
   A61K 6/887 20200101ALI20230419BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20230419BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20230419BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20230419BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20230419BHJP
   C08F 20/14 20060101ALI20230419BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20230419BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C08F20/10
A61K6/60
A61K6/887
A61L27/16
A61L31/04 110
A61L27/50
A61L31/14
C08F20/14
C08F2/06
C08L33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169129
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田村 健範
【テーマコード(参考)】
4C081
4C089
4J002
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081CA081
4C081CC08
4C081CF21
4C081DA01
4C081DA11
4C081DA16
4C081EA05
4C089BA19
4C089BC20
4C089BD01
4C089BE03
4C089CA09
4J002BG061
4J002GB01
4J011AA04
4J011HA03
4J011HB22
4J100AL03P
4J100CA01
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA52
(57)【要約】
【課題】ホウ素元素含有量が多く、かつ成形性に優れるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリレートと、部分酸化トリアルキルホウ素を含む重合開始剤と、溶媒S1とを含む原料溶液を準備する第一の工程と、前記原料溶液を50℃~200℃の範囲内で加熱することを含み、反応溶液を得る第二の工程と、前記反応溶液から溶媒の一部を留去し、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを得る第三の工程と、をこの順で備えるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートと、部分酸化トリアルキルホウ素を含む重合開始剤と、溶媒S1とを含む原料溶液を準備する第一の工程と、
前記原料溶液を50℃~200℃の範囲内で加熱することを含み、反応溶液を得る第二の工程と、
前記反応溶液から溶媒の一部を留去し、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを得る第三の工程と、をこの順で備えるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量が4,000~1,500,000である、請求項1に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項3】
前記溶媒S1が、芳香族化合物、炭化水素、アルコール化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、エステル化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒である、請求項1又は請求項2に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項4】
前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートのホウ素元素含有量が、前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート100質量部に対して0.1質量部~10質量部である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項5】
前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの加工可能温度が80℃~200℃の範囲内である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法により得られたホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート。
【請求項7】
ブロック状、顆粒状、板状又はペレット状である請求項6に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを含む成形体。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の成形体を含む医療用又は歯科用の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート、成形体及び部材に関する。
【背景技術】
【0002】
重合開始剤として機能する有機ホウ素化合物は、毒性及び有害性が低く、歯科、医療用途(例えば、外科、軟組織接着、創傷被覆等)の安全性が求められる用途への展開が進められている。例えば、特許文献1では、(a)重合性モノマー、(b)(メタ)アクリレート重合体及び(c)有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物を所定量含有してなる歯科用又は外科用接着剤組成物が提案されている。さらに、非特許文献1では、有機ホウ素化合物であるトリブチルボランを用いたメタクリル酸メチルの重合反応について検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-110913号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本化学会誌、1973,p.2405~2409
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホウ素化合物は、抗菌性、防カビ性、骨伝導性などの様々な生物学的な作用を奏することが報告されている。そのため、これらの作用を発揮させる点から、ホウ素成分を含む樹脂材料が検討されている。
【0006】
上記非特許文献1では、トリブチルボラン(TBB)を用いてメタクリル酸メチルを重合することでポリマーであるポリメタクリル酸メチル(PММA)を生成することが開示されている。しかし、非特許文献1では、製造されるポリメタクリル酸メチルのホウ素の含有量については検討されておらず、非特許文献1に記載の方法で製造されるPММA中にはホウ素元素がほとんど含まれないという問題がある。さらに、非特許文献1に記載の方法で製造されるPММAの加工可能温度は比較的高く、成形性の点で改良の余地がある。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ホウ素元素含有量が多く、かつ成形性に優れるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びに前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを含む成形体及び部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> (メタ)アクリレートと、部分酸化トリアルキルホウ素を含む重合開始剤と、溶媒S1とを含む原料溶液を準備する第一の工程と、
前記原料溶液を50℃~200℃の範囲内で加熱することを含み、反応溶液を得る第二の工程と、
前記反応溶液から溶媒の一部を留去し、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを得る第三の工程と、をこの順で備えるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
<2> 前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量が4,000~1,500,000である、<1>に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
<3> 前記溶媒S1が、芳香族化合物、炭化水素、アルコール化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、エステル化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒である、<1>又は<2>に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
<4> 前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートのホウ素元素含有量が、前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート100質量部に対して0.1質量部~10質量部である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
<5> 前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの加工可能温度が80℃~200℃の範囲内である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法。
【0009】
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法により得られたホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート。
<7> ブロック状、顆粒状、板状又はペレット状である<6>に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート。
<8> <6>又は<7>に記載のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを含む成形体。
<9> <7>又は<8>に記載の成形体を含む医療用又は歯科用の部材。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ホウ素元素含有量が多く、かつ成形性に優れるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート及びその製造方法、並びに前記ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを含む成形体及び部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、数値範囲を示す「~」はその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、各成分の量について言及する場合、各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリロキシ」とはアクリロキシ又はメタクリロキシを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
本開示において、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートは、ホウ素元素を含むポリ(メタ)アクリレートを意味する。ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートは、ホウ素元素を含むホウ素化合物(例えば、部分酸化トリアルキルホウ素)を含んでいてもよい。
本開示において、第三の工程後に残留する溶媒、未反応の(メタ)アクリレート等を含むホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートについても、「ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート」に分類する。
【0012】
<ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法>
本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法は、(メタ)アクリレートと、部分酸化トリアルキルホウ素を含む重合開始剤と、溶媒S1とを含む原料溶液を準備する第一の工程と、前記原料溶液を50℃~200℃の範囲内で加熱することを含み、反応溶液を得る第二の工程と、前記反応溶液から溶媒の一部を留去し、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを得る第三の工程と、をこの順で備える。
【0013】
本開示の製造方法によれば、ホウ素元素含有量が多く、かつ成形性に優れるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを製造することができる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。本開示の製造方法では、(メタ)アクリレート及び部分酸化トリアルキルホウ素を含む原料溶液を50℃~200℃の範囲内で加熱し、さらに、得られた反応溶液から溶媒の一部を留去する。これにより、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの収率が高まり、メタノール等を用いて反応溶液をクエンチ及び沈殿処理してホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを得る場合と比較してホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートに残留するホウ素元素含有量を高めることができる。ポリ(メタ)アクリレートよりも融点が低いホウ素化合物が高い濃度で残存し、その後に調製するホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物中にもホウ素化合物が高い濃度で残存することになる。さらに、反応溶液から溶媒の一部を留去することで、一部の溶媒がホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートに残留する。ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートにおいて、残留するホウ素元素含有量が増え、かつ一部の溶媒が残留することで、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート、又はこれを含む樹脂組成物の融点、ガラス転移温度等が低下する。その結果、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート及びこれを含む樹脂組成物の成形可能温度が低下し、成形性が良好となる。
【0014】
さらに、上記成形可能温度が低下することで、加工時の加熱によりホウ素が抜けにくくなる傾向にあり、ホウ素元素含有量に優れる成形体が得られやすくなる。本開示の製造方法にて得られるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート、又はこれを含む樹脂組成物では、加熱成形後に溶媒が揮散するため、成形体の耐熱性は溶媒が残留している状態より良好となる。
【0015】
一方、ポリ(メタ)アクリレート、又はこれを含む樹脂組成物の成形性を高めるために融点の低いホウ素化合物を別途添加した場合、成形温度の低下は期待されるものの、樹脂中への充分なホウ素元素の混合がなされず、加熱成形後の耐熱性が低下するおそれがある。本開示の製造方法では、樹脂組成物等の成形性を高めるために上記ホウ素化合物を重合後の樹脂組成物に添加する必要がなく、成形体の耐熱性の低下を抑制することができる。
【0016】
以下、本開示の製造方法における各工程及び各工程にて用いる原材料、溶媒等について説明する。
【0017】
[第一の工程]
本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法は、(メタ)アクリレートと、部分酸化トリアルキルホウ素を含む重合開始剤と、溶媒S1とを含む原料溶液を準備する第一の工程を含む。
【0018】
((メタ)アクリレート)
ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造に用いられる(メタ)アクリレートは、一つ以上の(メタ)アクリロイル基を含む化合物であれば特に限定されない。(メタ)アクリレートの具体例としては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレートとしては、1種単独であってもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ
ート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2-ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、1,3-ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;
パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;
γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シランなどの(メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;及び
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの複素環を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、へキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;
脂環系又は芳香族ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリレートとしては、得られる樹脂の成形性の観点から、単官能(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがさらに好ましい。
【0022】
(重合開始剤)
重合開始剤は、部分酸化トリアルキルホウ素を含む。部分酸化トリアルキルホウ素は、トリアルキルホウ素の部分酸化物である。部分酸化トリアルキルホウ素は、酸化されていないトリアルキルホウ素と部分酸化トリアルキルホウ素との混合物であってもよく、このような混合物も部分酸化トリアルキルホウ素として分類する。
【0023】
トリアルキルホウ素としては、例えば、炭素数が2~8のアルキル基が3つ結合したホウ素化合物が好ましく、炭素数が2~6のアルキル基が3つ結合したホウ素化合物がより好ましい。トリアルキルホウ素に含まれるアルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基等が挙げられる。トリアルキルホウ素に含まれる3つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
トリアルキルホウ素の具体例としては、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ-sec-ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリヘプチルホウ素、トリオクチルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素などが挙げられる。
【0025】
部分酸化トリアルキルホウ素としては、前述のトリアルキルホウ素の部分酸化物が好ましく、部分酸化トリブチルホウ素がより好ましい。
【0026】
部分酸化トリアルキルホウ素としては、トリアルキルホウ素1モルに対し、0.3~0.9モルの酸素が付加されていることが好ましく、0.4~0.6モルの酸素が付加されていることがより好ましい。
【0027】
重合開始剤は、部分酸化トリアルキルホウ素以外の重合開始剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。部分酸化トリアルキルホウ素以外の重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、トリアルキルホウ素、アルコキシアルキルホウ素、ジアルキルボラン等の有機ホウ素化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等が挙げられる。
【0028】
重合開始剤における部分酸化トリアルキルホウ素の含有量は、重合開始剤全量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0029】
第一の工程にて準備される原料溶液において、(メタ)アクリレートと重合開始剤との質量比である(メタ)アクリレート:重合開始剤は、90:10~99:1であることが好ましく、92:8~98:2であることがより好ましい。
【0030】
(溶媒S1)
本開示の製造方法では、(メタ)アクリレート及び重合開始剤を含む原料溶液の準備のために溶媒S1が用いられる。溶媒S1は、(メタ)アクリレート及び重合開始剤を溶解可能であれば特に限定されない。
【0031】
溶媒S1としては、例えば、芳香族化合物、炭化水素、アルコール化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
溶媒S1は、1種の溶媒であってもよく、2種以上の溶媒の組み合わせであってもよい。
【0032】
芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、モノクロロベンゼン、o-クロロフェノール等が挙げられる。
炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、1-メトキシ-2-プロパノール等が挙げられる。
ケトン化合物としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。
エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)、等が挙げられる。
エステル化合物としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、フルオロベンゼン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン等が挙げられる。
【0033】
第一の工程にて準備される原料溶液において、溶媒S1の量は特に限定されない。例えば、溶媒S1 1リットル当たりの(メタ)アクリレートの濃度を、0.1モル~2.0モルとしてもよく、0.5モル~1.5モルとしてもよい。
【0034】
[第二の工程]
本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法は、第一の工程にて準備した原料溶液を50℃~200℃の範囲内で加熱することを含み、反応溶液を得る第二の工程を含む。原料溶液を50℃以上で加熱することでホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの重合収率を高められる傾向にある。原料溶液を200℃以下で加熱することで(メタ)アクリレートの重合反応中の溶媒S1、(メタ)アクリレートの揮発等を抑制できる傾向にある。
【0035】
原料溶液の加熱温度は、溶媒S1、(メタ)アクリレートの沸点等によって適宜調整してもよい。例えば、原料溶液の加熱温度は、50℃~180℃であってもよく、55℃~160℃であってもよく、60℃~140℃であってもよい。
【0036】
原料溶液の加熱時間は、(メタ)アクリレートの重合が可能であれば特に限定されず、例えば、1時間~72時間であってもよく、2時間~24時間であってもよく、3時間~12時間であってもよい。
【0037】
第二の工程は、第一の工程にて準備した原料溶液を50℃~200℃の範囲内で加熱する処理以外の処理を含んでいてもよい。例えば、第二の工程は、原料溶液を50℃~200℃の範囲内で加熱する処理の後に、原料溶液の準備に使用した重合開始剤のモル数に対して1当量~10当量である沸点が50℃~250℃の溶媒S2を、加熱後の原料溶液に添加する処理を含んでいてもよい。溶媒S2の添加により、(メタ)アクリレートの重合反応を好適に停止、抑制することができる。
【0038】
(溶媒S2)
溶媒S2としては、沸点が50℃~250℃の溶媒であれば特に限定されない。具体的には、水、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
溶媒S2は、1種の溶媒であってもよく、2種以上の溶媒の組み合わせであってもよい。
【0039】
第一級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
第二級アルコールとしては、イソプロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール等が挙げられる。
第三級アルコールとしては、tert-ブチルアルコール等が挙げられる。
【0040】
溶媒S2を加熱後の原料溶液に添加する処理では、重合開始剤のモル数に対して1.5当量~8当量である溶媒S2を原料溶液に添加することが好ましく、重合開始剤のモル数に対して2当量~6当量である溶媒S2を原料溶液に添加することがより好ましく、重合開始剤のモル数に対して3当量~5当量である溶媒S2を原料溶液に添加することがさらに好ましい。
【0041】
[第三の工程]
本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法は、第二の工程を経て得られた反応溶液から溶媒の一部を留去する第三の工程を含む。第三の工程を経ることにより、残留するホウ素元素含有量が多く、かつ一部の溶媒が残留したホウ素含有(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0042】
溶媒の一部を留去する方法としては、減圧留去、加熱留去又はこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、加熱留去した後に減圧留去することで反応溶液から溶媒を留去してもよい。
留去される溶媒としては、前述の溶媒S1、後述する溶媒S2等が挙げられる。
【0043】
本開示の製造方法は、前述の第一の工程、第二の工程及び第三の工程以外の工程を含んでいてもよい。
【0044】
本開示の製造方法は、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートにホウ素化合物を別途添加する工程を含んでいてもよい。本開示の製造方法では、ホウ素化合物を別途添加せずともホウ素元素含有量が多いホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを得ることができるため、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートにホウ素化合物を別途添加する工程を含んでいなくてもよい。
【0045】
本開示の製造方法にて得られるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、4,000~1,500,000であってもよく、5,000~1,000,000であってもよく、5,500~500,000であってもよい。
本開示では、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた標準ポリメチルメタクリレート換算の分子量であり、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0046】
本開示の製造方法にて得られるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートのホウ素元素含有量は、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.1質量部~10質量部であってもよく、0.11質量部~5質量部であってもよく、0.12質量部~1質量部であってもよい。
【0047】
本開示の製造方法にて得られるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの加工可能温度は、80℃~200℃の範囲内であってもよく、90℃~190℃の範囲内であってもよく、100℃~180℃の範囲内であってもよい。
ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの加工可能温度は、後述の実施例のようにして求めることができる。
【0048】
本開示の製造方法にて得られるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートは、溶媒を一部含んでいてもよく、例えば、溶媒S1を含んでいてもよく、溶媒S1及び溶媒S2の少なくとも一方を含んでいてもよい。ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートは、未反応の(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートに、溶媒、未反応の(メタ)アクリレート等が含まれていることで、成形可能温度がより低下し、成形性がより良好となる傾向にある。
【0049】
本開示の製造方法にて得られるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートにおいて、溶媒の含有量は、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート全量に対して、0.01質量%~5質量%であってもよく、0.05質量%~3質量%であってもよく、0.1質量%~1質量%であってもよい。
溶媒の含有量は、後述の実施例のようにして求めることができる。
【0050】
本開示の製造方法にて得られるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートにおいて、未反応の(メタ)アクリレートの含有量は、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート全量に対して、0.01質量%~10質量%であってもよく、0.05質量%~5質量%であってもよく、0.1質量%~1質量%であってもよい。
未反応の(メタ)アクリレートの含有量は、後述の実施例のようにして求めることができる。
【0051】
<ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート>
本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートは、前述の本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの製造方法により得られる化合物である。この化合物は、ホウ素元素含有量が多く、かつ成形性に優れる。
【0052】
本開示の製造方法にて得られるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート及び本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートは、他の樹脂成分、無機充填剤等の充填剤、その他の成分等と混合して樹脂組成物として用いてもよい。
【0053】
その他の成分としては、特に限定されず、色素、顔料、殺菌剤、消毒剤、安定化剤、保存剤、可塑剤、医療用又は歯科用の添加剤等が挙げられる。
【0054】
樹脂組成物は、医療用又は歯科用の樹脂組成物であってもよい。医療用としては、例えば、外科用、軟組織接着用、創傷被覆用などが挙げられる。歯科用としては、例えば、歯科修復用、義歯床用、歯科接着用などが挙げられる。
【0055】
本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの形状は、特に限定されず、ブロック状、顆粒状、板状又はペレット状であってもよい。また、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物の形状も特に限定されず、ブロック状、顆粒状、板状又はペレット状であってもよい。
【0056】
本開示の成形体は、本開示のホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを含む。本開示の成形体は、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレート自体を成形したものであってもよく、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物を成形したものであってもよい。本開示の成形体は、医療用の成形体であってもよく、歯科用の成形体であってもよい。
【0057】
本開示の医療用又は歯科用の部材は、前述の本開示の成形体を含む。
医療用の部材としては、例えば、外科用、軟組織接着用、及び/又は創傷被覆用の部材などが挙げられる。
歯科用の部材としては、例えば、歯科修復用、義歯床用、歯科接着用の部材などが挙げられる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
〔実施例1〕
(原料溶液の準備)
メタクリル酸メチル(表1中のMMA)と、部分酸化トリブチルホウ素(トリアルキルホウ素1モルに対して1モルの酸素が付加された化合物、表1中のTBBO)と、溶媒S1としてのアセトンと、を含む原料溶液を準備した。原料溶液では、メタクリル酸メチルと部分酸化トリブチルホウ素との質量比(メタクリル酸メチル:部分酸化トリブチルホウ素)は95:5であり、メタクリル酸メチルのモル濃度は1mol/Lであった。
【0060】
(原料溶液の加熱及び溶媒の添加)
準備した原料溶液を60℃で7時間加熱し、メタクリル酸メチルを重合させた。7時間加熱後の原料溶液に水を部分酸化トリブチルホウ素のモル数に対して4当量(4eq/mol vs TBBO)添加し、反応溶液を得た。
【0061】
(溶媒の留去)
次に、反応溶液から溶媒の一部を留去した。具体的には、60℃、60mmHg下で留去し、反応溶液を130℃で加熱することで揮発成分を留去し、次いで、反応溶液を75℃で加熱しつつ減圧下において樹脂中の揮発成分を減じた。
以上の操作によって、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを得た。
【0062】
(重合収率の算出)
得られたホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの質量及び、原料としたメタクリル酸メチル及び部分酸化トリブチルホウ素の合計質量を用い、以下の式に基づいて得られたホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの重合収率を算出した。結果を表1に示す。
重合収率(%)=[(ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの質量)/(メタクリル酸メチル及び部分酸化トリブチルホウ素の合計質量)]×100
【0063】
(重量平均分子量の測定)
ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。具体的には、以下の装置及び条件にて標準ポリメチルメタクリレート換算の分子量を求めた。
-GPC測定装置- 515 HPLC ポンプ,717plus 自動注入装置(日本ウォーターズ株式会社),R-101 示差屈折率検出器(Shodex)
-カラム-
PLgel 5μ MIXED-D,7.5mm×300mm×2本
-サンプルの調製-
測定対象となるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを室温(20℃~30℃)で試料10.0mgあたり10.0mLの溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)へ溶解させ、一夜静置させた。その後、この溶液をガラスシリンジに取り付けた0.45μmの親水性PTFE メンブランフィルターカートリッジ(Millex-LCR 33mm、メルク社製)でろ過し、ろ液を測定に供した。
-測定条件-
サンプル溶液100μLを移動相(例えば、テトラヒドロフラン)、カラム温度40℃、1.0mL/min.の流速でカラムに導入した。
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を前述の示差屈折率検出器で測定した。ポリメチルメタクリレート標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量(Mw)を算出した。
結果を表1に示す。
【0064】
(ホウ素元素含有量の測定)
ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートのホウ素元素含有量(B含有量)を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)により測定した。
-測定装置-
ICP発光分光分析装置 720-ES(アジレント・テクノロジー社製)
-測定条件-
特殊容器を用いて試料を湿式分解し、純水で定容及び適宜希釈したものを検液とし、ICP発光分光分析法にて定量した。
結果を表1に示す。
【0065】
(残留モノマー量の測定)
ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの残留モノマー量、すなわち、残留するメタクリル酸メチルの量を加熱脱着ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定した。
-加熱脱着装置-
TDSA/TDS3/CIS4(GERSTEL社製)
-GC-MS装置-
HP6890N-HP5973(アジレント社製)
-カラム-
DB-HeavyWAX(60m×0.25mmID×0.50μm)
-測定条件-
試料10mgを加熱脱着GC/MSに供し、得られたトータルイオンカレント(TIC)クロマトグラムより残留モノマー量を定量した。
-加熱脱着装置の設定-
加熱抽出温度:120℃、加熱時間:30min、加熱抽出流量:70mL/min、トラップ温度:-150℃、脱着温度:300℃、脱着時間:2min
-GC条件-
GC条件はカラム流量1.4mL/min、昇温条件は初め40℃で3分保持した後に毎分10℃で昇温し、270℃に到達後に4分保持した。MS測定モードはSCAN(m/z 20-500)で測定した。
結果を表1に示す。
【0066】
(残留溶媒量の測定)
ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの残留溶媒量を加熱脱着ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定した。測定条件は残留モノマー量の測定に用いた手法と同じ手法により実施した。
結果を表1に示す。
【0067】
(加工可能温度)
ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの加工可能温度は次のようにして測定した。本発明により得た樹脂5mgを充填したDSC測定用のAl製サンプルパンをホットプレート(アズワン社製)に設置して加熱し、樹脂が溶解した時の温度を記録した。加熱は50℃から始めて10℃ずつ昇温した。
結果を表1に示す。
【0068】
〔実施例2~実施例8〕
実施例1において、(原料溶液の準備)の工程にて使用したアセトンを表1に示す溶媒に変更し、(原料溶液の加熱及び溶媒の添加)の工程での原料溶液の加熱温度を表1に示す温度に変更した以外は実施例1と同様にしてホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを得た。実施例2~8にて得られたホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを用いて、前述の各物性を求めた。結果を表1に示す。
表1中に示す溶媒の略称は以下の通りである。
THF テトラヒドロフラン
IPA イソプロパノール
1,4-DOX 1,4-ジオキサン
MIBK メチルイソブチルケトン
AcOBu 酢酸ブチル
ClPh モノクロロベンゼン
【0069】
〔比較例1及び比較例2〕
実施例1において、(原料溶液の加熱及び溶媒の添加)の工程での原料溶液の加熱温度を表1に示す温度に変更した以外は実施例1と同様にしてホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを合成することを試みた。しかし、比較例1及び比較例2では、以下の表1に示すように重合収率が非常に低く、実質的にホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを合成することができなかった。そのため、前述の各物性についてはその評価を省略した。
結果を表1に示す。
【0070】
〔比較例3〕
実施例1の(原料溶液の準備)と同様にして、原料溶液を準備した。準備した原料溶液を60℃で7時間加熱し、メタクリル酸メチルを重合させた。7時間加熱後の原料溶液を多量のメタノール中に添加してメタクリル酸メチルの重合反応を停止させた。次いで、メタノール中に沈殿した沈殿物であるホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートをろ過により取り出した。比較例3にて得られたホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートを用いて、前述の各物性を求めた。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、比較例1及び比較例2では、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの収率が非常に低かった。
比較例3では、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの収率がやや低く、加工可能温度が高く成形性に課題があった。
実施例1~8では、比較例1~3よりもホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートの収率が高く、且つ比較例3よりも加工可能温度が低く成形性が良好であった。さらに、実施例1~8では、ホウ素含有ポリ(メタ)アクリレートのホウ素元素含有量は、比較例3と比較して高い数値を示した。