(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059176
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】蒸留装置
(51)【国際特許分類】
B01D 3/00 20060101AFI20230419BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20230419BHJP
B01D 1/04 20060101ALI20230419BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20230419BHJP
【FI】
B01D3/00 Z
B01D5/00 A
B01D1/04
C02F1/04 A
C02F1/04 C
C02F1/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169158
(22)【出願日】2021-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】510075387
【氏名又は名称】活水プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】飯田 克己
(72)【発明者】
【氏名】飯田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 倫之
【テーマコード(参考)】
4D034
4D076
【Fターム(参考)】
4D034AA01
4D034AA27
4D034BA01
4D034BA03
4D034CA12
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4D076EA04X
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4D076EA20X
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4D076FA33
4D076HA02
4D076HA06
4D076HA11
4D076JA03
(57)【要約】
【課題】コンパクトな蒸留装置を提供すること。
【解決手段】第一実施形態の蒸留装置100は、海水SWの溶媒を気化させる蒸発塔110と、気化した溶媒を液化させて蒸留水DWとして分離する凝縮塔160とを備える。蒸発塔110は、海水SWが加熱される加熱水槽117と、加熱水槽117に張り巡らされ、熱源からの熱媒体としての熱風HBを移送する熱媒体管112と、加熱水槽117を上から被覆し、内側上方が上方に凹んだ形状の天井壁125と、気化した溶媒を上に排出する、天井壁125の中心から上方に延設された誘導管126と、を備える。凝縮塔160は、天井壁125の上に連接され、誘導管126の上端部の蒸気出口127の周りを被覆し、気化した溶媒を冷却して液化させ、蒸留水DWを得る冷却器161を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液の溶媒を気化させる蒸発塔と、気化した該溶媒を液化させて分離する凝縮塔と、を備える蒸留装置であって、
該蒸発塔は、該水溶液が加熱される加熱水槽と、該加熱水槽に張り巡らされ、熱源からの熱媒体を移送する熱媒体管と、該加熱水槽を上から被覆し、内側上方が上方に凹んだ形状の天井壁と、気化した該溶媒を上に排出する、該天井壁の中心から上方に延設された誘導管と、を備え、
該凝縮塔は、該天井壁の上に連接され、該誘導管の上端部の溶媒出口の周りを被覆し、気化した該溶媒を冷却して液化させる冷却器を備えることを特徴とする蒸留装置。
【請求項2】
前記凝縮塔の天井面に、冷却水を循環させることによって前記溶媒を冷却する冷却ジャケットを備えることを特徴とする請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記凝縮塔内に、該凝縮塔内を水平方向に横断する上部仕切板と下部仕切板とがそれぞれ設けられ、
該上部仕切板と該下部仕切板との間に、冷却水を循環させることによって前記溶媒を冷却する冷却層を備え、
前記誘導管は、該冷却層を上下に貫通し、
該冷却層に、該冷却層を上下に貫通する多数の冷却管が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項4】
前記誘導管の外側に、断熱材が被覆されていることを特徴とする請求項3に記載の蒸留装置。
【請求項5】
前記凝縮塔の下側に、液化した前記溶媒を溜める液溜部と、該溶媒を排出する排出口と、を備え、
該排出口から排出される該溶媒を保管する溶媒水槽が設けられ、該溶媒水槽の外側に、該溶媒を循環させる循環配管が設けられ、
該循環配管に、該溶媒を循環させる動力となる循環ポンプと、該溶媒の循環により吸引ポンプとなるエゼクタと、を備え、
該エゼクタの吸引口が該排出口に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項6】
前記熱源は、有機廃棄物燃料又はバイオマス燃料の燃焼によるものであることを特徴とする請求項1に記載の蒸留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液から溶媒を分離する蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水溶液中の溶媒を分離する蒸留装置が知られている。特許文献1の蒸留装置は、水溶液を加熱・蒸発させて、蒸発した水を凝縮させて分離する。この蒸留装置は、水の凝縮を凝縮塔内で行なうことができるため、蒸留装置をコンパクトなものとしている。なお、特許文献1は、本願の出願人による特許出願である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献に記載の従来の蒸留装置には、装置をよりコンパクトにしたいという要望がある。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、コンパクトな蒸留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水溶液の溶媒を気化させる蒸発塔と、気化した該溶媒を液化させて分離する凝縮塔と、を備える蒸留装置であって、
該蒸発塔は、該水溶液が加熱される加熱水槽と、該加熱水槽に張り巡らされ、熱源からの熱媒体を移送する熱媒体管と、該加熱水槽を上から被覆し、内側上方が上方に凹んだ形状の天井壁と、気化した該溶媒を上に排出する、該天井壁の中心から上方に延設された誘導管と、を備え、
該凝縮塔は、該天井壁の上に連接され、該誘導管の上端部の溶媒出口の周りを被覆し、気化した該溶媒を冷却して液化させる冷却器を備えることを特徴とする。
【0007】
本明細書の実施形態に係る蒸留装置によれば、蒸発塔の加熱水槽内で加熱された水溶液から気化した溶媒が、凝縮塔の冷却器で冷却されて液体になる。凝縮塔が蒸発塔の天井壁の上に連接されているため、蒸留装置をコンパクトなものとすることができる。
【0008】
ここで、上記蒸留装置において、前記凝縮塔の天井面に、冷却水を循環させることによって前記溶媒を冷却する冷却ジャケットを備える構成とすることができる。
【0009】
これによれば、冷却ジャケットを備える天井面が冷却器としての冷却面となるため、蒸留装置をコンパクトなものとすることができる。
【0010】
また、上記蒸留装置において、前記凝縮塔内に、該凝縮塔内を水平方向に横断する上部仕切板と下部仕切板とがそれぞれ設けられ、
該上部仕切板と該下部仕切板との間に、冷却水を循環させることによって前記溶媒を冷却する冷却層を備え、
前記誘導管は、該冷却層を上下に貫通し、
該冷却層に、該冷却層を上下に貫通する多数の冷却管が設けられている構成とすることができる。
【0011】
これによれば、該誘導管の溶媒出口から排出される気化した溶媒が、逐次排出されることにより、冷却層を貫通する冷却管に流れ、冷却管内で冷却されるため、溶媒の液化を促進することができる。
【0012】
また、上記蒸留装置において、前記誘導管の外側に、断熱材が被覆されている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、誘導管内での液化を抑制することができる。
【0014】
また、上記蒸留装置において、前記凝縮塔の下側に、液化した前記溶媒を溜める液溜部と、該溶媒を排出する排出口と、を備え、
該排出口から排出される該溶媒を保管する溶媒水槽が設けられ、該溶媒水槽の外側に、該溶媒を循環させる循環配管が設けられ、
該循環配管に、該溶媒を循環させる動力となる循環ポンプと、該溶媒の循環により吸引ポンプとなるエゼクタと、を備え、
該エゼクタの吸引口が該排出口に接続されている構成とすることができる。
【0015】
これによれば、エゼクタの吸引により、凝縮塔と蒸発塔とを減圧することができ、溶媒の蒸留を促進することができる。
【0016】
また、上記蒸留装置において、前記熱源は、有機廃棄物燃料又はバイオマス燃料の燃焼によるものである構成とすることができる。
【0017】
これによれば、実施形態の蒸留装置を環境にやさしいものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書の実施形態に係る蒸留装置によれば、蒸留装置をコンパクトなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第一実施形態の蒸留装置を含む、蒸留プラントの全体の流れ図である。
【
図3】
図2のIII-III線位置の断面図である。
【
図5】第一実施形態の蒸留水槽のイメージ正面図である。
【
図6】第二実施形態の蒸留装置を含む、蒸留プラントの全体の流れ図である。
【
図7】第三実施形態の蒸留装置を含む、蒸留プラントの全体の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本明細書の蒸留装置の第一実施形態から第三実施形態を図面に基づいて説明する。第一実施形態から第三実施形態の蒸留装置100は、蒸留する水溶液として海水SWを用い、海水SWから塩分(その他ミネラル分を含む)を除去して、飲食等に利用可能な蒸留水DW(溶媒)を得るものを例にして説明する。しかし、実施形態に係る水溶液は、海水SWに限られるものではなく、河川の水、汚泥水、油水、家庭排水、工場廃水などであっても使用することができるものであり、これらからも、飲食等に利用可能な蒸留水DWを得ることができる。
【0021】
本明細書において、蒸留装置100の向きは、
図1、2に示すように、上下は設置された状態での上下とし、左右は熱媒体路111の入口側を右とし、前後は図面の手前側を前とし、図示で使用する、Fは前、Bは後、Uは上、Dは下、Lは左、Rは右を示す。また、蒸留装置100の内部を基準に、内側又は外側と表現することがある。
【0022】
(第一実施形態)
図2に示すように、第一実施形態の蒸留装置100は、海水SWの溶媒を気化させる蒸発塔110と、気化した溶媒を液化させて蒸留水DWとして分離する凝縮塔160とを備える。蒸発塔110は、海水SWが加熱される加熱水槽117と、加熱水槽117に張り巡らされ、熱源300からの熱媒体としての熱風HBを移送する熱媒体管112と、加熱水槽117を上から被覆し、内側上方が上方に凹んだ形状の天井壁125と、気化した溶媒を上に排出する、天井壁125の中心から上方に延設された誘導管126と、を備える。凝縮塔160は、天井壁125の上に連接され、誘導管126の上端部の蒸気出口127の周りを被覆し、気化した溶媒を冷却して液化させ、蒸留水DWを得る冷却器161を備える。
【0023】
蒸発塔110は、略直方体状をなし、中央に、海水SWを加熱する略直方体状をなす加熱水槽117を備える。加熱水槽117には、海水供給口121から海水SWが供給される。加熱水槽117の左右両側には、熱風HBが導風される熱媒体室113が設けられ、左側の熱媒体室113は、仕切板114によって、上下に2分割され、
図2に示す如く、左下側の熱媒体室113Aと左上側の熱媒体室113Cとが形成されている。なお、右側の熱媒体室113は、熱媒体室113Bとする。
【0024】
加熱水槽117の下半分の上下前後の中心の左右方向に、蒸発塔110の右側の外側から左下側の熱媒体室113Aにかけて、熱媒体路111が貫通している。熱媒体路111は、左下側の熱媒体室113Aに、熱源300からの熱風HBを導風するものである。
図4に示すように、左下側の熱媒体室113Aから右側の熱媒体室113Bの下半分側に向けて20本の熱媒体管112が、加熱水槽117内を貫通している。熱媒体管112は、加熱水槽117内の海水SWを熱風HBの熱によって加熱し、海水SWの溶媒である水を蒸発させて水蒸気VWを発生させるものである。海水SWが加熱されて水が水蒸気VWとして蒸発するとき、海水SWの溶質である塩分は気化せず海水SWに留まるため、水蒸気VWは塩分が除去されたものとなる。
【0025】
図4に示すように、加熱水槽117の右側の熱媒体室113Bの上半分から左上側の熱媒体室113Cに、21本の熱媒体管112が加熱水槽117を貫通し、熱風HBは、右側の熱媒体室113Bから左上側の熱媒体室113Cに導風されるとともに、加熱水槽117内の海水SWの溶媒である水を気化させて水蒸気VWを発生させる。つまり、熱風HBは、熱源300から熱媒体路111を通り左下側の熱媒体室113Aに導風され、左下側の熱媒体室113Aから熱媒体管112を通り右側の熱媒体室113Bの下側に導風され、右側の熱媒体室113B内を上に移動し、熱媒体室113Bの上側から熱媒体管112を通り左上側の熱媒体室113Cに導風されて、加熱水槽117内の海水SWの溶媒である水を気化させて水蒸気VWとするものである。左上側の熱媒体室113の外側には、熱風HBを蒸留装置100の外に放出する排気塔116が設けられ、熱風HBは、外部に放出される。
【0026】
左下側の熱媒体室113Aには、熱風HBの温度を測定する熱風温度計120が設置され、熱風HBの温度と、詳しくは後述する海水SWの温度を測定する水温計119の温度とにより、熱源300の出力が調整される。
【0027】
加熱水槽117の上側は、内側上方が上方に凹んだ形状の天井壁125で覆われ、天井壁125の中心から上方に誘導管126が延設され、気化した溶媒としての水蒸気VWを誘導管126の蒸気出口127から凝縮塔160に移送する。誘導管126の外周は、断熱材128が被覆されている(
図3)。水蒸気VWが誘導管126に接触して液化(結露)するのを防ぐためである。加熱水槽117の上側の左端には、海水SWが供給される海水供給口121が設けられている。加熱水槽117の右側に、水位調節器122が設置され、加熱水槽117の水位は、水位調節器122が供給バルブ124を開閉することによって、海水供給口121から流入される海水SWの量が調整され、水位がおよそ一定に保たれる。
【0028】
加熱水槽117には、海水SWの温度を測定する水温計119が設置され、熱風温度計120とともに、熱源の出力を調整する。
【0029】
また、加熱水槽117には、塩分濃度計129が設置され、塩分濃度を確認することにより、海水SWが煮詰まり塩分が析出する前に、海水SWを交換することができる。海水SWを交換する際の塩分濃度は、一例として、塩分の析出が始まる濃度(22質量%)よりわずかに薄い20質量%とすることができる。加熱水槽117の底面には、排出ドレン118が設けられ、詳しくは後述するが、海水SWが煮詰まった高濃度塩水CWは、これを回収する濃縮水回収槽250へと移送される。
【0030】
凝縮塔160は、加熱水槽117の天井壁125の上に連接され、誘導管126の蒸気出口127から移送された水蒸気VWを液化させて蒸留水DWとする設備である。凝縮塔160が蒸発塔110の天井壁125の上に連接されているため、蒸留装置100は、コンパクトなものとすることができる。
【0031】
凝縮塔160内には、凝縮塔160内を水平方向に横断する上部仕切板171と下部仕切板172とがそれぞれ設けられ、上部仕切板171と下部仕切板172とで区切られた間は、冷却水RWが循環する冷却器161としての冷却層170が形成されている。誘導管126が冷却層170を下から上に貫通し、蒸発塔110で発生した水蒸気VWは、加熱水槽117から誘導管126を通って、冷却層170の上に配置された蒸気溜165に移送される。
【0032】
蒸気溜165には導風バルブ177が設置され、蒸気溜165内が異常高温や異常高圧となった際に、蒸気溜165に外気が導風される。蒸気溜165とこれに連通する液溜部166には、温度を測定する温度計168と圧力を測定する圧力計169が設置されている。
【0033】
凝縮塔160(蒸気溜165)の天井面162には、冷却水RWを循環させることによって、水蒸気VWを冷却する冷却ジャケット175が備えられている。冷却ジャケット175を備える天井面162が冷却器161として作用するため、蒸留装置100をコンパクトなものとすることができる。天井面162で冷却された水蒸気VWの一部は、液化して蒸留水DWとなり、冷却層170の上部仕切板171の上に落下する。
【0034】
図3に示すように、冷却層170には、60本の冷却管164が上下に貫通して設けられている。冷却層170の上部仕切板171の上に落下した蒸留水DWは、冷却管164を伝い、凝縮塔160の液溜部166に流れる。また、誘導管126の蒸気出口127から排出される水蒸気VWは、逐次排出されることにより、冷却層170を貫通する冷却管164に流れ、冷却管164内で冷却され蒸留水DWに変化し、冷却管164を伝い、凝縮塔160の液溜部166に流れる。
【0035】
液溜部166に流れた蒸留水DWは、詳しくは後述するが、蒸留水槽230のエゼクタ234によって、蒸留水槽230に減圧吸引される。エゼクタ234によって吸引されているため、凝縮塔160内と蒸発塔110の加熱水槽117内は、減圧された状態となる。このため、常圧の状態と比較して、海水SWを低温で気化させて水蒸気VWとすることができ、実施形態の蒸留装置100は、熱効率に優れるものとすることができる。
【0036】
次に、実施形態の蒸留装置100から構成される第1実施形態の蒸留プラント1を構成する付属設備について説明する。
【0037】
図1に示すように、第1実施形態の蒸留プラント1を構成する付属設備として、海水SWを供給する海水槽210と、海水SWから蒸留した蒸留水DWを回収等する溶媒水槽としての蒸留水槽230と、海水SWが煮詰まった高濃度塩水CWを回収する濃縮水回収槽250と、蒸発塔110の熱源となる燃焼炉310と、を備える。
【0038】
海水槽210(
図1)は、蒸発塔110の加熱水槽117に、海水SWを供給するタンクであり、海水SWが貯蔵され、供給ポンプ212によって海水SWが加熱水槽117の海水供給口121に供給される。海水SWの供給量は、水位調節器122が供給ポンプ212と供給バルブ124を開閉することによって、調整され、海水槽210内の水位がおよそ一定に保たれる。
【0039】
溶媒水槽としての蒸留水槽230(
図5)は、備えられたエゼクタ234によって、海水SWから蒸留した蒸留水DWを吸引回収することに加え、凝縮塔160内と蒸発塔110の加熱水槽117内を減圧にするものである。さらに、蒸留水槽230は、凝縮塔160の冷却層170と冷却ジャケット175に、冷却水RWを供給するタンクである。
【0040】
蒸留水槽230は、蒸留水DWを溜める主水槽231と補助水槽232を備え、主水槽231には、主水槽231の蒸留水DWを循環させる循環配管233が備えられ、循環配管233には、蒸留水DWを循環させる循環ポンプ235と、吸引ポンプとして作用するエゼクタ234とが備えられ、凝縮塔160で生じた蒸留水DWをエゼクタ234が吸引し、蒸留水DWを蒸留水槽230に貯める。エゼクタ234が、蒸留水DWを吸引するとともに、凝縮塔160内と蒸発塔110の加熱水槽117内を減圧状態にするため、常圧の状態と比較して、海水SWを低温で気化させ水蒸気VWとすることができるため、実施形態の蒸留装置100は、熱効率に優れるものとすることができる。主水槽231には、蒸留水DWの温度を測定する蒸留水温度計246と、主水槽231内の圧力を一定に保つ大気開放管245とが設けられている。
【0041】
なお、蒸留装置100の運転開始時など、蒸留水槽230に蒸留水DWが無く、吸引ポンプとしてのエゼクタ234を作動させることができない際には、送風機(図示せず)を用いて、凝縮塔160の導風バルブ177から蒸気溜165と液溜部166に送風し、液溜部166の蒸留水DWを、エゼクタ234を介して主水槽231に流入させることができる。導風バルブ177からの送風は、大気開放管245から主水槽231の外に排出される。
【0042】
主水槽231には、凝縮塔160の冷却器161としての冷却層170と冷却ジャケット175に、冷却水RW(蒸留水DW)を送る冷却配管238が備えられている。冷却配管238は、主水槽231から、冷却水ポンプ239、分岐240を経て、冷却層170と冷却ジャケット175に冷却水RWを送り、冷却層170と冷却ジャケット175で水蒸気VW(蒸留水DW)を冷却した冷却水RWを再び主水槽231に回収する。冷却配管238には、蒸留水DWを取り出すことができる取出バルブ241が備えられている。
【0043】
主水槽231には、オーバーフロー導管が備えられ、主水槽231に溜まった一定水量以上の蒸留水DWを補助水槽232に流す。補助水槽232には、蒸留水取出口244が設けられ、蒸留水DWを飲料水などとして使用することができる。
【0044】
濃縮水回収槽250(
図1)は、蒸発塔110の加熱水槽117にて、海水SWが煮詰まった高濃度塩水CWを回収するものである。海水SWは、塩の析出を防ぐため、定期的に交換する必要がある。塩が析出する濃度の22質量%よりわずかに薄い濃度の20質量%が交換の目安となる。塩分濃度は、蒸発塔110の塩分濃度計129で確認することができる。濃縮水回収槽250で回収された高濃度塩水CWは、さらに煮詰めることによって、海水SWの溶質が濃縮された塩(食塩)を得ることができる。
【0045】
燃焼炉310(
図1)は、蒸発塔110に送る熱源を供与するものである。燃焼炉310の燃料FUとしては、有機廃棄物燃料又はバイオマス燃料を使用することができる。燃料FUが有機廃棄物燃料又はバイオマス燃料であることによって、実施形態の蒸留装置を環境にやさしいものとすることができる。
【0046】
(第二実施形態)
図6に示すように、第二実施形態の蒸留装置100は、蒸発塔110に送る熱源300にメタンガス(都市ガス)を燃焼させる加熱バーナ320を用いたものである。第二実施形態の蒸留装置100は、第一実施形態の蒸留装置100と比較して、熱源300が異なり、その他については第一実施形態の蒸留装置100と同じであるため、第一実施形態と共通する要素については、同じ符号を用いてその説明を省略する。第二実施形態の蒸留装置100では、熱源300に都市ガスを用いることにより、第二実施形態の蒸留装置100は、安定した熱源300を得ることができるものである。
【0047】
(第三実施形態)
図7に示すように、第三実施形態の蒸留装置100は、蒸発塔110に送る熱源300に高温高圧の蒸気を発生する熱源ボイラ330を用いたものである。熱源300が高温高圧の蒸気であるため、熱媒体室113には、蒸気が冷えて液化した水を排出する排水ドレン115が設けられている。また、熱源300が高温高圧の蒸気であり、蒸発塔110内を高温高圧に保つため、排気塔116には、閉バルブ130が付設されている。第三実施形態の蒸留装置100は、第一実施形態の蒸留装置100と比較して、熱源300が異なり、その他については第一実施形態の蒸留装置100と同じであるため、第一実施形態と共通する要素については、同じ符号を用いてその説明を省略する。熱源300に高温高圧の蒸気を発生する熱源ボイラ330を用いることにより、第三実施形態の蒸留装置100は、例えば、ゴミ焼却炉で発生する副産物の高温高圧の蒸気によって、蒸留プラント3を運転することができる。
【実施例0048】
実施例の蒸留プラントは、第二実施形態の蒸留プラント2であり、以下の形態のものを使用した。
【0049】
蒸留装置100
蒸発塔110
加熱水槽117 W1000mm×D800mm×H800mm
熱媒体路111 Ф250mm×L1200mm×1本
熱媒体管112 Ф60mm×L1000mm×30本
凝縮塔160 W800mm×D800mm×H1000mm
冷却層170 W800mm×D800mm×H500mm
冷却管164 Ф60mm×L500mm×90本
冷却ジャケット175 W800mm×D800mm×H100mm
液溜部166 W800mm×D800mm×H300mm
海水槽210 W1000mm×D1000mm×H1000mm
供給ポンプ212 40A 0.2kW
蒸留水槽230
主水槽231 W1000mm×D600mm×H800mm
循環ポンプ235 50A 0.75kW
冷却水ポンプ239 40A 0.4kW
加熱バーナ320 250,000kcal/h
実施例の蒸留プラントでは、海水SWから1時間当たり500Lの蒸留水DWが得られた。都市ガスの使用量は、1時間当たり25m3であった。凝縮塔160の蒸気溜165の圧力は、ゲージ圧で-0.04MPaであった。
【0050】
(その他実施形態)
実施形態の蒸留装置は、以下のような形態であっても実施することができる。
【0051】
実施形態の蒸留装置は、海水SWから蒸留水DWを蒸留するものを例として記載したが、クロムやヒ素といった重金属などの有害物質を含有する水から有害物質を含有しない蒸留水DWの蒸留にも適用することができる。また、アルコール濃度を高める蒸留酒の蒸留などにも適用することができる。さらに、正確な温度管理が必要となるが、水と有機溶媒の混合物から、水又は有機溶媒を取り出す蒸留にも適用することができる。この場合、沸点が低い水又は有機溶媒が蒸留水槽230に回収され、沸点が高い水又は有機溶媒が濃縮水回収槽250から回収される。
1…蒸留プラント、2…蒸留プラント、3…蒸留プラント、100…蒸留装置、110…蒸発塔、111…熱媒体路、112…熱媒体管、113…熱媒体室、113A…熱媒体室、113B…熱媒体室、113C…熱媒体室、114…仕切板、115…排水ドレン、116…排気塔、117…加熱水槽、118…排出ドレン、119…水温計、120…熱風温度計、121…海水供給口、122…水位調節器、124…供給バルブ、125…天井壁、126…誘導管、127…蒸気出口、128…断熱材、129…塩分濃度計、130…閉バルブ、160…凝縮塔、161…冷却器、162…天井面、164…冷却管、165…蒸気溜、166…液溜部、168…温度計、169…圧力計、170…冷却層、171…上部仕切板、172…下部仕切板、175…冷却ジャケット、177…導風バルブ、210…海水槽、212…供給ポンプ、230…蒸留水槽、231…主水槽、232…補助水槽、233…循環配管、234…エゼクタ、235…循環ポンプ、238…冷却配管、239…冷却水ポンプ、240…分岐、241…取出バルブ、244…蒸留水取出口、245…大気開放管、246…蒸留水温度計、250…濃縮水回収槽、300…熱源、310…燃焼炉、320…加熱バーナ、330…熱源ボイラ、CW…高濃度塩水、DW…蒸留水、FU…燃料、HB…熱風、RW…冷却水、SW…海水、VW…水蒸気。