(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059209
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20230419BHJP
B43K 1/00 20060101ALI20230419BHJP
B43K 5/00 20060101ALI20230419BHJP
B43K 5/16 20060101ALI20230419BHJP
B43K 3/00 20060101ALI20230419BHJP
B43K 3/04 20060101ALI20230419BHJP
B43L 19/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
B43K8/02
B43K1/00 110
B43K5/00 100
B43K5/16 100
B43K3/00 C
B43K3/04
B43L19/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070364
(22)【出願日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021168904
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】大本 慶
(72)【発明者】
【氏名】中田 瑛大
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊史
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA16
2C350HC05
2C350NA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】筆跡(描線)にカスレや線トビなどの筆跡不良が生ずるのを抑制できる使い方と、カスレなどを含む筆跡を得ることができる使い方とを容易に選択することができる筆記具を提供する。
【解決手段】筆記用インクを収容する容器本体2と、容器本体の口部2cを閉塞して配置された筆記体7と、口部に着脱可能に装着されて、筆記体を覆うキャップ部材4とを有し、容器本体内のインクを、筆記体から滲出させることにより、筆記面に対して筆記を可能にする筆記具であって、容器本体には、底部2aと、底部に連続して上部に起立する胴部2bと、胴部に連続して斜め上部に起立する口部2cが備えられ、容器本体における底部の面に直交する容器本体の軸線Ax1と、口部の中心を通る口部の軸線Ax2との交差角度が、鈍角を構成している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記用インクを収容する容器本体と、前記容器本体の口部を閉塞して配置された筆記体と、前記口部に着脱可能に装着されて、前記筆記体を覆うキャップ部材とを有し、前記容器本体内のインクを、前記筆記体から滲出させることにより、筆記面に対して筆記を可能にする筆記具であって、
前記容器本体には、底部と、前記底部に連続して上部に起立する胴部と、前記胴部に連続して斜め上部に起立する前記口部が備えられ、
前記容器本体における前記底部の面に直交する容器本体の軸線と、前記口部の中心を通る口部の軸線との交差角度が、鈍角を構成すると共に、前記容器本体内のインクを前記筆記体に導く液流通路が蛇行していることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記容器本体内には、筆記用インクの攪拌ボールが収容され、前記攪拌ボールの球径が、前記筆記体を支持して前記口部に装着された筆記ユニットの容器内側に向いた開口径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記口部を閉塞して取り付けられた筆記体は、柔軟な発泡材料により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記筆記用インクに、酸化チタンが配合されていることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項5】
前記容器本体と、容器本体の前記口部に装着されたキャップ部材とが、包装シートによって密着した状態で覆われ、前記包装シートには、切れ目が施されて当該切れ目によって、前記キャップ部材側を覆う包装シートの一部が剥離可能に構成されており、
前記切れ目は、容器本体の前記胴部と口部との間における容器本体の最小断面部分に沿って、前記容器本体の底部に平行して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筆跡(描線)にカスレや線トビなどの筆跡不良が生ずるのを抑制できる使い方と、カスレなどを含む筆跡を得ることができる使い方とを容易に選択することができる筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に塗料や絵の具、インクなどの液体を収容して、容器の口部に取り付けられた合成樹脂素材に連続気孔を施した比較的広い面積を有する筆記部から、前記液体を滲出させる筆記具が特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示された筆記具においては、インクなどの液体を収容する容器は、水平面上に容器を載置することができる面状の底部を有し、この底部に連続して上部に向かって外径を縮小する胴部が形成されている。そして、胴部の上端部に形成された口部を覆うようにして、前記した筆記部が取り付けられている。
【0003】
前記した特許文献1に開示された筆記具と同様に、容器内にインクなどの液体を収容し、容器の口部に取り付けられた比較的広い面積を有するラバースポンジなどによる筆記部から、前記液体を滲出させる筆記具が、特許文献2および3に開示されている。
この特許文献2および3に開示された筆記具においては、その容器はティアドロップ型であると記載されている。すなわち、容器本体はほぼ球形状を構成し、その一部から僅かに細長く突出して円筒状の口部が形成されて、この口部を覆うようにして、スポンジなどによる筆記部が取り付けられている。
【0004】
これらの特許文献に開示された各筆記具においては、容器本体と筆記部が取り付けられる口部の軸線とは、同一直線上に形成されている。すなわち、この筆記具は例えば机上の紙面に対して、筆記部が下向きとなるような姿勢で、筆記を行うことを前提とした構造になされている。
これにより、下向きとなる筆記部には容器本体側からのインクの供給が円滑に行われ、比較的広い面積の筆記体に対して、必要なインク量を円滑に供給することができる。したがって、筆跡(描線)にカスレや線トビ、線ムラが生ずることのない筆記具を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-123305号公報
【特許文献2】特開2013-240895号公報
【特許文献3】特開2013-240896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年における筆記具の構造上の改良や、インク組成物の開発に伴い、前記した特許文献に開示されているように、塗料や絵の具、インクなどを、比較的広い面積を有するスポンジなどによる筆記部から滲出させることにより、筆記面に対して筆記を可能にする筆記具の提案が増えており、その需要も進んでいる。
【0007】
これに伴い、この種の筆記具においては、前記したように筆記部に対するインクの供給を良好にするなどして、筆跡にカスレや線トビ、線ムラなどが生ずることのないようにした筆記具を得ることを目的とした各種の提案がなされている。
しかしながら、他方において、太い筆跡や描線を描くことができる前記した筆記具を用いて、独自のカスレなどを含む筆跡や描線を得たいとする要望も潜在的に存在している。
【0008】
この発明は、前記した要望に応えようとするものであり、筆跡(描線)にカスレや線トビなどの筆跡不良が生ずるのを抑制できる使い方と、カスレなどを含む筆跡を得ることができる使い方とを容易に選択することができる筆記具を提供することを、主要な目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る筆記具は、筆記用インクを収容する容器本体と、前記容器本体の口部を閉塞して配置された筆記体と、前記口部に着脱可能に装着されて、前記筆記体を覆うキャップ部材とを有し、前記容器本体内のインクを、前記筆記体から滲出させることにより、筆記面に対して筆記を可能にする筆記具であって、前記容器本体には、底部と、前記底部に連続して上部に起立する胴部と、前記胴部に連続して斜め上部に起立する前記口部が備えられ、前記容器本体における前記底部の面に直交する容器本体の軸線と、前記口部の中心を通る口部の軸線との交差角度が、鈍角を構成すると共に、前記容器本体内のインクを前記筆記体に導く液流通路が蛇行していることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記容器本体内には、筆記用インクの攪拌ボールが収容され、前記攪拌ボールの球径が、前記筆記体を支持して前記口部に装着された筆記ユニットの容器内側に向いた開口径よりも大きいことが望ましい。
【0011】
また、前記口部を閉塞して取り付けられた筆記体は、柔軟な発泡材料により構成されていることが望ましく、さらに筆記用インクには、酸化チタンが配合されていることが望ましい。
【0012】
一方、この発明に係る筆記具においては、好ましくは、容器本体と、容器本体の前記口部に装着されたキャップ部材とが、包装シートによって密着した状態で覆われる。
そして、前記包装シートには、切れ目が施されて当該切れ目によって、前記キャップ部材側を覆う包装シートの一部が剥離可能に構成されており、前記切れ目は、容器本体の前記胴部と口部との間における容器本体の最小断面部分に沿って、前記容器本体の底部に平行した状態で形成される。
【発明の効果】
【0013】
前記したこの発明に係る筆記具によると、容器本体における底部の面に直交する容器本体の軸線と、容器本体の口部の中心を通る軸線との交差角度が、鈍角を構成しているので、例えば垂直な筆記面に対して、容器本体の底部を上にした姿勢で筆記を行う場合には、容器本体の口部に配置された筆記体に対して、十分なインクの供給を行うことができる。
また、容器本体の底部を下にした姿勢で筆記を行う場合には、前記筆記体に対するインクの供給を制限することができる。
【0014】
したがって、筆記時における容器本体の姿勢を選択することで、筆跡(描線)にカスレや線トビなどの筆跡不良が生ずるのを抑制できる使い方と、カスレなどを含む筆跡を積極的に得ることができる使い方とを選択することができる筆記具を提供することができる。
加えて、容器本体内のインクを筆記体に導く液流通路が蛇行していることで、液流通路を通過するインクに対して適度な流動抵抗を与えることができる。これにより、インクとして特に粘度や表面張力の低い液体を用いた場合に、筆記体からの急激な液流出を防ぐことが可能な筆記具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明に係る筆記具全体の外観構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は背面図、(D)は上面図、(E)は底面図である。
【
図2】同じく筆記具全体の外観構成を示し、(A)は正面から右側面側に沿って見た斜視図、(B)は右側面から背面側に沿って見た斜視図である。
【
図3】同じく筆記具全体を中央部において切断した状態の拡大縦断面図である。
【
図4】筆記具を包装シートによって覆った外観構成を示し、(A)は全体を覆った状態の斜視図、(B)は切れ目から包装シートの一部を剥離した状態の斜視図である。
【
図5】容器本体の口部に装着される筆記ユニットの組み立て図を示し、(A)は前面の筆記体側から見た斜視図、(B)は中央断面図、(C)は背面側から見た斜視図である。
【
図6】筆記ユニットに施された液流通路の作用を説明する拡大断面図である。
【
図7】弁座部材の単品構成を示し、(A)は側面図、(B)は縦断面図、(C)は前面側から見た斜視図、(D)は背面側から見た斜視図である。
【
図8】弁体部材の単品構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は正面側から見た斜視図、(D)は背面側から見た斜視図、(E)は中央断面図である。
【
図9】筆記体の単品構成を示し、(A)は正面側から見た斜視図、(B)は背面側から見た斜視図、(C)は中央縦断面図である。
【
図10】
図9に示す筆記体が筆記具に装着されることで、一部が変形した状態を示し、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は中央縦断面図である。
【
図11】筆記体支持リングの単品構成を示し、(A)は背面図、(B)は背面側から見た斜視図、(C)は中央断面図である。
【
図12】キャップ部材の単品構成を示し、(A)は正面側から見た斜視図、(B)は中央断面図、(C)は背面側から見た斜視図である。
【
図13】筆記具の使用状態を示し、(A)は容器本体の底部を上にして筆記を行う例を示す側面図、(B)は容器本体の底部を下にして筆記を行う例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る筆記具について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1~
図3は、この発明に係る筆記具の全体構成を示しており、そのうち
図3は拡大断面図で示している。したがって、先ずは
図3に基づいてこの発明に係る筆記具の全体構成について説明する。
なお、以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示しているが、一部の図面においては、紙面の都合により代表的な部分に符号を付けて示しており、各部の詳細については単品構成を示す各図に付けた符号を引用して説明する。
【0017】
この発明に係る筆記具1には、
図1~
図3に示すように筆記用インク(図示せず)を収容するボトル型の容器本体2が備えられる。この容器本体2は、水平面上に載置できるように、底部2aが楕円状〔
図1(E)参照〕になされた平面板により構成されており、この底部2aに連続して上部に起立する胴部2bが形成されている。
この胴部2bは、容器本体2の前面側の起立面、すなわち
図3に示す容器本体2の左側における起立面が、上部に起立するにしたがって容器本体2の中心部側に向かって径を縮小する傾斜胴部2b1を構成している。
また、容器本体2の背面側の起立面、すなわち
図3に示す容器本体2の右側における起立面は、前記した底部2aにほぼ直交した直立胴部2b2を構成している。
【0018】
そして、前記直立胴部2b2の上部には、容器本体2の前面側に向かって湾曲した首部2b3が形成されて、この首部2b3の湾曲面に沿って、斜め上部に起立する円筒状の口部2cが一体に形成されている。
これにより、容器本体2における前記底部2aの面に直交する容器本体2の軸線Ax1と、前記口部2cの中心を通る口部の軸線Ax2との交差角度は、鈍角になされていて、図示例においては、容器本体2の軸線Ax1と口部2cの軸線Ax2との交差角度は、約120度に設定されている。
【0019】
なお前記口部2cは、先に説明したように上部に起立するにしたがって容器本体2の中心部側に向かって径を縮小する傾斜胴部2b1の直上に位置するように構成されている。
これにより、口部2cに取り付けられる後述する筆記ユニット3を含む筆記具1全体の重心位置が、口部2cが形成された容器本体2の前面側に片寄るのを防止できるように、重量バランスについて配慮されている。
加えて、容器本体2の前面側と背面側には、この容器本体2を把持した際に、指先が掛けられる複数の指掛け凹部2dが形成されている。この指掛け凹部2dは容器本体2を把持した際の滑り止めとして機能するものとなる。
【0020】
なお、この容器本体2は、好ましくは可撓性を有する合成樹脂により成形される。これにより容器本体2の左右側面を手などで軽く押圧することで、容器本体2に変形を与えることができるスクイズ容器を構成している。
【0021】
また、容器本体2の前記口部2cに装着された筆記ユニット3には、容器本体2内のインクを滲出させて筆記を可能にする後述する筆記体7が、前記口部2cを閉塞した状態で配置されている。そして、口部2cを構成する円筒部の周面に形成された雄ねじ2eを利用して、筆記体7を覆うキャップ部材4が、着脱可能に取り付けられて筆記具1が構成されている。
【0022】
図4は、前記した筆記具1を包装シート11によって覆った外観構成を示しており、
図4において、包装シート11はハッチングを付した状態で示している。
この包装シート11は、例えば円筒状に成形された熱収縮製樹脂シートを用いて、筆記具1の外郭に密着させた状態で覆っており、
図4(A)は筆記具1の全体を包装シート11で覆って、商品(筆記具1)が未使用の状態を示している。また、
図4(B)は包装シート11に施された破線状の切れ目11cを利用して、本体側シート11aからキャップ側剥離シート11bを切り離して、商品(筆記具1)が使用可能な状態を示している。
【0023】
なお、前記した包装シート11に施された破線状の切れ目11cは、前記した熱収縮製樹脂シートの一部に予め形成しておくことが望ましい。そして、樹脂シートが熱収縮されて容器本体2に密着した状態において、破線状の切れ目11cの位置が、
図3に示す容器本体2の胴部2bと口部2cとの間の容器本体2の最小断面部分に沿って、容器本体2の底部2aに平行した状態に位置するように設定される。
このように破線状の切れ目11cの位置を設定することで、特別な形状を有する容器本体2の外郭の大部分を、本体側シート11aによって覆うことができる。
したがって、本体側シート11aに対応する熱収縮製樹脂シート側に、筆記具1の商品名やロゴなどの印刷を予め施しておくことで、本体側シート11aの大きな面積を利用して、商品名やロゴなどを標記した筆記具1を提供することが可能となる。
【0024】
図5は、容器本体2の口部2cに装着された筆記ユニット3を示している。この筆記ユニット3は、円筒状にして前面部に弁口を備えた弁座部材5と、弁座部材5内に収容されてスプリング体により付勢力が与えられる弁体を有する弁体部材6と、弁座部材5の前面側に取り付けられ、前記した容器本体2の口部2cを覆う状態で配置されたシート状の筆記体7と、この筆記体7の周縁部を前記弁座部材5に対して取り付ける筆記体の支持リング8より構成されている。
なお、
図6は
図5に示した筆記ユニット3の前記筆記体7に筆記圧を加えて、後述する中栓(バルブ弁)3bが開いた状態を示しており、この状態で適正なインク流量とするために、筆記ユニット3に施された液流通路3aについて説明する拡大断面図である。この液流通路3aの作用については後で説明する。
【0025】
以下においては、筆記ユニット3を構成する前記した各部材について、それぞれ単品構成で示した図面に基づいて説明する。
図7は、筆記ユニット3を構成する弁座部材5の単品構成を示している。
この弁座部材5は、全体が円筒状に形成されて、その前面部は閉塞され、その中央部には弁口5aが開口されている。この弁口5aの周囲は前面側に向かって内径が縮小するテーパ状に形成されており、この弁口5aに対して後述する弁体部材6の円錐台状の弁体6cが装着されて閉弁される。
弁座部材5の外周面は、軸方向に沿って同一径に形成されて、容器本体2の口部2c内への嵌合部5bを構成しており、その後半部から後端部に沿って外径をわずかに縮小するテーパ部5cが形成されている。このテーパ部5cは、容器本体2の口部2cに対して、筆記ユニット3を装着する際のガイド部として機能する。
【0026】
弁座部材5における前記した嵌合部5bの前面側には、前記嵌合部5bに対して径の大きな鍔部5dが形成されており、この鍔部5dは容器本体2の口部2cの前端部に当接して、筆記ユニット3を位置決めする機能を果たす。
また、弁座部材5の後端部における開口内には、内側に向かって環状係止部5eが突出した状態で形成されている。この環状係止部5eは、後述する弁体部材6を弁座部材5内に装着した際に、弁体部材6の脱落を阻止するストッパーとして機能する。
さらに、弁座部材5の前面側には環状突出部5fが形成されており、これは後述する筆記体7を、その背面側から支持して筆記体7の位置決めの機能を果たすものとなる。
【0027】
図7(B)に断面図で示すように、弁座部材5の内部には弁口5aを囲むようにして、二つの環状突起5g,5hが同心円状に形成されている。この二つの環状突起5g,5hは弁座部材5の後端部側に向かって、同一高さとなるように形成されており、これにより二つの環状突起5g,5hの間には、環状の溝部5jが形成されている。
これらの環状突起5g,5hと、環状の溝部5jとは、次に説明する弁体部材6との組み合わせにより、容器本体2内のインクを筆記体7側に導く液流通路3aを形成するものとなる。
【0028】
図8は、筆記ユニット3を構成する弁体部材6の単品構成を示している。
この弁体部材6は、全体が弾性合成樹脂により一体成形されており、リング体6aから上向きに螺旋状に延びる1本のスプリング体6bが備えられる。このスプリング体6bの上端には円錐台状の弁体6cが形成されている。そして、弁体6cの中央部には弁棒6dが、弁体6cから突出するようにして成形されている。
さらに、
図8(E)に示すように、円錐台状の弁体6cを囲むようにして、環状突起6eが形成されており、この環状突起6eと弁体6cの周囲に続く環状の周側面との間には環状の溝部6fが形成されている。
【0029】
前記したリング体6aの外径は、円筒状に形成された弁座部材5の内径にほぼ等しく、環状係止部5eの内径よりもわずかに大きく形成されている。したがって、弁座部材5の後端部における環状突起5e側から、弁体部材6の弁棒6dを挿入して押し込むことで、後部のリング体6aは弁座部材5の環状係止部5eを乗り越えて、弁座部材5内に収容される。そして、弁体部材6のリング体6aは、弁座部材5の環状係止部5eに係止された状態で弁座部材5内に配置される〔
図5(B)参照〕。
これにより、弁体6cは弁口5aに当接して閉弁状態になされ、中央の弁棒6dは弁口5aから前方にわずかに突出した状態になされる。
【0030】
前記したように弁座部材5に弁体部材6を装着した状態においては、弁体部材6の前記した環状突起6eは弁座部材5に形成された環状溝部5jに収容され、また弁体部材6の環状溝部6fには弁座部材5の環状突起5hが収容される。
これにより、弁座部材5と弁体部材6との間には、
図6にインクの流れを矢印で示したように、蛇行した液流通路3aが形成される。
この蛇行した液流通路3aは、弁座部材5の弁口5aと弁体部材6の弁体6cとの間で形成される中栓(バルブ弁)3bの直前に形成される。
【0031】
前記した液流通路3aによると、弁体部材6に加わる筆記圧による後退動作に応じて、例えば、弁座部材5の環状突起5g,5hと、弁体部材6の環状突起6eとの間に形成される隙間の合計長さが変化することになる。すなわち、弁体部材6に加わる筆記圧が大きくなるに従って、液流通路3aにおける前記隙間の合計長さは小さくなる。
これにより、インクに対する流動抵抗が小さくなり、前記した中栓(バルブ弁)3bの開閉度合いでは適切に制御することができないインクの供給量を、前記液流通路3aにおいて制御することが可能となる。
また、インクとして特に粘度や表面張力の低い液体を用いた場合において、前記液流通路3aは適切な流動抵抗により過度なインクの流れを抑制し、筆記体7からの急激な液流出を防ぐことが可能な筆記具を提供できるものとなる。
【0032】
図9は、筆記ユニット3を構成する筆記体7の単品構成を示している。
この筆記体7は、柔軟な発泡シート材料を用いて成形される。この発泡シート材料には、好ましくは連続気泡性のウレタンまたはポリエチレン素材、さらにラバースポンジなども利用することができるが、耐久性の観点から発泡ウレタンを利用することが好ましい。
この筆記体7には、前記した発泡シート材料を円形に切断した素材が用いられ、前記した弁座部材5の前面側の形状に合わせて、中央部に球面状の凸部7aと、この球面状の凸部7aの周縁に形成された短小な円筒部7b、および円筒部7bの端部において、外側に向かって環状の鍔部7cが成形される。
なお、この筆記体7の中央部に球面状の凸部7aを形成する部分は、前記した発泡シート材料の厚さをそのまま残し、その周縁の短小な円筒部7bと鍔部7cは、球面状の凸部7aに対して薄くなるように、例えばプレス加工により成形される。
【0033】
図10は、
図9に示した筆記体7が、
図5に示した筆記ユニット3に装着されることにより、その一部が変形された状態で示している。
すなわち、前記した球面状の凸部7aの背面側には、
図10(C)に示すように弁座部材5の中央部から突出する弁棒6dの先端部により変形した凹み7dが形成される。
また、球面状の凸部7aの背面側には、前記した中央部の凹み7dを囲むようにして、環状の凹み7eが円筒部7bの内側に沿って形成される。これは、弁座部材5の前面側に突出した環状突出部5fが当接することにより、変形されるものとなる。
また、環状の鍔部7cの前面側には、後述する筆記体支持リング8に押さえられることにより変形した支持リング8側に成形された複数の小突起8dによる多数の凹部7fが形成される。さらに、鍔部7cの背面側には、弁座部材5に押さえられて変形した溝7gが形成される。
【0034】
図11は、筆記ユニット3を構成する筆記体支持リング8の単品構成を示している。
この支持リング8は、前記した弁座部材5の前面に装着された筆記体7の周縁部を、弁座部材5の前面側周縁部に沿って押さえることで、面状の筆記体7を周縁部に沿って支持するものである。
この支持リング8は、樹脂素材により成形され、背面側から前面側に向かって外径がわずかに縮小するテーパ面8aを備えている。その内側には背面側から前面側に向かって内径が縮小する環状の第1段部8bと第2段部8cとが、同心円状に成形されている。
【0035】
そして、第2段部8cには背面側に向かって突出する複数の小突起8dが、周に沿って連続的に形成されている。したがって、この支持リング8によって、弁座部材5の前面に押さえられる前記筆記体7は、複数の小突起8dによって緩みが生じないように支持される。なお、この支持リング8は弁座部材5の鍔部5dに沿って溶着されることで、
図5に示した筆記ユニット3が構成される。
そして、この筆記ユニット3は、弁座部材5のテーパ部5cを利用して、容器本体2の口部2cに装着され、弁座部材5の嵌合部5bによって、容器本体2の口部2c内に嵌合されて取り付けられる〔
図3参照〕。
【0036】
図12は、キャップ部材4の単品構成を示している。
このキャップ部材4は、端部が天面4aにより閉塞された筒状を構成し、その外周面には、軸方向に沿って溝状に凹みを付けた多数ローレット4bが周方向に連続して施されている。
そして、開口側の内周面には雌ねじ4cが施されていて、この雌ねじ4cの奥側における前記した天面4aの背面側には、リング状の突出環4dが、軸方向に突出して形成されている。
【0037】
このキャップ部材4は、
図3に示したように容器本体4の口部2cに装着し、口部2cの雄ねじ2eに対してキャップ部材4の雌ねじ4cを螺合させることで、口部2cに取り付けることができる。これにより、筆記ユニット3の筆記体7を覆った筆記具1の保管状態とすることができる。
この時、キャップ部材4内の突出環4dが、筆記ユニット3の筆記体支持リング8に当接して、筆記体7を密封するので、筆記体7からのインク溶媒の揮発は抑制される。
【0038】
前記した筆記具1においては、
図3に示すように容器本体2内に、攪拌ボール9と共に筆記用インク(図示せず)が収容される。
攪拌ボール9には、硬球またはガラス玉が用いられており、攪拌ボール9の球径D1は、筆記体7を支持して前記口部2cに装着された筆記ユニット3における容器内側に向いた開口径D2よりも大きなものを選定することが好ましい。すなわち、この実施の形態においては、
図3に示すように攪拌ボール9の球径D1は、弁座部材5の環状係止部5eの内周径D2よりも大きなものに選定されている。
これにより、描線幅が比較的太いこの種の筆記具において用いられる筆記用インクにおける主に着色剤の沈殿を、大径で重量が嵩む攪拌ボール9によって効果的に攪拌することができるものとなる。これにより、描線に筆記ムラ(着色ムラ)等が生ずるのを防止することに寄与できる。
【0039】
容器本体2内に収容される好ましい筆記用インクとしては、少なくとも、顔料粒子と、湿式シリカと、含水カオリンと、凝集コントロール剤と、水とを含み、特に前記顔料粒子が酸化チタンを含み、前記凝集コントロール剤の含有量が、前記筆記用インクの総質量を基準として、0.05質量%~1.0質量%であるインク組成物が好ましい。
【0040】
顔料粒子としては、金属酸化物または金属塩などの無機顔料、ならびに有機色素顔料またはレーキ顔料などの有機顔料が挙げられる。無機顔料粒子は、特に金属酸化物粒子が好ましい。特に酸化チタンは白色であるため、後述する補色顔料などと組み合わせることで、多様な色彩を実現できるので好ましい。さらに、酸化チタンにおいて、その表面をアルミナ処理したものを用いると、分散安定性が向上するため、特に好ましい。また、顔料として、光沢のある光輝性顔料、例えばアルミニウム顔料などを用いることもできる。顔料粒子の平均粒子径は、0.1μm~10μmであることが好ましい。本明細書に記載された平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320-X100」、日機装株式会社)を用いてレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。また、特に断りのない限り、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。インク組成物における顔料粒子の含有量は、インク組成物の総質量を基準として、10~40質量%であることが好ましい。顔料粒子の含有量が上記数値範囲内であれば、インク吐出性の低下を防止することができるとともに、インク組成物、およびそれを用いて形成させた筆跡の隠蔽性を維持することができる。
【0041】
湿式シリカとは湿式法で合成した非晶質のシリカであり、数~数十nmの比較的大きい一次粒子が凝集した、分散では一次粒子とすることが困難な、数~数十μmの二次粒子である。本発明において湿式シリカは、乾式シリカと比較して、比表面積が高く、表面にシラノール基を多く有していることから、顔料粒子との相互作用により、ゆるい橋かけネットワークを形成する。そして、凝集コントロール剤や凝集分散剤などとゆるい嵩高い凝集体を作ることができるため、インク組成物中に湿式シリカを含有していることにより、顔料粒子の分散安定性が向上し、さらに、凝集体の再分散性を向上させることができる。一方、乾式シリカを用いた際には、分散安定性を保つことはできるが、少量の添加で構造粘性を生じ、インク粘度が高くなるため好ましくない。さらに、湿式シリカは、筆記面として紙を用いた場合、湿式シリカが目止めの効果を強く発揮し、顔料粒子が紙の繊維間に入り込むことを防ぐことができ、後述する含水カオリンと併用により、筆跡の発色性を高める効果が得られる。湿式シリカの平均粒子径は、1μm~5μmであることが好ましい。湿式シリカの平均粒子径が上記数値範囲内であれば、インク組成物中で安定した分散が可能となり、高い顔料の沈降抑制効果が得られる。インク組成物における湿式シリカの含有量は、インク組成物の総質量を基準として、1質量%~3質量%であることが好ましい。
【0042】
凝集コントロール剤は、前記した湿式シリカにより形成された、相対的に密度の低い凝集体に対して結合し、さらに、後述する含水カオリンや体質材などをインク組成物中に分散し、嵩高い凝集体を作ることができるものである。この凝集コントロール剤により、インク組成物のハードケーキ化を防止し、嵩高い凝集体を作るため、再分散性を向上させることができる。凝集コントロール剤としては、例えば、セルロース誘導体を用いることができ、2種以上のセルロース誘導体を併用することもできる。セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースおよびそれらの塩などが挙げられる。インク組成物における凝集コントロール剤の含有量は、インク組成物の総質量を基準として、0.1~0.5質量%であることが好ましい。
【0043】
含水カオリンは、天然粘土鉱物であるカオリンクレーを精製し得られる、結晶水を含んだケイ酸アルミニウムを主成分とする扁平または板状の天然粘土鉱物である。本発明において、含水カオリンは、前記の通り、扁平または板状の粒子形状を有することから、インク組成物中に含水カオリンを含有していることにより、筆記面として紙を用いた場合、含水カオリンが目止めの効果を強く発揮し、顔料粒子が紙の繊維間に入り込むことを防ぐことができ、より一層、筆跡の発色性を高める効果が得られる。また、含水カオリンは、インク組成物中で顔料粒子と湿式シリカと凝集コントロール剤で形成した、相対的に密度の低い凝集体中に均一に分散されるため、相対的に密度が低いながらも嵩高い凝集体を作るため、焼成カオリンを用いた場合と比較して、再分散性を向上することができる。さらに、含水カオリンは、筆記した際にその扁平または板状の粒子形状から、筆記した際に、紙面に対して並行に載置される為、重ね書きした際にも紙面を引っ掻くことが無い為、紙面を削ること無く、筆記することが可能となる。含水カオリンの平均粒子径は、0.5μm~2μmであることが好ましい。含水カオリンの平均粒子径が上記数値範囲内であれば、インク組成物の再分散性、筆跡の発色性を高めることができ、紙面を削ることを防止することができる。インク組成物における含水カオリンの含有量は、インク組成物の総質量を基準として、5質量%~15質量%であることが好ましい。含水カオリンの含有量が上記数値範囲内であれば、インク粘度が高くなりすぎること、ハードケーキ化、ならびに筆記する際に紙面を削ることを防止することができる。さらに、インク組成物、およびそれを用いて形成させた筆跡の隠蔽性を維持することができる。
【0044】
また、その他の成分として、筆記具用インクとしての性能に影響を及ぼさない範囲で樹脂、凝集分散剤、体質剤、補色顔料、界面活性剤、防腐剤、濡れ剤、消泡剤、防錆剤、pH調整剤、気泡抑制剤、気泡吸収剤、剪断減粘性付与剤および粘度調整剤などを必要に応じて添加することができる。
【0045】
インク組成物の粘度は1~20mPa・sであることが好ましい。組成物の粘度の測定は回転粘度計(25℃、10rpm、回転粘度計(TV-20、TOKIMEC製)を用いて行うことができる。インク組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、マーカーなどの筆記用具に使用した場合のインク吐出性を向上させることができ、またフィルムなど非浸透性の記録媒体への筆記性が向上する。
【0046】
また、筆記具用インクだけでなく、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール、精製水のような低粘度の液体を収容することができる。液体には用途に応じて各種成分を適宜配合することができる。医薬品の場合には、消炎鎮痛成分(例えば、フェルビナク、インドメタシン、サリチル酸グリコールなど)、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩など)、血行促進成分(例えば、ノナン酸バニリルアミドなど)、清涼化剤(例えば、l-メントールなど)、その他、防腐剤、安定化剤、pH調整剤などが挙げられる。化粧料の場合には、制汗成分(例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛など)、殺菌成分(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、消臭剤成分(例えば、クララエキスなど)、香料などが挙げられる。この液体の粘度は、1~1000mPa・sとすることが好ましい。なお、液体の粘度は、例えばB型粘度計(ブルックフィールドDV-II)を用いT-E1ローターで回転数6rpmによって測定することができる。
【0047】
また、前記記載の内容液を用いた場合は、筆記体を塗布液の吸放出性に優れ、強度及び肌触りが良好である低密度ポリエチレンからなる。低密度ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンのいずれであってもよく、密度は通常0.910~0.930g/cm3である。平均気孔径は、大きすぎると含浸された塗布液の保持性が低下して液ダレが生じやすくなる一方、小さすぎると塗布液の浸透性や放出性が低下することから、50~180μmが好ましい。平均気孔径は、水銀圧入式ポロシメータにより測定した値である。また、塗布部材の嵩密度(塗布部材の重量をみかけ体積で除した値)は、大きすぎると浸透性や放出性が低下する一方、小さすぎると塗布液の保持性が低下することから、0.15~0.25g/cm3が好ましい。更に、ASTM D 1940-62Tに準拠して測定した連続気泡率が70%以上の連続気泡発泡体からなることが好ましく、これによって、塗布液の吸放出性及び保持性をより良好にすることができる。また、筆記体の厚みについては、大きすぎると膨潤による変形が大きくなりやすく塗布液の放出性も低下する一方、小さすぎると肌触りが悪化することから、0.5~3.5mmが好ましい。
【0048】
この実施の形態による筆記具1の筆記ユニット3には、弁座部材5の弁口5aと弁体部材6の弁体6cによる中栓(バルブ弁)3aが搭載されている。
したがって、筆記面に筆記体7を押し当てることで、筆記体7を介して弁体部材6の弁棒6dを、スプリング体6bの付勢力に抗して後退させることができる。これにより、弁口5aに対する弁体6cの封止が解かれて、容器本体2内のインクは筆記体7に供給されて吸収される。そして、筆記体7からインクが筆記面に向かって滲出することで、筆記が成される。
この場合、中栓3aの直前に蛇行して形成されたインクの液流通路3aが形成されており、この液流通路3aは先に説明したとおり、過度なインクの流れを抑制し、筆記体7からの急激な液流出を防ぐことができる。
【0049】
図13は、この発明に係る筆記具1の使用状態の例を示している。この例における(A)は、垂直な筆記面15に対して、容器本体2の底部2aを上にして筆記を行う場合を、また(B)は、垂直な筆記面15に対して、容器本体2の底部2aを下にして筆記を行う場合を示している。
【0050】
図13(A)に示すように垂直な筆記面15に対して、容器本体2の底部2aを上にして筆記を行う場合においては、容器本体2の口部2cに配置された筆記体7に対して、十分なインクの供給を行うことができる。これにより、筆跡(描線)にカスレや線トビなどの筆跡不良が生ずるのを抑制した描画を行うことができる。
また、
図13(B)に示すように垂直な筆記面15に対して、容器本体2の底部2aを下にして筆記を行う場合においては、前記筆記体7に対するインクの供給を制限することができる。これにより、筆跡(描線)にカスレなどを含む描画を得ることができるものとなる。
【0051】
なお、前記した実施の形態においては、容器本体1の口部2cに装着される筆記ユニットには、弁口5aと弁体6cを含む中栓(バルブ弁)3aを備えた構成が採用されているが、この発明に係る筆記具は、前記した中栓は必ずしも必要ではなく、容器本体1内のインクが、直接筆記体7に浸透する直液式の筆記具にも採用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 筆記具
2 容器本体
2a 底部
2b 胴部
2c 口部
2d 指掛け凹部
3 筆記ユニット
3a 液流通路
3b 中栓(バルブ弁)
4 キャップ部材
4a 天面
5 弁座部材
5a 弁口
5e 環状係止部
5g,5h 環状突起
5j 環状溝部
6 弁体部材
6b スプリング体
6c 弁体
6d 弁棒
6e 環状突起
6f 環状溝部
7 筆記体
7a 球面状凸部
8 筆記体支持リング
9 攪拌ボール
11 包装シート
11a 本体側シート
11b キャップ側剥離シート
11c 切れ目
15 筆記面