(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005922
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】サーチュイン活性化剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230111BHJP
A61K 36/9066 20060101ALI20230111BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20230111BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20230111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230111BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20230111BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230111BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/9066
A61K31/7052
A61K31/353
A61P43/00 121
A61K8/9794
A61K8/49
A61Q19/00
A61P43/00 105
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108209
(22)【出願日】2021-06-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】595132360
【氏名又は名称】株式会社常磐植物化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】ウォン チン ピアウ
(72)【発明者】
【氏名】楊 金緯
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD61
4B018ME10
4B018MF01
4C083AA111
4C083AC841
4C083AC851
4C083BB51
4C083CC03
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC01
4C086ZC75
4C088AB81
4C088BA18
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC01
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れたサーチュイン活性化剤を提供する。
【解決手段】
本発明は、黒ウコン(Kaempferia parviflora)又は黒ウコン抽出物又はポリアルコキシフラボノイド類化合物と、ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、NMN)を組み合わせることによって、より優れたサーチュイン活性化剤を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒ウコン(Kaempferia parviflora)及び黒ウコン抽出物の少なくともいずれかと、ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、NMN)と、を含有することを特徴とするサーチュイン活性化剤。
【請求項2】
下記一般式(I)で表されるポリアルコキシフラボノイド類化合物と、ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、NMN)と、を含有することを特徴とするサーチュイン活性化剤。
【化1】
(式中のR1~R7は、各々独立に、水素原子、水酸基、または炭素数1~6の低級アルコキシ基を表す)。
【請求項3】
前記ポリアルコキシフラボノイド類化合物が、下記一般式(II)で表されるポリメトキシフラボノイド類化合物である請求項2に記載のサーチュイン活性化剤
【化2】
(式中のR11、R12、R14、R15およびR16は、各々独立に、水素原子、水酸基、またはメトキシを表し、R13は水素原子またはメチル基を表す)。
【請求項4】
黒ウコン(Kaempferia parviflora)及び黒ウコン抽出物の少なくともいずれかを含む請求項2記載のサーチュイン活性化剤。
【請求項5】
前記一般式(I)または(II)で表される化合物が、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテルを含む、請求項2又は3に記載のサーチュイン活性化剤。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のサーチュイン活性化剤を含有することを特徴とする、飲食品、健康食品、化粧品、または医薬品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーチュイン活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療技術の発展等により人の平均寿命は延び、「人生100年時代」ともいわれる時代となった。一方、日本では少子高齢化が進み、2060年には65歳以上の高齢者の割合が日本の人口の約40%にまで達するといわれている。そしてこの結果、国内の労働者数の減少が予想されており、社会の発展にも悪影響を及ぼすことが懸念されている(非特許文献1乃至3参照)。すなわち、今後社会発展のためには、長寿社会のみの実現ではなく、健康寿命の延伸の実現が重要な課題となっている。
【0003】
平均寿命とは、生まれてから何歳まで生きられるのかを示す期間をいい、健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいう。すなわち、平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限がある期間、すなわち健康でない期間を意味する。現在、平均寿命と健康寿命の差は、男性9.13年、女性12.68年となっており、年々縮小しているものの、まだまだ改善の余地がある。
【0004】
健康寿命を延伸させる一つの手段としては加齢関連疾患の予防が重要であると考えられている(非特許文献2)。そして、加齢関連疾患の予防には、サーチュインと呼ばれる酵素(以下「サーチュイン酵素」という。)の活性化が一つの重要な手段である。このサーチュイン酵素は、NAD+依存型の脱アセチル化酵素で、様々な転写因子を介して、神経変性の抑制、糖代謝・脂質代謝の改善、抗肥満などに関与していることが報告されており、老化抑制や代謝制御に重要な酵素である。そこで、優れたサーチュインの活性化作用を有する抗加齢素材の提供が望まれている(非特許文献4)。
【0005】
ところで、黒ウコン(Kaempferia parviflora)はショウガ科バンウコン属の植物であり、黒ショウガ、Thai ginseng、クラチャイダムとも呼ばれる。黒ウコンの原産地は東南アジアのタイやラオスで、現地では古くから日常的に摂取され、滋養強壮、精力増進、血糖値の低下、体力回復、循環器系や消化器系の改善などに用いられる。これまでに、黒ウコン抽出物にサーチュインを活性化させる働きがあることが下記非特許文献5、特許文献1、2に記載されている。
【0006】
黒ウコンは、5種類の特徴成分ポリメトキシフラボノイド化合物(アピゲニン-5,7,4’-トリメチルエーテル(apigenin-5,7,4’-trimethylether)、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテル(quercetin-3,5,7,3’,4’-pentamethylether)、クリシンジメチルエーテル(chrysin dimethylether)、3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン(3,5,7,4’-tetramethoxyflavone)、3,5,7-トリメトキシフラボン(3,5,7-trimethoxyflavone))を含有することが知られている。また、この5種類のポリメトキシフラボノイド化合物は、いずれもサーチュイン活性化作用を持つことが報告されている(例えば下記非特許文献5、6参照)。
【0007】
NMNはニコチンアミドアデニンヌクレオチド(以下「NAD+」という。)の前駆体であり、NAD+を生成するにも利用されている。NAD+がすべての生物種に存在する重要な電子伝達体であってサーチュイン酵素反応に関与しているとの報告がある。また、加齢に伴いNMNの生成能力が低下し、NAD+が年齢とともに減少していくと考えられる旨の記載が下記非特許文献7に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6417630号公報
【特許文献2】米国特許第10,889,557号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット,平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業 健康経営評価指標の策定・活用事業成果報告書
【非特許文献2】厚生労働省,平成27年国民健康・栄養調査報告,第3部生活習慣調査の結果
【非特許文献3】第11回健康日本21(第2次)推進専門委員会資料
【非特許文献4】Rahman,S., & Islam,R.(2011). “Mammalian Sirt1: insights on its biological functions.” Cell Communication and Signaling,9,11.
【非特許文献5】Nakata,A., Koike,Y., Matsui,H., Shimada,T., Aburada,M., & Yang,J.(2014). “Potent SIRT1 enzyme-stimulating and anti-glycation activities of polymethoxyflavonoids from Kaempferia parviflora.” Natural product communications, 9(9), 1291-1294.
【非特許文献6】Zhang,M., Lu,P., Terada,T., Sui,M., Furuta,H., Iida,K.,Katayama,Y., Lu,Y., Okamoto,K., Suzuki,M., Asakura,T., Shimizu,K., Hakuno,F., Takahashi,S., Shimada,N., Yang,J., Ishikawa,T., Tatsuzaki,J., Nagata,K.(2021). “Quercetin 3,5,7,3‘,4’,-pentamethyl ether from Kaempferia parviflora directly and effectively activates human SIRT1.” Communication Biology,4,209.
【非特許文献7】Bonkowski,M., Sinclair,D.(2017). “Slowing ageing by design: The rise of NAD+ and sirtuin-activating compounds.” Nature Reviews Molecular Cell Biology, 17(11), 679-690.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の通り、高齢社会の深刻化に伴い、より優れたサーチュイン活性化作用を有する組成物の提供が望まれる。
【0011】
しかしながら、上記特許文献1、2、非特許文献5、6乃至7に記載の技術は、いずれも単独の植物抽出物又は植物由来成分を用いた報告にすぎず、これらを組み合わせた場合の報告はない。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、素材の組み合わせによって、より優れたサーチュイン活性化作用を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行っていたところ、黒ウコン若しくは黒ウコン抽出物又はポリアルコキシフラボノイド類化合物と、NMNを組み合わせる、具体的にはNMNを同時に含有させることによって、単独より優れたサーチュイン活性化作用が得られたことを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明の一観点に係るサーチュイン活性化剤は、黒ウコン及び黒ウコン(Kaempferia parviflora)抽出物の少なくともいずれかと、ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、NMN)と、を含有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係るサーチュイン活性化剤は、下記一般式(I)で表されるポリアルコキシフラボノイド類化合物と、ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、NMN)と、を含有することを特徴とするものである。
【化1】
(式中のR1~R7は、各々独立に、水素原子、水酸基、または炭素数1~6の低級アルコキシ基を表す)。
【0016】
また、本観点において、限定されるわけではないが、ポリアルコキシフラボノイド類化合物は、下記一般式(II)で表されるポリメトキシフラボノイド類化合物であることが好ましい。
【化2】
(式中のR11、R12、R14、R15およびR16は、各々独立に、水素原子、水酸基、またはメトキシを表し、R13は水素原子またはメチル基を表す)。
【0017】
また、本観点においては、黒ウコン(Kaempferia parviflora)及び黒ウコン抽出物の少なくともいずれかを含むものであることが好ましい。
【0018】
また、本観点において、限定されるわけではないが、上記一般式(I)または(II)で表される化合物は、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテルを含むものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の一観点に係る飲食品、健康食品、化粧品、または医薬品組成物は、上記いずれかに記載のサーチュイン活性化剤を含有するものである。
【発明の効果】
【0020】
以上、本発明によって、より優れたサーチュイン活性化作用を有する組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例におけるNMNと黒ウコン抽出物、またはそれぞれ単独で添加する場合のサーチュイン活性化作用を示す図である。
【
図2】実施例におけるNMNとクエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテル、またはそれぞれ単独で添加する場合のサーチュイン活性化作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例における具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0023】
本発明の一実施形態は、より優れたサーチュイン活性化作用を有する組成物である。すなわち、黒ウコン抽出物とNMNを含有すること、又は、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテルとNMNを含有すること、が特徴であり、これらの組み合わせによって、非常に優れたサーチュイン活性化作用が期待される。
【0024】
本実施形態において用いられる黒ウコンはKaempferia parvifloraの根茎を用いることができ、これはタイ、ラオスなどの東南アジアに原産するか、または沖縄で栽培される。また黒ウコンは生、乾燥もしくは根茎を加工したものを利用でき、根茎を含む黒ウコンの地下部をそのまま用いても良い。
【0025】
また、黒ウコン抽出物の抽出方法は特に制限されず、当業者に周知の方法にしたがって行うことができる。抽出溶媒としては、水または温水、アルコール系溶媒、およびアセトンなどその他の有機溶媒を用いることができる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどを例示することができる。アセトン以外のその他の有機溶媒としては、酢酸エチルなどのエステル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール類;ジエチルエーテルなどのエーテル類などを例示することができる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。抽出溶媒は、水と親水性有機溶媒を組み合わせて含水親水性溶剤の形態で使用してもよい。溶媒を組み合わせて使用する場合、溶媒の混合比率は任意に設定することができる。これらの中でもエタノールを用いることが好ましく、エタノール含量が30%~95%(v/v)の含水エタノールを用いることがより好ましい。
【0026】
抽出溶媒の量は黒ウコン根茎の乾燥重量に対して、2~100重量部が好ましい。抽出温度は4~90℃が好ましい。抽出時間は30分~1週間が好ましい。抽出方法は攪拌抽出、浸漬抽出、向流抽出、超音波抽出、超臨界抽出などの任意の方法で行うことができる。
【0027】
黒ウコン抽出物には、得られた抽出液を濾過し得られた濾液、もしくは濾液を濃縮した濃縮液、濃縮液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれも含まれる。濃縮方法は、蒸発式濃縮、膜濃縮などの任意の方法で行うことができる。乾燥方法は、減圧乾燥、凍結乾燥、スプレー乾燥などの任意の方法で行うことができる。必要な場合にはデキストリンなどの賦形剤を入れてもよい。精製を行う場合は、当業者に既知の手段に従って行うことができる。例えば、合成吸着樹脂、活性炭、イオン交換樹脂、セファデックス、バイオゲルなどのゲル濾過剤、カラムクロマトグラフィー、再結晶などを単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0028】
【0029】
なお、上記式中のR1~R7は各々独立に炭素数1~6の低級アルコキシ基、水素原子または水酸基を表す。
【0030】
一般式(I)中のR
1~R
7における炭素数1~6の低級アルコキシ基とは、炭素数1~6のアルキル基が酸素原子とエーテル結合したものをいう。炭素数1~6の低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、またはこれらの構造異性体が挙げられ、好ましくはメトキシ基である。
好ましいポリアルコキシフラボノイド類化合物はポリメトキシフラボノイド類化合物であり、より好ましいポリメトキシフラボノイド類化合物は下記の一般式(II)で表される化合物である。
【化2】
【0031】
また、上記式中のR11~R16は各々独立に水素原子、水酸基またはメトキシを表し、R13は水素原子またはメチル基を表す。
【0032】
また、上記の一般式(II)で表される化合物の具体例を以下の表1に示す。
【表1】
【0033】
上記一般式(I)または(II)で表されるポリアルコキシフラボノイド類化合物は、化学合成のほか、黒ウコンまたはカンキツ類から抽出精製により得ることができる。なお、合成方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を利用することができる。また、上記一般式(I)又は(II)であらわされるポリアルコキシフラボノイド類化合物は、黒ウコン及び黒ウコン抽出物の少なくともいずれかと組み合わせることも可能である。
【0034】
カンキツ類はミカン区に属するシイクワシャー(Citrus depressa) 、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)、ギリミカン(C.tardiva)、ジミカン(C.succosa)、シカイカン、キシュウ(C.kinokuni)、コベニミカン(C.erythrosa)、スンキ(C.sunki)、チチユウカイマンダリン(C.deliciosa)、キング(C.nobilis)、ポンカン(C.retuculata)、ダンシータンジェリン(C.tangerina)、ユズ区に属するハナユ(C.hanayu)、コウライタチバナ(C.nippokoreana)からなる群より選択することができる。
【0035】
また、ポリアルコキシフラボノイド類化合物の精製方法は、例えば、合成吸着樹脂、活性炭、イオン交換樹脂、セファデックス、バイオゲルなどのゲル濾過剤、カラムクロマトグラフィー、再結晶などを単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0036】
精製により得られたポリアルコキシフラボノイド類化合物の構造は、当業者に既知の手段に従って同定することができる。例えば、プロトン核磁気共鳴分光法(1H-NMR)、カーボン核磁気共鳴分光法(13C-NMR)、質量分析法(MS)、元素分析法、赤外分光法(IR)、紫外分光法(UV)、融点測定法などを単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本黒ウコン抽出物は、5種類のポリメトキシフラボノイド化合物(アピゲニン-5,7,4’-トリメチルエーテル、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテル、クリシンジメチルエーテル、3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン)の合計量が、4重量%以上含まれていることが好ましく、より好ましくは10重量%以上50重量%以下の範囲である。この範囲で含有されることにより、本組成物の効果を好ましく発揮する。
【0038】
本組成物において含まれる黒ウコン抽出物とNMNは、限定されるわけではないが、NMNの重量を1とした場合、黒ウコン抽出物の量が0.01以上20以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05以上10以下であり、更に好ましくは0.1以上5以下である。
【0039】
また、ポリアルコキシフラボノイドとNMNは、限定されるわけではないが、NMNの重量を1とした場合、ポリアルコキシフラボノイドの量が0.0003以上0.6以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.0015以上0.3以下であり、更に好ましくは0.003以上0.15以下である。
【0040】
また、本組成物は医薬品や食品としての形態をとることが可能であるが、各抽出物はそれぞれ単独では食用に用いられているものであり、使用者に大きな害を及ぼすものではないことが確認されている。よって、食品であれば医師の処方に依らず簡便に取得することが可能であり、特に機能性表示食品、健康食品としての形態をとりうる。
【0041】
更に、本組成物の形態は、固形物に限らず、飲料の形態もとりうる。本組成物が食品であるときの形態は、例えばドリンク、キャンデー、ゼリー、グミなどのデザート類とする形態を挙げることができ、健康食品、機能性表示食品であるときの形態は、上記に加え、例えば錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒、ドリンクなどの形態を挙げることができる。
【0042】
以上、黒ウコン(Kaempferia parviflora)、黒ウコン抽出物及びポリアルコキシフラボノイド類化合物の少なくともいずれかと、NMNを組み合わせることにより、優れたサーチュイン活性化剤を提供することができる。
【実施例0043】
ここで実際に、上記実施形態に係る組成物を製造し、その効果を確認した。以下、具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0044】
(黒ウコン抽出物)
黒ウコン(Kaempferia parviflora)根茎の乾燥チップをミキサーにより粉砕し、その粉砕物に80%エタノールを加え、加熱還流後、ろ過し抽出液を得た。抽出残渣を再度80%エタノールにて、加熱還流した後、ろ過し抽出液を得た。1回目の抽出液と2回目の抽出液をあわせ、減圧濃縮した後、賦形剤を入れて、減圧乾燥を行い、黒ウコン抽出物(80%エタノール抽出物)を得た。
【0045】
(クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテル)
上記得られた黒ウコンの80%エタノール抽出物を水と酢酸エチルで分配を行い、濃縮乾燥した後、4.58gの酢酸エチル相を得た。得られた酢酸エチル相をシリカゲルに吸着させた後、メタノール-クロロホルム混合溶媒により溶出させ、得られた分画物に対しさらに逆相高速液体クロマトグラフィー(ODS)により単離精製を行い、化合物1(784mg)を得た。
【0046】
そして、上記得られた化合物1の核磁気共鳴スペクトルを取得した。以下の表2に、プロトン核磁気共鳴分光法(
1H-NMR)、カーボン核磁気共鳴分光法(
13C-NMR)の結果を示す。なお、表における”実測値”とは本発明者らが測定した結果を示すものであり、”文献値”とは”Simultaneous identification and quantitation of 11 flavonoid constituents in Kaempferia parviflora by gas chromatography.Journal of Chromatography A,1143:227-233,2007.”に記載の結果を示すものである。
【表2】
【0047】
また、以下の表3に融点測定法、赤外分光法(IR)、紫外分光法(UV)および質量分析法(MS)を用いて測定した化合物1の物性データの結果を示す。
【表3】
【0048】
化合物1の核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR及び13C-NMR)におけるケミカルシフト値、スペクトル形状、結合定数、カップリングの状態、および文献値との比較、ならびに融点などの物性データから、化合物1はクエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテル(quercetin-3,5,7,3’,4’-pentamethylether)と同定した。
【0049】
(サーチュイン活性化作用の評価試験)
2.5×105 cells/mL(10%牛胎児血清(FBS)含有ダルベッコMEM)のマウス腹水由来の単球マクロファージ細胞(RAW264.7)を細胞培養用ディッシュに播種し、一晩37℃、5%CO2インキュベーターにて培養した。培養終了後、新たな培養液に交換し、更に1時間培養した。その後、25、50又は100μg/mLのNMNを100μL添加し、37℃、5%CO2インキュベーターにて6時間静置した。その後、NMN含有培養液を除去し、200μLのcell lysis buffer(50mM HEPESバッファpH8、50mM NaCl、1% Triton X-100)を添加し、セールスクレーパーで細胞を回収した。なお、回収した細胞はホモジナイザーで破壊し、破壊した細胞液を12,000回転で遠心し、上清を3種回収した。
【0050】
上記によって得られた3種の細胞上清液に黒ウコン抽出物、又は、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテルをそれぞれ添加し、FLUOR DE LYS(登録商標)SIRT活性アッセイキットを用い、サーチュイン活性化作用を評価した。また、黒ウコン抽出物の最終濃度は50μg/mL、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテルの最終濃度は2μg/mLになるよう調整した。
【0051】
(試験結果1)
図1に示したように、黒ウコン抽出物とNMNを同時に添加した場合は、黒ウコン抽出物、またはNMNの単独より強いサーチュイン活性化作用が示された。また、黒ウコン抽出物とNMNの比率が1:2、1:1、2:1のいずれにおいても、同様なサーチュイン活性化作用が確認された。すなわち、本結果によると、黒ウコン抽出物単独の場合及びNMN単独の場合よりも黒ウコン抽出物とNMNを同時に添加した場合に優れた相乗的なサーチュイン活性化作用を得ることができることを確認した。
【0052】
(試験結果2)
図2に示したように、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテルとNMNを同時に添加した場合は、それぞれの単独より強いサーチュイン活性化作用が示された。すなわち、本結果によると、クエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテル単独の場合及びNMN単独の場合よりもクエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテルとNMNを同時に添加した場合に、優れた相乗的なサーチュイン活性化作用を得ることができることを確認した。
【0053】
以上、黒ウコン抽出物又はクエルセチン-3,5,7,3’,4’-ペンタメチルエーテルと、NMNを組み合わせることによって、より優れたサーチュイン活性化作用を持つことが確認された。
黒ウコン(Kaempferia parviflora)又は黒ウコン抽出物又はポリアルコキシフラボノイド類化合物と、ニコチンアミドモノヌクレオチド(nicotinamide mononucleotide、NMN)を組み合わせることによって、より優れたサーチュイン活性化剤を提供することができる。