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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059265
(43)【公開日】2023-04-26
(54)【発明の名称】固定電磁石を用いた磁気研磨仕上げ
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/00 20120101AFI20230419BHJP
【FI】
B24B37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022165332
(22)【出願日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】63/262500
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/045911
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SIMULINK
(71)【出願人】
【識別番号】522403985
【氏名又は名称】アズィーム・シン・コロン
【氏名又は名称原語表記】Azeem Singh Kahlon
【住所又は居所原語表記】c/o University of Waterloo, 200 University Avenue West Waterloo, ON N2L 3G1, CANADA
(71)【出願人】
【識別番号】522403996
【氏名又は名称】ミル・ベーラド・カメシー
【氏名又は名称原語表記】Mir Behrad Khamesee
【住所又は居所原語表記】c/o University of Waterloo, 200 University Avenue West Waterloo, ON N2L 3G1, CANADA
(71)【出願人】
【識別番号】390037165
【氏名又は名称】Mipox株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】アズィーム・シン・コロン
(72)【発明者】
【氏名】ミル・ベーラド・カメシー
(72)【発明者】
【氏名】セパシィ・ザマティ モハマド・サイド
(72)【発明者】
【氏名】中川 紗央里
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158BA02
3C158BA09
3C158BB02
3C158BB06
3C158BC03
3C158CB03
3C158CB07
3C158DA02
3C158DA11
3C158EA28
3C158ED08
(57)【要約】
【課題】加工物の磁場支援研磨仕上げのための方法、装置及びシステムが提供される。
【解決手段】鉄コア電磁石からなる固定電磁石アレイを加工物に隣接して配置し、動的磁場を発生させる。制御システムが静止電磁アレイの電磁石に選択的に通電して動的磁場を生成するようにプログラムされるように構成されている。動的磁場は、回転磁場、振動磁場、または指定されたパターンの1つを含むことができる。複数の磁性研磨粒子も提供される。固定電磁アレイを工作物に対して位置決めするために治具が設けられている。複数の磁性砥粒を動的磁場に導入し、この動的磁場によって加工物の表面に対して移動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物の磁場支援研磨仕上げのためのシステムであって
動的磁場を発生するように配置された鉄心電磁石からなる静止電磁石アレイと、
前記静止電磁アレイの電磁石に選択的に通電して前記動的磁場を生成するようにプログラムされるように構成された制御システムと、
複数の磁性砥粒と、
前記固定電磁アレイをワークに隣接させる治具と、
を有し、
前記複数の磁性砥粒は、前記動的磁場に導入され、前記動的磁場によって前記被加工物の表面に対して移動することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記制御システムが、
直流電源を供給するプログラマブル直流電源と、
前記直流電源に接続された配電モジュールと、
複数のモータドライブであって、各モータドライブが、電力分配モジュールに接続され、静止電磁アレイの電磁石のそれぞれ1つに電流波形を提供するように構成された複数のモータドライブと、
前記電磁石のそれぞれに通電する電流波形の属性を制御することにより、それぞれの電磁石によって生成される磁束密度を調整するためのシミュレータを備えたホストコンピュータを有する制御ユニットと、
を有し、
ここで、前記シミュレータはアナログ/デジタル信号を前記モータドライブに送信し、前記モータドライブは対応する電流波形を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電流波形は、前記動的磁場の強度、前記動的磁場の活性化周波数、または前記動的磁場の方向の少なくとも1つを変更することが可能である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御システムは、記憶された実行可能命令に基づいて、アナログおよびデジタルの電圧指令信号を前記電磁石のそれぞれに対応するモータドライブに送るように構成され、
指令信号は、動的磁場の大きさ、速度および方向を変化させるように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記動的磁場は、回転磁場、振動磁場、または指定パターンのうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電磁石の各々は、
純鉄コアと、
前記鉄コアに巻回された銅コイルと、
純鉄コア先端と、
を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記鉄コア端は交換可能であり、
複数の鉄コア先端が、工作物の形状及び大きさと必要な磁束密度とに基づいて異なる形状及び大きさで提供される、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
隣接する電磁石間の距離を小さくするために、前記銅コイルは、前記鉄コアの一端にテーパ状に巻回されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記電磁石の各々が、隣接する電磁石間の距離を減少させ、隣接する不均一な加工物及び様々な大きさの加工物を位置決めすることを可能にしながら、均一な磁場及び磁気研磨粒子の必要な運動を生成するペン形電磁石を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記加工物は、
少なくとも1つの外部磁場を有する非磁性物体を含み、
研磨される内部表面、および曲面形状、複雑曲面形状、不規則形状、規則的形状のいずれかを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
加工物の磁場支援研磨仕上げのための方法であって、
動的磁場を生成するように配置された鉄心電磁石からなる静止電磁アレイを提供するステップと、
前記固定電磁アレイを加工物に隣接させて配置するステップと、
前記静止電磁アレイの電磁石に選択的に通電して前記動的磁界を発生させるステップと、
前記動的磁場に複数の磁性砥粒を導入するステップと、
を有し、
前記動的磁場によって前記磁性砥粒を前記加工物の表面に対して移動させることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記電磁石に選択的に通電するための制御システムが設けられ、
前記制御システムは、
直流電源を供給するプログラマブル直流電源と、
前記直流電源に接続された配電モジュールと、
複数のモータドライブであって、各モータドライブは、前記配電モジュールに接続され、前記静止電磁アレイの電磁石のそれぞれ1つに電流波形を提供するように構成されたモータドライブと、
前記モータドライブに送信されるアナログまたはデジタル電圧指令信号の属性を制御することにより、前記各電磁石によって生成される磁束密度を調整するための対応するシミュレータを有するホストコンピュータを備える制御ユニットと、
を有し、
ここで、前記シミュレータはアナログ/デジタル信号を前記モータドライブに送信し、前記モータドライブは対応する電流波形を生成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電流波形は、前記磁場の強度、前記ダイナミックコイルの作動周波数のうちの少なくとも1つを変更することができる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記制御システムは、記憶された実行可能命令に基づいて、アナログおよびデジタルの電圧指令信号を前記電磁石のそれぞれに対応する前記モータドライブに送るように構成され、
前記指令信号は、動的磁場の大きさ、速度および方向を変化させるように構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記動的磁場は、回転磁場、振動磁場、または指定パターンのうちの1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記電磁石の各々は、
純鉄コアと、
前記鉄コアに巻回された銅コイルと、
純鉄コア先端と
を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記純鉄コア先端は交換可能であり、
前記複数の純鉄コア先端は、工作物の形状及び大きさと必要な磁束密度とに基づいて異なる形状及び大きさで提供される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
隣接する電磁石間の距離を小さくするために、前記銅コイルは、前記鉄コアの一端にテーパ状に巻回されている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記電磁石の各々が、隣接する電磁石間の距離を減少させ、隣接する不均一な加工物及び様々な大きさの加工物を位置決めすることを可能にしながら、均一な磁場及び磁気研磨粒子の必要な運動を生成する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記加工物は、研磨される外部表面および内部表面の少なくとも一方を有する任意の非磁性物体を含み、
前記加工物は、曲面形状、複雑曲面形状、不規則形状、規則的形状のいずれかを有する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月14日に出願された米国仮出願第63/262,500号の利益を主張するものであり、その全体が本明細書に組み込まれ、全ての目的のために参照により本明細書の一部をなすものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、非磁性加工物の内部および外部表面処理を支援する磁場に関する。より詳細には、本発明は、磁気研磨粒子と加工物との間に相対運動を生じさせて切削動作(材料除去)を容易にするために、静止電磁石によって発生される動的(回転、振動、または他の指定されたパターン)磁場の実施に関する。
【0003】
自由形状に起因する付加製造(AM)は,粉体床融合または選択レーザ溶融のような種々の技術を用いる複雑な組立機構を必要とせずに、複雑な部品を生成することができる柔軟な製造プロセスである。これは、従来の機械加工方法(フライス加工、ダイ等)では非常に高価になるか又は非現実的であるタービンブレード内の共形冷却通路のような複雑な形状の設計を容易にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、メルトプール温度から速度までの数百のパラメータの不確実性および複雑な非線形性のために、製造された製品の表面粗さは制御不可能であり、したがって後処理が必要となる。平均表面粗さは、航空および医療用インプラントのような厳格な耐性接着を必要とする用途にとって重要な点である。付加的に製造された構成要素を手で後処理することは、製造コストを上昇させ、表面品質の偏差を増大させ、表面粗さにいろいろなバリエーションをもつことを制限し得るので、効率的な選択肢ではない。したがって、これらの特性を達成することは、可能な限り最良の機能性および性能を保証する機能要件となる。ボンネット研磨、振動補助研磨および流体ジェット研磨、サンドブラストなどの従来から利用可能な仕上げプロセスは、所望の表面粗さを達成し、機械的特性(残留応力など)を変更し、機械加工部品から過剰な材料を除去するために使用される技術である。しかし、時間がかかる特性、準状態誤差に対する感受性、およびプロセスパラメータおよび結果に対する高い感受性は、代替的かつ従来型でない仕上げ技術を見つけ出す主要な駆動要因となっている。
【0005】
MAF(Magnetic Abrasive Finishing)は、強磁性粒子への磁場の作用に基づいて、微細なチップ状のマイクロまたはナノスケールの薄い層を除去することにより、部品の表面形状を変えるように設計された柔軟なマイクロ加工プロセスである。MAFは、平坦な表面から中空および中実の円筒管のような複雑な形状をもつ様々な材料および形状をクリーンにするために既に使用されている。表面処理作用は、磁場によって支えられる加工物と研磨剤混合物との間の相対運動によって生じる。磁場の影響下で、これらの磁性研磨粒子(MAP)は磁束線の方向に整列し、半固体状鎖に変形する。したがって、MAFセットアップを設計する際の最も重要なステップの1つは、MAPと加工物との間に相対運動を生成する点である。従来のMAFセットアップでは、RMFは、永久磁石、電磁石、または加工物自体を機械的に回転させることによって生成される。しかし、これらの方法は特定の部品に対して予め調整されており、設計要件が変更された場合にはプロセスのオーバーホールが必要となる。
【0006】
多くの産業にとって、表面プロファイルは光学レンズや医療用インプラントのように規則的な形状ではない。そのため、要求される磁場特性を発生させるために機械部品を回転させる必要性をなくす新しい表面処理システム及び方法が強く必要とされている。このようなシステムおよび方法は、形状および表面粗さの要件に従って迅速に適応する柔軟性を示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法、装置およびシステムは、前述の利点および他の利点を提供する。この要約は、本開示の主題の概要を提供することを意図しており、主題の本質的な要素または主要な要素を特定することを意図しておらず、また、請求される実施の範囲を決定するために使用されることも意図していない。本開示の適切な範囲は、以下の詳細な説明および図面を基づき、以下に記載される請求項から確認すべきことである。
【0008】
本発明は、磁気研磨粒子と加工物との間に相対運動を生じさせて切削作用(材料除去)を容易にするために静止電磁石によって生成される動的磁場を実現するための方法、装置及びシステムに関する。動的磁場は、回転磁場、振動磁場、または使用される電磁石の数および配置(例えば、ジグザグ、プラス形状、三角形、正方形、複数方向への往復運動、スターモーション、オクタ、Hegzaなど)に基づいてオンデマンドで生成することができる他のタイプの運動パターンの形態であってもよい。
【0009】
本開示の目的は、従来の磁気研磨仕上げプロセスの少なくとも1つの制限を除去または軽減することである。本発明の方法、装置およびシステムは、磁気研磨粒子(MAP)と加工物との間の相対運動による材料除去を容易にすることによって、非磁気加工物の表面粗さを減少させる能力を提供する。相対運動は、固定電磁石アレイを介して生成された動的磁場とMAPとの相互作用の結果である。より詳細には、動的磁場は、本質的に回転または振動であり得る。
【0010】
本発明の一実施形態では、加工物の磁場支援研磨仕上げのためのシステムが提供される。システムは、動的磁場を生成するように配置された鉄心電磁石からなる固定電磁アレイと、固定電磁アレイの電磁石に選択的に通電して動的磁場を生成するようにプログラムされるように構成された制御システムとを備えてよい。複数の磁性研磨粒子も提供される。固定電磁アレイを工作物に隣接して位置決めするための治具を提供する。複数の磁性研磨粒子が動的磁場に投入され、動的磁場によって加工物の表面に対して移動する。
【0011】
制御システムは、DC電力を供給するためのプログラム可能なDC電源と、DC電源に接続された電力分配モジュールと、電力分配モジュールに接続され、固定電磁アレイの電磁石のそれぞれに電流波形を提供するように構成された複数のモータドライブと、それぞれの電磁石に通電する電流波形の属性を制御することによって各電磁石によって生成される磁束密度を調整するための対応するシミュレータを有するホストコンピュータを含む制御ユニットとを含むことができる
【0012】
電流波形は、動的磁場の強度、動的磁場の活性化周波数、または動的磁場の方向の少なくとも1つを変化させることができる。
【0013】
制御システムは、記憶された実行可能命令に基づいて、アナログおよびデジタルの電圧指令信号を各電磁石の対応するモータドライブに送るように構成することができる。コマンド信号は、動的磁場の大きさ、速度、および方向を変更するように構成することができる。
【0014】
システムは持ち運び可能であり、車輪付きプラットフォーム上に収容されてもよい。
動的磁場は、回転磁場、振動磁場、または指定パターンのうちの1つを含む。
【0015】
各電磁石は、純鉄コアと、該鉄コアに巻回された銅製コイルと、純鉄コアチップとを備えている。鉄コアチップは交換可能であってもよい。複数の鉄コアチップは、加工物の形状及び寸法並びに必要な磁束密度に基づいて異なる形状及び寸法で提供されてもよい。
【0016】
隣接する電磁石間の距離を小さくするために、銅コイルは鉄心の一端にテーパ状に巻かれていてもよい。あるいは、各電磁石は、隣接する電磁石間の距離を減少させ、均一な磁場および磁気研磨粒子の必要な運動を生成しながら、隣接する不均一な加工物および様々なサイズの加工物を位置決めすることを可能にするペン型電磁石を含むことができる。
【0017】
加工物は、研磨される外部表面および内部表面の少なくとも1つを有する任意の非磁性物体を含むことができる。また、加工物は、曲面形状、複雑な曲面形状、不規則形状、正規形状のいずれかであってもよい。
【0018】
電磁石アレイは、所望の運動パターンを生成するために特定の方法で配置された偶数の電磁石を含むことができる(例えば、電磁石は回転磁場を生成するために円形アレイに配置されてもよい)。各電磁石は、隣接する電磁石間の距離を減少させ、従来の円筒形電磁石と比較してより多くの数の電磁石をアレイ内に導入するために、一端でテーパを付けることができる。電磁石はまた、より小さい直径を有するように設計されてもよい(例えば、ペン型-加工効率を向上させ、低磁束密度箇所を低減させる。
【0019】
回転磁場中にMAPを導入した場合、MAPは磁場勾配により一つの磁極から隣接する磁極への磁束線に従う。
【0020】
本発明はまた、加工物の磁場支援研磨仕上げの方法を包含する。1つの例示的な実施形態において、本方法は、動的磁場を生成するように配置された鉄コア電磁石からなる固定電磁アレイを提供するステップと、加工物に隣接して固定電磁アレイを配置するステップと、固定電磁アレイの電磁石に選択的に通電して動的磁場を生成するステップと、複数の磁性研磨粒子を動的磁場に導入するステップとを含むことができる。磁気研磨粒子は、動的磁場によって加工物の表面に対して移動する。
【0021】
本方法は、さらに、システム実施形態に関連して上述した特徴および機能性のいずれかまたは全てを含み得る。本発明によれば、対応する装置も提供される。
本発明を添付の図面と関連させて説明するが、同じ参照番号は同じ要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本発明によるシステムの例示的な実施形態のフローチャートを示す。
図2図2は本発明によるシステムの例示的実施形態のサブシステムレベルの概略図を示す。
図3図3は本発明による中空円筒状ワークピースの周りに配置された電磁アレイの一実施形態を示す。
図4図4は本発明によるフラットシート加工物の周りに配置された電磁アレイの例示的な実施形態を示す。
図5A図5Aは本発明による回転磁界を生成する電磁アレイの例示的な実施形態を示す。
図5B図5Bは本発明による振動磁場を生成する電磁アレイの例示的な実施形態を示す。
図6図6は、本発明による動的磁場中への磁性研磨粒子の導入を伴う図5の例示的実施形態を示す。
図7A図7Aは本発明による電磁アレイを保持する治具の例示的な実施形態を示す。
図7B図7Bは、本発明による電磁アレイなしの図7Aの治具の例示的な実施形態を示す。
図8図8は、本発明に従って回転磁界を生成するために4つの電磁石からなる実施形態に通電するための個々の電流波形の例示的実施形態を示す。
図9図9は本発明による図8の電流波形間の位相差を示す。
図10図10は、円形状アレイにおいて隣接する電磁石間の距離を減少させるように設計されたテーパ形電磁石の例示的な実施形態を示す。
図11図11は本発明による図10のテーパー付き電磁石の断面図を示す。
図12A図12Aは本発明によるコア先端部を取り付けられたテーパ付き電磁石の例示的実施形態を示す。
図12B図12Bは、本発明によるコア先端部が取り付けられた電磁石(テーパなし)の例示的実施形態を示す。
図13図13は本発明による交換可能なコアチップの例示的な実施形態を示す。
図14図14は様々な相互交換可能コアチップの例示的実施形態を示す。
図15図15は、本発明による複数のペン型電磁石からなる円形電磁アレイの例示的な実施形態を示す。
図16図16は本発明の方法の実施後における加工物の初期及び最終表面プロファイルの3次元マップを示す。
図17図17は、図16に示す工作物の線に沿った研磨前後の粗さプロファイルのチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明は、例示的な実施形態のみを提供し、本発明の範囲、適用可能性、または構成を制限することを意図するものではない。むしろ、例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、当業者に、本発明の実施形態を実施するための実施可能な説明を提供する。添付の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び配置に様々な変更を加えることができることを理解すべきである。
【0024】
典型的なMAFプロセスでは、カッティング/チッピング作用は、磁場の勾配に起因して発生する2つの力、すなわち法線成分と接線成分の結果である。法線成分は加工物中のMAPの押し込みの原因であり、対向する磁極間の磁性粒子に作用する力によって発生する。力の接線成分は、材料のせん断応力に打ち勝つため、最終的なチッピング作用の原因となる。従来、永久電磁石は、フライス盤や旋盤などの回転機械に搭載され、回転磁界を発生させて接線成分を生成する。したがって、これはセットアップを非常にかさばるものにし、ポータブルであることをほとんど不可能にする。
【0025】
従来のMAF技術の限界を克服し、本明細書に開示された技術を実施するために、プロセスの可搬性および柔軟性を優先させながら、物理的システムを設計および製造した。本発明のシステムの主な機能は、加工中に電磁石の回転運動または並進運動を使用することなく、加工物の表面上の磁性研磨粒子の運動を操作するために回転磁場を生成することである。 システム全体は、衝撃、振動および現場環境に耐えることができるマルチレベルのポータブルプラットフォーム上で開発されている。
【0026】
以下に詳細に開示されるのは、静止電磁石を使用して材料を除去し、非磁性加工物の物理的に到達困難な外面及び内面の表面粗さを低減する方法及びシステムの例示的実施形態である。この方法は、磁性研磨粒子(MAP)上に動的磁場(回転または振動磁場)を実現することに基づいている。MAPは、動的磁場に応答して、磁力線に沿って移動し、MAPと加工物との間で相対運動が達成される。従来の磁気研磨仕上げとは異なり、この技術は、磁石/電磁石または加工物のいずれかに回転運動を与えるための移動部品/構成要素を含まない。MAPの運動は、加工物表面に複数の溝を生成する。固定鉄心電磁石をアレイ状に配置し、動的磁場を発生させる。以下の実施形態は、電磁石とワークとの間の作動ギャップに基づいて磁束密度を調整するように構成することができる制御ユニットも含む。
【0027】
本発明は、固定電磁石を用いた加工物の磁場支援研磨仕上げのためのシステムに関する。図1図4は、このようなシステムの例示的な実施形態を示しており、この実施形態は、動的磁場を生成するように配置された鉄心電磁石12からなる静止電磁アレイ10を含むことができる。システムはまた、(例えば、制御ユニット19に接続されたユーザインターフェース18を介して)動的磁場を生成するために固定電磁アレイ10の電磁石12を選択的に通電するようにプログラムされるように適合された制御システム14を含む。
【0028】
図3は、アレイ10に隣接して配置された円筒形ワークピース13を示す。 図4は、アレイ10に隣接して配置された平坦なワークピース13を示す。
【0029】
動的磁場は、回転磁場、振動磁場、または使用される電磁石の数および配置(例えば、ジグザグ、プラス形状、三角形、正方形、複数の方向への往復運動、スターモーション、オクタ、Hegzaなど)に基づいてオンデマンドですることができる指定パターンの1つを含むことができる。
【0030】
図5Aは、電磁アレイ10によって生成される回転磁場20の形態の動的磁場を示す(図示のように時計回りまたは反時計回りの回転磁場とすることができる)。図6に示すように、複数の磁性研磨粒子22が動的(回転)磁場20に導入され、動的磁場20によって加工物13の表面に対して移動する。
図5Bは、振動磁場20'を生成する静止電磁アレイ10の例示的実施形態を示す。
【0031】
図7Aおよび図7Bは、固定電磁アレイ10に隣接して加工物13を位置決めするために使用され得るジグ24の例示的実施形態を示す。図7Aは、治具24内に配置された電磁アレイ10の例示的実施形態を示す。図7Bは、電磁アレイ10のない治具24を示す。治具24は、加工物に対する個々の電磁石の位置、向き、および相対位置を変化させるために複数の軸に沿って操作可能なフレームアーム25を含むことができる。試験治具24は、ワークを保持するためのフレーム27で構成されている。電磁石12の放熱のためにDCファン(図示せず)を設けてもよい。
【0032】
システムのモジュラー性により、オペレータは、鉄コア先端形状、コイルの角度及び位置、電流、振幅、周波数及び位相差を任意の瞬間に変更することができる。さらに、装置全体は、任意の場所で容易に移動し、安全に固定することができる車輪に取り付けることができる。
【0033】
制御システム14は、DC電力を供給するためのプログラム可能なDC電源26と、DC電源26に接続された電力分配モジュール28と、電力分配モジュール28に接続され、固定電磁アレイ10の電磁石12のそれぞれに電流波形を提供するように構成された複数のモータドライブ30と、各電磁石12に通電する電流波形の属性を制御することによって各電磁石12によってワークスペース内に生成される磁束密度を調整するための対応するシミュレータ16(例えば、FPGAシミュレータ)を備えたホストコンピュータ15を有する制御ユニット19とを含むことができる。ユーザインターフェース18は、ユーザがホストコンピュータ15に入力を提供することを可能にする。 DC電源26からの出力は、低速ブローヒューズを介して電力分配モジュール28によって分配され得る(ヒューズ電流定格は、使用されるコイルの数によって変化し得る)。
【0034】
制御ユニット19は、モータドライブ30の出力電流波形を(アナログ/デジタル信号を介して)制御することができる。ホストコンピュータ15は、オペレータと装置とのインターフェースとして使用される。プロセスパラメータ(波形、周波数、振幅、および位相差)は、装置に搭載されたディスプレイ上でリアルタイムに監視および変更することができる。開示された技術の制御モデルは、例えばMATLAB(登録商標)-Simulinkで製造された開ループモデルである。制御ユニット19は、実施される偶数コイルの数に基づいて電磁石12間に適切な位相差を有する正弦波電流を介して電磁石12に通電するように設計されている。そのような波形の例は、図8および図9に示す。図8は、回転磁界20を生成するために4つの電磁石12からなるアレイを付勢する個々の電流波形を示す。図9は、図8の電流波形間の位相差を示す。他の波形を使用することもできる。
【0035】
電流波形は、動的磁場20の強度、動的磁場20の活性化周波数、又は動的磁場20の方向の少なくとも1つを変化させることができる。例示的な実施形態では、モータドライブ30は、制御ユニット19からのアナログ/デジタル指令電圧信号をエミュレートする電流波形を生成するようにプログラムされる。特に、制御システム14は、記憶された実行可能命令に基づいて、アナログおよびデジタルの電圧指令信号を、電磁石12のそれぞれに対応するモータドライブ30に送るように構成することができる。モータドライブ30は、命令された出力電流を維持するために出力デューティサイクルを調整する。コマンド信号は、回転磁場20の大きさ、速度、および方向を変更するように構成されてもよい
【0036】
図10は、本発明による電磁石12の例示的な実施形態を示す。図11は、このような電磁石12の断面図を示す。電磁石12は、純鉄コア40と、鉄コア40の周りに巻かれた銅製コイル42と、純鉄コア先端部44(図12A及び図12Bに示す)とを備えることができる。鉄心先端44は交換可能であってもよい。例えば、図13に示すように、先端44は、電磁石12の対応するねじ穴48にねじ込まれるように適合されたねじ付きロッド46を含むことができる。複数の鉄心チップ44は、図14に示すように、異なる形状およびサイズで提供されてもよい。
【0037】
図12Aに示すように、銅コイル42は、隣接する電磁石間の距離を減少させ、ワークスペース内の磁場の均一な分布を維持するために、鉄心40の一端(例えば、テーパ部分17)にテーパ状に巻かれてもよい。あるいは、図15に示すように、電磁石12の各々は、ペン型(例えば、薄い円筒形)電磁石を含むことができる。 ペン型電磁石は、テーパ型電磁石よりも小径であってもよく、鉄心を有していても有していなくてもよい。このペン形状は、均一な磁場を生成しながら、隣接する電磁石12間の距離を減少させ、不均一な加工物及び様々な大きさの加工物に隣接する電磁石の位置決めを可能にする。
【0038】
解析的及び有限要素解析を用いてコイル設計を最適化し、軸及び軸外位置の磁場勾配を最大にした。磁場勾配は、適切なコア先端形状およびコア材料を選択することによって非常に拡大することができる。これは、コア先端を使用して磁束線を作業スポット内に方向付けて集中させるためである。さらに、延長されたコア先端44を使用することによっても、磁束の漏れを低減することができる。鉄は、金属の中で最も高い比透磁率(4000)の1つを有するので、コア先端部44として選択することができる。
【0039】
被加工物13は、研磨すべき外面及び内面の少なくとも一方を有する任意の非磁性物体を含むことができる。また、被加工物13は、曲面形状、複雑な曲面形状、不規則形状、規則的形状のいずれかを有していてもよい。したがって、研磨されるか加工物13の内部または外部は、様々な形状とすることができる。
【0040】
本発明は、加工物13の磁場支援研磨仕上げの方法も包含する。1つの例示的な実施形態において、本方法は、動的磁場20を生成するように配置された鉄コア電磁石12からなる固定電磁石アレイ10を提供し、加工物13を固定電磁石アレイ10に隣接して配置し、固定電磁石アレイの電磁石12に選択的に通電して動的磁場20を生成し、複数の磁性研磨粒子22を動的磁場20に導入することを含むことができる。磁気研磨粒子22は、動的磁場20によってワーク13の表面に対して移動させられる。
【0041】
この方法はさらに、上述のシステムおよび装置の特徴および機能性のいずれかまたは全てを含むことができる。
【0042】
図16は、開示された方法の施行後における加工物の初期及び最終表面プロファイルの3次元マップを示す。図17は、開示された方法の施行後における、レーザー共焦点顕微鏡下での加工物の平均表面粗さの変化を示すチャートを示す。図17に見られるように、本発明の方法は、表面の山と谷を減少させることができるだけではなく、均一な表面粗さを得ることもできた。
【0043】
本発明は、固定電磁アレイを使用して加工物の磁場支援研磨仕上げを行うための有利な方法及び装置を提供することを理解されたい。
【0044】
本発明は、種々の図示されたものと関連して説明されてきたが、実施形態において、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および範囲から逸脱することなく、多数の修正および適応を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
【外国語明細書】