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特開2023-59286筒状ヒータの製造方法、及び、筒状ヒータ製造用治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059286
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】筒状ヒータの製造方法、及び、筒状ヒータ製造用治具
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/40 20060101AFI20230420BHJP
   F24H 1/10 20220101ALI20230420BHJP
【FI】
H05B3/40 A
F24H1/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169193
(22)【出願日】2021-10-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】594073129
【氏名又は名称】新熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】矢部 信一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直斗
【テーマコード(参考)】
3K092
3L034
【Fターム(参考)】
3K092PP11
3K092QA02
3K092QB28
3K092QB44
3K092QB71
3K092RA01
3L034BA13
3L034BA14
3L034BA16
3L034BA17
3L034BB02
(57)【要約】
【課題】被加熱流体の加熱効率を向上した筒状ヒータ等を提供する。
【解決手段】筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータ10を、第1の巻き径で巻き回された第1コイル部12aと、第1の巻き径よりも大きい第2の巻き径で巻き回された第2コイル部12bとを有し、第1コイル部の中心軸Aを含む平面で切って見た断面において、第1コイル部に含まれる発熱体の断面と第2コイル部に含まれる発熱体の断面とが、中心軸方向に沿って交互に配列される構成とする。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータであって、
第1の巻き径で巻き回された第1コイル部と、
前記第1の巻き径よりも大きい第2の巻き径で巻き回された第2コイル部とを有し、
前記第1コイル部の中心軸を含む平面で切って見た断面において、前記第1コイル部に含まれる前記発熱体の断面と前記第2コイル部に含まれる前記発熱体の断面とが、前記中心軸方向に沿って交互に配列されること
を特徴とする筒状ヒータ。
【請求項2】
前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータであること
を特徴とする請求項1に記載の筒状ヒータ。
【請求項3】
前記第1コイル部及び前記第2コイル部は、前記発熱体の中間部に形成された折返し部を介して連続するよう一体に形成されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の筒状ヒータ。
【請求項4】
前記第1コイル部の中心軸を含む平面で切って見た断面において、前記第1コイル部に含まれる前記発熱体の断面と前記第2コイル部に含まれる前記発熱体の断面とが、間隔を隔てて配置されること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の筒状ヒータ。
【請求項5】
被加熱流体が通流される流路が設けられたケースと、
前記第1コイル部及び前記第2コイル部が前記流路の内部に前記被加熱流体と接するよう配置された請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の筒状ヒータと
を備えることを特徴とする流体加熱器。
【請求項6】
前記流路の少なくとも一部は、前記第1コイル部及び前記第2コイル部を内径側に収容する外筒の内周面と、前記第1コイル部及び前記第2コイル部の内径側に挿入される内筒の外周面との間に設けられること
を特徴とする請求項5に記載の流体加熱器。
【請求項7】
筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータの製造方法であって、
軸状に形成された芯材の周囲に、前記芯材の外周面から突出するように螺旋状に巻き回された突条部を設け、
前記突条部は、前記芯材の中心軸を含む平面で切って見た断面が前記中心軸方向に隙間を有するよう配置され、
前記突条部の前記隙間に沿って前記発熱体の第1部を巻き回して第1コイル部を形成し
前記突条部の外周面に沿って前記発熱体の第2部を巻き回して前記第1コイル部よりも巻径が大きい第2コイル部を形成すること
を特徴とする筒状ヒータの製造方法。
【請求項8】
前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータであること
を特徴とする請求項7に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項9】
前記発熱体の前記第1部と前記第2部とは、前記発熱体の中間部に形成された折返し部を介して連続するよう一体に形成されていること
を特徴とする請求項7又は請求項8に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項10】
前記第1コイル部及び前記第2コイル部を形成した後に、前記第1コイル部及び前記第2コイル部に対して前記突条部を前記芯材の中心軸回りに相対回転させることで、前記突条部を前記第1コイル部及び前記第2コイル部から取り外すこと
を特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項11】
前記突条部は、前記芯材の中心軸方向に沿って複数の層状造形物を積層する立体造形方法により形成されること
を特徴とする請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項12】
前記突条部は、前記発熱体の材料よりも弾性率が小さい材料からなること
を特徴とする請求項7から請求項11までのいずれか1項に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項13】
筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータの製造に用いられる筒状ヒータ製造用治具であって、
軸状に形成された芯材の周囲に、前記芯材の外周面から突出するように螺旋状に巻き回されて配置される突条部を有し、
前記突条部は、前記芯材の中心軸を含む平面で切って見た断面が前記中心軸方向に隙間を有するよう配置されること
を特徴とする筒状ヒータ製造用治具。
【請求項14】
前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータであること
を特徴とする請求項13に記載の筒状ヒータ製造用治具。
【請求項15】
前記突条部は、前記芯材の中心軸方向に沿って複数の層状造形物を積層する立体造形方法により形成されること
を特徴とする請求項13又は請求項14に記載の筒状ヒータ製造用治具。
【請求項16】
前記突条部は、前記発熱体の材料よりも弾性率が小さい材料からなること
を特徴とする請求項13から請求項15までのいずれか1項に記載の筒状ヒータ製造用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状ヒータ、筒状ヒータを有する流体加熱器、筒状ヒータの製造方法、及び、筒状ヒータ製造用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シーズヒータは、筒状部材であるシースの内部に発熱線を収容するとともに、マグネシア等の絶縁体粉末を充填して構成された筒状の抵抗加熱電気ヒータである。
シーズヒータは、電気的絶縁性に優れており被加熱流体を安全に加熱することが可能であり、また、材質を適切に選択することにより、高温での使用も可能である。
また、シースを曲げ加工することにより、発熱部を設置スペースに応じた任意の形状に形成することが可能である。
【0003】
シーズヒータにより被加熱流体を加熱する流体加熱器に関する従来技術として、例えば特許文献1には、被加熱流体が通流される筒状体の内部に、らせん状に巻き回したコイル部を有するシーズヒータを収容した気体加熱器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004- 69256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載されている技術においては、シーズヒータにおいて螺旋状にシースを巻き回したコイル部の巻き径が一様であることから、流路内にコイル部を配置した場合、シースの外周面において、流路の流れ方向に沿った表層部の一部しか被加熱流体の加熱に有効に寄与していない場合があった。
このため、筒状ヒータの外周面と被加熱流体との有効な接触面積を拡大して、被加熱流体の加熱効率を向上することが要望されている。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、被加熱流体の加熱効率を向上した筒状ヒータ及び流体加熱器を提供することである。
また、本発明の他の課題は、被加熱流体の加熱効率を向上した筒状ヒータを容易に製造することが可能な筒状ヒータの製造方法及び筒状ヒータ製造用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の第一の態様に係る筒状ヒータは、筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータであって、第1の巻き径で巻き回された第1コイル部と、前記第1の巻き径よりも大きい第2の巻き径で巻き回された第2コイル部とを有し、前記第1コイル部の中心軸を含む平面で切って見た断面において、前記第1コイル部に含まれる前記発熱体の断面と前記第2コイル部に含まれる前記発熱体の断面とが、前記中心軸方向に沿って交互に配列されることを特徴とする。
これによれば、巻き径が異なる第1コイル部、第2コイル部が、いわゆる二重らせん状(二条巻き)に配置されることにより、被加熱流体を各コイル部の中心軸方向に流した場合に、被加熱流体が段違い状に配列された発熱体を避けるようジグザグ状に通過することになる。
これにより、被加熱流体が発熱体の外周面に沿って回り込む挙動が発生し、各発熱体に対してその周方向における広い範囲で接触することになる。このため、被加熱流体と発熱体との有効な接触面(流体接触面)の面積を拡大し、被加熱流体の加熱効率を向上することができる。
さらに、流路内において被加熱流体の流れに乱流を発生させることにより、発熱体から被加熱流体への熱伝達を促進し、さらに加熱効率を向上することができる。
第一の態様の発明において、前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータである構成とすることができる。
【0007】
第一の態様の発明において、前記第1コイル部及び前記第2コイル部は、前記発熱体の中間部に形成された折返し部を介して連続するよう一体に形成されている構成とすることができる。
これによれば、部品点数や、電気ヒータの場合には加熱用電力、流体を熱媒とした発熱体(熱交換器)の場合には熱媒等を供給する端子数を増加させることなく、簡単な構成により上述した加熱効率の向上効果を得ることができる。
【0008】
第一の態様の発明において、前記第1コイル部の中心軸を含む平面で切って見た断面において、前記第1コイル部に含まれる前記発熱体の断面と前記第2コイル部に含まれる前記発熱体の断面とが、間隔を隔てて配置される構成とすることができる。
これによれば、第1コイル部、第2コイル部に含まれる発熱体の間を被加熱流体が通流することにより、上述した加熱効率の向上効果を確実に得ることができる。
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明の第二の態様に係る流体加熱器は、被加熱流体が通流される流路が設けられたケースと、前記第1コイル部及び前記第2コイル部が前記流路の内部に前記被加熱流体と接するよう配置された上記いずれか1項に記載の筒状ヒータとを備えることを特徴とする。
本発明によれば、上述したように加熱効率を向上した筒状ヒータを備えることにより、流体加熱器の加熱効率を向上することができる。
【0010】
第二の態様の発明において、前記流路の少なくとも一部は、前記第1コイル部及び前記第2コイル部を内径側に収容する外筒の内周面と、前記第1コイル部及び前記第2コイル部の内径側に挿入される内筒の外周面との間に設けられる構成とすることができる。
これによれば、外筒の内周面と内筒の外周面との間で、筒状ヒータの第1コイル部、第2コイル部の各発熱体の間で、被加熱流体がジグザグ状に流れる挙動を確実に発生させ、上述した加熱効率の向上効果を促進することができる。
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明の第三の態様に係る筒状ヒータの製造方法は、筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータの製造方法であって、軸状に形成された芯材の周囲に、前記芯材の外周面から突出するように螺旋状に巻き回された突条部を設け、前記突条部は、前記芯材の中心軸を含む平面で切って見た断面が前記中心軸方向に隙間を有するよう配置され、前記突条部の前記隙間に沿って前記発熱体の第1部を巻き回して第1コイル部を形成し前記突条部の外周面に沿って前記発熱体の第2部を巻き回して前記第1コイル部よりも巻径が大きい第2コイル部を形成することを特徴とする。
これによれば、発熱体の第1部、第2部を、突条部の隙間及び突条部の突端面に沿ってそれぞれ巻き回すことにより、第1コイル部と第2コイル部とを正確な巻き径で容易に形成することができる。
また、突条部が各発熱体を巻き回すピッチ(中心軸方向のシース間隔)を案内するガイドとして機能することにより、ピッチ方向の形状精度も向上することができる。
第三の態様の発明において、前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータである構成とすることができる。
【0012】
第三の態様の発明において、前記発熱体の前記第1部と前記第2部とは、前記発熱体の中間部に形成された折返し部を介して連続するよう一体に形成されている構成とすることができる。
これによれば、部品点数や加熱用電力、熱媒等を供給する端子数を増加させることなく、簡単な構成とすることができる。
【0013】
第三の態様の発明において、前記第1コイル部及び前記第2コイル部を形成した後に、前記第1コイル部及び前記第2コイル部に対して前記突条部を前記芯材の中心軸回りに相対回転させることで、前記突条部を前記第1コイル部及び前記第2コイル部から取り外す構成とすることができる。
これによれば、第1コイル部、第2コイル部の形成後に、突条部を相対回転させることにより、突条部を容易に取り外すことができる。
特に、取外し時に突条部が損傷を受けにくく、筒状ヒータ製造用治具の再利用を図ることができる。
【0014】
第三の態様の発明において、前記突条部は、前記芯材の中心軸方向に沿って複数の層状造形物を積層する立体造形方法により形成される構成とすることができる。
これによれば、層状造形物が積層された界面を跨ぐよう、発熱体が「たが」状に巻き回されることにより、立体造形方法により突条部を形成する場合に、界面に過度の内部力が作用することを防止し、突条部の破損を防止することができる。
【0015】
第三の態様の発明において、前記突条部は、前記発熱体の材料よりも弾性率が小さい材料からなる構成とすることができる。
これによれば、第1コイル部、第2コイル部の形成後に、突条部を弾性変形させて容易に取り外すことができる。
【0016】
上述した課題を解決するため、本発明の第四の態様に係る筒状ヒータ製造用治具は、筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータの製造に用いられる筒状ヒータ製造用治具であって、軸状に形成された芯材の周囲に、前記芯材の外周面から突出するように螺旋状に巻き回されて配置される突条部を有し、前記突条部は、前記芯材の中心軸を含む平面で切って見た断面が前記中心軸方向に隙間を有するよう配置されることを特徴とする。
第四の態様の発明において、前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータである構成とすることができる。
第四の態様の発明において、前記突条部は、前記芯材の中心軸方向に沿って複数の層状造形物を積層する立体造形方法により形成される構成とすることができる。
第四の態様の発明において、前記突条部は、前記発熱体の材料よりも弾性率が小さい材料からなる構成とすることができる。
これらの各発明においても、上述した第三の態様の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、被加熱流体の加熱効率を向上した筒状ヒータ及び流体加熱器を提供することができる。
また、本発明によれば、被加熱流体の加熱効率を向上した筒状ヒータを容易に製造することが可能な筒状ヒータの製造方法及び筒状ヒータ製造用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用した流体加熱器の実施形態(本発明を適用した筒状ヒータ(シーズヒータ)の実施形態を有する)の断面図である。
図2】実施形態のシーズヒータの製造に用いるシーズヒータ製造用治具を示す図である。
図3図2のシーズヒータ製造用治具を芯材に取り付けた状態を示す図である。
図4図2のシーズヒータ製造用治具及び芯材に巻き回される前のシースの状態を示す図である。
図5図3の芯材及びシーズヒータ製造用治具にシースを巻き回した状態を示す図である。
図6】本発明の比較例である流体加熱器の断面図である。
図7】比較例の流体加熱器におけるシーズヒータのコイル部周辺の被加熱流体の流れを模式的に示す図である。
図8】実施形態の流体加熱器におけるシーズヒータのコイル部周辺の被加熱流体の流れを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、本発明を適用した筒状ヒータ、流体加熱器、筒状ヒータの製造方法、筒状ヒータ製造用治具の実施形態について説明する。
実施形態の筒状ヒータは、例えば、各種気体や蒸気、液体、気液混合流体などの各種被加熱流体を加熱する流体加熱器の熱源として利用されるシーズヒータである。
【0020】
図1は、実施形態の流体加熱器の断面図であって、ケース100の第1筒110等の中心軸Aを含む平面で切って見た状態を示す図である。
流体加熱器1は、シーズヒータ10、ケース100等を有して構成されている。
【0021】
シーズヒータ10は、例えばステンレス系合金等の金属製の円筒状の部材(筒状体)であるシースの内径側に、その長手方向に沿って、例えばニクロム系の金属からなる発熱線を配置するとともに、シースの内部に例えばマグネシア等の絶縁体粉末を封入して構成されている。
シーズヒータ10は、筒状の外形を有する発熱体を備えた筒状ヒータの一種である。
シーズヒータ10は、ループ部11、コイル部12、折返し部13、ストレート部14、導出部15等を有する。
【0022】
シーズヒータ10は、例えば、1本のシースを有するシーズヒータを、曲げ加工して一体に構成されている。
ループ部11は、シーズヒータ10の長手方向における中間部において、例えば軸状部材などにシースを巻きつけて曲げ加工された円弧状の部分(折返し部)である。
ループ部11は、コイル部12を曲げ(巻き回し)加工する際に、一方の端部を係止し、仮固定するために用いられる。
【0023】
コイル部12は、ループ部11の円弧形状の両端部から延在する2本のシースを、後述する芯材及びシーズヒータ製造用治具に、二重らせん状に巻き回した部分である。
コイル部12は、第1コイル部12a、第2コイル部12bを有する。
第1コイル部12a、第2コイル部12bは、図1に示すように、第1コイル部12a及び第2コイル部12bの巻き径の中心軸A(流体加熱器1に組み込まれた状態では第1筒110等の中心軸Aと同心)を含む平面で切って見た断面において、第1コイル部12aに含まれるシースの断面と、第2コイル部12bに含まれるシースの断面とが、中心軸A方向(コイルの巻き軸方向)に沿って交互に配列された、いわゆる二重らせん状に配置されている。
第1コイル部12aに含まれるシースの断面と、第2コイル部12bに含まれるシースの断面との間には、被加熱流体が通過可能な隙間が形成されている。
第2コイル部12bの巻き径は、第1コイル部12aの巻き径に対して大きくされている。
このようなコイル部12の製造方法等に関しては、後に詳しく説明する。
【0024】
折返し部13は、コイル部12のループ部11側とは反対側の端部に設けられ、シースがコイル部12の巻径外径側を通ってループ部11側へ戻るよう折り返す曲線部である。
ストレート部14は、折返し部13のコイル部12側とは反対側の端部から延在し、コイル部12の巻き軸方向と平行に延在する直線状の部分である。
導出部15は、ストレート部14の折返し部13側とは反対側の端部に設けられ、入口側フランジ140からケース100の外部へ突出する部分である。
導出部15の突端部には、シーズヒータ10の加熱用電源と接続される一対の端子部が設けられている。
【0025】
ケース100は、第1筒110、第2筒120、第3筒130、入口側フランジ140、出口側フランジ150、入口パイプ160、出口パイプ170等を有して構成されている。
なお、ケース100の各構成部材は、特記ない限り、例えばステンレス系合金などの耐熱性を有する金属材料によって構成され、各部品の接合は溶接によってなされている。
【0026】
第1筒110は、ケース100の外表面部を構成する円筒状の部材である。
第2筒120は、第1筒110の内径側に、第1筒110の中心軸Aと同心に配置される円筒状の部材である。
第2筒120の両端部は、中心軸A方向における位置が、第1筒110の両端部に対してケース100の内側となるように配置されている。
第1筒110の内周面と第2筒120の外周面とは、各筒の径方向に間隔を隔てて対向して配置されている。
第1筒110の内周面と第2筒120の外周面との間は、被加熱流体が通流される流路の一部を構成する。
第2筒120の入口パイプ160側(図1における左側)の端部は、端面121によって閉塞されている。
端面121は、第2筒120の中心軸Aと直交する平面に沿った円盤状の部材である。
【0027】
第3筒130は、第2筒120の内径側に、第1筒110及び第2筒120と同心に配置される円筒状の部材である。
第3筒130の入口パイプ160側の端部は、第2筒120の端面121と間隔を隔てて対向して配置されている。
第3筒130の出口パイプ170側の端部は、出口側フランジ150に突き当てられた状態で接合されている。
第2筒120の内周面と第3筒130の外周面とは、各筒の径方向に間隔を隔てて対向して配置されている。
第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間、及び、第3筒130の内径側は、被加熱流体が通流される流路の一部を構成する。
【0028】
シーズヒータ10のコイル部12(第1コイル部12a、第2コイル部12b)は、第3筒130の外周面と第2筒120の内周面との間に配置されている。
コイル部12は、第3筒130の外周面、第2筒120の内周面と、第2筒120、第3筒130の径方向に間隔を隔てて配置されている。
また、シーズヒータ10のストレート部14は、第2筒120の外周面と第1筒110の内周面との間に配置されている。
【0029】
入口側フランジ140は、第1筒110の入口パイプ160側の端部開口を塞ぐように設けられた端面である。
入口側フランジ140は、第1筒110の中心軸Aと直交する平面に沿った円盤状の部材である。
入口側フランジ140の中央部には、入口パイプ160が接続される開口が設けられている。
【0030】
出口側フランジ150は、第1筒110の出口パイプ170側の端部開口を塞ぐように設けられた端面である。
出口側フランジ150は、第1筒110の中心軸Aと直交する平面に沿った円盤状の部材である。
出口側フランジ150の中央部には、出口パイプ170が接続される開口が設けられている。
【0031】
入口パイプ160は、流体加熱器1に被加熱流体が導入される管路である。
入口パイプ160は、第1筒110の中心軸と同心の円筒状の部材である。
入口パイプ160は、入口側フランジ140から、ケース100の外部側へ突出している。
入口パイプ160の入口側フランジ140側の端部は、入口側フランジ140に設けられた開口に接続されている。
入口パイプ160は、第1筒110の内径側と連通可能とされ、被加熱流体を第1筒110の内部に導入する機能を有する。
【0032】
出口パイプ170は、流体加熱器1から加熱後の被加熱流体が流出する管路である。
出口パイプ170は、第1筒110の中心軸と同心の円筒状の部材である。
出口パイプ170は、出口側フランジ150から、ケース100の外部側へ突出している。
出口パイプ170の出口側フランジ150側の端部は、出口側フランジ150に設けられた開口に接続されている。
【0033】
図1において、被加熱流体の流路に沿った流れFを、破線矢印によって示す。
先ず、被加熱流体は、入口パイプ160から入口側フランジ140の開口を介して第1筒110の内径側に導入される。
その後、被加熱流体は、第2筒120の端面121に沿って第1筒110の外径側に進行し、第1筒110の内周面と第2筒120の外周面との間を通って出口側フランジ150側へ進行する。
【0034】
第1筒110の内周面と第2筒120の外周面との間において、被加熱流体は、第2筒120の外周面からの伝熱等により加熱されるが、その下流側に対して、比較的低温の状態となっている。
被加熱流体は、出口側フランジ150近傍において進行方向を反転させ、第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間に流入する。
【0035】
第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間に入った被加熱流体は、入口側フランジ140側へ通流しつつ、シーズヒータ10のコイル部12(第1コイル部12a、第2コイル部12b)と接触し、さらに加熱される。
その後、被加熱流体は、第2筒120の端面121近傍において進行方向を再度反転させ、第3筒130の内径側に流入する。
被加熱流体は、第3筒130の内部を通過して出口パイプ170に流入するが、このとき被加熱流体は、第3筒130の内周面を介し、シーズヒータ10のコイル部12によってさらに加熱され、昇温する。
【0036】
以下、上述したシーズヒータ10(筒状ヒータ)の製造方法及び製造用治具について説明する。
シーズヒータ10のコイル部12の第1コイル部12a、第2コイル部12bは、例えば円柱状の芯材300(図3図5等参照)に、以下説明するシーズヒータ製造用治具(筒状ヒータ製造用治具)200を装着した状態で、中間部において折り返されたシースの第1部、第2部を巻き回すことによって形成される。
図2は、実施形態のシーズヒータの製造に用いるシーズヒータ製造用治具を示す図である。
【0037】
実施形態のシーズヒータ製造用治具200は、螺旋状(コイル状)をなす突条部210を有する。
突条部210を流体加熱器1の第1筒110などの中心軸Aを含む平面で切って見た断面は、中心軸A方向に沿った長軸方向を有する矩形状に形成されている。
ここで、ある断面と、一ピッチ(一巻き)ずれた他の断面との間には、中心軸A方向に隙間220が設けられている。
【0038】
突条部210は、外周面211、内周面212、端面213等を有する。
外周面211は、突条部210の巻き径外径側の面部である。
外周面211は、中心軸Aと同心の円筒外周面状の凸曲面である。
内周面212は、突条部210の巻き径内径側の面部である。
内周面212は、中心軸Aと同心の円筒内周面状の凹曲面である。
内周面212の曲率は、芯材300の外周面の曲率と同等とされている。
端面213は、中心軸A方向に面しており、外周面211と内周面212とを接続する面部である。
【0039】
シーズヒータ製造用治具200は、例えば、公知の3Dプリンタを用い、樹脂系材料からなる複数の層状造形物を積層する立体造形方法によって形成することができる。
このとき、複数の層状造形物を積層する方向は、中心軸Aに沿った方向とすることができる。
また、シーズヒータ製造用治具200は、シーズヒータ10のシースの材料(例えば耐熱性ステンレス系合金等の金属材料)よりも弾性率が低く、弾性変形しやすい柔軟な材料からなる構成とすることができる。
【0040】
図3は、図2のシーズヒータ製造用治具を芯材に取り付けた状態を示す図である。
芯材300は、例えば鋼などの金属材料からなる円柱状の部材である。
芯材300は、シーズヒータ製造用治具200の内径側に挿入された状態で用いられる。
シーズヒータ製造用治具200の突条部210の内周面212は、芯材300の外周面と面接触するよう配置される。
これにより、突条部210は、芯材300の外周面から張り出した突条(所定の長手方向(この場合螺旋状)に沿って延びるよう突出した帯状部)として機能する。
このとき、隙間220を介して、芯材300の外周面の一部は露出している。
シーズヒータ10のコイル部12は、この状態での芯材300、シーズヒータ製造用治具200にシースを巻き回して形成される。
【0041】
図4は、図2のシーズヒータ製造用治具及び芯材に巻き回される前のシースの状態を示す図である。
発熱線及び絶縁体粉末を封入した後のシースS10は、先ず、長手方向における中間部を図示しない軸状体に巻き付けることにより、円弧状に湾曲したループ部11が形成されている。
ループ部11の両端部からは、ストレートな状態であるシースS10の第1部S11、第2部S12が実質的に平行に延在している。
第1部S11、第2部S12は、以下説明する加工により、第1コイル部12a、第2コイル部12bとなる。
【0042】
図5は、図3の芯材及びシーズヒータ製造用治具にシースを巻き回した状態を示す図である。
第1部S11は、シーズヒータ製造用治具200の隙間220に沿って、芯材300の外周面に直接螺旋状に巻き回される。これにより、第1部S11から、第1コイル部12aが形成される。
第2部S12は、突条部210の外周面211に沿って螺旋状に巻き回される。これにより、第2部S12から、第2コイル部12bが形成される。
このとき、第2コイル部12bの巻き径は、突条部210の外周面211と内周面212との径差だけ大きくなる。
第1コイル部12a、第2コイル部12bを形成した後、シーズヒータ製造用治具200の突条部210は、第1コイル部12a、第2コイル部12bに対して、単独で、あるいは、芯材300とともに、中心軸A回りに相対回動させられる。
これにより、シーズヒータ製造用治具200の突条部210は、第1コイル部12a、第2コイル部12bから、中心軸Aに沿ってネジ状に送り出され、取り外される。
このとき、突条部210は、弾性率が比較的低い樹脂系材料によって構成されているため、シースからの入力に応じて圧縮変形等の弾性変形を示し、各コイルに引っ掛りにくく、取外し作業が容易化される。
【0043】
以下、上述した実施形態の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
図6は、比較例の流体加熱器の断面図である。
比較例において、上述した実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
比較例の流体加熱器1は、実施形態のコイル部12に代えて、単一の巻き径を有するコイル部16を設けたものである。
【0044】
図7は、比較例の流体加熱器におけるシーズヒータのコイル部周辺の被加熱流体の流れを模式的に示す図である。
比較例においては、コイル部16を構成する各シースが、所定の巻きピッチ毎に同じ巻き径で配列されている。
このため、被加熱流体の流れFにおける主な成分は、例えばコイル部16の巻き径外径側に沿って、実質的に直線状に通過することになる。
この場合、シースの外周面において、コイル部16の巻き径外径側の比較的狭小な部分しか有効な流体接触面CAとして寄与しないことになる。
また、コイル部16の周囲における乱流の形成も抑制される。
【0045】
図8は、実施形態の流体加熱器におけるシーズヒータのコイル部周辺の被加熱流体の流れを模式的に示す図である。
実施形態においては、第1コイル部12aと、第1コイル部12aに対して巻き径が大きい第2コイル部12bとが、巻きピッチ方向(中心軸A方向)に沿って交互に配置されることから、被加熱流体の流れFの主な成分は、図8に示すように、第1コイル部12aの巻き径外径側、第2コイル部12bの巻き径内径側を交互に通過するように、ジグザグ状に進行することになる。
これにより、シースの外周面において、被加熱流体の加熱に寄与する流体接触面CAが比較例に対して拡大される。
さらに、被加熱流体の流れFの乱流化が促進される。
【0046】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)巻き径が異なる第1コイル部12a、第2コイル部12bが二重らせん状に配置されることにより、被加熱流体を中心軸A方向に流した場合に、被加熱流体が各コイル部を構成するシースを避けるようジグザグ状に通過することになる。
これにより、被加熱流体がシースの外周面に沿って回り込む挙動が発生し、各シースに対してその周方向における広い範囲で接触することになる。
このため、被加熱流体とシースとの有効な流体接触面CAを拡大し、シーズヒータ10及び流体加熱器1による被加熱流体の加熱効率を向上することができる。
また、被加熱流体の流れFの乱流化が促進されるため、加熱効率をより向上することができる。
(2)シーズヒータ10の第1コイル部12a、第2コイル部12bは、シースの中間部に形成されたループ部11を介して連続するよう、一体に形成されていることから、部品点数や加熱用電力を供給する端子数を増加させることなく、簡単な構成とすることができる。
また、流体加熱器1のケース100内への組み込み、位置決めを容易に行うことができる。
(3)中心軸Aを含む平面で切って見た断面において、第1コイル部12aに含まれるシースの断面と、第2コイル部12bに含まれるシースの断面とが、間隔を隔てて配置されることにより、第1コイル部12a、第2コイル部12bに含まれるシースの間を被加熱流体が通流することにより、上述した加熱効率の向上効果を確実に得ることができる。
(4)被加熱流体が通流される流路の一部を、第1コイル部12a及び第2コイル部12bを内径側に収容する第2筒120(外筒)の内周面と、第1コイル部12a及び第2コイル部12bの内径側に挿入される第3筒130(内筒)の外周面との間に設けられる構成とすることにより、第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間で、シーズヒータ10の第1コイル部12a、第2コイル部12bの各シースの間で、被加熱流体がジグザグ状に流れる挙動を確実に発生させ、上述した加熱効率の向上効果を促進することができる。
(5)シースS10の第1部S11、第2部S12を、シーズヒータ製造用治具200の突条部210の隙間220、及び、突条部210の外周面(突端面)211に沿ってそれぞれ巻き回すことにより、第1コイル部12aと第2コイル部12bとを正確な巻き径で容易に形成することができる。
また、突条部210がシースS10の第1部S11、第2部S21を巻き回すピッチ(中心軸A方向のシース間隔)を案内するガイドとして機能することにより、ピッチ方向の形状精度も向上することができる。
(6)第1コイル部12a、第2コイル部12bの形成後に、突条部210を各コイルに対して中心軸A回りに相対回動させて取り外すことにより、シーズヒータ製造用治具200をコイル部12から容易に取り外すことができる。
特に、取外し時に突条部210が損傷を受けにくく、シーズヒータ製造用治具200の再利用を図ることができる。
(7)シーズヒータ製造用治具200を、中心軸A方向に沿って複数の層状造形物が積層される立体造形方法によって形成することにより、層状造形物が積層された界面を跨ぐよう、シースS10の第1部S11及び第2部S12が「たが」状に巻き回されることになり、立体造形方法により突条部210を形成する場合に、シースを巻き回すとき界面に過度の内部力が作用することを防止し、突条部210の破損を防止することができる。
(8)突条部210がシースS10の材料よりも弾性率が小さい材料からなることにより、第1コイル部12a、第2コイル部12bの形成後に、突条部210を弾性変形させてコイル部12から容易に取り外すことができる。
【0047】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)筒状ヒータ、流体加熱器、筒状ヒータの製造方法、筒状ヒータ製造用治具の具体的構成は、上述した各実施形態に限定されることなく、適宜変更することが可能である。
例えば、各部材の構造、形状、材質、製法、数量、配置等は、各実施形態の構成から適宜変更することが可能である。
(2)実施形態の流体加熱器において、第1筒、第2筒、第3筒の横断面形状は例えば円形(真円)であったが、本発明はこれに限らず、例えば楕円形、矩形、その他の形状の横断面形状を有する流路部材を有する流体加熱器にも適用することができる。
また、ケース及び流路の構成も実施形態のような三重筒構造のものに限らず、適宜変更することができる。
(3)実施形態において、筒状ヒータ製造用治具は、例えば樹脂系材料を用いた立体造形法によって形成しているが、筒状ヒータ製造用治具の材質や製法はこれに限らず適宜変更することができる。
例えば、ゴム等の可撓性を有する材料からなる板材、チューブ材や、樹脂成型品、比較的軟質の金属材料などを、螺旋状の帯状等に形成したものを用いてもよい。
また、各実施形態では、円柱状の芯材に別体部品である筒状ヒータ製造用治具を取り付けているが、これに限らず、筒状ヒータ製造用治具は、突条部と芯材とを一体に形成した構成としてもよい。
(4)各実施形態において、筒状ヒータの第1コイル部、第2コイル部、及び、流体加熱器のケースを構成する各筒体は、中心軸Aを共有する同心の配置となっているが、本発明はこれに限らず、各部材の中心軸がオフセットしたり、微小な傾斜角を有して配置される構成としてもよい。
(5)実施形態において、筒状ヒータは一例としてシーズヒータであったが、本発明はこれに限らず、例えば筒状体からなる流路に、被加熱流体に対して高温のオイル、水等の液体や、気体を熱媒として通流させる発熱体を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 流体加熱器(実施形態) 1A 流体加熱器(比較例)
10 シーズヒータ 11 ループ部
12 コイル部 12a 第1コイル部
12b 第2コイル部 13 折返し部
14 ストレート部 15 導出部
16 コイル部(比較例)
100 ケース 110 第1筒
120 第2筒 121 端面
130 第3筒 140 入口側フランジ
150 出口側フランジ 160 入口パイプ
170 出口パイプ F 被加熱流体の流れ
200 シーズヒータ製造用治具 210 突条部
211 外周面 212 内周面
213 端面
300 芯材 S10 シース
S11 第1部 S12 第2部
A 中心軸 CA 流体接触面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータの製造方法であって、
軸状に形成された芯材の周囲に、前記芯材の外周面から突出するように螺旋状に巻き回された突条部を設け、
前記突条部は、前記芯材の中心軸を含む平面で切って見た断面が前記中心軸方向に隙間を有するよう配置され、
前記突条部の前記隙間に沿って前記発熱体の第1部を巻き回して第1コイル部を形成し
前記突条部の外周面に沿って前記発熱体の第2部を巻き回して前記第1コイル部よりも巻径が大きい第2コイル部を形成すること
を特徴とする筒状ヒータの製造方法。
【請求項2】
前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータであること
を特徴とする請求項に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項3】
前記発熱体の前記第1部と前記第2部とは、前記発熱体の中間部に形成された折返し部を介して連続するよう一体に形成されていること
を特徴とする請求項又は請求項に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項4】
前記第1コイル部及び前記第2コイル部を形成した後に、前記第1コイル部及び前記第2コイル部に対して前記突条部を前記芯材の中心軸回りに相対回転させることで、前記突条部を前記第1コイル部及び前記第2コイル部から取り外すこと
を特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項5】
前記突条部は、前記芯材の中心軸方向に沿って複数の層状造形物を積層する立体造形方法により形成されること
を特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項6】
前記突条部は、前記発熱体の材料よりも弾性率が小さい材料からなること
を特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の筒状ヒータの製造方法。
【請求項7】
筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータの製造に用いられる筒状ヒータ製造用治具であって、
軸状に形成された芯材の周囲に、前記芯材の外周面から突出するように螺旋状に巻き回されて配置される突条部を有し、
前記突条部は、前記芯材の中心軸を含む平面で切って見た断面が前記中心軸方向に隙間を有するよう配置されること
を特徴とする筒状ヒータ製造用治具。
【請求項8】
前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータであること
を特徴とする請求項に記載の筒状ヒータ製造用治具。
【請求項9】
前記突条部は、前記芯材の中心軸方向に沿って複数の層状造形物を積層する立体造形方法により形成されること
を特徴とする請求項又は請求項に記載の筒状ヒータ製造用治具。
【請求項10】
前記突条部は、前記発熱体の材料よりも弾性率が小さい材料からなること
を特徴とする請求項から請求項までのいずれか1項に記載の筒状ヒータ製造用治具。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、筒状ヒータの製造方法、及び、筒状ヒータ製造用治具に関するものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上述した特許文献1に記載されている技術においては、シーズヒータにおいて螺旋状にシースを巻き回したコイル部の巻き径が一様であることから、流路内にコイル部を配置した場合、シースの外周面において、流路の流れ方向に沿った表層部の一部しか被加熱流体の加熱に有効に寄与していない場合があった。
このため、筒状ヒータの外周面と被加熱流体との有効な接触面積を拡大して、被加熱流体の加熱効率を向上することが要望されている。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、被加熱流体の加熱効率を向上した筒状ヒータを容易に製造することが可能な筒状ヒータの製造方法及び筒状ヒータ製造用治具を提供することである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明の第の態様に係る筒状ヒータの製造方法は、筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータの製造方法であって、軸状に形成された芯材の周囲に、前記芯材の外周面から突出するように螺旋状に巻き回された突条部を設け、前記突条部は、前記芯材の中心軸を含む平面で切って見た断面が前記中心軸方向に隙間を有するよう配置され、前記突条部の前記隙間に沿って前記発熱体の第1部を巻き回して第1コイル部を形成し前記突条部の外周面に沿って前記発熱体の第2部を巻き回して前記第1コイル部よりも巻径が大きい第2コイル部を形成することを特徴とする。
これによれば、発熱体の第1部、第2部を、突条部の隙間及び突条部の突端面に沿ってそれぞれ巻き回すことにより、第1コイル部と第2コイル部とを正確な巻き径で容易に形成することができる。
また、突条部が各発熱体を巻き回すピッチ(中心軸方向のシース間隔)を案内するガイドとして機能することにより、ピッチ方向の形状精度も向上することができる。
第一の態様の発明により製造される筒状ヒータは、巻き径が異なる第1コイル部、第2コイル部が、いわゆる二重らせん状(二条巻き)に配置されることにより、被加熱流体を各コイル部の中心軸方向に流した場合に、被加熱流体が段違い状に配列された発熱体を避けるようジグザグ状に通過することになる。
これにより、被加熱流体が発熱体の外周面に沿って回り込む挙動が発生し、各発熱体に対してその周方向における広い範囲で接触することになる。このため、被加熱流体と発熱体との有効な接触面(流体接触面)の面積を拡大し、被加熱流体の加熱効率を向上することができる。
さらに、流路内において被加熱流体の流れに乱流を発生させることにより、発熱体から被加熱流体への熱伝達を促進し、さらに加熱効率を向上することができる。
の態様の発明において、前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータである構成とすることができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
の態様の発明において、前記発熱体の前記第1部と前記第2部とは、前記発熱体の中間部に形成された折返し部を介して連続するよう一体に形成されている構成とすることができる。
これによれば、部品点数や電気ヒータの場合には加熱用電力、流体を熱媒とした発熱体(熱交換器)の場合には熱媒等を供給する端子数を増加させることなく、簡単な構成とすることができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
の態様の発明において、前記第1コイル部及び前記第2コイル部を形成した後に、前記第1コイル部及び前記第2コイル部に対して前記突条部を前記芯材の中心軸回りに相対回転させることで、前記突条部を前記第1コイル部及び前記第2コイル部から取り外す構成とすることができる。
これによれば、第1コイル部、第2コイル部の形成後に、突条部を相対回転させることにより、突条部を容易に取り外すことができる。
特に、取外し時に突条部が損傷を受けにくく、筒状ヒータ製造用治具の再利用を図ることができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
の態様の発明において、前記突条部は、前記芯材の中心軸方向に沿って複数の層状造形物を積層する立体造形方法により形成される構成とすることができる。
これによれば、層状造形物が積層された界面を跨ぐよう、発熱体が「たが」状に巻き回されることにより、立体造形方法により突条部を形成する場合に、界面に過度の内部力が作用することを防止し、突条部の破損を防止することができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
の態様の発明において、前記突条部は、前記発熱体の材料よりも弾性率が小さい材料からなる構成とすることができる。
これによれば、第1コイル部、第2コイル部の形成後に、突条部を弾性変形させて容易に取り外すことができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
上述した課題を解決するため、本発明の第の態様に係る筒状ヒータ製造用治具は、筒状の外形を有する発熱体を備える筒状ヒータの製造に用いられる筒状ヒータ製造用治具であって、軸状に形成された芯材の周囲に、前記芯材の外周面から突出するように螺旋状に巻き回されて配置される突条部を有し、前記突条部は、前記芯材の中心軸を含む平面で切って見た断面が前記中心軸方向に隙間を有するよう配置されることを特徴とする。
の態様の発明において、前記筒状ヒータは、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容したシーズヒータである構成とすることができる。
の態様の発明において、前記突条部は、前記芯材の中心軸方向に沿って複数の層状造形物を積層する立体造形方法により形成される構成とすることができる。
の態様の発明において、前記突条部は、前記発熱体の材料よりも弾性率が小さい材料からなる構成とすることができる。
これらの各発明においても、上述した第の態様の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、被加熱流体の加熱効率を向上した筒状ヒータを容易に製造することが可能な筒状ヒータの製造方法及び筒状ヒータ製造用治具を提供することができる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
図1】本発明を適用した筒状ヒータの製造方法の実施形態により製造された筒状ヒータ(シーズヒータ)を有する流体加熱器の断面図である。
図2】実施形態のシーズヒータの製造に用いるシーズヒータ製造用治具を示す図で ある。
図3図2のシーズヒータ製造用治具を芯材に取り付けた状態を示す図である。
図4図2のシーズヒータ製造用治具及び芯材に巻き回される前のシースの状態を 示す図である。
図5図3の芯材及びシーズヒータ製造用治具にシースを巻き回した状態を示す図 である。
図6】本発明の比較例である流体加熱器の断面図である。
図7】比較例の流体加熱器におけるシーズヒータのコイル部周辺の被加熱流体の流 れを模式的に示す図である。
図8】実施形態の流体加熱器におけるシーズヒータのコイル部周辺の被加熱流体の 流れを模式的に示す図である。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
<実施形態>
以下、本発明を適用した筒状ヒータの製造方法、筒状ヒータ製造用治具の実施形態について説明する。
実施形態の筒状ヒータは、例えば、各種気体や蒸気、液体、気液混合流体などの各種被加熱流体を加熱する流体加熱器の熱源として利用されるシーズヒータである。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図1は、実施形態の筒状ヒータの製造方法により製造された筒状ヒータ(シーズヒータ)を有する流体加熱器の断面図であって、ケース100の第1筒110等の中心軸Aを含む平面で切って見た状態を示す図である。
流体加熱器1は、シーズヒータ10、ケース100等を有して構成されている。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
以下、上述した実施形態の筒状ヒータの製造方法により製造された筒状ヒータを有する流体加熱器の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
図6は、比較例の流体加熱器の断面図である。
比較例において、上述した実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
比較例の流体加熱器1は、実施形態のコイル部12に代えて、単一の巻き径を有するコイル部16を設けたものである。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)筒状ヒータの製造方法、筒状ヒータ製造用治具、及び、これらを用いて製造される筒状ヒータ、流体加熱器の具体的構成は、上述した各実施形態に限定されることなく、適宜変更することが可能である。
例えば、各部材の構造、形状、材質、製法、数量、配置等は、各実施形態の構成から適宜変更することが可能である。
(2)上述した流体加熱器において、第1筒、第2筒、第3筒の横断面形状は例えば円形(真円)であったが、本発明により製造された筒状ヒータはこれに限らず、例えば楕円形、矩形、その他の形状の横断面形状を有する流路部材を有する流体加熱器にも適用することができる。
また、ケース及び流路の構成も実施形態のような三重筒構造のものに限らず、適宜変更することができる。
(3)実施形態において、筒状ヒータ製造用治具は、例えば樹脂系材料を用いた立体造形法によって形成しているが、筒状ヒータ製造用治具の材質や製法はこれに限らず適宜変更することができる。
例えば、ゴム等の可撓性を有する材料からなる板材、チューブ材や、樹脂成型品、比較的軟質の金属材料などを、螺旋状の帯状等に形成したものを用いてもよい。
また、各実施形態では、円柱状の芯材に別体部品である筒状ヒータ製造用治具を取り付けているが、これに限らず、筒状ヒータ製造用治具は、突条部と芯材とを一体に形成した構成としてもよい。
(4)実施形態において、筒状ヒータの第1コイル部、第2コイル部、及び、流体加熱器のケースを構成する各筒体は、中心軸Aを共有する同心の配置となっているが、本発明はこれに限らず、各部材の中心軸がオフセットしたり、微小な傾斜角を有して配置される構成としてもよい。
(5)実施形態において、筒状ヒータは一例としてシーズヒータであったが、本発明はこれに限らず、例えば筒状体からなる流路に、被加熱流体に対して高温のオイル、水等の液体や、気体を熱媒として通流させる発熱体を有するものであってもよい。