(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059287
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】流体加熱器
(51)【国際特許分類】
F24H 1/10 20220101AFI20230420BHJP
H05B 3/40 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
F24H1/10 D
H05B3/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169194
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】594073129
【氏名又は名称】新熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】初見 凌
(72)【発明者】
【氏名】安齋 諭
【テーマコード(参考)】
3K092
3L034
【Fターム(参考)】
3K092PP11
3K092QA02
3K092QB27
3K092QB44
3K092RA01
3L034BA13
3L034BA14
3L034BA17
3L034BB02
(57)【要約】
【課題】出口パイプからケースへの伝熱量を抑制した流体加熱器を提供する。
【解決手段】被加熱流体が通流される流路が設けられたケース100と、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容して構成され、流路の内部に配置されるシーズヒータ10と、シーズヒータにより加熱された被加熱流体がケースから流出する出口パイプ170とを備える流体加熱器1を、出口パイプの周囲においてケースの表面部を前記ケースの内部側へ凹ませた凹部が設けられ、凹部の内面と出口パイプの外面とが空間部Sを隔てて対向して配置される構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱流体が通流される流路が設けられたケースと、
筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容して構成され、前記流路の内部に配置されるシーズヒータと、
前記シーズヒータにより加熱された被加熱流体が前記ケースから流出する出口パイプと
を備える流体加熱器であって、
前記出口パイプの周囲において前記ケースの表面部を前記ケースの内部側へ凹ませた凹部が設けられ、
前記凹部の内面と前記出口パイプの外面とが間隔を隔てて対向して配置されること
を特徴とする流体加熱器。
【請求項2】
前記凹部を構成する壁面部において前記出口パイプと対向する面と反対側の面には、前記出口パイプ内を通流する被加熱流体よりも低温の被加熱流体が接すること
を特徴とする請求項1に記載の流体加熱器。
【請求項3】
前記出口パイプは、前記ケースの一方の端面から突き出して設けられ、
前記凹部は、前記端面に設けられた開口の内周縁部から前記ケースの内部側へ延在するとともに、内径側に前記出口パイプの一部が挿入される出口パイプ収容筒を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体加熱器。
【請求項4】
前記ケースは、第1筒と、前記第1筒の一方の端部に設けられた前記端面と、前記第1筒の内側に挿入される第2筒と、前記第2筒の内側に挿入される第3筒とを有し、
前記流路は、前記被加熱流体が、前記第1筒の内面と前記第2筒の外面との間、前記第2筒の内面と前記第3筒の外面との間、前記第3筒の内部を順次進行方向を反転して通過するよう構成され、
前記出口パイプは前記第3筒の内部と連通し、
前記出口パイプ収容筒の突端部は前記第3筒の端部と接続され、
前記出口パイプ収容筒の内径側に設けられ前記出口パイプを保持する保持部材を備えること
を特徴とする請求項3に記載の流体加熱器。
【請求項5】
前記シーズヒータの少なくとも一部は、前記第2筒の内面と前記第3筒の外面との間でらせん状に巻き回され、
前記出口パイプ収容筒の外面は、前記流路において被加熱流体が前記第1筒の内面と前記第2筒の外面との間から流出して前記第2筒の内面と前記第3筒の外面との間へ流入するよう反転する領域と接すること
を特徴とする請求項4に記載の流体加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱流体が通流される流路の内部にシーズヒータを設けた流体加熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シーズヒータは、筒状部材であるシースの内部に発熱線を収容するとともに、マグネシア等の絶縁体粉末を充填して構成された抵抗加熱電気ヒータである。
シーズヒータは、電気的絶縁性に優れており被加熱流体を安全に加熱することが可能であり、また、材質を適切に選択することにより、高温での使用も可能である。
また、シースを曲げ加工することにより、発熱部を設置スペースに応じた任意の形状に形成することが可能である。
【0003】
シーズヒータにより被加熱流体を加熱する流体加熱器に関する従来技術として、例えば特許文献1には、被加熱流体が通流される筒状体の内部に、らせん状に巻き回したシーズヒータを収容した気体加熱器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載されている技術においては、加熱済みの流体が通流する出口パイプが、ケース端面のフランジに直接溶接されていることから、出口パイプからフランジへの伝熱量が大きい。
このため、ケースの表面が高温となり、他部品への熱影響などに配慮が必要であった。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、出口パイプからケースへの伝熱量を抑制した流体加熱器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る流体加熱器は、被加熱流体が通流される流路が設けられたケースと、筒状をなすシースの内部に発熱線及び絶縁体粉末を収容して構成され、前記流路の内部に配置されるシーズヒータと、前記シーズヒータにより加熱された被加熱流体が前記ケースから流出する出口パイプとを備える流体加熱器であって、前記出口パイプの周囲において前記ケースの表面部を前記ケースの内部側へ凹ませた凹部が設けられ、前記凹部の内面と前記出口パイプの外面とが間隔を隔てて対向して配置されることを特徴とする。
これによれば、ケースの表面を凹ませた凹部の内面と、出口パイプの外面との間隔(空間部)が、出口パイプからケースの表面への熱伝導を阻害する断熱効果を発揮することにより、出口パイプからケースへの伝熱量を抑制することができる。
これにより、ケースの表面の温度を抑制して他部品への熱影響を抑制するとともに、作業者が誤って運転中や運転直後のケースに触った場合の安全性を高めることができる。
さらに、外部へ放熱される熱量を抑制することで、加熱効率の改善を図ることができる。
【0007】
本発明において、前記凹部を構成する壁面部において前記出口パイプと対向する面と反対側の面には、前記出口パイプ内を通流する被加熱流体よりも低温の被加熱流体が接する構成とすることができる。
これによれば、出口パイプからケースの表面への熱伝導の経路となる箇所を冷却することにより、上述した効果を促進することができる。
【0008】
本発明において、前記出口パイプは、前記ケースの一方の端面から突き出して設けられ、前記凹部は、前記端面に設けられた開口の内周縁部から前記ケースの内部側へ延在するとともに、内径側に前記出口パイプの一部が挿入される出口パイプ収容筒を有する構成とすることができる。
これによれば、比較的製造が容易な円筒状などの部材を利用して、上述した構造を容易に実現することができる。
また、出口パイプ収容筒の長さや径を適宜チューニングすることにより、所望の断熱効果を適切に得ることができる。
【0009】
本発明において、前記ケースは、第1筒と、前記第1筒の一方の端部に設けられた前記端面と、前記第1筒の内側に挿入される第2筒と、前記第2筒の内側に挿入される第3筒とを有し、前記流路は、前記被加熱流体が、前記第1筒の内面と前記第2筒の外面との間、前記第2筒の内面と前記第3筒の外面との間、前記第3筒の内部を順次進行方向を反転して通過するよう構成され、前記出口パイプは前記第3筒の内部と連通し、前記出口パイプ収容筒の突端部は前記第3筒の端部と接続され、前記出口パイプ収容筒の内径側に設けられ前記出口パイプを保持する保持部材を備える構成とすることができる。
これによれば、出口パイプ付近の高温の被加熱流体に対して低温の被加熱流体が第1筒の内面に沿って流れることにより、ケースの外表面をなす第1筒の外面の温度向上を抑制することができる。
また、出口パイプ収容筒の端部が第3筒と接続されるとともに、この端部に出口パイプを保持する保持部材を有することにより、出口パイプの支持剛性、支持強度を確保することができる。
【0010】
本発明において、前記シーズヒータの少なくとも一部は、前記第2筒の内面と前記第3筒の外面との間でらせん状に巻き回され、前記出口パイプ収容筒の外面は、前記流路において被加熱流体が前記第1筒の内面と前記第2筒の外面との間から流出して前記第2筒の内面と前記第3筒の外面との間へ流入するよう反転する領域と接する構成とすることができる。
これによれば、シーズヒータによって熱せられる第3筒から出口パイプ側のケースの表面部への伝熱経路をシーズヒータにより熱せられる前の被加熱流体によって冷却し、ケース表面の昇温抑制効果を促進することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、出口パイプからケースへの伝熱量を抑制した流体加熱器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を適用した流体加熱器の実施形態の断面図である。
【
図4】実施形態の流体加熱器における被加熱流体の流れを示す図である。
【
図5】本発明の比較例である流体加熱器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した流体加熱器の実施形態について説明する。
実施形態の流体加熱器は、例えば、各種気体や蒸気、液体、気液混合流体などの各種被加熱流体を、流路中に設置されたシーズヒータを用いて加熱するものである。
【0014】
図1は、実施形態の流体加熱器の断面図であって、ケース100の第1筒110等の中心軸を含む平面で切って見た状態を示す図である。
図2は、
図1のII-II部矢視図である。
流体加熱器1は、シーズヒータ10、ケース100等を有して構成されている。
【0015】
シーズヒータ10は、例えばステンレス系合金等の金属製の円筒状の部材であるシースの内径側に、その長手方向に沿って、例えばニクロム系の金属からなる発熱線を配置するとともに、シースの内部に例えばマグネシア等の絶縁体粉末を封入して構成されている。
シーズヒータ10は、ループ部11、コイル部12、折返し部13、ストレート部14、導出部15等を有する。
【0016】
シーズヒータ10は、例えば、1本のシースを有するシーズヒータを、曲げ加工して一体に構成されている。
ループ部11は、シーズヒータ10の長手方向における中間部において、例えば軸状部材などにシースを巻きつけて曲げ加工された円弧状の部分である。
ループ部11は、コイル部12を曲げ(巻き回し)加工する際に、一方の端部を係止し、仮固定するために用いられる。
【0017】
コイル部12は、ループ部11の円弧形状の両端部から延在する2本のシースを、例えば円筒状の治具に二重らせん状に巻き回した部分である。
折返し部13は、コイル部12のループ部11側とは反対側の端部に設けられ、シースがコイル部12の巻径外径側を通ってループ部11側へ戻るよう折り返す曲線部である。
ストレート部14は、折返し部13のコイル部12側とは反対側の端部から延在し、コイル部12の巻き軸方向と平行に延在する直線状の部分である。
導出部15は、ストレート部14の折返し部13側とは反対側の端部に設けられ、ケース100の外部へ突出する部分である。
導出部15の突端部には、シーズヒータ10の加熱用電源と接続される端子部が設けられている。
【0018】
ケース100は、第1筒110、第2筒120、第3筒130、入口側フランジ140、出口側フランジ150、入口パイプ160、出口パイプ170、出口パイプ収容筒180、ブロック190等を有して構成されている。
なお、ケース100の各構成部材は、特記ない限り、例えばステンレス系合金などの耐熱性を有する金属材料によって構成され、各部品の接合は溶接によってなされている。
【0019】
第1筒110は、ケース100の外表面部を構成する円筒状の部材である。
第2筒120は、第1筒110の内径側に、第1筒110と同心に配置される円筒状の部材である。
第2筒120の両端部は、中心軸方向における位置が、第1筒110の両端部に対してケース100の内側となるように配置されている。
第1筒110の内周面と第2筒120の外周面とは、各筒の径方向に間隔を隔てて対向して配置されている。
第1筒110の内周面と第2筒120の外周面との間は、被加熱流体が通流される流路の一部を構成する。
第2筒120の入口パイプ160側(
図1における左側)の端部は、端面121によって閉塞されている。
端面121は、第2筒120の中心軸と直交する平面に沿った円盤状の部材である。
【0020】
第3筒130は、第2筒120の内径側に、第1筒110及び第2筒120と同心に配置される円筒状の部材である。
第3筒130の入口パイプ160側の端部は、第2筒120の端面121と間隔を隔てて対向して配置されている。
第3筒130の出口パイプ170側の端部は、出口側フランジ150と間隔を隔てて対向して配置されている。
第2筒120の内周面と第3筒130の外周面とは、各筒の径方向に間隔を隔てて対向して配置されている。
第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間、及び、第3筒130の内径側は、被加熱流体が通流される流路の一部を構成する。
第3筒130の出口パイプ170側の端部近傍の領域においては、出口パイプ収容筒180、ブロック190が内径側に挿入される。
【0021】
シーズヒータ10のコイル部12は、第3筒130の外周面に沿って巻き回されるよう配置されている。
コイル部12は、第2筒120の内周面と、第2筒120、第3筒130の径方向に間隔を隔てて配置されている。
また、シーズヒータ10のストレート部14は、第2筒120の外周面と第1筒110の内周面との間に配置されている。
【0022】
入口側フランジ140は、第1筒110の入口パイプ160側の端部開口を塞ぐように設けられた端面である。
入口側フランジ140は、第1筒110の中心軸と直交する平面に沿った円盤状の部材である。
入口側フランジ140の中央部には、入口パイプ160が接続される開口が設けられている。
【0023】
出口側フランジ150は、第1筒110の出口パイプ170側の端部開口を塞ぐように設けられた端面である。
出口側フランジ150は、第1筒110の中心軸と直交する平面に沿った円盤状の部材である。
出口側フランジ150の中央部には、出口パイプ収容筒180が接続される開口が設けられている。
【0024】
入口パイプ160は、流体加熱器1に被加熱流体が導入される管路である。
入口パイプ160は、第1筒110の中心軸と同心の円筒状の部材である。
入口パイプ160は、入口側フランジ140から、ケース100の外部側へ突出している。
入口パイプ160の入口側フランジ140側の端部は、入口側フランジ140に設けられた開口に接続されている。
入口パイプ160は、第1筒110の内径側と連通可能とされ、被加熱流体を第1筒110の内部に導入する機能を有する。
【0025】
出口パイプ170は、流体加熱器1から加熱後の被加熱流体が流出する管路である。
出口パイプ170は、第1筒110の中心軸と同心の円筒状の部材である。
出口パイプ170は、出口側フランジ150から、ケース100の外部側へ突出している。
出口パイプ170は、ブロック190及び出口パイプ収容筒180を介して第3筒130と接続され、第3筒130の内部を通流する被加熱流体が導入されるよう構成されている。
【0026】
出口パイプ収容管180は、出口パイプ170における出口側フランジ150よりも入口側フランジ140側の領域を、内径側に収容する筒状体である。
出口パイプ収容筒180は、第3筒130の中心軸と同心の円筒状の部材である。
出口パイプ収容筒180の入口パイプ160側の端部は、第3筒130の内径側に挿入され、第3筒130の内周面と全周にわたって接合されている。
出口パイプ収容筒180の他端部は、出口側フランジ150の中央部に設けられた開口に接続されている。
出口パイプ収容筒180の内周面は、出口パイプ170の外周面と、各部材の径方向に間隔(空間部S)を隔てて対向して配置されている。
【0027】
ブロック190は、出口パイプ収容筒180の入口側フランジ140側の端部に設けられる円環状の部材である。
ブロック190は、出口パイプ170を保持する保持部材として機能する。
ブロック190は、第3筒130、出口パイプ170等と同心に配置されている。
ブロック190の外周面は、出口パイプ収容筒180の内周面に接合されている。
ブロック190の外周面部における入口パイプ160側の端部には、外径側につば状に張り出した段部191が設けられている。
出口パイプ収容筒180の端部は、段部191に突き当てられた状態で位置決めされ、溶接等により固定される。
【0028】
ブロック190の中央部には、出口パイプ170の入口側フランジ140側の端部が挿入される開口が設けられている。
出口パイプ170の入口パイプ160側の端部は、ブロック190の開口の内周縁部と、全周にわたって接合されている。
ブロック190は、出口パイプ170を、片持ち梁状に支持する機能を有する。
ブロック190は、このような剛性、強度を確保するため、例えば旋盤等による機械加工によって母材から削り出したいわゆる挽き物として構成することができる。
【0029】
上述した構成により、出口パイプ170の外周面と、出口パイプ収容筒180の内周面との間には、ケース100の外表面の一部である出口側フランジ150に対して、ケース100の内部側へ凹ませた凹部である空間部Sが形成される。
空間部Sは、
図2に示すように、出口パイプ170の周囲に、出口パイプ170の全周にわたって環状に設けられる。
【0030】
図4は、実施形態の流体加熱器における被加熱流体の流れ(流路構成)を示す図である。
図4において、被加熱流体の流路に沿った流れFを、破線矢印によって示す。
先ず、被加熱流体は、入口パイプ160から入口側フランジ140の開口を介して第1筒110の内径側に導入される。
その後、被加熱流体は、第2筒120の端面121に沿って第1筒110の外径側に進行し、第1筒110の内周面と第2筒120の外周面との間を通って出口側フランジ150側へ進行する。
【0031】
第1筒110の内周面と第2筒120の外周面との間において、被加熱流体は、第2筒120の外周面からの伝熱等により加熱されるが、その下流側に対して、比較的低温の状態となっている。
被加熱流体は、出口側フランジ150近傍において進行方向を反転させ、第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間に流入する。
このとき、被加熱流体の一部は、出口パイプ収容筒180の外周面に接して流れ、出口パイプ収容筒180を冷却する。
【0032】
第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間に入った被加熱流体は、入口側フランジ140側へ通流しつつ、シーズヒータ10のコイル部12と接触し、さらに加熱される。
その後、被加熱流体は、第2筒120の端面121近傍において進行方向を再度反転させ、第3筒130の内径側に流入する。
被加熱流体は、第3筒130の内部を通過して出口パイプ170に流入するが、このとき被加熱流体は、第3筒130の内周面を介し、シーズヒータ10のコイル部12によってさらに加熱され、昇温する。
【0033】
以下、上述した実施形態の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
図5は、比較例の流体加熱器の断面図である。
比較例において、上述した実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
比較例の流体加熱器1Aは、実施形態の出口パイプ収容筒180、ブロック190を排するとともに、第3筒130の出口側フランジ150側の端部が、出口側フランジ150に直接突き当てられた状態で接合されている。
また、出口パイプ170は、出口側フランジ150の中央部に設けられた開口に直接接合されている。
【0034】
比較例の構成においては、例えば400℃以上の高温に加熱された被加熱流体が通流する出口パイプ170から、出口側フランジ150が熱伝導によって加熱され、さらに出口側フランジ150を介した熱伝導によって、第1筒110も加熱される。
例えば、シーズヒータ10の出力が2700W、被加熱流体である空気の流量が300L/min、出口空気温度430℃で定常運転した場合に、第1筒110の出口側端部近傍の外周面温度が154℃まで昇温した。
これに対し、実施形態の流体加熱器1において、同様の条件で運転した場合、第1筒110の出口側端部近傍の外周面温度は73℃であり、比較例に対して約80℃低下させることができた。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ケース100の表面を凹ませて設けられた出口パイプ収容筒180の内周面と、出口パイプ170の外周面との間隔(空間部S)が、出口パイプ170からケース100の出口側フランジ150への直接的な熱伝導を阻害する断熱効果を発揮することにより、出口パイプ170からケース100の出口パイプ170以外の部材、特に出口側フランジ150、第1筒110への伝熱量を抑制することができる。
これにより、ケース100の表面の温度を抑制して他部品への熱影響を抑制するとともに、作業者が誤って運転中や運転直後のケース100に触った場合の安全性を高めることができる。
さらに、ケース100の表面から外部へ放熱される熱量を抑制することで、加熱エネルギの損失を低減し、加熱効率の改善を図ることができる。
(2)出口パイプ収容筒180の外周面に、出口パイプ170内よりも低温の被加熱流体が接することにより、出口パイプ170からケース100の出口側フランジ150への熱伝導の経路となる箇所を冷却し、上述した効果を促進することができる。
(3)出口パイプ170は、ケース100の出口側フランジ150から突き出して設けられ、出口側フランジ150に設けられた開口の内周縁部からケース100の内部側へ延在するとともに、内径側に出口パイプ170の一部が挿入される出口パイプ収容筒180を有することにより、比較的製造が容易な円パイプなどの部材を利用して、上述した構造を容易に実現することができる。
また、出口パイプ収容筒180の長さや径を適宜チューニングすることにより、所望の断熱効果を適切に得ることができる。
(4)ケース100は、第1筒110と、第1筒110の端部に設けられた出口側フランジ150と、第1筒110の内側に挿入される第2筒130と、第2筒120の内側に挿入される第3筒130とを有し、流路は、被加熱流体が第1筒110の内周面と第2筒120の外周面との間、第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間、第3筒130の内部を順次進行方向を反転して通過するよう構成され、出口パイプ170は第3筒130の内部と連通し、出口パイプ収容筒180の突端部は第3筒130の端部と接続され、出口パイプ収容筒180の内径側に設けられ出口パイプ170を保持するブロック190を備える構成とすることにより、出口パイプ170付近の高温の被加熱流体に対して低温の被加熱流体が第1筒110の内面に沿って流れることで、ケース100の外表面をなす第1筒110の外周面の温度向上を抑制することができる。
また、出口パイプ収容筒180の端部が第3筒130と接続されるとともに、この端部に出口パイプ170を保持するブロック190を有することにより、出口パイプ170の支持剛性、支持強度を確保することができる。
(5)シーズヒータ10において主な発熱部であるコイル部12は、第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間でらせん状に巻き回され、出口パイプ収容筒180の外周面は、被加熱流体が第1筒110の内周面と第2筒120の外周面との間から流出して、第2筒120の内周面と第3筒130の外周面との間へ流入するよう反転する領域と接する構成とすることにより、コイル部12によって熱せられる第3筒130から出口パイプ側フランジ150への伝熱経路をコイル部12により熱せられる前の被加熱流体によって冷却し、ケース100表面の昇温抑制効果を促進することができる。
【0036】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)流体加熱器及びその製造方法の具体的構成は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜変更することが可能である。
例えば、各部材の構造、形状、材質、製法、数量、配置等は、各実施形態の構成から適宜変更することが可能である。
(2)実施形態において、第1筒、第2筒、第3筒の横断面形状は例えば円形(真円)であったが、本発明はこれに限らず、例えば楕円形、矩形、その他の形状の横断面形状を有する流路部材を有する流体加熱器にも適用することができる。
また、ケース及び流路の構成も実施形態のような三重筒構造のものに限らず、適宜変更することができる。
また、流路部材の内部でシーズヒータを湾曲又は屈曲させる形状も、実施形態のようならせん状には特に限定されず、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 流体加熱器(実施形態) 1A 流体加熱器(比較例)
10 シーズヒータ 11 ループ部
12 コイル部 13 折返し部
14 ストレート部 15 導出部
100 ケース 110 第1筒
120 第2筒 121 端面
130 第3筒 140 入口側フランジ
150 出口側フランジ 160 入口パイプ
170 出口パイプ 180 出口パイプ収容筒
190 ブロック 191 段部
F 被加熱流体の流れ S 空間部