(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059306
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】クロスフロー湿式分級装置及びそれを用いた湿式分級方法
(51)【国際特許分類】
B03B 5/00 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
B03B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169221
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】柴川 友佑
【テーマコード(参考)】
4D071
【Fターム(参考)】
4D071AA02
4D071AA05
4D071AB02
4D071AB32
4D071AB45
4D071AB62
(57)【要約】
【課題】ケーシングに内設した一対のフィルターに超音波の腹を照射しながら各フィルター間の原液供給室に流入する原液を分級するクロスフロー湿式分級装置及び湿式分級方法を提供する。
【解決手段】
ケーシング14内を第1分級液室15Aと第2分級液室15Bと原液供給室16とに区画する一対のフィルター5A、5Bと、フィルター5A、5B間に形成される原液供給室16に連通する原液供給管4及び原液排出管6と、分級液室15A、15Bそれぞれに連通する分級液排出管7と、を備えるクロスフロー湿式分級装置において、一方の分級液室15側から他方の分級液室15側に超音波を照射する超音波振動子12と、他方の分級液室15で反射した超音波で生じた定常波24の複数の腹25のいずれかの位置に所定の間隔をあけて配設された第1フィルター5A及び第2フィルター5Bと、を備えることで、フィルターの閉塞を防ぎ、効率よく分級処理できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(14)内を第1分級液室(15A)と第2分級液室(15B)と原液供給室(16)とに区画する一対のフィルター(5A、5B)と、フィルター(5A、5B)間に形成される原液供給室(16)に連通する原液供給管(4)及び原液排出管(6)と、分級液室(15A、15B)それぞれに連通する分級液排出管(7)と、を備えるクロスフロー湿式分級装置において、
一方の分級液室(15)側から他方の分級液室(15)側に超音波を照射する超音波振動子(12)と、
他方の分級液室(15)で反射した超音波で生じた定常波(24)の複数の腹(25)のいずれかの位置に所定の間隔をあけて配設された第1フィルター(5A)及び第2フィルター(5B)と、を備える
ことを特徴とするクロスフロー湿式分級装置。
【請求項2】
前記他方の分級液室(15)に反射部材(18)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のクロスフロー湿式分級装置。
【請求項3】
前記分級液室(15A、15B)それぞれに連通する洗浄液供給管(8)を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクロスフロー湿式分級装置。
【請求項4】
ケーシング(14)内を一対のフィルター(5A、5B)で第1分級液室(15A)と第2分級液室(15B)と原液供給室(16)とに区画し、フィルター(5A、5B)間に形成される原液供給室(16)に原液を供給するクロスフロー湿式分級方法において、
一方の分級液室(15)側から他方の分級液室(15)側に超音波を照射するとともに、他方の分級液室(15)で反射した超音波で生じた定常波(24)の腹(25)でフィルター(5A、5B)をそれぞれ振動させつつ分級を行う
ことを特徴とするクロスフロー湿式分級方法。
【請求項5】
前記一対のフィルター(5A、5B)のうち、
一方のフィルター(5)が閉塞した場合、前記一対のフィルター(5A、5B)に超音波を照射しつつ、一方のフィルター(5)で区画された分級液室(15)に洗浄液を供給し、洗浄を行うとともに、他方のフィルター(5)で分級を継続し、
他方のフィルター(5)が閉塞した場合、前記一対のフィルター(5A、5B)に超音波を照射しつつ、他方のフィルター(5)で区画された分級液室(15)に洗浄液を供給し、洗浄を行うとともに、一方のフィルター(5)で分級を継続する
ことを特徴とする請求項4に記載のクロスフロー湿式分級方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて被処理液の分級を行う湿式分級装置に関し、特に、湿式分級装置内に設けた一対のフィルターに超音波を照射し、各フィルターを振動させながら分級を行うクロスフロー湿式分級装置及びそれを用いた湿式分級方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる径の粒子を含有した被処理液をフィルターにて分級し、同一粒径ごとに分粒する湿式分級装置が知られている。特許文献1に開示しているように、対向配置された一対のフィルター表面に対しスラリーを平行に循環させながら分級するクロスフロー式の湿式分級装置も知られている。
【0003】
また、特許文献2には、洗浄槽内に固定された洗浄容器内に洗浄液と共に格納したフィルターを超音波にて洗浄する技術が開示されている。洗浄槽内部の壁面(第1の壁面)に形成する振動子より照射した超音波が対向する第2の壁面で反射して定常波を生じさせることが記されている。洗浄対象のフィルターを定常波の腹の位置に配置することも記載されている。このように、洗浄槽内に定常波を生成し、生成した定常波の腹の位置にフィルターを設けて洗浄を行う技術は公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02-117039号公報
【特許文献2】特開2021-074668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の湿式分級装置は、被処理液を槽内のフィルター表面に対し垂直方向に透過させる全量式であり、フィルター表面より被処理液が連続的に透過することでフィルターの目より大きい粒子が堆積し早期に目詰まりが生じていた。目詰まりにより抵抗が増加するため、被処理液の透過効率が低下し、処理量が減少していた。目詰まりを解消するために、フィルター裏面より洗浄液を供給して洗浄を行っていたが、フィルターに堆積した固形物を除去することは困難であり、洗浄水量の増加や洗浄時間の長期化といった問題があった。
【0006】
特許文献1の湿式分級装置は、分級対象のスラリーを装置内に対向配置したフィルター表面に対し平行に透過させるクロスフロー式であり、フィルター表面を透過するスラリーの流速の力により表面に付着した粒子が常に洗浄されるため、フィルターの分級性能を維持できる。このように、フィルターの表面を常時洗浄可能なクロスフロー式では、従来の全量式よりも目詰まりを遅らせることはできるが、時間経過とともに粒子が堆積するため、フィルターの洗浄が必要であった。フィルターを洗浄する際には、複数のフィルターを洗浄しなければならず、装置の複雑化や洗浄水量の増加といった課題を有していた。また、処理方法がバッチ式であったため、フィルター洗浄時には分級を停止させる必要があり、連続的に処理することができなかった。
【0007】
フィルターの洗浄に関し、特許文献2には、フィルターを洗浄槽内の超音波の定常波の腹に設けて洗浄を行う技術が開示されている。しかし、フィルターを洗浄するためには、その都度、洗浄容器内にフィルター及び洗浄液を格納して洗浄槽に配置する必要があった。そのうえ、洗浄後の洗浄容器内の洗浄液がサンプルとなるため、洗浄後に洗浄槽から洗浄容器を取り外して容器内の洗浄液を回収する必要があり、洗浄作業に手間を要していた。
【0008】
本発明は、クロスフロー湿式分級装置において、超音波の反射により複数生成される定常波の腹の位置に一対のフィルターをそれぞれ配置し、各フィルターに振動を与えながら分級を行うことで、フィルターの目詰まりを防止し分級を継続できるクロスフロー湿式分級装置及びそれを用いた湿式分級方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ケーシング内を第1分級液室と第2分級液室と原液供給室とに区画する一対のフィルターと、フィルター間に形成される原液供給室に連通する原液供給管及び原液排出管と、分級液室それぞれに連通する分級液排出管と、を備えるクロスフロー湿式分級装置において、一方の分級液室側から他方の分級液室側に超音波を照射する超音波振動子と、他方の分級液室で反射した超音波で生じた定常波の複数の腹のいずれかの位置に所定の間隔をあけて配設された第1フィルター及び第2フィルターと、を備えることで、各フィルター間に形成される原液供給室に流入する原液のうち、フィルターを透過できない大径粒子が各フィルターの振動を受けて剥離し、連続的に流入する原液によって下流へ押し流されるため、フィルターが閉塞しない。
【0010】
前記他方の分級液室に反射部材を備えることで、一方の分級液室側より照射された超音波を反射部材の反射面にて効率よく反射させることができるため、ケーシング内に定常波を生じさせることが可能となる。
【0011】
前記分級液室それぞれに連通する洗浄液供給管を備えることで、各分級液室を区画する各フィルターが閉塞した場合であっても各分級液室に向かって洗浄液を供給し、フィルターの閉塞を解消できる。
【0012】
ケーシング内を一対のフィルターで第1分級液室と第2分級液室と原液供給室とに区画し、フィルター間に形成される原液供給室に原液を供給するクロスフロー湿式分級方法において、一方の分級液室側から他方の分級液室側に超音波を照射するとともに、他方の分級液室で反射した超音波で生じた定常波の腹でフィルターをそれぞれ振動させつつ分級を行うことで、各フィルターに強い振動を生じさせることが可能となり、フィルターの閉塞を防止できる。
【0013】
前記一対のフィルターのうち、一方のフィルターが閉塞した場合、前記一対のフィルターに超音波をそれぞれ照射しつつ、一方のフィルターで区画された分級液室に洗浄液を供給し、洗浄を行うとともに、他方のフィルターで分級を継続し、他方のフィルターが閉塞した場合、前記一対のフィルターに超音波をそれぞれ照射しつつ、他方のフィルターで区画された分級液室に洗浄液を供給し、洗浄を行うとともに、一方のフィルターで分級を継続することで、洗浄工程を行う際に、分級工程を停止させる必要がなくなり、分級の連続処理が可能となるため、短時間で効率よく分級を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るクロスフロー湿式分級装置及びそれを用いた湿式分級方法は、定常波の複数の腹の位置に一対のフィルターをそれぞれ配置することで、1つの超音波振動子で複数のフィルターに強い振動を生じさせることができる。また、超音波でフィルターを透過できない大径粒子の堆積によるフィルターの目詰まりを防止でき、目詰まりの頻度が減少する。これに伴い、洗浄頻度が低下するため、洗浄水使用量の減少及び洗浄水供給ポンプの稼働時間の減少につながり、ランニングコストが削減できる。一方のフィルターが目詰まりした場合であっても、目詰まりした少なくとも一方のフィルターのみ洗浄を行い、他方のフィルターでは分級を継続させるため、分級を停止させる必要がなくなり、連続的に分級処理できる。装置は2枚のフィルターを対設させたシンプルな構造であり、流入する原液をフィルター2面で効率よく分級できるため、装置のコンパクト化が可能となり、設置面積の減少を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る、湿式分級装置のフロー図である。
【
図3】同じく、超音波照射時の湿式分級装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る、湿式分級装置のフロー図である。
原液貯留槽2に貯留されている分級対象の原液は、原液供給ポンプ3により原液供給管4を介して湿式分級装置1に供給される。原液は、湿式分級装置1に内設した一対のフィルター5A、5B間に供給される。
【0017】
湿式分級装置1には、分級液排出管7及び洗浄液供給管8を連通させている。分級液排出管7は、各フィルター5A、5Bを透過する小径粒子の処理液を分級液貯留槽9へ排出する。洗浄液供給管8は、洗浄液供給ポンプ10を介して洗浄液貯留槽11内の洗浄液を各フィルター5A、5Bで区画された第1分級液室15A、第2分級液室15Bに供給する。
【0018】
分級液排出管7及び洗浄液供給管8は、それぞれ分岐しており、分級液排出弁V1、V2及び洗浄液供給弁V3、V4を介して湿式分級装置1に連通している。
【0019】
また、湿式分級装置1には、原液排出弁V5を介して原液排出管6を連通させている。原液排出管6は、フィルター5A、5Bを透過できない大径粒子を含む原液を排出する。本実施例では、原液排出管6を原液貯留槽2に接続しているが、大径粒子を原液貯留槽2に返送せずに外部に排出させる構成としてもよい。
【0020】
湿式分級装置1の上方には、超音波振動子12を設けている。超音波振動子12は、交流電源に接続された発振器13に接続してあり、発振器13の駆動により高周波電力が印加される。
【0021】
高周波電力を受けた超音波振動子12は振動し、超音波を発生する。超音波は、湿式分級装置1内に充填された液体に向かって伝播する。湿式分級装置1内を伝播していく超音波は、一対のフィルター5A、5Bをそれぞれ振動させる。
【0022】
図2は、本発明に係る、湿式分級装置の概略断面図である。
湿式分級装置1は、ケーシング14と、フィルター5A、5Bと、超音波振動子12と、で構成してある。
【0023】
<ケーシング>
ケーシング14は、円筒形状に形成された上段ブロック14A、中段ブロック14B、下段ブロック14Cを積み重ねてボルト等で固定してあり、内部に原液を分級する空間を有する。
【0024】
ケーシング14内部の原液を分級する空間は、所定の間隔を設けて水平に配置した一対のフィルター5A、5Bで上下方向に分級液室15A、15Bと原液供給室16とで区画されている。
【0025】
分級液室15A、15Bのうち、一方は、上段ブロック14A内の上部壁面である第1壁面17Aと後述する第1フィルター5Aの間に形成する第1分級液室15Aであり、他方は、下段ブロック14C内の下部壁面である第2壁面17Bと後述する第2フィルター5Bの間に形成する第2分級液室15Bである。そして、第1分級液室15A及び第2分級液室15Bの間に一対のフィルター5A、5Bが水平に配置してあり、両フィルター5A、5B間に原液供給室16を形成している。
【0026】
上段ブロック14A及び下段ブロック14Cは、各分級液室15A、15Bに貫通する孔に洗浄液供給管8及び分級液排出管7を接続している。中段ブロック14Bは、原液供給室16に貫通する孔に原液供給管4及び原液排出管6を接続している。
なお、連結された複数のブロック間にはシール部材を設けており止水してある。
【0027】
<フィルター>
フィルター5は、多数の開口部を形成した円形状の金属製の薄板を用いており、ケーシング14内に上下一対で対向配置している。上側に設け、第1分級液室15Aと原液供給室16を仕切る第1フィルター5A、下側に設け、第2分級液室15Bと原液供給室16を仕切る第2フィルター5Bを設けてある。薄板の開口部の径、形状等は使用に応じて適宜決定する。
【0028】
第1フィルター5A及び第2フィルター5Bは、供給された原液がフィルター面に対して平行に流れるようにケーシング14内に所定の間隔を設けて水平に配設している。また、フィルター5Aを上段ブロック14Aと中段ブロック14Bの間に挟持するとともに、フィルター5Bを中段ブロック14Bと下段ブロック14Cの間に挟持している。そのため、後段で説明する定常波24が伝わった際に振動が生じやすい。2枚のフィルター5A、5Bを各ブロックに挟持したことで、フィルター5の交換が必要となった場合であっても各ブロックを解体しフィルター5を取り外すだけでよいため、交換作業に手間がかからない。
【0029】
各フィルター5A、5Bは、表面18、18をそれぞれ対向させており、両フィルター間に原液供給室16が形成されている。裏面19、19には、それぞれ分級液室15A、15Bが形成されている。各分級液室15A、15Bには、原液供給室16に供給された原液がフィルター5A、5Bをそれぞれ透過して流入する。
【0030】
<クロスフロー>
原液供給室16には、原液供給管4及び原液排出管6を対向して連通させている。原液供給管4より供給される原液は、フィルター5A、5Bの表面18、18を平行に流れる。フィルター5A、5Bの開口部より大径の粒子は、原液と共に原液排出管6を介して原液貯留槽2に返送されるが、フィルター5A、5Bの開口部より小径の粒子は、フィルター5A、5Bを透過し各分級液室15A、15Bに流入する。各分級液室15A、15Bからは分級液排出管7を介して排出される。
【0031】
<洗浄>
分級中に、フィルター5の表面18に堆積する粒子等は、連続的に供給される原液によって原液排出管6に向かって押し流されるが、一部の粒子は、フィルター5の開口部に堆積し、フィルター5を目詰まりさせる。フィルター5の目詰まりを解消するために、各分級液室15A、15Bに連通した洗浄液供給管8を介して各フィルター5A、5Bの裏面19、19に対応する各分級液室15A、15Bに洗浄液を供給し、フィルター5を洗浄する。
【0032】
フィルター5の目詰まりを防ぐことで、フィルター5の洗浄頻度が低下し洗浄液使用量及び洗浄時間が減少しランニングコストが低下する。フィルター5の交換頻度も減るため、ケーシング14からフィルター5を取り外す作業が不要となり、作業員の手間を減らすこともできる。
【0033】
<超音波振動子>
超音波振動子12は、第1分級液室15Aを形成する上段ブロック14Aの中央に形成された開口部より挿通し、照射面20をフィルター5Aの裏面に向けて固定してある。開口部と振動子12はシール部材で水密に固定してある。
【0034】
本実施例では、超音波振動子12をケーシング14に設けた開口部に挿通させて固定したが、一方のフィルター5の裏面から各フィルター5A、5Bに照射できればよいためこれに限定しない。その他の固定方法として、例えば、薄板で構成したケーシング14の外側に固定配置する、一方の壁面17に敷設する、一方の分級液室15内において壁面17から離反する位置に固定する等が挙げられる。
【0035】
<反射部材>
超音波振動子12より照射した超音波は、下段ブロック14C底部の第2壁面17Bの全面に敷設した反射部材18にて反射される。反射部材18を敷設することで、超音波の反射効率を高めることができる。反射部材18は、反射面21を超音波振動子12の照射面20に対向配置させることで、超音波振動子12より照射された超音波を効率よく反射させることができる。なお、本実施例では、反射部材18を敷設したが、反射部材18を用いずに第2壁面17Bで直接反射させてもよい。
【0036】
超音波は、伝播物質(ケーシング内の液体)と異なる音響インピーダンスを有する物質(反射部材18)の界面で反射する。両物質の音響インピーダンスの差が大きいほど反射率が高くなるため、反射部材18として、ステンレスが望ましい。ステンレスは、腐食性が高い特性を有していることから維持管理面でも優れている。反射部材18は、表面に凹凸を有する場合、超音波を乱反射し、定常波24の生成を妨げるため、反射面21を平坦で滑らかに仕上げるほうが好ましい。
なお、反射部材18及びケーシング14の厚みや形状等は、超音波の反響に応じて適宜決定する。
【0037】
本実施例では、一方の分級液室15(第1分級液室15A)側に設けた超音波振動子12より照射される超音波を他方の分級液室15(第2分級液室15B)側に設けた反射部材で反射させているが、一方の分級液室15(第2分級液室15B)側に超音波振動子12を設け、他方の分級液室15(第1分級液室15A)側で反射させる構成としてもよい。
【0038】
図3は、超音波照射時の湿式分級装置を示す模式図である。
【0039】
超音波振動子12から第1フィルター5Aの裏面19に向かって照射された入射波22は、4分の1波長間隔で交互に腹25と節26を複数形成する。腹25は、入射波22の振幅が最大となる部分であり、節26は、振幅がゼロとなる部分である。本実施例では、入射波22の振幅が最大となる腹25、25に第1フィルター5A及び第2フィルター5Bをそれぞれ配置している。そのため、各フィルター5A、5Bに強い振動を生じさせることができる。また、後述する定常波24は入射波22と波長が同様であるため、第1フィルター5A及び第2フィルター5Bは、定常波24の腹25にそれぞれ位置していることになる。
【0040】
入射波22は、一対のフィルター5A、5Bを透過した後、ケーシング14底部の第2壁面17Bに敷設された反射部材18にて反射される。このとき、入射波22を第2フィルター5Bから下方へ4分の1波長の整数倍の位置で反射させると、入射波22と同様の波長を有する反射波23が生成され、入射波22と反射波23が重なりあって定常波24が生成する。したがって、入射波22を反射させるケーシング14底部に敷設した反射部材18は、第2フィルター5Bから下方へ4分の1波長の整数倍の位置に交互に形成される定常波24の節26または腹25の位置に設ける。
【0041】
定常波24の腹25は、入射波22と同様に超音波の伝播方向に向かって2分の1波長間隔で発生するが、一対のフィルター5A、5Bをそれぞれ定常波24の腹25、25に配置する必要があるため、少なくとも2カ所以上発生させる必要がある。本実施例では、超音波振動子12から反射部材18に向かって伝播する定常波24のうち、最初に発生した腹25と2分の1波長間隔あけて2番目に発生した腹25の位置に各フィルター5A、5Bをそれぞれ配置するが、各フィルター5A、5Bを多数発生する腹25のうち、いずれかの腹25の位置に配置すれば本発明の効果が得られる。
【0042】
また、超音波は超音波振動子12から離れるほど減衰する。そのため、円形の照射面20を有する本実施例では、薄板のフィルター5を円形に形成することでフィルター5に超音波を均一に当てることができる。なお、ケーシング14の構造に合わせて四角形に形成したフィルター5を用いてもよい。
【実施例0043】
本発明で使用する湿式分級装置1は、上記のように構成してあり、その分級方法を以下に示す。
【0044】
分級開始前に、原液供給ポンプ3及び洗浄液供給ポンプ10を起動し、ケーシング14内を液体で充填する。このとき、洗浄液供給弁V3、V4は開であり、原液排出弁V5は閉である。ケーシング14を液体で充填した後、洗浄液供給弁V3、V4を閉にし、洗浄液供給ポンプ10を停止し、分級を開始する。
【0045】
原液貯留槽2から原液供給管4を介して供給される原液は、ケーシング14内に配設した一対のフィルター5A、5B間に形成された原液供給室16に流入する。
【0046】
分級開始に伴い、発振器13を起動し、超音波振動子12からフィルター5A、5Bに向かって入射波22を照射する。入射波22は、液体を伝播しながらフィルター5A、5Bを透過し、ケーシング14の第2壁面17Bに敷設した反射部材18にて反射され定常波24を生成する。なお、発振器13を起動するタイミングは、分級開始と同時に超音波の照射が開始できればよいため、分級開始前に起動しても分級開始と同時に起動してもよい。
【0047】
定常波24は、4分の1波長間隔で交互に音圧の節26と腹25を複数形成しており、腹25は振幅が最大となっている。本実施例では、定常波24の腹25、25の位置に一対のフィルター5A、5Bをそれぞれ配置しているため、分級時に一対のフィルター5A、5Bそれぞれに強い振動を生じさせている。
【0048】
原液供給室16に流入する原液は、フィルター5A、5Bの表面18に対し平行に流入する。流入した原液のうち、小径の粒子はフィルター5A、5Bを透過し、各フィルター5A、5Bの裏面19、19の分級液室15A、15Bに流入する。
【0049】
小径の粒子は、分級液室15A、15Bに流入した後、分級液室15A、15Bと連通する分級液排出管7を介して分級液貯留槽9に排出される。分級液貯留槽9内には、予め設定した孔径を有するフィルター5A、5Bを透過した所望の径を有する小径の粒子のみ貯留されている。
【0050】
一方、フィルター5を透過できない大径の粒子は、余剰分の原液とともに原液排出管6を通って原液貯留槽2に返送される。原液排出管6に配設された原液排出弁V5で分級液室15に流れる流量を調整する。このようにして所望の径を有する粒子群ごとに分級する。
【0051】
原液はフィルター5の表面18に対し平行に流入するため、フィルター5を透過できない大径の粒子は原液にて押し流される。
【0052】
また、一対のフィルター5A、5Bをそれぞれ定常波の腹24に配置しており、強い振動を生じさせているため、フィルター5を透過できない大径の粒子がフィルター5より振動を受けてフィルター5の表面18から剥離する。そして、剥離した粒子が連続的に流入してくる原液によって下流へ押し流されるため、フィルター5を透過できない大径の粒子がフィルター5の表面18に堆積し難く、効率よく分級を継続できる。
【0053】
振動で剥離しきれなかった粒子が堆積した場合、フィルター5の目詰まりを起こす。第1分級液室15A側の第1フィルター5Aが目詰まりした場合には、第1分級液室15Aに接続する分級液排出管7に配置された分級液排出弁V1を閉にし、分級液の排出を停止する。
【0054】
そして、洗浄液供給弁V3を開にして第1分級液室15Aに連通する洗浄液供給管8より洗浄液を供給し、洗浄液を第1フィルター5Aの裏面19から表面18に向かって流入させて第1フィルター5Aの洗浄を行う。このとき、第2分級液室15Bと連通する分級液排出管7に介在させた分級液排出弁V2は開のままであり、第2分級液室15B側では分級を継続する。なお、洗浄時も、超音波の照射及び原液の供給を継続しているため、原液供給室16に流入する原液は、フィルター5による強い振動を受けながら分級される。
【0055】
同様に、第2分級液室15B側の第2フィルター5Bが目詰まりした場合には、第2分級液室15Bに接続した分級液排出管7に配置された分級液排出弁V2を閉にし、分級液の排出を停止する。
【0056】
そして、洗浄液供給弁V4を開にして第2分級液室15Bに連通する洗浄液供給管8より洗浄液を供給し、洗浄液を第2フィルター5Bの裏面19から表面18に向かって流入させて第2フィルター5Bの洗浄を行う。このとき、第1分級液室15Aと連通する分級液排出管7に介在させた分級液排出弁V1は開のままであり、第1分級液室15A側では分級を継続する。
【0057】
このように、一対のフィルター5A、5Bのうち、少なくとも一方のフィルター5の目詰まりを検知した場合には、目詰まりを検知したフィルター5側の分級液室15に洗浄液を供給し、洗浄を行い、目詰まりを検知していないフィルター5側の分級液室15では分級を継続する。
【0058】
供給された洗浄液によってフィルター5から剥離した粒子は、原液排出管6を介して余剰分の原液および洗浄廃液と共に原液貯留槽2に返送される。
【0059】
フィルター5の洗浄終了後、洗浄液供給ポンプ10を停止し、洗浄液供給弁V3(またはV4)を閉にするとともに、分級液排出弁V1(またはV2)を開にし、目詰まりを解消したフィルター5側の分級液室15内で分級を再び開始する。この時、目詰まりを検知していない側のフィルター5側の分級液室15では分級を継続している。
【0060】
本実施例では、少なくとも一方のフィルター5が目詰まりした場合であっても、他方のフィルター5の分級を継続できるため、連続処理が可能となる。
【0061】
第1フィルター5A及び第2フィルター5Bが両方目詰まりした際には、各フィルター5A、5Bの洗浄を交互に行う。一方のフィルター5の洗浄を行っている際は他方のフィルター5で分級を継続し、他方のフィルター5の洗浄を行っている際は、一方のフィルター5で分級を継続する。
なお、両方の目詰まりを検知した後、分級を停止し、両方のフィルター5A、5Bを同時に洗浄してもよい。
【0062】
フィルター5の目詰まりが生じることで、分級液貯留槽9へ排出される分級液の排出量が減少するため、所定の流量が低下すると洗浄を開始する。その他、予め定めた所定時間経過後に洗浄を開始させてもよい。
【0063】
上述し、かつ図面に記載した本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で変形実施を可能とする。
本発明に係る湿式分級装置及びそれを用いた湿式分級方法は、湿式分級装置内に配設した一対のフィルターに超音波を照射し、振動を生じさせながらクロスフロー分級を行うものであり、フィルターを透過できない大径粒子が振動を受けてフィルターから剥離し連続的に供給される原液にて下流へ押し流されるため、フィルターの目詰まりを最小限に抑えながら長時間効率よく分級を行うことができる。したがって、製粉、医薬品、陶磁器、食料品、鉱産物、金属、樹脂原材料等、様々な被処理物の分級に有益な湿式分級装置及び湿式分級方法となる。