(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005934
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸受容体発現促進剤、これを含む皮膚外用剤並びに高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9711 20170101AFI20230111BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K8/9711
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108231
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中西 類子
(72)【発明者】
【氏名】金丸 晶子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD492
4C083AD572
4C083CC02
4C083CC07
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、人体に対して安全で、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現促進効果が高い、ヒアルロン酸受容体発現促進剤及び皮膚外用剤又は皮膚外用剤セットを提供することを、課題とする。
また本発明は、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法を提供することを、さらなる課題とする。
【解決手段】
ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを含む、ヒアルロン酸受容体発現促進剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒバマタ目(Fucales)ヒバマタ科(Fucaceae)ヒバマタ属(Fucus)の褐藻エキスを含む、ヒアルロン酸受容体発現促進剤。
【請求項2】
前記褐藻エキスが、フカスセラツス(Fucus serratus)エキスである、請求項1に記載のヒアルロン酸受容体発現促進剤。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸受容体発現促進剤中の、前記褐藻エキスの含有量が、0.0001質量%以上である、請求項1又は2に記載のヒアルロン酸受容体発現促進剤。
【請求項4】
皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸の、表皮層での保持効率を向上させるための剤である、請求項1~3の何れか一項に記載のヒアルロン酸受容体発現促進剤。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のヒアルロン酸受容体発現促進剤を含む、皮膚外用剤。
【請求項6】
さらに、高分子ヒアルロン酸を含む、請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
パック剤である、請求項5又は6に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
ヒアルロン酸受容体発現促進のための、請求項5~7の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
ヒバマタ目(Fucales)ヒバマタ科(Fucaceae)ヒバマタ属(Fucus)の褐藻エキスを含む第1の皮膚外用剤と、高分子ヒアルロン酸を含む第2の皮膚外用剤と、からなる、皮膚外用剤セット。
【請求項10】
皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上のための、請求項9に記載の皮膚外用剤セット。
【請求項11】
前記第1の皮膚外用剤が、パック剤である、請求項9又は10に記載の皮膚外用剤セット。
【請求項12】
ヒバマタ目(Fucales)ヒバマタ科(Fucaceae)ヒバマタ属(Fucus)の褐藻エキスと、高分子ヒアルロン酸を同時又は連続的に皮膚組織に適用する、非治療的な皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法。
【請求項13】
請求項11に記載の皮膚外用剤セットを用い、前記第1の皮膚外用剤を適用した後、当該部位に前記第2の皮膚外用剤を適用する、請求項12に記載の非治療的な皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸受容体発現促進剤及びこれを含む皮膚外用剤に関する。また本発明は、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、直鎖状のグリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種であり、ヒアルロナンとも呼ばれる。ヒアルロン酸は保水性が高く、皮膚、軟骨、眼球等、生体内で重要な役割を持っている。
【0003】
上記状況に鑑み、ヒアルロン酸の皮膚組織への浸透効率を向上させる技術や、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進する技術が研究されてきた。
例えば特許文献1には、(A)リン脂質、(B)グリコールエーテルおよび(C)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体又はそれらの塩を含有する皮膚外用剤が記載されている。当該皮膚外用剤によれば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体又はそれらの塩の、肌への浸透効率を向上させることができる。
また特許文献2には、MnCl2、グルコン酸カルシウム、及び塩化カルシウムと組み合わせたグルコン酸ナトリウムからなる群より選択される成分を含む、ヒアルロン酸の肌細胞表面への結合を向上することにより表皮の含水を向上させるための化粧用活性剤が記載されている。当該化粧用活性剤によれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体であるCD44の発現量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-191396号公報
【特許文献2】特許第4708571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記状況に鑑み、本発明は、ヒアルロン酸受容体の発現を促進する新規な剤及び、当該新規な剤を用いた美容方法を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、ヒバマタ目(Fucales)ヒバマタ科(Fucaceae)ヒバマタ属(Fucus)の褐藻エキスを含む、ヒアルロン酸受容体発現促進剤である。
本発明の好ましい形態では上記褐藻エキスが、フカスセラツス(Fucus serratus)エキスである。
本発明によれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進することができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、上記ヒアルロン酸受容体発現促進剤中の、前記海藻エキスの含有量が、乾燥質量で0.0001質量%以上である。
本発明によれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進することができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、上記ヒアルロン酸受容体発現促進剤は、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸の、表皮層での保持効率を向上させるための剤である。
本発明によれば、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸の、表皮層における保持効率を向上させることができる。
【0009】
上記課題を解決する本発明は、上記したヒアルロン酸受容体発現促進剤を含む、皮膚外用剤である。
本発明によれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、上記皮膚外用剤は、さらに、高分子ヒアルロン酸を含む。
ヒアルロン酸受容体発現亢進剤と、高分子ヒアルロン酸を組み合わせることで、皮膚組織におけるヒアルロン酸の保持効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、上記皮膚外用剤は、パック剤である。
パック剤とすることで、ヒアルロン酸受容体発現促進剤を皮膚組織に一定時間適用することができ、ヒアルロン酸受容体の発現を一層促進することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態は、上記皮膚外用剤は、ヒアルロン酸受容体発現促進のための剤である。
【0013】
上記課題を解決する本発明は、ヒバマタ目(Fucales)ヒバマタ科(Fucaceae)ヒバマタ属(Fucus)の褐藻エキスを含む第1の皮膚外用剤と、高分子ヒアルロン酸を含む第2の皮膚外用剤と、からなる、皮膚外用剤セットである。
本発明の好ましい形態では、上記皮膚外用剤セットは、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上のための剤である。
本発明によれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進することができる。また、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、上記第1の皮膚外用剤が、パック剤である。
本発明によれば、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを、皮膚組織に一定時間確実に適用することができるので、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率を向上させることができる。
【0015】
上記課題を解決する本発明は、ヒバマタ目(Fucales)ヒバマタ科(Fucaceae)ヒバマタ属(Fucus)の褐藻エキスを含む組成物と、高分子ヒアルロン酸を含む組成物を同時又は連続的に皮膚組織に適用する、非治療的な皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法である。
本発明の好ましい形態では、上記した皮膚外用剤セットを用い、上記第2の皮膚外用剤を塗布した後、当該部位に上記第1の皮膚外用剤を適用する。
本発明によれば、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、人体に対して安全で、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現促進効果が高い、ヒアルロン酸受容体発現促進剤及び皮膚外用剤又は皮膚外用剤セットを提供することができる。
また本発明によれば、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】試験例1において、海藻エキス0.25%存在下で培養した細胞におけるヒアルロン酸受容体(CD44)の発現量を表すグラフである。
【
図2】試験例2において、試験前の皮膚組織の反発戻り時間を1としたときの、試験後の皮膚組織の反発戻り時間を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、「皮膚組織」とは、皮膚を構成する表皮層、真皮層、及び皮下組織を指す。
【0019】
<1>ヒアルロン酸受容体発現促進剤及びこれを含む皮膚外用剤
本発明のヒアルロン酸受容体発現促進剤は、ヒバマタ目(Fucales)ヒバマタ科(Fucaceae)ヒバマタ属(Fucus)の褐藻エキスを含む。
本発明によれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進することができる。
以下、「ヒバマタ目(Fucales)ヒバマタ科(Fucaceae)ヒバマタ属(Fucus)の褐藻エキス」を、単に「ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキス」という。
【0020】
ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻としては、Fucus ceranoides、Fucus distichus、Fucus serratus等を例示することができる。本発明においては、Fucus serratus(以下、単にフカスセラツスという)を、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻として採用することが好ましい。
【0021】
ここで、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスは、ヒバマタ目ヒバマタはヒバマタ属の褐藻由来の抽出物のみならず、これらの抽出物の画分、生成した画分、抽出物乃至は画分、生成物の溶媒除去物の総称を意味し、またヒアルロン酸受容体発現促進効果を阻害しない範囲で、抽出溶媒を含んでいてもよい。ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスは、自生若しくは生育された植物から抽出してもよく、市販されているものを使用してもよい。
ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを抽出する場合、その抽出操作は、褐藻の全草、根、茎、葉の何れを用いてもよい。また、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができる。
上記エキスの具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられるが、抽出方法はこれに限定されない。
【0022】
ヒアルロン酸受容体発現促進剤中のヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスの含有量は、乾燥質量で0.0001質量%以上であることが好ましく、乾燥質量で0.0002質量%以上であることがより好ましい。
またヒアルロン酸受容体発現促進剤中のヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスの含有量は、乾燥質量で0.5質量%以下とすることができ、乾燥質量で0.3質量%以下とすることができる。
ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻がフカスセラツスである場合、ヒアルロン酸受容体発現促進剤中の含有量は、乾燥質量で0.025~0.01質量%であることが好ましく、乾燥質量で0.004~0.006質量%であることがより好ましい。
本発明によれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進することができる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、上記ヒアルロン酸受容体発現促進剤は、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸の、表皮層での保持効率を向上させるための剤である。
従来から、高分子ヒアルロン酸の浸透効率を高めようとする技術は存在したが、浸透効率を高めると、皮膚組織(特に、表皮層)に留まらせることが困難であった。
本発明によれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進させることができるので、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸の、表皮層での保持効率を向上させることができる。
【0024】
本発明のヒアルロン酸受容体発現促進剤の剤形は特に制限されず、製剤化に用いられる任意の成分と適宜組み合わせて、経口剤や皮膚外用剤の形態をとることができる。
皮膚組織、特に表皮層においてヒアルロン酸受容体発現効果を奏するという観点では、本発明のヒアルロン酸受容体発現促進剤は、皮膚外用剤の形態をとることが好ましい。
【0025】
本発明のヒアルロン酸受容体発現促進剤を、経口剤とする場合、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを有効成分として含む食品用組成物の形態とすることが好ましい。具体的には、一般食品、錠剤、顆粒剤、ドリンク剤等の剤形を有するサプリメントの形態とすることが好ましい。
【0026】
経口剤における、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスの含有量は、剤形に応じて、1回あたりの摂取量が抽出物の乾燥質量として、通常、0.1mg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは10mg以上である。
また、通常、2000mg以下、好ましくは1000mg以下、より好ましくは500mg以下である。
【0027】
皮膚外用剤とする場合、例えば化粧料、医薬部外品、皮膚外用医薬等の形態を例示することができる。また、それらの剤形は特に限定されない。
皮膚組織、特に表皮層におけるヒアルロン酸受容体発現を促進する場合、継続的に使用可能な化粧料の形態が好ましい。具体的には、洗顔料、クレンジング剤、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、サンケア品等の形態が好ましい。また、フェイスパックのような形態とすることも好ましい。
皮膚外用剤とする場合、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスの含有量は、ヒアルロン酸受容体発現促進剤中の含有量として述べた事項を、適用することができる。ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻がフカスセラツスである場合も、同様である。
【0028】
上記ヒアルロン酸受容体発現促進剤を、化粧料とする場合、ヒアルロン酸受容体発現促進効果及び人体への安全性を損ねない範囲で、美白成分、しわ改善成分、抗炎症成分、動植物由来の抽出物、有効成分以外に通常化粧料で使用される成分を、任意成分として配合してもよい。
これらの任意成分は、市販されているものを入手して配合してもよく、公知の方法で合成したものを配合してもよい。
【0029】
美白成分としては、一般的に化粧料で用いられている成分を、特に制限なく使用することができる
例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン及びアミノジフェニルメタン、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン メチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリン エチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリン メチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン等が挙げられる。
【0030】
化粧料における美白成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0031】
しわ改善成分としては、一般的に化粧料で用いられている成分を、特に制限なく使用することができる。
例えば、ビタミンA又はその誘導体としてレチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールが挙げられる。また、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステルが挙げられる。
【0032】
化粧料におけるしわ改善成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0033】
抗炎症成分としては、例えば、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール等が挙げられ、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩が好ましく挙げられる。
化粧料中における抗炎症成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0034】
動植物由来の抽出物としては、例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クルミエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タンポポエキス、チョウジエキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、マツエキス、ミズバショウエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0035】
化粧料中における上記任意の動植物由来抽出物の含有量(乾燥質量)は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
【0036】
有効成分以外に通常化粧料で使用される成分としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等のポリオール、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類が挙げられる。
【0037】
本発明は、上記ヒアルロン酸受容体発現促進剤を含む、皮膚外用剤にも関する。
皮膚外用剤は、塗布や貼付により皮膚組織に直接適用することができるため、皮膚組織、特に表皮層におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進することができる。
なお、本発明において、「皮膚組織に適用する」とは、皮膚組織(すなわち、表皮層、真皮層又は皮下脂肪層)において本発明の剤の効果が発揮されるようにすることを意味する。具体的には例えば、ヒアルロン酸受容体発現促進剤又はこれを含む皮膚外用剤を、皮膚組織の表面に塗布ないし貼付する形態が含まれる。
また、上記ヒアルロン酸受容体発現促進剤又はこれを含む皮膚外用剤を皮膚組織の表面に塗布ないし貼付する形態とする場合、塗布ないし貼付した後一定時間(例えば1分~10分)経過後に水で洗い流したり拭き取ったりして除去する形態としてもよく、これらの剤を除去しない形態としてもよい。
【0038】
本発明については、上記ヒアルロン酸受容体発現促進剤を皮膚外用剤とする場合に述べた事項を、適用することができる。
【0039】
本発明の好ましい形態では、ヒアルロン酸受容体発現促進剤は、化粧料の中でも、パック剤とすることが好ましい。パック剤の形態は特に制限されず、全顔を覆うフェイスパック(シートマスク)とすることもできるし、目もとや鼻、首、手など、特定の部位に特化したパック剤とすることもできる。
【0040】
本発明の好ましい形態では、さらに、高分子ヒアルロン酸を含む。
本発明によれば、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスによりヒアルロン酸受容体の発現を促進し、皮膚組織外から高分子ヒアルロン酸を供給することによって、皮膚組織、特に表皮層における高分子ヒアルロン酸の保持効率を向上させることができる。
【0041】
本発明において、「高分子ヒアルロン酸」には、高分子ヒアルロン酸及びその塩が含まれる。
ヒアルロン酸塩を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、塩基性アミノ酸塩などを例示することができる。
高分子ヒアルロン酸及びその塩は、一般的に入手可能な市販品を使用することができる。
【0042】
本発明の好ましい形態では、高分子ヒアルロン酸の分子量は100~2000kDaであり、より好ましくは200~1500kDaである。
高分子ヒアルロン酸の分子量を上記数値範囲とすることで、皮膚組織、特に表皮層における保水力を高めることができる。
【0043】
本発明の好ましい形態では、高分子ヒアルロン酸は、高分子ヒアルロン酸含有複合粒子を形成しており、より好ましい形態では、高分子ヒアルロン酸含有複合粒子は、高分子ヒアルロン酸はペプチドとの複合粒子である。
また本発明の好ましい形態では、上記複合粒子は、ナノ粒子である。
高分子ヒアルロン酸とペプチドとが複合粒子を形成している場合、高分子ヒアルロン酸の粒子径を小さくすることができるため、皮膚組織内部、特に表皮層への浸透効率が向上する。すなわち、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスの効果によりヒアルロン酸受容体の発現を促進した皮膚組織に、ペプチドと複合粒子を形成して浸透性が向上した高分子ヒアルロン酸の皮膚組織外から供給することで、皮膚組織、特に表皮層における高分子ヒアルロン酸の効果(保水力)を効率よく発揮させることができる。
【0044】
本発明において、ペプチドは、人体に対して害のない限り特に制限されず、同一アミノ酸残基からなるペプチドであっても、複数種のアミノ酸残基からなるペプチドであってもよい。
またペプチドは天然物であっても合成物でもよく、また、天然物又は合成物であるタンパク質を分解することで得られたペプチドを用いてもよい。また化学的な修飾が施されたペプチドを用いることもできる。
【0045】
ペプチドとしては、具体的には、水溶性コラーゲン、オリゴペプチド-24(EGF様合成ペプチド、13個のアミノ酸配列、分子量1271)、アセチルデカペプチドー3(FGF様合成ペプチド)、オリゴペプチド-34(TGFβ様合成ペプチド、13個のアミノ酸配列、分子量1468)、オリゴペプチド-20(IGF様合成ペプチド、12個のアミノ酸配列、分子量1476)、ポリリジン、ポリアルギニンなどを例示することができる。中でも、水溶性コラーゲン、オリゴペプチド-20及びポリアルギニンをペプチドとして採用することが好ましく、水溶性コラーゲンをペプチドとして採用することがさらに好ましい。
【0046】
高分子ヒアルロン酸とペプチドとの複合粒子がナノ粒子である場合、複合粒子の粒子径は1000nm以下とすることができる。
本発明の好ましい形態では、水溶性コラーゲンとペプチドの複合粒子の粒子径は500nm以下であり、より好ましい形態では複合粒子の粒子径は400nm以下であり、さらに好ましい形態では複合粒子の粒子径300nm以下である。
複合粒子の粒子径は、粒子径分布測定装置を用いて光散乱法により測定することが可能である。
【0047】
高分子ヒアルロン酸とペプチドの複合粒子は、pHが5以下の水系溶媒中で高分子ヒアルロン酸とペプチドとを混合することで、調製することができる。
本発明において「水系溶媒」とは、水(例えば、精製水、イオン交換水、水道水等)または水溶性成分の水溶液のことをいう。水溶性成分としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限無く用いることができる。例えば、通常化粧料や医薬部外品等に配合される粉末類、保湿剤、増粘剤、防腐剤等の添加物が挙げられる。なお、高融点の水溶性成分を配合する場合は、予め加熱して水に均一溶解させておくことができるが、水溶性成分が溶解した後は水溶液を室温程度に戻してから複合粒子の製造に用いることが好ましい。
【0048】
水系溶媒のpHの上限は5以下であり、好ましくは4.5以下であり、より好ましくは4.2以下である。
また、水系溶媒のpHの下限は特に制限されないが、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、より好ましくは2.5以上である。
【0049】
高分子ヒアルロン酸と組み合わせるペプチドとして水溶性コラーゲンを用いる場合には、水系溶媒のpHは好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは3以下である。
高分子ヒアルロン酸と組み合わせるペプチドとして水溶性コラーゲンを用いる場合、pHの下限は特に制限されないが、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは2.7以上とすることができる。
【0050】
また、高分子ヒアルロン酸と組み合わせるペプチドとしてオリゴペプチド-20を用いる場合には、水系溶媒のpHは好ましくは4.5以下であり、より好ましくは4以下であり、さらに好ましくは3.5以下である。
高分子ヒアルロン酸と組み合わせるペプチドとしてオリゴペプチド-20を用いる場合、pHの下限は特に制限されないが、好ましくは2以上であり、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは2.7以上であり、より好ましくは2.75以上とすることができる。
【0051】
さらに、高分子ヒアルロン酸と組み合わせるペプチドとしてポリリジンを用いる場合には、水系溶媒のpHは好ましくは4.7以下であり、より好ましくは4.4以下であり、さらに好ましくは4.2以下である。
高分子ヒアルロン酸と組み合わせるペプチドとしてポリリジンを用いる場合、pHの下限は特に制限されないが、好ましくは2以上であり、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは3以上であり、より好ましくは3.5以上とすることができる。
【0052】
水系溶媒中でアニオン性ポリマーとペプチドとを混合する際の形態は特に限定されないが、予めアニオン性ポリマー水溶液と、ペプチド水溶液をそれぞれ別途調製し、これらを混合する実施の形態とすることが好ましい。
このように別途調製した各ポリマー水溶液を混合する形態とすることによって、複合粒子が凝集することを防ぐことができる。
予め調製するアニオン性ポリマー水溶液とペプチド水溶液のそれぞれのpHは特に限定されず、混合後の水系溶媒のpHが上記範囲となればよい。
【0053】
混合後の水系溶媒のpHが上記範囲外である場合、酸性水溶液を添加して、pHを調製することができる。
酸性水溶液としては、複合粒子を形成することができれば特に制限されないが、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸の水溶液を好ましく例示することができる。
また、予め目的のpHに調製しておいた高分子ヒアルロン酸水溶液とペプチド水溶液を混合する形態としてもよい。この場合、別途水系溶媒のpHを調製する必要がないため、複合粒子の製造工程を簡素化することができる。
【0054】
高分子ヒアルロン酸水溶液を予め調製する場合には、当該水溶液における高分子ヒアルロン酸の濃度は、好ましくは1.7mM以下であり、より好ましくは1mM以下であり、さらに好ましくは0.9mM以下である。
このような濃度に調節しておくことにより、ペプチド水溶液と混合する際に、粒子の不要な凝集を回避することができる。
【0055】
ペプチド水溶液を予め調製する場合には、当該水溶液における各ペプチドの濃度は、好ましくは5.1mM以下であり、より好ましくは3mM以下であり、さらに好ましくは2.7mM以下である。
このような濃度に調節しておくことにより、高分子ヒアルロン酸水溶液と混合する際に、粒子の不要な凝集を回避することができる。
なお、ここでいうペプチドのモル濃度は、構成するアミノ酸のそれぞれの分子量を構成比で乗じたものを1モルとし、算出する値である。
【0056】
混合後の水系溶液に対する高分子ヒアルロン酸の濃度は、好ましくは0.9mM以下であり、より好ましくは0.5mM以下である。
混合後の水系溶液に対するペプチドの濃度は、好ましくは2.7mM以下であり、より好ましくは1.5mM以下である。
【0057】
混合の方法としては、本分野において公知の方法を適宜採用することができる。例えば、各溶液を一度に混合する方法、一つの溶液に、他の溶液を滴下する方法などが挙げられる。いずれも、溶液を撹拌しながら混合を行うことが、凝集を回避する観点から好ましい。
【0058】
上記皮膚外用剤は、塗布剤やパック剤等、任意の剤形とすることができるが、パック剤であることが好ましい。
皮膚外用剤をパック剤とすることにより、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを一定時間、確実に皮膚組織に適用することができるため、皮膚組織、特に表皮層におけるヒアルロン酸受容体発現促進効果を十分に発揮することができる。これにより、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸の、表皮層での保持効率を向上させることができる。
また高分子ヒアルロン酸又はその塩、あるいはこれらとペプチドの複合粒子をさらに含む場合は、これらを一定時間、確実に皮膚組織に適用することができるため、ヒアルロン酸受容体の発現が促進された皮膚組織に対して、高分子ヒアルロン酸を供給することができる。これにより、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸の、表皮層での保持効率を向上させることができる。
【0059】
<2>皮膚外用剤セット
本発明は、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを含む第1の皮膚外用剤と、高分子ヒアルロン酸を含む第2の皮膚外用剤と、からなる、皮膚外用剤セットにも関する。
上記の通り、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスには、ヒアルロン酸受容体発現促進効果がある。したがって、上記褐藻エキスを含む第1の皮膚外用剤によって皮膚組織中のヒアルロン酸受容体の発現を促進し、高分子ヒアルロン酸を含む第2の皮膚外用剤によって皮膚組織へ高分子ヒアルロン酸を供給することによって、皮膚組織、特に表皮層における、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸の保持効率を向上させることができる。
【0060】
第1の皮膚外用剤におけるヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスの好ましい形態、当該褐藻エキスの含有量及び剤形については、上記<1>で述べた事項を適用することができる。
第2の皮膚外用剤における高分子ヒアルロン酸の好ましい形態については、上記<1>で述べた事項を適用することができる。
【0061】
本発明の好ましい形態では、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上のための、皮膚外用剤セットである。
【0062】
本発明の好ましい形態では、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを含む第1の皮膚外用剤は、パック剤である。
本発明によれば、上記褐藻エキスを皮膚組織(特に、表皮層)に一定時間、確実に接触させることができるため、ヒアルロン酸受容体発現効果を十分に発揮することができる。
【0063】
本発明の好ましい形態では、高分子ヒアルロン酸を含む第2の皮膚外用剤は、美容液又は乳液である。
【0064】
<3>皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法
本発明は、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法にも関する。
ここで、本発明に係る高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法は、非治療的な方法である。非治療的な方法は好ましくは、美容方法である。
【0065】
本発明に係る高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法は、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスと、高分子ヒアルロン酸を同時又は連続的に皮膚組織に適用する。
上記の通り、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスは、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進することができる。よって、上記褐藻エキスと高分子ヒアルロン酸を皮膚組織に適用することにより、ヒアルロン酸受容体の発現が促進された皮膚組織に対して、高分子ヒアルロン酸を供給することができる。したがって本発明によれば、皮膚組織(特に、表皮層)における高分子ヒアルロン酸の保持効率を向上させることができる。
【0066】
本発明において、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスと、高分子ヒアルロン酸を「同時に」皮膚組織に適用する形態としては、例えばヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスと、高分子ヒアルロン酸の両方を含む組成物を、皮膚組織に適用する形態とすることができる。
本発明において、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスと、高分子ヒアルロン酸を「連続的に」皮膚組織に適用する形態としては、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを含む第1の組成物と、高分子ヒアルロン酸を含む、第2の組成物とを皮膚組織に適用する形態とすることができる。なおこの場合、第1の組成物と第2の組成物の皮膚組織への適用順は問わない。
【0067】
本発明の好ましい形態では、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスは、皮膚外用剤に含まれており、より好ましい形態では、化粧料に含まれており、さらに好ましい形態では、パック剤に含まれている。
本発明によれば、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを皮膚組織のうち表皮層(角層を含む)に一定時間、確実に接触させることができるので、ヒアルロン酸受容体発現促進効果を十分に発揮することができる。
ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを含む組成物については、上記<1>で述べた事項を適用することができる。
【0068】
本発明の好ましい形態では、高分子ヒアルロン酸は、皮膚外用剤に含まれており、より好ましい形態では化粧料に含まれており、さらに好ましい形態では、美容液又は乳液に含まれている。
高分子ヒアルロン酸を含む組成物については、上記<1>で述べた事項を適用することができる。
【0069】
本発明の好ましい形態では、高分子ヒアルロン酸の保持効率向上のために、上記した皮膚外用剤セットを用いる。
具体的には、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを含む第1の皮膚外用剤を皮膚組織に適用した後、当該部位に、高分子ヒアルロン酸を含む第2の皮膚外用剤を適用する。好ましくは、第1の皮膚外用剤がパック剤であり、第2の皮膚外用剤が美容液又は乳液である、上記皮膚外用剤セットを用いる。
本発明によれば、上記褐藻エキスによってヒアルロン酸受容体の発現が促進された皮膚組織に対して、高分子ヒアルロン酸を含む第2の皮膚外用剤を適用し、皮膚組織外から高分子ヒアルロン酸を供給することによって、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸(特に、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸)の保持効率を向上させることができる。
【0070】
<4>高分子ヒアルロン酸含有複合粒子と、ヒアルロン酸受容体発現促進剤を含む組成物及び美容方法
本発明は、高分子ヒアルロン酸含有複合粒子と、ヒアルロン酸受容体発現促進剤を含む組成物及び美容方法にも関する。
本発明によれば、皮膚組織(特に、表皮層)における高分子ヒアルロン酸(特に、皮膚組織外から供給された高分子ヒアルロン酸)の保持効率を向上させることができる。
【0071】
高分子ヒアルロン酸含有複合粒子については、上記<1>で述べた事項を適用することができる。
【0072】
本発明において、ヒアルロン酸受容体発現向上剤は、本分野で公知の、ヒアルロン酸受容体発現向上効果を有する組成物を、特に制限なく使用することができる。例えば、サルビア葉エキス、ザクロ花エキス、ザクロ果皮エキス等を使用することができる。
また、上記<1>で述べたヒアルロン酸受容体発現向上剤を使用することもできる。
上記<1>で述べたヒアルロン酸受容体発現向上剤を使用する場合の好ましい形態は、上記<1>で述べた事項を適用することができる。
【0073】
また、本発明の美容方法は、高分子ヒアルロン酸含有複合粒子と、ヒアルロン酸受容体発現向上剤を、皮膚組織に適用する方法である。
本発明の美容方法の好ましい形態は、上記<3>で述べた事項を提供することができる。
【実施例0074】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0075】
<試験例1>ヒアルロン酸受容体発現促進効果を有するエキスの選定
本試験例においては、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体発現促進効果を有するエキスを選定した。
【0076】
試験例1は、下記の方法で行った。
(1)正常ヒト表皮細胞を、24wellプレートに、3×104cells/wellとなるように培地に播種した。培地としては、Humedia-KG2(倉敷紡績社製)を用いた。
(2)37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。
(3)培地を除去し、下記表1に記載のエキスを、濃度が0.125%、0.25%、0.5%と添加したHumedia-KG2を、添加した。コントロールとして、グリセリンを同様に添加した培地を添加した。
(4)37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。
(5)培地を除去し、PBSで洗浄した。
(6)Cell Counting kit-8(株式会社同仁化学研究所製)を用いて、各エキスの細胞毒性を調べた。また、公知の方法で、細胞の回収、mRNA抽出後、RT-qPCRにて、ヒアルロン酸受容体であるCD44の遺伝子発現量を測定・解析した。あわせて、内部標準としてGAPDHの遺伝子発現量を測定・解析した。
【0077】
RT-qPCRでは、CD44の発現量を測定するためのプライマーとして、Hs_CD44_1_SG QuantiTect Primer Assay(QIAGEN製)を用いた。
またGAPDHの発現量を測定するためのプライマーとして、Hs_GAPDH_2_SG QuantiTect Primer Assay(QIAGEN製)を用いた。
【0078】
試験例1の結果を、表1及び
図1に示す。表1には、コントロールである各エキスの抽出溶媒存在下で培養した細胞におけるヒアルロン酸受容体(CD44)の遺伝子発現量を、同細胞におけるGAPDHの遺伝子発現量で除した値を1としたときの、各エキス存在下で培養した細胞におけるヒアルロン酸受容体の遺伝子発現量を同細胞におけるGAPDHの遺伝子発現量で除した値を示す。また
図1は、海藻エキスの濃度が0.25%の場合において、コントロールである各エキスの抽出溶媒存在下で培養した細胞におけるヒアルロン酸受容体(CD44)の遺伝子発現量を、同細胞におけるGAPDHの遺伝子発現量で除した値を1としたときの、各エキス存在下で培養した細胞におけるヒアルロン酸受容体の遺伝子発現量を同細胞におけるGAPDHの遺伝子発現量で除した値をグラフで表したものである。
なお、本試験例において、海藻エキス中のフカスセラツスエキスの濃度は2質量%であった。また表1において、「%」は「質量%」である。
【0079】
【0080】
結果は示さないが、細胞毒性の確認の結果、本試験例で使用した何れの植物エキスの何れの濃度についても、細胞毒性を有しないことが明らかになった。
【0081】
表1及び
図1に示す通り、海藻エキスを添加した場合にのみ、細胞におけるヒアルロン酸受容体(CD44)の発現量が有意に増加していた。
以上より、海藻エキスには、細胞におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進する効果があることが明らかになった。したがって、海藻エキス、具体的には、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスには、細胞におけるヒアルロン酸受容体の発現を促進する効果があることが示唆された。
また本結果より、海藻エキスを使用すれば、上記の通り細胞毒性がなく安全な、ヒアルロン酸受容体発現促進剤及びこれを含む皮膚外用剤を提供することができることが示唆された。
【0082】
また、
図1に示す通り、海藻エキスの濃度が0.25%の時にヒアルロン酸受容体の発現量が促進されていた。
ここで、上記の通り、海藻エキス中のフカスセラツスエキスは2%であったから、本試験例の海藻エキスの濃度が0.25%のサンプルにおいては、フカスセラツスエキスの濃度は、0.005%であった。
表1及び
図1より、フカスセラツスエキスの濃度は、0.025~0.01%(海藻エキスとして0.125~0.5%)であることが好ましく、0.004~0.0.006%(海藻エキスとして0.2~0.3%)であることがより好ましいことが明らかになった。
【0083】
<試験例2>ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスと、高分子ヒアルロン酸の併用効果の検証
本試験例では、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスと、高分子ヒアルロン酸を併用した場合に奏する効果を検証した。
【0084】
試験例2は、以下の方法で行った。本試験例においては、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスを含む第1の皮膚外用剤として、フカスセラツスエキスを0.005%含むシートマスク(すなわち、パック剤)を採用し、高分子ヒアルロン酸を含む第2の皮膚外用剤として、高分子ヒアルロン酸を0.5mM含む美容液を採用した、皮膚外用剤セットを提供した。
<試験方法>
(1)40~50代の被験者12名に対して、上記の皮膚外用剤セットを提供し、所定の使用方法に従い、皮膚外用剤セットを使用させた。
(2)使用方法としては、以下の方法を指示した。すなわち、試験開始1日目にはシートマスクのみを使用し、続く6日間は美容液のみを使用させた。この1週間(1日目:シートマスクのみ、2~7日目:美容液のみ)を1サイクルとし、合計4サイクル使用させた。すなわち、試験期間は4週間である。
【0085】
予め試験開始前に、試験前の顔面頬部位に対し、バリストメーターにて反発戻り時間(押して元に戻るまでの時間)を計測しておき、上記試験の経過後、同じ顔面頬部位について、同様に反発戻り時間を計測した。
試験前(すなわち、皮膚外用剤セットの使用前)における反発戻り時間の平均を1としたときの、試験後(すなわち、皮膚外用剤セットの使用後)における、皮膚組織の反発戻り時間の平均を、
図2に示す。
なお、反発戻り時間が短いことは、皮膚組織の押し返し弾力が強いことを示す。
【0086】
図2に示されるように、使用前と比較して、使用後の反発戻り時間の平均が有意に短くなっていることが認められた。この結果より、本発明の皮膚外用剤セットを使用することにより、皮膚組織の押し返し弾力が高まっていることが示唆された。
【0087】
試験例1で示された通り、ヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキスによって、細胞において、ヒアルロン酸受容体であるCD44の発現量が向上する。
また、皮膚組織の弾力を維持するためには、皮膚組織(特に、表皮層)におけるヒアルロン酸の存在量を増加ないし維持することが必要であることは、公知である。
以上より、本発明に係るヒバマタ目ヒバマタ科ヒバマタ属の褐藻エキス、特に、フカスセラツスエキスによって、細胞におけるヒアルロン酸受容体(CD44)の発現量が向上すれば、皮膚組織におけるヒアルロン酸(特に、皮膚組織外から供給されたヒアルロン酸)の保持効率が向上し、その結果、皮膚組織の押し返し弾力を向上することができることが示唆された。
すなわち本発明に係る皮膚外用剤セットは、高分子ヒアルロン酸の保持効率向上のために用いることができる。
【0088】
また本試験例により、高分子ヒアルロン酸含有複合粒子と、ヒアルロン酸受容体発現促進剤を皮膚組織に適用することにより、皮膚組織の押し返し弾力を改善する美容方法が提供できることが明らかになった。
【0089】
本発明に係るヒアルロン酸受容体発現促進剤の処方例を、以下に示す。本処方例は、本分野において公知の方法で製造することができる。
なお、本処方例において、海藻エキス中は、フカスセラツスエキスを2質量%含む。
【0090】
本発明によれば、人体に対して安全で、皮膚組織におけるヒアルロン酸受容体の発現促進効果が高い、ヒアルロン酸受容体発現促進剤及び皮膚外用剤又は皮膚外用剤セットを提供することができる。
また本発明によれば、皮膚組織における高分子ヒアルロン酸の保持効率向上方法を提供することができる。