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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059355
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】内燃機関用ピストン
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20230420BHJP
   F16J 1/04 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
F02F3/00 M
F16J1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169307
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】西本 裕昭
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA12
3J044BC04
3J044CA14
3J044DA09
(57)【要約】
【課題】スカート部の外周面とシリンダの内周面との間に油膜圧力を確実に安定して形成することにより、ピストンとシリンダとの摩擦の低減を図る。
【解決手段】スカート部16の外周面1602に複数の凹部18が形成されている。複数の凹部18は、ピストン10の摺動方向および摺動方向と交差する外周面1602の周方向において、千鳥状に配置されることで構成されるとともに、複数の凹部18は、複数の摺動方向列22および複数の周方向列24を構成している。複数の摺動方向列22のうち隣接する一対の摺動方向列22を構成する複数の凹部18の各々は、摺動方向において互いに重複しない箇所に設けられている。複数の周方向列24のうち隣接する一対の周方向列24を構成する複数の凹部18の各々は、周方向において互いに重複しない箇所に設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンのスカート部の外周面に複数の凹部が設けられたピストンの潤滑構造であって、
前記複数の凹部は、前記ピストンの摺動方向および前記摺動方向と交差する前記外周面の周方向において、千鳥状に配置されるとともに、複数の摺動方向列および複数の周方向列を構成し、
前記複数の摺動方向列のうち隣接する一対の摺動方向列を構成する前記複数の凹部の各々は、前記摺動方向において互いに重複しない箇所に設けられ、
前記複数の周方向列のうち隣接する一対の周方向列を構成する前記複数の凹部の各々は、前記周方向において互いに重複しない箇所に設けられている、
ことを特徴とする内燃機関用ピストン。
【請求項2】
前記複数の凹部は、前記周方向に細長の紡錘形状を呈している、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項3】
前記複数の凹部は、前記外周面の全域に設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項4】
前記周方向列を構成する各凹部は、周方向において同一円周上に配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項5】
前記摺動方向において隣り合う2つの前記周方向列をそれぞれ構成する前記凹部間の摺動方向の距離は、100μm以上2000μm以下であり、
前記周方向列において隣り合う2つの前記摺動方向列をそれぞれ構成する前記凹部間の周方向の距離は、125μm以上750μm以下である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項6】
前記複数の凹部は、前記周方向における長さが100μm以上600μm以下であり、前記摺動方向における幅が40μm以上250μm以下であり、深さが5μm以上35μm以下である、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の内燃機関用ピストン。
【請求項7】
前記外周面の面積に対する、前記複数の凹部が形成された領域の面積率は、5%以上40%以下である、
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項記載の内燃機関用ピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用ピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、シリンダ内におけるピストンの往復運動を回転運動に変換して駆動力を発生する。
このような内燃機関では、ピストンのスカート部の外周面とシリンダの内周面との間に潤滑油の油膜を確実に形成し、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成することが、ピストンとシリンダとの摩擦の低減を図り、内燃機関の効率の向上を図る上で重要となる。
特許文献1には、スカート部の外周面に複数の凹部を設け、凹部に一時的に貯留した潤滑油によってスカート部の外周面とシリンダの内周面との間に油膜を形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-275002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、単に複数の凹部を設けることに留まっており、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間に発生する油膜圧力を確実に安定して形成する上で改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間に油膜圧力を確実に安定して形成することにより、ピストンとシリンダとの摩擦の低減を図り、内燃機関の効率の向上を図る上で有利なピストンの潤滑構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の一実施形態は、ピストンのスカート部の外周面に複数の凹部が設けられたピストンの潤滑構造であって、前記複数の凹部は、前記ピストンの摺動方向および前記摺動方向と交差する前記外周面の周方向において、千鳥状に配置されるとともに、複数の摺動方向列および複数の周方向列を構成し、前記複数の摺動方向列のうち隣接する一対の摺動方向列を構成する前記複数の凹部の各々は、前記摺動方向において互いに重複しない箇所に設けられ、前記複数の周方向列のうち隣接する一対の周方向列を構成する前記複数の凹部の各々は、前記周方向において互いに重複しない箇所に設けられていることを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記複数の凹部は、前記周方向に細長の紡錘形状を呈していることを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記複数の凹部は、前記外周面の全域に設けられていることを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記周方向列を構成する各凹部は、周方向において同一円周上に配置されていることを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記摺動方向において隣り合う2つの前記周方向列をそれぞれ構成する前記凹部間の摺動方向の距離は、100μm以上2000μm以下であり、前記周方向列において隣り合う2つの前記摺動方向列をそれぞれ構成する前記凹部間の周方向の距離は、125μm以上750μm以下であることを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記複数の凹部は、前記周方向における長さが100μm以上600μm以下であり、前記摺動方向における幅が40μm以上250μm以下であり、深さが5μm以上35μm以下であることを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記外周面の面積に対する、前記複数の凹部が形成された領域の面積率は、5%以上40%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実にかつ安定して形成する上で有利となり、ピストンとシリンダとが固体接触することを防止して、ピストンとシリンダとの摩擦の低減を図り、内燃機関の効率の向上を図る上で有利となる。
また、複数の凹部が、周方向に細長の紡錘形状を呈していると、潤滑油の凹部への導入および潤滑油の凹部からの供給を円滑に行なう上で有利となり、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でより有利となる。
また、複数の凹部を、ピストンのスカート部の外周面の全域に設けると、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でさらに有利となり、ピストンとシリンダとの摩擦の低減を図り、内燃機関の効率の向上を図る上でより有利となる。
また、周方向列を構成する各凹部が、周方向において同一円周上に配置されていると、スカート部の外周面に複数の凹部を形成する加工を簡単に行なう上で有利となる。
また、摺動方向において隣り合う2つの前記周方向列をそれぞれ構成する凹部間の摺動方向の距離を、100μm以上2000μm以下とし、周方向列において隣り合う2つの前記摺動方向列をそれぞれ構成する凹部間の周方向の距離を、125μm以上750μm以下とすると、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でより有利となる。
また、複数の凹部を、周方向における長さが100μm以上600μm以下とし、摺動方向における幅が40μm以上250μm以下とし、深さが5μm以上35μm以下とすると、潤滑油の凹部への導入および潤滑油の凹部からの供給を円滑に行なう上でより有利となり、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でより有利となる。
また、外周面の面積に対する、複数の凹部が形成された領域の面積率を、5%以上40%以下とすると、スカート部の外周面とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係るピストンの側面図である。
図2】本実施の形態に係るピストンのスカート部の外周面の拡大図である。
図3】(A)は第1比較例を示す説明図、(B)は第2比較例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、ピストン10は、その頂面1204と不図示のエンジンのシリンダとの間に燃焼室を形成し、燃焼室内で発生する燃料の爆発燃焼によって往復運動するものであり、その往復運動がコンロッド、クランクシャフトを介して回転運動に変換され駆動力が発生される。
ピストン10は、ピストンヘッド部12と、一対のサイドウォール部14と、一対のスカート部16とを含んで構成されている。
ピストンヘッド部12は、不図示のシリンダの内周面に対向する円筒面状の外周面1202と、外周面1202の上端全周を接続する頂面1204とを有している。
外周面1202は、ピストン10の中心軸方向に間隔をおいて複数のリング溝1206が形成されている。本実施の形態では、3つのリング溝1206が形成され、これらリング溝1206には、不図示のピストンリングが嵌合される。
【0009】
サイドウォール部14は、ピストンヘッド部12の直径方向において対向するピストンヘッド部12の下部の箇所からそれぞれ下方に垂設され、ピストンヘッド部12の下方に一対設けられている。
サイドウォール部14は、ピストンヘッド部12の外周面1202よりも半径方向内側に偏位した箇所に位置し、不図示ではあるが一対のサイドウォール部14にはそれぞれピン孔が設けられ、それらピン孔にピストンピンを介してコンロッドが連結される。
【0010】
スカート部16は、不図示のピストンピンの軸心と直交する方向において、ピストンヘッド部12の下部の箇所からそれぞれ下方に垂設され、一対のサイドウォール部14を接続している。
スカート部16の外周面1602は、ピストン10の往復運動に伴いシリンダの内周面と摺動してピストン10の往復運動を案内する箇所である。
【0011】
図1図2に示すように、スカート部16の外周面1602に複数の凹部18が形成されている。
それら凹部18は、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間に供給される潤滑油を一時的に貯留し、それら外周面1602と内周面との間に潤滑油を供給してそれら外周面1602と内周面との間に油膜圧力を形成するものである。
複数の凹部18は、ピストン10の摺動方向および摺動方向と交差する外周面1602の周方向において、千鳥状に配置されることで構成されるとともに、複数の凹部18は、複数の摺動方向列22および複数の周方向列24を構成している。
各摺動方向列22は、複数の凹部18がピストン10の摺動方向に直線上に並べられることで構成され、各摺動方向列22は、外周面1602の周方向において互いに平行している。
各周方向列24は、複数の凹部18が周方向において同一円周上に位置するように配置されることで構成され、各周方向列24は摺動方向に間隔をおいて設けられている。
複数の摺動方向列22のうち隣接する一対の摺動方向列22を構成する複数の凹部18の各々は、摺動方向において互いに重複しない箇所に設けられている。言い換えると、複数の摺動方向列22のうち隣接する一対の摺動方向列22を構成する複数の凹部18の各々は、周方向において互いに一致しない箇所に設けられている。
複数の周方向列24のうち隣接する一対の周方向列24を構成する複数の凹部18の各々は、周方向において互いに重複しない箇所に設けられている。言い換えると、複数の周方向列24のうち隣接する一対の周方向列24を構成する複数の凹部18の各々は、摺動方向において互いに一致しない箇所に設けられている。
本実施の形態では、複数の凹部18は、外周面1602の全域に設けられている。
本実施の形態では、摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18間の摺動方向の距離(短手ピッチ)Aは均一であり、この距離(短手ピッチ)Aは、100μm以上2000μm以下に形成されている。
また、本実施の形態では、周方向列24において隣り合う2つの凹部18間の周方向の距離(長手ピッチ)Bは均一であり、この距離(長手ピッチ)Bは、125μm以上750μm以下に形成されている。
なお、図2に示すように、本明細書において、短手ピッチAは、摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18の摺動方向における幅Wの中央位置の間の距離であり、長手ピッチBは、上記2つの凹部18の周方向における長さLの中央位置の間の距離であるものとする。
【0012】
また、本実施の形態では、複数の凹部18は、周方向に細長の紡錘形状を呈している。
また、本実施の形態では、複数の凹部18は、周方向における長さLが100μm以上600μm以下であり、摺動方向における幅Wが40μm以上250μm以下に形成されている。
また、凹部18の深さは、凹部18の中心部が最も深く、中心部の深さdが5μm以上35μm以下で形成されている。
このようなスカート部16の外周面1602への凹部18の形成は、刃物による切削加工、サンドブラスト加工、レーザー加工など従来公知の様々な加工方法によってなされる。
【0013】
また、本実施の形態では、スカート部16の外周面1602の面積をS1とし、複数の凹部18が形成された領域の面積をS2としたとき、複数の凹部18が形成された領域の面積率はS2/S1で定義され、この面積率S2/S1は、5%以上40%以下とされている。
【0014】
次に作用効果について図2を参照して説明する。
ピストン10の往復運動に伴いスカート部16の外周面1602がシリンダの内周面と摺動する。
この際、不図示のオイル供給路からシリンダの内周面に供給された潤滑油は、スカート部16の外周面1602がシリンダの内周面と摺動することにより、スカート部16の凹部18に導入され凹部18に一時的に貯留される。
そして、スカート部16の外周面1602がシリンダの内周面と摺動することに伴い、凹部18に貯留されていた潤滑油が凹部18からシリンダの内周面とスカート部16の外周面1602との間に供給される。
この場合、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で、図2に想像線で示すように、各摺動方向列22において摺動方向に隣り合う凹部18間の帯状の領域に、凹部18から供給された潤滑油によって発生する油膜圧力を保持する油膜圧力保持部26が形成される。
油膜圧力保持部26は、周方向に沿った寸法の幅Xと、ピストン10の摺動方向に沿った長さYとを有している。
油膜圧力保持部26の幅Xは、凹部18の長さLに対応しており、油膜圧力保持部26の長さYは、摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18の縁部間(凹部18の下縁と凹部の上縁との間)の摺動方向の距離に対応している。したがって、油膜圧力保持部26の長さYは、上述した短手ピッチAよりも凹部18の摺動方向における幅W分小さい値となる。
【0015】
ここで、図3を参照して比較例1、2と比較しつつ説明する。
図3(A)は、本実施の形態において隣接する一対の摺動方向列22を一列の摺動方向列22に変更し、この摺動方向列22を周方向に並べた第1比較例を示し、第1比較例に設けられる凹部18の数と、本実施の形態の凹部18の数とは同一である。
図3(B)は、本実施の形態において複数の凹部18を千鳥状ではなく格子状に並べた第2比較例を示し、したがって、第2比較例では、摺動方向列22を構成する各凹部18が周方向に同一円周上に並べられ、第2比較例に設けられる凹部18の数と、本実施の形態の凹部18の数とは同一である。
図3(A)、(B)において、本実施の形態と、凹部18の長さL、幅W、深さdは同一寸法としている。
【0016】
図3(A)の第1比較例では、摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18間の摺動方向の距離(短手ピッチ)Aが小さくなり、油膜圧力保持部26の長さYが小さくなり、油膜圧力保持部26の面積が小さくなる。
油膜圧力保持部26の面積が小さくなると、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間に形成された油膜が摺動方向で隣り合う凹部18に逃げてしまうため、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間に発生する油膜圧力を確実に形成する効果を得る上で不利となる。
これに対して本実施の形態では、図2に示すように、複数の凹部18は、ピストン10の摺動方向および摺動方向と交差する外周面1602の周方向において、千鳥状に配置されることで構成されているので、第1比較例に比べて摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18間の摺動方向の距離(短手ピッチ)Aを大きく確保でき、油膜圧力保持部26の長さYを大きく確保できるため、油膜圧力保持部26の面積を大きく確保できる。
油膜圧力保持部26の面積を大きく確保できると、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間に形成された油膜が摺動方向で隣り合う凹部18に逃げることが抑制されるため、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間に発生する油膜圧力を確実に形成する上で有利となる。
【0017】
図3(B)の第2比較例では、各摺動方向列22を構成する凹部18が周方向において同一円周上に位置するよう並べられているため、例えば、図3(B)に破線Cで示すように、摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18間の摺動方向の距離(短手ピッチ)Aの1/2の寸法の範囲で、外周面1602を周方向に延在する領域Dで分割した場合、領域Dに含まれる凹部18の数が4つの場合とゼロの場合とに分かれる。
したがって、スカート部16の周方向における油膜圧力が摺動方向においてばらつく不具合がある。
これに対して本実施の形態では、図2に示すように、複数の凹部18は、ピストン10の摺動方向および摺動方向と交差する外周面1602の周方向において、千鳥状に配置されることで構成されているので、例えば、図2に破線Cで示すように、摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18間の摺動方向の距離(短手ピッチ)Aの1/2の寸法の範囲で、外周面1602を周方向に延在する領域Dで分割した場合、領域Dに含まれる凹部18の数は全て2つとなる。
したがって、第2比較例に比べて、スカート部16の周方向における油膜圧力が摺動方向においてばらつく不具合を解消でき、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を安定して形成する上で有利となる。
【0018】
したがって、本実施の形態によれば、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実にかつ安定して形成する上で有利となり、ピストン10とシリンダとが固体接触することを防止して、ピストン10とシリンダとの摩擦の低減を図り、内燃機関の効率の向上を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、複数の凹部18を、ピストン10のスカート部16の外周面1602の全域に設けたので、油膜圧力保持部26の面積を大きく確保する上でより有利となることから、油膜圧力を確実に形成する上でより有利となり、ピストン10とシリンダとの摩擦の低減を図り、内燃機関の効率の向上を図る上でより有利となる。
【0019】
また、周方向列24を構成する各凹部18が、周方向において同一円周上に配置されているので、スカート部16の外周面1602に凹部18を形成する加工を簡単に行なう上で有利となる。
【0020】
また、本実施の形態では、摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18間の摺動方向の距離(短手ピッチ)Aを100μm以上2000μm以下に形成し、周方向列24において隣り合う2つの凹部18間の周方向の距離(長手ピッチ)Bを125μm以上750μm以下に形成したので、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でより有利となる。
すなわち、距離(短手ピッチ)Aを、100μm以上2000μm以下とし、距離(長手ピッチ)Bを、125μm以上750μm以下とした場合に、比較例1、2に比べてより高い油膜圧力が確保されたことが確認された。
また、距離(短手ピッチ)Aを、300μm以上1900μm以下とし、距離(長手ピッチ)Bを、500μm以上750μm以下とした場合に、比較例1、2に比べてさらに高い油膜圧力が確保されたことが確認された。
【0021】
また、本実施の形態では、凹部18は、周方向に細長の紡錘形状を呈しているので、潤滑油の凹部18への導入および潤滑油の凹部18からの供給を円滑に行なう上で有利となり、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でより有利となる。
【0022】
また、本実施の形態では、凹部18は、周方向における長さLを、100μm以上600μm以下とし、摺動方向における幅Wを、40μm以上250μm以下とし、深さdを、5μm以上35μm以下としたので、潤滑油の凹部18への導入および潤滑油の凹部18からの供給を円滑に行なう上でより有利となり、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でより有利となる。
なお、長さLを、400μm以上600μm以下とし、幅Wを、130μm以上200μm以下とし、深さdを、5μm以上15μm以下とした場合、潤滑油の凹部18への導入および潤滑油の凹部18からの供給を円滑に行なう上でさらに有利となり、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でさらに有利となる。
【0023】
また、本実施の形態では、スカート部16の外周面1602の面積をS1とし、複数の凹部18が形成された領域の面積をS2としたとき、複数の凹部18が形成された領域の面積率S2/S1を、5%以上40%以下としたので、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でより有利となる。
なお、面積率S2/S1を、5%以上20%以下とした場合、スカート部16の外周面1602とシリンダの内周面との間で発生する油膜圧力を確実に形成する上でさらに有利となる。
【符号の説明】
【0024】
10 ピストン
12 ピストンヘッド部
1202 外周面
1204 頂面
1206 リング溝
14 サイドウォール部
16 スカート部
1602 外周面
18 凹部
22 摺動方向列
24 周方向列
26 油膜圧力保持部
L 凹部18の周方向における長さ
W 凹部18の摺動方向における幅
A 摺動方向において隣り合う2つの周方向列24をそれぞれ構成する2つの凹部18間の摺動方向の距離(短手ピッチ)であり、2つの凹部18の摺動方向における幅Wの中央位置の間の距離
B 周方向列24において隣り合う2つの凹部18間の周方向の距離(長手ピッチ)であり、2つの凹部18の周方向における長さLの中央位置の間の距離
図1
図2
図3