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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059373
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】建具枠及び建具枠の取付方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20230420BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
E06B1/56 Z
E05D15/06 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169338
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木谷 友美子
(72)【発明者】
【氏名】菊野 亘
(72)【発明者】
【氏名】飯野 肇
【テーマコード(参考)】
2E011
2E034
【Fターム(参考)】
2E011JA02
2E011KB03
2E011KC02
2E011KC04
2E011KD14
2E034CA04
(57)【要約】
【課題】縦枠と上枠とを別々に且つ容易に躯体に固定できる建具枠及び建具枠の取付方法を提供する。
【解決手段】建具枠は、建物の躯体に設けた開口部に取り付けられる建具枠であって、前記躯体に第1固定具で固定される左右の縦枠と、前記躯体に第2固定具で固定され、前記左右の縦枠の間に設けられる上枠と、を備え、前記縦枠は、見込み方向における見込み面の一方側から内周側に延出する第1見付け部を有し、前記上枠は、見込み方向で一方側の第1見付け面が前記縦枠の前記第1見付け部に当接する。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体に設けた開口部に取り付けられる建具枠であって、
前記躯体に第1固定具で固定される左右の縦枠と、
前記躯体に第2固定具で固定され、前記左右の縦枠の間に設けられる上枠と、
を備え、
前記縦枠は、見込み方向における見込み面の一方側から内周側に延出する第1見付け部を有し、
前記上枠は、見込み方向で一方側の第1見付け面が前記縦枠の前記第1見付け部に当接する
ことを特徴とする建具枠。
【請求項2】
請求項1に記載の建具枠であって、
前記縦枠は、前記見込み面と、前記第1見付け部と、見込み方向における前記見込み面の他方から内周側に延出する第2見付け部とで形成される溝部を有し、
前記第2見付け部の上端部には切欠部が設けられ、
前記上枠は、長手方向の両端に前記溝部に納まる突出部を有し、
前記突出部が前記溝部に納められた状態で該突出部の見込み方向で一方側の第1見付け面が前記縦枠の前記第1見付け部に当接する
ことを特徴とする建具枠。
【請求項3】
請求項2に記載の建具枠であって、
前記上枠は、前記突出部が前記溝部に納められた状態で該突出部の見込み方向で他方側の第2見付け面が前記切欠部に配置されることで、前記縦枠の前記第2見付け部を補完する
ことを特徴とする建具枠。
【請求項4】
請求項3に記載の建具枠であって、
前記縦枠の前記第2見付け部は、前記溝部の側壁となる第1部分と、前記第1部分から見込み方向で前記溝部から離間する第1方向に向かって突出し、該縦枠の見込み面を形成する第2部分と、を有し、
前記上枠は、前記第2見付け面における前記突出部の先端面よりも後退した位置から前記第1方向に突出し、該上枠の見込み面を形成する見込み部を有し、
前記見込み部は、前記第2部分と直交配置されると共に、該第2部分との間にコーナー部を形成する
ことを特徴とする建具枠。
【請求項5】
請求項2に記載の建具枠であって、
前記上枠は、
当該建具枠に支持される障子をスライド可能にガイドするためのガイドレール部と、
前記ガイドレール部の見込み方向で一方側の見付け面に着脱可能に装着され、前記突出部が前記溝部に納められた状態で前記縦枠の見込み面に突き合う第1アタッチメントと、
前記ガイドレール部の見込み方向で他方側の見付け面に着脱可能に装着され、前記突出部が前記溝部に納められた状態で前記縦枠の見込み面に突き合う第2アタッチメントと、
を有し、
前記突出部は、前記ガイドレール部及び前記第2アタッチメントで構成され、
前記突出部が前記溝部に納められた状態で、前記第2アタッチメントの一部が前記切欠部に配置されて前記縦枠の前記第2見付け部を補完する
ことを特徴とする建具枠。
【請求項6】
建物の躯体に設けた開口部に対する建具枠の取付方法であって、
前記建具枠として、
見込み面に溝部が設けられ、見込み方向で一対設けられた前記溝部の側壁のうちの一方を形成する第1見付け部と、他方を形成する第2見付け部とを有する左右の縦枠と、
前記溝部に納まる突出部を長手方向の両端に有する上枠と、
を用い、
前記左右の縦枠を前記開口部に固定する第1工程と、
前記第1工程の後、前記縦枠の前記第2見付け部の上端部に形成された切欠部に対して、前記上枠を見込み方向に通過させる第2工程と、
前記第2工程の後、前記突出部の前記見込み方向への移動方向で先頭側の見付け面を前記第1見付け部に当接させることで、前記上枠を前記縦枠に対して見込み方向に位置決めする第3工程と、
前記第3工程の後、前記上枠を前記開口部に固定する第4工程と、
を有することを特徴とする建具枠の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具枠及び建具枠の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内等に施工される建具枠は、通常、縦枠と上枠とをねじ止めで枠組みした後、躯体の開口部に固定される。このような建具枠は、大きいものでは幅4m以上もあるため、枠組みした状態での取り扱いは容易でない場合もある。そこで、縦枠と上枠とを別々に開口部に固定する方法もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4708551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建具枠には、縦枠の見込み面に凹状の溝部がある場合がある。この場合、上枠は、縦枠の溝部に挿入された納まりとなるため、縦枠と上枠とを別々に開口部に固定することは容易ではない。例えば縦枠を先に躯体に固定してから上枠を固定しようとすると、上枠が縦枠に干渉するため組付自体が難しく、無理に組付けると枠材が損傷する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、縦枠と上枠とを別々に且つ容易に躯体に固定できる建具枠及び建具枠の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る建具枠は、建物の躯体に設けた開口部に取り付けられる建具枠であって、前記躯体に第1固定具で固定される左右の縦枠と、前記躯体に第2固定具で固定され、前記左右の縦枠の間に設けられる上枠と、を備え、前記縦枠は、見込み方向における見込み面の一方側から内周側に延出する第1見付け部を有し、前記上枠は、見込み方向で一方側の第1見付け面が前記縦枠の前記第1見付け部に当接する。
【0007】
本発明の第2態様に係る建具枠の取付方法は、建物の躯体に設けた開口部に対する建具枠の取付方法であって、前記建具枠として、見込み面に溝部が設けられ、見込み方向で一対設けられた前記溝部の側壁のうちの一方を形成する第1見付け部と、他方を形成する第2見付け部とを有する左右の縦枠と、前記溝部に納まる突出部を長手方向の両端に有する上枠と、を用い、前記左右の縦枠を前記開口部に固定する第1工程と、前記第1工程の後、前記縦枠の前記第2見付け部の上端部に形成された切欠部に対して、前記上枠を見込み方向に通過させる第2工程と、前記第2工程の後、前記突出部の前記見込み方向への移動方向で先頭側の見付け面を前記第1見付け部に当接させることで、前記上枠を前記縦枠に対して見込み方向に位置決めする第3工程と、前記第3工程の後、前記上枠を前記開口部に固定する第4工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、縦枠と上枠とを別々に且つ容易に躯体に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る建具枠の姿図である。
図2図1に示す建具枠の縦断面図である。
図3図1に示す建具枠の横断面図である。
図4A】左右の縦枠間に上枠を取り付ける動作を上から見下ろした状態での分解斜視図である。
図4B図4Aに示す左右の縦枠間に上枠を取り付けた状態での斜視図である。
図5A】左右の縦枠間に上枠を取り付ける動作を下から見上げた状態での分解斜視図である。
図5B図5Aに示す左右の縦枠間に上枠を取り付けた状態での斜視図である。
図6A】縦枠の切欠部を通して上枠を取り付ける動作を示す要部拡大平面図である。
図6B図6Aに示す状態から上枠を縦枠に突き当てた状態での平面図である。
図7A】縦枠の切欠部を通して上枠を取り付ける動作を示す要部拡大側面断面図である。
図7B図7Aに示す状態から上枠を縦枠に突き当てた状態での側面断面図である。
図8】建具枠の取付方法の手順を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る建具枠の縦断面図である。
図10図9に示す建具枠の横断面図である。
図11A図9に示す建具枠の縦枠間に上枠を取り付ける動作を示す要部拡大平面図である。
図11B図11Aに示す状態から上枠を縦枠に突き当てた状態での平面図である。
図12A図9に示す建具枠の縦枠間に上枠を取り付ける動作を示す要部拡大側面断面図である。
図12B図12Aに示す状態から上枠を縦枠に突き当てた状態での側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る建具枠及びその取付方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1図3に示すように、第1実施形態に係る建具枠10は、建物11の躯体12の開口部12aに固定され、内側に障子14をX方向にスライド可能に支持するものである。建具枠10は、例えば建物11内で部屋(A室)と部屋(B室)の間を仕切る建具として用いられる。建具枠10は、部屋と廊下の間を仕切る建具として用いてもよい。躯体12は、例えば柱や壁である。本実施形態では、1枚の障子14を支持する片引き戸の建具を例示しているが、建具枠10は2枚の障子をスライド可能に支持する引き違いの建具等としてもよい。
【0012】
建具枠10は、左右の縦枠16L,16R(以下、まとめて「縦枠16」と呼ぶこともある。)と、上枠17と、下枠18とを有する。各枠16~18は、例えばアルミニウム合金の押出形材である。本実施形態の建具枠10は、各枠16~18がそれぞれ別々に躯体12に固定される。このため、建具枠10は、躯体12に固定する前は各枠16~18が個別の部品として建物11に搬入される。
【0013】
本出願において、見込み方向とは建具枠10の奥行方向、つまりA室からB室に向かう方向又はその逆方向(図中に矢印Zで示す方向)をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺な縦枠16L等の場合はその長手方向に直交する左右方向(図中に矢印Xで示す方向)をいい、左右方向に長尺な上枠17等の場合はその長手方向に直交する上下方向(図中に矢印Yで示す方向)をいう。見付け面とは見付け方向に沿った面をいう。建具枠10の内側(内周)とは、建具枠10の枠内部分をいう。建具枠10の外側(外周)とは、建具枠10の建物躯体に固定される枠外部分をいう。
【0014】
図3図5Bに示すように、縦枠16L,16Rは、それぞれ溝部20と、第1見付け部21と、第2見付け部22とを有する。なお、本実施形態の縦枠16L,16Rは、同一の形材を左右対称に配置すればよいため、以下では縦枠16L,16Rの構成要素について同一の参照符号を付して重複する説明を省略するものとし、後述する縦枠54L,54Rについても同様とする。
【0015】
溝部20は、縦枠16の見込み面の長手方向で全長に亘って延在する幅広な凹状の縦溝である。溝部20は、障子14が全閉又は全開された際、障子14と縦枠16との間の隙間を埋めるための戸じゃくりである。図3に示す構成例では、縦枠16Lの溝部20は全開位置とされた障子14の戸尻が収納され、縦枠16Rの溝部20は全閉位置とされた障子14の戸先が収納される。溝部20の底面20aの見込み方向略中央には、一段凹んだ幅狭なポケット部20bが形成されている。ポケット部20bは、障子14の戸尻又は戸先の見込み面が当接する戸当たり材24の装着部である(図3参照)。
【0016】
第1見付け部21は、見込み方向における見込み面の一方側から内周側に延出しており、見込み方向で一対設けられた溝部20の側壁の一方(本実施形態ではB室側の見付け面)を形成する。本実施形態の縦枠16は、数字の1に似た断面形状の中空部を有する。第1見付け部21は、この縦枠16の中空部の壁板で構成されている。第1見付け部21は、ヒレ状の板片等で構成されてもよい。
【0017】
第2見付け部22は、見込み方向で一対設けられた溝部20の側壁の他方(本実施形態ではA室側の見付け面)を形成する。第2見付け部22は、縦枠16の中空部から突出した板片であり、断面略L字状を成している。
【0018】
第2見付け部22は、第1部分22aと、第2部分22bとを有する。第1部分22aは、溝部20の側壁(見付け面)を形成する部分である。第2部分22bは、第1部分22aの端部から見込み方向で溝部20から離間する方向(B室からA室に向かう方向)に突出している。第2部分22bは、溝部20よりもA室側の見込み面22cを形成する。第2見付け部22は、第1見付け部21と同様な中空部の壁板や直線状の板片等で構成されてもよい。
【0019】
図4A等に示すように、第2見付け部22の上端部には、切欠部26が形成されている。切欠部26は、第2見付け部22の部分22a,22bを上端面から所定範囲だけ切除したものである。これにより切欠部26は、溝部20のA室側の壁部を切り欠くことで、縦枠16のA室側からの正面視で溝部20の上部を露出させている。
【0020】
図2及び図4A図7Bに示すように、上枠17は、ガイドレール部28と、第1アタッチメント29と、第2アタッチメント30と、突出部32とを有する。ガイドレール部28及びアタッチメント29,30はそれぞれ押出形材である。
【0021】
ガイドレール部28は、障子14をスライド可能にガイドする部分である。ガイドレール部28は、障子14の上端面に取り付けられた上戸車33aが走行する下向きのレール28aを枠内側の見込み面に有する(図2参照)。
【0022】
第1アタッチメント29は、ガイドレール部28のB室側の見付け面(第1見付け面)28bに着脱可能に装着される。本実施形態の第1アタッチメント29は、矩形の中空部を有する角筒形状の部材である。第1アタッチメント29は、例えば見付け面から突出した爪がガイドレール部28の見付け面28bに形成された係合溝に係合することで、ガイドレール部28に着脱される。上枠17の突出部32が縦枠16の溝部20に収められた状態で、第1アタッチメント29は、その端面が縦枠16の溝部20よりもB室側の見込み面16aに突き合うように配置される。
【0023】
第2アタッチメント30は、ガイドレール部28のA室側の見付け面28cに着脱可能に装着される。本実施形態の第2アタッチメント30は、断面略L字状の板状の部材である。第2アタッチメント30は、見付け面28cに対向する見付け部30aと、見付け部30aの下端からA室側に屈曲した見込み部30bとを有する。見付け部30aは、第1アタッチメント29の場合と同一又は同様な着脱構造で上枠17の見付け面28cに装着される。見込み部30bは、上枠17のA室側の見込み面30cを形成する。
【0024】
上枠17は、アタッチメント29,30を用いた構造ではなく、ガイドレール部28及びアタッチメント29,30を一体に1つの形材で構成してもよいし、アタッチメント29,30の一方のみをガイドレール部28と一体に構成してもよい。なお、本実施形態のように、上枠17がアタッチメント構造であると、ガイドレール部28及びアタッチメント29,30のうちの1又は2の部品を共用しつつ、例えば引き違い構造等の構造の異なる各種仕様に対応でき、汎用性が高い。
【0025】
突出部32は、上枠17の左右両端にそれぞれ設けられている。突出部32は、上枠17の見込み方向で中央部を両側部よりも長手方向に突出させた部分であり、溝部20にほとんど隙間なく納まる。従って、突出部32の見込み幅は、溝部20の見込み幅と同一未満とされている。
【0026】
本実施形態の突出部32は、ガイドレール部28及び第2アタッチメント30の見付け部30aで構成されている(図4A参照)。つまり上枠17では、ガイドレール部28及び第2アタッチメント30の見付け部30aが、第1アタッチメント29及び第2アタッチメント30の見込み部30bよりも全長が長く構成されている。このため、第1アタッチメント29及び第2アタッチメント30の見込み部30bの端面は、突出部32の先端面よりも長手方向で後退した位置にある(図6A参照)。つまり第2アタッチメント30の見込み部30bは、上枠17のA室側見付け面を構成する見付け部30aの見付け面(第2見付け面)30dにおける突出部32の先端面よりも後退した位置からA室側に突出している。
【0027】
図7Aに示すように、上枠17は、見付け高さh1が切欠部26の高さh2と同一未満、好ましくはh1がh2よりもある程度小さく構成されている。これにより後述するように、上枠17は左右の縦枠16L,16Rの切欠部26を通して突出部32を溝部20に組み入れることができる。また上記したように、上枠17は、第2アタッチメント30の見込み部30bの端面が突出部32の端面よりも後退した位置にある。このため、突出部32が溝部20に納められた状態で、第2アタッチメント30の見付け部30aが切欠部26に配置され、縦枠16の第2見付け部22を補完する(図4B及び図5B参照)。
【0028】
図2に示すように、下枠18は、障子14をスライド可能にガイドするための部分である。下枠18は、障子14の下端面から一部が露出する下戸車33bが走行する上向きのレール18aを内側の見込み面に有する。下枠18は、左右の縦枠16L,16R間に配置される。下枠18は、A室の床34AとB室の床34Bとの間の隙間Gを跨ぐように配置され、中央部が隙間Gに挿入されて床下の下地材にねじ止めされる。例えば障子14が下戸車33bを持たない吊下げ戸等の場合、下枠18は省略してもよい。
【0029】
図3に示すように、本実施形態の建物11は、例えば全開位置の障子14を収納する袖壁36を有する。袖壁36の端部には中方立38が固定されている。中方立38は、上枠17等と同一素材の押出形材であり、例えば上枠17と下枠18のB室側の側部で起立している。中方立38は、障子14のB室側の表面に摺動し、障子14と袖壁36との間の隙間を塞ぐためのモヘア39の取付部となる。袖壁36及び中方立38は省略されてもよい。
【0030】
次に、躯体12に対する建具枠10の取付方法及びその作用効果を説明する。
【0031】
先ず、図8中のステップS1において、左右の縦枠16L,16Rを躯体12の開口部12aに挿入し、それぞれ第1固定具40で躯体12に固定する第1工程を行う(図3参照)。第1固定具40は、例えばねじである。
【0032】
次に、図8中のステップS2において、左右の縦枠16L,16Rの切欠部26に対して、上枠17を見込み方向でA室側からB室側へと通過させる第2工程を行う(図4A図5A図6A及び図7A参照)。この際、建具枠10では、上枠17の見付け高さh1が切欠部26の高さh2と同一未満であるため、切欠部26に上枠17を円滑に通過させることができる。
【0033】
なお、上枠17の第2アタッチメント30は、見付け部30aに加えて見込み部30bも有するため、斜め姿勢で縦枠16L,16R間に挿入してから上方に持ち上げる場合、どうしても見込み部30bが縦枠16の第2見付け部22(第2部分22b)に干渉する。この点、当該建具枠10は、正面から切欠部26を通して上枠17を縦枠16L,16R間に挿入できるため、作業が円滑であり、枠材の損傷も防止できる。
【0034】
続いて、図8中のステップS3において、突出部32の移動方向で先頭側(B室側)の見付け面28bを溝部20の第1見付け部21の見付け面に当接させることで、上枠17を左右の縦枠16L,16Rに対して見込み方向に位置決めする第3工程を実行する(図4B図5B図6B及び図7B参照)。このように建具枠10は、縦枠16に対する上枠17の挿入方向で手前側の第2見付け部22のみに切欠部26を設け、反対側の第1見付け部21には切欠部26を設けてない。このため、上枠17は、単に切欠部26を通過させてその見付け面28bを溝部20の第1見付け部21に突き当てるだけで、容易に縦枠16に対する見込み方向の位置決めができ、組付作業が容易である。なお、図6A図7Bは、縦枠16Rと上枠17との関係のみを図示しているが、縦枠16Lと上枠17との関係はこれら各図に示すものと左右対称である。
【0035】
最後に、図8中のステップS4において、上枠17を第2固定具41で躯体12に固定する第4工程を行う(図2参照)。第2固定具41は、例えばねじである。
【0036】
以上により、建具枠10の躯体12に対する取付作業が完了する。このような取付方法によれば、縦枠16と上枠17とを個別に躯体12に固定する作業を容易に行うことができる。その結果、建具枠10は、例えば上枠17の長さが4m以上と大型である場合であっても、建物11内に容易に搬入でき、また各枠16~18が取付作業中に変形するような事態の発生も抑制できる。
【0037】
なお、下枠18は、例えば上枠17の取付工程(図8中のステップS2~S4)と前後して実行すればよい。下枠18は、左右の縦枠16L,16R間で上下方向で斜めに配置した後、ゆっくりと下すことで容易に設置できる。
【0038】
また、図2及び図3に示す構成例の場合は、躯体12や袖壁36に建具枠10を固定した後、その周囲に石膏ボード等の壁パネル42を適宜取り付ける作業も施工する。本実施形態の場合、壁パネル42は、上枠17に対しては、第1アタッチメント29のB室側の見付け面の大部分を覆い隠すように、また第2アタッチメント30のA室側に突出した見込み部30bの枠外側の見込み面の大部分を覆い隠すように取り付けられる。壁パネル42は、縦枠16Lに対しては、そのA室側に突出した第2部分22bの枠外側の見込み面の大部分を覆い隠すように取り付けられる。壁パネル42は、縦枠16Rに対しては、そのB室側の見付け面の大部分を覆い隠すように取り付けられ、さらにA室側に突出した第2部分22bの枠外側の見込み面の大部分を覆い隠すように取り付けられる。その結果、建具枠10は、A室側及びB室側から見た際、大部分が壁パネル42で覆い隠され、露出部分が極めて幅狭となり、高い外観品質が得られる。
【0039】
以上のように、本実施形態の建具枠10において、縦枠16L,16Rは、溝部20の側壁を形成する第2見付け部22の上端部に切欠部26を有し、上枠17は、突出部32が溝部20に納められた状態で突出部32の見込み方向で一方側の見付け面28bが縦枠16L,16Rの第1見付け部21に当接する。
【0040】
すなわち当該建具枠10はこのような構成を備えることで、縦枠16と上枠17とを別々に躯体12に固定する際、先に躯体12に固定した縦枠16の切欠部26を通して上枠17を容易に左右の縦枠16L,16R間に配設することができる。しかも上枠17は、突出部32が溝部20に納められた状態でその見付け面28bが縦枠16の第1見付け部21に当接するため、縦枠16に対する見込み方向での位置決めが容易である。つまり当該建具枠10は、縦枠16と上枠17との見込み方向での位置も容易に且つ精度よく揃えることができ、縦枠16と上枠17を個別固定とした構成でありながらも枠全体が見込み方向で略面一に配置され、高い外観品質が得られる。
【0041】
建具枠10において、上枠17は、突出部32が溝部20に納められた状態で、突出部32のA室側の見付け面30dが切欠部26に配置されることで、縦枠16の第2見付け部22を補完する。このため、図1図4B及び図5Bに示すように、建具枠10は、躯体12への組付後には切欠部26が上枠17の見付け面30dで覆われてほとんど目立たず、切欠部26によって外観品質が損なわれることもない。
【0042】
ところで、図1図4B及び図5Bに示すように、建具枠10において、上枠17の見込み部30bは、縦枠16の第2部分22bと直交配置されると共に、第2部分22bとの間にコーナー部Cを形成する。すなわち建具枠10は、A室側の見込み面22c,30cが僅かな隙間のみを介して円滑なコーナー部Cを形成する。このため、建具枠10は、枠内側やA室側から見た際の外観品質も確保できる。なお、コーナー部Cは、図1に示すように、樹脂製のコーナー部品44を装着し、保護してもよい。
【0043】
次に、図9図12Bを参照して第2実施形態に係る建具枠50について説明する。第2実施形態に係る建具枠50において、上記第1実施形態に係る建具枠10と同一又は同様な要素については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
図9及び図10に示すように、建具枠50は、躯体12の開口部12aに固定され、折戸で構成された障子14を折り畳み可能に支持するものである。建具枠50は、例えば建物11内で部屋(室内側)とクローゼット(収納内部)の間を仕切る建具として用いられる。建具枠50は、左右の縦枠54L,54R(以下、まとめて「縦枠54」と呼ぶこともある。)と、上枠55と、下枠56とを有する。各枠54~56は、例えばアルミニウム合金の押出形材である。
【0045】
縦枠54L,54Rは、それぞれ見込み面58と、見付け部(第1見付け部)59と、見込み片60とを有する。
【0046】
見込み面58は、障子14が全閉又は全開された際、障子14の戸先又は戸尻が対向する。見付け部59は、見込み方向で見込み面58の収納内部側から枠内側に突出した板片である。見込み片60は、見込み面58から室内側に突出した板片である。見込み片60は、障子14よりも室内側に位置する見込み面22cを形成する。見付け部59及び見込み片60は、図3に示す第1見付け部21と同様に、中空部の壁板等で構成されてもよい。図12A及び図12Bに示すように、見込み片60の上端部には、逃げ部60aが形成されている。逃げ部60aは、壁パネル42との干渉を防ぐための切欠きである。
【0047】
図10に示すように、本実施形態の縦枠54は、室内側から収納内部側に向かって見込み面22c,58が連続しているため、室内側からの正面視で見付け部59が露出している。
【0048】
上枠55は、上枠本体部62と、ガイドレール部28とを有する。上枠本体部62は、躯体12に第1固定具41で構成される。上枠本体部62は、見込み方向で室内側から収納内部側に向かって順に、見込み部30b(見込み面30c)と、レール保持部62aと、面形成部62bとを有する。
【0049】
レール保持部62aは、下向きの凹状に形成され、内側にガイドレール部28が装着される。ガイドレール部28はレール保持部62aに挿入された後、ねじ等の固定具64で躯体12に固定される。面形成部62bは、L字状に形成された板状の部分である。面形成部62bは、ガイドレール部28よりも収納内部側の見込み面62cと、収納内部側を向いた見付け面(第1見付け面)28bとを形成する。上枠55についても、図2に示す上枠17と同様なアタッチメント構造としてもよい。
【0050】
下枠56は、障子14をガイドするための部分である。下枠56は、障子14の下端面から一部が露出するガイドローラ33cが走行するレール56aを枠内側の見込み面に有する。下枠56は、床66上に固定される。
【0051】
次に、躯体12に対する建具枠50の取付方法及びその作用効果を説明する。本実施形態の取付方法も上記した第1実施形態の場合と略同様な手順で行われる。
【0052】
先ず、左右の縦枠54L,54Rを躯体12の開口部12aに挿入し、それぞれ第1固定具40で躯体12に固定する第1工程を行う(図11A参照)。次に、左右の縦枠54L,54R間に上枠55を見込み方向で室内側から収納内部側に向かって挿入する(図11A及び図12A参照)。続いて、上枠55の見付け面28bを左右の縦枠54L,54Rの第1見付け部21の見付け面に当接させることで、上枠55を左右の縦枠54L,54Rに対して見込み方向に位置決めする第3工程を実行する(図11B及び図12B参照)。
【0053】
このように建具枠50においても、上枠55は、左右の縦枠54L,54R間に挿入し、その見付け面28bを第1見付け部21に突き当てるだけで、容易に縦枠54に対する見込み方向の位置決めができ、組付作業が容易である。最後に、上枠155を第2固定具41で躯体12に固定し、さらにガイドレール部28を固定具64で躯体12に固定する第4工程を行う。
【0054】
以上により、建具枠50の躯体12に対する取付作業が完了する。当該取付方法によっても、縦枠54と上枠55とを個別に躯体12に固定する作業を容易に行うことができる。なお、下枠56は、例えば上枠55の取付工程と前後して床66に固定すればよい。
【0055】
このような建具枠50においても、上枠55の見込み部30bは、縦枠54の見込み片60と直交配置され、両者間にコーナー部Cを形成する。このため、建具枠50においても、枠内側や室内側から見た際の外観品質も確保できる。
【0056】
また、図9及び図10に示す構成例の場合も、躯体12に建具枠50を固定した後、その周囲に壁パネル42を適宜取り付ける作業も施工する。本実施形態の場合、壁パネル42は、上枠55に対しては、見込み部30bの枠外側見込み面に当接した状態で躯体12及びレール保持部62aを室内側から覆い隠すように取り付けられる。また、壁パネル42は、上枠55の見付け面28bの上部に突き当てるように取り付けられる。壁パネル42は、縦枠54に対しては、見込み片60の枠外側見込み面に当接した状態で躯体12及び縦枠54の中空部を室内側から覆い隠すように取り付けられる。また、壁パネル42は、縦枠54の見付け部59の枠外側見付け面に対して突き当てるように取り付けられる。その結果、建具枠50においても、室内側及び収納内部側から見た際、大部分が壁パネル42で覆い隠され、露出部分が極めて幅狭となり、高い外観品質が得られる。
【0057】
本発明の第1態様に係る建具枠は、建物の躯体に設けた開口部に取り付けられる建具枠であって、前記躯体に第1固定具で固定される左右の縦枠と、前記躯体に第2固定具で固定され、前記左右の縦枠の間に設けられる上枠と、を備え、前記縦枠は、見込み方向における見込み面の一方側から内周側に延出する第1見付け部を有し、前記上枠は、見込み方向で一方側の第1見付け面が前記縦枠の前記第1見付け部に当接する。このように当該建具枠は、上枠が見込み方向に位置決めされる第1見付け部を縦枠に設けたことで、縦枠と上枠とを躯体に対して別々に且つ容易に固定することが可能となる。
【0058】
前記縦枠は、前記見込み面と、前記第1見付け部と、見込み方向における前記見込み面の他方から内周側に延出する第2見付け部とで形成される溝部を有し、前記第2見付け部の上端部には切欠部が設けられ、前記上枠は、長手方向の両端に前記溝部に納まる突出部を有し、前記突出部が前記溝部に納められた状態で該突出部の見込み方向で一方側の第1見付け面が前記縦枠の前記第1見付け部に当接する構成としてもよい。そうすると、縦枠の溝部の第2見付け部の上端部に切欠部を設けたことで、上枠を左右の縦枠間に挿入する際、上枠を一層円滑に躯体に固定することができ、さらに各枠の干渉を抑制することができる。
【0059】
前記上枠は、前記突出部が前記溝部に納められた状態で該突出部の見込み方向で他方側の第2見付け面が前記切欠部に配置されることで、前記縦枠の前記第2見付け部を補完する構成としてもよい。そうすると、建具枠の躯体への固定後、切欠部が外観上で目立たつことが抑えられる。
【0060】
前記縦枠の前記第2見付け部は、前記溝部の側壁となる第1部分と、前記第1部分から見込み方向で前記溝部から離間する第1方向に向かって突出し、該縦枠の見込み面を形成する第2部分と、を有し、前記上枠は、前記第2見付け面における前記突出部の先端面よりも後退した位置から前記第1方向に突出し、該上枠の見込み面を形成する見込み部を有し、前記見込み部は、前記第2部分と直交配置されると共に、該第2部分との間にコーナー部を形成する構成としてもよい。そうすると、建具枠は、枠内側や正面側から見た際の外観品質が向上する。
【0061】
前記上枠は、当該建具枠に支持される障子をスライド可能にガイドするためのガイドレール部と、前記ガイドレール部の見込み方向で一方側の見付け面に着脱可能に装着され、前記突出部が前記溝部に納められた状態で前記縦枠の見込み面に突き合う第1アタッチメントと、前記ガイドレール部の見込み方向で他方側の見付け面に着脱可能に装着され、前記突出部が前記溝部に納められた状態で前記縦枠の見込み面に突き合うと共に、前記見込み部が設けられた第2アタッチメントと、を有し、前記突出部は、前記ガイドレール部及び前記第2アタッチメントで構成され、前記突出部が前記溝部に納められた状態で、前記第2アタッチメントの一部が前記切欠部に配置されて前記縦枠の前記第2見付け部を補完する構成としてもよい。そうすると、上枠が複数のアタッチメント部品で構成されることで高い汎用性が得られる。
【0062】
本発明の第2態様に係る建具枠の取付方法は、建物の躯体に設けた開口部に対する建具枠の取付方法であって、前記建具枠として、見込み面に溝部が設けられ、見込み方向で一対設けられた前記溝部の側壁のうちの一方を形成する第1見付け部と、他方を形成する第2見付け部とを有する左右の縦枠と、前記溝部に納まる突出部を長手方向の両端に有する上枠と、を用い、前記左右の縦枠を前記開口部に固定する第1工程と、前記第1工程の後、前記縦枠の前記第2見付け部の上端部に形成された切欠部に対して、前記上枠を見込み方向に通過させる第2工程と、前記第2工程の後、前記突出部の前記見込み方向への移動方向で先頭側の見付け面を前記第1見付け部に当接させることで、前記上枠を前記縦枠に対して見込み方向に位置決めする第3工程と、前記第3工程の後、前記上枠を前記開口部に固定する第4工程と、を有する。このような方法によれば、縦枠と上枠とを個別に躯体に固定する作業を容易に行うことができる。
【0063】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10,50 建具枠、12 躯体、14 障子、16L,16R,54L,54R 縦枠、17,55 上枠、20 溝部、21 第1見付け部、22 第2見付け部、22a 第1部分、22b 第2部分、26 切欠部、28 ガイドレール部、29 第1アタッチメント、30 第2アタッチメント、30a 見付け部、30b 見込み部、32 突出部、40 第1固定具、41 第2固定具、59 見付け部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B