(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059374
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】無人搬送車の駆動ユニットおよびこれを備える無人搬送車
(51)【国際特許分類】
B61B 10/04 20060101AFI20230420BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B61B10/04 K
B61B13/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169340
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】508079304
【氏名又は名称】愛知機械テクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】益山 信也
(72)【発明者】
【氏名】平林 大志
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BA01
3D101BB16
3D101BB36
3D101BB43
(57)【要約】
【課題】無人搬送車の走行制御の簡易性と無人搬送車のコンパクト化との両立を図ること。
【解決手段】駆動ユニット4は、差動歯車装置30と、ユニットケース32と、ラジアルベアリングRBと、スラストベアリングSBと、駆動輪22R,22Lと、モータ24と、ブレーキ50,50と、を備える。駆動輪22R,22Lは、差動歯車装置30を介してモータ24に接続される。これにより、モータ24が1つで良いため、省スペース化を図ることができ、無人搬送車1のコンパクト化を図ることができる。また、モータ24およびブレーキ50,50を駆動制御することによって、無人搬送車1を曲線走行させたり、スピーンターンさせたりすることができる。もとより、モータ24のみを駆動制御することによって、無人搬送車1を直進走行させることができる
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車を牽引可能な無人搬送車の車体に配置される無人搬送車の駆動ユニットであって、
デフケースと、第1軸線を有すると共に前記デフケースに一体にされたリングギヤと、前記第1軸線に直交する第2軸線を有すると共に該第2軸線を回転中心として回転可能なよう前記デフケースに支持された少なくとも1つのデフピニオンギヤと、前記第1軸線を回転中心として回転可能かつ前記デフピニオンギヤに噛合うよう前記デフケースに支持された一対のサイドギヤと、を有する差動歯車装置と、
前記第1軸線を回転中心として前記デフケースが回転可能なよう前記差動歯車装置を支持する第1支持部材と、
前記一対のサイドギヤの夫々に接続された一対の駆動輪と、
ドライブピニオンギヤが一体にされた出力軸を有し、該ドライブピニオンギヤが前記リングギヤに噛合うよう前記第1支持部材に支持されたモータと、
前記一対の駆動輪夫々の回転を独立して規制可能なよう前記第1支持部材および前記一対の駆動輪間に配置された一対のブレーキと、
前記一対の駆動輪間の中央を通ると共に鉛直方向に延在する第3軸線と同軸上に配置されると共に該第3軸線を回転中心として前記第1支持部材が前記車体に対して相対回転可能なよう該第1支持部材と前記車体とを連結する第2支持部材と、
を備える
無人搬送車の駆動ユニット。
【請求項2】
前記第1支持部材は、前記第3軸線と同軸上に配置された軸部を有しており、
前記第2支持部材は、ラジアルベアリングと、スラストベアリングと、を有しており、
前記ラジアルベアリングは、前記車体に固定される外輪と、前記軸部に嵌合される内輪と、前記外輪および前記内輪間に配置される第1転動体と、を有しており、
前記スラストベアリングは、前記外輪を載置可能な第1軌道盤と、前記第1支持部材に固定される第2軌道盤と、前記第1および第2軌道盤間に配置される第2転動体と、を有している
請求項1に記載の無人搬送車の駆動ユニット。
【請求項3】
前記一対のブレーキは、前記一対の駆動輪と一体回転する可動部と、該可動部へ摩擦接触する第1状態と前記可動部への摩擦接触が解除される第2状態との間で状態変更可能に前記第1支持部材に固定された固定部と、を有している
請求項1または2に記載の無人搬送車の駆動ユニット。
【請求項4】
前記ブレーキは、ドラムブレーキまたは電磁ブレーキである
請求項3に記載の無人搬送車の駆動ユニット。
【請求項5】
台車を牽引可能な無人搬送車であって、
車体と、
該車体に支持された請求項1ないし4のいずれか1項に記載の無人搬送車の駆動ユニットと、
前記モータおよび前記一対のブレーキを制御することによって前記無人搬送車の走行を制御する制御装置と、
を備える無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車を牽引可能な無人搬送車の車体に配置される無人搬送車の駆動ユニットおよびこれを備える無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-111348号公報(特許文献1)には、フレームと、一対の駆動輪と、当該一対の駆動輪の夫々に接続された出力軸を有する一対のモータと、当該一対のモータを支持するモータ支持部材と、当該モータ支持部材を介して一対のモータをフレームに対して揺動自在かつ回転自在に支持するセンタシャフトと、を備える無人搬送車の駆動ユニットが記載されている。
【0003】
当該無人搬送車の駆動ユニットは、各出力軸の回転方向や回転数を制御することによって、無人搬送車の走行制御、即ち、無人搬送車を直進走行させたり、曲線走行させたり、スピーンターンさせたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、工場や倉庫などスペースに制約がある場所においては、無人搬送車のコンパクト化に対する要望が高まっている。特に、台車の下側に入り込み、当該台車のフレームにフックを係合させることで、当該台車を牽引する無人搬送車では、台車の下側の限られたスペースに当該無人搬送車を配置可能なように、高さ方向のみならず車幅方向のサイズのコンパクト化が要求される。ここで、上述した公報に記載の無人搬送車の駆動ユニットは、モータを制御するのみであるため、無人搬送車の走行制御を簡易に実現できる一方で、各駆動輪夫々にモータが必要であるため、コンパクト化いう点において、なお改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、無人搬送車の走行制御の簡易性と無人搬送車のコンパクト化との両立に資する技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無人搬送車の駆動ユニットおよびこれを備える無人搬送車は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係る無人搬送車の駆動ユニットの好ましい形態によれば、台車を牽引可能な無人搬送車の車体に配置される無人搬送車の駆動ユニットが構成される。当該無人搬送車の駆動ユニットは、差動歯車装置と、第1支持部材と、一対の駆動輪と、モータと、一対のブレーキと、第2支持部材と、を備えている。差動歯車装置は、デフケースと、第1軸線を有すると共にデフケースに一体にされたリングギヤと、第1軸線に直交する第2軸線を有すると共に当該第2軸線を回転中心として回転可能なようにデフケースに支持された少なくとも1つのデフピニオンギヤと、第1軸線を回転中心として回転可能かつデフピニオンギヤに噛合うようにデフケースに支持された一対のサイドギヤと、を有している。第1支持部材は、第1軸線を回転中心としてデフケースが回転可能なように差動歯車装置を支持する。一対の駆動輪は、一対のサイドギヤの夫々に接続される。モータは、ドライブピニオンギヤが一体にされた出力軸を有している。また、モータは、ドライブピニオンギヤがリングギヤに噛合うように第1支持部材に支持される。一対のブレーキは、一対の駆動輪夫々の回転を独立して規制可能なように第1支持部材および一対の駆動輪間に配置される。そして、第2支持部材は、一対の駆動輪間の中央を通ると共に鉛直方向に延在する第3軸線と同軸上に配置されると共に当該第3軸線を回転中心として第1支持部材が車体に対して相対回転可能なように第1支持部材と車体とを連結する。ここで、本発明における「一対のサイドギヤの夫々に接続された」とは、一対の駆動輪が、一対のサイドギヤの夫々に直接的に接続される態様の他、間接的に接続される態様を好適に包含する。一対の駆動輪が、一対のサイドギヤの夫々に間接的に接続される態様としては、例えば、一対の駆動輪が、一対の車軸を介して一対のサイドギヤの夫々に接続される態様が考えられる。また、本発明における「ドライブピニオンギヤが一体にされた」とは、典型的には、ドライブピニオンギヤが出力軸に一体成形される態様や、ドライブピニオンギヤが圧入やボルトなどによって出力軸に一体にされる態様などがこれに該当するが、ドライブピニオンギヤが出力軸に間接的に一体にされる態様を好適に包含する。ドライブピニオンギヤが出力軸に間接的に一体にされる態様としては、例えば、ドライブピニオンギヤが当該ドライブピニオンギヤに一体にされたドライブピニオンギヤシャフトを介して出力軸に一体にされる態様などが考えられる
【0009】
本発明によれば、一対の駆動輪に対してモータが1つで良いため、少なくともモータ1つ分の省スペース化を図ることができる。これにより、無人搬送車のコンパクト化を図ることができる。また、一対のブレーキを制御することによって、一対の駆動輪に回転数差を与えることができるため、無人搬送車を曲線走行させたり、スピーンターンさせたりすることができる。もとより、モータの出力軸の回転方向や回転数を制御することによって、無人搬送車を前後に直進走行させることができると共に速度を変更することができる。このように、本発明によれば、無人搬送車の走行制御の簡易性と無人搬送車のコンパクト化との両立を図ることができる。
【0010】
本発明に係る無人搬送車の駆動ユニットの更なる形態によれば、第1支持部材は、第3軸線と同軸上に配置された軸部を有している。第2支持部材は、ラジアルベアリングと、スラストベアリングと、を有している。ラジアルベアリングは、車体に固定される外輪と、軸部に嵌合される内輪と、外輪および内輪間に配置される第1転動体と、を有している。そして、スラストベアリングは、外輪を載置可能な第1軌道盤と、第1支持部材に固定される第2軌道盤と、第1および第2軌道盤間に配置される第2転動体と、を有している。
【0011】
本形態によれば、第3軸線を回転中心として第1支持部材が車体に対して相対回転可能なように第1支持部材と車体とを連結する構成を簡易に実現することができる。また、無人搬送車が台車を牽引する際に、軸部に作用するラジアル方向の力をラジアルベアリングによって受けることができると共に、駆動輪の接地荷重を確保するために、無人搬送車が台車の重量の一部を負担する際に、駆動ユニットに作用するスラスト方向の力をスラストベアリングで受けることができる。
【0012】
本発明に係る無人搬送車の駆動ユニットの更なる形態によれば、一対のブレーキは、一対の駆動輪と一体回転する可動部と、当該可動部へ摩擦接触する第1状態と可動部への摩擦接触が解除される第2状態との間で状態変更可能に第1支持部材に固定された固定部と、を有している。ここで、ブレーキは、ドラムブレーキまたは電磁ブレーキとすることができる。
【0013】
本形態によれば、一対の駆動輪夫々の回転を独立して規制可能な構成を簡易に確保することができる。
【0014】
本発明に係る無人搬送車の好ましい形態によれば、台車を牽引可能な無人搬送車が構成される。当該無人搬送車は、車体と、当該車体に支持された上述したいずれかの態様の本発明に係る無人搬送車の駆動ユニットと、モータおよび一対のブレーキを制御することによって無人搬送車の走行を制御する制御装置と、を備えている。
【0015】
本発明によれば、本発明の無人搬送車の駆動ユニットが奏する効果と同様の効果、例えば、無人搬送車の走行制御の簡易性と無人搬送車のコンパクト化との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無人搬送車の走行制御の簡易性と無人搬送車のコンパクト化との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る駆動ユニット4を搭載した無人搬送車1の構成の概略を示す側面図である。
【
図4】
図3の矢印Z方向から見た矢視図に相当する一部断面図である。
【
図6】差動歯車装置30の構成の概略を示す説明図である。
【
図7】ブレーキ50の構成の概略を示す説明図である。
【
図9】変形例の駆動ユニット104を搭載した無人搬送車100の構成の概略を示す側面図である。
【
図10】変形例の駆動ユニット104の外観を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0019】
本実施の形態に係る無人搬送車1は、
図1に示すように、車体2と、当該車体2に支持された本実施の形態に係る駆動ユニット4と、車体2に旋回自在に支持された一対のキャスター6,6と、無人搬送車1全体をコントロールする制御装置10と、を備えている。本実施の形態に係る無人搬送車1は、
図1に示すように、台車90の下方に潜り込んだ状態で当該台車90を牽引する低床タイプとして構成されている。なお、無人搬送車1は、台車90に対して相対的な位置が固定された状態で当該台車90に連結される。説明の便宜上、以下では、
図1の左右方向を走行方向と規定する。特に、
図1の左側を前進走行方向、
図1の右側を後進走行方向とする。
【0020】
駆動ユニット4は、
図2ないし
図4に示すように、ギヤユニット20と、当該ギヤユニット20に接続された一対の駆動輪22R,22Lと、当該一対の駆動輪22R,22Lの回転を規制可能な一対のブレーキ50,50と(
図3および
図4のみに記載)、ギヤユニット20に接続されたモータ24と(
図2および
図4のみに記載)、ギヤユニット20を車体2に連結するラジアルベアリングRBおよびスラストベアリングSBと(
図3および
図4のみに記載)、を有している。
【0021】
ギヤユニット20は、
図3ないし
図5に示すように、主に、差動歯車装置30と、当該差動歯車装置30を回転可能に支持するユニットケース32と、から構成されている。差動歯車装置30は、
図5に示すように、デフケース40と、当該デフケース40に一体にされたリングギヤ42と、当該デフケース40に回転可能に支持された4つのピニオンギヤ44(図では2つのピニオンギヤ44のみが記載されている)と、当該ピニオンギヤ44に噛合うようにデフケース40に支持されたサイドギヤ46,46と、を有している。ユニットケース32は、本発明における「第1支持部材」に対応し、ピニオンギヤ44は、本発明における「デフピニオンギヤ」に対応する実施構成の一例である。
【0022】
デフケース40は、
図6に示すように、無人搬送車1の左右方向(無人搬送車1の走行方向(
図6の上下方向)および鉛直方向(
図6の紙面に垂直な方向)の両方向に直交する方向)に延在する軸線SL1を有する軸部40a,40bを有している。デフケース40は、軸部40a,40bに嵌合されるベアリングB1,B1を介してユニットケース32に回転可能に支持される。軸線SL1は、本発明における「第1軸線」に対応する実施構成の一例である。
【0023】
リングギヤ42は、
図6に示すように、傘歯車として構成されており、デフケース40の外周面に配置されている。リングギヤ42は、軸線SL1を回転中心として、デフケース40と一体に回転する。換言すれば、リングギヤ42は、軸線SL1を有すると言うことができる。
【0024】
ピニオンギヤ44は、
図6に示すように、傘歯車として構成されており、ピニオンシャフト44aを介してデフケース40に回転可能に支持されている。ピニオンギヤ44は、軸線SL1に直交する軸線SL2を有しており、当該軸線SL2を回転中心として回転する。軸線SL2は、本発明における「第2軸線」に対応する実施構成の一例である。
【0025】
サイドギヤ46,46は、
図6に示すように、傘歯車として構成されており、4つのピニオンギヤ44に噛合うように配置されている。サイドギヤ46,46のそれぞれには、車軸WSR,WSLが接続されている。
【0026】
こうして構成された差動歯車装置30は、リングギヤ42を介して入力される回転を、各車軸WSR,WSLに異なった回転数に振り分けて伝達する。換言すれば、差動歯車装置30は、車軸WSR,WSLに生じる回転数差を吸収しながら、リングギヤ42を介して入力される動力を各車軸WSR,WSLに振り分けて伝達すると言うことができる。
【0027】
ユニットケース32は、
図3に示すように、軸線34aを有する軸部34を備えている。軸線34aは、
図3および
図8に示すように、一対の駆動輪22R,22L間の中央を通ると共に、軸線SL1および無人搬送車1の走行方向(
図3の紙面に垂直な方向、
図8の上下方向)の両方向に直交する。また、ユニットケース32は、
図6に示すように、差動歯車装置30の少なくとも一部を内部に収容可能な筐体として構成されており、ベアリングB1,B1を介して差動歯車装置30を回転可能に支持する。さらに、ユニットケース32は、ベアリングB2,B2を介して車軸WSR,WSLを回転可能に支持する。なお、車軸WSRには駆動輪22Rが接続され、車軸WSLには駆動輪22Lが接続される。軸線34aは、本発明における「第3軸線」に対応する実施構成の一例である。
【0028】
一対のブレーキ50,50は、ドラムブレーキとして構成されており、駆動輪22R,22Lとユニットケース32との間にそれぞれ配置されている。ここで、一対のブレーキ50,50の配置構成は基本的には同一であるため、以下、駆動輪22Rとユニットケース32との間に配置されるブレーキ50について説明し、駆動輪22Lとユニットケース32との間にそれぞれ配置されるブレーキ50についての説明を省略する。
【0029】
ブレーキ50は、
図7に示すように、駆動輪22Rと一体回転可能に当該駆動輪22Rに固定された円筒状のブレーキドラム52と、ユニットケース32に固定されたバックプレート54と、ブレーキドラム52内に収容可能にバックプレート54に設置された一対のブレーキシュー56a,56bと、一対のブレーキシュー56a,56b間に配置されるピストン(図示せず)と、を有している。なお、ブレーキシュー56a,56bは、それぞれ摩擦材としてのライニング57a,57bを有している。ブレーキドラム52は、本発明における「可動部」に対応し、バックプレート54,一対のブレーキシュー56a,56bおよびライニング57a,57bは、本発明における「固定部」に対応する実施構成の一例である。
【0030】
こうして構成されたブレーキ50は、本実施の形態では、油圧によって作動する構成とした。具体的には、ブレーキ50は、油圧によって図示しないピストン(カム)が作動されて、ライニング57a,57bを有するブレーキシュー56a,56bがブレーキドラム52の内周面に摩擦接触されることで、駆動輪22R,22Lそれぞれの回転を独立して規制する。
【0031】
モータ24は、
図4および
図5に示すように、出力軸24aを有している。出力軸24aは、ピニオンギヤ60を有している。ピニオンギヤ60は、出力軸24aに一体回転可能に接続されている。モータ24は、ピニオンギヤ60が一対のサイドギヤ46,46に噛合うように配置され、ユニットケース32に固定される。ピニオンギヤ60は、本発明における「ドライブピニオンギヤ」に対応する実施構成の一例である。
【0032】
ラジアルベアリングRBは、
図3に示すように、車体2の天板2aに固定される外輪80と、軸部34に嵌合される内輪82と、外輪80および内輪82間に配置される転動体としての複数のボール84と、を有している。ラジアルベアリングRBは、天板2aとスラストベアリングSBとの間に配置される。ボール84は、保持器84aによって保持されている。こうして構成されたラジアルベアリングRBによって、ギヤユニット20が軸部34を介して軸線34aを回転中心として車体2に対して回転可能に支持される。ボール84は、本発明における「第1転動体」に対応する実施構成の一例である。
【0033】
スラストベアリングSBは、
図3に示すように、ラジアルベアリングRBの外輪80が載置される外輪側軌道盤70と、ユニットケース32に固定されるケース側軌道盤72と、外輪側軌道盤70およびケース側軌道盤72間に配置される転動体としての複数のボール74と、を有している。スラストベアリングSBは、ラジアルベアリングRBとユニットケース32との間に配置される。ボール74は、保持器74aによって保持されている。ラジアルベアリングRBおよびスラストベアリングSBは、本発明における「第2支持部材」に対応する実施構成の一例である。また、外輪側軌道盤70、ケース側軌道盤72およびボール74は、それぞれ本発明における「第1軌道盤」、「第2軌道盤」および「第2転動体」に対応する実施構成の一例である。
【0034】
また、スラストベアリングSBは、回転軸線RSを有している。スラストベアリングSBは、
図3および
図8に示すように、回転軸線RSと軸線34aとが同軸線上になるように、ユニットケース32に配置される。
【0035】
このように、ギヤユニット20が、ラジアルベアリングRBおよびスラストベアリングSBによって車体2の天板2aに連結される構成であるため、ギヤユニット20が車体2に対して相対回転可能なように当該ギヤユニット20と車体2とを連結する構成を簡易に実現することができる。なお、無人搬送車1が台車90を牽引する際に、軸部34aに作用するラジアル方向の力をラジアルベアリングRBによって受けることができると共に、駆動輪22R,22Lの接地荷重を確保するために、無人搬送車1が台車90の重量の一部を負担する際に、駆動ユニット4に作用するスラスト方向の力をスラストベアリングSBで受けることができる。
【0036】
制御装置10は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。制御装置10には、床面に敷設された誘導帯(図示せず)を検出する図示しない走行センサからの検出信号や、図示しないマーカーを検出するマーカーセンサ(図示せず)からのコマンド信号などが入力ポートを介して入力されている。また、制御装置10からは、駆動ユニット4(モータ24)への駆動制御信号や、ブレーキ50,50への作動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0037】
次に、こうして構成された無人搬送車の駆動ユニット4を搭載した無人搬送車1の動作、特に、無人搬送車1が走行する際の動作について説明する。無人搬送車1が走行開始指令を受信すると、制御装置10のCPUは、走行センサ(図示せず)からの検出信号やマーカーセンサ(図示せず)からのコマンド信号を読み込み、無人搬送車1が誘導帯に沿って走行するようにモータ24およびブレーキ50,50を駆動制御する処理を実行する。
【0038】
具体的には、誘導帯が直線である場合には、制御装置10のCPUは、無人搬送車1が誘導帯に沿って直進走行するように、基本的には、モータ24のみを駆動制御する。そして、無人搬送車1が直線状の誘導帯から左右のいずれかの方向に外れた場合に、当該外れた側とは反対側の駆動輪22Rあるいは駆動輪22Lの回転数が、外れた側の駆動輪22Lあるいは駆動輪22Rの回転数よりも小さくなるように、当該外れた側とは反対側の駆動輪22Rあるいは駆動輪22L側のブレーキ50,50を駆動制御する。これにより、駆動ユニット4が車体2に対して、回転数が小さくなった駆動輪22Rあるいは駆動輪22L側に向かって回転(旋回)する。こうして無人搬送車1を直線状の誘導帯上に復帰させることができる。
【0039】
一方、誘導帯が曲線である場合には、制御装置10のCPUは、無人搬送車1が誘導帯に沿って曲線走行するように、モータ24およびブレーキ50,50を駆動制御する。具体的には、誘導帯が右曲がりの曲線である場合には、前進方向に向かって右側の駆動輪22Rの回転数が、前進方向に向かって左側の駆動輪22Lの回転数よりも小さくなるように、前進方向に向かって右側の駆動輪22R側のブレーキ50を駆動制御する。これにより、駆動ユニット4が車体2に対して、回転数が小さくなった駆動輪22R側、即ち、右回りに回転(旋回)する。この結果、無人搬送車1を右曲がり曲線の誘導帯に沿って走行させることができる。
【0040】
また、誘導帯が左曲がりの曲線である場合には、上述とは逆の動作、即ち、前進方向に向かって左側の駆動輪22Lの回転数が、前進方向に向かって右側の駆動輪22Rの回転数よりも小さくなるように、前進方向に向かって左側の駆動輪22L側のブレーキ50を駆動制御する。これにより、駆動ユニット4が車体2に対して、回転数が小さくなった駆動輪22L側、即ち、左回りに回転(旋回)する。この結果、無人搬送車1を左曲がり曲線の誘導帯に沿って走行させることができる。
【0041】
なお、誘導帯が曲線の場合も、無人搬送車1が誘導帯から左右のいずれかの方向に外れた場合には、誘導帯が直線である場合と同様、誘導帯から外れた側とは反対側の駆動輪22Rあるいは駆動輪22Lの回転数が、外れた側の駆動輪22Lあるいは駆動輪22Rの回転数よりも小さくなるように、当該外れた側とは反対側の駆動輪22Rあるいは駆動輪22L側のブレーキ50,50を駆動制御して、無人搬送車1を誘導帯上に復帰させる制御を実施することは言うまでもない。
【0042】
以上説明した本実施の形態に係る無人搬送車1によれば、駆動輪22R,22Lが差動歯車装置30を介してモータ24に接続される構成であるため、駆動輪22R,22Lを駆動するためのモータ24が1つで良い。これにより、少なくともモータ1つ分の省スペース化を図ることができる。この結果、無人搬送車1のコンパクト化を図ることができる。また、駆動輪22R,22Lとユニットケース32との間に配置したブレーキ50,50を駆動制御することによって、駆動輪22R,22Lに回転数差を与えて、駆動ユニット4を車体2に対して回転(旋回)させることができる。これにより、無人搬送車1を曲線走行させたり、スピーンターンさせたりすることができる。もとより、モータ24の出力軸24aの回転方向や回転数を制御することによって、無人搬送車1を前後に直進走行させることができると共に速度を変更することができる。なお、一対のブレーキ50,50としてドラムブレーキを採用したから、一対の駆動輪22R,22L夫々の回転を独立して規制可能な構成を簡易に確保することができる。
【0043】
また、本実施の形態に係る無人搬送車1によれば、スラストベアリングSBを用いて駆動ユニット4と車体2とを連結したから、旋回軸などの軸部材を用いて駆動ユニット4と車体2とを連結する構成に比べて高さ方向(軸線方向)の寸法を低減することができる。これにより、無人搬送車1の高さ方向のコンパクト化を図ることができる。
【0044】
本実施形態では、ブレーキ50は、油圧によって作動する構成としたが、これに限らない。ブレーキ50は、例えば、図示しないワイヤーによって作動する構成としても良い。この場合、図示しないワイヤーが引っ張られることによって、図示しないピストン(カム)が作動されて、ライニング57a,57bを有するブレーキシュー56a,56bがブレーキドラム52の内周面に摩擦接触される。
【0045】
本実施形態では、スラストベアリングSBを用いて駆動ユニット4と車体2とを連結したが、これに限らない。例えば、旋回軸などの軸部材を用いて駆動ユニット4と車体2とを連結しても良い。
【0046】
本実施形態では、一対のブレーキ50,50としてドラムブレーキを採用したが、これに限らない。例えば、一対のブレーキ50,50として電磁ブレーキを採用しても良い。
【0047】
本実施形態では、スラストベアリングSBは、天板2aとユニットケース32との間に配置したが、これに限らない。スラストベアリングSBは、例えば、
図9ないし
図11の変形例の無人搬送車100の駆動ユニット104に示すように、スラストベアリングSBは、ユニットケース32と車体2の底板2bとの間に配置しても良い。
【0048】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。