(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005939
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】あぶらとり紙
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20230111BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230111BHJP
A61K 8/9755 20170101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/02
A61K8/9755
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108241
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(72)【発明者】
【氏名】岡本 学
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB172
4C083AC111
4C083AC422
4C083AC611
4C083AC612
4C083AD112
4C083BB21
4C083CC24
4C083DD12
4C083DD21
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】あぶらとり紙に多孔質粒子を担持させなくとも、拭き取り後に分泌される皮脂を抑制できるあぶらとり紙を提供すること。
【解決手段】紙製のシート基材に、ピロリドンカルボン酸亜鉛を担持してなることを特徴とするあぶらとり紙とする。シート基材には、さらに粉体を担持させることが好ましく、多価アルコールや植物抽出物を担持させることもできる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製のシート基材に、ピロリドンカルボン酸亜鉛を担持してなることを特徴とするあぶらとり紙。
【請求項2】
粉体を担持することを特徴とする請求項1に記載のあぶらとり紙。
【請求項3】
多価アルコールを担持することを特徴とする請求項1または2に記載のあぶらとり紙。
【請求項4】
植物抽出物を担持してなることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のあぶらとり紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あぶらとり紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、肌上に分泌される余剰の皮脂を除去し、化粧のりを良くし化粧崩れを防止するために、あぶらとり紙が用いられており、フィルムタイプや紙タイプのものが上市されている。
【0003】
フィルムタイプのあぶらとり紙は、プラスチック多孔質延伸フィルムを用いることで、皮脂を吸着して透明化し、拭き取り具合を視認できる化粧用脂取りシートが提案されている(特許文献1)。このようなフィルムタイプのあぶらとり紙は、フィルムの多孔質により皮脂を吸着するものであって、その後に分泌される皮脂の抑制効果までは発揮できるものではない。
【0004】
一方、紙タイプのあぶらとり紙も密集した繊維に皮脂を吸収させるものであって、その後に分泌される皮脂の抑制効果までは発揮できるものではない。そこで、皮脂を拭き取った際に肌上に粒子が移行するように多孔質粒子を紙に担持させ、拭き取り後に分泌される皮脂をも吸着させる油取り紙が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-17445号公報
【特許文献2】実用新案登録第3092939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、あぶらとり紙に多孔質粒子に加え所望の効果を発揮させる成分を更に担持させようとすると、有効成分が粒子の孔に取り込まれて有効濃度を肌上に残存させることができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、あぶらとり紙に多孔質粒子を担持させなくとも、拭き取り後に分泌される皮脂を抑制できるあぶらとり紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、紙製のシート基材に、ピロリドンカルボン酸亜鉛を担持してなることを特徴とするあぶらとり紙を提供するものである。
【0009】
本発明のあぶらとり紙は、さらに、粉体を担持してなることが好ましい。
【0010】
本発明のあぶらとり紙は、さらに、多価アルコールを担持してなることが好ましい。
【0011】
また、本発明のあぶらとり紙は、さらに、植物抽出物を担持してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のあぶらとり紙は、ピロリドンカルボン酸亜鉛が紙製のシート基材に直接担持してなることから、多孔質粒子を用いなくとも、肌上の皮脂を拭き取ったのちの皮脂分泌抑制効果に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のあぶらとり紙は、紙製のシート基材にピロリドンカルボン酸亜鉛が担持されてなる。
【0014】
本発明に用いられるシート基材は、針葉樹、広葉樹などの木材パルプ;綿、麻、竹、ケナフ、サトウキビ、雁皮、楮、三椏などの非木材パルプ;レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)などの合成繊維パルプなどのパルプ原料からなる紙を用いることができる。なかでも、皮脂と汗を効果的に吸着させる観点から、木材パルプを50%以上含む紙を用いるのが好ましく、針葉樹パルプを含む紙を用いるのがより好ましい。その坪量は、あぶらとり紙として使用できれば特に限定されないが、使用性の観点から10g/m2~30g/m2のものを用いるのが好ましい。
【0015】
シート基材に担持されるピロリドンカルボン酸亜鉛(PCA亜鉛)は、ピロリドンカルボン酸の亜鉛塩である。PCA亜鉛は、市販品を用いることができる。例えば、商品名AJIDEW ZN-100(味の素株式会社)を例示することができる。
【0016】
本発明のあぶらとり紙には、上記の必須成分のほかに、さらさらとした使用感を付与させるために、粉体を担持させることもできる。用いることのできる粉体としては、無水ケイ酸、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、雲母、雲母チタン、ミョウバン、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの無機粉体、ポリメチルメタクリレート、ジメチルポリシロキサン重合体、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂などの有機粉体を例示することができ、1種を単独で用いることもできるが、2種以上を適宜組合わせて用いても良い。なかでも、使用感の観点から、無水ケイ酸を用いることが好ましく、球状の無水ケイ酸を用いることがより好ましい。
【0017】
上記した成分は、シート基材に担持させるためにバインダー溶液に含有される。その含有量は、所望の効果が発揮されれば特に限定されないが、シート基材に均一に担持させる観点から、PCA亜鉛は溶液中0.001~1質量%含有することが好ましい。また、粉体を含有する場合、溶液中0.1~10質量%含有することが好ましい。
【0018】
バインダー溶液は、シートへ担持する際に加熱工程を経ることから、水性媒体(特に水)を用いるのが好ましい。また、含有成分が水性媒体に分散する場合、均一に分散させる観点から、分散剤を用いることができる。用いる分散剤としては、非イオン界面活性剤を用いることができ、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;モノイソステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノパルミチン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルを例示することができる。なかでも、HLB6~13の非イオン界面活性剤を用いることが好ましい。
【0019】
非イオン界面活性剤の含有量は、所望の効果が発揮されれば特に限定されないが、シート基材に均一に担持させる観点から、バインダー溶液中0.1~5質量%含有することが好ましい。
【0020】
バインダー溶液には、あぶらとり紙の肌への潤い感を高めるために、多価アルコールを含有させることができ、グリコール類、グリセリン類、糖類などが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、トレハロースなどを例示することができる。
【0021】
多価アルコールの含有量は、所望の効果が発揮されれば特に限定されないが、シート基材に均一に担持させる観点から、バインダー溶液中0.1~5質量%含有することが好ましい。
【0022】
バインダー溶液には、あぶらとり紙の肌への潤い感をより高めるために、植物抽出物ルを含有させることができる。用いられる植物抽出物は、所望の効果が発揮されれば特に限定されないが、緑茶、紅茶、ウーロン茶などのチャ、アーチチョーク(チョウセンアザミ)、ハマメリス、ゴボウ、エリシマムなどの植物の根、茎、葉、花などを、水、エタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコールなどの水性溶媒により抽出することができ、これらの1種を単独で用いることもできるが、2種または3種を適宜組合わせて用いても良い。
【0023】
このような植物抽出物としては、市販品を用いることもできる。チャ抽出物としては、例えば、商品名煎茶DS-SP100(日研フード株式会社)、商品名サンフード(三菱ケミカル株式会社)、商品名和ism<緑茶>(丸善製薬株式会社)、商品名和ism<宇治茶>(丸善製薬株式会社)などを例示することができる。アーチチョーク抽出物としては、商品名バイオベネフィティ(一丸ファルコス株式会社)、商品名アーティチョークエキス―BG(株式会社ヤマダ薬研)などを例示することができる。ハマメリス抽出物としては、商品名ハマメリス抽出液BG-J(丸善製薬株式会社)、ファルコレックスハマメリスB(一丸ファルコス株式会社)などを例示することができる。また、植物抽出物は、PCA亜鉛との混合物として、商品名Seborami(Alban Muller International社製)を用いることもできる。
【0024】
本発明のあぶらとり紙には、上記した成分のほか、メントール、乳酸メンチルなどの冷感剤、バニルブチルエーテルなどの温感剤、トラネキサム酸、グリチルレチン酸などの抗炎症剤、パラベン、フェノキシエタノールなどの殺菌剤、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線防御剤、香料などを目的に合わせて適宜担持させることもできる。
【0025】
上記した成分を本発明のあぶらとり紙に効果的に担持させるためには、前記したバインダー溶液に結合剤を含有させることが好ましい。結合剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの高分子化合物を用いることができる。
【0026】
結合剤の含有量は、所望の効果が発揮されれば特に限定されないが、成分をシート基材に均一に担持させる観点から、バインダー溶液中0.1~5質量%含有することが好ましい。
【0027】
本発明のあぶらとり紙を製造するには、バインダー溶液をシート基材に均一に噴霧したのち、加熱乾燥することにより溶媒を蒸発させて目的の成分を担持させることができる。その担持量(塗工量)は、目的の効果を発揮すれば特に限定されないが、通常、0.1~3g/m2程度に塗工するとよい。
【実施例0028】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ
限定されるものではない。尚、含有量は特記しない限り「質量%」を表す。
【0029】
(あぶらとり紙の製造)
表1に記した組成に従い、各バインダー溶液を常法にて調製した。次に、ドライヤー塗布乾燥機により坪量15g/m2の針葉樹パルプを主体とするシート基材にバインダー溶液を噴霧し乾燥温度100℃で乾燥して実施例1~3および比較例1の各あぶらとり紙を製造した。なお、得られた各あぶらとり紙への成分の塗工量は、1.5~1.6g/m2であった。
【0030】
【0031】
(評価)
実施例1~3および比較例1の各あぶらとり紙を、6名のパネラーが日を替えて顔面を押し拭きし、除去後の肌の潤い感と除去後5時間後の皮脂分泌抑制効果について評価した。肌の潤い感については、使用後に潤い感の低下を感じないと回答した人数を、また、皮脂分泌抑制効果については、効果が認められると回答した人数を、表2に示す。
【0032】
【0033】
表2の結果から、本発明のあぶらとり紙は、皮脂の分泌を効果的に抑制できるものであった。また、さらに植物抽出物を担持させると、肌の潤い感の低下を効果的に防ぐものであった。