(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059395
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】オフセット輪転機の印刷システムおよびオフセット輪転機
(51)【国際特許分類】
B41F 33/10 20060101AFI20230420BHJP
B41F 7/24 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B41F33/10 S
B41F7/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169383
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000161057
【氏名又は名称】株式会社ミヤコシ
(71)【出願人】
【識別番号】521454836
【氏名又は名称】蓑島 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 猛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 鈴司
(72)【発明者】
【氏名】戸巻 仁
(72)【発明者】
【氏名】杉山 誠康
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 利子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋子
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 俊和
【テーマコード(参考)】
2C034
2C250
【Fターム(参考)】
2C034AA12
2C034BB03
2C034BB32
2C034BB42
2C250EA29
2C250EB20
(57)【要約】
【課題】版胴のインキの乳化状態をリアルタイムで把握し、いち早く適正なインキの乳化状態として印刷開始から終了まで良好な印刷品質を維持して損紙を削減できるオフセット輪転機の印刷システムとする。
【解決手段】印刷ユニット5の版胴6の表面に照射光71を照射する光源32と、前記照射された照射光71の反射光72を撮影するカメラ33と、前記カメラ33の撮影画像を反射光72の輝度が高い範囲と低い範囲に2値化し、前記カメラ33の撮影画像の全体の面積に対する反射光72の輝度が高い範囲の面積率を算出する制御装置56を備え、前記制御装置56が算出した反射光72の輝度が高い範囲の面積率が高い場合に、湿し水装置11の湿し水の供給を制御して適正なインキの乳化状態とするオフセット輪転機1の印刷システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット輪転機の印刷システムであって、
前記オフセット輪転機は、少なくとも1つ以上の印刷ユニットを備え、
前記印刷ユニットは、版胴と、前記版胴に湿し水を供給する湿し水装置と、前記版胴にインキを供給するインキ装置を備え、
前記版胴の表面および/または前記インキ装置のいずれかのローラの表面に照射光を照射する光源と、前記ローラの表面から反射する反射光を撮影するカメラと、前記カメラの撮影画像を反射光の輝度が高い範囲と低い範囲に2値化し、前記カメラの撮影画像の全体の面積に対する反射光の輝度が高い範囲の面積率を算出する制御手段を備えたインキ乳化状態検出手段を備え、
前記制御手段が算出した反射光の輝度が高い範囲の面積率が高い場合に、前記湿し水装置の湿し水の供給を制御して適正なインキの乳化状態とすることを特徴とするオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項2】
請求項1記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記光源は、特定波長の照射光を照射し、前記カメラは、前記特定波長の反射光のみを撮影する構成としたオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記湿し水装置で供給される湿し水の温度と、前記インキ装置で供給されるインキの温度を一定に保つようにしたオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記光源が、高演色LEDであるオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記制御手段は、印刷実行中に、反射光の輝度が高い範囲の面積率を繰り返して算出して蓄積し、蓄積された前記面積率に応じて適正なインキの乳化状態とする湿し水の制御モデルを機械学習し、算出した前記面積率に応じて適正なインキの乳化状態とする制御モデルに更新するようにしたオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項6】
請求項5記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記制御手段は、前記面積率に加えてオフセット輪転機の運転状況、印刷結果の検出情報、温度、湿度のうち少なくとも1つ以上の情報を蓄積し、蓄積した前記面積率と、前記面積率以外の蓄積した情報により前記制御モデルの機械学習をし、前記情報に対応した制御モデルに更新するようにしたオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項7】
請求項6記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記オフセット輪転機の運転状況が、印刷開始時の湿し水の供給量、印刷開始時のインキの供給量、印刷する絵柄の情報、印刷中の印刷速度、印刷中の湿し水の供給量、印刷中のインキの供給量のうち少なくとも1つ以上を含むオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項8】
請求項6又は7記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記印刷結果の検出情報が、印刷結果より検出した網点形状、網点面積率、インキ濃度のうち少なくとも1つ以上を含むオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項9】
請求項6から8いずれかに記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記温度および湿度の情報が、印刷開始時の湿し水温度、印刷開始時のインキ温度、印刷開始時の揺動ローラ通水温度、印刷開始時の版胴通水温度、印刷開始時の工場内の温度、印刷開始時の工場内の湿度、印刷中の湿し水温度、印刷中のインキ温度、印刷中の揺動ローラ通水温度、印刷中の版胴通水温度、印刷中の工場内の温度、印刷中の工場内の湿度のうち少なくとも1つ以上を含むオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項10】
請求項5から9いずれかに記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記制御モデルの更新は、オフセット輪転機とは独立したクラウドサーバー上で行われるオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項11】
請求項5から9いずれかに記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記制御モデルの更新は、オフセット輪転機内の制御装置で行われるオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項12】
請求項5から9いずれかに記載のオフセット輪転機の印刷システムにおいて、
前記更新された制御モデルを使用して、前記湿し水装置の湿し水を制御するオフセット輪転機の印刷システム。
【請求項13】
請求項1から12いずれかに記載の印刷システムを備えたオフセット輪転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット輪転機の印刷システムおよびその印刷システムを備えたオフセット輪転機に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット輪転機による印刷では、版胴に湿し水とインキを供給する。湿し水の供給量が多い場合には、インキの過乳化が発生する。インキの過乳化が発生した場合、印刷汚れなどが発生し、損紙が生じる。
インキの乳化状態は、印刷する絵柄や温度など様々な要因により変化するため、従来はオペレータのノウハウや経験により、インキの乳化状態を判断し、湿し水の供給の調整を行っていた。このため、オペレータによって印刷品質にばらつきが生じる等の不具合が生じていた。
一方、従来から特許文献1に開示されたように、印刷結果の色調の計測と印刷機の運転状況より機械学習を行い、印刷の制御を行う印刷システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された印刷システムは、印刷中のインキの乳化状態を検出していないため、インキが過乳化状態に変化してから制御が実行されるまでにタイムラグが発生し、適正なインキの乳化状態となるまでに時間が掛り、多くの損紙が生じてしまうなどの課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために為されたものであり、その目的は、インキの乳化状態をリアルタイムで把握し、いち早くインキの過乳化状態の兆候を知り、湿し水を制御することで、適正なインキの乳化状態とし、印刷開始から終了まで印刷品質の良好な状態維持が可能で、ひいては損紙を大幅に削減でき、しかも安価かつ容易に既存のオフセット輪転機に導入できるオフセット輪転機の印刷システムおよびオフセット輪転機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムは、オフセット輪転機の印刷システムであって、前記オフセット輪転機は、少なくとも1つ以上の印刷ユニットを備え、前記印刷ユニットは、版胴と、前記版胴に湿し水を供給する湿し水装置と、前記版胴にインキを供給するインキ装置を備え、前記版胴の表面および/または前記インキ装置のいずれかのローラの表面に照射光を照射する光源と、前記ローラの表面から反射する反射光を撮影するカメラと、前記カメラの撮影画像を反射光の輝度が高い範囲と低い範囲に2値化し、前記カメラの撮影画像の全体の面積に対する反射光の輝度が高い範囲の面積率を算出する制御手段を備えたインキ乳化状態検出手段を備え、前記制御手段が算出した反射光の輝度が高い範囲の面積率が高い場合に、前記湿し水装置の湿し水の供給を制御して適正なインキの乳化状態とすることを特徴とするオフセット輪転機の印刷システムである。
【0007】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記光源は、特定波長の照射光を照射し、前記カメラは、前記特定波長の反射光のみを撮影する構成としたオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
【0008】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記湿し水装置で供給される湿し水の温度と、前記インキ装置で供給されるインキの温度を一定に保つようにしたオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
この構成とすることで、反射光の輝度が高い範囲の面積率からインキの乳化状態を正確に判断できる。
【0009】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記光源が、高演色LEDであるオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
この構成とすることで、反射光の輝度の変化がより鮮明に検出できるため、検出結果に基づく制御がより精度良く実施できる。
【0010】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記制御手段は、印刷実行中に、反射光の輝度が高い範囲の面積率を繰り返して算出して蓄積し、蓄積された前記面積率に応じて適正なインキの乳化状態とする湿し水の制御モデルを機械学習し、算出した前記面積率に応じて適正なインキの乳化状態とする制御モデルに更新するようにしたオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
この構成とすることで、オペレータの経験や技量に関係なく、常に安定したインキの乳化状態の把握と的確な湿し水の制御が可能となる。
【0011】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記制御手段は、前記面積率に加えてオフセット輪転機の運転状況、印刷結果の検出情報、温度、湿度のうち少なくとも1つ以上の情報を蓄積し、蓄積した前記面積率と、前記面積率以外の蓄積した情報により前記制御モデルの機械学習をし、前記情報に対応した制御モデルに更新するようにしたオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
この構成とすることで、オフセット輪転機の運転状況、印刷結果の検出情報、温度、湿度の少なくとも1つが変化しても安定したインキの乳化状態の把握と的確な湿し水の制御が可能となる。
【0012】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記オフセット輪転機の運転状況が、印刷開始時の湿し水の供給量、印刷開始時のインキの供給量、印刷する絵柄の情報、印刷中の印刷速度、印刷中の湿し水の供給量、印刷中のインキの供給量のうち少なくとも1つ以上を含むオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
【0013】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記印刷結果の検出情報が、印刷結果より検出した網点形状、網点面積率、インキ濃度のうち少なくとも1つ以上を含むオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
【0014】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記温度および湿度の情報が、印刷開始時の湿し水温度、印刷開始時のインキ温度、印刷開始時の揺動ローラ通水温度、印刷開始時の版胴通水温度、印刷開始時の工場内の温度、印刷開始時の工場内の湿度、印刷中の湿し水温度、印刷中のインキ温度、印刷中の揺動ローラ通水温度、印刷中の版胴通水温度、印刷中の工場内の温度、印刷中の工場内の湿度のうち少なくとも1つ以上を含むオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
【0015】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記制御モデルの更新は、オフセット輪転機とは独立したクラウドサーバー上で行われるオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
【0016】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記制御モデルの更新は、オフセット輪転機内の制御装置で行われるオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
【0017】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムにおいては、前記更新された制御モデルを使用して、前記湿し水装置の湿し水を制御するオフセット輪転機の印刷システムとすることができる。
【0018】
本発明のオフセット輪転機は、請求項1から12いずれかに記載の印刷システムを備えたオフセット輪転機である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のオフセット輪転機の印刷システムによれば、インキの乳化状態をリアルタイムで把握し、いち早くインキの過乳化状態の兆候を知り、湿し水を制御することで適正なインキの乳化状態とし、印刷開始から終了まで印刷品質の良好な状態維持が可能で、ひいては損紙を大幅に削減できる。
しかも、安価かつ容易に既存のオフセット輪転機に導入できる。
さらに、反射光の輝度が高い範囲の面積率でインキの乳化状態を判断するので、インキの乳化状態が均一でなくとも適正なインキの乳化状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の印刷システムを適用できるオフセット輪転機の一例を示す全体正面図である。
【
図4】反射光検出装置の第2の実施の形態を示す構成図である。
【
図5】反射光検出装置の第3の実施の形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態に係るオフセット輪転機を
図1に基づいて説明する。
図1は本発明の印刷システムを適用できるオフセット輪転機の一例を示す全体正面図である。
本発明の実施の形態に係るオフセット輪転機1は、被印刷基材Wを給紙する給紙部2と、給紙部2から搬送されてきた被印刷基材Wに印刷を行う印刷部3と、印刷部3で印刷された被印刷基材Wを排出する排紙部4を有している。
給紙部2は、ロール状に巻いた被印刷基材Wが取り付けられる給紙軸91と、給紙軸91に取り付けられた被印刷基材Wを繰り出して印刷部3へ送り出す給紙側の送りローラ92を備えている。図示しない駆動モータで給紙側の送りローラ92を回転駆動することで被印刷基材Wを引っ張り、給紙軸91を回転してロール状の被印刷基材Wを繰り出し、印刷部3に向けて送り出しを行う。
【0022】
給紙部2は、この構成に限定されず、枚葉紙を送り出す構成など、公知の輪転機の給紙部の構成であってもよい。
印刷部3は、後述する印刷ユニット5を複数備え、各印刷ユニット5毎に1色の印刷を行う。各印刷ユニット5の排紙側には、乾燥装置95を設けてあるが、設けなくてもよい。
排紙部4は、印刷部3で印刷された被印刷基材Wを排紙部4へ送り出す排紙側の送りローラ93と、被印刷基材Wを巻き取る巻取軸94を備えている。
排紙部4は、この構成に限定されず、被印刷基材Wを他の加工装置へ排出するデリバリー装置や枚葉紙の集積装置など、公知の輪転機の排紙部の構成であってもよい。
印刷部3と排紙部4の間には印刷した結果の検査を行う網点検出装置41、絵柄検査装置42が設けられる。網点検出装置41、絵柄検査装置42はこの構成に限定されず、排紙側の送りローラ93と被印刷基材Wを巻き取る巻取軸94の間など、印刷部3より下流側であれば任意の位置に設けることができる。
【0023】
本発明の印刷システムを適用できるオフセット輪転機1の構成は、この構成に限定されず、印刷部3と排紙部4の間に被印刷基材Wの切断加工や折加工を行う加工部を設けるなど、任意の構成とすることができる。
本発明の印刷システムは、被印刷基材Wの種類によらず適用できる。よって、被印刷基材Wとして、紙やフィルムなど、公知のオフセット輪転機で使用される材料を使用できる。また、連続紙、枚葉紙等の形態にかかわらず使用できる。
【0024】
図2に基づいて印刷ユニット5の構成を説明する。
図2は印刷ユニットの構成図である。
印刷部3は少なくとも1つ以上の印刷ユニット5で構成される。印刷ユニット5では、任意のインキで被印刷基材Wに印刷が行われる。
図1の実施の形態では印刷ユニット5は4つ設けられ、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインキによる印刷を行う。印刷ユニット5はいずれも同じ構成である。
本発明の印刷システムで使用する印刷ユニット5の個数は
図1の実施の形態に限定されず、ブラック(K)のインキによる印刷を行う印刷ユニット1つのみなど、任意の個数の印刷ユニット5で印刷部3を構成できる。また、使用できるインキは上記イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)に限定されず、特色などの任意の色のインキを使用できる。
【0025】
図2に示すように、印刷ユニット5は版胴6、ブランケット胴7、圧胴8を有している。版胴6、ブランケット胴7、圧胴8はそれぞれ図示しない駆動モータで回転が制御される。被印刷基材Wは、ブランケット胴7と圧胴8の間を搬送される。
印刷は次のように行う。版胴6にインキおよび湿し水が供給され、版胴6からブランケット胴7にインキが転写され、ブランケット胴7から被印刷基材Wへインキを転写することで印刷を行う。
版胴6は、版胴6の表面温度を調整するため、版胴6の内部に冷却水を通水する。冷却水の通水の詳細は後に説明する。
【0026】
版胴6に湿し水を供給する湿し水装置11と、版胴6にインキを供給するインキ装置21が、版胴6と隣接して設けられている。
湿し水装置11は、湿し水温度検出装置12、水舟13、水元ローラ14、調量ローラ15、水着けローラ16を備える。
水舟13内の湿し水が、水元ローラ14、調量ローラ15、水着けローラ16を経て、版胴6へ供給される。水舟13内への湿し水の供給は後に説明する。
湿し水温度検出装置12は水舟13内の湿し水の温度を検出する。湿し水温度検出装置12により測定した湿し水の温度は、湿し水温度として、後述の機械学習に使用する。
【0027】
インキ装置21は、インキ温度検出装置22、インキツボ23、インキ元ローラ24、インキ供給練りローラ群25、インキ揺動ローラ26、インキローラ27を備える。
インキツボ23内のインキが、インキ元ローラ24、インキ供給練りローラ群25、インキ揺動ローラ26、インキローラ27を経て、版胴6へ供給される。インキ温度検出装置22は、インキ装置21内の任意のローラに対向して設けられ、ローラ表面のインキの温度を非接触で測定する。インキ温度検出装置22により検出したインキの温度を、インキ温度として、後述の機械学習に使用する。
インキの温度を制御するため、インキ揺動ローラ26の内部に冷却水を通水して、インキ揺動ローラ26の表面温度を制御する。冷却水の通水の詳細は後に説明する。
【0028】
版胴6の内部への冷却水の通水と、水舟13内への湿し水の供給と、インキ揺動ローラ26の内部への冷却水の通水と、インキの供給を
図3に基づき説明する。
図3は機械学習に関する制御系の概要図である。
版胴6の表面温度を調整するため、版胴6の内部に通水する冷却水は、印刷ユニット5の近傍に設けられた
図3に示す版胴冷却水循環装置9から供給される。
版胴冷却水循環装置9は、版胴冷却水循環装置9から版胴6へ冷却水を供給する流路と、版胴6から版胴冷却水循環装置9へ冷却水を循環させる流路と、循環する冷却水の温度を制御する版胴冷却水温度制御装置10を備える。
版胴冷却水温度制御装置10により制御される冷却水の温度は、版胴通水温度として、後述の機械学習に使用される。
【0029】
湿し水装置11の水舟13内への湿し水の供給は、印刷ユニット5の近傍に設けられた
図3に示す湿し水循環装置17により行われる。湿し水循環装置17は、湿し水循環装置17から水舟13に湿し水を供給する流路および、水舟13から湿し水循環装置17へ湿し水を循環させる流路を備える。
湿し水循環装置17は湿し水を冷却する湿し水冷却装置18を備え、循環する湿し水の温度を制御することができる。
本発明の印刷システムにおける湿し水の温度制御は、
図3に示す制御装置56からの指令で、湿し水温度検出装置12による水舟13内の湿し水の温度が設定した温度になるように、湿し水冷却装置18の冷却の設定温度を制御する。
【0030】
インキ揺動ローラ26の内部に通水する冷却水は、印刷ユニット5の近傍に設けられた
図3に示すインキ揺動ローラ冷却水循環装置28から供給される。インキ揺動ローラ冷却水循環装置28は、インキ揺動ローラ冷却水循環装置28からインキ揺動ローラ26へ冷却水を供給する流路と、インキ揺動ローラ26からインキ揺動ローラ冷却水循環装置28へ冷却水を循環させる流路と、循環する冷却水の温度を制御するインキ揺動ローラ冷却水温度制御装置29を備える。
インキ揺動ローラ冷却水温度制御装置29の設定温度は、揺動ローラ通水温度として、後述の機械学習に使用される。
本発明の印刷システムにおけるインキの温度制御は、制御装置56からの指令で、インキ揺動ローラ冷却水温度制御装置29の設定温度を変更することで制御する。
【0031】
湿し水およびインキの供給は、制御装置56からの指令に基づいて次のように制御される。
版胴6へ供給する湿し水の量は、水元ローラ14、調量ローラ15の回転量を制御することで行う。水元ローラ14、調量ローラ15は図示しない駆動モータによって回転駆動する。本発明の印刷システムでは、制御装置56から出力される水元ローラ14、調量ローラ15の駆動モータの回転量を、湿し水の供給量として、後述の機械学習に使用する。
版胴6へ供給するインキの量は、インキ元ローラ24の回転量を制御することで行う。インキ元ローラ24は図示しない駆動モータによって回転駆動する。本発明の印刷システムでは、制御装置56から出力されるインキ元ローラ24の駆動モータの回転量を、インキの供給量として、後述の機械学習に使用する。
【0032】
印刷開始時には、印刷する絵柄の絵柄面積率によりインキ供給量を、次のようにして初期設定する。
図2に示すインキ元ローラ24の幅方向に亘って複数のインキキー(図示せず)が並設してあり、各インキキーとインキ元ローラ24との隙間、つまりインキキーの開度によりインキ元ローラ24幅方向のインキ出し量(インキ供給量)が決まる。
絵柄面積率は、版胴6にセットされた刷版のデータから変換されたデータで、インキキーの幅と同一の幅×刷版天地長さ(製品天地長さ)の面積の中に絵柄の面積がどのくらいあるかを表すものである。
制御装置56は、入力された刷版のデータから刷版の幅方向におけるインキキーの幅毎の絵柄面積率を求め、求めた絵柄面積率により各インキキーの開度を調整してインキ供給量を初期設定する。
【0033】
本発明の印刷システムでは、版胴6の表面および/またはインキを供給するローラの表面からの反射光の輝度を測定することにより、インキの乳化状態を検出するインキ乳化状態検出手段を備えている。
インキ乳化状態検出手段は、
図1に示すように各印刷ユニット5の版胴6の表面からの反射光を検出する反射光検出装置31と、
図3に示す制御装置56から構成される。
以下に、
図2に基づいて版胴6の表面からの反射光72を検出する反射光検出装置31の構成を説明する。
版胴6の表面からの反射光72を検出するため、版胴6の近傍に、反射光検出装置31が設けられている。反射光検出装置31は光源32とカメラ33を有している。
光源32としては、LED等のライトが使用できる。特に、好適な光源としては高演色LEDが使用できる。高演色LEDは色の再現性が高く、印刷設備等の光源として一般に使用される。
【0034】
高演色LEDを光源32として使用する場合には、反射光72の輝度の変化がより鮮明に検出できるため、検出結果に基づく制御がより精度良く実施できる。
カメラ33は版胴6の幅方向(回転軸に平行な方向)全体を撮影できる広角カメラや、版胴6の任意の一部を撮影するカメラが使用される。また、版胴6の幅方向全体を撮影できないカメラの場合、版胴6の幅方向に複数台のカメラを設け、撮影される複数の画像を結合して広角カメラと同じ結果が得られるようにしてもよい。
光源32とカメラ33はそれぞれ位置や角度を調整可能に構成され、反射光72が検出しやすい位置に調節できる。
図2の破線の矢印で示すように、光源32から版胴6に向けて照射光71が照射され、
図2の破線の矢印で示すように版胴6の表面で反射された反射光72をカメラ33で撮影する。すなわち、カメラ33は版胴6の表面における照射光71が照射された領域を撮影する。
【0035】
光源32とカメラ33は次の構成とすることができる。
光源32は、特定波長の照射光を照射する構成とし、カメラ33は、版胴6の表面から反射される反射光における光源32が照射した特定波長の反射光のみを撮影する構成とする。
【0036】
図3に示すように、各印刷ユニット5の反射光検出装置31の検出結果、つまりカメラ33の撮影画像はそれぞれ制御装置56に出力する。制御装置56は検出結果(撮影画像)を解析して版胴6の表面のインキの乳化状態を判断する。反射光検出装置31の制御は、制御装置56で行われる。
本実施の形態の制御装置56は、既存のオフセット輪転機1の制御や、後述の機械学習の制御も併せて行う構成としているが、この構成に限らず、反射光検出装置31の制御および検出した結果(撮影画像)の解析を独立した制御装置で行うなど、任意の構成で制御を実施できる。
【0037】
反射光検出装置31の制御および検出結果(撮影画像)の解析は以下のように実施される。
印刷の実行に応じて、反射光検出装置31の制御が次のように実施される。光源32は、印刷実行中は常時点灯し、版胴6に対して照射光71を照射する。カメラ33は、照射された照射光71に対する反射光72の輝度、つまり版胴6の表面の輝度を検出するため、印刷実行中に版胴6の表面の撮影を行う。
制御装置56は、カメラ33の撮影画像を一定周期、例えば版胴6の複数回転ごとに受信し、撮影画像の解析を行う。
カメラ33の撮影範囲は、版胴6の幅方向全体が含まれるように撮影してもよく、版胴6の任意の一部を撮影してもよい。
また、カメラ33の撮影は、版胴6の回転に対して、版胴6に取り付けられた刷版の部分が撮影できる任意のタイミングで撮影を行う。撮影画像のうち、版胴6以外の部分は、制御装置56により除外される。除外する範囲は、版胴6のサイズやカメラ33の取り付け位置に応じて任意に設定する。
本発明は、版胴6に取り付けられた刷版の部分が撮影できる任意のタイミングで撮影を行えばよいので、刷版が版胴6の一部のみに取り付けられている場合でも実施できる。
【0038】
版胴6の表面のインキの乳化状態は幅方向および周方向に亘って均一でないために、版胴6の表面からの反射光72の輝度は幅方向および周方向に亘って均一ではなく、高い部分と低い部分がある。これは、湿し水が版胴6の表面に均一に供給されないことが一つの原因であると考えられる。
このことから、カメラ33の撮影画像は、画面全体に亘って均一な明るさではなく、明るい部分と暗い部分あり、明るい部分が反射光72の輝度が高い部分で、暗い部分が反射光72の輝度が低い部分がある。
そこで、制御装置56は、受信したカメラ33の撮影画像を反射光72の輝度が基準値よりも高いか否かで2値化する。つまり、反射光72の輝度が基準値よりも高い部分(明るい部分)と反射光72の輝度が基準値よりも低い部分(暗い部分)とに区別する。反射光72の輝度が高いか否かの判断基準は後述する機械学習によって輝度の基準値が設定され、基準値以上が高い部分と判定され、基準値以下が低い部分と判定される。
【0039】
さらに制御装置56は、カメラ33の撮影画像の全体の面積を算出すると共に、反射光72の輝度が高いと判定された部分の面積を合算して反射光72の輝度が高い範囲の面積とし、カメラ33の撮影画像の全体の面積に対する反射光72の輝度が高いと判定した範囲の面積率を算出する。
算出した面積率が設定した値より高い場合は、湿し水の給水量が多いと判断して、過乳化を防止するために給水量を減少させる制御を行う。つまり、湿し水の給水量が多いと版胴6の表面における明るい部分が多く、反射光72の輝度が高いと判定する範囲の面積が多くなる。設定した面積率の値は後述する印刷結果の検出情報等に基づいた機械学習によって設定される。湿し水の制御(給水量の制御)は、制御装置56により、水元ローラ14、調量ローラ15の回転量を制御することで行う。
湿し水の供水量が減少すると、版胴6の表面における明るい部分が少なくなり、反射光72の輝度が高いと判定する範囲の面積が少なくなり、面積率が設定した面積率以下の値となるので、版胴6の表面におけるインキの過乳化を防止し、適正なインキの乳化状態とすることができる。
【0040】
したがって、版胴6の表面からの反射光72の輝度を測定することにより、インキの乳化状態をリアルタイムに把握することができる。
このため、いち早くインキの過乳化状態の兆候を検知することができ、検知に対応して湿し水の制御を行うことで早期に、インキの過乳化による印刷汚れなどが発生しない適正なインキの乳化状態とすることができ、印刷開始から終了まで印刷品質の良好な状態維持が可能となる。ひいては損紙の大幅な削減が期待できる。
しかも、反射光72の輝度が高い範囲の面積率でインキの乳化状態を判断するので、版胴6の表面のインキの乳化状態が均一でなくとも適正なインキの乳化状態とすることができる。
さらに、反射光検出装置31と制御装置56を設ければよいから、安価かつ容易に既存のオフセット輪転機に導入可能であるため、新規開発のオフセット輪転機だけでなく、すでに稼働している既存のオフセット輪転機でもインキの乳化状態の把握と的確な制御が実現できる。
【0041】
図3に示すように、制御装置56は、クラウドサーバー51と通信を行う。クラウドサーバー51はオフセット輪転機1とは独立して設けられ、後述する機械学習を実行する。
すなわち、本実施の形態の制御手段は、制御装置56とクラウドサーバー51で構成され、後述する機械学習の処理は制御装置56とクラウドサーバー51で任意に分担させることができる。
実施の形態の印刷システムでは、印刷実行中に版胴6の表面からの反射光72の輝度が高いと判定した範囲の面積率の算出を繰り返し、制御装置56またはクラウドサーバー51は算出した面積率のデータを蓄積し、蓄積された面積率に応じてインキの乳化状態を判断し、適正なインキの乳化状態となる湿し水の制御モデルを機械学習する。
そして制御装置56またはクラウドサーバー51は機械学習の結果を使用して、面積率の算出結果に対応して湿し水の制御モデルを、適正なインキの乳化状態となる最適な湿し水の供給となる制御モデルに更新して出力する。
したがって、機械学習を行うことで、オペレータの経験や技量に関係なく、常に安定したインキの乳化状態の把握と的確な湿し水の制御が可能となる。
なお、機械学習することなく、面積率を算出したごとに湿し水を制御し、適正なインキの乳化状態とすることも可能である。
【0042】
図2に示す実施の形態では、反射光検出装置31を版胴6と対向して設け、版胴6の表面からの反射光72の輝度を測定するようにして、インキの乳化状態を検出する対象が版胴6の場合を示しているが、本発明でインキの乳化状態を検出する対象は版胴6に限定されない。
例えば、
図4に示すように、反射光検出装置31をインキローラ27と対向して設け、インキローラ27の表面からの反射光72の輝度を測定するようにして、インキの乳化状態を検出する対象をインキローラ27としてもよい。
また、
図5に示すように、反射光検出装置31をインキ揺動ローラ26と対向して設け、インキ揺動ローラ26の表面からの反射光72の輝度を測定するようにして、インキの乳化状態を検出する対象をインキ揺動ローラ26としてもよい。
【0043】
つまり、版胴6に限らずインキローラ27やインキ揺動ローラ26といった版胴6へインキを供給する任意のローラの表面からの反射光72の輝度を測定する構成でも本発明の印刷システムは実施できる。
また、反射光72の輝度の測定は1箇所に限定されず、1つの印刷ユニット5内で反射光検出装置31を複数設けてもよい。例えば、上記版胴6の表面からの反射光72の検出に加えて、インキローラ27の表面からの反射光72を検出する反射光検出装置31をさらに設けてもよい。
【0044】
図3に示すように、制御装置56は、インキの乳化状態を制御するためのデータとして、先に述べた反射光72の輝度の高い範囲の面積率に加えて以下のデータを検出して後述の機械学習を制御する。
図3は機械学習に関する制御系の概要図で、制御装置56と、本発明の印刷システムに関するデータの受送信を行う対象を示している。
制御装置56は、オフセット輪転機1の運転状況の情報として、印刷開始時の湿し水の供給量、印刷開始時のインキの供給量、印刷する絵柄の情報を取得する。
さらに、印刷実行中は、印刷中の印刷速度(版胴6の回転速度)、印刷中の湿し水の供給量、印刷中のインキの供給量を随時取得する。
【0045】
制御装置56は、印刷結果からインキの乳化状態を確認するため、次のようにして、印刷結果の検出情報を取得する。
印刷部3と排紙部4の間に設けた網点検出装置41により印刷終了した被印刷基材Wを撮影し、印刷した結果の網点形状および、網点面積率を検出する。インキの乳化状態が適正でない場合には、網点形状の悪化や、網点面積率の変化が現れる。網点形状および、網点面積率は印刷中に随時検出され、制御装置56に送信される。
制御装置56は、網点形状、網点面積率の変化が適正な状態から変化しているかを解析し、インキの乳化状態が適正かを判断することができる。網点形状、網点面積率の変化が適正な状態か否かの判断は、後述する機械学習に基づいて、基準が決定される。
制御装置56がインキの乳化状態が適正でないと判断した場合は、先に述べた反射光72の輝度が高い範囲の面積率を加味して湿し水の制御モデルを変更する。
【0046】
制御装置56は、印刷結果からインキ濃度を確認するため、次のようにして、印刷結果の検出情報を取得する。
印刷部3と排紙部4の間に設けた絵柄検査装置42により、印刷した絵柄を撮影し、インキ濃度を検出する。湿し水の供給が多く、インキが過乳化の場合には、インキ濃度が薄くなる変化が現れる。インキ濃度は印刷中に随時検出され、制御装置56に送信される。
制御装置56は、インキ濃度が適正な状態から変化しているかを解析し、インキの乳化状態が適正かを判断することができる。インキ濃度が適正な状態か否かの判断は、後述する機械学習に基づいて、基準が決定される。
インキ濃度が適正でない場合は、インキ装置21によりインキ供給量を制御する。
【0047】
オフセット輪転機による印刷において、インキの状態はオフセット輪転機1の温度と湿度に影響されることが知られている。このため、上述の反射光72の輝度が高い範囲の面積率からインキの乳化状態を正確に判断するためには、湿し水およびインキの温度を一定に保つ必要がある。
そこで、制御装置56は、オフセット輪転機1の温度および湿度の情報として、印刷開始時の湿し水温度、印刷開始時のインキ温度、印刷開始時の揺動ローラ通水温度、印刷開始時の版胴通水温度、印刷開始時の工場内の温度、印刷開始時の工場内の湿度を検出する。
【0048】
また、印刷中は、印刷中の湿し水温度、印刷中のインキ温度、印刷中の揺動ローラ通水温度、印刷中の版胴通水温度、印刷中の工場内の温度、印刷中の工場内の湿度を随時検出する。
工場内の温度および湿度は、図示しない公知の温度計、湿度計によって測定できる。温度計、湿度計の設置は、印刷ユニット5の側面上部など、オフセット輪転機1の近傍の任意の位置に設置できる。
制御装置56は、検出した温度、湿度に基づき、湿し水およびインキの温度を一定に保つ制御を行う。例えば、湿し水温度検出装置12の検出温度が一定の温度と異なる場合は湿し水冷却装置18により湿し水の温度を制御して一定の温度とする。インキ温度検出装置22の検出温度が一定の温度と異なる場合はインキ揺動ローラ冷却水温度制御装置29により冷却水の温度を制御して一定の温度とする。
【0049】
次に機械学習に関する制御について説明する。
本発明の印刷システムは、制御装置56が、上述の反射光72の輝度が高い範囲の面積率に加え、オフセット輪転機1の運転状況として、印刷開始時の湿し水の供給量、印刷開始時のインキの供給量、印刷する絵柄の情報、印刷中の印刷速度、印刷中の湿し水の供給量、印刷中のインキの供給量のデータ、オフセット輪転機の印刷結果の検出情報として、印刷結果より検出した網点形状、網点面積率、インキ濃度のデータ、オフセット輪転機1の温度、湿度の情報として、印刷開始時の湿し水温度、印刷開始時のインキ温度、印刷開始時の揺動ローラ通水温度、印刷開始時の版胴通水温度、印刷開始時の工場内の温度、印刷開始時の工場内の湿度、印刷中の湿し水温度、印刷中のインキ温度、印刷中の揺動ローラ通水温度、印刷中の版胴通水温度、印刷中の工場内の温度、印刷中の工場内の湿度のデータを取得し、これらのデータをクラウドサーバー51へインターネットを介して送信する。
【0050】
クラウドサーバー51はこれらのデータを蓄積し、機械学習を行う。機械学習の結果として、クラウドサーバー51は受信したデータに応じて、適正なインキの乳化状態となる湿し水の最適な制御およびインキの最適な制御を出力する制御モデルの作成および更新を行う。
例えば、制御装置56はクラウドサーバー51から出力されて更新された制御モデルに基づき、水元ローラ14、調量ローラ15の回転量の制御による湿し水の供給量および供給タイミングを調整し、インキの乳化状態が最適に保たれるように制御する。
上記に加え、インキ元ローラ24の回転量の制御によるインキの供給量および供給タイミングを調整してもよい。
【0051】
また、湿し水冷却装置18の制御による水舟13内の湿し水の温度の制御、インキ揺動ローラ冷却水温度制御装置29によるインキの温度の制御により、湿し水温度およびインキ温度が一定に保たれるように制御する。
制御は、これら全てを実施してもよく、いずれかを選択して制御してもよい。
また、制御は、制御装置56がクラウドサーバー51からの出力に応じて自動で制御してもよく、クラウドサーバー51からの出力をオペレータに通知し、オペレータが制御を行うようにしてもよい。
したがって、オフセット輪転機1の運転状況、印刷結果、温度、湿度が変化した場合に、オペレータの経験や技量に関係なく、常に安定したインキの乳化状態と的確な制御をしてインキの乳化状態を適正とすることが実現できる。
【0052】
本発明のシステムは、クラウドサーバー51を使用せず、エッジAIによる制御でもよい。エッジAIによる制御の一例としては、クラウドサーバー51で行っていた機械学習を、制御装置56で行うようにする。制御装置56は、検出したデータを使用して、制御装置56内で制御モデルの作成および更新を行う。制御装置56は、作成した制御モデルを使用して、湿し水およびインキの制御を行う。
エッジAIによる制御の場合には、クラウドサーバー51を使用する場合に比べて、データをクラウドサーバー51へ送受信する必要がないため、通信遅延を回避して処理の高速化が実現できる。
【0053】
本発明のシステムは、上記クラウドサーバー51による機械学習、または、エッジAIによる機械学習によって作成された学習済みの制御モデルを使用して制御を行うこともできる。
制御装置56は、機械学習は行わず、制御装置56が検出したデータを制御モデルに適用し、出力された結果に応じて湿し水およびインキの制御を行うこともできる。
学習済みの制御モデルを使用する場合は、制御装置56の処理能力が低い場合でも実施可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…オフセット輪転機、2…給紙部、3…印刷部、4…排紙部、5…印刷ユニット、6…版胴、7…ブランケット胴、8…圧胴、11…湿し水装置、13…水舟、14、…水元ローラ、21…インキ装置、26…インキ揺動ローラ、27…インキローラ、31…反射光検出装置、32…光源、33…カメラ、41…網点検出装置、42…絵柄検査装置、51…クラウドサーバー、56…制御装置、71…照射光、72…反射光。