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特開2023-59401脈波信号の解析装置、脈波信号の解析方法およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059401
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】脈波信号の解析装置、脈波信号の解析方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20230420BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20230420BHJP
   A61B 5/0507 20210101ALI20230420BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
A61B5/02 310B
A61B5/02 310K
A61B5/026 120
A61B5/0507
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169390
(22)【出願日】2021-10-15
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 博之
(72)【発明者】
【氏名】南野 哲男
(72)【発明者】
【氏名】石澤 真
(72)【発明者】
【氏名】長井 英仁
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA11
4C017AB01
4C017AB03
4C017AC03
4C017AC27
4C017AC28
4C017BC20
4C017BC23
4C017BD04
4C017CC02
4C017FF05
4C127AA10
4C127GG15
(57)【要約】
【課題】非観血的な方法で精度よく生体の心臓の状態を判定することができる脈波信号の解析装置、脈波信号の解析方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】解析装置(100)が機械学習装置として機能する場合、解析装置(100)は、生体の脈拍に対応する脈波信号を取得する脈波信号取得部(202)と、脈波信号に基づいて脈波波形を生成する脈波波形生成部(204)と、記脈波波形をリカレンスプロットに変換する変換部(206)と、リカレンスプロットを入力として、脈波波形を生体の心臓の状態に応じて分類することにより機械学習を行い、機械学習モデルを生成する分類部(208)とを含む。解析装置が判断装置として機能する場合、解析装置は、機械学習モデルを用いてリカレンスプロットに対応する生体の心臓の状態を判断する判断部(302)を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の脈拍に対応する脈波信号を取得する取得部と、
前記脈波信号に基づいて脈波波形を生成する生成部と、
前記脈波波形をリカレンスプロットに変換する変換部と、
前記リカレンスプロットを入力として、前記脈波波形を前記生体の心臓の状態に応じて分類することにより機械学習を行い、機械学習モデルを生成する分類部と
を備える、脈波信号の解析装置。
【請求項2】
前記分類部は畳み込みニューラルネットワークの機械学習アルゴリズムを用いて分類を行う、請求項1に記載の脈波信号の解析装置。
【請求項3】
前記取得部は血圧脈波の脈波信号を取得する、請求項1または2に記載の脈波信号の解析装置。
【請求項4】
前記生体の心臓の状態は、心房細動および洞調律を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の脈波信号の解析装置。
【請求項5】
生体の脈拍に対応する脈波信号を取得する取得部と、
前記脈波信号に基づいて脈波波形を生成する生成部と、
前記脈波波形をリカレンスプロットに変換する変換部と、
機械学習モデルを用いて前記リカレンスプロットに対応する前記生体の心臓の状態を判断する判断部と
を備え、前記機械学習モデルは、複数のリカレンスプロットを入力として、前記脈波波形を前記生体の心臓の状態に応じて分類することにより機械学習が行われたモデルである、脈波信号の解析装置。
【請求項6】
前記機械学習モデルは畳み込みニューラルネットワークの学習アルゴリズムを用いて構成される、請求項5に記載の脈波信号の解析装置。
【請求項7】
前記取得部は血圧脈波の脈波信号を取得する、請求項5または6に記載の脈波信号の解析装置。
【請求項8】
前記生体の心臓の状態は、心房細動および洞調律を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の脈波信号の解析装置。
【請求項9】
生体の脈拍に対応する脈波信号を取得するステップと、
前記脈波信号に基づいて脈波波形を生成するステップと、
前記脈波波形をリカレンスプロットに変換するステップと、
前記リカレンスプロットを入力として、前記脈波波形を前記生体の心臓の状態に応じて分類することにより機械学習を行い、機械学習モデルを生成するステップと
を備える、脈波信号の解析方法。
【請求項10】
前記生成するステップにおいて、畳み込みニューラルネットワークの機械学習アルゴリズムを用いて分類を行う、請求項9に記載の脈波信号の解析方法。
【請求項11】
前記取得するステップにおいて、血圧脈波の脈波信号を取得する、請求項9または10に記載の脈波信号の解析方法。
【請求項12】
前記生体の心臓の状態は、心房細動および洞調律を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の脈波信号の解析方法。
【請求項13】
生体の脈拍に対応する脈波信号を取得するステップと、
前記脈波信号に基づいて脈波波形を生成するステップと、
前記脈波波形をリカレンスプロットに変換するステップと、
機械学習モデルを用いて前記リカレンスプロットに対応する前記生体の心臓の状態を判断するステップと
を含み、前記機械学習モデルは、複数のリカレンスプロットを入力として、前記脈波波形を前記生体の心臓の状態に応じて分類することにより機械学習が行われたモデルである、脈波信号の解析方法。
【請求項14】
前記機械学習モデルは畳み込みニューラルネットワークの学習アルゴリズムを用いて構成される、請求項13に記載の脈波信号の解析方法。
【請求項15】
前記取得するステップにおいて、血圧脈波の脈波信号を取得する、請求項13または14に記載の脈波信号の解析方法。
【請求項16】
前記生体の心臓の状態は、心房細動および洞調律を含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の脈波信号の解析方法。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の脈波信号の解析装置として機能させるコンピュータプログラム。
【請求項18】
コンピュータを、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の脈波信号の解析装置として機能させるコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脈波信号の解析装置、脈波信号の解析方法およびコンピュータプログラムに関し、特に、自動血圧計等に付帯した脈波検出機能を用いた脈波信号の解析装置、脈波信号の解析方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の脈の打ち方が乱れる不整脈には、脈が途中で飛ぶ期外収縮や、脈が速くなる頻脈、脈が遅くなる徐脈等の種々のタイプがあり、正確に診断することが重要である。不整脈の一種に心房細動があり、これは心房全体が非常に速く小刻みに興奮収縮し、その興奮が無秩序に心室に伝わることによって心臓の収縮および拡張が障害され、規則的な拍動が失われる状態を言う。心房細動は心臓病の中でも重要な病気であり、心房細動を早期に発見し適切な治療を開始することは、心原性脳梗塞の予防のために重要である。このため、心房細動の検出の精度を改善するための様々な研究が行われている。
【0003】
近年、人工知能の発展に伴い、生体の心臓の状態の予測に人工知能を用いることが検討されている。例えば、心房細動の判定に人工知能を用いて心房細動の特定に役立てる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6931880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体の心臓の状態は心電図検査により発見することができる。例えば、特許文献1には、心電図における波形データに予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報を出力するピーク推定モデルを用いて、心電図の波形のタイプの特定する技術が開示されている。しかしながら、心電図検査は健康診断や人間ドック等で行わなければならず、時間がかかり、煩雑である。また、心電図検査は観血的であるため、感染対策や安全性への配慮が必要となる。特に、医療サービスの乏しい地域では、このような心電図検査を受けること自体が難しい。
【0006】
さらに、人工知能により心房細動を判定する場合、心電図波形を一定期間に区切った入力信号として用いるが、入力信号のうち解析対象となる区間の波形に心房細動の特徴が顕著に表れない場合もある。したがって、解析対象の区間が比較的短い場合であっても当該区間内の緩やかな波形の変化をとらえて精度の高い判定を行うことが望まれている。
【0007】
本開示はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非観血的な方法で精度よく生体の心臓の状態を判定することができる脈波信号の解析装置、脈波信号の解析方法およびコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様によれば、
生体の脈拍に対応する脈波信号を取得する取得部と、
前記脈波信号に基づいて脈波波形を生成する生成部と、
前記脈波波形をリカレンスプロットに変換する変換部と、
前記リカレンスプロットを入力として、前記脈波波形を前記生体の心臓の状態に応じて分類することにより機械学習を行い、機械学習モデルを生成する分類部と
を備える、脈波信号の解析装置を提供する。
【0009】
ここで、前記分類部は畳み込みニューラルネットワークの学習アルゴリズムを用いて分類を行うものとすることができる。
【0010】
また、前記取得部は血圧脈波の脈波信号を取得するものとすることができる。
【0011】
また、前記生体の心臓の状態は、心房細動および洞調律を含むものとすることができる。
【0012】
本開示の別の態様によれば、生体の脈拍に対応する脈波信号を取得する取得部と、
前記脈波信号に基づいて脈波波形を生成する生成部と、
前記脈波波形をリカレンスプロットに変換する変換部と、
機械学習モデルを用いて前記リカレンスプロットに対応する前記生体の心臓の状態を判断する判断部と
を備える、脈波信号の解析装置を提供する。
【0013】
ここで、前記機械学習モデルは畳み込みニューラルネットワークの学習アルゴリズムを用いて構成されるものとすることができる。
【0014】
また、前記取得部は血圧脈波の脈波信号を取得するものとすることができる。
【0015】
また、前記生体の心臓の状態は、心房細動および洞調律を含むものとすることができる。
【0016】
本開示の他の態様によれば、
生体の脈拍に対応する脈波信号を取得するステップと、
前記脈波信号に基づいて脈波波形を生成するステップと、
前記脈波波形をリカレンスプロットに変換するステップと、
前記リカレンスプロットを入力として、前記脈波波形を前記生体の心臓の状態に応じて分類することにより機械学習を行い、機械学習モデルを生成するステップと
を備える、脈波信号の解析方法を提供する。
【0017】
本開示の他の態様によれば、
生体の脈拍に対応する脈波信号を取得するステップと、
前記脈波信号に基づいて脈波波形を生成するステップと、
前記脈波波形をリカレンスプロットに変換するステップと、
機械学習モデルを用いて前記リカレンスプロットに対応する前記生体の心臓の状態を判断するステップと
を備える、脈波信号の解析方法を提供する。
【0018】
本発明の他の態様によれば、コンピュータを、上記の脈波信号の解析装置として機能させるコンピュータプログラムを提供する。
【0019】
本発明の他の態様によれば、上記のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、生体の脈拍に対応する脈波信号を取得し、脈波信号に基づいて脈波波形を生成し、脈波波形をリカレンスプロットに変換し、リカレンスプロットを入力として、脈波波形を前記生体の心臓の状態に応じて分類することにより機械学習を行い、機械学習モデルを生成する。したがって、非観血的で簡便な手法により脈波波形から心臓の状態の正確な診断につながる機械学習モデルを生成することができる。
【0021】
また、生体の脈拍に対応する脈波信号を取得し、脈波信号に基づいて脈波波形を生成し、脈波波形をリカレンスプロットに変換し、機械学習モデルを用いてリカレンスプロットに対応する被験者の状態を判断する。したがって、非観血的で簡便な手法により脈波波形から高い精度で心臓の状態を判断する心房細動を検出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る脈波信号の解析装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る制御部の機能構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る制御部の機能構成を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る方法の手順を示すフローチャートである。
図5】上腕部で血圧を測定した場合の測定結果の例を示す図である。
図6】手首で血圧を測定した場合の測定結果の例を示す図である。
図7】上腕部で血圧を測定した場合の他の測定結果の例を示す図である。
図8】(a)は洞調律の被験者の脈波波形を示す図、(b)は(a)に基づいて生成されるリカレンスプロットを示す図である。
図9】(a)は心房細動の被験者の脈波波形を示す図、(b)は(a)に基づいて生成されるリカレンスプロットを示す図である。
図10】(a)は畳み込みネットワークの例、(b)は全結合ネットワークの例を示す図である。
図11】一実施形態に係る畳み込みネットワークのプログラム命令を示す図である。
図12】実施例に係る解析結果を示す図である。
図13図12に示す解析結果の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本開示の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明において、脈波とは心臓の拍動によって生じる生体情報に対応する波形データのことを言う。脈波のうち、上腕や手首で測定する血圧計、カメラやミリ波レーダ等の非接触デバイスなどからの血圧の変化によるものを血圧脈波、光電式センサなどからの容積の変化によるものを容積脈波といい、本実施形態ではこれらのいずれをも含む。
【0024】
図1は、本開示の実施形態に係る脈波信号の解析装置の機能構成を示すブロック図である。解析装置100は生体の心臓の状態の診断装置として機能するものであり、脈波検出部104と解析部101とが接続されて信号を通信することができるように構成される。この場合、通信手段は有線でもよく、あるいはBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に準拠したものであってもよい。脈波検出部104と解析部101とは一体として1つの装置に組み込まれてもよく、別個に構成されてもよく、また互いに着脱可能に構成されてもよい。
【0025】
解析部101は、記憶部102、A/D変換回路111、制御部112、入力部116、通知部118および電源120を含んで構成される。これらの構成要素は、バス128を介して接続されている。解析部102は、A/D変換回路111に接続された増幅回路110をさらに有する。
【0026】
脈波検出部104は、生体の心拍に応じて脈波信号を非観血的に検出するものであり、接触型または非接触型の生体センサとして構成され得る。例えば解析装置100は血圧計として構成することができ、この場合、脈波検出部104は腕の所定部位に巻くカフを含むものとして構成される。カフには膨張可能な袋状部材が設けられる。血圧計には、カフが腕等に巻かれた場合に当該カフの内側に位置する動脈の血流を遮断するための圧迫圧力が予め設定されている。脈波を検出する際には、この袋状部材内部の圧力を、当該圧迫圧力まで昇圧させた後に、所定の速度で徐々に降圧させることで血圧を測定する。カフで圧迫された血管は心臓の拍動に合わせて振動を起こすため、血圧測定における降圧の過程において、袋状部材内の圧力を逐次検出し、その圧力変化から脈波を検出する。
【0027】
脈波検出部104を血圧計とワイヤレス型の心電送信機の組み合わせとして構成し、解析部101をパーソナルコンピュータ等の情報処理装置として構成してもよい。この場合、脈波検出部104は血圧を計測する操作の実行を指示するボタン等の入力部、および計測結果を表示するための表示部を含むこととしてもよい。
【0028】
代替として、脈波検出部104は指尖脈波検出装置として構成してもよい。この場合、脈波検出部104は生体の手や足の指先に赤外線を照射し、指先を流れる血液の容積の変化を測定することにより脈波を検出する。
【0029】
あるいはまた、脈波検出部104はカメラや携帯端末等の非接触型デバイスとして構成してもよい。この場合、脈波検出部104は撮像された画像に基づいて血流によって生じる輝度変化を計測することにより脈波を検出する。
【0030】
あるいはまた、脈波検出部104は他の光学式心拍計測装置として構成してもよい。この場合、脈波検出部104は光学式心拍センサを有して構成される。脈波検出部104はLEDを用いて腕等の所定の位置に対して光を照射し、血流によって反射される散乱光の量を測定することで、脈波を検出する。
【0031】
次に、解析部101が有する諸機能について説明する。記憶部102は、本実施形態に係る処理を実行するためのプログラムや演算処理に用いられるデータまたは演算結果のデータを記憶するように構成される。具体的には、記憶部102は、USBフラッシュドライブ、リムーバブルハードディスク、磁気ディスクまたは光ディスク等の不揮発性記憶装置として構成することができる。記憶部102は、コンピュータのプロセッサによって読み出されて実行されるプログラムを記憶している。プロラムは、機械学習プログラム106と判断プログラム108とを含む。機械学習プログラム106は、脈波波形のデータを入力として機械学習を行い、機械学習モデルを生成するためのものである。判断プログラム108は、上記のように生成されたモデルである機械学習モデルを用いて、被験者の脈波波形のデータに基づいて心房細動を検出するためのものである。
【0032】
増幅回路110は、脈波検出部104から供給されたアナログの電気信号を増幅するように構成される。A/D変換回路111は、増幅回路110から出力されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換するように構成される。
【0033】
制御部112は、脈波検出部104から出力される脈波の電気信号に基づいて演算処理を行うものである。制御部112は、CPU(Central Processing Unit)122、RAM(Random Access Memory)124、ROM(Read Only Memory)126を有する。CPU122は、ROM126に記憶されているプログラムにしたがって、各部の制御およびデータの転送などを行う。RAM124は、脈波波形のデータなどの生体情報、およびCPU122におけるプログラムの実行中に発生する各種データを一時記憶する。CPU122はプログラムを実行することにより、心房細動の検出機能を実現する。なお、CPU122は、プログラムを実行することにより、心房細動の検出以外の様々な機能を実現するようにしてもよい。
【0034】
入力部116は、ユーザから情報処理のための命令や設定値の情報を入力するためのキーボード、ボタン、ダイヤルもしくはスイッチ、またはデータを入力するための入力インタフェース等として構成される。通知部118は、制御部112による情報処理の結果に基づく通知情報を出力するための液晶ディスプレイ、ランプ、またはスピーカ等として構成される。加えて、解析装置100は、当該装置内の各構成要素へ電源を供給するための電源120を含んでいる。
【0035】
なお、解析部101内に含まれている機能のうちの1つまたは複数を脈波検出部104に実装することとしてもよい。また、制御部112に含まれるCPU122、RAM124、およびROM126の各々は、複数の構成要素の組み合わせであってもよい。
【0036】
次に、図2を参照し、解析装置100を機械学習装置として構成した場合の機能構成について説明する。機械学習装置は、制御部112のCPU122が記憶部102に記憶された機械学習プログラム106を読み出して実行することにより実装される。この場合、制御部112は、脈波信号取得部202と、脈波波形生成部204と、変換部206と、分類部208とを含む。
【0037】
脈波信号取得部202は、生体の脈拍に対応する脈波信号を取得するように構成される。具体的には、脈波信号取得部202は、脈波検出部104において計測された生体の心臓の拍動に応じたデジタルの脈波信号を取得する。
【0038】
脈波波形生成部204は、デジタルの脈波信号から脈波波形の画像データを生成する。
【0039】
変換部206は、脈波波形の画像データをリカレンスプロットに変換する。
【0040】
分類部208は、リカレンスプロットを入力として、リカレンスプロットから抽出される特徴量に基づいて脈波波形を分類することにより機械学習を行い、機械学習モデルを生成するように構成される。
【0041】
次に、図3を参照し、解析装置100を判断装置として構成した場合の機能構成について説明する。判断装置は、制御部112のCPU122が記憶部102に記憶された判断プログラム108を読み出して実行することにより実装される。この場合、制御部112は、脈波信号取得部202と、脈波波形生成部204と、変換部206と、判断部302とを含む。
【0042】
脈波信号取得部202、脈波波形生成部204、および変換部206の機能は図2を参照して説明した機能と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
判断部302は、機械学習装置により生成された機械学習モデルを用いて、被験者のリカレンスプロットから特徴量を抽出し、抽出された特徴量に対応する被験者の心臓の状態を判断するものである。
【0044】
本実施形態では、生体の脈波波形のデータとその生体の診断結果とをセットにして使用し、コンピュータにデータのパターンを学習させる教師あり学習の学習アルゴリズムを用いる。この機械学習により、生体の脈波波形からその生体の心臓の状態を判断するための機械学習モデルを生成する。機械学習モデルを利用することにより、解析対象のデータの特徴を見出すことが可能となる。本実施形態では学習アルゴリズムとして畳み込みニューラルネットワークの学習アルゴリズムを用いて説明するが、教師あり学習において利用される学習アルゴリズムとしては、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、パーセプトロン等の種々の学習アルゴリズムを用いてよい。
【0045】
本実施形態において実行される処理は、機械学習装置により実行される学習フェーズと、判断装置により実行される推論フェーズとに分けられる。以下、図4のフローチャートを参照し、これらのフェーズにおいて行われる処理について説明する。
【0046】
(学習フェーズ)
学習フェーズでは、解析装置100が機械学習装置として機能し、大量のデータをニューラルネットワークに読み込ませて機械学習モデルを生成する。
【0047】
ステップS1において、脈波信号取得部202が、脈波検出部104において計測された生体の脈拍に対応するデジタルの脈波信号を取得する。
【0048】
次いで、ステップS2において、脈波波形生成部204が、脈拍のデジタル信号から脈波波形の画像データを生成する。
【0049】
次いで、ステップS3において、変換部206が、脈波波形の画像データをリカレンスプロットに変換する。
【0050】
次いで、ステップS4において、実行しているプログラムが機械学習プログラムである場合、分類部208が機械学習を行い、特徴量の値を抽出する。ここで、リカレンスプロットと、生体の心臓の状態、例えば被験者が心房細動であるか、または洞調律であるかを示す識別情報を機械学習モデルへの入力とする。分類部208は、入力されたリカレンスプロットから特徴量を抽出する。そして、抽出された特徴量に基づき、取得された脈波信号に対応する生体の心臓の状態を分類する。そして、分類された生体の心臓の状態に応じて脈波波形を分類することにより機械学習を行い、機械学習モデルを生成する。
【0051】
(推論フェーズ)
続いて、推論フェーズでは、解析装置100が判断装置として機能し、機械学習モデルに新しい事象を入力することで、機械学習モデルから出力を取得する。
【0052】
ステップS1において、脈波信号取得部202が、脈波検出部104において計測された生体の脈拍に対応するデジタルの脈波信号を取得する。
【0053】
次いで、ステップS2において、脈波波形生成部204が、脈拍のデジタル信号から脈波波形の画像データを生成する。
【0054】
次いで、ステップS3において、変換部206が、脈波波形の画像データをリカレンスプロットに変換する。
【0055】
ステップS4において、実行しているプログラムが判断プログラムである場合、判断部302が、ステップS6において機械学習済みの機械学習モデルを用いてリカレンスプロットから特徴量を抽出する。そして、抽出された特徴量に基づき、取得された脈波信号に対応する生体の心臓の状態を判断する。
【0056】
次に、脈波波形の画像データからリカレンスプロットを生成する処理について具体的に説明する。一例として、脈波検出部104を心電送信機と自動血圧計との組み合わせとして構成し、心電図と血圧との同時測定を行う場合について説明する。図5は解析装置100により上腕部で血圧を測定した場合の測定結果の例を示す。同図において、横軸は時間(s)を示す。また、曲線502は自動血圧計のカフ圧(mmHg)を示し、曲線504は心電送信機から出力される血圧脈波の振幅(mmHg)を示す。血管内圧がカフ圧を上回る期間においては血管が拡張することにより、血管の容積変化がカフの内圧を上昇させる。オシロメトリック法では、カフを減圧していく過程で心臓の拍動に同調したカフ圧の変動を観測することで血圧を求める。ここで観測されるカフ圧の変動が血圧脈波として計測される。
【0057】
図6は腕時計型血圧計により手首で血圧を測定した場合の測定結果の例を示す。同図において、横軸は時間(s)を示す。また、曲線602は自動血圧計のカフ圧(mmHg)を示し、曲線604は心電送信機から出力される血圧脈波の振幅(mmHg)を示す。手首で血圧を測定する場合は上腕部の場合と異なり、カフ圧が漸次増加する一方、脈波波形の振幅が漸次増加および減少するパターンを示している。腕時計型血圧計にはカフ圧と手首表面との間に圧力センサが設けられており、カフ圧を上昇させる過程で動脈付近にかかる圧力を圧力センサにより計測することで、カフ圧の変動が血圧脈波として計測される。
【0058】
図7は、上腕部で血圧を測定した場合の他の測定結果の例を示し、図7(a)はカフ圧を、図7(b)は脈波波形をそれぞれ示している。脈波波形704はカフ圧702が最大の時点から振幅の増加が開始している。血圧の測定は振幅の増加から減少までを含む枠706の範囲内で行われる。解析装置100では、このうち最大振幅値の前後を含む所定数の局所最大振幅値(ピーク)を持つデータ区間を抽出する。図7(b)に示す例では、枠708で囲まれた10個のピークを有するデータ区間が解析対象として使用される。この区間の波形は、リカレンスプロットの生成に用いられる。解析対象のデータ区間におけるピークの数は10個に限られず、最大ピークから前後に5(ピーク合計11)から8(ピーク合計17)を含んでもよい。
【0059】
次に、脈波波形のリカレンスプロットの生成について説明する。リカレンスプロットを生成するために、N×Nピクセルの二次元画像を用意する。一実施形態によれば、N=256とすることができる。
【0060】
時系列信号v(x)(x=1~N)の脈波波形において、2点v(i)、v(j)間の距離をD(i,j)=|v(i)-v(j)|と定義し、その値が閾値より小さい場合に二次元画像の座標(i,j)に点をプロットする。この場合は閾値との比較結果が0または1で表現されるため、距離情報D(i、j)をモノクロで表現したリカレンスプロットを生成することができる。リカレンスプロットの色は二点間距離に依存し、距離の増加につれて白から黒へと変化する。一実施形態によれば、距離情報D(i、j)の値をカラーで表現した値をプロットしてもよい。この場合はカラーのリカレンスプロットを生成することができる。この場合、リカレンスプロットは距離の増加につれて黄色から紺色に変化し得る。
【0061】
図8(a)は、洞調律の被験者の脈波波形を示す。また、図8(b)は、図8(a)の脈波波形に基づいてカラーで生成されるリカレンスプロットの例を示す。例えば、図8(a)の点804における信号の値がv(i)、点802における信号の値がv(j)のとき、点804と点802との間の距離情報D(i,j)は、点810にプロットされる。また、図8(a)の点804に対し、点802を含む水平方向の線上の任意の点の距離情報D(i,j)は、図8(b)において点810を含む水平方向の線上の対応する位置にプロットされる。同様に、図8(a)の点808における信号の値がv(i)、点806における信号の値がv(j)のとき、点808と点806との間の距離情報D(i,j)は、図8(b)の点812にプロットされる。また、図8(a)の点808に対し、点806を含む水平方向の任意の点の距離情報D(i,j)は、図8(b)において点812を含む水平方向の線上の対応する位置にプロットされる。
【0062】
図9(a)は、心房細動の被験者の脈波波形を示す。また、図9(b)は、図9(a)の脈波波形に基づいて生成されるリカレンスプロットの例を示す。図9(b)に示すリカレンスプロットは、図8(a)と比較して不規則な領域が多くなっている。
【0063】
次に、図10を参照し、本実施形態において用いられる畳み込みニューラルネットワークの概要について説明する。本実施形態に係るニューラルネットワークは、図10(a)に示す畳み込みネットワーク(Convolutional Network)と、図10(b)に示す全結合ネットワーク(Fully Connected Network)との組み合わせによって構成される。ニューラルネットワークには、リカレンスプロットの画像データと、対応する生体の心臓の状態の識別情報とが入力される。本実施形態において、生体の心臓の状態として、洞調律(Sinus Rhythm;SR)または心房細動(Atrial Fibrillation;AF)を示す識別情報が入力される。畳み込みネットワークでは、入力画像に対し、3×3ピクセルのフィルタ(カーネル)を使用して、畳み込み処理およびプーリング処理が繰り返される。図10(a)において、256×256ピクセルの画像データが入力される。一実施形態において、モノクロの画像データの場合、各ピクセルは0また1の値を含む。第1段階ではこの入力に対して畳み込み処理を行い、128×128ピクセルの特徴マップが出力される。次いで、128×128ピクセルの特徴マップを入力として畳み込み処理を行い、64×64ピクセルの8個の特徴マップが出力される。同様に、64×64ピクセルの8個の特徴マップを入力として、32×32ピクセルの8個の特徴マップ、16×16ピクセルの8個の特徴マップ、8×8ピクセルの16個の特徴マップ、および4×4ピクセルの16個の特徴マップが順次出力されている。特徴マップを出力する各畳み込み処理は、所定数の畳み込み層および1つのプーリング層を含み得る。
【0064】
畳み込みネットワークから出力される特徴マップは、全結合ネットワーク(Fully Connected Network)に接続される。ここで、1つの特徴マップは4×4=16個の特徴量を含んでいるため、16個の特徴マップの場合は256個の特徴量の入力となる。
【0065】
図10(b)において、入力層は64個のノード(ニューロン)を有しており、1つのノードには4個の特徴量が入力される。中間層は50個のノードを有し、入力層の全てのノードが中間層の各ノードに接続されている。入力層の各ノードからの出力は重みづけされて中間層の各ノードに入力される。中間層の各ノードでは入力された特徴量に基づいて出力を生成する。出力層は1個のノードを有し、中間層の全てのノードが出力層の1つのノードに接続されている。中間層の各ノードからの出力は重みづけされて出力層の各ノードに出力される。出力層のノードでは入力された特徴量に基づいて出力を生成する。出力層のノードは、生体が洞調律であるか、または生体が心房細動であるかを示す識別情報を出力する。一実施形態において、心房細動の値は1、洞調律の値は0とすることができる。ニューラルネットワークでは、全結合ネットワークからの出力に基づいて、入力されたリカレンスプロットに対応する生体が心房細動であるか否かを予測する。この予測結果および実測値に誤差関数を適用し、誤差が小さくなるようにニューラルネットワークの調整する処理を繰り返す。一実施形態において、誤差関数として交差エントロピー誤差関数を用いることができる。この場合、機械学習フェーズでは、誤差関数が1.0e-8以下になるまで機械学習が行われてもよい。この調整は、フィルタおよび重みづけパラメータの調整等を含み得る。
【0066】
推論フェーズでは、上記のように機械学習が行われた機械学習モデルにリカレンスプロットを適用し、該当する被験者のリカレンスプロットから生体の心臓の状態を判断する処理を行う。
【0067】
図11は、本実施形態に係る畳み込みニューラルネットワークのプログラム命令の例を示す。同図に示す例ではニューラルネットワークライブラリKerasに基づいて命令が記述される。この畳み込みニューラルネットワークで用いられるフィルタのサイズは3×3で固定である。畳み込みネットワークでは256×256ピクセルのカラーのリカレンスプロットの画像に対して、上から順に処理を実行する。
【0068】
図11に示す表において、各列は左から層(レイヤ)、出力形式、およびパラメータ数を示す。
【0069】
Conv2dは二次元畳み込み層であり、二次元畳み込み層のフィルタを二次元の入力データに対してスライドさせて、重なり合うピクセルごとに乗算する。この計算結果は単一の出力ピクセルにまとめられる。カーネルは、スライドする領域全体に対し同じ演算を行う。
【0070】
図11の1行目にはConv2dの出力形式が示されている。この出力形式において、「None」は入力する画像に依存して決まる数値である。また、「254,254,および8」は254×254の8個の特徴マップが出力されることを示す。パラメータ数は、トレーニングされたパラメータ数を示す。パラメータは「フィルタの縦×フィルタの横×入力のチャンネル数×出力のチャンネル数+バイアス(1チャンネルごとに1つ)」で求められる。入力チャンネル数は、モノクロの画像データの場合は1、カラーの画像データの場合は3である。出力チャンネル数はフィルタの数に対応する。例えば、1行目の畳み込み層においてサイズが3×3のフィルタを8個用いる場合、パラメータ数は、3×3×3×8+8=224、2行目の畳み込み層では、3×3×8×8+8=584となる。
【0071】
Dropoutはドロップアウト層であり、ここで一部の入力値を学習時に意図的に計算から外した特徴マップを生成する。この処理により、過学習を抑制し、一部が欠落した入力値でも正解が得られるような特徴マップが生成される。
【0072】
MaxPooling2dは二次元マックスプーリング層である。二次元マックスプーリング層では、畳み込み層で得られた特徴マップを所定のサイズ、例えば2×2の特徴マップに分割し、この2×2の特徴マップに含まれる特徴量のうちから最大値を返し、より小さいサイズの特徴マップにマッピングしていく。
【0073】
Flattenは平坦化層であり、全結合層への入力のために入力値のデータの一次元化を行う。図11に示す例では、最後の畳み込み層で4×4ピクセルの特徴マップが16個出力されるため、平坦化層で一次元化が行われ、256次元のベクトルに変換される。
【0074】
Denseは全結合層である。図11に示す例では、全結合層は、ノードが64個の入力層、ノードが10個の中間層、およびノードが1個の出力層を含み、出力層は値0(洞調律)または1(心房細動)を出力する。パラメータ数に関し、全結合層(Dense)では、重みとバイアスの数がパラメータ数となるため、一番目のDenseでは256(入力)×64(出力)+64(バイアス)=16448となる。
【0075】
解析装置100は、機械学習プログラム106または判断プログラム108を読み出し、当該プログラムに記述された図11の例に示す命令を上から順に実行する。機械学習フェーズでは、結果として出力された値と、実測値との誤差を判断する。
【実施例0076】
次に、本開示の実施例について説明する。
【0077】
(実施例1)
本実施例では、図1のように構成された解析装置に対し、図11に示す畳み込みニューラルネットワークを構成した。解析対象の脈波波形として、約300人の被験者について、一人当たり3回の血圧脈波波形を測定し、約700例の脈波信号を取得し、血圧脈波波形を生成した。測定結果のうち、心房細動は120、洞調律は588であった。
【0078】
次いで、血圧脈波波形から、256×256ピクセルのリカレンスプロットの画像データを生成した。ここで、リカレンスプロットはモノクロ、およびカラーの2種類の画像データを生成した。生成された画像データのうち、75%を機械学習用に、25%をテスト用に確保した。テスト用の画像データに、ラベル(心房細動:1,洞調律:0)をつけて畳み込みニューラルネットワークに入力し、誤差関数が1.0e-8以下になるまで機械学習を行った。
【0079】
次いで、機械学習された機械学習モデルを用いて、テスト用のデータに対して検証を行った。検証の結果、約98%の正確度で心房細動を検出することができた。
【0080】
比較例として、多層パーセプトロン(Multilayer perceptron、MLP)、完全畳み込みネットワーク(Fully Convolutional Network、FCN)、ResNet(Residual Network)、およびリザーバコンピューティング(Reservoir Computing、RC)を使用して、同様の測定結果について検証を行った。これらの比較例では、入力データとしてリカレンスプロットではなく、脈波波形の画像データを使用した。MLP、FCNおよびResNetについては、ニューラルネットワークライブラリライブラリKerasの関数を用いた。ここで、UCRリポジトリで公開されている時系列データ分類アーカイブのデータセットを使用し、バックエンド関数として、Tensorflowバックエンドを使用した。また、リザーバコンピューティングは、ライブラリとしてsklearnおよびscipyを用いた。ここで、UCRリポジトリで公開されている時系列データ分類アーカイブのデータセットを使用した。
【0081】
図12は、本実施例の測定結果を示す。図において、正確度は正解の数、すなわち心房細動と正しく判断された数(真陽性の数)および心房細動でないと正しく判断された数(真陰性の数)の合計を、全体の数で割った値を示す。特異度は、真陰性の数を、心房細動ではないが検査陽性であった数(偽陽性の数)および真陰性の数の合計で割った数を示す。感度は、真陽性の数を、真陽性の数および心房細動であり検査陰性であった数(偽陰性の数)の合計で割った数を示す。精度は、真陽性の数を、真陽性および偽陽性の合計で割った値を示す。
【0082】
モノクロの画像データを用いた本実施例の測定結果は、感度を除き比較例よりも高い値を示した。また、カラーの画像データを用いた本実施例の測定結果は、モノクロの画像データを用いた場合を含む他の測定結果と比較してより高い値を示した。
【0083】
図13は、図12に示すグラフのうち、80%以上の部分を拡大した図である。本実施例に係る測定結果は特異度においてMLPより高い値を示すことが分かる。また、本実施例の測定結果はモノクロおよびカラーの画像結果に関しほぼ同等の特異度を示すことが分かる。
【0084】
(実施例2)
本実施例では、実施例1と同様の畳み込みニューラルネットワークを構成し、実施例1と同じ血圧脈波波形のデータを使用した。また、リカレンスプロットの生成において、モノクロの画像データを生成した。
【0085】
脈波波形のデータのうち、心房細動の40人分、および洞調律の196人分について、3回の測定データを抽出した。そして、一人につき3回行われる測定のうち、2回分の測定データを学習用に、1回分の測定データをテスト用に確保した。すなわち、機械学習用として、全体の66.7%を学習用に、33.3%をテスト用に使用した。学習用データのうち、心房細動は80、洞調律は392である。また、テスト用データのうち、心房細動は40、洞調律は196である。被験者一人あたり3回の計測を行っているため、一人のデータが機械学習とテストの両方に含まれている。
【0086】
このようにして取得した学習用データを用いて畳み込みニューラルネットワークを構成し、テスト用データを用いて検証を行った。本実施例による正確度の測定結果を表1に示す。
表1
表1から明らかなように、本実施例に係る解析方法では99.55%という非常に高い正確度で心房細動の判断を行うことができた。
【0087】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本実施形態に係る装置、その構成要素、および上述した方法のステップは、ハードウェアによって、またはソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって実施することができる。装置またはその構成要素の諸機能がハードウェアによって実行されるかまたはソフトウェアによって実行されるかは本実施形態の設計における制約条件に従う。当業者は種々の方法を用いて特定の用途ごとに上述した構成要素の機能を実施することができるが、このような変更もまた、本開示の範囲内にある。
【0088】
本実施形態において説明される装置は例示にすぎず、他の方式でも実施可能である。例えば、上述した構成要素は機能を論理的に分割したものであり、実装において他の方式で構成要素を分割してもよい。また、上述した構成要素のうちの2つ以上が1つに統合されてもよく、構成要素の各々が物理的に単独で存在してもよい。
【0089】
本実施形態で説明される機能がソフトウェアの形態で実施されるとき、その機能を実現するためのコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶することができる。コンピュータプログラムは、コンピュータを本実施形態において説明される構成要素の全てまたは一部として機能させるように指示するためのいくつかの命令を含み得る。
【符号の説明】
【0090】
100 解析装置
101 解析部
102 記憶部
102 解析部
102 演算部
104 脈波検出部
106 機械学習プログラム
108 判断プログラム
108 スペクトル生成部
110 増幅回路
111 A/D変換回路
112 制御部
113 心房細動検出部
114 記憶部
116 入力部
118 通知部
120 電源
128 バス
202 脈波信号取得部
204 脈波波形生成部
206 変換部
208 分類部
302 判断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13