(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059431
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】鉛筆又は化粧料の軸体
(51)【国際特許分類】
B43K 19/02 20060101AFI20230420BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230420BHJP
A61Q 1/06 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B43K19/02 Z
A61K8/02
A61K8/73
A61Q1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169429
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮太
(72)【発明者】
【氏名】坂西 聡
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB232
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC352
4C083AD262
4C083AD271
4C083AD512
4C083DD11
(57)【要約】
【課題】従来の木軸と同様の易削り性を有し、環境に対して負荷が少ない鉛筆芯(色鉛筆芯を含む)の軸体、または、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウなどの棒状化粧料などの化粧料の軸体などを提供する。
【解決手段】 本発明の鉛筆又は化粧料の軸体は、鉛筆芯又は棒状化粧料を軸体材料組成物により被覆してなる鉛筆又は化粧料の軸体であって、前記軸体材料組成物が、少なくとも自然由来の体質材と自然由来の結合材とを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛筆芯又は棒状化粧料を軸体材料組成物により被覆してなる鉛筆又は化粧料の軸体であって、前記軸体材料組成物が、少なくとも自然由来の体質材と自然由来の結合材とを含有することを特徴とする鉛筆又は化粧料の軸体。
【請求項2】
前記軸体材料組成物は自然由来指数(水を含まない)が75%以上であることを特徴とする請求項1記載の鉛筆又は化粧料の軸体。
【請求項3】
前記自然由来の結合材がカルボキシメチルセルロース又はその塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉛筆又は化粧料の軸体。
【請求項4】
前記軸体材料組成物には、更に結合材をエステル架橋するカルボン酸基を有する架橋剤を含有することを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の鉛筆又は化粧料の軸体。
【請求項5】
少なくとも、鉛筆芯と、該鉛筆芯を被覆成形してなる軸体とを備えた鉛筆であって、前記軸体が請求項1~4の何れか一つに記載の軸体であることを特徴とする鉛筆。
【請求項6】
少なくとも、棒状化粧料と、該棒状化粧料を被覆成形してなる軸体とを備えた棒状化粧品であって、前記軸体が請求項1~4の何れか一つに記載の軸体であることを棒状化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の木軸と同様の易削り性、落下耐性、耐水性を有し、環境に対して負荷が少なく容易に製造することができる鉛筆芯又は化粧料の軸体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛筆や棒状化粧料などの軸体として、使用者に良好な感触を与える天然木材、特に米国産のレッドシダーなどの天然木材が、柔らかくナイフや鉛筆削りで削るのが容易であるなどの理由により用いられている。
ところで、近年では森林伐採などの乱伐により減少しつつあり、このような状況から環境破壊の問題が注目され、レッドシダーなどもその入手が困難等となり、代替材料の開発が行われている。
【0003】
従来において、鉛筆や棒状化粧料などの軸体の代替材料の技術として、例えば、
1) 熱可塑性樹脂と潤滑剤及び黒鉛あるいは顔料を含んだ芯材の棒状外周面に、軸方向に沿って凸条及び凹条を交互に連続して一体的に形成し、該芯材の外側には該石材の凹凸面に密着する如くして熱可塑性樹脂とセルロース繊維質及び発泡剤を含んだ軸材を形成し、かつ該軸材中のセルロース繊維質の一部が芯材の棒状外周面の凹凸部に喰い込み状に混入するようにしたことを特徴とする鉛筆(例えば、特許文献1参照)、
2) 鉛筆削りで削っても全く支障なく、しかも、この軸が加工性に優れていることから安価に製造し得る、鉛筆を提供するために、磨砕処理が施されてなるセルロース系微粉粒が樹脂に混合され、混合物が押出もしくは射出成形により成形され、さらにこの成形体が鉛筆の軸状に形成されて得られた軸中に、芯が挿通された鉛筆(例えば、特許文献2参照)、
【0004】
3) 木軸に代わる合成軸として優れた剛性、切削性、耐油脂浸透性等の物理的特性と、良好な使用感とを有し、しかも廃棄後に分解し易く、低熱量で燃焼でき、焼却時に有害物質を発生しない生分解性鉛筆型化粧品用合成軸およびその製造方法を提供するために、同一澱粉分子の反応性水酸基の水素を短鎖アシル基および長鎖アシル基で置換した澱粉エステルと、補強用フィラーとからなる生分解性熱可塑性材料を基材として成形される、中空筒状の生分解性鉛筆型化粧品用合成軸(例えば、特許文献3参照)、
4) 木製の軸の表面が熱発泡性樹脂で形成された発泡樹脂コート層で被覆されていることを特徴とする鉛筆(例えば、特許文献4参照)、
などが知られている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1~4では、環境に対して負荷が未だ多く、環境に対して負荷が少ないものを製造しようとすると、易削り性や落下耐性、耐水性などが低下したりするなどの課題があるのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-204399号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平6-255296号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2001-192502号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2014-19042号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の課題等について解消しようとするものであり、従来の木軸と同様の易削り性や落下耐性、耐水性を有し、環境に対して負荷が少なく、容易に製造することができる鉛筆芯又は棒状化粧料の軸体などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題について鋭意検討した結果、鉛筆芯又は棒状化粧料を軸体材料組成物により被覆してなる鉛筆又は化粧料の軸体であって、前記軸体材料組成物が、少なくとも特定の体質材と結合材とを含有することにより、上記目的の鉛筆又は化粧料の軸体が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の鉛筆又は化粧料の軸体は、鉛筆芯又は棒状化粧料を軸体材料組成物により被覆してなる鉛筆又は化粧料の軸体であって、前記軸体材料組成物が、少なくとも自然由来の体質材と自然由来の結合材とを含有することを特徴とする。
前記軸体材料組成物が自然由来指数(水を含まない)75%以上であることが好ましい。
前記軸体材料組成物には、更に自然由来の結合材がカルボキシメチルセルロース又はその塩であること、もしくは結合材をエステル架橋するカルボン酸基を有する架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の鉛筆は、少なくとも、鉛筆芯と、該鉛筆芯を被覆成形してなる軸体とを備えた鉛筆であって、前記軸体が上記構成の軸体であることを特徴とし、また、本発明の棒状化粧品は、少なくとも、棒状化粧料と、該棒状化粧料を被覆成形してなる軸体とを備えた棒状化粧品であって、前記軸体が上記構成の軸体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の木軸と同様の易削り性や落下耐性を有し、環境に対して負荷が少なく、容易に製造することができる鉛筆芯又は化粧料の軸体、並びに、この軸体を備えた鉛筆、棒状化粧品などを提供することができる。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0012】
本発明の鉛筆又は化粧料の軸体は、鉛筆芯又は棒状化粧料を軸体材料組成物により被覆してなる鉛筆又は化粧料の軸体であって、前記軸体材料組成物が、少なくとも自然由来の体質材と自然由来の結合材とを含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明に用いる自然由来の体質材としては、自然由来の木材などから得られる、おが屑や木粉、粉末セルロース、または、自然由来の無機粉体などを挙げることができる。
用いることができるおが屑としては、広葉樹材由来のものも針葉樹材由来のものも用いられ、特に限定されない。本発明で用いられるおが屑の具体的な樹種としては、スギ、マツ、カラマツ、アカマツ、トドマツ、ヒノキ、ブナ、トチ、コナラ、ミズナラ、ナラ、シナノキ、カンバ、ハルニレ、ラワン、ベイツガ等が挙げられる。特に、スギ、ヒノキ辺材、ブナ、トチ、ミズナラなどが好適に用いられる。また、これらの木材を製造する際に発生する廃棄物を有効利用してもよい。更に、これらのおが屑は、少なくとも1種(1種であっても、2種以上を組み合わせ、以下同様)を用いることができる。
おがくずの大きさは、分散性、成形性の点などから、平均粒径が10メッシュ以上であることが望ましく、更には粉砕にかかるエネルギーコストの点などから200メッシュ以下の範囲内のものを用いることが望ましい。
【0014】
用いることができる木粉としては、例えば、上述のおが屑で例示した各樹種から得られる木粉、上記おが屑や廃木材から得られる木粉や、サンダー粉等の少なくとも1種を用いることができる。また、分散性、成形性をより向上させるためには、木粉の平均粒径の上限としては、例えば2000μm以下が好ましく、下限としては、例えば100μm以上が好ましいが、ミクロフィブリル化したファイバー状のものであってもよい。なお、本発明における平均粒径は、レーザー回析・散乱法に準じて測定した値とすることができる。
【0015】
用いることができる粉末セルロースとしては、自然由来の植物のセルロース繊維を微粉砕して得られたセルロース粉末が好ましく、その平均粒子径は100μm以下、好ましくは10~50μmの範囲のものが好ましい。粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、商品名「KCフロック」(日本製紙ケミカル社製)、商品名「セオラス」(旭化成ケミカルズ社製)、商品名「アビセル」(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。
【0016】
用いることができる自然由来の無機粉体としては、タルク、炭酸カルシウム、ハンタイト(ハント石)、カオリン、セリサイト、ベントナイト、酸化チタンなどの少なくとも1種を用いることができる。
これらの無機粉体の平均粒径の上限としては、例えば50μm以下が好ましく、下限としては、例えば1μmが好ましい。
【0017】
これらの自然由来の体質材の含有量は、軸体材料組成物全量に対して、好ましくは、60~90質量%、更に好ましくは、70~80質量%とすることが望ましい。この自然由来の体質材の含有量を60質量%以上とすることにより、使用可能な切削性となり、90質量%以下とすることにより、使用可能な強度とすることができる。
また、これら自然由来の体質材のうち、無機粉体が占める割合は60質量%以下であることにより、軸体の落下耐性を向上し、鉛筆又は化粧料とした場合に、鉛筆芯又は棒状化粧料の内部での破損を防ぐことが可能となる。
【0018】
本発明に用いる自然由来の結合材としては、セルロース繊維(ナノファイバー含む)、メチルセルロース又はその塩、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ヒドロキシメチルプロピルセルロース又はその塩、酢酸セルロース又はその塩、アルギン酸ナトリウムなどの、少なくとも1種を用いることができる。上記各セルロースの塩としては、ナトリウム、アンモニウム、カルシウムなどを挙げられる。
これらの結合材は水溶性であることが好ましく、更には耐水性を付与する点から、カルボキシメチルセルロースアンモニウムであることが好ましい。
【0019】
これらの自然由来の結合材の含有量は、軸体材料組成物全量に対して、好ましくは、10~40質量%、更に好ましくは、20~30質量%とすることが望ましい。
この自然由来の結合材の含有量を10質量%以上とすることにより、使用可能な強度となり、40質量%以下とすることにより、使用可能な切削性とすることができる。
【0020】
本発明における軸体材料組成物には、上記自然由来の体質材、自然由来の結合材の他、本発明の効果を更に発揮せしめる点、耐水性を付与する点から、前記結合材を架橋する架橋剤などを更に含有することができる。
前記結合材を架橋する架橋剤としては、結合材をエステル架橋するカルボン酸基を有するものが好ましく、具体的には、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、ポリアクリル酸などを挙げられる。
これらの架橋剤の含有量は、軸体材料組成物全量に対して、耐水性発現の点、吸湿による強度低下を抑制する点、材料の変色を抑制する点から、好ましくは、0.1~5質量%、更に好ましくは、0.5~2質量%とすることが望ましい。
【0021】
更に、本発明の軸体材料組成物には、上記自然由来の体質材、自然由来の結合材、架橋剤の他、必要に応じて、軸体を着色するための着色剤(染料、無機顔料、有機顔料)、酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、天然色素などを適宜含有することができる。
【0022】
これらの軸体材料組成物は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、環境に対する負荷の点から、自然由来指数(水を含まない)75%以上であることが好ましい。
この「自然由来指数(水を含まない)」とは、ISO 16128に係る指数表示をいい、この自然由来指数(水を含まない)が75%以上、更に好ましくは、85%以上とすることにより、更に、環境に対して負荷がきわめて少ない、鉛筆芯又は化粧料の軸体が得られることとなる。
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)を75%以上とすることは、前述した自然由来の体質材、自然由来の結合材を適宜選択して達成することができる。
【0023】
本発明の鉛筆又は化粧料の軸体は、上述の自然由来の体質材、天然由来の結合材などから構成される配合組成物を、」例えば、ヘンシェルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーなどの混練機などを用いて乾式混合した後、水分率が40~80%となるように水(精製水、蒸溜水など)を加え混練を行い、スラリーを得、このスラリーを更に加温、脱気などを行いながら混練を行い、水分率を30~60%程度とした粘土状の混合物を得、この混合物を押出成形機などを用いて、所定径のダイスを用いて被覆する鉛筆芯や化粧料の外周に上記材料を被覆し、乾燥することにより、鉛筆、化粧料が得られることとなる。または、混練物を押出成形機などを用いて所定径のダイス、もしくはTダイなどを用いて、丸棒、もしくは板状に成形し、乾燥することで得る成形体を作製し、これらを加工して鉛筆芯や化粧料を挿入する方法により、鉛筆、化粧料を得ることもできる。なお、押出成形などの際のプレス圧力、含水率、天然由来の体質材及び結合材などの組み合わせにより、幅広く軸体の物性を制御できるため、求める軸体の質感、強度、成形性などを満足できる鉛筆又は化粧料に好適な軸体が得られることとなる。
【0024】
本発明において、上記軸体材料組成物により被覆する鉛筆芯の組成、形態などは、特に限定されず、焼成鉛筆芯(焼成色鉛筆芯を含む)や、非焼成鉛筆芯(非焼成色鉛筆芯を含む)などを挙げることができる。焼成鉛筆芯としては、例えば、黒鉛などの着色成分、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン、ポリビニルアルコール、アクリルアミド樹脂、塩素化パラフィン樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ブチルゴムなどの有機結合材、フタル酸エステルなどの可塑剤、メチルエチルケトン、水などの溶剤、ステアリン酸塩などの安定剤、ステアリン酸などの滑剤、カーボンブラックなどの充填材などの材料を混合して、分散、混練して、細線状に押出成形したものを焼成温度まで熱処理を施して得られた芯体に、シリコーン油、流動パラフィン、スピンドル油、スクワラン、α-オレフィンオリゴマーなどの油状物やワックス類を含浸させた焼成鉛筆芯などが挙げられる。
【0025】
また、上記軸体材料組成物により被覆する棒状化粧料の組成、形態なども、特に限定されず、アイライナー、アイブロウ、リップライナー、コンシーラーペンシル、アイシャドウペンシルなどの用途に用いられる各配合組成、例えば、結合材として油脂、ロウ、脂肪酸、炭化水素等のワックス類や粘土類と、着色剤及び体質材を混練し、棒状に成形して得られる化粧料などが挙げられ、これらは焼成型の棒状化粧料や、非焼成型の棒状化粧料などであってもよいものである。
【0026】
このように構成される本発明の鉛筆芯又は化粧料の軸体は、従来の木軸と同様の易削り性や落下耐性、耐水性を有し、環境に対して負荷が少なく、従来の鉛筆、化粧料の成形の際に用いている成形機などを改良することなく使用することができるので、容易に製造することができる鉛筆芯又は化粧料の軸体が得られることとなる。
【0027】
本発明の鉛筆は、少なくとも、上述した鉛筆芯を被覆成形してなる軸体が上記構成の軸体であることを特徴とし、また、本発明の棒状化粧品は、少なくとも、上述した棒状化粧料を被覆成形してなる軸体が上記構成の軸体であることを特徴とするものである。
本発明では、鉛筆芯、棒状化粧料を、任意の形状、例えば、断面形状が円形状(楕円を含む)、三角形状や六角形状などの多角形形状、管形状などに成形可能であるため、被覆成形、切削加工などの種々の加工方法により、各形状等の鉛筆、棒状化粧品とすることができる。
【実施例0028】
以下に本発明を実施例、比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1~8及び比較例1の鉛筆芯は、下記製法により得た鉛筆芯を用いた。
黒鉛60質量%、粘土40質量%を混合ヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率40%となるように精製水を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を30%程度とした粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径2.5mmのダイスにて成形し、この成形体を60℃環境下にて乾燥した後、800~1400℃で、12~24時間焼成し、直径2.0mmの芯体を得た。得られた芯体に、α-オレフィンオリゴマーを含浸させ、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯を得た。
【0029】
(実施例1)
ハント石粉末(平均粒径2μm) 90質量%
セルロース粉末(平均粒径45μm) 10質量%
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)は100.0%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率40%となるように精製水を加え混練を行った。
得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を30%程度とした粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯外周に材料を被覆した。
この成形体を60℃環境下にて乾燥し、鉛筆を得た。
【0030】
(実施例2)
スギ系木材おが屑(16メッシュ) 70質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 30質量%
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)は92.5%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率50%となるように精製水を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を40%程度とした粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯外周に材料を被覆した。この成形体を60℃環境下にて乾燥し、鉛筆を得た。
【0031】
(実施例3)
タルク(平均粒径8μm) 40質量%
スギ系木材おが屑(16メッシュ) 40質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 20質量%
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)は95.0%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率50%となるように精製水を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を40%程度とした、粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯外周に材料を被覆した。この成形体を60℃環境下にて乾燥し、鉛筆を得た。
【0032】
(実施例4)
タルク(平均粒径8μm) 30質量%
セルロース粉末(平均粒径45μm) 60質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 10質量%
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)は97.5%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率50%となるように精製水を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を40%程度とした、粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯外周に材料を被覆した。この成形体を60℃環境下にて乾燥し、鉛筆を得た。
【0033】
(実施例5)
タルク(平均粒径8μm) 30質量%
セルロース粉末(平均粒径45μm) 60質量%
カルボキシメチルセルロースアンモニウム 10質量%
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)は97.5%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率50%となるように精製水を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を40%程度とした、粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯外周に材料を被覆した。この成形体を60℃環境下にて乾燥し、180℃にて加熱して結合材を非水溶化し、鉛筆を得た。
【0034】
(実施例6)
タルク(平均粒径8μm) 30質量%
セルロース粉末(平均粒径45μm) 60質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 10質量%
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)は97.5%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率50%となるように5%コハク酸水溶液を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を40%程度とした粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯外周に材料を被覆した。この成形体を60℃環境下にて乾燥した後、180℃にて加熱して結合材を架橋し、鉛筆を得た。
【0035】
(実施例7)
タルク(平均粒径8μm) 30質量%
セルロース粉末(平均粒径45μm) 60質量%
メチルセルロース 10質量%
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)は97.5%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率50%となるように精製水を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を40%程度とした、粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯外周に材料を被覆した。この成形体を60℃環境下にて乾燥し、鉛筆を得た。
【0036】
(実施例8)
タルク(平均粒径8μm) 30質量%
セルロース粉末(平均粒径45μm) 60質量%
メチルセルロース 10質量%
この軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)97.5%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率50%となるように5%コハク酸水溶液を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を40%程度とした、粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯外周に材料を被覆した。この成形体を60℃環境下にて乾燥した後、180℃にて加熱して結合材を架橋し、鉛筆を得た。
【0037】
(実施例9)
〈固形化粧料の調製〉
ミツロウ 20部
オゾケライト 10部
マイクロクリスタリンワックス 10部
カルナバロウ 8部
ワセリン 7部
ラノリン 5部
流動パラフィン 7部
ミリスチン酸イソプロピル 4部
上記の配合材料を溶解し、これに鉄黒10部と弁柄19部を加えて、撹拌、分散後にミキサーで混練、室温まで冷却した後、押出成形機により2.0mmの茶褐色の固形化粧料を得た。
【0038】
タルク(平均粒径8μm) 30質量%
セルロース粉末(平均粒径45μm) 60質量%
メチルセルロース 10質量%
上記の軸体材料組成物の自然由来指数(水を含まない)97.5%であった。
上記配合組成物をヘンシェルミキサーで乾式混合した後、水分率50%となるよう精製水を加え混練を行った。得られたスラリーを加温、脱気を行いながら混練を行い、水分率を40%程度とした、粘土状の混合物を得た。これを油圧プランジャー式押出成形機を用いて、直径9.0mmのダイスにて、上記の直径2.0mmの固形化粧料を被覆した。この成形体を60℃環境下にて乾燥し、棒状化粧品を得た。
【0039】
(比較例1)
鉛筆(重量比2%のパラフィンワックス含浸処理が施されたインセンスシダー板材を切削加工し、上記直径2.0mm、硬度HBの鉛筆芯を被覆した鉛筆)
【0040】
(比較例2)
公知の再生天然素材を使用した鉛筆であり、結合材としては熱可塑性樹脂を使用しているため、非自然由来の素材が使用されている。下記組成からなり、自然由来指数は70.0%である。
ポリプロピレン(PP) 20重量%
木粉 70重量%
無水マレイン酸がグラフトしたポリプロピレン 1重量%
アミドワックス 3重量%
ステアリン酸 1重量%
窒化ホウ素 5重量%
【0041】
上記で得られた実施例1~9及び比較例1~2の鉛筆について、自然由来指数、下記評価方法により、易削り性について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0042】
(自然由来指数)
実施例1~9及び比較例1~2の軸体の自然由来指数(水を含まない)は芯を除いた軸材に配合した原料の重量比より、ISO 16128に定義された、自然原料および自然由来原料中の自然由来部分の、水を含まない重量を用いて組成比を百分率で算出することにより求められる。この値が高いほど、動物や植物由来の材料比率が高く、石油由来材料の使用量が少ないことから、環境への負荷が小さいと示すことができる。
【0043】
(易削り性の評価方法)
実施例1~9及び比較例1~2の鉛筆について、鉛筆削りを利用して先端を直径2mmに整えた後、回転モーメント測定装置に連結した固定治具に設置された鉛筆削りを使用して、鉛筆削りと反対側を手で回転させ、芯が尖るまで切削を行った。この間の回転モーメントのピーク値を測定し、下記評価基準で易削り性(切削性)の評価とした。この値が0.1N未満であれば容易に切削可能であり、0.2N・mを超えると硬く、切削が難しいと言える。
評価基準:
○:容易に削れる(0.1N・m未満)
△:削れる(0.1N・m以上0.2N・m未満)
×:削りにくい(0.2N・m以上)
【0044】
【0045】
上記表1の評価結果を考察すると、本発明の範囲内である実施例1~9は、従来の比較例1、2と同様の、易削り性を有しながら、環境に対して負荷が少なく容易に製造することができることが確認できた。また、実施例2~9では、高い自然由来指数を維持しながら、体質材中の無機粉体比率を60%以下とすることにより、コンクリート床へ75cmの高さから10回の自由落下を行い評価したところ、鉛筆又は化粧料本体、及び鉛筆芯又は棒状化粧料に破損は見られず、十分な落下耐性を有することを確認した。更に、実施例5,6,8における、自然由来の結合材として、カルボキシメチルセルロースアンモニウムを用いることにより非水溶化、または、エステル架橋するカルボン酸基を有する架橋剤により架橋したものでは、耐水性(精製水中に製造した鉛筆を24時間浸漬後の耐水性)を評価したところ、崩壊しないことが確認され、十分な耐水性を発揮できることを確認した。