(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059439
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】水流発生装置
(51)【国際特許分類】
F04D 13/04 20060101AFI20230420BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
F04D13/04
F04D29/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169446
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】521453611
【氏名又は名称】株式会社シンコー製作所
(71)【出願人】
【識別番号】521454940
【氏名又は名称】糸井 孝
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新川 孝和
(72)【発明者】
【氏名】糸井 孝
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC28
3H130BA42C
3H130BA87A
3H130BA97A
3H130CA06
3H130DA02Z
3H130DB08Z
3H130DD07X
3H130EA02C
3H130EC16E
(57)【要約】
【課題】水棲生物への悪影響を回避しながら、水流を良好に発生させることができる水流発生装置を提供する。
【解決手段】水流発生装置1は、回転自在な風車2と、上収容空間と下収容空間とが内部に区画された筒状のケーシング11であって下収容空間に連通する横向きの吐出口19を有するケーシング11と、ケーシング11の内部を上収容空間と下収容空間とに跨って上下に延び、風車2に、風車2の回転に同伴して風車2と同軸まわりに回転可能に連結された回転軸と、上収容空間に収容され、回転軸12を、風車2と同軸まわりに回転可能に支持する軸受と、下収容空間に収容され、回転軸12に、回転軸12に同伴回転可能に連結されたインペラ3であって、回転によって、下収容空間の内部の水を吐出口19からケーシング11の外へ送り出すインペラ3とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に水流を発生させるための水流発生装置であって、
回転自在な風車と、
筒状の上収容空間と、前記上収容空間と仕切られた下収容空間とが、内部に区画された筒状のケーシングであって、前記下収容空間に連通する吐出口を有し、前記風車の下方に配置されたケーシングと、
前記ケーシングの内部を前記上収容空間と前記下収容空間とに跨って上下に延び、前記風車に、前記風車の回転に同伴して前記風車と同軸まわりに回転可能に連結された回転軸と、
前記上収容空間に収容され、前記回転軸を、前記風車と同軸まわりに回転可能に支持する軸受と、
前記下収容空間に収容され、前記回転軸に、当該回転軸に同伴回転可能に連結されたインペラであって、回転によって、前記下収容空間の内部の水を前記吐出口から前記ケーシングの外へ送り出すインペラとを含む、水流発生装置。
【請求項2】
前記下収容空間の下面を構成する下壁をさらに含む、請求項1に記載の水流発生装置。
【請求項3】
前記下壁の中央部に吸込穴が形成されている、請求項2に記載の水流発生装置。
【請求項4】
前記上収容空間と前記下収容空間とを仕切る仕切り壁をさらに含み、
前記下壁および前記仕切り壁が、前記インペラに一体に形成されている、請求項2または3に記載の水流発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水流を発生させる水流発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鑑賞用水槽等の水槽に代表される飼育容器(含:陶器製の睡蓮鉢やガラス製の金魚鉢、FRPの水槽、発泡スチロール製の鉢)において魚等の水棲生物を飼育する場合、水棲生物な酸素を供給する必要がある。水中に酸素を供給するためのエアレーション装置として、下記特許文献1に記載の装置が採用される。特許文献1に記載の装置は、電動の気泡発生装置を備えている。
【0003】
しかし、飼育容器の設置箇所は、屋内に限られない。すなわち、屋外において飼育容器で魚を飼育することがある。飼育容器を屋外に設置する場合に、上記の気泡発生装置をエアレーション装置として採用すると、電源コンセントが近くにないために電源の確保が難しかったり、電源が確保できても漏電のおそれがあったりする問題がある。そこで、電力ではなく、自然力を用いて駆動するエアレーション装置の開発が検討されている。
【0004】
下記特許文献2には、風力を用いて水中を攪拌して水中に酸素を供給する風力水浄化装置が記載されている。特許文献2に記載の風力水浄化装置の水流発生ユニットは、風車ユニットからの回転動力が伝達されるスクリュー軸によって回転するブレード支持体と、該ブレード支持体の外周から側方に突出するブレードとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-234638号公報
【特許文献2】特開2013-000645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の風力水浄化装置は、湖沼への設置を目的とする比較的大型の装置である。本体からブレードが側方に突出しているため、特許文献2に記載の風力水浄化装置を小型化するとしても、ブレードの存在のために、水中における風力水浄化装置の大型化は避けられない。とくに水槽等の収容容器内にこのような装置を設置する場合には、水中において装置が平面視で大型化するために、水棲生物の生息領域を狭めてしまい、水棲生物を良好に育成できないおそれがある。
【0007】
また、上記の風力水浄化装置ではブレードが露出しているため、回転軸が回転してブレートが回動すると、回動するブレートが水棲生物に当たるおそれがある。
【0008】
いずれにしても、特許文献2に記載の風力水浄化装置を用いて飼育容器内の水に水流を発生させようとすると、水棲生物への悪影響が生じるおそれがある。そのため、この悪影響を回避しながら、水流を良好に発生させることが求められている。
【0009】
そこで、この発明の目的は、水棲生物への悪影響を回避しながら、水流を良好に発生させることができる水流発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一実施形態は、水中に水流を発生させるための水流発生装置であって、筒状の上収容空間と、前記上収容空間と仕切られた下収容空間とが、内部に区画された筒状のケーシングであって、前記下収容空間に連通する吐出口が形成された側壁を有するケーシングと、ケーシングの上方に配置された回転自在な風車と、前記上収容空間と前記下収容空間とに跨って上下に延び、前記風車の回転に同伴回転可能な回転軸と、前記上収容空間に収容され、前記回転軸を、前記風車と同軸まわりに回転可能に支持する軸受と、前記下収容空間に収容され、前記回転軸に、当該回転軸に同伴回転可能に連結されたインペラであって、回転によって、前記下収容空間の内部の水を前記吐出口から前記ケーシングの外へ送り出すインペラとを含む、水流発生装置を提供する。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記水流発生装置が、前記下収容空間の下面を構成する下壁をさらに含む。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記下壁の中央部に吸込穴が形成されている。そして、前記吸込穴が、前記下壁の周縁部には形成されていなくてもよい。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記水流発生装置が、前記上収容空間と前記下収容空間とを仕切る仕切り壁をさらに含む。そして、前記下壁および前記仕切り壁が、前記インペラに一体に形成されている。
【0014】
平面視において、前記吐出口の吐出方向が、前記インペラの接線方向に一致していてもよい。前記インペラが複数枚のインペラ羽根を含む場合、前記複数枚のインペラ羽根が、前記インペラの回転方向の反対側に湾曲していてもよい。より具体的には、前記複数枚のインペラ羽根が、前記風車の風車羽根の湾曲方向に一致していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、下収容空間の内部に取り込まれた水が、インペラの回転によって下収容空間を旋回し、吐出口からケーシング外に送り出される。すなわち、吐出口が所定の向き(たとえば横向き)に水を吐出する。これにより、水流発生装置の周囲に前記所定の向きの水流が形成される(前記所定の向きの水流が発生する)。
【0016】
ケーシングの内部でインペラを回転させて旋回した水を吐出口から吐出して水流を発生させるので、ケーシングを設けずにインペラを露出させる場合と比較して、水の送り出す方向を、吐出口からの吐出方向(一または複数の方向)に集約できる。これにより、所望の方向に関し、水流の強さを強めることができる。また、筒状のケーシング内にインペラが収容されるので、インペラの外径がケーシングの内径より大きくなることはない。ケーシングの内径を小さく設定することにより、水中において装置の平面視での小型化を図ることが可能であり、その結果、水棲生物の生息領域を狭めてしまうことがない。
【0017】
また、ケーシング内にインペラが収容されるので、回転するインペラが水棲生物に当たるのを抑制または防止できる。
【0018】
これにより、水棲生物への悪影響を回避しながら、水流を良好に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る水流発生装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、前記水流発生装置の水流発生ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施形態に係る水流発生装置1の斜視図である。
図2は、水流発生装置1の側面図である。
【0022】
水流発生装置1は、鑑賞用水槽等の水槽に代表される飼育容器100に溜められた水の中で水流を発生させるための水流発生装置である。飼育容器100は、たとえば屋外に設置される。飼育容器100に溜められた水の中で水流を発生させるための水流発生装置である。飼育容器100において、メダカや金魚等の鑑賞魚等の水棲生物が生育される。
【0023】
図1および
図2に示すように、水流発生装置1は、水面WF(
図2参照)上において、回転自在な風車2と、風車2の回転動力により、インペラ3(
図2参照)を回転させて水中において水流を発生させる水流発生ユニット4と、飼育容器100の側壁101に引っ掛けて取り付けるための取り付けユニット5とを備えている。取り付けユニット5によって側壁101を挟持することにより水流発生装置1を側壁101に取り付けてもよいし、他の治具を用いて側壁101に取り付けるようにしてもよい。
【0024】
風車2は、水流発生ユニット4の上方に配置されている。取付けユニット5によって、水流発生装置1が側壁101に取り付けられた(側壁101の上端部に引っ掛けられた)状態で、風車2が水面上に位置し、水流発生ユニット4は、少なくとも下部が水中に浸漬されている。水流発生装置1によって飼育容器100内の水に水流が発生させられることにより、飼育容器100において飼育されている水棲生物に酸素が供給される。
【0025】
【0026】
図1~
図3に示すように、風車2は、複数枚の風車羽根6と、これら複数枚の風車羽根6を、所定の中心軸線Cまわりに回転対称となるように上下からそれぞれ保持する羽根ホルダとを含む。この羽根ホルダは、複数枚の風車羽根6を上方から保持する上ホルダ7と、複数枚の風車羽根6を下方から保持する下ホルダ8とを含む。上ホルダ7は、下向きの円筒容器状をなしている。上ホルダ7の下端縁には、風車羽根6の枚数と同数の切込(図示しない)が周方向に等間隔で配置されている。下ホルダ8は、上向きの円筒容器状をなしている。下ホルダ8の底壁には、当該底壁を上下に貫通するボルト穴が形成されている。このボルト穴を介してボルトが回転軸12の上端に固定されることにより、水流発生ユニット4への風車2の固定が達成される。下ホルダ8の上端縁には、風車羽根6の枚数と同数の切込(図示しない)が周方向に等間隔で配置されている。各風車羽根6の内周部の上端縁および下端縁がそれぞれ上下のホルダ7,8の切込に嵌められることにより、複数枚の風車羽根6が上下のホルダ7,8によって保持される。そして、上ホルダ7および複数枚の風車羽根6が、下ホルダ8に対して着脱可能に設けられている。なお、上ホルダ7を省略し下ホルダ8だけでも複数枚の風車羽根6を保持できるが、上ホルダ7でも併せて保持することで、耐久度が上がる効果と共に、風車羽根6の上端を保護して使用者の怪我のリスクを低減させる効果もある。
【0027】
図3に示すように、風車羽根6は、PVC等の樹脂材料を用いて形成されている。複数枚の風車羽根6は、同じ諸元を有している。各風車羽根6は、平面視において、風車2の回転方向Dr1と反対向きに凸の円弧状に湾曲する湾曲板である。風車羽根6は、その全域において風車2の中心軸線Cに平行である(各風車羽根6は、平羽根である)。風車羽根6の高さ寸法は、たとえば約100mmである。複数枚の風車羽根6を含む風車2の外径は、たとえば約176mmである。
【0028】
図4は、水流発生ユニット4の縦断面図である。
図5は、
図4を切断面線V-Vから見た断面図である。
図4は、
図5を切断面線IV-IVから見た断面図である。
【0029】
図2および
図4に示すように、水流発生ユニット4は、筒状のケーシング11と、ケーシング11の内部を上下に延びて、風車2の回転に同伴回転する回転軸12と、回転軸12を、風車2と同軸まわりに回転可能に支持する転がり軸受13と、筒状のケーシング11の内部において、回転軸12の下端部に、回転軸12と同伴回転可能に連結されたインペラユニット14とを備えている。屋外において水流発生装置1が側壁101に取り付けられた(上端部に取り付けた)状態で、風を受けて風車2が回転すると、これに伴って、インペラユニット14のインペラ3が回転する。筒状のケーシング11の内部の水が、ケーシング11に形成された横向きの吐出口19からケーシング11の外に送り出されることにより、水流発生装置1の周囲に横向きの水流が形成される。
【0030】
図4および
図5に示すように、ケーシング11は、円筒状である。ケーシング11は、円筒状の外筒15と、外筒15の内部を、外筒15に対し軸方向移動および回動不能に挿通された円筒状の内筒16と、外筒15の上開口15aを閉塞する上カバー17と、外筒15の下開口15bを閉塞する下カバー18とを備えている。ケーシング11の高さはたとえば約150mmであり、ケーシング11の外径はたとえば約35mmである。
【0031】
外筒15は、鋼(たとえばSUS)等の金属材料を用いて形成されている。外筒15には、インペラユニット14のインペラ3の側方に対向する、周方向の一つの位置に連通口50が形成されている。連通口50が、外筒15の内外を貫通する。
【0032】
ケーシング11は、連通口50に結合された吐出パイプ20をさらに含む。吐出パイプ20は横方向に延びる。吐出パイプ20の先端に吐出口が形成されている。吐出パイプ20の内部は、連通口50および外筒15の内部と連通している。吐出パイプ20は、鋼(たとえばSUS)等の金属材料を用いて形成されている。
【0033】
内筒16は、転がり軸受13を支持するための部材であり、転がり軸受13が内嵌固定される。内筒16は、PVC等の樹脂材料を用いて形成されている。内筒16は、外筒15にねじ(図示しない)等を用いて固定されている。
【0034】
上カバー17は、下向きの円筒容器状であり、ポリアミド等の樹脂材料や鋼等の金属材料を用いて形成されている。上カバー17は、外筒15の上端に外嵌されている。上カバー17の中央部には、回転軸12が挿通するための挿通穴22が形成されている。
【0035】
下カバー18は、上向きの円筒容器状であり、PVC等の樹脂材料を用いて形成されている。下カバー18は、外筒15の下端に外嵌される。下カバー18の中央部には、ケーシング11の下方の水を、ケーシング11内に取り入れるための複数の取入穴23が形成されている。取入穴23には、取入筒24が取り付けられている。取入筒24は、アクリル樹脂等の樹脂材料を用いて形成されている。取込筒24は省略することも可能である。
【0036】
図4に示すように、回転軸12は、ケーシング11の内部を上下に延びて、風車2の回転に同伴回転する。回転軸12は、鋼(たとえばSUS)等の金属材料を用いて形成されている。インペラユニット14が回転軸12の下端部に固定されている。後述するように、ケーシング11の内部は、上収容空間S1および下収容空間S2を含む。回転軸12は、ケーシング11の内部を、上収容空間S1および下収容空間S2を跨るように上下に延びて、風車2の回転に同伴回転する。
【0037】
転がり軸受13は、転がり軸受13Aと転がり軸受13Bとを含む。転がり軸受13A,13Bは、上収容空間S1に収容され、回転軸12を、風車2と同軸まわりに回転可能に支持する。転がり軸受13A,13Bは、内輪25と、外輪26と、これら内外輪25,26間に配置された複数の玉27とを備えている。
【0038】
内筒16の内周面16aはテーパ面で構成されている。このテーパ面は、中央部付近が最も小径であり、上端または下端に近づくに従って徐々に大径化している。一対の転がり軸受13A,13Bは、内周面16aの中央部を回転軸12の軸方向に挟むように、その軸方向に互いに所定の間隔を空けて配置されている。一対の転がり軸受13A,13Bが軸方向に間隔を空けて配置されているので、転がり軸受13によって、回転軸12を鉛直姿勢に良好に保持できる。
【0039】
回転軸12の外周には、転がり軸受13A,13Bの取り付け位置および転がり軸受13A,13Bの間を除く領域にはねじ29,30が形成されている。回転軸12の外周のねじ29にねじ係合されたダブルナット31が、転がり軸受13Aを内周面16aの中央部に向けて押さえ付ける。また、回転軸12の外周のねじ30にねじ係合されたダブルナット32が、転がり軸受13Bを内周面16aの中央部に向けて押さえ付ける。これにより、転がり軸受13A,13Bが、回転軸12の外周における取り付け位置に固定される。
【0040】
転がり軸受13A,13Bは、いわゆるセラミック軸受である。転がり軸受13A,13Bにおいて、複数の玉27はセラミック製であり内外輪25,26は鋼製である。そのため、潤滑材を用いることなく、転がり軸受13A,13Bの低トルク化が図られている。そのため、微風しか吹いておらず、風車2に小さい回転トルクのみしか作用しない場合であっても、回転軸12を回転させることが可能である。
【0041】
図4および
図5に示すように、インペラユニット14は、回転軸12に同伴回転可能に連結されたインペラ3と、上壁板(仕切壁)41と、下壁板(下壁)42とを備えている。インペラ3は、複数枚のインペラ羽根43を備えている。上壁板41および下壁板42は、インペラ3に一体に形成されている。そのため、上壁板41および下壁板42のそれぞれをインペラ3とは別の部材で形成する場合と比較して、部品点数の低減を図ることができる。
【0042】
インペラ3は、鋼(たとえばSUS)等の金属材料やPVC等の樹脂材料を用いて形成されている。インペラ3の高さはたとえば約15mmであり、インペラ3の外径はたとえば約28mmである。
【0043】
インペラユニット14には、回転軸12が挿通している。インペラユニット14の上壁板41に形成されたねじ穴44および下壁板42に形成されたねじ穴45が回転軸12の外周のねじ29と係合しており、これにより、インペラユニット14が回転軸12に一体回転可能に結合されている。
【0044】
インペラユニット14の上壁板41によって上収容空間S1の下面および下収容空間S2の上面が構成されている。また、インペラユニット14の下壁板42によって下収容空間S2の下面が構成されている。すなわち、上壁板41によって、ケーシング11の内部が、転がり軸受13A,13Bおよび内筒16を収容する上収容空間S1と、インペラ3を収容する下収容空間S2とに仕切られている。そして、上壁板41と下壁板42と外筒15の内周面とによって下収容空間S2が区画されている。
【0045】
下壁板42の中央部には、取入穴23からケーシング11の内部に取り込まれた水を下収容空間S2に吸い込むための複数の吸込穴46が形成されている。吸込穴46は小径を有する小穴である。ケーシング11の内部に取り込まれた水は、複数の吸込穴46を通って下収容空間S2に吸い込まれる。この吸込穴は、下壁板42の周縁部には形成されていない。
【0046】
インペラ3は、複数枚(たとえば8枚)のインペラ羽根43を備えている。これら複数枚のインペラ羽根43は、回転軸12まわりに回転対称である。
図5に示すように、複数枚のインペラ羽根43は、同じ諸元を有している。各インペラ羽根43は、平面視において、回転方向Dr2と反対向きに凸の円弧状に湾曲する湾曲板である。各インペラ羽根43は、その全域において回転軸12に平行に延びている。次に述べるように、インペラ3の回転方向Dr2は風車2の回転方向Dr1と、平面視において一致しているため、複数枚のインペラ羽根43の湾曲方向が、風車2の風車羽根6の湾曲方向に一致している。
【0047】
図5に示すように、平面視において、吐出パイプ20の延びる方向が、回転するインペラ3の接線方向に一致している。すなわち、吐出口19の吐出方向が、回転するインペラ3の接線方向に一致している。
【0048】
水流発生装置1が側壁101に取り付けられている状態で、風を受けて風車2が回転すると、風車2が回転方向Dr1(
図3参照)に回転し、この風車2の回転に同伴して、インペラ3が回転方向Dr2(
図5参照)に回転する。これにより、下収容空間S2の内部の水が下収容空間S2を旋回する。吐出口19の吐出方向が、回転するインペラ3の接線方向に一致しているので、下収容空間S2を旋回する水を、吐出口19からスムーズに吐出させることができる。
【0049】
また、各インペラ羽根43が、平面視において、回転方向Dr2と反対向きに凸の円弧状に湾曲しているので、大きな負荷トルクを生じることなく、インペラ3を回転させることができる。これにより、回転軸12に作用するのが低トルクである場合でも、インペラ3をスムーズに回転させることができる。
【0050】
また、インペラ3の回転によって、複数の吸込穴46から下収容空間S2に水が吸い込まれる。具体的には、ケーシング11の内部に水が取り込まれ、かつその水が、吸込穴46を介して下収容空間S2に吸い込まれる。吸込穴46が小穴であるので、ケーシング11の内部に取り込まれた水に藻や苔などの異物が含まれる場合であっても、これらの異物が、吸込穴46を介して下収容空間S2に吸い込まれることを抑制できる。下収容空間S2に藻や苔などの異物が進入すると、これらがインペラ羽根43や壁板41,42に絡まって、インペラ3のスムーズな回転を阻害するおそれがある。しかし、下収容空間S2への異物の吸い込みを抑制できるので、異物の進入に起因するインペラ3の回転不良を未然に防止できる。
【0051】
また、インペラ3が回転している場合には、ケーシング11の内部に取り込まれた水に含まれる異物は、インペラ3(インペラユニット14)の回転の遠心力を受けて、下壁板42の周縁部に向けて移動するようになり、下壁板42の中央部に向けて移動し難い。複数の吸込穴46が下壁板42の中央部に形成されているので、これらの異物が、吸込穴46を介して下収容空間S2に吸い込まれることを、より一層効果的に抑制できる。
【0052】
以上によりこの実施形態によれば、下収容空間S2の内部の水が、インペラ3の回転によって下収容空間S2を旋回し、吐出口19からケーシング11外に送り出される。これにより、水流発生装置1の周囲に横向きの水流が形成される。
【0053】
ケーシング11の内部でインペラ3を回転させて旋回した水を吐出口19から吐出して水流を発生させるので、ケーシング11を設けずにインペラ3を露出させる場合と比較して、水の送り出す方向を、吐出口19からの吐出方向(一または複数の方向)に集約できる。これにより、所望の方向に関し、水流の強さを強めることができる。また、筒状のケーシング11内にインペラ3が収容されるので、インペラ3の外径がケーシング11の内径より大きくなることはない。ケーシング11の内径を小さく設定することにより、水中において水流発生装置1の平面視での小型化を図ることが可能であり、その結果、水棲生物の生息領域を狭めてしまうことがない。
【0054】
また、ケーシング11内にインペラ3が収容されるので、回転するインペラ3が水棲生物に当たるのを抑制または防止できる。
【0055】
これにより、水棲生物への悪影響を回避しながら、水流を良好に発生させることができる。
【0056】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することができる。
【0057】
たとえば、転がり軸受13A,13Bとして、玉27がセラミック製のセラミック軸受を採用したが、低トルクで回転する低トルク用の軸受であれば、これに代えて採用できる。
【0058】
また、風車2に含まれる風車羽根6の枚数は4枚以外の枚数であってもよい。
【0059】
また、インペラ3に含まれるインペラ羽根43の枚数は8枚以外の枚数であってもよい。
【0060】
また、インペラ羽根43が、その全域において回転軸12に平行に延びるとして説明していたが、回転軸12に対し傾斜していてもよい。
【0061】
また、インペラ羽根43が平面視において回転方向Dr2に対して湾曲しているとして説明したが、インペラ羽根43が平面視において回転方向Dr2に対して湾曲せずに、放射状に平板状に延びていてもよい。
【0062】
また、上壁板41および下壁板42のそれぞれをインペラ3とは別の部材で形成してもよい。この場合、上壁板41および下壁板42は、インペラ3の回転に同伴回転可能ではなく、これらは、外筒15に固定される。
【0063】
また、吐出口19が1つだけ形成される場合を例に挙げて説明したが、吐出口19が複数形成されてもよい。具体的には、ケーシング11に、周方向に間隔を挙げて配置された複数の吐出口(吐出口19)が形成され、インペラ3の回転によって、下収容空間S2の水が、これら複数の吐出口19から吐出されていてもよい。
【0064】
また、吸込穴として、小穴からなる複数の吸込穴46を複数形成する場合を例に挙げて説明したが、吸込穴が、複数の円弧状穴から構成されていてもよい。
【0065】
また、飼育容器100を屋外ではなく、屋内に設置してもよい。屋内でも風通しのよい場所であれば、風車2は回転可能である。
【0066】
また、飼育容器100において、鑑賞魚ではなく、ブリ、マダイ、カンパチ等の養殖魚が生育されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 :水流発生装置
2 :風車
3 :インペラ
11 :ケーシング
12 :回転軸
13 :転がり軸受
19 :吐出口
41 :上壁板(仕切り壁)
42 :下壁板(下壁)
46 :吸込穴
S1 :上収容空間
S2 :下収容空間