(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059445
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】複数相磁気結合リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20230420BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20230420BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F37/00 C
H01F37/00 R
H01F27/24 J
H01F27/24 K
H01F27/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169455
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 悠暉
(72)【発明者】
【氏名】今岡 淳
(57)【要約】
【課題】リアクトルの体格を増大させることなくコアの急激な磁気特性の変化を抑制すること。
【解決手段】複数相磁気結合リアクトル12であって、各相電流に対応する複数の第1脚部32、34と、これらの第1脚部32、34に接続されて各第1脚部と共に各相電流に対応する磁路を成す少なくとも一つの第2脚部36とを有するコアと、各第1脚部32、34に巻かれた各相電流が流れる巻線14、16とを備え、各第1脚部を通る磁束が対向するように前記巻線が前記コアに巻かれており、前記第1脚部32、34が第1コア材料で形成され、前記第2脚部36が第2コア材料で形成されており、磁界の増加に伴う前記第1コア材料の微分比透磁率の低下が前記第2コア材料の微分比透磁率の低下よりも緩やかである。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相磁気結合リアクトルであって、
各相電流に対応する複数の第1脚部と、これらの第1脚部に接続されて各第1脚部と共に各相電流に対応する磁路を成す少なくとも一つの第2脚部とを有するコアと、
各第1脚部に巻かれた各相電流が流れる巻線とを備え、各第1脚部を通る磁束が対向するように前記巻線が前記コアに巻かれており、
前記第1脚部が第1コア材料で形成され、前記第2脚部が第2コア材料で形成されており、
磁界の増加に伴う前記第1コア材料の微分比透磁率の低下が前記第2コア材料の微分比透磁率の低下よりも緩やかである、複数相磁気結合リアクトル。
【請求項2】
請求項1の複数相磁気結合リアクトルであって、前記第1コア材料が鉄系圧粉材料であり、前記第2コア材料がフェライト系材料である、複数相磁気結合リアクトル。
【請求項3】
請求項2の複数相磁気結合リアクトルであって、前記第2コア材料がMn-Zn系フェライトである、複数相磁気結合リアクトル。
【請求項4】
請求項1または2の複数相磁気結合リアクトルであって、各第1脚部にエアギャップがない、複数相磁気結合リアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術はDC-DCコンバータなどの電力変換装置に用いることのできる複数相磁気結合リアクトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流電源に接続されて電圧を変換するために利用されるDC-DCコンバータは、リアクトルとスイッチを用い、電力を磁束として蓄えたり放出したりすることにより昇圧または降圧を行う。例えば、特開2012-065453号公報には、ハイブリッド車両の電源回路として用いることのできるコンバータが開示されている。この公報のコンバータは、特に、磁気結合リアクトルを用いた二相コンバータである。二相コンバータは二つのコイル(インダクタ)を用い、それぞれのコイルにはスイッチングによって位相のずれた交流成分を含む電流が流れる。また、磁気結合リアクトルはこの二つのコイルを三つの脚部をもつ磁性体コアで磁気的に結合したものである。各コイルは外側脚部に磁束の向きが互いに対向するように巻かれる。すなわち、各コイルによって発生した磁束は共通の中央脚部を同じ向きに通る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなDC-DCコンバータ用のリアクトルのコイルには直流電流が流れるため、回路中の各種素子の特性のばらつきにより各コイルに流れる平均電流値にアンバランスが生じている場合には、コアに過剰な直流偏磁が生じやすい。この過剰な直流偏磁によってコア材料が磁気飽和に達すると、コア材料のインダクタンスが急激に低下する。これにより巻線に過電流が生じ、コンバータの制御性が悪化するという問題が発生する。
【0005】
この問題に対処するため、通常の磁気結合リアクトルはコアの外側脚部にある程度の長さのエアギャップを設けるとともに外側脚部の断面積を大きくすることで、磁気特性の変化が小さい領域でコアを使用するようにしている。しかし、このような対策では外側脚部を太くした分だけリアクトルが大型化してしまう。このため、リアクトルの体格を増大させることなくコアの急激な磁気特性の変化を抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術のひとつの態様は、複数相磁気結合リアクトルであって、各相電流に対応する複数の第1脚部と、これらの第1脚部に接続されて各第1脚部と共に各相電流に対応する磁路を成す少なくとも一つの第2脚部とを有するコアと、各第1脚部に巻かれた各相電流が流れる巻線とを備え、各第1脚部を通る磁束が対向するように前記巻線が前記コアに巻かれており、前記第1脚部が第1コア材料で形成され、前記第2脚部が第2コア材料で形成されており、磁界の増加に伴う前記第1コア材料の微分比透磁率の低下が前記第2コア材料の微分比透磁率の低下よりも緩やかである。実施形態によっては、前記第1コア材料が鉄系圧粉材料であり、前記第2コア材料がフェライト系材料である。実施形態によっては、前記第2コア材料がMn-Zn系フェライトである。このようにすると、相電流のアンバランスにより磁界の増加が生じても、上記のような第1コア材料の透磁率特性による磁気抵抗の増加によってこの磁界の増加が相殺され、リップル電流の振幅の急変を抑制できる。また、リップル電流の振幅の増加がある程度許容されるため、第1脚部の断面積を大きくする必要がなく、結果的にリアクトルを小型化することができる。
【0007】
実施形態によっては、各第1脚部にエアギャップがない。このようにすれば、第1脚部の断面積を大きくする必要がなく、またエアギャップからの漏れ磁束が巻線に作用して渦電流を生じるという影響(フリンジング)を考慮する必要もないため、結果的にリアクトルを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一つの実施形態としての磁気結合リアクトルを備えたDC-DC降圧コンバータの電気回路図である。
【
図2】コアに生じる磁束とこれを磁気回路で表現した図である。
【
図3】スイッチングのタイミングに対するコイルの巻線電流とコアの磁束の変化を示すグラフである。
【
図4】各相のコイルに流れる平均電流のアンバランスにより通常の平均磁束に加えてコアの外周部分に余分に生じた周回する磁束成分を示す図である。
【
図5】
図6の余分な周回する磁束成分のみを示した磁気回路図である。
【
図6】過剰な直流偏磁によって巻線に生じた過電流を示す図である。
【
図7】一つの実施形態として外周部分を鉄系圧粉材料で形成したコアを用いたリアクトルを示す図である。
【
図8】鉄系圧粉材料とフェライトの概略的な磁束密度の変化を示すグラフである。
【
図9】鉄系圧粉材料とフェライトの概略的な微分比透磁率の変化を示すグラフである。
【
図10】外側脚部に一様な長さのエアギャップを設けたコアを示すとともに、その外側脚部の磁気抵抗を計算するためのパラメータを説明する図である。
【
図11】電流アンバランスが生じた場合の
図10のコアの外側脚部の磁気特性の変化を示す図である。
【
図12】エアギャップ長さと断面積を大きくとった場合のコアの外側脚部の磁気特性の変化を示す図である。
【
図13】電流アンバランスが生じた場合の
図7のコアの外側脚部の磁気特性の変化を示す図である。
【
図14】別の実施形態として異なる全体形状を有するコアを示す図である。
【
図15】さらに別の実施形態として異なる全体形状を有するコアを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本技術の各種実施形態について図面を参照しながら説明する。なお以下の実施形態のうち実質的な差異がない部分については類似の符号を付して説明の繰り返しを避ける。
【0010】
〔コンバータ〕
図1は、一つの実施形態として、リアクトル12を備えたDC-DC降圧コンバータ10の回路図である。以下ではコンバータ10は二相降圧コンバータであるとして説明するが、本願で説明する特徴は、昇圧コンバータ、昇降圧コンバータや、三相以上の多相コンバータなど、同様の構成を有する種々の電力変換装置にも適用できる。コンバータ10は入力側において図示しない直流電源に接続されてスイッチング電源を構成し、入力電圧Viを出力電圧Voに変換する。直流電源は例えば再充電可能な二次電池や大容量のキャパシタとすることができる。コンバータ10の出力側には負荷が接続される。例えばコンバータ10はインバータと組み合わせることにより交流モータのための電源回路として用いることができる。交流モータは例えばハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両に搭載し、車輪を駆動するために用いることができる。
【0011】
コンバータ10は、リアクトル12の他、スイッチ18、20とダイオード22、24とを含む。各スイッチ18、20は位相が互いに180度ずれるようにオンとオフが周期的に切り替わる。リアクトル12はスイッチ18、20の出力側にそれぞれ直列に接続された二つのコイル14、16を有し、直流電源からの電流はスイッチ18、20によるスイッチングに応じて対応するコイル14、16に流れる。スイッチは例えば電界効果トランジスタ(FET)や絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのスイッチング素子である。各ダイオード22、24はスイッチ18、20がオフの時に負荷からの電流をコイル14、16に戻せるよう対応するスイッチ18、20とコイル14、16との間に向けて接続される。ダイオード22、24はスイッチ18、20と相補的に動作する別のスイッチ(スイッチング素子)に置き換えることも可能である。
【0012】
図2に示すように、リアクトル12は中央脚部36と二つの外側脚部32、34をもつコア30を有し、二つのコイル14、16はこのコア30で磁気的に結合される。コイル14、16を磁気結合させて一体化することで、リアクトル12の部品点数が削減できるうえ、コンバータを含む装置を小型化することができる。各コイル14、16の巻線は直流電流が流れたときにコア30の外側脚部32、34に磁束の向きが互いに対向するような巻き方向で巻かれる。コイル14、16と外側脚部32、34とによって構成される二つのインダクタの磁気的特性は同じになるようにする。なお、図示しないが、別の実施形態として3相以上の多相コンバータの場合は、相の数と同じ数の外側脚部を備えたコアを同様にして用いることができる。
【0013】
〔コイル電流と磁束の変化〕
図3に示すように、スイッチ18、20は、通常、制御装置(図示しない)によって生成されたパルス幅変調(PWM)信号によって制御される。第1相のスイッチ18がオンに切り替わると直流電源からの電流I
L1がコイル14の巻線に流れ込む。コイル14と外側脚部32で構成されるインダクタのインダクタンスL1により、コイル14の巻線を流れる電流I
L1が増加するにつれてそのエネルギーはコイル14が巻かれた外側脚部32にて磁束Φo1として蓄えられる。スイッチ18がオフになると、コイル14に蓄えられていたエネルギーが負荷側に電流として放出される。第2相についても同様に、インダクタンスL2によってコイル16を流れる電流I
L2に応じて他方の外側脚部34に磁束Φo2が誘起される。中央脚部36には二つのコイル14、16によって発生した磁束の両方が通るため、磁束Φcはそれぞれの磁束の2倍に近い値となる。
図3には参考として中央脚部36の磁束Φcの半分の値のグラフを重ねて示している。また、中央脚部36の磁束Φcは位相が180度ずれた二つの磁束成分の重ね合わせとなるため、変動の周波数がスイッチ18、20のスイッチング周波数の2倍となる。
【0014】
コイル14、16の巻線を流れる電流IL1、IL2は、交流(リップル)成分を含んだ波形となる。電流IL1、IL2の平均値は接続される負荷に依存するが、リップルの振幅はコイル14、16のインダクタンスL1、L2が大きいほど小さくなる。負荷側へ供給される出力電圧Voは、PWM信号のデューティ比に応じて電源側からの入力電圧Viよりも小さくなる。
【0015】
なお、コンバータ10は入力側と出力側にそれぞれ平滑化のためのコンデンサ26、28を有していても良い。図示しないが、各相のコイル14、16に流れる電流IL1、IL2を測定する電流センサや、コンバータ10の入力電圧や出力電圧を検出する電圧センサを設け、その測定値に基づいてスイッチングを制御することもできる。
【0016】
〔相電流のアンバランスによる直流偏磁〕
図2の下側に示すように、リアクトル12の特性は磁気回路を用いて表現できる。このとき、コイル14、16を流れる電流I
L1、I
L2は磁気回路における起磁力、コア30のインダクタンス(の逆数)は磁気抵抗Rmc、Rmoに置き換えて考えることができる。ここでは二つのコイルの巻き数Nや二つの外側脚部32、34の磁気抵抗Rmoは同じであるとする。
【0017】
コイル14、16を流れる電流I
L1、I
L2はリップル成分を含むものの、時間平均をとれば互いに同じ値であることが理想である。しかし、スイッチ18、20やセンサなど各相に配置される回路素子の特性にばらつきがあると、
図4に示すように二つの平均相電流I
L1、I
L2にアンバランスが生じうる。ここでは第1相のコイル14を流れる平均電流I
L1が基準値I
LからδI
Lだけ大きく、第2相のコイル16の平均電流I
L2が基準値I
LからδI
Lだけ小さいとする。
図5は均衡状態からの差分のみを表現した磁気回路図であり、二つのコイル14、16に対応する起磁力NI
L1、NI
L2は向きが互いに逆となる。したがって、コア30には、
図4、
図5に示すように二つの外側脚部32、34によって形成される外周部分38を通って周回する直流磁束成分δΦが常に存在する。特に、第1相に対応する外側脚部32には正常時の平均直流磁束に同じ向きの直流磁束成分δΦが加わるため、過剰な直流偏磁が生じた状態となる。このような状況において、外側脚部32のコア材料が磁気飽和に至ると急激に磁気抵抗が上昇(インダクタンスが低下)し、外側脚部32はコアとしての性能を失う。したがって、
図6に示すように電流I
L1に過電流が生じ、回路素子を損傷するなどの問題を生じる可能性がある。
【0018】
〔コア材料〕
図7に示すように、上述のような現象を考慮して、コア30は、磁界が同様に増加した際の微分比透磁率の低下の割合が異なる第1コア材料と第2コア材料(濃く描いた部分)とで形成する。具体的には、コア30の外側脚部32、34は微分比透磁率の低下が第2コア材料よりも相対的に緩やかな第1コア材料で形成し、中央脚部36は第2コア材料で形成する。より正確には、コア30のうち中央脚部36を除いた外周部分38(つまり外側脚部32、34とT字接続部)を第1コア材料で形成する。具体的な実施形態としては、第1コア材料をフェライト系材料、第2コア材料を鉄系圧粉材料(鉄系ダスト材料)とすることができる。鉄系圧粉材料は例えばセンダスト(登録商標)とすることができる。
【0019】
ここで、フェライト系材料と鉄系圧粉材料(鉄系ダスト材料)の磁気的特性の違いに触れておく。
図8に示すように、鉄系圧粉材料は印加される磁界Hが増加するにつれて磁束密度Bがなだらかに上昇する。これに対し、フェライト系材料は磁界Hが小さいときには磁界の増加に伴って磁束密度Bも急激に増加するが、その後は磁束密度が飽和し、増加が止まる。
図9はこれらの特性を
図8のグラフの各点での傾きdB/dHに相当する微分比透磁率μrで説明するものである。鉄系圧粉材料の微分比透磁率μrは磁界H(あるいは磁束密度B)の増加につれてなだらかに低下する。これに対し、フェライト系材料の微分比透磁率μrは磁界が小さいときには若干低下しつつも高い値を維持するが、その後磁気飽和に至ると急激に低下する。すなわち、鉄系圧粉材料と比べると、フェライト系材料の微分比透磁率は低磁界側と高磁界側にそれぞれ明瞭な徐変領域と急変領域をもつ特徴的な磁気的特性を有する。
【0020】
一つの実施形態として、中央脚部36に用いるフェライト系材料は単位体積当たりのコア損失が低いMn-Zn系フェライトとすることができる。Mn-Zn系フェライトはコア損失がNi-Zn系フェライトの1/20程度である。あるいは別の実施形態として、第1コア材料は高周波数側で透磁率が下がりにくいNi-Zn系フェライトとすることも可能である。Mn-Zn系フェライトは交番磁界の周波数が上がると比透磁率が急激に落ちるが、Ni-Zn系フェライトは高周波側での比透磁率の下がり方が比較的緩やかである。前述の通り中央脚部36の磁束Φcは変動の周波数がスイッチング周波数の2倍となるため、コア30のうち中央脚部36のみをNi-Zn系フェライトで形成することで中央脚部36のコアとしての性能低下を抑制することができる。この効果は多相コンバータの相の数が大きい場合ほど大きくなる。
【0021】
〔コアの外側脚部の磁気的特性〕
以下では相電流にアンバランスが生じた場合における様々な構造のコアの特性を比較する。
図10に示すように、従来行われているようにコア30Aの外側脚部32A、34Aに一様な長さlgのエアギャップ33A、35Aを入れた場合、一つの外側脚部が形成する磁路の磁気抵抗Rmoは、次のように直列に接続された磁気抵抗の和として表される。
式中のlcoreoはエアギャップ33A、35Aを除いた外側脚部32A、34Aのコア材料を通る磁路長(lcoreo1+lcoreo2)、Acoreoは外側脚部32A、34Aの断面積、μrは外側脚部32A、34Aのコア材料の微分比透磁率である。例えばコア30Aが全てフェライト系材料からなる場合、上で述べたフェライト系材料の特徴的な透磁率特性がそのままコアの特性に反映される。このため、
図11に示すように、電流アンバランス率(例えばδI
L/I
Lで定義される)が高まると外側脚部32A、34Aの磁気抵抗Rmoが急激に増加する。特に、フェライトが磁気飽和に達すると相電流のリップル成分の振幅も過大になる。これに対し、外側脚部のエアギャップ33A、35Aをより長くし、それに応じて外側脚部32A、34Aの断面積Acoreoも大きくすることも考えられる。この場合、
図12に示すように、電流アンバランス率が高まっても磁気飽和が生じにくくなる。これは、
図11に示した左端に近い領域(使用可能な領域)だけを使用するような設計に相当する。しかし、外側脚部32A、34Aの断面積の増加によってリアクトルのサイズが大きくなってしまう。
【0022】
外側脚部32、34に鉄系圧粉材料のみを用いた場合(
図7参照)、
図13に示すように、微分比透磁率μrがなだらかに低下する鉄系圧粉材料の特性(矢印50)に従い、電流アンバランスによって磁界の強さが大きくなるにつれて外側脚部32、34の磁気抵抗Rmoが緩やかに増加する(矢印54)。この磁気抵抗の増加により磁界の増加が相殺されるため、結果的に、磁束密度と相電流のリップル成分の増大が抑制される(矢印52、矢印56)。したがって、コアの磁気的特性が徐々に変化するため、コンバータの制御性が向上する。なお、外側脚部32、34の断面積や長さは、リップル電流の振幅に許容できる増加量(矢印58)に基づいて決定することができる。このように、リップル電流の振幅にある程度の増加を許してもコアの急激な特性の変化にはつながらないため、外側脚部32、34にエアギャップを設けたり断面積を大きくする必要がなく、結果的にリアクトルを小型化することができる。
【0023】
中央脚部36には必要に応じてエアギャップ37を設けることができる。図示しない他の実施形態として、鉄系圧粉材料からなる外側脚部32、34にも必要に応じてエアギャップを設けることが可能である。
【0024】
〔コアの形状の変形例〕
別の実施形態として、コアの形状は必要に応じて変形することが可能である。
図14に示したコア30Cのように、上記の実施形態における中央脚部36に相当する部分を二つの脚部36Cに分割することにより、各相電流に対応する磁束をそれぞれ二つの磁路に分流させることもできる。またさらに別の実施形態として、
図15に示すように、各相電流に対応する巻線14、16をそれぞれ二つのコイルに分割して巻くことも可能である。いずれのコア30C、30Dも、各相電流に対応する二つの第1脚部32C、34C、32D、34D(前述の実施形態の外側脚部32、34に相当)と、これらの第1脚部に接続されて各第1脚部と共に各相電流に対応する磁路を成す少なくとも一つの第2脚部36C、36D(中央脚部36に相当)とを有する。
図14、
図15では第1脚部を濃く描いている。したがって、この第1脚部(第2脚部との接続部を含む)を例えば鉄系圧粉材料で、第2脚部をフェライト系材料で形成することができる。また、当業者であれば3相以上の磁気結合リアクトルにも以上に説明した様々な特徴を適用できることは容易に理解できるであろう。
【0025】
以上、本技術を具体的な実施形態で説明したが、本技術はこれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば本技術の目的を逸脱することなく様々な置換、改良、変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 コンバータ
12 リアクトル
14、16 コイル
18、20 スイッチ
22、24 ダイオード
26、28 コンデンサ
30 コア
32、34 コアの外側脚部
36 コアの中央脚部
37 中央脚部のエアギャップ
38 コアの外周部分