(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059450
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】防水紙およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 19/34 20060101AFI20230420BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20230420BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
D21H19/34
D21H11/18
D21H19/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169468
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】川真田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】松野 祐也
(72)【発明者】
【氏名】高山 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中田 咲子
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AC06
4L055AC09
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG07
4L055AG16
4L055AG34
4L055AG35
4L055AG45
4L055AG51
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG89
4L055AG94
4L055AJ01
4L055BD16
4L055BE08
4L055CB15
4L055EA16
4L055EA17
4L055FA14
4L055FA19
4L055GA47
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、優れた防水性を備えた紙を製造する技術を開発することである
【解決手段】本発明に係る防水紙は、(a)紙基材と、(b)紙基材の少なくとも片面に設けられた、繊維径が60μm以下の微細セルロース繊維を含む下塗り層と、(c)下塗り層の上に最外層として設けられた、スチレン・アクリル系樹脂およびワックスを含む防水層と、を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)紙基材と、
(b)紙基材の少なくとも片面に設けられた、繊維径が60μm以下の微細セルロース繊維を含む下塗り層と、
(c)下塗り層の上に最外層として設けられた、スチレン・アクリル系樹脂およびワックスを含む防水層と、
を有する紙。
【請求項2】
微細セルロースがセルロースナノファイバーおよび/またはミクロフィブリル化セルロースを含む、請求項1に記載の紙。
【請求項3】
前記微細セルロースのBET比表面積が30m2/g以上である、請求項1または2に記載の紙。
【請求項4】
下塗り層がポリビニルアルコールをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の紙。
【請求項5】
紙基材が多層抄きの板紙である、請求項1~4のいずれかに記載の紙。
【請求項6】
紙基材の少なくとも片面に、繊維径が60μm以下の微細セルロース繊維を含む下塗り層を設ける工程と、
下塗り層の上に、スチレン・アクリル系樹脂およびワックスを含む防水層を設ける工程と、
を有する、紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水紙およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の物品を包装するために、紙基材を用いた種々の形態からなる紙製容器や梱包材等が使用されている。一般に、紙製の容器や梱包材は、紙基材をベース素材とすることから、水蒸気等の透過が極めて容易であり、包装している物品から発生する湿気による強度低下を来すことがある。また、包装、梱包の対象となる物品によっては、外部から侵入する水蒸気等を著しく嫌うものがある。更に、チルド製品等のように氷を一緒に入れて輸送する場合、紙製の容器や梱包材が防水性を具備する必要がある。
【0003】
このため、紙基材の表面に、撥水性を有するワックス組成物を塗工してワックス層を形成する方法、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等をラミネートして樹脂被膜を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、紙の少なくとも片面に、ワックスエマルジョンおよび水不溶性合成樹脂エマルジョンと共に界面活性剤を加えた混合液を塗布後、加熱処理を施して、最外層に界面活性剤の層を形成した防湿紙が記載されている。また、特許文献2には、基紙の少なくとも片面に、少なくとも2層の塗工層を有し、最表面に位置する塗工層はワックスを封入したマイクロカプセルを含有し、塗工量が固形分換算0.5g/m2以上2.5g/m2以下であり、この最表面の塗工層と基紙との間に位置する塗工層はアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有する防湿ライナが記載されている。さらに、特許文献3には、特定の乾燥条件で防水塗工層を乾燥することによって、高い水準での防湿性と防水性を兼ね備えた紙を製造することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-266096号公報
【特許文献2】特開2011-162899号公報
【特許文献3】特開2020-165039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脱プラスチックの流れの中で発泡スチロールを代替する紙製容器が要求されており、そのような容器を製造するために耐水撥水ライナが注目されている。
しかし、特許文献1のワックス層を形成する方法では、単にワックス組成物を1層塗工しても、透湿度を十分に抑制することは困難であり、透湿度を十分に抑制するためにはワックス組成物を多数回塗工することが必要となり、製造工程が著しく煩雑になる。また、特許文献2のような樹脂被膜でラミネートする方法では、ラミネート加工のため製造工程が煩雑となることに加え、樹脂被膜でラミネートした紙または板紙は、使用後に古紙として回収使用する際の離解性が著しく悪く、再利用化が困難であった。さらに、特許文献3の方法では、特定の乾燥条件を採用する必要があり、経済性に有利な方法とは言えなかった。
【0006】
また、単なる防湿紙では、防水性が充分でなく、例えば、チルド製品等のように氷を入れて輸送する容器や梱包材としての使用が困難である。従来から存在する、最外層に界面活性剤の層を形成しただけの防湿紙や、少なくとも2層の塗工層を設けただけの防湿ライナは、十分な防水性を備えるものではなかった。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明の課題は、防湿性と防水性を兼ね備える防水紙とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、紙基材に対して、微細セルロース繊維を塗工してから防水剤を塗工することによって、防湿性と防水性に優れた紙を製造できることを見出した。
【0009】
以下に限定されるものではないが、本発明は、下記の態様を包含する。
[1] (a)紙基材と、(b)紙基材の少なくとも片面に設けられた、繊維径が60μm以下の微細セルロース繊維を含む下塗り層と、(c)下塗り層の上に最外層として設けられた、スチレン・アクリル系樹脂およびワックスを含む防水層と、を有する紙。
[2] 微細セルロースがセルロースナノファイバーおよび/またはミクロフィブリル化セルロースを含む、[1]に記載の紙。
[3] 前記微細セルロースのBET比表面積が30m2/g以上である、[1]または[2]に記載の紙。
[4] 下塗り層がポリビニルアルコールをさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の紙。
[5] 紙基材が多層抄きの板紙である、[1]~[4]のいずれかに記載の紙。
[6] 紙基材の少なくとも片面に、繊維径が60μm以下の微細セルロース繊維を含む下塗り層を設ける工程と、下塗り層の上に、スチレン・アクリル系樹脂およびワックスを含む防水層を設ける工程と、を有する、紙の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防湿性とともに防水性を備えた紙の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】防水性の評価に用いた搬器を示す図である(組み立て図)。
【
図2】防水性の評価に用いた搬器を示す図である(展開図)。
【
図3】防水性の評価に用いた搬器を示す図である(折り畳み図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、防水紙に関する。本発明において防水紙とは、長時間水にさらしても水が浸みこまない紙のことを指す。また、好ましい態様において本発明に係る防水紙は、紙容器に水を入れて1週間放置しても水の浸み出しが発生せず容器の形状が変形しないか、若干変形はみられるが容器形状が維持される。より好ましい態様において本発明に係る防水紙は、紙容器に水を入れて3週間放置しても水の浸み出しが発生せず容器の形状が変形しないか、若干変形はみられるが容器形状が維持される。
【0013】
本発明に係る防水紙の用途には特に制限はなく、例えば、段ボール箱や包装個箱などとして用いることができ、例えば、鮮魚や野菜を始めとした食料品などを収容したり、洗剤等の吸湿性のあるものを内容物として収容したりできる。本発明に係る防水紙の坪量は特に制限されないが、例えば、30~800g/m2とすることができる。紙基材が単層紙である場合、防水紙の坪量は、例えば、30~350g/m2や50~300g/m2とすることができる。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、防水紙の坪量は75~800g/m2や100~700g/m2、さらには200~600g/m2とすることができる。
【0014】
本発明の防水紙は、好ましい態様において、表面の120秒コッブ吸水度が3g/m2以下であり、2g/m2以下がより好ましく、1g/m2以下であってよい。なお、120秒コッブ吸水度を測定した際に1g/m2未満(吸水せず測定限界値未満の場合も含む)である紙においては、好ましい態様において、表面の30分コッブ吸水度が40g/m2以下であり、35g/m2以下がより好ましく、30g/m2以下であってよい。本発明においてコッブ吸水度は、JIS P8140に規定されたコッブ法に準拠して、100mlの蒸留水を塗工層に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定する。測定時間を伸ばした条件下でもコッブ吸水度が低いほど、塗工層の吸水性が低いものとなる。
【0015】
本発明の防水紙は、防湿性にも優れており、好ましい態様において、透湿度は100g/m2・24h以下であり、より好ましくは75g/m2・24h以下、さらに好ましくは50g/m2・24h以下である。ここで、紙の透湿度は、JIS Z 0208に準拠して防水紙の塗工層側から測定することができ、数値が小さいほど、防湿性が高いことを意味する。
【0016】
本発明の防水紙は、耐油性にも優れており、好ましい態様において、塗工層側のはつ油度がキットナンバー7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましい。ここで、防水紙のはつ油度は、「紙及び板紙-はつ油度試験方法-キット法」(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41)に準拠して防水紙の塗工層側から測定することができ、キットナンバーの値が大きい程、耐油性が高いことを意味する。また、好ましい態様において、塗工層側の点滴吸油度が500秒以上であり、より好ましくは550秒以上、さらに好ましくは600秒以上である。この点滴吸油度の秒数が長いほど耐油性が高いことを意味する。なお防水紙の吸油度は、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間によって評価することができる。
【0017】
本発明の防水紙は、塗工面の王研式平滑度が15秒以上であることが好ましく、20秒以上がより好ましく、25秒以上がさらに好ましい。防水紙の塗工層の表面の平滑度が上記の範囲であることにより、塗工層の表面において高い光沢が得られ、より美粧性に優れた防水紙が得られる。
【0018】
紙基材
本発明に係る防水紙は、紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面に設けられた下塗り層および防水塗工層と、を少なくとも有している。本発明において紙基材の坪量は特に制限されず、例えば、10~800g/m2とすることができる。紙基材が単層紙である場合、坪量は10~300g/m2の範囲で適宜設定することができ、例えば、紙基材がクラフト紙の場合、坪量を30~250g/m2の範囲で設定することができる。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、その坪量は70~800g/m2の範囲で適宜設定することができ、例えば、段ボールのライナの場合、坪量を80~600g/m2の範囲で設定することができる。
【0019】
本発明に用いる紙基材は、防水塗工層を設ける面に微細セルロースを含む溶液を塗工していることを特徴とする。微細セルロースを塗工することにより、紙層間に微細セルロース繊維が入り込むことにより、表面の平滑性が向上するとともに防水塗工層の紙面への浸み込みが抑制されることから、防湿性および防水性が向上する。微細セルロースは、本発明の防湿性及び防水性、更には経済性を損なわない範囲で任意の量を塗工することができるが、好ましくは0.1~5g/m2であり、より好ましくは1~4g/m2である。
【0020】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において、塗工層を設ける面の王研式平滑度が13秒以上であり、より好ましくは15秒以上であり、さらに好ましくは17秒以上である。上限は特に限定しないが、好ましくは100秒以下であり、より好ましくは90秒以下、さらに好ましくは80秒以下、最も好ましくは70秒以下である。防水塗工層を設ける面の平滑度が上記の範囲であることにより、紙基材を均一に被覆する防水塗工層を設けることができ、防水性および防湿性が向上する。
【0021】
本発明に用いる紙基材は特に制限はないが、好ましくは防水塗工層を設ける面の120秒コッブ吸水度が100g/m2以下、好ましくは75g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下の範囲である。また、本発明に用いる紙基材は、120秒コッブ吸水度が5g/m2以上であり、好ましくは7g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上である。本発明においては、ワックスなどの撥水剤や、樹脂を含むニス等の防水性を有しないコーティング剤(目止め剤)等を塗工するなどして紙基材の120秒コッブ吸水度を調整することもできるが、紙基材の120秒コッブ吸水度が上記の範囲であることにより、防水塗料の溶媒中に含まれた水分の過剰な浸透による紙力低下防止と、防水塗料中の固形分が紙層表面へ滞留することにより確実な被覆が行われ防水性と防湿性の向上を両立させることができる。
【0022】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に準拠して測定した撥水度がR4以上であり、R6以上であることがより好ましく、R8以上であることがさらに好ましい。紙基材の撥水度がR4以上であると、防水剤を塗工する際、塗工液に含まれる水分が紙基材へ過剰に浸透することがなく、紙の強度低下を抑制することができる。
【0023】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において防水塗工層を設ける面の点滴吸油度が5秒以上であり、より好ましくは7秒以上、さらに好ましくは10秒以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは80秒以下、より好ましくは75秒以下、さらに好ましくは70秒以下である。吸油度が上記の範囲であることにより、防水剤に含まれるワックスが紙表面にとどまり紙層に浸み込みにくくなることから、紙基材の防水性および防湿性を向上させることができる。紙基材の吸油度は、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間によって評価することができる。
【0024】
紙基材の物性は特に制限されず、防水紙の用途に応じて適宜設定することができる。本発明においては、例えば、縦伸びが1.0~15.0%、横伸びが2.0~12.0%、比圧縮強度が100~350N・m2/g、比破裂強度が2.80~5.00kPa・m2/gとなるように設定することができる。
【0025】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において、防水塗工層を設ける側より測定した透湿度が1500g/m2・24h以上であり、より好ましくは1750g/m2・24h以上、さらに好ましくは2000g/m2・24h以上である。透湿度の上限は特に限定されないが、好ましい態様において、5000g/m2・24h以下であり、より好ましくは4500g/m2・24h以下、さらに好ましくは4000g/m2・24h以下である。防水塗工層を設ける面の透湿度が上記の範囲であることにより、塗工後の乾燥工程において効率よく塗工剤中の水分を紙層側へ蒸発させることから、均一に被覆する防水塗工層を設けることができ、防水性および防湿性が向上しやすくなる。
【0026】
本発明に用いる紙基材は、好ましい態様において、防水塗工層を設ける面の水接触角が75度以上であり、77度以上であることがより好ましい。水接触角が上記の範囲であることにより、塗工液中に含まれる水分が紙基材へ過剰に浸透することを防ぎ、紙基材の強度低下を防ぐことができる。
【0027】
紙基材の原料パルプとしては、特に制限なく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミカルパルプ(CP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)などの木材由来の各種パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプを挙げることができる。
【0028】
紙基材は、古紙パルプを含有するものであってもよく、また、古紙パルプを含有しないものであってもよい。古紙パルプを含有する場合であって、例えば、紙基材が単層紙である場合、好ましくは全パルプに占める古紙パルプの配合率は10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上とすることができ、また、100質量%(古紙由来のパルプのみからなる)とすることができる。また、古紙パルプ以外のパルプとしてクラフトパルプを配合してもよく、全量クラフトパルプとしてもよい。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、1層あたりの古紙パルプ配合率を上記の通りとすることができ、各層における古紙パルプ配合率が異なるものであってもよい。
【0029】
古紙パルプとしては、未印刷古紙を離解した古紙パルプ、印刷などがなされた古紙を離解して脱墨したパルプ(DIP)などを使用することができる。未印刷古紙としては、例えば、段ボール古紙、上白、特白、中白、白損などが挙げられ、DIPの原料となる古紙としては、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙などに印刷された古紙、筆記された古紙、廃棄機密文書等の紙類、雑誌古紙、新聞古紙などが挙げられる。
【0030】
また、紙基材の抄造では、サイズ剤や撥水剤を内添または外添させることができ、さらに、強度を向上させるために紙力増強剤を内添させることができる。サイズ剤としては、例えば、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α-カルボキシルメチル飽和脂肪酸など、また、中性ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、カチオンポリマー系サイズ剤などが挙げられる。また、撥水剤としては、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ワックスなどが挙げられる。また、紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)や変性でん粉などの従来から使用されている紙力増強剤が挙げられる。本発明においては、ワックスを含む撥水剤を、防水層を設ける側に外添させることが好ましく、パラフィン系ワックスを含む撥水剤を外添させることがより好ましい。撥水剤と外添する場合の塗工量は、3g/m2以下が好ましく、2g/m2以下がより好ましい。
【0031】
また、必要に応じて紙基材に公知の填料を内添させることができ、無機填料や有機填料を制限なく使用することができる。無機填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などが挙げられ、有機填料としては、例えば、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0032】
さらに、紙基材の品質に影響のない範囲で、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物、水溶性アルミニウム化合物、多価金属化合物、シリカゾルなどを内添して使用してもよい。
【0033】
紙基材は、公知の抄紙方法で製造することができる。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機などを用いて行うことができるが、これらに限定されない。
【0034】
また、本発明の紙基材の平滑度を調整するため、必要に応じ平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理には、通常のカレンダ、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、熱カレンダ、シューカレンダなどの平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温、線圧などを適宜調整してよい。
【0035】
下塗り層
本発明に係る防水紙は、紙基材上に設けられた下塗り層を有しており、本発明に係る下塗り層は、繊維径が60μm以下の微細セルロース繊維を含む。本発明において使用する微細セルロース繊維は、繊維径が60μm以下であれば特に制限されないが、例えば、セルロースナノファイバー(CNF)やミクロフィブリル化セルロース(MFC)を好適に使用することができる。
【0036】
微細セルロースの原料となるセルロースは、特に限定されないが、例えば、植物、動物、藻類、微生物、微生物産生物に由来するものが挙げられる。植物由来のものとしては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプなどが挙げられ、パルプとしては、例えば、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、針葉樹溶解パルプ、広葉樹溶解パルプ、再生パルプ、古紙パルプなどが挙げられる。また、上述のセルロースを粉砕処理したセルロースパウダーを使用してもよい。セルロースとして、これらのいずれかまたは組合せを使用してもよいが、好ましくは植物または微生物由来のセルロースであり、より好ましくは植物由来のセルロースであり、さらに好ましくは植物由来のパルプである。
【0037】
本発明の微細セルロースは、セルロース原料を微細化することによって製造することができる。本発明においては、微細セルロースの原料として化学変性したセルロースを使用することができ、化学変性の種類としては、カルボキシル化、カルボキシアルキル化、リン酸エステル化などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
ここで、化学変性とはセルロースに官能基を導入することをいい、アニオン性基を導入することが好ましい。アニオン性基としてはカルボキシル基、カルボキシル基含有基、リン酸基、リン酸基含有基等の酸基が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)、-O-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)が挙げられる。リン酸基含有基としては、ポリリン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリホスホン酸基等が挙げられる。これらの酸基は反応条件によっては、塩の形態、例えばカルボキシレート基(-COOM、Mは金属原子)で導入されることもある。化学変性は、酸化またはエーテル化が好ましい。酸化またはエーテル化は、例えば特開2019-104833等に記載されているような公知の方法に従って実施できる。また、MFCのカルボキシル基量および化学変性セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度も、例えば特開2019-104833等に記載されているような公知の方法に従って測定可能である。
【0039】
微細セルロース繊維中のカルボキシル基の量は、微細セルロース繊維の絶乾重量に対して、0.1mmol/g以上が好ましく、0.5mmol/g以上がより好ましく、0.8mmol/g以上がさらに好ましい。当該量の上限は、3.0mmol/g以下が好ましく、2.5mmol/g以下がより好ましく、2.0mmol/g以下がさらに好ましい。従って、当該量は0.1~3.0mmol/gが好ましく、0.5~2.5mmol/gがより好ましく、0.8~2.0mmol/gがさらに好ましい。
【0040】
微細セルロース繊維中の無水グルコース単位当たりのカルボキシアルキル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましい。当該置換度の上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。カルボキシアルキル置換度が0.50を超えると水への溶解が起こりやすくなり、水中で繊維形態を維持できなくなることがある。また、カルボキシアルキル化による効果を得るためには、一定程度の置換度を有することは必要であり、例えば、置換度が0.01より小さいと、用途によっては、カルボキシアルキル基を導入したことによる利点が得られない場合がある。従って、カルボキシアルキル基置換度は、0.01~0.50が好ましく、0.05~0.40がより好ましく、0.10~0.30がさらに好ましい。そして、カルボキシアルキル置換度はカルボキシメチル置換度であることが好ましい。
【0041】
微細セルロース繊維におけるカルボキシル基量およびグルコース単位当たりの置換度は、化学変性セルロースのものと同じであることが好ましい。
セルロース繊維の微細化には、公知の装置を使用することができ、例えば、ディスク型、コニカル型、シリンダ型などのリファイナー、高速解繊機、せん断型撹拌機、コロイドミル、高圧噴射分散機、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザーなどを用いることができる。機械的処理による微細化は、湿式、すなわち、水等を分散媒とする分散体の形態で行うことが好ましい。
【0042】
フィブリル化に供する化学変性されたセルロース原料の分散体における原料の固形分濃度は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。濃度の上限としては、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。固形分濃度は叩解処理を含む機械的処理中に変動しうるが、本発明においては、叩解処理開始時の固形分濃度を、叩解処理工程における固形分濃度という。
【0043】
機械的処理は、循環運転(バッチ処理)としてもよいし、部分循環運転としてもよいし、複数台の装置を用いた機械的処理を連続して行う連続処理としてもよい。高濃度機械的処理と低濃度機械的処理とを組み合わせて実施してもよく、これらの機械的処理を組み合わせる場合、処理の順番は限定されないが、濃縮のしやすさの観点から高濃度機械的処理を先に行うことが好ましい。例えば、化学変性セルロースを高濃度機械的処理した後に、当該処理で得られた化学変性セルロースを15重量%以下に希釈して、叩解処理を行ってもよい。ここで、化学変性パルプの固形分濃度を15重量%以下に調整する方法としては、希釈が挙げられる。
【0044】
低濃度機械的処理に用いることができる装置としては、例えば高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧または超高圧ホモジナイザー、コニカル型リファイナー等のリファイナー、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、トップファイナー、セブンファイナー、ビートファイナー、ツインビートファイナー、ヘンシェルミキサー、ホモミックラインミルなど回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、あるいはパルプ繊維同士の摩擦によるもの、あるいはキャビテーションや水流または水圧によってパルプ繊維を分散または解繊するものを使用することができる。
【0045】
高濃度機械的処理に用いることができる装置としては、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧または超高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、トップファイナーなど回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、あるいはパルプ繊維同士の摩擦によるものを使用することができる。
【0046】
解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、化学変性セルロースに強力なせん断力を加えられることが好ましい。装置が加えられる圧力は、50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましい。これにより、解繊を効率的に行うことができる。
【0047】
解繊を化学変性パルプの分散液に対して実施する場合、分散液中の変性セルロースの固形分濃度は、通常は0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、0.3重量%以上がさらに好ましい。これにより、変性セルロースの量に対する液量が適量となり効率的になる。当該濃度の上限は通常は20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。これにより流動性を保持することができる。
【0048】
(a)セルロースナノファイバー(CNF)
CNFとは、セルロース系原料を解繊することなどにより得られるセルロースのシングルミクロフィブリルであり、一つの態様において、500nm未満の平均繊維径を有する。
【0049】
CNFは後述する化学変性されていることが好ましい。化学変性CNFは、セルロース系原料を化学変性して化学変性セルロースを調製し、これを機械的に解繊することなどによって製造できる。化学変性セルロースの種類としては、これらに限定されないが、例えば、カルボキシル基を導入したカルボキシル化セルロース、カルボキシメチル基などのカルボキシアルキル基をエーテル結合させたカルボキシアルキル化セルロース、リン酸基を導入したリン酸エステル化セルロースなどを挙げることができる。
【0050】
化学変性セルロースは、塩の形態をとる場合もあり、本発明において化学変性セルロースは、塩型の化学変性セルロースも含む。塩型の化学変性セルロースとしては、例えば、ナトリウム塩などの金属塩を形成しているものが挙げられる。
【0051】
化学変性セルロースを機械的に解繊してCNFを得る場合、解繊処理は1回行ってもよいし、複数回行ってもよい。化学変性セルロースと分散媒を含む混合物を解繊処理に供することが好ましい。分散媒としては水が好ましい。解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、化学変性セルロースに強力なせん断力を加えられることが好ましい。装置が加えられる圧力は、50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましい。これにより、解繊を効率的に行うことができる。
【0052】
解繊を化学変性パルプの分散液に対して実施する場合、分散液中の変性セルロースの固形分濃度は、通常は0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、0.3重量%以上がさらに好ましい。これにより、変性セルロースの量に対する液量が適量となり効率的になる。当該濃度の上限は通常は20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。これにより流動性を保持することができる。
【0053】
CNFの平均繊維径は、長さ加重平均繊維径にして通常2nm以上500nm未満程度であるが、好ましくは2~100nmである。その上限はさらに好ましくは50nm以下である。平均繊維長は長さ加重平均繊維長にして50~2000nmが好ましい。長さ加重平均繊維径および長さ加重平均繊維長(以下、単に「平均繊維径」、「平均繊維長」ともいう)は、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察して求められる。CNFの平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、通常10以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。本発明に用いられるCNFのBET比表面積は、好ましくは30m2/g以上であり、より好ましくは50m2/g以上であり、さらに好ましくは100m2/g以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは500m2/g以下である。
【0054】
本発明においては、濃度1%(w/v)の水分散液(すなわち、100mLの水中に1gのCNF(乾燥重量)を含む水分散液)としたときに500~10000mPa・sのB型粘度(60rpm、25℃)を与えるCNFを用いることが好ましい。水分散液のB型粘度は、CNFの官能基量、平均繊維長、平均繊維径等の特性を特定する指標であり、用途に合わせて適宜調整される。
【0055】
CNFの水分散液のB型粘度は、公知の手法により測定することができる。例えば、東機産業社のVISCOMETER TV-10粘度計を用いて測定することができる。測定時の温度は25℃であり、ローターの回転数は60rpmである。本発明のCNFの水分散液は、チキソトロピー性を有し、撹拌しせん断応力を与えることで粘度が低下し、静置状態では粘度が上昇しゲル化するという特性を持つため、十分に撹拌した状態でB型粘度を測定することが好ましい。
【0056】
(b)ミクロフィブリル化セルロース(MFC)
ミクロフィブリル化セルロース(以下「MFC」ともいう)とは、パルプ等のセルロース系原料を解繊して得られる繊維であり、500nm以上の平均繊維幅を有する。また、化学変性ミクロフィブリル化セルロース繊維(以下「化学変性MFC」ともいう)とは、化学変性セルロース系原料を解繊して得られるMFCである。MFCは、セルロース系原料をリファイナーやディスパーザーなどで比較的弱く解繊または叩解処理して得られる。したがってMFCは、高圧ホモジナイザーなどでセルロース系原料を強く解繊処理して得られるセルロースナノファイバーと比較して繊維幅が大きく、また繊維自体の微細化を抑制しながら効率的に繊維表面を毛羽立たせた(外部フィブリル化した)形状を有する。
【0057】
MFCは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持される。すなわち、MFCの水分散体を電子顕微鏡等で観察すると、繊維状の物質を観察することができ、また、X線回折で測定すると、セルロースI型結晶のピークを観測することができる。
【0058】
化学変性MFCは化学変性されていないMFCと比べて、化学変性により、保水性が高い、チキソトロピー性を有する、などの特徴を有する。また、化学変性セルロース原料を解繊または叩解処理することにより得られるMFCは、化学変性されていないセルロース原料を解繊または叩解した後に化学変性したものと比べて、フィブリル化時にセルロース繊維が化学変性されているため、繊維間に存在する強固な水素結合が弱められており、解繊または叩解の際に繊維同士がほぐれやすく、繊維の損傷が少ないという特徴を有する。
【0059】
本発明において、MFCの平均繊維径(平均繊維幅)とは長さ加重平均繊維幅であり、500nm超であり、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。平均繊維径の上限は60μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、20μm以下がさらに好ましい。平均繊維径がこの範囲になる程度の適度な解繊または叩解を行うことにより、未解繊のセルロース繊維に比べて高い保水性を呈し、また、微細に解繊されたセルロースナノファイバーに比べて少量でも高い強度付与効果や歩留まり向上効果が得られる。
【0060】
本発明において、MFCの平均繊維長とは長さ加重平均繊維長であり、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましく、100μm以上、200μm以上、または300μm以上であってもよい。平均繊維長の上限は、特に限定されないが、3000μm以下が好ましく、1500μm以下がより好ましく、900μm以下がさらに好ましく、500μm以下がよりさらに好ましい。化学変性MFCは化学変性セルロース原料を叩解または解繊に用いるため、繊維を極端に短くすることなく、フィブリル化を進めることができる。また、化学変性により、水との親和性が向上しているため、繊維長が長い場合であっても保水性を高くすることができる。
【0061】
上記の平均繊維径および平均繊維長は、例えば、画像解析型繊維分析装置により求めることができる。繊維分析装置として、具体的には、L&W Fiber Tester Plus(ABB製)やフラクショネーター(バルメット製)などが挙げられ、フラクショネーター(バルメット製)を用いた場合、それぞれ、長さ加重平均繊維幅(length-weighted fiber width)や長さ加重平均繊維長(length-weighted average fiber length)として求めることができる。
【0062】
MFCの平均アスペクト比は、5以上が好ましく、10以上であってもよい。平均アスペクト比の上限は特に限定されないが、1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。
【0063】
MFCのフィブリル化率は、1.0%以上であることが好ましく、2.5%以上であることがより好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましい。使用したセルロース原料の種類によってフィブリル化率は異なるが、上記範囲であればフィブリル化が行なわれていると考えられる。また、本発明では、フィブリル化する前の化学変性セルロース原料のフィブリル化率(f0)が、向上するようにフィブリル化を行うことが好ましい。MFCのフィブリル化率をfとすると、フィブリル化率の差Δf=f-f0は、0を超えていればよく、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは1.5%以上である。フィブリル化率は、フラクショネーター(バルメット製)を用いて測定することができる。
【0064】
本発明のMFCのBET比表面積は、好ましくは30m2/g以上であり、より好ましくは50m2/g以上であり、さらに好ましくは100m2/g以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは500m2/g以下である。BET比表面積が高いと、例えば製紙用添加剤として用いた場合にパルプに結合しやすくなり、歩留まりが向上する、紙への強度付与の効果が高まるなどの利点がある。
【0065】
本発明に用いられるMFCは、固形分濃度1.0重量%の水分散体とした際の透明度(660nm光の透過率)が、60%未満であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。その下限は特に限定されず、0%以上であってよい。透明度がこのような範囲であると、解繊の程度が適度であり、本発明の効果が得られやすい。
【0066】
本発明のMFCのB型粘度(25℃、60rpm)は、MFCの解繊の進み度合の観点から好ましくは10~6500mPa・s、より好ましくは20~6000mPa・s、さらに好ましくは50~5500mPa・sである。
【0067】
本発明に用いられるMFCは、製造後に得られる分散体の状態であってもよいが、必要に応じて乾燥してもよく、また水に再分散してもよい。乾燥方法は限定されないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法などの既知の方法を使用できる。乾燥後に必要に応じて、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕してもよい。また、水への再分散の方法も特に限定されず、既知の分散装置を使用することができる。
【0068】
防水塗工層
本発明に係る防水紙は防水塗工層を有しており、本発明に係る防水塗工層は、合成樹脂およびワックスを含有する。合成樹脂は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種類を含有することが好適である。特に、合成樹脂がスチレン系樹脂および/またはアクリル系樹脂であることが好適である。
【0069】
本発明を構成する防水塗工層が含有することのできるスチレン系樹脂としては、構造中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体の共重合割合が50質量%以上であることが好ましく、スチレン系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
【0070】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0071】
また、スチレン単量体と共重合可能な単量体として、例えば、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンなどの共役ジエンなどが挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0072】
本発明を構成する防水塗工層が含有することのできるアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体であるアクリル系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂であり、アクリル系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
【0073】
アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピルなどのアクリル酸エステルなどを挙げることができ、アクリル系樹脂は、これらのアクリル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を重合したものであってよい。
【0074】
また、アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0075】
本発明においては、防水塗工層にワックスが含有されている。防水塗工層が含有するワックスとしては、例えば、ポリエチレン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、油脂系合成ワックス(脂肪酸エステル系、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類)、水素硬化油などの合成ワックス、蜜蝋、木蝋、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックスなどを挙げることができる。これらのワックスは、1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができ、特に、パラフィンを含む炭化水素系ワックスが好適である。
【0076】
本発明では、白色度を向上させることなどを目的として、防水性を損なわない範囲で防水塗工層に顔料を含有させてもよい。この場合、顔料を含有させることで防水塗工層の表面の白色度が、紙基材の白色度と比較して1%以上高くなっていることが好ましい。このような顔料としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーティッドクレー、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカ、モンモリトナイトなどの無機顔料を挙げることができ、これらの顔料を1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。これらの顔料の中で、特に、粒子が扁平な形状であるカオリンや炭酸カルシウムもしくはマイカは、防水性を阻害しにくいため特に好適である。このような扁平形状の無機顔料は、アスペクト比が10以上であることが好ましい。防水塗工層における顔料の含有量は、5~40質量%以下が好ましく、10質量%~35質量%以下がより好ましい。顔料の含有量が顔料の含有量が5質量%未満であると、白色度の向上効果が十分に得られず、40質量%を超えると、合成樹脂成分が有する防水塗工層の防湿性、防水性の機能が十分発揮できないことがあるので好ましくない。また、その他の塗工剤として、例えば、バインダー、安定剤、消泡剤、粘性改良剤、保水剤、防腐剤、着色剤などを含有させてもよい。
【0077】
本発明において防水塗工層は、上記のような成分を含有する塗工剤を紙基材上に塗工して乾燥することにより形成することができる。防水塗工層の塗工量は、4~20g/m2とすることが好ましく、5~15g/m2とすることがより好ましい。20g/m2を超えると、防水性のさらなる向上は望めない一方で、製造コストの増大を来すことがある。
【0078】
本発明の防水紙に設けられた防水塗工層は、好ましい態様において、平均の厚みが5.5~20μmであり、5.6~15μmがより好ましく、5.7~12.5μmがさらに好ましい。ここで、塗工層の平均厚みは、サンプルを短冊状に切断し、その断面を任意の10箇所において電子顕微鏡を用いた観察により測定した防水塗工層の厚みの平均値である。
【0079】
また、本発明に係る防水紙は、防水塗工層の単位厚さ当たりの透湿度が15(g/m2・24h)/μm以下が好ましく、10(g/m2・24h)/μm以下がより好ましく、7(g/m2・24h)/μm以下がさらに望ましい。ここで、防水塗工層の単位厚さ当たりの透湿度は、防水紙の塗工層側からJIS Z 0208に準拠して測定した透湿度を平均塗工層厚みで除して算出する。
【0080】
本発明の防水紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、防水剤を塗工し、塗工した防水剤を乾燥することによって製造することができる。防水塗工層の形成は、公知の塗工方式を使用して塗工剤を塗工して行うことができ、例えば、エアナイフ塗工、カーテン塗工、ブレード塗工、ゲートロール塗工、ダイ塗工などの塗工方式を用いることができる。また、塗工層は、単層であっても複数層であってもよく、複数の塗工層を順次塗工してもよく、カーテン塗工などにより2層以上を同時に塗工してもよい。また複数の塗工層を設ける場合は、少なくとも1層が防水性を有する塗工層であればよく、最外の塗工層として防水剤を塗工することが好ましい。塗工層を乾燥する際、好ましくは、乾燥工程出口の塗工層温度が120℃未満となるように調整する。塗工剤を塗工する際の塗工速度は、塗工剤の粘度、目標塗工量を考慮して適宜設定することができる。
【0081】
好ましい態様として、紙基材への塗工剤の塗工を、エアナイフ塗工やカーテン塗工といった輪郭塗工方式により行うことにより、紙基材表面への塗工剤の塗工量が均一となり、したがって塗膜厚みが均一となり、後工程である乾燥工程において塗工層におけるブリスターの発生を抑制することができる。また、接触塗工方式に比べて塗工剤の使用量を低減することができ、製造コストを抑えることができる。
【0082】
紙基材に塗工された塗工剤を乾燥して塗工層とするが、この乾燥工程では、出口での塗工層温度が120℃未満とすることが好ましく、100℃以下となるように調整してもよい。出口での塗工層温度が120℃以上であると、塗工層におけるブリスターの発生率が高くなることがあり、また、塗工層が形成された後に巻き取られた防水紙にブロッキングが発生することがある。一方、出口での塗工層温度は、60℃以上が好ましく、70℃がより好ましく、80℃以上とすることもできる。出口での塗工層温度が60℃未満であると、場合によって、塗工層が形成された後に巻き取られた防水紙にブロッキングが発生することがあるだけでなく、塗工層の乾燥が不十分であるため防水、防湿性能を十分に発現できないことがある。
【0083】
乾燥工程出口での塗工層温度の設定は、紙基材の坪量および紙厚を考慮して設定することができる。例えば、紙基材が多層抄き板紙であって坪量および紙厚の大きい段ボールのライナの場合、単層紙であって坪量および紙厚が相対的に小さいクラフト紙に比べて塗工層の表面にブリスターが発生し易い傾向にある。その理由は限定されないが、段ボールのライナの場合、クラフト紙に比べて坪量および紙厚が大きいと共に透気性が低いことが多く、クラフト紙と同じ紙中水分値であっても、乾燥工程において紙基材内部で気化した多くの水分が十分に逃げきれないため、塗工層の表面にブリスターが発生し易くなると考えられる。このため、紙基材の坪量および紙厚が大きいほど、乾燥工程出口での塗工層温度を、上記の範囲内で低目に調整することが好ましい。
【0084】
ここで、乾燥工程の出口とは、乾燥工程における乾燥ゾーンが1個の場合、当該乾燥ゾーンの出口であり、乾燥工程における乾燥ゾーンが複数個の場合、最も下流側の乾燥ゾーンの出口である。
【0085】
乾燥工程出口での塗工層温度の調整は、乾燥時間、乾燥ゾーンの温度の調節により行うことができる。乾燥時間は、紙基材の送り速度、乾燥ゾーンの個数、長さ、乾燥ゾーンの機器能力(風量、赤外線出力)などで決定される。また、乾燥方式としては、公知の乾燥方式を用いることができ、例えば、蒸気シリンダ加熱乾燥方式、熱風乾燥方式、ガス式赤外線乾燥方式、電気式赤外線乾燥方式などを挙げることができ、これらのいずれか1種、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。
【実施例0086】
以下に、具体例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において、特に記載しない限り、濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとする。
【0087】
1.微細セルロースの製造および評価
1-1.MFC
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度:85%、日本製紙)52g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)406mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム5346mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液5.2Lに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応混合物に塩酸を添加してpH2に調整した後、脱水と水での希釈を繰り返してパルプを十分に水洗し、最終的にパルプ固形分濃度が20重量%となるまで脱水して化学変性パルプ(TEMPO酸化パルプ)を得た。パルプ収率は90%であり、カルボキシル基量は1.41mmol/gであった。
【0088】
得られたカTEMPO酸化されたセルロース原料から水分散液(固形分濃度:1.05重量%)を調製し、水分散液のpHが7.4となるよう水酸化ナトリウムを添加後、離解機(ダブルディスクリファイナー、相川鉄工)を用いて循環率75%の条件で120分間処理し、フィブリル化されたTEMPO酸化微細セルロース繊維を調製した(平均繊維径:6.0μm、平均繊維長:57μm、アスペクト比:9.5、フィブリル化率:2%、BET比表面積:161m2/g、固形分1%スラリーの透明度:26%、固形分1%スラリーのB型粘度:3290mPa・s)。
【0089】
1-2.CNF
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度:85%、日本製紙)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウム濃度が5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムが消費され、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応混合物をガラスフィルターで濾過してパルプを分離し、パルプを十分に水洗して酸化パルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。パルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.5mmol/gであった。酸化パルプに水を加えて1%(w/v)の混合物を調製し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、CNFの水分散液を得た(平均繊維径:3nm、平均繊維長:750nm、アスペクト比:250、BET比表面積:220m2/g、固形分1%スラリーの透明度:90%、固形分1%スラリーのB型粘度:1400mPa・s)。
【0090】
1-3.微細セルロースの評価
微細セルロースの物性については、以下の手順により評価した。
(1)繊維長、繊維幅、アスペクト比など
微細セルロースを水で希釈して固形分濃度が0.25%であるスラリーを調製した。このスラリーを、流速5.7L/min、水温25±1℃、全流出量22Lの条件で約250gずつ(うち50gが測定に供される)2回フラクショネーター(バルメット製)にかけ、フラクショネーターに付属のCCDカメラによって、装置内部において流量で分級された微細セルロース繊維の画像およそ2000枚を取得した。
【0091】
次いで、取得したおよそ2000枚の画像を解析ソフト(IMG、Metso社)で解析し、平均繊維長(長さ加重平均繊維長)や平均繊維幅(長さ加重平均繊維幅)、アスペクト比、フィブリル化率などのデータを得た。解析ソフトの繊維解析パラメーターは下表のように設定し、2回測定・解析を行った平均値を測定データとして採用した。
【0092】
【0093】
(2)BET比表面積
BET比表面積は、窒素ガス吸着法(JIS Z 8830)に基づいて、以下の方法により測定した。
(a) 微細セルロースの分散液に、必要に応じてイオン交換水(分散媒)を加えてスラリーを調製し、これを固形分が約0.1gとなるように取り分けて遠心分離の容器に入れ、100mLのエタノールを加える。
(b) 撹拌子を入れ、500rpmで30分以上撹拌してから、撹拌子を取り出し、遠心分離機で、7000G、30分、30℃の条件で微細セルロースを沈降させる。次いで、微細セルロースをできるだけ除去しないようにしながら、上澄みを除去する。
(c) 100mLのエタノールを加え、(b)の操作を3回繰り返す。
(d) (c)の溶媒をエタノールからt-ブタノールに変え、t-ブタノールの融点以上の室温下で、(c)と同様にして撹拌、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返す。
(e) 最後の溶媒除去後、t-ブタノールを30mL加え、軽く混ぜた後にナスフラスコに移し、氷浴を用いて凍結させてから、冷凍庫で30分以上冷却する。
(f) 凍結乾燥機に取り付け、3日間凍結乾燥する。
(g) BET測定を行う(前処理条件:窒素気流下、105℃、2時間、相対圧0.01~0.30、サンプル量30mg)。
(3)透明度
微細セルロースの水分散液(固形分濃度:1.0w/v%)を調製し、脱泡してから、UV-VIS分光光度計UV-1800(島津製作所社製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて波長660nmの光の透過率(透明度)を測定する。
(4)B型粘度
必要に応じてイオン交換水を加えて1重量%スラリーを300ml調製し、25℃で3時間放置した後、ホモディスパー(PRIMIX社)を用いて3000rpmで5分間攪拌し、攪拌直後にB型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.1~4のうち適切なローターを使用して回転数60rpmで3分後の粘度を測定した。
【0094】
2.防水紙の製造および評価
2-1.防水紙の製造
段古紙パルプ100%からなる裏層、古紙パルプ100%からなる中層、未晒クラフトパルプ70%および段古紙パルプ30%からなる表層を裏層:中層:表層=25:60:15の重量比で抄き合わせ、ドライヤにて乾燥後、カレンダを用いて平滑化処理を行って紙基材(ライナ)を製造した(坪量:約280g/m2、表面の120秒コッブ吸水度:30g/m2)。
【0095】
紙基材の表層側に、微細セルロース繊維を含有する下塗り液(微細セルロース繊維濃度:2%)をエアナイフまたはバーブレードを用いて塗工した。なお、サンプル17~18については、微細セルロース繊維(濃度:2%)とポリビニルアルコール(クラレ、RS-2117、濃度:10%)を固形分重量比で50:50となるよう混合した下塗り液を使用した。
【0096】
次いで、スチレン・アクリル系樹脂とワックスを含有する防水剤(マイケルマン、VaporCoat2200)をバーブレードまたはエアナイフを用いて下塗り層の上に塗布し、乾燥工程出口における塗工層の温度が80℃となるよう熱風乾燥して防水紙のサンプルを製造した。
【0097】
【0098】
2-2.防水紙の評価
それぞれのサンプルについて、下記の手順により、紙質を評価した。
(坪量) JIS P 8124に準拠して測定した。
(コッブ吸水度) JIS P 8140に準拠し、コッブ法により測定を行った。すなわち、100mlの蒸留水を表側(塗工層側)に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定した。なお測定時間は防水性を評価するため、通常の規定時間である120秒(2分間)ではなく、30分として測定を行った。また、発泡スチロール製のサンプル5についても同様に測定を行った。
(透気抵抗度) JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5-2:2000に準拠して、表側(塗工層側)より王研式平滑度透気度試験機により測定した。
(光沢度) JIS P 8142に準拠して、表側(塗工層側)より測定した。
(透湿度) JIS Z 0208に準拠して、表側(塗工層側)から測定した。
(防水性) A4サイズのサンプル1枚を表側(塗工層側)が内側になるように折りこみ、
図1に示す箱形の搬器を作り、そこに0.005%ブリリアントブルー溶液200mlを入れて、23℃、50%RHの環境下に1週間静置した。その後、ブリリアントブルー溶液を廃棄し、搬器の着色度合いに基づいて、以下の基準で防水性を評価した。
〇:着色が見られない、△:折部などで着色が見られる、×:全体的に着色している
【0099】
【0100】
以上の表に示す結果から明らかなように、本発明によれば、透気抵抗度と防水性が高い紙を得ることができた。