(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059452
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】スイッチギヤ
(51)【国際特許分類】
H02B 1/14 20060101AFI20230420BHJP
H02B 11/133 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
H02B1/14 A
H02B11/133 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169477
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 知樹
(72)【発明者】
【氏名】龍 正晃
【テーマコード(参考)】
5G012
5G016
【Fターム(参考)】
5G012CC03
5G016AA04
5G016CF07
(57)【要約】
【課題】移動対象としての遮断器を無電圧状態でのみ移動可能にするスイッチギヤを提供する。
【解決手段】受配電時に電流の流れる主回路構造6と、予め設定された方向に移動可能で、かつ、主回路構造に対して切り離し可能に接続される移動対象としての遮断器8と、主回路構造に設けられ、電流の流れる方向において遮断器よりも上流側に配置された無電圧化手段Mp(断路機構14)と、を有し、無電圧化手段は、遮断器を主回路構造に対して電気的に絶縁された無電圧状態にすることが可能であり、遮断器は、無電圧化手段によって無電圧状態となったときに、主回路構造から切り離されて予め設定された方向に移動可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受配電時に電流の流れる主回路構造と、
予め設定された方向に移動可能で、かつ、前記主回路構造に対して切り離し可能に接続される移動対象としての遮断器と、
前記主回路構造に設けられ、電流の流れる方向において前記遮断器よりも上流側に配置された無電圧化手段と、を有し、
前記無電圧化手段は、前記遮断器を前記主回路構造に対して電気的に絶縁された無電圧状態にすることが可能であり、
前記遮断器は、前記無電圧化手段によって前記無電圧状態となったときに、前記主回路構造から切り離されて前記予め設定された方向に移動可能となるスイッチギヤ。
【請求項2】
前記無電圧状態には、前記遮断器を前記主回路構造に対して電気的に非接触とすることによって、前記遮断器に電圧の印加されていない状態が含まれる請求項1に記載のスイッチギヤ。
【請求項3】
前記遮断器と前記無電圧化手段との間には、インタロックが設定され、
前記無電圧化手段は、前記遮断器の操作によって電流の流れが遮断された無電流状態となったときに、前記遮断器を前記無電圧状態にする請求項1に記載のスイッチギヤ。
【請求項4】
前記遮断器を前記予め設定された方向に移動させるときに開錠可能な盤扉を有し、
前記遮断器と前記無電圧化手段と前記盤扉との間には、インタロックが設定され、
前記盤扉は、前記無電圧化手段によって前記遮断器が前記無電圧状態となったときに開錠される請求項3に記載のスイッチギヤ。
【請求項5】
前記遮断器は、前記主回路構造に対して切り離し可能に接続される一対の接続部を備えていると共に、
前記無電圧化手段は、一対の前記接続部の相互間に電位差が生じないようにすることによって、前記遮断器を前記無電圧状態にする断路機構を備えている請求項1に記載のスイッチギヤ。
【請求項6】
前記断路機構は、前記遮断器に向かう電流の流れを停止させる請求項5に記載のスイッチギヤ。
【請求項7】
前記主回路構造は、受配電時に電流の流れる導線を備え、
前記断路機構は、前記主回路構造を構成する前記導線のうち、前記断路機構から前記遮断器に向かって延在する前記導線を一部断線させることによって、前記遮断器に向かう電流の流れを停止させる請求項6に記載のスイッチギヤ。
【請求項8】
電流の流れる方向において前記遮断器よりも上流側に上位遮断器が設けられた前記主回路構造において、
前記上位遮断器を前記無電圧化手段とすることで、前記上位遮断器は、前記上位遮断器の操作によって電流の流れを遮断した無電流状態となったときに、前記遮断器を前記無電圧状態にする請求項1に記載のスイッチギヤ。
【請求項9】
前記遮断器を前記予め設定された方向に移動させるときに開錠可能な盤扉を有し、
前記上位遮断器と前記盤扉との間には、インタロックが設定され、
前記盤扉は、前記上位遮断器によって前記遮断器が前記無電圧状態となったときに開錠される請求項8に記載のスイッチギヤ。
【請求項10】
前記上位遮断器は、前記遮断器に向かう電流の流れを停止させる請求項8に記載のスイッチギヤ。
【請求項11】
前記上位遮断器は、相対的に離接可能な一対の電極を備え、
前記上位遮断器は、一対の前記電極を互いに離間させることによって、前記遮断器に向かう電流の流れを停止させる請求項10に記載のスイッチギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、スイッチギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや大型施設に設けられる受配電用の開閉装置として、例えば、遮断器や断路器などの開閉器を具備したスイッチギヤが知られている。スイッチギヤには、開閉器の構成要素として真空バルブが適用されている。真空バルブの内部は、絶縁容器によって一定の絶縁状態に維持され、この絶縁容器の内部に一対の電極が離接可能に収容されている。この場合、一対の電極を離接操作することで、事故電流の遮断や負荷電流の開閉が行われ、スイッチギヤから電力が安定して供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばメンテナンスや保守点検に際し、遮断器をスイッチギヤから引き出して移動させる場合が想定される。この場合、安全性を図るべく盤扉(正面扉とも言う)を閉じたまま、遮断器操作により電路を開いて電流の流れを遮断した無電流状態とした後、この無電流化された遮断器が、受配電時に電流の流れる主回路構造から切り離される。
【0005】
このとき、移動対象としての遮断器を主回路構造から安全に切り離すためには、当該遮断器が主回路構造に対して電気的に切り離された状態(換言すると、電圧の印加されていない無電圧状態)になっていること(即ち、遮断器が無電圧化されていること)が求められる。
【0006】
これに応えるために、本発明は、移動対象としての遮断器を無電圧状態でのみ移動可能にするスイッチギヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、受配電時に電流の流れる主回路構造と、予め設定された方向に移動可能で、かつ、主回路構造に対して切り離し可能に接続される移動対象としての遮断器と、主回路構造に設けられ、電流の流れる方向において遮断器よりも上流側に配置された無電圧化手段と、を有し、無電圧化手段は、遮断器を主回路構造に対して電気的に絶縁された無電圧状態にすることが可能であり、遮断器は、無電圧化手段によって無電圧状態となったときに、主回路構造から切り離されて予め設定された方向に移動可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るスイッチギヤの内部構成を示す側面図。
【
図3】第2実施形態に係るスイッチギヤの内部構成を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「第1実施形態」
図1は、スイッチギヤ1の側面から見た内部構成図である。スイッチギヤ1は、接地(アース)された金属製の筐体2(盤とも言う)を有し、この筐体2の内部に、後述する各種の電気機器(例えば、遮断器8や断路器などの開閉器、母線7、各種の変流器12,13を備えた計器用変成器)が多段積みされて収納されている。
【0010】
図1では一例として、スイッチギヤ1は、筐体2の正面側2pが開口され、この開口2pを開放可能に閉鎖する盤扉3(正面扉とも言う)を有している。盤扉3は、後述する遮断器8を予め設定された方向に移動させるときに開錠可能に構成されている。
【0011】
筐体2の内部は、一対の仕切フレーム(第1仕切フレーム4、第2仕切フレーム5)によって区画されている。これらの仕切フレーム4,5は、盤扉3から筐体2の奥方向に向かって間隔を存して配置されている。盤扉3、第1仕切フレーム4、第2仕切フレーム5は、この順番で互いに平行に整列している。
【0012】
仕切フレーム4,5の相互間には、受配電時に電流の流れる主回路構造6と、主回路構造6に電流を流すべく隣の盤との電路接続用の母線7と、遮断器8を収容する収容部9と、が設けられている。遮断器8は、一対の電極E1,E2と、複数のローラ10と、把持部11と、一対の遮断器側接続部8a,8bと、を備えている。収容部9は、ガイド9gと、一対の主回路側接続部9a,9bと、を備えている。
【0013】
なお、一対の電極E1,E2は、遮断器8を構成する真空バルブ(図示しない)に収容され、後述する制御部17によって、相対的に離接可能に構成されている。この場合、一対の電極E1,E2を相互に離間させることで真空バルブが開状態となり、このとき、遮断器8によって電流の流れが停止される。これに対して、一対の電極E1,E2を相互に接触させることで真空バルブが閉状態となり、このとき、遮断器8によって電流の流れが維持される。
【0014】
図1に示すように、収容部9のガイド9gは、収容部9から第1仕切フレーム4を越えて盤扉3の手前まで真っ直ぐに延在されている。遮断器8のローラ10は、ガイド9gに沿って転動可能に構成されている。この構成において、ローラ10がガイド9gに沿って転動することで、遮断器8を予め設定された方向に移動させることができる。
【0015】
例えば、盤扉3を開錠した後、遮断器8の把持部11を把持しつつ引っ張る(以下、引っ張り操作と言う)。このとき、ローラ10がガイド9gに沿って転動する。これにより、遮断器8を筐体2の正面側(開口)2pに向けて移動させることができる。一方、遮断器8を筐体2の正面側(開口)2pに移動させた後、把持部11を把持しつつ押し込む(以下、押し込み操作と言う)。このとき、ローラ10がガイド9gに沿って転動する。これにより、遮断器8を筐体2の奥方向に向けて移動させることができる。
【0016】
遮断器8は、このような引っ張り操作並びに押し込み操作によって、主回路構造6に対して切り離し可能に接続される移動対象として構成されている。即ち、遮断器8には、一対の遮断器側接続部(第1遮断器側接続部8a、第2遮断器側接続部8b)が遮断器8と共に移動可能に取り付けられている。これらの遮断器側接続部8a,8bは、筐体2の奥方向に向かって延出している。一方、収容部9には、一対の主回路側接続部(第1主回路側接続部9a、第2主回路側接続部9b)が固定されている。これらの主回路側接続部9a,9bは、主回路構造6に電気的に接続された状態で、一対の遮断器側接続部8a,8bに向かって延出している。
【0017】
この場合、第1遮断器側接続部8aと第2遮断器側接続部8bとは、互いに同一の全長で平行に並んで延在されている。第1主回路側接続部9aと第2主回路側接続部9bとは、互いに同一の全長で平行に並んで延在されている。また、第1遮断器側接続部8aと第1主回路側接続部9aとは、互いに対向した位置関係で真っ直ぐに整列している。第2遮断器側接続部8bと第2主回路側接続部9bとは、互いに対向した位置関係で真っ直ぐに整列している。これにより、一対の遮断器側接続部8a,8bと一対の主回路側接続部9a,9bとは、互いに同時に離間させたり接続させたりすることが可能に構成されている。
【0018】
例えば、盤扉3を開錠した後、遮断器8を引っ張り操作する。これにより、一対の遮断器側接続部8a,8bを一対の主回路側接続部9a,9bから同時に離間させることができる。一方、遮断器8を押し込み操作する。これにより、一対の遮断器側接続部8a,8bを一対の主回路側接続部9a,9bに同時に接続させることができる。かくして、一対の遮断器側接続部8a,8bと一対の主回路側接続部9a,9bとを互いに離接させることによって、遮断器8を主回路構造6に対して切り離し可能に接続させることができる。
【0019】
ここで、一対の遮断器側接続部8a,8bと一対の主回路側接続部9a,9bとを互いに接続させて、遮断器8を主回路構造6に電気的に接続させた状態において、後述する制御部17によって、遮断器8を構成する真空バルブを閉操作して、一対の電極E1,E2を相互に接触させる。このとき、例えば、母線7を介して主回路構造6に流入した電流は、第1主回路側接続部9aから第1遮断器側接続部8aを経由して遮断器8(電極E1,E2)を流れた後、第2遮断器側接続部8bから第2主回路側接続部9bを経由して計器用変成器(変流器12、零相変流器13など)に流出する。
【0020】
ところで、例えばメンテナンスや保守点検に際し、遮断器8をスイッチギヤ1から引き出して移動させる場合が想定される。このとき、移動対象としての遮断器8を主回路構造6から安全に切り離すためには、当該遮断器8が主回路構造6に対して電気的に切り離された状態(換言すると、電圧の印加されていない無電圧状態)になっていること(即ち、遮断器8が無電圧化されていること)が求められる。
【0021】
これに応えるために、スイッチギヤ1は、遮断器8を主回路構造6に対して電気的に絶縁された無電圧状態にすることが可能な無電圧化手段Mpを有している。無電圧化手段Mpは、母線7から遮断器8に向かって電流の流れる方向において、遮断器8よりも上流側の主回路構造6に設けられている。
図1では一例として、無電圧化手段Mpは、遮断器8と母線7との間の主回路構造6に配置されている。
【0022】
図1に示すように、無電圧化手段Mpは、遮断器8を無電圧状態にする断路機構14を備えている。断路機構14は、一対の遮断器側接続部8a,8bの相互間に電位差が生じないようにすること(換言すると、一対の遮断器側接続部8a,8bの相互を同電位にすること)によって、遮断器8を無電圧化させる。
【0023】
一対の遮断器側接続部8a,8bの相互間に電位差が生じないようにする方法として、例えば、断路機構14は、母線7と遮断器8(具体的には、第1主回路側接続部9a)との間における電流の流れを停止させる。
【0024】
電流の流れを停止させる方法として、例えば、主回路構造6が、受配電時に電流の流れる導線(図示しない)を備えている場合を想定する。この場合、断路機構14は、主回路構造6を構成する導線のうち、母線7と遮断器8(第1主回路側接続部9a)との間に延在する導線を一部断線させる。
【0025】
導線を一部断線させる方法として、例えば、断路機構14において、予め2つに分断された導線をセットしておく。受配電時には、分断された2つの導線を互いに接触させることによって、母線7と遮断器8(第1主回路側接続部9a)との間に電流を流す。そして、断路機構14の作動時には、2つの導線を互いに離間させて断線させる。
【0026】
断路機構14の具体例としては、2つに分断された導線の一方を固定し、他方を移動可能に構成する。この構成において、受配電時には、他方の導線を一方の導線に接近させて接触させる。そして、断路機構14の作動時には、他方の導線を一方の導線から離間させることによって、導線相互間に空間的な隙間を構成して断線させる。
【0027】
断路機構14の他の具体例としては、2つに分断された導線の一方にスイッチ用レバー(図示しない)の基端を接続し、他方の導線には、スイッチ用レバーの先端が接触可能な接点を構成する。この構成において、受配電時には、スイッチ用レバーの先端を他方の導線の接点に接触させる。そして、断路機構14の作動時には、スイッチ用レバーの先端を他方の導線の接点から離間させることによって、導線相互間に空間的な隙間を構成して断線させる。
【0028】
これにより、遮断器8を無電圧状態にすることができる。このとき、遮断器8は、主回路構造6に対して電気的に非接触な状態と同等な状態、即ち、電圧の印加されていない状態となる。この状態に際し、遮断器8は、主回路構造6から安全に切り離されて、上記した予め設定された方向に移動可能となる。
【0029】
ここで、上記した断路機構14の作動タイミング、即ち、断路機構14で遮断器8を無電圧化させるタイミングには、インタロックが施されている。
図1では一例として、遮断器8と断路機構14との間には、インタロックが設定されている。これにより、断路機構14は、遮断器8の操作によって電流の流れが遮断された無電流状態となったときに、即ち、後述する制御部17によって、遮断器8を構成する真空バルブが開操作され、一対の電極E1,E2が相互に離間したときに、遮断器8を無電圧状態にする。
【0030】
更に、盤扉3は、遮断器8を予め設定された方向に移動させるときに開錠可能に構成されている。盤扉3には、錠前部15が設けられ、錠前部15を作動させることによって、盤扉3を開錠させたり施錠させたりすることができる。この場合、盤扉3(錠前部15)の開錠タイミングには、インタロックが施されている。
図1では一例として、遮断器8と断路機構14と盤扉3(錠前部15)との間には、インタロックが設定されている。これにより、盤扉3(錠前部15)は、無電流状態とされた遮断器8が断路機構14によって無電圧状態となったときに開錠される。
【0031】
加えて、スイッチギヤ1は、上記したインタロックを実行するための制御システムを有している。
図1では一例として、制御システムは、マルチリレー16と、マルチリレー16に電気的に接続された制御部17と、を備えている。マルチリレー16及び制御部17は、盤扉3に設けられている。制御部17には、インタロックを実行するための制御プログラムが予め記憶されている。
【0032】
マルチリレー16には、例えば、計器用変成器(変流器12、零相変流器13)の計測機能、遮断器8及び無電圧化手段Mp(断路機構14)並びに錠前部15の制御機能、遮断器8及び無電圧化手段Mp(断路機構14)並びに錠前部15に対する遠隔操作機能などが集約されている。
【0033】
マルチリレー16は、遮断器8、無電圧化手段Mp(断路機構14)、錠前部15に電気的に接続され、制御部17に記憶された制御プログラムに従って、遮断器8を操作すると共に、無電圧化手段Mp(断路機構14)及び錠前部15を作動させる。
【0034】
図2は、遮断器8と断路機構14と盤扉3(錠前部15)との間に設定されたインタロックの動作フロー図である。このインタロック動作は、制御部17において、ROM(図示しない)に記憶された制御プログラムが、RAM(図示しない)を作業領域として、CPU(図示しない)によって実行される。
【0035】
図2に示すように、移動対象としての遮断器8が開操作(即ち、一対の電極E1,E2が離間)され(S1)、これにより、遮断器8の電路が遮断されたとき(S2)、当該遮断器8は、無電流化され、主回路構造6において電流の流れが遮断された無電流状態となる(S3)。
【0036】
次に、断路機構14のインタロックが解除されたとき(S4)、断路機構14が作動され(S5)、これにより、母線7と遮断器8(第1主回路側接続部9a)との間の電流の流れを停止させる。この結果、遮断器8は、無電圧化され、主回路構造6に対して電気的に切り離された状態(換言すると、電圧の印加されていない無電圧状態)となる(S6)。
【0037】
続いて、盤扉3(錠前部15)のインタロックが解除されたとき(S7)、錠前部15が作動され(S8)、これにより、遮断器8は、主回路構造6から切り離されて、上記した予め設定された方向に移動可能となる(S9)。
【0038】
以上、本実施形態によれば、移動対象としての遮断器8を無電圧状態でのみ移動可能にする。これにより、当該遮断器8は、無電圧化され、主回路構造6に対して電気的に切り離された状態(換言すると、電圧の印加されていない無電圧状態)になる。この結果、遮断器8を主回路構造6から安全に切り離すことができる。
【0039】
本実施形態によれば、マルチリレー16は、遮断器8及び無電圧化手段Mp並びに錠前部15に対する遠隔操作機能を有している。これにより、マルチリレー16を遠隔操作することによって、上記したインタロック制御を行うことができる。この結果、より安全に遮断器8を主回路構造6から切り離すことができる。
【0040】
本実施形態によれば、盤扉3(錠前部15)は、無電流状態とされた遮断器8が無電圧化手段Mpによって無電圧状態となったときに開錠される。これにより、移動対象としての遮断器8が無電流状態かつ無電圧状態でのみ、盤扉3(錠前部15)を開錠して、当該遮断器8を移動させることができる。換言すると、移動対象としての遮断器8が無電圧化されていない状態では、盤扉3(錠前部15)を開錠することができない。この結果、遮断器8を移動させる作業員の安全を図ることができる。
【0041】
「第2実施形態」
図3は、スイッチギヤ1の正面から見た内部構成図である。なお、本実施形態の説明に際し、上記した第1実施形態と同様の構成には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図3では一例として、筐体2の内部は、正面視で、その中央に設けられた仕切壁18によって2つの領域に区画されている。このような筐体2において、仕切壁18を挟んで一方側には、遮断器19が収納されていると共に、仕切壁18を挟んで他方側には、上記した第1実施形態と同様に、移動対象としての遮断器8、及び、断路機構14(無電圧化手段Mp)が収納されている。
【0043】
図3に示すように、仕切壁18には、母線7が設けられている。上記した第1実施形態の主回路構造6は、この母線7を経由して、筐体2の一方側から他方側に亘って延在されている。この場合、筐体2の一方側から母線7を介して他方側に向かって電流の流れる方向において、上流側から下流側に向かって、遮断器19、母線7、断路機構14、遮断器8は、この順番に並んで主回路構造6に設けられている。即ち、断路機構14は、上記した第1実施形態と同様に、遮断器8よりも上流側に配置されている。遮断器19は、断路機構14並びに遮断器8よりも上流側に配置されている。
【0044】
ここで、2つの遮断器8,19に着目すると、電流の流れる方向において、移動対象としての遮断器8は、遮断器19よりも下流側に位置する下位遮断器8として規定され、遮断器19は、下位遮断器8よりも上流側に位置する上位遮断器19として規定される。
【0045】
図3では一例として、上位遮断器19が、下位遮断器8を主回路構造6に対して電気的に絶縁された無電圧状態にする無電圧化手段Mpとして適用されている。無電圧化手段Mpとしての上位遮断器19は、当該上位遮断器19の操作によって下位遮断器8への電流の流れを遮断した無電流状態となったときに、下位遮断器8を無電圧状態にする。
【0046】
上位遮断器19は、相対的に離接可能な一対の電極E1,E2を備えている。一対の電極E1,E2は、上位遮断器19を構成する真空バルブ(図示しない)に収容され、後述する制御部17によって、相対的に離接可能に構成されている。この場合、一対の電極E1,E2を相互に接触させることで真空バルブが閉状態となり、上位遮断器19によって電流の流れが維持される。
【0047】
これに対して、一対の電極E1,E2を相互に離間させることで、真空バルブを開状態とする。この状態において、上位遮断器19は、下位遮断器8に向かう電流の流れを停止させる。これにより、下位遮断器8を無電圧状態にすることができる。このとき、下位遮断器8は、主回路構造6に対して電気的に非接触な状態と同等な状態、即ち、電圧の印加されていない状態となる。この状態に際し、下位遮断器8は、主回路構造6から安全に切り離されて、上記した予め設定された方向に移動可能となる。
【0048】
ここで、上位遮断器19の作動タイミング、即ち、上位遮断器19で下位遮断器8を無電圧化させるタイミングには、インタロックが施されている。
図3では一例として、下位遮断器8と上位遮断器19との間には、インタロックが設定されている。これにより、上位遮断器19は、下位遮断器8の操作によって電流の流れが遮断された無電流状態となったときに、即ち、後述する制御部17によって、下位遮断器8を構成する真空バルブが開操作され、一対の電極E1,E2が相互に離間したときに、下位遮断器8を無電圧状態にする。
【0049】
更に、筐体2には、上記した第1実施形態と同様に、正面側(開口)2pを開放可能に閉鎖する盤扉3(正面扉とも言う)が設けられている。盤扉3(錠前部15)の開錠タイミングには、インタロックが施されている。
図3では一例として、下位遮断器8と上位遮断器19と盤扉3(錠前部15)との間には、インタロックが設定されている。これにより、盤扉3(錠前部15)は、無電流状態とされた下位遮断器8が上位遮断器19によって無電圧状態となったときに開錠される。
【0050】
盤扉3には、上記した第1実施形態と同様に、制御システムを構成するマルチリレー16と、マルチリレー16に電気的に接続された制御部17、並びに、錠前部15が設けられている。マルチリレー16には、上記した第1実施形態の機能に加えて、無電圧化手段Mp(上位遮断器19)の制御機能、当該無電圧化手段Mp(上位遮断器19)に対する遠隔操作機能が集約されている。
【0051】
図3に示すように、仕切壁18には、中継部20が設けられている。マルチリレー16は、中継部20を介して、下位遮断器8、無電圧化手段Mp(上位遮断器19、断路機構14)、錠前部15に電気的に接続されている。これにより、マルチリレー16は、制御部17に記憶された制御プログラムに従って、下位遮断器8を操作すると共に、無電圧化手段Mp(上位遮断器19、断路機構14)及び錠前部15を作動させることができる。
【0052】
図4は、下位遮断器8と上位遮断器19と盤扉3(錠前部15)との間に設定されたインタロックの動作フロー図である。このインタロック動作は、制御部17において、ROM(図示しない)に記憶された制御プログラムが、RAM(図示しない)を作業領域として、CPU(図示しない)によって実行される。
【0053】
図4に示すように、移動対象としての下位遮断器8の存在が確認され(T1)、その上流側の上位遮断器19の存在が確認された状態において(T2)、下位遮断器8が開操作(即ち、一対の電極E1,E2が離間)され(T3)、これにより、下位遮断器8の電路が遮断されたとき(T4)、当該下位遮断器8は、無電流化され、主回路構造6において電流の流れが遮断された無電流状態となる(T5)。
【0054】
次に、上位遮断器19のインタロックが解除されたとき(T6)、上位遮断器19が開操作(即ち、一対の電極E1,E2が離間)され(T7)、これにより、上位遮断器19の電路が遮断されることで(T8)、上位遮断器19が無電流化される。このとき、主回路構造6において、上位遮断器19から下位遮断器8への電流の流れが遮断された無電流状態となる。この結果、下位遮断器8は、無電圧化され、主回路構造6に対して電気的に切り離された状態(換言すると、電圧の印加されていない無電圧状態)となる(T9)。
【0055】
続いて、盤扉3(錠前部15)のインタロックが解除されたとき(T10)、錠前部15が作動され(T11)、これにより、下位遮断器8は、主回路構造6から切り離されて、上記した予め設定された方向に移動可能となる(T12)。
【0056】
以上、本実施形態によれば、移動対象としての下位遮断器8の上流側に上位遮断器19がある場合、当該上位遮断器19を無電圧化手段Mpとして適用する。この場合、断路機構14を作動させること無く、上位遮断器19の開操作によって下位遮断器8への電流の流れを遮断した無電流状態とする。これにより、下位遮断器8は、無電圧化され、主回路構造6に対して電気的に切り離された状態(換言すると、電圧の印加されていない無電圧状態)になる。この結果、遮断器8を主回路構造6から安全に切り離すことができる。
なお、その他の構成及び効果は、上記した第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0057】
「第2実施形態の変形例」
上記した第2実施形態では、下位遮断器8と上位遮断器19との間にインタロックを設定する技術を想定して説明したが、これに代えて、下位遮断器8と上位遮断器19との間にインタロックを設定しない場合も本願発明の技術範囲に含まれる。この場合、下位遮断器8を無電流状態にしなくても、上位遮断器19を開操作することによって、当該上位遮断器19から下位遮断器8への電流の流れが遮断された無電流状態となり、下位遮断器8を無電圧化させることができる。なお、その他の構成及び効果は、上記した第2実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0058】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及び変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…スイッチギヤ、2…筐体、3…盤扉(正面扉)、4…第1仕切フレーム、5…第2仕切フレーム、6…主回路構造、7…母線、8…遮断器、9…収容部、10…ローラ、11…把持部、12…変流器、13…零相変流器、14…断路機構、15…錠前部、16…マルチリレー、17…制御部、18…仕切壁、19…上位遮断器、20…中継部。