(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059474
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230420BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20230420BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230420BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/00 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169518
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】佐野 玄周
(72)【発明者】
【氏名】竹原 裕起
(72)【発明者】
【氏名】保里 彰人
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA05
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA43
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB17
3C100EE07
5E353CC04
5E353CC16
5E353CC23
5E353EE37
5E353EE54
5E353EE89
5E353LL04
5E353QQ30
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】構成の異なる部品実装ラインの生産能力を簡易に比較することができる生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラムを提供する。
【解決手段】部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力を推定する生産能力推定方法は、実装基板の生産計画と、実装基板の構成に関する基板情報と、部品実装用装置の生産データと、作業者に関する作業者情報と、部品実装ラインの構成に関するライン情報と、部品実装用装置のスペックに関するスペック情報と、作業者の作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報と、に基づいて、部品実装ラインの生産能力を推定し(ST5)、推定された複数の生産能力を比較して表示部に表示する(ST6)。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力を推定する生産能力推定システムであって、
前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記部品実装用装置が前記実装基板の生産作業を実行するための生産データと、前記部品実装用装置に対して作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインの構成に関するライン情報と、前記部品実装用装置のスペックに関するスペック情報と、前記部品実装ラインに対して作業者の作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報と、に基づいて、前記部品実装ラインの生産能力を推定する生産能力推定部と、
推定された複数の前記生産能力を比較して表示する表示部と、を備える、生産能力推定システム。
【請求項2】
前記生産能力推定部は、前記部品実装装置のスペックに基づいて推定される理想的な理想生産能力と、前記事象が発生しないと仮定して推定される事象不発生生産能力と、前記事象の発生頻度を考慮して推定される事象発生生産能力と、の少なくともいずれか2つを推定する、請求項1に記載の生産能力推定システム。
【請求項3】
複数の前記部品実装用装置の稼働実績を収集する実績収集部と、
前記稼働実績から生産能力の実績値である実績生産能力を算出する生産能力算出部と、をさらに備え、
前記表示部は、推定された前記生産能力と前記実績生産能力を比較して表示する、請求項1または2に記載の生産能力推定システム。
【請求項4】
前記ライン情報には、前記部品実装用装置が有する設備要素に関する情報を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の生産能力推定システム。
【請求項5】
前記生産能力推定部は、前記部品実装ラインの構成、前記実装基板の生産順番、前記実装基板の生産時間、前記作業者の人数、の少なくともいずれかが異なる条件で前記生産能力を推定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の生産能力推定システム。
【請求項6】
フロアに複数の前記部品実装ラインが配置されており、
前記生産能力推定部は、前記フロアの全体の生産能力であるフロア生産能力を推定し、
前記表示部は、推定された複数の前記フロア生産能力を比較して表示する、請求項1から5のいずれか1項に記載の生産能力推定システム。
【請求項7】
前記生産能力には、所定期間に前記実装基板となる基板に実装することができる部品の数が含まれる、請求項1から5のいずれか1項に記載の生産能力推定システム。
【請求項8】
複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力を推定する生産能力推定方法であって、
前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記部品実装用装置が前記実装基板に対して生産作業を実行するための生産データと、前記部品実装用装置に対して作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインの構成に関するライン情報と、前記部品実装用装置のスペックに関するスペック情報と、前記部品実装ラインに対して作業者の作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報と、に基づいて、前記部品実装ラインの生産能力を推定する生産能力推定工程と、
推定された複数の前記生産能力を比較して表示部に表示する表示工程と、を含む、生産能力推定方法。
【請求項9】
複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力の推定をコンピュータにより実行させる生産能力推定プログラムであって、
前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記部品実装用装置が前記実装基板に対して生産作業を実行するための生産データと、前記部品実装用装置に対して作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインの構成に関するライン情報と、前記部品実装用装置のスペックに関するスペック情報と、前記部品実装ラインに対して作業者の作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報と、に基づいて、前記部品実装ラインの生産能力を推定する生産能力推定ステップと、
推定された複数の前記生産能力を比較して表示部に表示する表示ステップと、を含む、生産能力推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装ラインの生産能力を推定する生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置を含む複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインでは、基板に部品を実装した実装基板が連続して生産される。このような部品実装ラインの生産能力を推定するためには、個々の部品実装用装置の処理能力以外に、部品実装用装置への部品などの部材の補給や部品実装用装置のエラー対応などの作業者作業による部品実装用装置の一時停止なども考慮する必要がある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のシステムは、生産能力を推定する部品実装ラインの構成、部品実装用装置の情報、作業者作業の発生頻度などの予め記憶されている情報と、入力された作業者に関する情報、生産計画に基づいて、部品実装ラインの生産能力を推定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1を含む従来技術では、所定の構成における部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力を推定することはできるものの、部品実装ラインに備わった理想的な生産能力に対してどの程度引き出せているかを推定することはできず、部品実装ラインの生産能力を総合的に推定するためには更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、構成の異なる部品実装ラインの生産能力を簡易に比較することができる生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生産能力推定システムは、複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力を推定する生産能力推定システムであって、前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記部品実装用装置が前記実装基板の生産作業を実行するための生産データと、前記部品実装用装置に対して作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインの構成に関するライン情報と、前記部品実装用装置のスペックに関するスペック情報と、前記部品実装ラインに対して作業者の作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報と、に基づいて、前記部品実装ラインの生産能力を推定する生産能力推定部と、推定された複数の前記生産能力を比較して表示する表示部と、を備える。
【0007】
本発明の生産能力推定方法は、複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力を推定する生産能力推定方法であって、前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記部品実装用装置が前記実装基板に対して生産作業を実行するための生産データと、前記部品実装用装置に対して作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインの構成に関するライン情報と、前記部品実装用装置のスペックに関するスペック情報と、前記部品実装ラインに対して作業者の作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報と、に基づいて、前記部品実装ラインの生産能力を推定する生産能力推定工程と、推定された複数の前記生産能力を比較して表示部に表示する表示工程と、を含む。
【0008】
本発明の生産能力推定プログラムは、複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力の推定をコンピュータにより実行させる生産能力推定プログラムであって、前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記部品実装用装置が前記実装基板に対して生産作業を実行するための生産データと、前記部品実装用装置に対して作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインの構成に関するライン情報と、前記部品実装用装置のスペックに関するスペック情報と、前記部品実装ラインに対して作業者の作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報と、に基づいて、前記部品実装ラインの生産能力を推定する生産能力推定ステップと、推定された複数の前記生産能力を比較して表示部に表示する表示ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構成の異なる部品実装ラインの生産能力を簡易に比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装ラインの構成説明図
【
図3】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)の情報処理系の構成を示すブロック図
【
図4】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)が備える表示部に表示された新フロア設定画面の一例の説明図
【
図5】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)が備える表示部に表示されたシミュレーション設定画面の一例の説明図
【
図6】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)の表示部が表示するシミュレーション結果(現フロア実績)表示画面の一例の説明図
【
図7】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)の表示部が表示するシミュレーション結果(現フロア推定)表示画面の一例の説明図
【
図8】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)の表示部が表示するシミュレーション結果(新フロア推定)表示画面の一例の説明図
【
図9】本発明の一実施の形態の生産能力推定方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装ライン、管理コンピュータ(生産能力推定システム)、部品実装装置などの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図2では、基板搬送方向(
図2における左右方向)において、紙面の左側を上流、右側を下流とする。また、
図2では、基板搬送方向に水平面内で直交する方向(
図2における上下方向)において、紙面の下側をフロント、上側をリアとする。
【0012】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、フロアFに配置された3本の部品実装ラインL1~L3を通信ネットワーク2によって接続し、管理コンピュータ3によって管理する構成となっている。各部品実装ラインL1~L3は、後述するように部品実装装置を含む複数の部品実装用装置を連結して構成され、基板に部品を実装した実装基板を生産する機能を有している。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインL1~L3は3本である必要はなく、1本、2本または4本以上でも良い。
【0013】
次に
図2を参照して、部品実装ラインL1~L3の詳細な構成を説明する。部品実装ラインL1~L3は同様の構成をしており、以下、部品実装ラインL1について説明する。部品実装ラインL1は、基板搬送方向の上流(紙面左側)から下流(紙面右側)に向けて、はんだ印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8などの部品実装用装置を直列に連結して構成されている。なお、部品実装ラインL1は通信ネットワーク2を介して接続される部品実装用装置群であって、物理的に部品実装用装置同士が連結されていなくてもよい。
【0014】
はんだ印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。はんだ印刷装置M1は、はんだ印刷作業部によって上流から搬入された基板Bに複数の開口が形成されたマスクを介してはんだを印刷するはんだ印刷作業を実行する。生産する実装基板を切り替える段取り作業では、作業者Wによってマスクの交換作業、はんだ印刷時に基板Bを下方から支持する下受けピンの配置変更作業などが実行される。
【0015】
図2において、印刷検査装置M2は、はんだ検査カメラを含む印刷検査作業部によって基板Bに印刷されたはんだの状態を検査する印刷検査作業を実行する。なお、はんだ印刷装置M1と並設して、もしくははんだ印刷装置M1の代わりにはんだを基板Bに塗布するはんだ塗布装置を備えてもよい。また、部品実装ラインL1は、印刷検査装置M2を備えなくてもよい。
【0016】
図2において、部品実装装置M3~M6は、コンベア、部品供給部、実装ヘッドを含む部品実装作業部によって基板Bに部品Dを搭載する部品実装作業を実行する。なお、部品実装ラインL1は、部品実装装置M3~M6が4台の構成に限定されることなく、部品実装装置M3~M6が1台~3台であっても5台以上であってもよい。部品実装装置M3~M6において、基板搬送方向に延伸するコンベアは、基板Bを部品実装位置まで搬送する。部品供給部は、コンベアの外側(フロントとリア)に配置されている。
【0017】
部品供給部には、部品Dを保持するキャリアテープをテープ送りして部品Dを供給する複数のテープフィーダを搭載する台車や、複数の部品Dを保持するトレイを入れ替えながら部品Dを供給するトレイフィーダが装着され、部品Dを実装ヘッドによるピックアップ位置まで供給する。実装ヘッドは部品Dを真空吸着する複数の吸着ノズルを備え、部品供給部が供給する部品Dをピックアップし、コンベアが搬送して位置決め保持している基板Bに移送搭載する部品実装作業を実行する。部品供給部のテープフィーダとトレイには、生産する実装基板の基板種に応じて所定の部品Dが供給されるように、段取り替え時に所定の部品Dを保持するキャリアテープやトレイがセットされる(言い換えると、部品Dが配列される)。
【0018】
図2において、部品実装装置M3~M6において、部品実装作業を反復継続する間に部品供給部が保有する部品Dが消費されて所定の残数を下回ると(部品切れ警告が発生すると)、もしくは部品Dが無くなると(部品切れが発生すると)、作業者Wによって部品Dの補給作業(キャリアテープの補給、トレイの交換など)が実行される。また、吸着ノズルが部品Dを正常に吸着していない吸着エラー、キャリアテープが絡まること(ジャミング)によるテープフィーダによる部品Dの供給停止エラーなど部品実装装置M3~M6が停止する装置エラーが発生すると、作業者Wによって装置エラーからの復旧作業が実行される。
【0019】
また、生産する実装基板を切り替える段取り替え作業では、部品実装装置M3~M6において、作業者Wによってテープフィーダの交換作業、トレイの交換作業、実装ヘッドの交換作業、吸着ノズルの交換作業、部品実装時に基板Bを下方から支持する下受けピンの配置変更作業などが実行される。
【0020】
図2において、上述の作業を実行する際、作業者Wは作業対象となる部品実装装置M3~M6の操作面(フロントまたはリア)に移動して作業を実行する。なお、装置エラーには、装置エラーが発生しているフロントまたはリアの部品実装作業のみが停止して、反対側では部品実装作業が停止されることなく継続される装置エラーや、部品実装装置M3~M6による復旧処理により自動で復旧する装置エラーもある。このように、部品実装装置M3~M6は、テープフィーダ、トレイフィーダ、実装ヘッド、吸着ノズルなどの設備要素を有し、実装基板を生産する部品実装作業を実行する。
【0021】
図2において、実装検査装置M7は、部品検査カメラを含む実装検査作業部によって基板Bに実装された部品Dの状態を検査する実装検査作業を実行する。リフロー装置M8は、装置内に搬入された基板Bを基板加熱部によって加熱して、基板B上のはんだを硬化させ、基板Bの電極部と部品Dとを接合する基板加熱作業を実行する。なお、部品実装ラインL1は、実装検査装置M7を備えなくてもよい。
【0022】
次に
図3を参照して、管理コンピュータ3の情報処理系の構成について説明する。ここでは、管理コンピュータ3(生産能力推定システム)が備える複数の機能のち、部品実装ラインL1~L3の生産能力を推定し、生産能力を比較して表示する機能について説明する。管理コンピュータ3は、処理部10、記憶装置である記憶部17の他、入力部28、表示部29、通信部30を備えている。
【0023】
処理部10はCPUなどのデータ処理装置であり、内部処理部として実績収集部11、生産能力算出部12、表示処理部13、フロア情報作成部14、最適化処理部15、生産能力推定部16、制御部(図示せず)を備えている。なお、各内部処理部は、独立したハードウェア資産で構成しても、共通のCPUと各情報処理用のプログラムで構成してもよい。制御部は、例えばCPU(中央演算処理装置)であり、管理コンピュータ3全体を制御する。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶部17、管理コンピュータ3を構成するデータ処理装置の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0024】
図3において、入力部28は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部29は液晶パネルなどの表示装置であり、記憶部17が記憶する各種データを表示する他、入力部28による操作のための操作画面、入力画面などの各種情報を表示する。通信部30は、通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインL1~L3を構成する部品実装用装置(はんだ印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7など)との間でデータの送受信を行う。
【0025】
図3において、記憶部17には、生産計画情報18、基板情報19、生産データ20、作業者情報21、フロア情報22、スペック情報23、イベント情報24、稼働実績25、実績生産能力情報26、推定生産能力情報27などが記憶されている。生産計画情報18には、部品実装ラインL1~L3(またはフロアF)において生産される実装基板(基板種)の生産順番、生産開始予定時間、生産終了予定時間などを含む、生産実績がある生産計画や新規の生産計画などの複数の生産計画が記憶されている。基板情報19には、実装基板の基板種毎に、基板Bのサイズ、部品Dの実装位置と部品Dの種類などの実装基板の構成に関する情報が記憶されている。
【0026】
生産データ20には、実装基板の基板種毎に、はんだ印刷装置M1に装着されるマスクを特定する情報、下受けピンの配置情報などが記憶されている。また、生産データ20には、実装基板の基板種毎に、部品実装装置M3~M6に装着される実装ヘッド、吸着ノズルの情報、下受けピンの配置情報、部品供給部における部品Dの配列情報などが記憶されている。すなわち、生産データ20には、部品実装用装置(はんだ印刷装置M1、部品実装装置M3~M6など)が実装基板の生産作業を実行するための情報が含まれている。
【0027】
図3において、作業者情報21には、フロアFにおいて部品実装用装置に対して作業を行う作業者Wの能力区分に関する情報、能力区分毎の作業者Wの人数、勤務時間や休憩時間などの作業者Wの作業時間など、作業者Wに関する情報が記憶されている。能力区分に関する情報には、能力区分毎に作業者Wに許可された作業の種類、部材の交換や装置エラーに対する復旧作業などの標準作業時間などが含まれる。
【0028】
図3において、フロア情報22には、フロアFの構成に関する情報、フロアFが備える部品実装ラインL1~L3のライン情報などが記憶されている。ライン情報には、部品実装ラインL1~L3の構成に関する情報、各部品実装ラインL1~L3が備える部品実装用装置(はんだ印刷装置M1、部品実装装置M3~M6など)の機種、部品実装用装置が有する設備要素(テープフィーダ、トレイフィーダ、実装ヘッド、吸着ノズルなど)に関する情報などが含まれている。フロア情報22には、生産実績がある既存のフロアFの情報の他、既存のフロアFに新規の部品実装ラインL1~L3が追加された新フロアや、部品実装ラインL1~L3に新規の部品実装用装置が追加された新フロアなどの検討用の情報が含まれている。
【0029】
スペック情報23には、部品実装ラインL1~L3で使用することができる部品実装用装置のスペックに関する情報が記憶されている。例えば、部品実装装置M3~M6のスペック情報23には、機種名毎にコンベアの数、部品供給部の数、実装ヘッドの数、装着可能なテープフィーダの数の他、生産能力として単位時間あたりに搭載可能な部品数であるChip Per Hour(以下、「CPH」と称する。)が含まれる。CPHとしては、例えば、部品実装装置M3~M6が有する設備要素(テープフィーダ、トレイフィーダ、実装ヘッド、吸着ノズルなど)の組み合わせにより引き出せる最大の性能であるCPHの最大値(理想CPH)が記憶される。
【0030】
図3において、イベント情報24には、部品実装ラインL1~L3に対して作業者Wの作業を必要とする事象(部品Dの補給作業、装置エラーからの復旧作業など)とその発生頻度に関する情報が記憶されている。発生頻度は、後述の稼働実績25に含まれる作業ミスの回数、動作エラーの回数などに基づいて、または、経験に基づいて、部品実装用装置の機種毎に複数の設備要素の組み合わせについて設定される。
【0031】
実績収集部11は、フロアFに設置された部品実装ラインL1~L3の複数の部品実装用装置から部品実装作業の実績を定期的に収集し、稼働実績25として記憶部17に記憶させる。例えば、部品実装作業の実績には、生産開始日時、生産終了日時、段取り替えの時間、実装基板の基板種とその生産枚数、作業ミスの回数、ミス率(頻度)、動作エラーの回数とその内容、フロアFにおいて作業を行った作業者Wの情報(作業時間、勤務時間、休憩時間、人数、作業内容など)などの情報が含まれる。
【0032】
図3において、生産能力算出部12は、所定の期間に収集された稼働実績25から部品実装ラインL1~L3毎に生産能力の実績値である実績生産能力を算出する。具体的には、生産能力算出部12は、部品実装ラインL1~L3が所定期間に基板Bに搭載した部品Dの合計数(総実装部品数)を算出する。また、生産能力算出部12は、部品実装ラインL1~L3の稼働時間(1枚目の基板の生産開始から最後の基板の生産終了までの時間)から作業者Wの交代時間や休憩時間などの生産が停止した非稼働時間を差し引いた生産時間を算出する。そして、生産能力算出部12は、総実装部品数を生産時間で除したCPHの実績値(実績CPH)を実績生産能力として算出する。
【0033】
また、生産能力算出部12は、生産時間から部品実装装置の動作エラーにより停止した時間や、部品実装装置の部品切れにより停止した時間など装置停止時間をさらに差し引いた実効生産時間を算出する。そして、生産能力算出部12は、総部品実装数を実効生産時間で除したCPH(実効CPH)を実績生産能力として算出する。算出された実績生産能力などの情報は、実績生産能力情報26として記憶部17に記憶される。
【0034】
図3において、表示処理部13は、表示部29に後述する新フロア設定画面、シミュレーション設定画面、シミュレーション結果表示画面などを表示させて、管理者による部品実装ラインの生産能力を推定する新規の部品実装ラインの構成設定、シミュレーションの条件設定、結果解析を支援する。
【0035】
ここで、
図4を参照して、表示処理部13が表示部29に表示させた新フロア設定画面40の例について説明する。新フロア設定画面40は、新規のフロアや、既存の部品実装ラインに部品実装用装置を増設して生産能力を向上させたフロアなど、生産能力を推定する対象となる新フロアの構成を設定する際に使用される。この例では、4本の部品実装ライン(ラインL1~L4)を備える既存のフロアF1(
図5参照)に、1本の部品実装ライン(ラインL5)を追加した新フロア(新規ライン追加1)を設定する例で説明する。
【0036】
図4において、新フロア設定画面40には、ライン指定領域41、ライン情報表示領域42が設けられている。ライン指定領域41には、ライン情報設定枠43、フロア名入力欄44、ライン追加ボタン45、設定実行ボタン46、終了ボタン47が配置されている。フロア名入力欄44には、新規に作成するフロアのフロア名(新規ライン追加1)が入力される。管理者が入力部28を操作してライン追加ボタン45を押下すると、表示処理部13は表示部29をライン設定画面(図示省略)に切り替える。ライン設定画面では、新ラインに配置する部品実装装置、部品実装装置の設備要素などが設定される。
【0037】
ライン情報設定枠43には、設定中の新フロアの部品実装ライン(ラインL1~L5)のライン名、実装装置数、ステージ数などの情報が表示される。ライン情報設定枠43において、ライン名に対応する削除ボタンが押下されると、その部品実装ラインが新フロアより削除される。また、編集ボタンが押下されると、表示処理部13は表示部29をその部品実装ラインの構成を変更するライン設定画面に切り替える。
【0038】
図4において、ライン情報表示領域42には、ライン情報表示枠48が配置されている。ライン情報表示枠48には、ライン選択タブ48a、ライン構成表示欄48b、表示送りボタン48c,48dが設けられている。いずれかのライン選択タブ48aが選択されると、ライン構成表示欄48bに選択された部品実装ラインが表示される。表示送りボタン48c,48dが押下されると、ライン構成表示欄48bに表示される部品実装用装置が順に変更される。
【0039】
図5において、この例では、ライン構成表示欄48bには、新フロア(新規ライン追加1)の部品実装ライン(ラインL5)が備える部品実装装置M3~M6が連結されている順番に表示されている。部品実装装置M3と部品実装装置M4は機種が「E1」の部品実装装置であり、部品実装装置M5と部品実装装置M6は機種が「E2」の部品実装装置である。機種が「E1」の部品実装装置は、2本のコンベアと基板搬送方向に沿った2基の実装ヘッドをフロントとリアにそれぞれを備えており、ステージ数が「2」である。機種が「E2」の部品実装装置は、2本のコンベアとフロントとリアに1基の実装ヘッドをそれぞれ備えており、ステージ数が「1」である。
【0040】
ライン構成表示欄48bに表示された部品実装装置M3~M6には、フロントとリアの部品供給部の構成を表示するテーブル構成表示48eと、フロントとリアに装着された実装ヘッドの構成を表示する実装ヘッド構成表示48fが表示されている。テーブル構成表示48eの「c17」は17本のテープフィーダを、「c30」は30本のテープフィーダを、「f13」は13本のテープフィーダを、それぞれ搭載可能な台車が、「t20」は20枚のトレイを搭載可能なトレイフィーダが部品供給部に配置されていることを示している。実装ヘッド構成表示48fの「H16」は16本の吸着ノズルが、「H8」は8本の吸着ノズルが、「H3」は3本の吸着ノズルが、それぞれ装着される実装ヘッドが装着されていることを示している。
【0041】
図4において、テーブル構成や実装ヘッド構成は、部品実装装置M3~M6が基板Bに搭載する部品Dの種類やサイズなどに基づいて設定される。設定実行ボタン46が押下されると、フロア情報作成部14は新フロア設定画面40で設定された新フロア(新規ライン追加1)が備える部品実装ライン(ラインL1~L5)毎にライン情報を作成し、新フロアのフロア情報22として記憶部17に記憶させる。フロア情報22に含まれるライン情報には、部品実装用装置(部品実装装置M3~M6)が有する設備要素(テープフィーダ、トレイフィーダ、実装ヘッド、吸着ノズルなど)に関する情報が含まれる。終了ボタン47が押下されると、表示処理部13は新フロア設定作業を終了させる。
【0042】
次に、
図5を参照して、表示処理部13が表示部29に表示させたシミュレーション設定画面50の例について説明する。シミュレーション設定画面50は、部品実装ラインの生産能力を推定するシミュレーションの条件を設定する際に使用される。この例では、シミュレーションの対象となる部品実装ラインを、複数の部品実装ラインが設置されたフロア毎に設定する例で説明する。シミュレーション設定画面50には、現フロア選択枠51、現フロア表示領域51a、新フロア選択枠52、新フロア表示領域52a、生産計画選択枠53、生産計画表示領域53a、実行ボタン54、終了ボタン55が設けられている。
【0043】
管理者が入力部28を操作して現フロア選択枠51に表示されるドロップダウンリストから生産実績がある1つの既存のフロア(以下、「現フロア」と称する。)を選択すると、現フロアの概略情報が現フロア表示領域51aに表示される。表示処理部13は、現フロア選択枠51のドロップダウンリストに、稼働実績25が収集されている既存のフロアを表示させる。また、表示処理部13は、現フロア表示領域51aに、フロア情報22に含まれる現フロアの情報を表示させる。この例では、現フロアとして「フロアF1」が選択されている。現フロア表示領域51aには、現フロアが備える部品実装ラインのライン名(ラインL1~ラインL4)と、各ラインが備える部品実装装置の台数が表示されている。
【0044】
図5において、新フロア選択枠52においてドロップダウンリストから1つの新規のフロア(以下、「新フロア」と称する。)が選択されると、新フロアの概略情報が新フロア表示領域52aに表示される。表示処理部13は、新フロア選択枠52のドロップダウンリストに、フロア情報22に含まれる新フロアのリストを表示させる。また、表示処理部13は、新フロア表示領域52aに、フロア情報22に含まれる新フロアの情報を表示させる。この例では、新フロアとして
図4に示す新フロア設定画面40において設定された「新規ライン追加1」が選択されている。
【0045】
生産計画選択枠53においてドロップダウンリストから1つの生産計画が選択されると、選択された生産計画の概略情報が生産計画表示領域53aに表示される。表示処理部13は、生産計画選択枠53のドロップダウンリストに、生産計画情報18に含まれる生産計画のうち、現フロア選択枠51で選択されている現フロアで生産実績がある生産計画のリストを表示させる。また、表示処理部13は、生産計画表示領域53aに、生産計画情報18に含まれる生産計画の概略情報を表示させる。
【0046】
図5において、この例では、生産計画として「フロアF1」で生産実績がある「既存生産計画1」が選択されている。「既存生産計画1」では、実装基板X1が500枚、実装基板X2が2000枚、実装基板X3が1500枚、実装基板X4が800枚など、この順番で生産するように計画されている。実行ボタン54が押下されると、シミュレーション設定画面50により設定された条件で、最適化処理部15と生産能力推定部16による生産能力を推定するシミュレーションが実行される。終了ボタン55が押下されると、表示処理部13はシミュレーション設定画面50において設定された条件を破棄して、シミュレーション条件の設定処理を終了させる。
【0047】
図3において、最適化処理部15は、設定された生産計画において生産時間が少なくなるように、部品実装装置の部品供給部の部品Dの配列情報を最適化した生産データ20を作成する。作成された生産データ20は、記憶部17に記憶される。また、最適化処理部15は、生産時間が少なくなるように、実装基板の生産順番を変更し、または部品実装ラインへの実装基板の割り当てを変更した生産計画を作成する。作成された生産計画は、生産計画情報18として記憶部17に記憶される。
【0048】
図3において、生産能力推定部16は、生産計画、基板情報19、生産データ20、作業者情報21、フロア情報22に含まれるライン情報、スペック情報23、イベント情報24に基づいて、部品実装ラインの生産能力を推定する。生産能力推定部16により推定された生産能力は、推定生産能力情報27として記憶部17に記憶される。
【0049】
具体的には、生産能力推定部16は、スペック情報23に含まれる部品実装装置のスペックに基づいて、部品実装ラインが備える全ての部品実装装置の理想CPHを合算した理想的な理想生産能力を算出する。すなわち、理想生産能力は、その部品実装ラインが備える最大の性能を表している。生産能力推定部16は、ライン情報、スペック情報23に基づいて、理想CPHを算出する。
【0050】
図3において、生産能力推定部16は、部品実装装置において部品Dの部品切れや、動作エラーにより生産が停止して、作業者Wの作業が必要となる事象が発生しない場合のCPH(事象不発生CPH)を事象不発生生産能力として推定する。すなわち、事象不発生生産能力は、これらの事象が発生しないと仮定して推定される生産能力である。生産能力推定部16は、基板情報19、生産データ20、ライン情報に基づいて、部品実装装置による部品実装作業をシミュレーションして事象不発生CPHを推定する。
【0051】
また、生産能力推定部16は、イベント情報24に含まれる作業者Wの作業が必要となる事象の発生頻度を考慮するCPH(事象発生CPH)を事象発生生産能力として推定する。すなわち、事象発生生産能力は、これらの事象の発生頻度を考慮して推定される生産能力である。生産能力推定部16は、基板情報19、生産データ20、作業者情報21、ライン情報、イベント情報24に基づいて、部品実装装置の動作エラーによる停止、部品実装装置の部品切れによる停止、作業者Wによる復旧作業、作業者Wによる部品Dの供給作業などの発生を予測して事象不発生CPHを推定する。
【0052】
次に、
図6~
図8を参照して、生産能力算出部12によって算出された実績生産能力情報26や、生産能力推定部16によって推定された推定生産能力情報27を、表示処理部13が表示部29に表示させたシミュレーション結果表示画面の例について説明する。
【0053】
図6は、表示処理部13が表示部29に表示させたシミュレーション結果(現フロア実績)画面60の例である。シミュレーション結果(現フロア実績)画面60には、シミュレーション設定画面50(
図5)において設定された現フロア(フロアF1)の理想生産能力と、稼働実績25に基づいて算出された実績生産能力などが表示される。シミュレーション結果(現フロア実績)画面60には、現フロア実績表示領域61、現フロア推定表示ボタン62、新フロア推定表示ボタン63、条件変更ボタン64、終了ボタン65が設けられている。
【0054】
現フロア実績表示領域61には、現フロアが備える部品実装ライン(ラインL1~L4)毎に、ライン名、総実装部品数、理想CPH、実績生産能力に関する情報が表示される。また、現フロア実績表示領域61には、現フロアが備える全ての部品実装ラインの生産能力を合算したフロアの生産能力(フロア生産能力)が表示される。
【0055】
図6において、現フロア実績表示領域61には、実績生産能力に関する情報として、生産時間(日数、時間)、実績CPH、理想CPHに対する実績CPHの比較が表示される。また、現フロア実績表示領域61には、実績生産能力に関する情報として、実効生産時間(日数、時間)、実効CPH、理想CPHに対する実効CPHの比較が表示される。理想CPHに対する実績CPHまたは実効CPHの比較は、部品実装装置の性能をどれだけ引き出せたかを示す指標である。
【0056】
例えば、部品実装ライン(ラインL1)において所定期間に基板Bに搭載された部品Dの総実装部品数は「7,773,480個」、理想CPHは「275,500個/時間」、実績CPHは「149,438個/時間」で理想CPHとの比較は「54%」、実効CPHは「166,042個/時間」で理想CPHとの比較は「60%」である。
【0057】
図6において、現フロア推定表示ボタン62が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション結果(現フロア推定)画面70(
図7)を表示させる。新フロア推定表示ボタン63が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション結果(新フロア推定)画面80(
図8)を表示させる。条件変更ボタン64が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション設定画面50(
図5)を表示させる。終了ボタン65が押下されると、表示処理部13は生産能力の推定処理を終了させる。
【0058】
次に、
図7を参照して、表示処理部13が表示部29に表示させたシミュレーション結果(現フロア推定)画面70の例について説明する。シミュレーション結果(現フロア推定)画面70には、シミュレーション設定画面50(
図5)において設定された現フロア(フロアF1)の理想生産能力と、生産能力推定部16により推定された事象発生生産能力、事象不発生生産能力などが表示される。シミュレーション結果(現フロア推定)画面70には、現フロア推定表示領域71、現フロア実績表示ボタン72、新フロア推定表示ボタン73、条件変更ボタン74、終了ボタン75が設けられている。
【0059】
現フロア推定表示領域71には、現フロアが備える部品実装ライン(ラインL1~L4)毎に、ライン名、総実装部品数、理想CPH、事象発生生産能力に関する情報、事象不発生生産能力に関する情報が表示される。また、現フロア推定表示領域71には、フロア生産能力も表示される。なお、総実装部品数と理想CPHは、シミュレーション結果(現フロア実績)画面60と同じである。
【0060】
図7において、現フロア推定表示領域71には、事象発生生産能力に関する情報として、生産時間(日数、時間)の推定値、事象発生CPH、理想CPHに対する事象発生CPHの比較が表示される。また、現フロア推定表示領域71には、事象不発生生産能力に関する情報として、実効生産時間(日数、時間)の推定値、事象不発生CPH、理想CPHに対する事象不発生CPHの比較が表示される。理想CPHに対する事象発生CPHまたは事象不発生CPHの比較は、部品実装装置の性能をどれだけ引き出せるかを推定した指標である。例えば、部品実装ライン(ラインL1)の事象発生CPHは「169,363個/時間」で理想CPHとの比較は「61%」、事象不発生CPHは「188,181個/時間」で理想CPHとの比較は「68%」である。
【0061】
図7において、現フロア実績表示ボタン72が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション結果(現フロア実績)画面60(
図6)を表示させる。新フロア推定表示ボタン73が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション結果(新フロア推定)画面80(
図8)を表示させる。条件変更ボタン74が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション設定画面50(
図5)を表示させる。終了ボタン75が押下されると、表示処理部13は生産能力の推定処理を終了させる。
【0062】
次に、
図8を参照して、表示処理部13が表示部29に表示させたシミュレーション結果(新フロア推定)画面80の例について説明する。シミュレーション結果(新フロア推定)画面80には、シミュレーション設定画面50(
図5)において設定された新フロア(新規ライン追加1)の理想生産能力と、推定された事象発生生産能力、事象不発生生産能力などが表示される。シミュレーション結果(新フロア推定)画面80には、新フロア推定表示領域81、現フロア実績表示ボタン82、現フロア推定表示ボタン83、条件変更ボタン84、終了ボタン85が設けられている。
【0063】
新フロア推定表示領域81には、新フロアが備える部品実装ライン(ラインL1~L5)毎に、ライン名、総実装部品数、理想CPH、事象発生生産能力に関する情報、事象不発生生産能力に関する情報が表示される。また、新フロア推定表示領域81には、フロア生産能力も表示される。部品実装ライン毎の総実装部品数は、現フロアで生産された実装基板が新フロアで最適に生産されるように最適化処理部15により最適化されている。そのため、部品実装ライン毎の総実装部品数は現フロアと新フロアで異なるが、フロア全体の総実装部品数は現フロアと新フロアで同じである。
【0064】
図8において、新フロア推定表示領域81には、事象発生生産能力に関する情報として、生産時間(日数、時間)の推定値、事象発生CPH、理想CPHに対する事象発生CPHの比較が表示される。また、新フロア推定表示領域81には、事象不発生生産能力に関する情報として、実効生産時間(日数、時間)の推定値、事象不発生CPH、理想CPHに対する事象不発生CPHの比較が表示される。例えば、部品実装ライン(ラインL5)に割り振られた基板Bに搭載される部品Dの総実装部品数は「9,806,967個」、理想CPHは「446,400個/時間」、事象発生CPHは「306,468個/時間」で理想CPHとの比較は「69%」、事象不発生CPHは「340,520個/時間」で理想CPHとの比較は「76%」である。
【0065】
図8において、現フロア実績表示ボタン82が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション結果(現フロア実績)画面60(
図6)を表示させる。現フロア推定表示ボタン83が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション結果(現フロア推定)画面70(
図7)を表示させる。条件変更ボタン84が押下されると、表示処理部13は表示部29にシミュレーション設定画面50(
図5)を表示させる。終了ボタン85が押下されると、表示処理部13は生産能力の推定処理を終了させる。
【0066】
上記は、シミュレーション結果表示画面として、シミュレーション結果(現フロア実績)画面60、シミュレーション結果(現フロア推定)画面70、シミュレーション結果(新フロア推定)画面80の3画面で表示し、現フロア実績表示ボタン82などで相互に切り替える例で説明したが、この例に限定されることはない。例えば、シミュレーション結果(現フロア実績)画面60の現フロア実績表示領域61、シミュレーション結果(現フロア推定)画面70の現フロア推定表示領域71、シミュレーション結果(新フロア推定)画面80の新フロア推定表示領域81を1つの画面に表示してもよい。
【0067】
このように、表示部29には、推定された複数の部品実装ラインの理想生産能力、実績生産能力、事象発生生産能力、事象不発生生産能力などが比較して表示される。これによって、構成の異なる部品実装ラインの生産能力を簡易に比較することができる。また、生産能力推定部16は、フロアの全体の生産能力であるフロア生産能力を推定し、表示部は29、推定された複数のフロア生産能力を比較して表示する。また、生産能力には、所定期間に実装基板となる基板Bに実装することができる部品の数(総実装部品数)が含まれる。また、生産能力推定部16は、部品実装ラインの構成(ライン情報)、実装基板の生産順番(生産計画)、実装基板の生産時間(生産計画)、作業者Wの人数(生産者情報21)などが異なる条件で生産能力を推定する。
【0068】
次に、
図9のフローに沿って複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインL1~L3が実装基板を生産する生産能力を推定する生産能力推定方法(生産能力推定プログラム)について説明する。まず、実績収集部11は、フロアFに設置された部品実装ラインL1~L3の複数の部品実装用装置(部品実装装置M3~M6)から部品実装作業の実績である稼働実績25を収集する(ST1:稼働実績収集工程)。次いで生産能力算出部12は、稼働実績25から部品実装ラインL1~L3毎に生産能力の実績値である実績生産能力(総実装部品数、実績CPH、実効CPH)を算出する(ST2:生産能力算出工程)。
【0069】
次いで、部品実装ラインL1~L3において生産される実装基板の生産計画(生産計画情報18)と、実装基板の構成に関する基板情報19と、部品実装用装置が実装基板に対して生産作業を実行するための生産データ20と、部品実装用装置に対して作業を行う作業者Wに関する作業者情報21と、部品実装ラインL1~L3の構成に関するライン情報(フロア情報22)と、部品実装用装置のスペックに関するスペック情報23と、部品実装ラインL1~L3に対して作業者Wの作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報24と、が取得される(ST3:情報取得工程)。
【0070】
図9において、次いで最適化処理部15は、取得された生産計画において生産時間が少なくなるように、部品実装装置M3~M6の部品供給部の部品Dの配列情報を最適化した生産データ20、実装基板の部品実装ラインL1~L3への割り当てや生産順番を最適化した生産計画を作成する(ST4:最適化工程)。次いで生産能力推定部16は、取得された情報と最適化された情報に基づいて、部品実装ラインL1~L3の生産能力(理想生産能力、事象発生生産能力、事象不発生生産能力)を推定する(ST5:生産能力推定工程)。次いで表示処理部13は、推定された複数の生産能力を比較して表示部29に表示させる(ST6:表示工程)(例えば、
図6~
図8)。これによって、構成の異なる部品実装ラインの生産能力を簡易に比較することができる。
【0071】
フロアFや部品実装ラインL1~L3の構成、生産計画などの条件を変更して、再度、生産能力を推定する場合(ST7においてNo)、情報取得工程(ST3)から表示工程(ST6)が繰り返し実行される。その際、シミュレーション設定画面50(
図5)などが使用されて、シミュレーションの条件が入力、変更される。
【0072】
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、実装基板の生産計画(生産計画情報18)と、実装基板の構成に関する基板情報19と、部品実装用装置の生産データ20と、部品実装用装置に対して作業を行う作業者Wに関する作業者情報21と、部品実装ラインL1~L3の構成に関するライン情報(フロア情報22)と、部品実装用装置のスペックに関するスペック情報23と、部品実装ラインL1~L3に対して作業者Wの作業を必要とする事象とその発生頻度に関するイベント情報24と、に基づいて、部品実装ラインL1~L3の生産能力を推定する生産能力推定部16と、推定された複数の生産能力を比較して表示する表示部29と、を備え、部品実装ラインL1~L3の生産能力を推定する生産能力推定システムである。
【0073】
これによって、構成の異なる部品実装ラインの生産能力を簡易に比較することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラムは、構成の異なる部品実装ラインの生産能力を簡易に比較することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0075】
3 管理コンピュータ(生産能力推定システム)
B 基板
D 部品
F フロア
L1~L3 部品実装ライン
M3~M6 部品実装装置(部品実装用装置)
W 作業者