(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059475
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】車載電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230420BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20230420BHJP
H02H 11/00 20060101ALI20230420BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02H7/12 H
H02H11/00 120
B60R16/02 645Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169519
(22)【出願日】2021-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小野 祥太郎
【テーマコード(参考)】
5G053
5H730
【Fターム(参考)】
5G053AA08
5G053AA16
5G053CA08
5G053EB02
5G053EC03
5G053FA05
5H730AA20
5H730AS05
5H730BB11
5H730DD04
5H730FD26
5H730XC19
5H730XX26
5H730XX33
(57)【要約】
【課題】車載電源の誤動作や故障を抑制する。
【解決手段】車載電源システム1は、電圧変換部2と正電極入力端3と正電極出力端4とスイッチ素子5とスイッチ素子5に接続された負電極入力端6と負電極出力端7と整流素子8と整流素子8のアノードと負電極入力端6とスイッチ素子5との接続点とに両端が接続された入力コンデンサ9とスイッチ素子5と電圧変換部2との動作制御が可能で、かつ、起動信号の検出と制御端子5Gの電圧の検出とが可能な、制御部10とを含む。制御部10は、制御端子の電圧を第1タイミングでの第1電圧と第2タイミングにおける第2電圧として検出したうえで、第1電圧から第2電圧への減衰量にもとづく残留電圧値が第1閾値よりも小さいとき、制御部10はスイッチ素子5を遮断状態とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1正電位端と第2正電位端と第1負電位端と第2負電位端とを有した電圧変換部と、
前記第1正電位端に接続された正電極入力端と、
前記第2正電位端に接続された正電極出力端と、
前記第1負電位端にスイッチ素子を介して接続された負電極入力端と、
前記第2負電位端に接続された負電極出力端と、
前記第1正電位端にアノードが、前記スイッチ素子の制御端子にカソードが接続された整流素子と、
前記整流素子のアノードと、前記負電極入力端と前記スイッチ素子との接続点と、に両端が接続された入力コンデンサと、
前記スイッチ素子と前記電圧変換部との動作制御が可能で、かつ、起動信号の検出と前記制御端子の電圧の検出とが可能な、制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記起動信号を検出ている状態から検出していない状態に切り替わったとき、
前記制御部は、前記制御端子の電圧を第1タイミングでの第1電圧と第2タイミングにおける第2電圧として検出したうえで、
前記第1電圧から前記第2電圧への減衰量にもとづく残留電圧値が第1閾値よりも小さいとき、
前記制御部は、前記スイッチ素子を遮断状態とする、
車載電源システム。
【請求項2】
前記第1正電位端と前記正電極入力端との間に起動スイッチをさらに備え、
前記スイッチ素子と前記電圧変換部との動作制御が可能で、かつ、前記起動スイッチを接続させる起動信号と前記制御端子の電圧を検出とを検出可能な、制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記起動信号を検出している状態から検出していない状態に切り替わったとき、
前記制御部は、前記制御端子の電圧を第1タイミングでの第1電圧と第2タイミングにおける第2電圧として検出したうえで、
前記第1電圧から前記第2電圧への減衰量にもとづく残留電圧値が前記第1閾値よりも小さいとき、
前記制御部は、前記スイッチ素子を遮断状態とする、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項3】
前記起動スイッチが接続状態から遮断状態に切り替わるタイミングは第1タイミングと同じとした、
請求項2に記載の車載電源システム。
【請求項4】
前記制御部が、前記起動信号を検出ている状態から検出していない状態に切り替わったとき、
前記制御部は、
前記第1電圧から前記第2電圧への減衰量にもとづく第1残留電圧が前記第1閾値よりも高いとき、
かつ、
前記制御端子の電圧を第3タイミングでの第3電圧と第4タイミングにおける第4電圧として検出したうえで、
前記第3電圧から前記第4電圧への減衰量にもとづく第2残留電圧値が前記第1閾値よりも高いとき、
前記制御部は、前記スイッチ素子を遮断状態とする、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項5】
前記第2タイミングと前記第3タイミングとは同一のタイミングであり、
前記第2電圧と前記第3電圧とは同一の電圧値である、
請求項4に記載の車載電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種車両に使用される車載電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の車載電源について説明する。従来の車載電源は、車両用バッテリーから電力の供給を受け、車両用バッテリーの直流電圧を所望の電圧に変換して出力するDCDCコンバータを有していた。また、車両用バッテリーとDCDCコンバータとの間には、逆接防止スイッチが設けられていた。逆説防止スイッチは、車両用バッテリーが逆極性で誤ってDCDCコンバータに接続されたときに、DCDCコンバータやDCDCコンバータに接続された負荷に過電流が流れてDCDCコンバータや負荷に破損が生じることを抑制するために設けられていた。
【0003】
逆接防止スイッチは例えば、DCDCコンバータの負極入力端子に接続されていた。そして逆接防止スイッチはDCDCコンバータの正極入力端子の電位が負極入力端子の電位よりも十分に高い場合には接続状態となり、正極入力端子の電位が負極入力端子の電位よりも低い場合には遮断状態となる動作が実行されるように設けられていた。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の車載電源では、特に車載電源が起動状態から停止状態に切り替えられた直後には、DCDCコンバータの内部や車載電源全体が有するコンデンサ等に起因する残留電荷に伴う残留電位によって、DCDCコンバータの正極入力端子の電位が負極入力端子の電位よりも十分に高い状態が継続するおそれがあった。この結果として、車載電源が起動状態から停止状態に切り替えられた直後には、車両用バッテリーが逆極性で誤ってDCDCコンバータに接続された場合にも逆接防止スイッチは正常に動作しないで車載電源が誤動作するおそれがある課題を有するものであった。
【0007】
そこで本発明は誤動作を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本発明は、第1正電位端と第2正電位端と第1負電位端と第2負電位端とを有した電圧変換部と、前記第1正電位端に接続された正電極入力端と、前記第2正電位端に接続された正電極出力端と、前記第1負電位端にスイッチ素子を介して接続された負電極入力端と、前記第2負電位端に接続された負電極出力端と、前記第1正電位端にアノードが、前記スイッチ素子の制御端子にカソードが接続された整流素子と、前記整流素子のアノードと、前記負電極入力端と前記スイッチ素子との接続点と、に両端が接続された入力コンデンサと、前記スイッチ素子と前記電圧変換部との動作制御が可能で、かつ、起動信号の検出と前記制御端子の電圧の検出とが可能な、制御部と、を備え、前記制御部が、前記起動信号を検出ている状態から検出していない状態に切り替わったとき、前記制御部は、前記制御端子の電圧を第1タイミングでの第1電圧と第2タイミングにおける第2電圧として検出したうえで、前記第1電圧から前記第2電圧への減衰量にもとづく残留電圧値が第1閾値よりも高いとき、前記制御部は、前記スイッチ素子を遮断状態とする、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車載電源システム全体が有する残留電荷が強制的に短時間で放出されるので、残留電荷に起因する残留電圧は小さな値に抑制される。これにより、スイッチ素子は制御部からの指示に対応して正常に動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第1回路ブロック図
【
図2】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す第2回路ブロック図
【
図3】本発明の実施の形態における車載電源システムの放電特性を示す第1特性図
【
図4】本発明の実施の形態における車載電源システムの放電特性を示す第2特性図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す回路ブロック図である。車載電源システム1は、電圧変換部2と正電極入力端3と正電極出力端4とスイッチ素子5と負電極入力端6と負電極出力端7と整流素子8と入力コンデンサ9と制御部10とを含む。
【0013】
電圧変換部2は、第1正電位端11と第2正電位端12と第1負電位端13と第2負電位端14とを有する。第1正電位端11は正電極入力端3に接続されている。第2正電位端12は正電極出力端4に接続されている。第1負電位端13はスイッチ素子5を介して負電極入力端6に接続されている。第2負電位端14は負電極出力端7に接続されている。
【0014】
整流素子8は、第1正電位端11とスイッチ素子5の制御端子5Gとに接続されている。整流素子8のアノードは第1正電位端11に接続されている。整流素子8のカソードはスイッチ素子5の制御端子5Gに接続されている。入力コンデンサ9は、整流素子8のアノードと、負電極入力端6と前記スイッチ素子5との接続点と、に接続されている。
【0015】
制御部10は、スイッチ素子5と電圧変換部2との動作制御が可能である。さらに制御部10は、起動信号S1の検出と制御端子5Gの電圧の検出とが可能である。
【0016】
制御部10によって起動信号S1が検出されている状態から検出されない状態へと切り替わったとき、制御部10は制御端子5Gの電圧を第1タイミングと第2タイミングとで検出する。第1タイミングで検出された第1電圧V1から第2タイミングで検出された第2電圧V2への減衰量にもとづく残留電圧値VRが第1閾値VXよりも高いと制御部10が判定したとき、制御部10はスイッチ素子5を遮断状態とするように制御する。
【0017】
以上の構成および動作により、第1電圧V1から第2電圧V2への減衰量にもとづく減衰値が十分に大きく、入力コンデンサ9をはじめとして車載電源システム1の全体が有する容量成分に蓄えられた残留電荷が少ない場合、スイッチ素子5の制御端子5Gへ容量成分によって印加される残留電圧VRは小さくなる。その結果、スイッチ素子5は遮断状態となり、スイッチ素子5は正電極入力端3と負電極入力端6に接続される車両バッテリー15が仮に交換時に逆極性で接続されても車載電源システム1、正電極出力端4および負電極出力端7に接続された負荷16に悪影響を及ぼすことはない。そして、制御部10は車載電源システム1の起動停止後に短時間で動作の停止が可能となり、車両バッテリー15からの暗電流に伴う電力消費は小さく抑制される。
【0018】
この一方で、第1電圧V1から第2電圧V2への減衰量が小さく、入力コンデンサ9をはじめとして車載電源システム1の全体が有する容量成分に蓄えられた残留電荷が多い場合、スイッチ素子5の制御端子5Gに印加される残留電圧VRは大きくなる。その場合、制御部10は強制的にスイッチ素子5の制御端子5Gに印加される電圧を低下させる。そして、入力コンデンサ9をはじめとして車載電源システム1の残留電荷を強制放電させる。これにより、車載電源システム1全体が有する残留電荷が強制的に短時間で放出されるので、残留電荷に起因する残留電圧は小さな値に抑制される。これにより、スイッチ素子5は起動信号S1が検出されなくなったときに制御部10からの指示に対応して正常に遮断状態に切り替わる動作をすることができ、その後も遮断状態が継続される。
【0019】
この結果、スイッチ素子5は遮断状態となり、スイッチ素子5は正電極入力端3と負電極入力端6に接続される車両バッテリー15が仮に交換時に逆極性で接続されても車載電源システム1、正電極出力端4および負電極出力端7に接続された負荷16に悪影響を及ぼすことはない。このとき、制御部10は車載電源システム1の起動停止後に動作が必要となるものの、制御部10は強制的にスイッチ素子5の制御端子5Gに印加される電圧を低下させる動作は車載電源システム1の起動停止の際に常時必要となる動作ではない。このため車両バッテリー15からの暗電流に伴う電力消費も常時において生じることはなく、過剰な暗電流に伴う電力消費は抑制される。
【0020】
以下、車載電源システム1の詳細について、
図2の本発明の実施の形態における車載電源システム1の構成を示す第2回路ブロック図、および
図3の本発明の実施の形態における車載電源システム1の放電特性を示す第1特性図を用いて説明する。
【0021】
図2は車載電源システム1の回路ブロック図であり、車載電源システム1は、車両17の車体18に配置されている。車載電源システム1は、電圧変換部2と正電極入力端3と正電極出力端4とスイッチ素子5と負電極入力端6と負電極出力端7と整流素子8と入力コンデンサ9と制御部10とを含む。基本的な接続は先述の構成と概ね同様である。
【0022】
たとえば、車両17の搭乗者が車両17を起動させるための車両スイッチ(図示せず)をオンさせることによって制御部10は起動信号S1を受信、検出する。
【0023】
スイッチ素子5には電界効果型トランジスタ(FET)が用いられてよい。制御部10は、スイッチ素子5の制御端子5Gにおける電圧の検出と、スイッチ素子5の接続および遮断の制御が可能である。スイッチ素子5の制御端子5Gにおける電圧の検出は、スイッチ素子5の制御端子5Gとドレイン端子5Dとの電圧差の検出であってもよい。ここで、スイッチ素子5にN型FETが用いられる場合、制御部10によってスイッチ素子5の制御端子5Gの電圧を閾電圧以上に上昇させる、あるいはスイッチ素子5の制御端子5Gとドレイン端子5Dとの電圧差を閾電位差以上に大きくさせることでスイッチ素子5を接続状態に制御する。ここで制御部10とスイッチ素子5の制御端子5Gとの間には駆動回路19が設けられていてもよい。あるいは、制御部10が駆動回路19を包含していてもよい。
【0024】
制御部10の電圧変換部2に対する制御は、スイッチング素子2Aが制御部10から発信されるパルス幅変調(PWM)信号によって行われる。そして、第2正電位端12における電圧値や電流値が制御部10へ帰還されることで第2正電位端12における出力が目標値に制御させる。電圧変換部2は昇圧動作を実行しても降圧動作を実行してもよい。また、電圧変換部2に設けられた平滑コンデンサ2Bは入力コンデンサ9と同様に残留電荷を蓄える要素のうちの一つである。
【0025】
車両バッテリー15が正常に接続されている車載電源システム1では、車両17の搭乗者が車両17を起動させ、制御部10が起動信号S1を受信すると車両17が起動し、制御部10は電圧変換部2を動作させて、車両バッテリー15からの電力を負荷16へと供給可能な状態とする。車両バッテリー15からの電力を負荷16へと供給するタイミングや期間は、車両17が走行しているときであっても、あるいは車両17が停車しているときのアイドリングストップ状態から車両17が改めて走行し始める際などであってもよい。
【0026】
次に、車両17の搭乗者が車両17の起動を停止させ、制御部10によって起動信号S1が検出されている状態から検出されない状態へと切り替わったとき、制御部10は制御端子5Gの電圧を
図3における第1タイミングT1と第2タイミングT2とで検出する。
【0027】
第1タイミングT1は、車両17が起動状態から起動停止状態へと切り替わるタイミングに相当するT0と同じタイミングもしくはT0よりも後であればよい。また、車両17の搭乗者が車両17の起動を停止させたタイミングはT0のタイミングと同じであっても、あるいはT0よりも前のT00のタイミングであってもよい。第1タイミングT1で検出された第1電圧V1から第2タイミングT2で検出された第2電圧V2への減衰量にもとづく残留電圧VAが第1閾値VXよりも高いと制御部10が判定したとき、制御部10はスイッチ素子5を遮断状態とするように制御する。
【0028】
第1閾値VXは例えば
図3に示す第1減衰曲線にもとづいた値である。第1減衰曲線は自然放電による電圧の減衰曲線である。第1減衰曲線では初期電圧V0から放電を始めてから時間TX後に第1閾値VXへと低下する。
【0029】
初期電圧V0は、起動信号S1が制御部10によって検出されているときに、入力コンデンサ9をはじめとして車載電源システム1の全体が有する容量成分に蓄えられた初期電荷による電圧、あるいは初期電荷によってスイッチ素子5の制御端子5Gに印加される電圧である。いいかえると初期電圧V0は、車載電源システム1が搭載された車両17が起動中あるいは起動停止するまでに、スイッチ素子5の制御端子5Gに印加されている電圧である。
【0030】
第1閾値VXは、制御部10が制御端子5Gへスイッチ素子5を接続させるための電圧を印加していないときに残留電荷によって制御端子5Gへ印加される電圧である。さらに第1閾値VXは、スイッチ素子5を接続状態とさせることができない電圧や、スイッチ素子5を遮断状態とさせることが可能な上限電圧である。
【0031】
ここで例えば、車両17の搭乗者がT00のタイミングで車両17の起動を停止させて起動信号S1が制御部10で検出されなくなり、TXのタイミングで車両バッテリー15の交換のための車体18からの取り外しが実行されると仮定する。このときTXのタイミングで残留電荷によって制御端子5Gに印加される電圧が第1閾値VXよりも小さい値であれば、車両バッテリー15が除去された時点でスイッチ素子5は遮断状態となっている。そして、仮にその後で車両バッテリー15が逆極性で接続された場合であっても、スイッチ素子5の遮断状態は維持される。これにより、車載電源システム1は誤接続による異常電力からは保護される。T00のタイミングあるいは、T0のタイミングからTXのタイミングまでの時間は、10秒程度や30秒程度あるいは5分程度と任意で設定してよい。
【0032】
ここで、車載電源システム1は先に述べたTXのタイミングまでの時間を要さずに、車載電源システム1が有する残留電荷に伴う電圧がTXのタイミングで第1閾値VXよりも小さくなりスイッチ素子5が遮断可能となるかの判断を可能としている。そして、車載電源システム1ではTXのタイミングで残留電荷によって生じる電圧である残留電圧値VRが第1閾電圧値VXよりも高いと判断されたときは、制御部10が残留電荷に伴う残留電圧値VRを強制的に低下させてスイッチ素子5が遮断状態となるようにTXのタイミングよりも以前のタイミングで制御する。
【0033】
残留電圧値VRと第1閾電圧値VXとの比較および判定は以下の手順で実行する。制御部10はT1のタイミングで制御端子5Gにおける第1電圧V1を検出する。T1のタイミングは、例えばT0のタイミングで車両17が起動状態から起動停止状態へと切り替えられてからT1時間後である。そして、制御部10はT2のタイミングで制御端子5Gにおける第2電圧V2を検出する。T1のタイミングは、例えばT0のタイミングで車両17が起動状態から起動停止状態へと切り替えられてからT2時間後である。
【0034】
比較および判定の基準となるT0のタイミングからTXのタイミングまでのTX時間と、第1閾値VXは予め制御部10や記憶回路10Aに与えられた状態となっている。記憶回路10Aは制御部10の一部であってよい。あるいは、TX時間は予め制御部10や記憶回路10Aに与えられ、第1閾値VXは車両17の起動中に車両バッテリー15の電圧値などを基準として設定された値であってもよい。先述のように、第1閾値VXは第1減衰曲線上に存在する点である。いいかえると、第1減衰曲線が比較および判定の基準となる。
【0035】
第2減衰曲線を例にとると、第1電圧V1と第2電圧V2とは同一の放電曲線上に存在するので、T1のタイミングからT2のタイミングまでの時間をP1とすると、(数式1)の関係から定数A2が得られる。
【0036】
V2=V1・exp(-A2・P1) ・・・(数式1)
そして、上記の定数A2を用いて、T1のタイミングからTXのタイミングまでの時間をPX、あるいはT2のタイミングからTXのタイミングまでの時間をPYとすると、(数式2)や(数式3)の関係から第2減衰曲線でのTXのタイミングにおける残留電圧VRの推定値VX2が得られる。
【0037】
VX2=V1・exp(-A2・PX) ・・・(数式2)
VX2=V2・exp(-A2・PY) ・・・(数式3)
第2減衰曲線に示されるように、残留電圧VRの推定値VX2は第1閾電圧値VXよりも低い値と判定される。このため、制御部10はスイッチ素子5に対しての特別な制御は実行しない。これは例えば、車両17の搭乗者が車両17の起動停止後20秒で車両バッテリー15の取り外しを行うとすると、TXの時間である20秒に至る前のT2のたとえば起動停止後10秒の時点でスイッチ素子5はTXのタイミングで遮断状態になっていると事前に判断が可能となる。よって、長い期間における制御部10による制御や監視は不要となり、制御部10の継続動作による電力消費は抑制される。
【0038】
同様に第3減衰曲線を例にとると、第1電圧V1と第2電圧V2とは同一の放電曲線上に存在するので、T1のタイミングからT2のタイミングまでの時間をP1とすると、(数式4)の関係から定数A3が得られる。
【0039】
V2=V1・exp(-A3・P1) ・・・(数式4)
ここでも同様に、上記の定数A3を用いて、T1のタイミングからTXのタイミングまでの時間をPX、あるいはT2のタイミングからTXのタイミングまでの時間をPYとすると、(数式5)や(数式6)の関係から第3減衰曲線でのTXのタイミングにおける残留電圧VRの推定値VX3が得られる。
【0040】
VX3=V1・exp(-A3・PX) ・・・(数式5)
VX3=V2・exp(-A3・PY) ・・・(数式6)
第3減衰曲線に示されるように、残留電圧VRの推定値VX3は第1閾電圧値VXよりも高い値と判定される。ここで仮に車両17の搭乗者が車両17の起動停止後20秒で車両バッテリー15の取り外しを行うとすると、TXの時間である20秒の時点でスイッチ素子5はTXのタイミングで残留電圧VRが印加されることで接続状態を継続したままとなる。
【0041】
このため、制御部10が残留電圧VRの推定値VX3は第1閾電圧値VXよりも高い値であると判定すると、制御部10は強制的にスイッチ素子5の制御端子5Gに印加される電圧を低下させる。そして、入力コンデンサ9をはじめとして車載電源システム1の残留電荷を強制放電させる。ここで残留電荷の放電は、例えば駆動回路19を用いて残留電荷の放電が実行されるとよい。また例えば、残留電荷を強制的に放電させるために、スイッチ素子5の制御端子5Gとドレイン端子5Dとの間、もしくはスイッチ素子5の制御端子5Gとソース端子5Sとの間に放電回路(図示せず)を設けてもよい。そして残留電荷の放電が必要な時には、制御部10が放電回路(図示せず)を動作状態や接続状態とさせるとよい。
【0042】
これは例えば、車両17の搭乗者が車両17の起動停止後20秒で車両バッテリー15の取り外しを行うとすると、TXの時間である20秒に至る前のT2のたとえば起動停止後10秒の時点でスイッチ素子5はTXのタイミングで遮断状態にならないと事前に判断が可能となる。このため事前で強制的にスイッチ素子5が遮断状態となるように制御部10による制御が実行され、入力コンデンサ9をはじめとして車載電源システム1の残留電荷を強制放電させる。これにより、車載電源システム1全体が有する残留電荷が強制的に短時間で放出されるので、残留電荷に起因する残留電圧は小さな値に抑制される。この結果、長い期間における制御部10による制御や監視は不要となり、制御部10の継続動作による電力消費は抑制される。そして、スイッチ素子5の遮断状態も継続されることとなり、車両バッテリー15の誤接続に伴う車載電源システム1の破損などからの保護が確実に可能となる。
【0043】
上記の説明ではT0からTXまでの時間は秒単位の短時間を例として説明している。しかしながら、この時間は任意に設定することが可能である。そして、T0からTXまでの時間は長く設定されるほどに上記の効果は大きくなる。
【0044】
図3では、T0のタイミングで車両17が起動状態から起動停止状態へと切り替えられ、それから所定時間後のT1のタイミングで第1電圧V1が検出されている。しかしながら、T0のタイミングとT1のタイミングとは同一のタイミングであってよい。これにより、T0からT2に至る時間を短縮することができ、制御部10の継続動作に伴う電力消費は抑制される。
【0045】
また
図4の本発明の実施の形態における車載電源システムの放電特性を示す第2特性図に示すように、残留電圧値VRと第1閾電圧値VXとの比較および判定は、さらにT3のタイミングにおける第3電圧値V3とT4のタイミングにおける第4電圧値V4とを用いてもよい。
図4ではT3のタイミングおよびT4のタイミングは、T1のタイミングおよびT2のタイミングよりも後に設定しているが、T3のタイミングとT4のタイミングとで規定する期間と、T1のタイミングとT2のタイミングとで規定する期間とが異なっていればよく、タイミングの前後は問わず
図4の例の限りではない。
【0046】
例えば第2減衰曲線においては(数式1)と同様に、第3電圧V3と第4電圧V4と期間P2とによって、定数A2´が得られる。そして(数式2)、(数式3)と同様に、定数A2´と期間PUや期間PVを用いて残留電圧VRの推定値VX2´が得られる。そして、T1のタイミングおよびT2のタイミングによって先に得られた推定値VX2と推定値VX2´との双方が第1閾電圧値VXよりも低いとき、制御部10はスイッチ素子5に対しての特別な制御は実行しない。
【0047】
そして、例えば第3減衰曲線においては(数式4)と同様に、第3電圧V3と第4電圧V4と期間P2とによって、定数A3´が得られる。そして(数式2)、(数式3)と同様に、定数A3´と期間PUや期間PVを用いて残留電圧VRの推定値VX3´が得られる。そして、T1のタイミングおよびT2のタイミングによって先に得られた推定値VX3と推定値VX3´との双方が第1閾電圧値VXよりも高いとき、制御部10は強制的にスイッチ素子5の制御端子5Gに印加される電圧を低下させる。そして、入力コンデンサ9をはじめとして車載電源システム1の残留電荷を強制放電させる。ここで残留電荷の放電は、例えば駆動回路19を用いて残留電荷の放電が実行されるとよい。
【0048】
以上のように、残留電圧値VRと第1閾電圧値VXとの比較および判定は、定数A2と定数A2´、定数A3と定数A3´が用いられる。そして推定値VX2と推定値VX2´との双方が、第1閾電圧値VXよりも低いことや、推定値VX3と推定値VX3´との双方が、第1閾電圧値VXよりも高いことが判断の基準として適用される。この結果判定の精度は向上する。
【0049】
ここで、T2のタイミングとT3タイミングとは同一のタイミングとし、第2電圧V2と第3電圧V3とは同一の電圧値としてもよい。これによりT2からT3に至る時間を短縮することができ、制御部10の継続動作に伴う電力消費は抑制される。
【0050】
以上で実施例として用いた
図3および
図4においては全ての曲線での初期電圧V0は同一の値として例示している。しかしながら初期電圧V0の値は車載電源システム1の動作状態に応じて変動する場合もある。このため、初期電圧V0の値は必ず同一の値でなくてもよい。その場合においても、第1電圧V1と第2電圧V2とT1のタイミングからT2のタイミングまでの時間P1との値などによって得られた残留電圧値VRの推定値と第1閾値VXとの比較や判定は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の車載電源システムは、車載電源の誤動作や故障を抑制するという効果を有し、各種車両において有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 車載電源システム
2 電圧変換部
3 正電極入力端
4 正電極出力端
5 スイッチ素子
6 負電極入力端
7 負電極出力端
8 整流素子
9 入力コンデンサ
10 制御部
11 第1正電位端
12 第2正電位端
13 第1負電位端
14 第2負電位端
15 車両バッテリー
16 負荷
17 車両
18 車体
19 駆動回路