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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023059482
(43)【公開日】2023-04-27
(54)【発明の名称】除菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20230420BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169532
(22)【出願日】2021-10-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】514307497
【氏名又は名称】株式会社カレントダイナミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】森 和彦
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD13
4C058DD14
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK22
4C180AA07
4C180CC03
4C180DD03
4C180DD20
4C180HH02
4C180HH05
4C180HH17
4C180HH19
4C180KK10
4C180LL04
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】ユーザによる除菌効果の確認が容易に実現可能な除菌装置を提供すること。
【解決手段】
除菌装置は、空気中の微生物を捕集する微生物捕集部と、微生物捕集部に対して紫外線を照射する紫外線光源と、紫外線の照射時に微生物捕集部から発生する蛍光を検出する蛍光検出部と、蛍光検出部から出力される蛍光データを取得する制御部と、制御部から出力される表示データを表示する表示部と、を備える。制御部は、少なくとも紫外線の照射中において、第1タイミングにて蛍光検出部から出力される第1蛍光データと、第2タイミングにて蛍光検出部から出力される第2蛍光データとを取得し、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、第1タイミングから第2タイミングまでに微生物捕集部上で除菌される除菌量を算出し、除菌量を示す第1表示データを生成し、第1表示データに基づく第1画像を表示部に表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を捕集する微生物捕集部と、
前記微生物捕集部に対して紫外線を照射する紫外線光源と、
前記紫外線の照射時に前記微生物捕集部から発生する蛍光を検出する蛍光検出部と、
前記蛍光検出部から出力される蛍光データを取得する制御部と、
前記制御部から出力される表示データに基づく画像を表示する表示部と、
を備える除菌装置であって、
前記制御部は、
少なくとも前記紫外線の照射中において、第1タイミングにて前記蛍光検出部から出力される第1蛍光データと、前記第1タイミングよりも遅い第2タイミングにて前記蛍光検出部から出力される第2蛍光データとを取得し、
前記第1蛍光データと前記第2蛍光データとに基づいて、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでに前記微生物捕集部上で除菌される除菌量を算出し、
前記除菌量を示す第1表示データを生成し、
前記第1表示データに基づく第1画像を前記表示部に表示させる、
除菌装置。
【請求項2】
前記第1蛍光データと前記第2蛍光データとのそれぞれは、蛍光強度に相当し、
前記除菌量は、前記第1蛍光データと前記第2蛍光データとの差分に相当する、請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記制御部は、
少なくとも前記紫外線の照射中において、前記第2タイミングよりも遅い第3タイミングにて前記蛍光検出部から出力される第3蛍光データを取得し、
前記第2蛍光データと前記第3蛍光データとに基づいて、前記第2タイミングから前記第3タイミングまでに前記微生物捕集部上で除菌される第2除菌量を算出し、
前記第2除菌量を示す第2表示データを生成し、
前記第2表示データに基づく第2画像を前記表示部に表示させる、請求項1または2に記載の除菌装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記微生物捕集部に対して間欠的に前記紫外線を照射するように前記紫外線光源を制御する、請求項1または2に記載の除菌装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記微生物捕集部が微生物を捕集していないときに前記紫外線を照射するように、前記紫外線光源を制御し、
前記微生物捕集部が微生物を捕集しているときに前記紫外線を照射しないように、前記紫外線光源を制御する、請求項4に記載の除菌装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第2タイミングにて前記紫外線の照射を中断し、
前記第2タイミングよりも遅い第3タイミングから、前記第3タイミングよりも遅い第4タイミングまで前記紫外線の照射を再開し、
前記第3タイミングにて前記蛍光検出部から出力される第3蛍光データと、前記第4タイミングにて前記蛍光検出部から出力される第4蛍光データとを取得し、
前記第3蛍光データと前記第4蛍光データとに基づいて、前記第3タイミングから前記第4タイミングまでに前記微生物捕集部上で除菌される第2除菌量を算出し、
前記第2除菌量を示す第2表示データを生成し、
前記第2表示データに基づく第2画像を前記表示部に表示させる、請求項4または5に記載の除菌装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記微生物捕集部によって捕集される微粒子自体から発生する蛍光データを不要蛍光データとして取得し、
前記第1蛍光データと前記第2蛍光データと前記不要蛍光データとに基づいて、前記除菌量を算出する、請求項1~6のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項8】
前記微生物捕集部に対して、前記紫外線とは異なる波長の励起光を照射する光源をさらに備え、
前記蛍光検出部は、少なくとも前記紫外線と前記励起光の波長の光とを遮断する光学フィルタを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項9】
前記微生物捕集部は、空気導入部と、前記空気導入部よりも下流に位置すると共に互いに離間する一対の電極と、前記一対の電極よりも下流に位置する空気排出部と、を有し、
前記紫外線光源は、前記一対の電極の一方に対して前記紫外線を照射する、請求項1~8のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項10】
前記一対の電極の前記一方の表面の少なくとも一部には、光触媒が塗布される、請求項9に記載の除菌装置。
【請求項11】
前記一対の電極の少なくとも一方は、メッシュ形状を有する、請求項9または10に記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌装置に関し、特に空気中に存在する微生物等を除菌するための除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不特定の人数が利用する室内等を除菌する必要性が増している。例えば下記特許文献1には、車室の内部へ光を照射する車両用室内灯が開示される。この車両用室内灯には紫外線を発光する紫外光源が備えられている。これにより、車室内において紫外線が照射される部位を除菌できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-254673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のユーザが上記特許文献1に係る車両用室内灯を採用した場合、当該車両用室内灯にて実際にどの程度除菌されているか判断することは、困難である。このため、ユーザにとっては、上記車両用室内灯が実際に除菌効果を発揮しているかを確認できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、ユーザによる除菌効果の確認が容易に実現可能な除菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る除菌装置は、微生物を捕集する微生物捕集部と、微生物捕集部に対して紫外線を照射する紫外線光源と、少なくとも紫外線の照射時に微生物捕集部から発生する蛍光を検出する蛍光検出部と、蛍光検出部から出力される蛍光データを取得する制御部と、制御部から出力される表示データを表示する表示部と、を備える。制御部は、紫外線の照射中において、第1タイミングにて蛍光検出部から出力される第1蛍光データと、第1タイミングよりも遅い第2タイミングにて蛍光検出部から出力される第2蛍光データとを取得し、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、第1タイミングから第2タイミングまでに微生物捕集部上で除菌される除菌量を算出し、除菌量を示す第1表示データを生成し、第1表示データに基づく第1画像を表示部に表示させる。
【0007】
この除菌装置によれば、制御部は、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、第1タイミングから第2タイミングまでに微生物捕集部上で除菌される除菌量を算出し、除菌量を示す第1表示データを生成し、第1表示データに基づく第1画像を表示部に表示させる。これにより、除菌装置のユーザは、第1タイミングから第2タイミングまでにおける除菌装置の除菌効果を容易に確認できる。
【0008】
第1蛍光データと第2蛍光データとのそれぞれは、蛍光強度に相当し、除菌量は、第1蛍光データと第2蛍光データとの差分に相当してもよい。この場合、制御部は、容易に除菌量を算出できる。
【0009】
制御部は、少なくとも紫外線の照射中において、第2タイミングよりも遅い第3タイミングにて蛍光検出部から出力される第3蛍光データを取得し、第2蛍光データと第3蛍光データとに基づいて、第2タイミングから第3タイミングまでに微生物捕集部上で除菌される第2除菌量を算出し、第2除菌量を示す第2表示データを生成し、第2表示データに基づく第2画像を表示部に表示させてもよい。
【0010】
制御部は、微生物捕集部に対して間欠的に紫外線を照射するように紫外線光源を制御してもよい。また、制御部は、微生物捕集部が微生物を捕集していないときに紫外線を照射するように、紫外線光源を制御し、微生物捕集部が微生物を捕集しているときに紫外線を照射しないように、紫外線光源を制御してもよい。この場合、微生物捕集部によって捕集される微生物等の増減に起因する除菌量の算出不良を抑制できる。
【0011】
制御部は、第2タイミングにて紫外線の照射を中断し、第2タイミングよりも遅い第3タイミングから、第3タイミングよりも遅い第4タイミングまで紫外線の照射を再開し、第3タイミングにて蛍光検出部から出力される第3蛍光データと、第4タイミングにて蛍光検出部から出力される第4蛍光データとを取得し、第3蛍光データと第4蛍光データとに基づいて、第3タイミングから第4タイミングまでに微生物捕集部上で除菌される第2除菌量を算出し、第2除菌量を示す第2表示データを生成し、第2表示データに基づく第2画像を表示部に表示させてもよい。この場合、ユーザは、除菌装置によって継続的に捕集される微生物量に応じた除菌量の変化などを容易に確認できる。
【0012】
制御部は、微生物捕集部によって捕集される微粒子自体から発生する蛍光データを不要蛍光データとして取得し、第1蛍光データと第2蛍光データと不要蛍光データとに基づいて、除菌量を算出してもよい。この場合、微粒子に起因するノイズを排除できるので、表示部は、より適切な除菌量を示す表示データを表示できる。
【0013】
上記除菌装置は、微生物捕集部に対して、紫外線とは異なる波長の励起光を照射する光源をさらに備え、蛍光検出部は、少なくとも紫外線と励起光の波長の光とを遮断する光学フィルタを有してもよい。この場合、励起光を用いることによって、蛍光検出部から検出される蛍光の強度を向上できる。これにより、蛍光検出部は、各蛍光データの変化量を精度よく検出できる。
【0014】
微生物捕集部は、空気導入部と、空気導入部よりも下流に位置すると共に互いに離間する一対の電極と、一対の電極よりも下流に位置する空気排出部と、を有し、紫外線光源は、一対の電極の一方に対して紫外線を照射してもよい。この場合、除菌装置は、空気中に存在する微生物などを除菌できる。
【0015】
一対の電極の一方の表面の少なくとも一部には、光触媒が塗布されてもよい。この場合、除菌装置による除菌性能を向上できる。
【0016】
一対の電極の少なくとも一方は、メッシュ形状を有してもよい。この場合、電極に起因する微生物捕集部内の空気の滞留を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、ユーザによる除菌効果の確認が容易に実現可能な除菌装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実施形態に係る除菌装置の概要構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る除菌装置の要部模式図である。
図3図3は、除菌装置内における蛍光強度の時間変化を示す図である。
図4図4は、参考例に係る除菌装置内における蛍光強度の時間変化の別例を示す図である。
図5図5(a)は、第2実施形態に係る除菌装置内における蛍光強度の時間変化を示す図であり、図5(b)は、第2実施形態に係る除菌装置内における紫外線強度の時間変化を示す図である。
図6図6(a)は、第2実施形態の変形例に係る除菌装置内における蛍光強度の時間変化を示す図であり、図6(b)は、第2実施形態の変形例に係る除菌装置内における紫外線強度の時間変化を示す図である。
図7図7は、第3実施形態に係る除菌装置の要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の一側面の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書では、ウイルスは微生物に含まれるものとする。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る除菌装置の概要構成を示すブロック図である。図2は、第1実施形態に係る除菌装置の要部模式図である。図1及び図2に示される除菌装置1は、例えば、空気中に浮遊する細菌、真菌、ウイルスなどの微生物を除菌もしくは殺菌する装置である。微生物は、微生物単体にて空気中に浮遊してもよいし、空気中に浮遊する微粒子等に付着してもよい。微粒子は、空気中に浮遊可能な物質であり、例えば、埃、大気エアロゾル粒子、浮遊粒子状物質等である。除菌装置1は、据置型でもよいし、携帯型でもよい。図1に示されるように、除菌装置1は、主な構成として、微生物捕集部2と、紫外線光源3と、蛍光検出部4と、表示部5と、制御部6とを備える。微生物捕集部2の一部と、紫外線光源3と、蛍光検出部4と、制御部6とのそれぞれは、除菌装置1の筐体7(図2を参照)の内部に設置される。一方、微生物捕集部2の別の一部と、表示部5の少なくとも一部とは、筐体7から露出するように設置される。なお、除菌装置1は、例えば音を生成可能な報知器などを備えてもよい。また、筐体7の一部は、分離可能でもよい。これにより、微生物捕集部2などを容易にメンテナンスできる。
【0021】
微生物捕集部2は、空気中もしくは所定の物体上に存在する微生物等を捕集する部材である。本明細書では、「微生物等」は、少なくとも微生物を含む概念である。本実施形態では、微生物等は、微生物に加えて微粒子を含む概念である。第1実施形態では、微生物捕集部2は、除菌装置1の外部に位置する微生物等を収集する機能と、収集した微生物等を捕集する機能とを備える。微生物捕集部2は、空気導入部11と、捕集装置12と、空気排出部13とを有する。
【0022】
空気導入部11は、除菌装置1の外部から筐体7の内部に空気を導入する部分である。第1実施形態では、空気導入部11は、筐体7に設けられる開口であるが、これに限られない。空気導入部11には、送風機などが設けられてもよい。除菌装置1が携帯型である場合、所定の物体に空気導入部11を近接させることによって、当該物体に付着する微生物等を筐体7の内部に導入できる。空気導入部11から筐体7の内部への外光入射を防止する観点から、空気導入部11の周囲には、庇などが設けられてもよい。
【0023】
捕集装置12は、筐体7の内部に導入された微生物等を捕集する装置であり、一対の電極12a,12bと、電極12a,12bに接続される電源12cとを含む。一対の電極12a,12bは、微生物等が付着する部分であり、空気導入部11よりも下流に位置すると共に互いに離間する。一対の電極12a,12bの少なくとも一方は、メッシュ形状を有してもよい。この場合、電極12a,12bによる空気の滞留を抑制できる。網目の細かさは、特に限定されない。網目を細かくすることによって、電極12a,12bの間に高電界を発生でき、これにより微生物等の捕集効率を向上できる傾向がある。網目を大きくすることによって、電極12a,12bによる空気の滞留を良好に抑制できる。電源12cが電極12a,12bを帯電させることによって、電極12a,12b上に微生物等を効率よく捕集できる。電極12a,12bの表面の少なくとも一部には、酸化チタンなどの光触媒が塗布されてもよい。第1実施形態では、電極12a,12bの形状及び向きは互いに異なるが、これに限られない。
【0024】
空気排出部13は、筐体7の内部から除菌装置1の外部に空気を排出する部分であり、一対の電極12a,12bよりも下流に位置する。第1実施形態では、空気排出部13は、筐体7に設けられる別の開口に装着される送風機であるが、これに限られない。例えば、空気導入部11に送風機などが設けられる場合、空気排出部13には開口のみが設けられてもよい。空気排出部13から筐体7の内部への外光入射を防止する観点から、空気排出部13の周囲には、庇などが設けられてもよい。
【0025】
紫外線光源3は、微生物捕集部2(特に、電極12a,12bの少なくとも一方)に対して紫外線UVを照射する部材であり、例えば放電管、発光ダイオード(LED)等を有する。紫外線光源3は、例えば、180nm以上400nm以下の波長を有し、10mW/cm程度の強度を有する紫外線UVを照射する。これにより、微生物捕集部2上に位置する微生物を良好に除菌できる。紫外線UVには、互いに異なる波長を有する複数の紫外線が含まれてもよい。
【0026】
蛍光検出部4は、紫外線UVの照射時に微生物捕集部2から発生する蛍光を検出する部材であり、例えば可視光センサである。蛍光検出部4は、例えば、電極12aから発生する蛍光を検出する。蛍光検出部4による蛍光の検出結果を示す検出情報(蛍光データ)は、制御部6に出力される。蛍光検出部4は、紫外線UVよりも長波長である光を検出する。当該光の波長は、例えば、500nm以上600nm以下である。蛍光検出部4は、上記光の波長及びその近傍のみを透過する光学フィルタを有する。この場合、蛍光検出部4から出力されるノイズを低減できる。
【0027】
表示部5は、制御部6から出力される表示データに基づく画像を表示する部材部材であり、例えば1または複数の液晶ディスプレイなどを有する。表示部5には、1つの表示データに相当する画像が表示されてもよいし、複数の表示データに相当する画像が表示されてもよい。表示データは、例えば、除菌装置1による除菌量計測結果を示すデータ、当該除菌量計測結果の更新までの時間を示すデータ、空気排出部13の風量を示すデータなどである。除菌量計測結果を示すデータは、例えば、数字データ、時間変化に対する除菌量を示すグラフデータ等である。表示部5は、タッチパネルを含んでもよい。この場合、表示部5がユーザインターフェースとしても機能する。表示部5が作業者(ユーザ)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報は、制御部6に出力される。入力情報は、例えば、除菌装置1の起動指示、停止指示、動作変更指示等に関するデータである。
【0028】
制御部6は、除菌装置1に含まれる各部材を制御するコントローラである。制御部6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成される。制御部6は、例えば、表示部5を介して指定された動作信号を、微生物捕集部2の電源12c、紫外線光源3などへ出力する。制御部6は、除菌装置1に含まれる各部材の制御だけでなく、各種信号の受信/演算/送信、及び各種信号の記録/読み出し等も実施する処理部である。制御部6による各種信号の演算の例として、蛍光検出部4の検出結果(蛍光データ)の導出、当該検出結果に基づく除菌量の算出などが挙げられる。このため、制御部6は、例えば、微生物捕集部2の制御信号を出力するための部分、紫外線光源3の制御信号を出力するための部分、蛍光検出部4の検出結果を受け取るための部分、当該検出結果から除菌量を算出するための部分、当該除菌量を示す画像信号を表示部5に出力するための部分、各信号及び各情報を記憶する部分(記憶部)等を有する。
【0029】
第1実施形態では、制御部6は、筐体7の外部から空気を間欠的に導入するように微生物捕集部2を制御する。より具体的には、制御部6は、空気排出部13を間欠的に動作するように微生物捕集部2を制御する。制御部6は、電極12a,12bを連続的に帯電するように電源12cを制御してもよいし、間欠的に帯電するように電源12cを制御してもよい。第1実施形態では、制御部6は、微生物捕集部2による空気の導入停止時から紫外線UVを連続的に照射するように紫外線光源3を制御する。制御部6は、蛍光検出部4から連続的に蛍光データを取得してもよいし、間欠的に蛍光データを取得してもよい。第1実施形態では、紫外線光源3からの紫外線UVの照射中に、制御部6は、連続的に蛍光データを取得するが、これに限られない。制御部6は、間欠的に蛍光データを取得してもよい。
【0030】
以下では、図3を参照しつつ、第1実施形態に係る除菌装置1の除菌方法の概要について説明する。図3は、除菌装置内における蛍光強度の時間変化を示す図である。図3において、縦軸は蛍光強度を示し、横軸は時間を示す。
【0031】
まず、図3に示されるタイミングT(第1タイミング)まで、除菌装置1は、微生物捕集部2により微生物等を捕集する(第1ステップ)。第1ステップでは、空気排出部13の送風機を起動することによって、空気導入部11を介して筐体7の内部に空気を導入する。そして、当該空気中に存在する微生物等を、帯電した電極12a,12bによって捕集する。続いて、タイミングTにて微生物等の捕集を終了する。このとき、送風機を停止する。一方、電極12a,12bの帯電状態は維持されてもよい。
【0032】
次に、制御部6は、タイミングTにて蛍光検出部4から出力される蛍光データ(第1蛍光データ)を取得する(第2ステップ)。第2ステップでは、まず、タイミングTにて紫外線光源3から紫外線UVを電極12a,12bに向けて照射する。これにより、微粒子に起因する蛍光(微粒子自体から発生する蛍光)と、微生物に起因する蛍光(微生物自体から発生する蛍光)とが発生する。続いて、蛍光検出部4は、タイミングTにおける蛍光強度Fを取得する。続いて、蛍光検出部4は、当該蛍光強度Fを第1蛍光データとして制御部6に出力する。そして、制御部6は、第1蛍光データを蛍光検出部4から取得する。なお、蛍光強度Fは、微粒子自体から発生する蛍光の強度と、微生物自体から発生する蛍光の強度との合計である。
【0033】
なお、第1実施形態では、タイミングTは、特定の瞬間に相当せず、特定の期間に相当する。このため、特定の瞬間に、上記事項の全てが実施されなくてもよい。また、各蛍光データは、制御部6にて蛍光強度を適宜変換された特徴量(規定値)である。例えば、第1実施形態では、蛍光強度Fに相当する第1蛍光データは、100とされる。
【0034】
次に、制御部6は、タイミングTよりも遅いタイミングT(第2タイミング)にて蛍光検出部4から出力される蛍光データ(第2蛍光データ)を取得する(第3ステップ)。第3ステップでは、まず、蛍光検出部4は、タイミングTにおける蛍光強度Fを取得する。続いて、蛍光検出部4は、当該蛍光強度Fを第2蛍光データとして制御部6に出力する。そして、制御部6は、第2蛍光データを蛍光検出部4から取得する。例えば、第1実施形態では、蛍光強度Fに相当する第2蛍光データは、40とされる。
【0035】
第1実施形態では、タイミングTからタイミングTまでの第1期間は、予め設定されるが、これに限られない。例えば、当該第1期間は、例えば表示部5などのユーザインターフェースを介して変更可能である。第1実施形態では、第1期間は、30秒以上1分半以下である。また、第1実施形態では、制御部6は、タイミングTからタイミングTまで連続的に蛍光データを取得する。このため、制御部6は、蛍光データの時間的変化を取得し、図3に示されるようなプロットを作成できる。第1実施形態では、制御部6は、取得する蛍光データから上記第1蛍光データ及び上記第2蛍光データを選択する。
【0036】
次に、制御部6は、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、タイミングTからタイミングTまでに微生物捕集部2上で除菌される除菌量を算出する(第4ステップ)。第4ステップでは、まず、第1蛍光データである蛍光強度Fと、第2蛍光データである蛍光強度Fとの差分(蛍光強度F-蛍光強度F)を算出する。上述したように、第2ステップの開始前に微生物捕集部2による微生物等の捕集は停止している。このため、上記第1期間中に、新たな微生物等が微生物捕集部2上に堆積しにくい。よって、上記差分は、実質的に、微生物捕集部2上における微生物量の差分に等しいとみなせる。換言すると、上記差分は、上記第1期間中における除菌量(殺菌量)に実質的に相当するとみなせる。
【0037】
次に、制御部6は、上記第4ステップにて得られる除菌量を示す第1表示データを生成する(第5ステップ)。第1実施形態では、第1蛍光データ(100)と、第2蛍光データ(40)との差分である60を第1表示データとして生成する。
【0038】
次に、制御部6は、上記第5ステップにて得られる第1表示データに基づく画像(第1画像)を表示部5に表示させる。第5ステップでは、表示部5に、第1画像として除菌量を示す「60」が表示される。これにより、除菌装置1のユーザは、上記第1期間中における除菌量を「60」と認識できる。
【0039】
第1実施形態では、除菌装置1は、上記第2ステップ~第6ステップを繰り返し実施する。これにより、除菌装置1の除菌量の表示が更新される。当該除菌量の表示更新方法は、例えば、以下の通りである。まず、第1表示データが表示部5に表示された後のタイミングT(すなわち、タイミングTよりも遅い第3タイミング)にて、制御部6は、蛍光検出部4から出力される第3蛍光データを取得する。第3蛍光データは、タイミングTにて蛍光検出部4によって得られる蛍光強度Fに相当する。第3実施形態では、第3蛍光データは、20とされる。続いて、制御部6は、第2蛍光データと第3蛍光データとに基づいて、タイミングTからタイミングTまでの第2期間に微生物捕集部2上で除菌される除菌量(第2除菌量)を算出する。ここでは、第2除菌量は「20(40-20)」とされる。続いて、制御部6は、第2除菌量を示す第2表示データを生成した後、当該第2表示データに基づく画像(第2画像)を表示部5に表示させる。これにより、表示部5に表示される除菌量が「20」と更新される。
【0040】
除菌量の値が予め定められた第1の値以下になった場合、もしくは、第1の値以下が2回以上続く場合、除菌装置1にて捕集された微生物は、ほぼもしくは完全に除菌されたとみなすことができる。この場合、上記第1ステップに戻ってもよい。この場合、除菌装置1は、紫外線光源3による紫外線UVの照射を停止すると共に、微生物捕集部2による微生物等の捕集を再開する。所定の期間後、上記第2ステップ~第6ステップが再度実施される。所定の期間は、微生物捕集部2による微生物等の捕集能力などに依存するが、例えば、30秒以上2分以下である。なお、第1の値は、例えば5,3もしくは1である。
【0041】
除菌量の値が第1の値以下になったタイミングにおける蛍光データが所定値(第2の値)以上である場合、制御部6は、微生物捕集部2の電極12a,12bに堆積される微粒子が過大であると判断してもよい。この場合、除菌装置1は、微生物捕集部2のメンテナンスを要する旨の報知を実施してもよい。当該報知は、例えば報知器による実施、表示部5によるメッセージの表示などである。第2の値は、例えば100、90もしくは80である。
【0042】
以下では、第1実施形態に係る除菌装置1によって奏される作用効果について説明する。
【0043】
本発明者らは、所定量の微粒子上に微生物が付着される試料を紫外光によって除菌もしくは殺菌を実施する場合において、微粒子量が変化しないのにかかわらず上記試料から発生する蛍光の強度が時間変化することに着目し、鋭意検討を実施した。その結果、紫外線照射前後において、微生物量の変化に応じて試料から発生する蛍光の強度は変化する一方で、微粒子自体から発生する蛍光の強度は実質的に変化しないことが見出された。このことから、上述した試料から発生する蛍光強度の時間変化を利用して所定期間内における除菌量を算出可能であること、ならびに、当該除菌量をほぼリアルタイムにて示すことが可能であることも見出した。
【0044】
以上の知見に基づいた第1実施形態に係る除菌装置1によれば、制御部6は、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、タイミングTからタイミングTまでに微生物捕集部上で除菌される除菌量を算出できる。そして、制御部6は、除菌量を示す第1表示データを生成し、当該第1表示データに基づく画像を表示部5に表示できる。これにより、除菌装置1のユーザは、タイミングTからタイミングTまでにおける除菌装置1の除菌効果を容易に確認できる。加えて、除菌装置1による表示が長時間ほぼ変化しない場合、少なくとも当該除菌装置1の周囲の空気中には、少量の微生物が存在していると言える。
【0045】
第1実施形態では、第1蛍光データと第2蛍光データとのそれぞれは、蛍光強度に相当し、除菌量は、第1蛍光データと第2蛍光データとの差分に相当する。このため、制御部6は、容易に除菌量を算出できる。
【0046】
第1実施形態では、制御部6は、紫外線UVの照射中において、タイミングTよりも遅いタイミングTにて蛍光検出部4から出力される第3蛍光データを取得し、第2蛍光データと第3蛍光データとに基づいて、タイミングTからタイミングTまでに微生物捕集部2上で除菌される第2除菌量を算出し、第2除菌量を示す第2表示データを生成し、第2表示データに基づく画像を表示部5に表示させてもよい。このため、除菌装置1のユーザは、除菌装置1による除菌が継続してなされているか容易に確認できる。
【0047】
第1実施形態では、微生物捕集部2は、空気導入部11と、空気導入部11よりも下流に位置すると共に互いに離間する一対の電極12a,12bと、一対の電極12a,12bよりも下流に位置する空気排出部13と、を有し、紫外線光源3は、一対の電極12a,12bの一方に対して紫外線UVを照射する。このため、除菌装置1は、空気中に存在する微生物を除菌できる。
【0048】
第1実施形態では、一対の電極12a,12bの一方の表面の少なくとも一部には、光触媒が塗布されてもよい。この場合、除菌装置1による除菌性能を向上できる。
【0049】
第1実施形態では、一対の電極12a,12bの少なくとも一方は、メッシュ形状を有する。このため、電極12a,12bに起因する微生物捕集部2内の空気の滞留を抑制できる。
【0050】
(第2実施形態)
以下では、第2実施形態に係る除菌装置について説明する。第2実施形態の説明において第1実施形態と重複する記載は省略し、第1実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第2実施形態に第1実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0051】
まず、上記第1実施形態に係る除菌方法による課題について、図4に示される参考例を用いて説明する。図4は、参考例に係る除菌装置内における蛍光強度の時間変化の別例を示す図である。図4に示されるように、参考例においては、第1実施形態に記載される第2ステップ~第6ステップを繰り返し実施しているとき、例えば、タイミングTとタイミングTとの間から微生物捕集部2による微生物等の捕集が再開される。この場合、タイミングTに得られる蛍光強度F4aは、タイミングTにて得られる蛍光強度F3aよりも大きくなることがある。このように、除菌装置1における除菌中に微生物捕集部2上の微生物等の量(特に、微粒子量)が増加した場合、正確な除菌量の算出が困難になってしまう問題がある。
【0052】
上記問題の発生を防止するため、以下に説明する第2実施形態に係る除菌方法では、制御部6は、微生物捕集部2に対して間欠的に紫外線UVを照射するように紫外線光源3を制御する。第2実施形態に係る除菌方法の詳細について、図5(a),(b)を参照しつつ説明する。図5(a)は、第2実施形態に係る除菌装置内における蛍光強度の時間変化を示す図である。図5(b)は、第2実施形態に係る除菌装置内における紫外線強度の時間変化を示す図である。
【0053】
図5に示されるように、まず、図5に示されるタイミングT11(第1タイミング)まで、除菌装置1は、微生物捕集部2により微生物等を捕集する(第1Aステップ)。第1Aステップでは、上記第1実施形態の第1ステップと同様に微生物等が捕集され、タイミングT11にて微生物等の捕集を一時停止する。
【0054】
次に、制御部6は、タイミングT11にて蛍光検出部4から出力される蛍光データ(第1蛍光データ)を取得する(第2Aステップ)。第2Aステップでは、図5(b)に示されるように、上記第1実施形態の第2ステップと同様にして、紫外線光源3から紫外線UVが照射され、タイミングT11における蛍光強度F1bを取得する。続いて、蛍光検出部4は、当該蛍光強度F1bを第1蛍光データとして制御部6に出力する。そして、制御部6は、第1蛍光データを蛍光検出部4から取得する。第2実施形態では、蛍光強度F1bに相当する第1蛍光データは、100とされる。
【0055】
次に、制御部6は、タイミングT11よりも遅いタイミングT12(第2タイミング)にて蛍光検出部4から出力される蛍光データ(第2蛍光データ)を取得する(第3Aステップ)。第3Aステップでは、上記第1実施形態の第3ステップと同様にして、蛍光検出部4は、タイミングT12における蛍光強度F2bを取得し、当該蛍光強度Fを第2蛍光データとして制御部6に出力する。そして、制御部6は、第2蛍光データを蛍光検出部4から取得する。例えば、第2実施形態では、蛍光強度F2bに相当する第2蛍光データは、40とされる。
【0056】
上記第1実施形態と同様にして、制御部6は、第1蛍光データと第2蛍光データとに基づいて、タイミングT11からタイミングT12までに微生物捕集部2上で除菌される除菌量を算出する(第4Aステップ)。また、制御部6は、上記第4Aステップにて得られる除菌量を示す第1表示データを生成する(第5Aステップ)。第1実施形態では、第1蛍光データ(100)と、第2蛍光データ(40)との差分である60を第1表示データとして生成する。そして、制御部6は、当該第1表示データに基づく第1画像を表示部5に表示させる。
【0057】
上記第4Aステップ及び上記第5Aステップに並行して、第2実施形態では、タイミングT12にて、制御部6は、紫外線光源3からの紫外線UVの照射を中断する(第6Aステップ)。第6Aステップでは、タイミングT12にて蛍光検出部4による蛍光データの取得も中断される。加えて、第6Aステップでは、タイミングT12から微生物捕集部2による微生物等の捕集が再開される。第2実施形態では、微生物捕集部2による微生物等の捕集の開始/停止は、紫外線光源3からの紫外線照射の停止/開始と同期している。具体例としては、制御部6は、微生物捕集部2が微生物等を捕集していないときに紫外線UVを照射するように、紫外線光源3を制御する。加えて、制御部6は、微生物捕集部2が微生物等を捕集しているときに紫外線UVを照射しないように、紫外線光源3を制御する。
【0058】
第2実施形態では、除菌装置1は、上記第1Aステップ~第6Aステップを繰り返し実施する。これにより、第2実施形態においても除菌装置1の除菌量の表示が更新される。当該除菌量の表示更新方法は、例えば、以下の通りである。まず、第2実施形態では、タイミングT12よりも遅いタイミングT13(第3タイミング)にて微生物捕集部2による微生物等の捕集が再開される。続いて、タイミングT13から、タイミングT13よりも遅いタイミングT14(第4タイミング)まで紫外線UVの照射を再開する。これにより、制御部6は、タイミングT13にて蛍光検出部4から出力される蛍光強度F3bに相当する第3蛍光データと、タイミングT14にて蛍光検出部4から出力される蛍光強度F4bに相当する第4蛍光データとを取得する。続いて、制御部6は、第3蛍光データと第4蛍光データとに基づいて、タイミングT13からタイミングT14までの期間に微生物捕集部2上で除菌される除菌量(第2除菌量)を算出する。続いて、制御部6は、第2除菌量を示す第2表示データを生成した後、当該第2表示データに基づく第2画像を表示部5に表示させる。これにより、表示部5に表示される除菌量が更新される。
【0059】
第2実施形態では、タイミングT12からタイミングT13までの期間(第3期間)は、予め設定されるが、これに限られない。例えば、当該第3期間は、例えば表示部5などのユーザインターフェースを介して変更可能である。第2実施形態では、第3期間は、30秒以上1分半以下である。
【0060】
以上に説明した第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏され、かつ、ユーザは、除菌装置1によって継続的に捕集される微生物量に応じた除菌量の変化などを容易に確認できる。加えて、第2実施形態によれば、制御部6は、微生物捕集部2が微生物等を捕集していないときに紫外線UVを照射するように紫外線光源3を制御すると共に、微生物捕集部2が微生物等を捕集しているときに紫外線UVを照射しないように紫外線光源3を制御する。このため、微生物捕集部2によって捕集される微生物等(特に、微粒子)の増減に起因する除菌量の算出不良を抑制できる。さらには、微生物捕集部2に対して短時間かつ間欠的に紫外線UVを照射するように紫外線光源3を制御することによって、所定期間において空気中に存在する微生物等の捕集量を増加できる。このため、除菌装置1による除菌性能を良好に発揮できるので、除菌装置1の周囲の空気中に存在する微生物等を迅速に除菌できる。
【0061】
第2実施形態において、蛍光データ、除菌量等の演算を実施するにあたって、紫外線UVが照射される期間に得られる蛍光強度のみが用いられてもよい。言い換えれば、紫外線UVが照射される期間の蛍光強度変化を抽出してもよい。これにより、取得された蛍光のうち、微生物に起因する蛍光の強度変化を抽出できる。加えて、捕集された微生物等の増減によって生じる蛍光強度の変化の影響を低減できる。
【0062】
第2実施形態においては、上記第1実施形態と比較して、微生物捕集部2によって捕集される微生物等が増加しやすい。このため、蛍光検出部4から取得される蛍光強度のうち、微粒子自体から発生する蛍光の割合が大きくなりやすい。しかしながら、第2実施形態においても、異なるタイミングにて取得された2つの蛍光データの差分を利用することによって、微粒子自体から発生する蛍光の割合が大きくなった場合であっても、精度よく除菌量を算出できる。
【0063】
第2実施形態において、例えばタイミングT11とタイミングT12との間における蛍光強度の変化が所定値以下となる期間が所定期間以上続く場合、タイミングT11とタイミングT12との間に、捕集された微生物がほぼもしくは完全に除菌されたとみなせる。この場合、タイミングT12にて得られる蛍光強度F2bは、捕集された微粒子自体から発生する蛍光の強度(バックグラウンドノイズ)に相当するとみなせる。すなわち、蛍光強度F2bは、紫外線UVの照射によって変化しない成分に相当するとみなせる。以上の知見に基づいてなされた第2実施形態の変形例について、図6(a),(b)を参照しつつ説明する。
【0064】
図6(a)は、第2実施形態の変形例に係る除菌装置内における蛍光強度の時間変化を示す図である。図6(b)は、第2実施形態の変形例に係る除菌装置内における紫外線強度の時間変化を示す図である。図6(a)に示されるように、制御部6は、上記第1実施形態と同様に、タイミングT11とタイミングT12との間において連続的に蛍光データを取得する。そして、制御部6は、蛍光強度の変化量(差分)が所定値以下となる期間が所定期間以上続くか否かを判断する。本変形例では、タイミングT11とタイミングT12との間におけるタイミングTからタイミングT12までの期間は、上記所定期間に該当する。加えて、タイミングT11とタイミングT12との間に取得される蛍光強度の変化量は、上記所定値以下である。この場合、制御部6は、タイミングTからタイミングT12までに取得される複数の蛍光データのうち少なくともいずれかを、微生物捕集部2によって捕集される微粒子自体から発生する蛍光データと判断する。続いて、制御部6は、判断された当該蛍光データを、バックグラウンドノイズに相当する不要蛍光データとして取得する。本変形例では、不要蛍光データに相当する蛍光強度は、タイミングT12にて取得される蛍光強度F2cに相当する。そして、制御部6は、第1蛍光データと第2蛍光データと不要蛍光データとに基づいて、除菌量を算出する。なお、所定値は、例えば、3、2、1または0.5である。また、所定期間は、例えば10秒、5秒または3秒である。
【0065】
次に、タイミングT13からタイミングT14までの間において、制御部6は、蛍光検出部4から取得される蛍光強度から、不要蛍光データに相当する蛍光強度F2cを予め差し引く。これにより、タイミングT13からタイミングT14までの間において、タイミングT12までに捕集された微粒子自体から発生する蛍光の影響が排除される。よって、タイミングT13に得られ、蛍光強度F1cよりも小さくなり得る蛍光強度F3cに相当する第3蛍光データが生成される。
【0066】
以上に説明した変形例においても、上記第2実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、捕集された微生物等の増減によって生じる蛍光強度の変化の影響をより低減できる。これにより、微粒子に起因するノイズを排除できるので、表示部5は、より適切な除菌量を示す表示データを表示できる。
【0067】
本変形例において、不要蛍光データは更新されてもよい。例えば、タイミングT13からタイミングT14までの間においても、制御部6が蛍光強度の変化量(差分)が所定値以下となる期間が所定期間以上続くと判断した場合、制御部6は、タイミングT14にて取得される蛍光強度も不要蛍光データとする。この場合、制御部6は、タイミングT11からタイミングT12までに取得された不要蛍光データに相当する蛍光強度に、タイミングT14にて取得される蛍光強度を加える。すなわち、制御部6は、不要蛍光データを更新する場合、新たに取得した不要蛍光データに相当する蛍光強度と、直前に利用していた不要蛍光データに相当する蛍光強度とを足し合わせる。これにより、新たに捕集された微粒子によって生じる蛍光強度の変化の影響を好適に低減できる。なお、例えば微生物捕集部2に捕集された微粒子等が除去された場合もまた、不要蛍光データが更新されてもよい。
【0068】
(第3実施形態)
以下では、第3実施形態に係る除菌装置について説明する。第3実施形態の説明において第1及び第2実施形態と重複する記載は省略し、第1及び第2実施形態と異なる部分を記載する。つまり、技術的に可能な範囲において、第3実施形態に第1及び第2実施形態の記載を適宜用いてもよい。
【0069】
図7は、第3実施形態に係る除菌装置の要部模式図である。図7に示されるように、除菌装置1Aは、微生物捕集部2に対して、紫外線UVとは異なる励起光Lを照射する光源8をさらに備える点で、上記第1実施形態の除菌装置1とは異なる。光源8は、微生物等に蛍光を発生させるための励起光Lを照射する部材であり、例えばLED(発光ダイオード)などである。筐体7内において、光源8は、電極12aに励起光Lを照射可能な位置に配置される。第3実施形態では、光源8は電極12a,12bの間に配置されるが、これに限定されない。例えば、光源8は、紫外線光源3に隣り合うように配置されてもよい。この場合、電極12bには、励起光Lを通過する開口などが設けられてもよい。光源8は、制御部6Aによって制御される。光源8は、連続的に励起光Lを照射してもよいし、間欠的に励起光Lを照射してもよい。励起光Lが間欠的に照射される場合、励起光Lの開始及び停止は、紫外線UVの開始及び停止と同期してもよい。
【0070】
励起光Lの波長は、紫外線UVの波長とは異なり、かつ、上記蛍光の波長よりも低波長であればよい。このため、励起光Lは、紫外光でもよいし、可視光でもよい。励起光Lの波長は、例えば300nm以上450nm以下である。第3実施形態では、励起光Lの波長は400nm程度である。
【0071】
除菌装置1Aに含まれる蛍光検出部4Aに設けられる光学フィルタ(不図示)は、少なくとも励起光Lの波長を有する光と、紫外線UVを遮断する。これにより、蛍光検出部4Aによって取得される光の強度は、励起光Lの強度を完全もしくは実質的に含まない。第3実施形態では、当該光学フィルタは、励起光Lの波長以下の波長を有する光を遮断する。
【0072】
以上に説明した第3実施形態においても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、励起光Lが用いられることによって、紫外線UVのみが電極12aに照射される場合と比較して、蛍光が発生しやすくなる。このため、蛍光検出部4Aによって得られる蛍光強度を向上できるので、蛍光検出部4Aは、各蛍光データの変化量を精度よく検出できる。したがって、除菌量の時間変化を精度よく取得できる。
【0073】
本発明に係る除菌装置は、上記実施形態及び上記変形例に限定されず、他に様々な変形が可能である。上記実施形態と上記変形例とは、適宜組み合わされてもよい。例えば、上記第2実施形態及び上記第3実施形態が組み合わされてもよいし、上記変形例と上記第3実施形態とが組み合わされてもよい。上記第2実施形態及び上記第3実施形態が組み合わされる場合、励起光は、連続的に照射されてもよい。この場合、蛍光検出部は、紫外線を照射しない期間における蛍光強度を取得できる。これにより、捕集された微粒子自体から発生する蛍光の強度を容易に取得できる。すなわち、バックグラウンドノイズを容易に取得できる。
【0074】
上記第2実施形態では、制御部は、微生物捕集部が微生物等を捕集していないときに紫外線を照射するように紫外線光源を制御すると共に、微生物捕集部が微生物等を捕集しているときに紫外線を照射しないように紫外線光源を制御するが、これに限られない。例えば、制御部は、紫外線光源が間欠的に紫外線を照射するように制御しつつ、微生物捕集部による微生物等の捕集を連続的に実施してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1,1A…除菌装置、2…微生物捕集部、3…紫外線光源、4,4A…蛍光検出部、5…表示部、6,6A…制御部、7…筐体、8…光源、11…空気導入部、12…捕集装置、12a…電極、12b…電極、12c…電源、13…空気排出部、L…励起光、UV…紫外線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
互いに離間する一対の電極、及び前記一対の電極に接続される電源を含み、微生物を捕集する微生物捕集部と、
前記微生物捕集部に対して紫外線を照射する紫外線光源と、
前記紫外線の照射時に前記微生物捕集部から発生する蛍光を検出する蛍光検出部と、
前記蛍光検出部から出力される蛍光データを取得する制御部と、
前記制御部から出力される表示データに基づく画像を表示する表示部と、
を備える除菌装置であって、
前記制御部は、
少なくとも前記紫外線の照射中において、第1タイミングにて前記蛍光検出部から出力される第1蛍光データと、前記第1タイミングよりも遅い第2タイミングにて前記蛍光検出部から出力される第2蛍光データとを取得し、
前記第1蛍光データと前記第2蛍光データとに基づいて、前記第1タイミングから前記第2タイミングまでに前記微生物捕集部上で除菌される除菌量を算出し、
前記除菌量を示す第1表示データを生成し、
前記第1表示データに基づく第1画像を前記表示部に表示させる、
除菌装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記微生物捕集部は、前記一対の電極よりも上流に位置する空気導入部と、前記一対の電極よりも下流に位置する空気排出部と、を有し、
前記紫外線光源は、前記一対の電極の一方に対して前記紫外線を照射する、請求項1~8のいずれか一項に記載の除菌装置。